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【発明の名称】 粗面形成方法、粗面形成装置、回転軸、圧縮機、ピストン及び斜板
【発明者】 【氏名】杉岡 隆弘

【氏名】鈴木 將弘

【氏名】杉浦 芳典

【要約】 【課題】転写体側の加工用粗面の粗さ形状を被加工体側に良好に転写することができるようにする。

【解決手段】固定台34に設置されたモータ35の出力軸351には円柱形状のダイス37が止着されている。ダイス37の周面は、ショットピーニング又はショットブラストによって加工用粗面371に形成されている。移動台38上に設置されたモータ39の出力軸391には円柱形状のダイス41が止着されている。ダイス41の周面は、ショットピーニング又はショットブラストによって加工用粗面411に形成されている。回転軸15がダイス37,41間に挟み込まれた状態でダイス37,41が回転され、加工用粗面371,411の粗さ形状が回転軸15の外周面156に転写される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面を有する転写体の前記加工用粗面を被加工体の表面に押し付けて、前記被加工体の表面に粗面を形成する粗面形成方法。
【請求項2】
前記加工用粗面は、加工用回転面であり、前記被加工体は、粗面を形成される被加工用回転面を有し、前記加工用回転面と前記被加工用回転面とを押し付けた状態で、前記転写体と前記被加工体とを互いに逆方向に回転させて、前記被加工体の表面に粗面を形成する請求項1に記載の粗面形成方法。
【請求項3】
前記加工用回転面は、円周面形状であり、前記被加工用回転面は、円周面形状であり、前記加工用回転面の回転中心軸線と前記被加工用回転面の回転中心軸線とは、平行に配置されており、前記転写体は、前記加工用回転面の回転中心軸線を中心にして回転され、前記被加工体は、前記加工用回転面と前記被加工用回転面とを押し付けた状態で前記転写体の回転から回転駆動力を得て、前記被加工用回転面の回転中心軸線を中心にして前記転写体とは逆方向に回転される請求項2に記載の粗面形成方法。
【請求項4】
ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面を有する転写体と、
前記加工用粗面の粗さ形状を被加工体に転写するように前記転写体と被加工体とを押し付け合う押し付け手段とを備えた粗面形成装置。
【請求項5】
前記転写体を駆動して回転させる回転手段と、前記被加工体を回転可能に支持する支持手段とを備え、前記加工用粗面は加工用回転面であり、前記被加工体は粗面を形成される被加工用回転面を有し、前記転写体は前記加工用回転面と前記被加工用回転面とを押し付けた状態で、前記回転手段によって回転される請求項4に記載の粗面形成装置。
【請求項6】
前記転写体は、一対あり、一対の前記転写体は、前記被加工体を挟み込むように、前記被加工体に押し付けられる請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載の粗面形成装置。
【請求項7】
前記一対の転写体は、同一方向へ同期して回転するように互いに独立して駆動され、前記一対の転写体の周速は、同一である請求項6に記載の粗面形成装置。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によって周面に粗面を形成された回転軸。
【請求項9】
前記粗面上には樹脂製のコーティング層が設けられている請求項8に記載の回転軸。
【請求項10】
ピストンが回転軸と一体的に回転する斜板を介して前記回転軸の回転に連動されており、前記ピストンによって区画される圧縮室と吸入圧領域との連通及び遮断を行なうロータリバルブが前記回転軸に設けられている圧縮機において、
前記回転軸として請求項9の回転軸が用いられており、前記コーティング層の表面が前記ロータリバルブのシール面となる圧縮機。
【請求項11】
請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によって周面に粗面を形成されたピストン。
【請求項12】
前記粗面上には樹脂製のコーティング層が設けられている請求項11に記載のピストン。
【請求項13】
ピストンが回転軸と一体的に回転する斜板を介して前記回転軸の回転に連動されている斜板式圧縮機における斜板において、
請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によって表面に粗面を形成された斜板。
【請求項14】
前記粗面上には樹脂製のコーティング層が設けられている請求項13に記載の斜板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、粗面形成方法、粗面形成装置、回転軸、圧縮機、ピストン及び斜板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献2には、回転軸とロータリバルブとを一体形成した圧縮機が開示されている。回転軸は、ロータリバルブを介して圧縮機のハウジングに回転可能に支持されており、ロータリバルブは、回転軸の回転に伴って、圧縮室と吸入圧領域とを繋ぐガス通路を開閉する。特許文献2には、ロータリバルブの外周面にコーティングを設けた実施形態が開示されている。コーティングは、例えばフッ素樹脂製である。このようなコーティングは、ハウジングに対するロータリバルブの外周面のシール性及び摺動性を良好とする。
【0003】
回転軸の外周面に対するコーティングの結合性を高めるために、回転軸の外周面を粗面にした後にこの粗面部分にコーティングを施すのが好ましい。粗面を形成するには、例えば特許文献1に開示されるようなショットピーニングを用いることができる。しかし、粗面を設ける部位にのみ微粒子を衝突させるために粗面を設ける部位以外をマスキングする必要があり、ショットピーニングを行うための準備作業が大層面倒である。しかも、粗面形成後に被加工体(回転軸)に衝突させた微粒子を被加工体から完全に除去する作業が必要であり、この作業も大層面倒である。
【0004】
特許文献3には、被加工体の外周面に加工ローラ(転写体)を押し付けて粗面を形成する方法が開示されている。加工ローラの外周面には微細な凹凸が設けられており、被加工体の外周面に加工ローラの外周面を押し付けることによって加工ローラ側の微細な凹凸が被加工体の周面に転写される。このような転写方式によれば、ショットピーニング方式による前記した問題が解消される。加工ローラとしては研削砥石が用いられている。
【特許文献1】特開昭57-16116号公報
【特許文献2】特開2003−239856号公報
【特許文献3】特開2005−271037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、研削砥石製の加工ローラを用いると、被加工体側の転写された粗面に砥石による研削により加工方向に加工筋が生じるおそれがある。このような加工筋は、例えば粗面上に樹脂製のコーティング層を設ける場合には、粗面に対するコーティング層の結合性を低下させるおそれがある。
【0006】
本発明は、転写体側の加工用粗面を被加工体側に良好に転写することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の粗面形成方法は、ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面を有する転写体の前記加工用粗面を被加工体の表面に押し付けて、前記被加工体の表面に粗面を形成することを特徴とする。
【0008】
ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面を転写された被加工体側の粗面に加工筋が生じるおそれはない。これは、ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面を転写する場合、塑性加工となるためである。又、加工用粗面が摩滅しても、ショットピーニング又はショットブラストによって加工用粗面を再生することができ、加工用粗面を有する転写体を再生して使用することができる。
【0009】
好適な例では、前記加工用粗面は、加工用回転面であり、前記被加工体は、粗面を形成される被加工用回転面を有し、前記加工用回転面と前記被加工用回転面とを押し付けた状態で、前記転写体と前記被加工体とを互いに逆方向に回転させて、前記被加工体の表面に粗面を加工する。
【0010】
転写体と被加工体とを互いに逆方向に回転させて被加工体の表面に粗面を加工する方法は、粗面を短時間で形成するのに好適である。
好適な例では、前記加工用回転面は、円周面形状であり、前記被加工用回転面は、円周面形状であり、前記加工用回転面の回転中心軸線と前記被加工用回転面の回転中心軸線とは、平行に配置されており、前記転写体は、前記加工用回転面の回転中心軸線を中心にして回転され、前記被加工体は、前記加工用回転面に前記被加工用回転面を押し付けた状態で前記転写体の回転から回転駆動力を得て、前記被加工用回転面の回転中心軸線を中心にして前記転写体とは逆方向に回転される。
【0011】
被加工体を直接駆動する必要がなく、被加工体を回転させるための機構が簡素である。
請求項4の発明の粗面形成装置は、ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面を有する転写体と、前記加工用粗面の粗さ形状を被加工体に転写するように前記転写体と被加工体とを押し付け合う押し付け手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
転写体と被加工体とが押し付け手段の押し付け力によって押し付け合わせられ、この押し付け力が加工用粗面の粗さ形状を被加工体に転写する。転写体側の加工用粗面が摩滅しても、ショットピーニング又はショットブラストによって加工用粗面を再生することができ、加工用粗面を有する転写体を再生して使用することができる。
【0013】
好適な例では、前記転写体を駆動して回転させる回転手段と、前記被加工体を回転可能に支持する支持手段とを備え、前記加工用粗面は加工用回転面であり、前記被加工体は粗面を形成される被加工用回転面を有し、前記転写体は前記加工用回転面と前記被加工用回転面とを押し付けた状態で、前記回転手段によって回転される。
【0014】
回転手段の回転駆動力が転写体を介して被加工体に伝えられ、被加工体が間接的に駆動される。従って、被加工体を直接駆動する必要がなく、被加工体を回転させるための機構が簡素である。
【0015】
好適な例では、前記転写体は、一対あり、一対の前記転写体は、前記被加工体を挟み込むように、前記被加工体に押し付けられる。
一対の転写体によって被加工体を挟み込む構成は、円周面形状の加工用回転面と円周面形状の被加工用回転面とを互いに強く押し付け合う上で特に好適な構成である。
【0016】
好適な例では、前記一対の転写体は、同一方向へ同期して回転するように互いに独立して駆動され、前記一対の転写体の周速は、同一である。
一対の転写体を互いに独立して駆動して周速を同一にする構成は、被加工体に形成された粗面に加工筋が生じないようにする上で好適である。
【0017】
請求項8の発明は、請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によって回転軸の周面に粗面を形成したことを特徴とする。
回転軸の周面は、請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によって粗面を形成する場所として好適である。
【0018】
好適な例では、前記粗面上には樹脂製のコーティング層が設けられている。
ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面の粗さ形状を転写して形成された粗面は、樹脂製のコーティング層を良好に結合する上で好適である。
【0019】
請求項10の発明は、ピストンが回転軸と一体的に回転する斜板を介して前記回転軸の回転に連動されており、前記ピストンによって区画される圧縮室と吸入圧領域との連通及び遮断を行なうロータリバルブが前記回転軸に設けられている圧縮機を対象とし、前記回転軸として請求項9の回転軸が用いられており、前記コーティング層の表面が前記ロータリバルブのシール面となることを特徴とする。
【0020】
このような圧縮機に用いられる回転軸は、ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面の粗さ形状を転写して粗面を形成する被加工体として好適である。
【0021】
請求項11の発明は、請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によってピストンの周面に粗面が形成されていることを特徴とする。
ピストンの周面は、請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によって粗面を形成する場所として好適である。
【0022】
好適な例では、前記ピストンの粗面上には樹脂製のコーティング層が設けられている。
ピストンの周面のシール性及び摺動性を良好とする樹脂製のコーティング層は、ピストンの粗面に良好に結合される。
【0023】
請求項13の発明は、ピストンが回転軸と一体的に回転する斜板を介して前記回転軸の回転に連動されている斜板式圧縮機における斜板を対象とし、請求項5乃至請求項7のいずれかの粗面形成装置によって前記斜板の表面に粗面が形成されていることを特徴とする。
【0024】
好適な例では、前記斜板の粗面上には樹脂製のコーティング層が設けられている。
斜板の表面の摺動性を良好とする樹脂製のコーティング層は、斜板の粗面に良好に結合される。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、転写体側の加工用粗面を被加工体側に良好に転写することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
本実施形態の被加工体は、図5〜図7に示すピストン式圧縮機10に用いられる回転軸15である。
【0027】
図5に示すように、接合された一対のシリンダブロック11,12にはフロントハウジング13及びリヤハウジング14が接合されている。フロントハウジング13には吐出圧領域としての吐出室131が形成されている。リヤハウジング14には吐出圧領域としての吐出室141及び吸入圧領域としての吸入室142が形成されている。
【0028】
シリンダブロック11,12には回転軸15が回転可能に支持されている。鉄系製の回転軸15は、シリンダブロック11,12に貫設された軸孔111,121に挿通されている。回転軸15は、軸孔111,121を介してシリンダブロック11,12によって直接支持されている。回転軸15の大径部155には斜板16が固着されている。
【0029】
図6に示すように、シリンダブロック11には複数のシリンダボア17が回転軸15の周囲に配列されるように形成されている。図7に示すように、シリンダブロック12には複数のシリンダボア18が回転軸15の周囲に配列されるように形成されている。前後(フロントハウジング13側を前側、リヤハウジング14を後側としている)で対となるシリンダボア17,18にはピストン19が収容されている。
【0030】
図5に示すように、回転軸15と一体的に回転する斜板16の回転運動は、シュー20を介してピストン19に伝えられ、ピストン19がシリンダボア17,18内を前後に往復動する。ピストン19は、シリンダボア17,18内に圧縮室171,181を区画する。
【0031】
回転軸15を通す軸孔111,121の内周面にはシール周面112,122が形成されている。シール周面112,122の径は、軸孔111,121の他の内周面の径よりも小さくしてあり、回転軸15の大径部155は、シール周面112,122を介してシリンダブロック11,12によって直接支持される。
【0032】
回転軸15の大径部155内には供給通路151が回転軸15の回転中心軸線150に沿って形成されている。供給通路151は、リヤハウジング14内の吸入室142に開口している。回転軸15には導入通路21,22が供給通路151に連通するように形成されている。
【0033】
図6に示すように、シリンダブロック11には吸入通路23が圧縮室171と軸孔111とを連通するように形成されている。吸入通路23は、シール周面112上に開口している。図7に示すように、シリンダブロック12には吸入通路24が圧縮室181と軸孔121とを連通するように形成されている。吸入通路24は、シール周面122上に開口している。回転軸15の回転に伴い、導入通路21,22は、吸入通路23,24に間欠的に連通する。
【0034】
シリンダボア17が吸入行程の状態〔ピストン19が図5の左側から右側へ移動する行程〕にあるときには、導入通路21と吸入通路23とが連通する。シリンダボア17が吸入行程の状態にあるときには、回転軸15の供給通路151内の冷媒が導入通路21及び吸入通路23を経由してシリンダボア17の圧縮室171に吸入される。
【0035】
シリンダボア17が吐出行程の状態〔ピストン19が図1の右側から左側へ移動する行程〕にあるときには、導入通路21と吸入通路23との連通が遮断される。シリンダボア17が吐出行程の状態にあるときには、圧縮室171内の冷媒が吐出ポート25から吐出弁26を押し退けて吐出室131へ吐出される。吐出室131へ吐出された冷媒は、図示しない外部冷媒回路へ流出する。
【0036】
シリンダボア18が吸入行程の状態〔ピストン19が図5の右側から左側へ移動する行程〕にあるときには、導入通路22と吸入通路24とが連通する。シリンダボア18が吸入行程の状態にあるときには、回転軸15の供給通路151内の冷媒が導入通路22及び吸入通路24を経由してシリンダボア18の圧縮室181に吸入される。
【0037】
シリンダボア18が吐出行程の状態〔ピストン19が図5の左側から右側へ移動する行程〕にあるときには、導入通路22と吸入通路24との連通が遮断される。シリンダボア18が吐出行程の状態にあるときには、圧縮室181内の冷媒が吐出ポート27から吐出弁28を押し退けて吐出室141へ吐出される。吐出室141へ吐出された冷媒は、外部冷媒回路へ流出する。外部冷媒回路へ流出した冷媒は、吸入室142へ還流する。
【0038】
シール周面112,122によって包囲される回転軸15の大径部155の外周面156の部分には樹脂製のコーティング層29,30が設けられている。被加工体である回転軸15の表面となる外周面156は、回転軸15の回転中心軸線150を中心とする円周面形状の被加工用回転面である。コーティング層29の表面291〔図4(b)に図示〕は、シール周面112に密接しており、コーティング層30の表面301〔図4(b)に図示〕は、シール周面122に密接している。シール周面112,122によって包囲される回転軸15の部分及びコーティング層29,30は、回転軸15に一体形成されたロータリバルブ31,32となる。コーティング層29の表面291は、ロータリバルブ31のシール面となり、コーティング層30の表面301は、ロータリバルブ32のシール面となる。
【0039】
図4(a)に示すように、回転軸15の外周面156の範囲T1,T2(ロータリバルブ31,32となる部分)には粗面153,154が形成されている。図4(b)に示すコーティング層29,30は、図4(a)に示す粗面153,154上に設けられている。粗面153,154は、図1(a)、図2(a)及び図3に示す粗面形成装置33を用いて形成される。
【0040】
次に、粗面形成装置33の構成について説明する。
図1(a)に示すように、固定台34上にはモータ35が設置されており、モータ35の出力軸351が固定台34に立設された支柱36に回転可能に支持されている。出力軸351には円柱形状のダイス37が止着されている。回転軸15の材質よりも硬質の金属製のダイス37の周面は、ショットピーニング又はショットブラストによって加工用粗面371に形成されている。出力軸351の回転中心軸線352と円柱形状のダイス37の径中心線とは一致されている。転写体としてのダイス37の加工用粗面371は、回転中心軸線352を中心とする円周面形状の加工用回転面である。
【0041】
固定台34の隣りには移動台38が並設されている。移動台38上にはモータ39が設置されており、モータ39の出力軸391が移動台38に立設された支柱40に回転可能に支持されている。出力軸391には円柱形状のダイス41が止着されている。回転軸15の材質よりも硬質の金属製のダイス41の周面は、ショットピーニング又はショットブラストによって加工用粗面411に形成されている。
【0042】
円柱形状のダイス41の半径は、円柱形状のダイス37の半径に一致させてあり、出力軸391の回転中心軸線392と円柱形状のダイス41の径中心線とは一致されている。転写体としてのダイス41の加工用粗面411は、回転中心軸線392を中心とする円周面形状の加工用回転面である。
【0043】
モータ35の出力軸351とモータ39の出力軸391とは、回転中心軸線352と回転中心軸線392とが平行となるように、配置されており、加工用粗面371と加工用粗面411とは、平行移動によって重ね合わすことができ、合同な形状である。
【0044】
固定台34の上面341と移動台38の上面381とは、同一の仮想平面上にある。上面341からの出力軸351の回転中心軸線352の高さ位置は、上面381からの出力軸391の回転中心軸線392の高さ位置に合わせられており、固定台34の上面341からのダイス37の高さ位置は、移動台38の上面381からのダイス41の高さ位置に合わせられている。
【0045】
移動台38は、押し付け手段としてのサーボモータ42の正逆回転によって、前記した仮想平面に沿って、且つ回転中心軸線352,392に対して直交する方向へ移動可能である。サーボモータ42の出力軸は、ネジ軸421であり、ネジ軸421は、移動台38に螺合されている。ネジ軸421が正転されると、移動台38が固定台34に接近し、ネジ軸421が逆転されると、移動台38が固定台34から遠ざかる。
【0046】
回転軸15にコーティング層29,30〔図5に図示〕を設ける前の回転軸15が図1(b)に示してある。図2(a)に示すように、図1(b)に示す回転軸15を回転可能に支持する一対の調芯軸43,44が対向するように出力軸351,391と平行に設けられている。調芯軸43は、回転軸15の端面に設けられたセンタリング用孔152〔図1(b)に図示〕に挿入され、調芯軸44は、供給通路151に挿入される。調芯軸43,44は、回転軸15(被加工体)を回転可能に支持する支持手段を構成する。
【0047】
図1(b)に示す回転軸15の周面の範囲T1,T2にはコーティング層29,30〔図5に図示〕が設けられるが、回転軸15の周面にコーティング層29,30を結合するための粗面が粗面形成装置33を用いて範囲T1,T2に形成される。
【0048】
図2(a)に示すように、調芯軸43,44によって回転可能に支持された回転軸15は、ダイス37とダイス41との間に配置される。ダイス37とダイス41との間に配置された回転軸15の回転中心軸線150は、回転中心軸線352,392に平行である。図2(a)の状態では、回転軸15の周面の範囲T1がダイス37とダイス41との間に位置する。鎖線で示す待機位置にある移動台38がサーボモータ42の正転によって実線で示す位置に配置されると、回転軸15の周面の範囲T1がダイス37とダイス41との間に挟み込まれる。
【0049】
回転軸15がダイス37,41間に挟み込まれた後、モータ35,39が同期して回転するように制御される。ここにおける同期回転制御とは、出力軸351,391の回転速度が同一の回転速度になるように、制御されることである。出力軸351,391及びダイス37,41は、矢印R1で示すように同一方向に回転され、ダイス37,41間に挟み込まれている回転軸15は、回転中心軸線150を中心にして矢印R1とは逆の方向(矢印R2で示す方向)に回転する。ダイス37の周面(加工用粗面371)の周速とダイス41の周面(加工用粗面411)の周速とは、同一であり、回転軸15の外周面156もダイス37,41の周速と同一になる。これにより、ダイス37,41の加工用粗面371,411の粗さ形状(微細な凹凸形状)が回転軸15の周面の範囲T1に転写される。
【0050】
なお、回転軸15がダイス37,41間に挟み込まれた状態でモータ35,39が回転している間では、少なくとも回転軸15の範囲T1に水性の潤滑剤が振り掛け供給されている。
【0051】
モータ35,39の同期回転開始から所定時間が経過すると、サーボモータ42が逆転され、移動台38が待機位置に復帰する。移動台38が待機位置に復帰すると、モータ35及びモータ39の作動が停止される。
【0052】
図2(b)は、範囲T1に加工用粗面371,411の粗さ形状を転写されて形成された粗面153を示す。
粗面153の形成後、調芯軸43,44によって回転可能に支持された回転軸15は、図3に示すように回転軸15の周面の範囲T2がダイス37とダイス41との間に位置するように、配置される。鎖線で示す待機位置にある移動台38がサーボモータ42の正転によって実線で示す位置に配置されると、回転軸15の周面の範囲T2がダイス37とダイス41との間に挟み込まれる。
【0053】
回転軸15がダイス37,41間に挟み込まれた後、モータ35,39が同期して回転するように制御される。出力軸351,391及びダイス37,41は、矢印R1で示すように同一方向に回転され、ダイス37,41間に挟み込まれている回転軸15は、回転中心軸線150を中心にして矢印R2で示す方向に回転する。これにより、ダイス37,41の加工用粗面371,411の粗さ形状が回転軸15の周面の範囲T2に転写される。
【0054】
なお、回転軸15がダイス37,41間に挟み込まれた状態でモータ35,39が回転している間では、少なくとも回転軸15の範囲T2に水性の潤滑剤が振り掛け供給されている。
【0055】
モータ35,39の同期回転開始から所定時間が経過すると、サーボモータ42が逆転され、移動台38が待機位置に復帰する。移動台38が待機位置に復帰すると、モータ35及びモータ39の作動が停止される。
【0056】
図4(a)は、範囲T2に加工用粗面371,411の粗さ形状を転写されて形成された粗面154を示す。
回転軸15の周面に粗面153,154を形成した後、樹脂製のコーティング層29,30が粗面153,154上にコーティングされる。図4(b)は、範囲T1,T2にコーティング層29,30を設けた回転軸15を示す。
【0057】
本実施形態では以下のような効果が得られる。
(1)ダイス37,41の加工用粗面371,411は、ショットピーニング又はショットブラストによって形成されており、粗面153,154は、加工用粗面371,411を回転軸15の周面に押し付けて形成される。従来の砥石による加工のように研削加工ではなく、ダイスによる塑性加工となるため、加工方向への加工筋が生じるおそれがなく、ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面371,411における微細な凹凸は、均一に分散しており、加工用粗面371,411の粗さ形状を転写されて形成された粗面153,154は、凹凸に方向性がないものとすることができる。
【0058】
(2)加工用粗面371,411は、徐々にではあるが摩滅してゆき、回転軸15の外周面156に転写される粗面153,154の粗さ形状の表面粗さが小さくなってゆく。そのため、加工用粗面371,411が或る程度摩滅した場合には、許容される表面粗さを持った加工用粗面371,411に代える必要がある。ダイス37,41の加工用粗面371,411は、ショットピーニングによって再生することができ、ダイス37,41を再生して使用することができる。
【0059】
(3)ダイス37,41と回転軸15とは、押接された状態で互いに逆方向に回転され、ダイス37,41側の加工用粗面371,411の粗さ形状が回転軸15の外周面156に転写される。ダイス37,41と回転軸15とを押接した状態で互いに逆方向に回転させて回転軸15の外周面156に粗面153,154を形成する方法は、粗面153,154を短時間で形成するのに好適である。
【0060】
(4)モータ35の回転駆動力がダイス37を介して回転軸15に伝えられると共に、モータ39の回転駆動力がダイス41を介して回転軸15に伝えられ、回転軸15がダイス37,41を介して間接的に駆動される。従って、回転軸15を直接駆動する必要がなく、回転軸15を回転させるための機構が簡素である。
【0061】
(5)一対のダイス37,41は、回転軸15を挟み込むように、回転軸15に押接される。つまり、回転軸15の外周面156は、加工用粗面371,411の回転中心軸線352,392と回転軸15の回転中心軸線150とを平行に配置した状態で、一対の加工用粗面371,411によって挟み込まれる。ダイス37側が移動不能に設けられているため、一対のダイス37,41によって回転軸15を挟み込む構成では、ダイス41を回転軸15に押し付けることによってダイス37も同じ力で回転軸15に押し付けられる。一対のダイス37,41によって回転軸15を挟み込む構成は、円周面形状の加工用粗面371,411(加工用回転面)と円周面形状の外周面156(被加工用回転面)とを互いに強く押し付け合う上で特に好適な構成である。
【0062】
又、回転軸15がダイス37,41によって挟み込まれているため、回転軸15がダイス37,41の回転に遅れることなく追随して回転し、追随遅れによる加工筋の発生の問題は生じない。
【0063】
(6)例えば、モータ35のみによってダイス37,41の両方を駆動しようとすると、ダイス37,41間の間隔を変更してもダイス37側からダイス41側へ駆動力を伝達可能な駆動力伝達機構を採用する必要があるが、このような駆動力伝達機構は、複雑である。
【0064】
本実施形態では、ダイス37,41は、同一方向へ同期して回転するように、モータ35,39によって互いに独立して駆動され、ダイス37,41の周速は、同一である。別々のモータ35,39によって一対のダイス37,41を互いに独立して駆動して周速を同一にする構成は、複雑な駆動力伝達機構を用いることなく、加工筋のない良好な粗面153,154を回転軸15に形成する上で好適である。
【0065】
(7)回転軸15の円周面形状の外周面156は、粗面形成装置33によって粗面を形成する場所として好適である。
(8)ロータリバルブ31,32を構成する樹脂製のコーティング層29,30は、ロータリバルブ31,32とシール周面112,122との間のシール性を高めるシール層として好適である。このようなコーティング層29,30は、粗面153,154に結合されており、ショットピーニング又はショットブラストによって形成された加工用粗面371,411の粗さ形状を転写されて形成された粗面153,154は、加工方向への加工筋のない粗面となり、凹凸に方向性がないため、コーティング層29,30を剥がれないように保持する上で、好適な粗面である。
【0066】
(9)ダイス37,41の加工用粗面371,411が回転軸15の外周面156に接触してから加工用粗面371,411が回転軸15に食い込む量(切り込み量)、及び食い込みの速度(切り込み速度)は、粗面153,154の良好な形成に影響を与える。さらに、加工用粗面371,411が回転軸15の外周面156に接触している時間(転写時間)も粗面153,154の良好な形成に影響を与える。
【0067】
移動台38及びダイス41を移動させるためにサーボモータ42を用いているため、サーボモータ42の回転位置、回転量、回転速度を数値制御することによって、切り込み量、切り込み速度、転写時間を簡単に調整することができる。
【0068】
本発明では、以下のような実施形態も可能である。
○図8に示すように、ピストン19の周面191に樹脂製のコーティング層45A,45Bを設ける場合に本発明を適用してもよい。図9(a)は、周面191に粗面192を形成したピストン19を示す。粗面192は、図1に示す粗面形成装置33と同様の装置を用いて形成される。図9(b)は、粗面192上にコーティング層45A,45Bを設けたピストン19を示す。ピストン19の周面191に粗面192を形成した本実施形態においても、回転軸15の周面に粗面を形成した実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0069】
○図8に示すように、ピストン式圧縮機10(斜板式圧縮機)を構成する斜板16の平坦な表面161,162に樹脂製のコーティング層46,47を設ける場合に本発明を適用してもよい。表面161は、回転軸15の回転中心軸線150に対して斜交する仮想平面H1と回転中心軸線150との交点Q1を中心にして、仮想平面H1上にあって回転中心軸線150と交差する直線を仮想平面H1上で回転させた平面形状の回転面である。表面162は、回転軸15の回転中心軸線150に対して斜交する仮想平面H2と回転中心軸線150との交点Q2を中心にして、仮想平面H2上にあって回転中心軸線150と交差する直線を仮想平面H2上で回転させた平面形状の回転面である。
【0070】
図10(a)は、表面161に粗面163を形成した斜板16を示す。表面162側にも同様の粗面が形成されている。粗面163は、周面が円錐面のダイス48を用いて形成され、表面162側の粗面は、周面が円錐面のダイス49〔図10(b)に図示〕を用いて形成される。ダイス48,49の周面は、ショットピーニング又はショットブラストによって加工用粗面481,491に形成されている。加工用回転面である加工用粗面481,491を表面161,162に押し付けてダイス48を回転させるときには、ダイス48,49の円錐面の頂点P1,P2は、回転中心軸線150上に位置する。図10(c)は、粗面163上にコーティング層46を設けた斜板16を示す。
【0071】
○固定台34側のダイス37、又は移動台38側のダイス41のみによって粗面を形成するようにしてもよい。
○円錐面に粗面を形成するようにしてもよい。この場合、転写体側の加工用粗面も円錐面にする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】一実施形態を示し、(a)は、粗面形成装置の斜視図。(b)は、回転軸の一部破断側面図。
【図2】(a)は、粗面形成装置の平面図。(b)は、粗面を形成した回転軸を示す側面図。
【図3】粗面形成装置の平面図。
【図4】(a)は、粗面を形成した回転軸を示す側面図。(b)は、コーティング層を設けた回転軸を示す側面図。
【図5】圧縮機の側断面図。
【図6】図5のA−A線断面図。
【図7】図5のB−B線断面図。
【図8】別の実施形態を示す圧縮機の側断面図。
【図9】(a)は、粗面を形成したピストンを示す側面図。(b)は、コーティング層を設けたピストンを示す側面図。
【図10】(a)は、粗面を形成した斜板を示す正面図。(b)は、ダイスを示す側面図。(c)は、コーティング層を設けた斜板を示す正面図。
【符号の説明】
【0073】
10…斜板式圧縮機としての圧縮機。142…吸入圧領域としての吸入室。15…被加工体としての回転軸。150…回転中心軸線。153,154…粗面。156…被加工用回転面である外周面。16…斜板。161,162…表面。171,181…圧縮室。19…ピストン。191…周面。192…粗面。29,30,45,46,47…コーティング層。291,301…コーティング層の表面。31,32…ロータリバルブ。33…粗面形成装置。352,392…回転中心軸線。35,39…回転手段としてのモータ。37,41,48,49…転写体としてのダイス。371,411,481,491…加工用回転面である加工用粗面。42…押し付け手段としてのサーボモータ。43,44…支持手段を構成する調芯軸。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
【識別番号】506423800
【氏名又は名称】株式会社 丹羽鉄工所
【出願日】 平成18年12月21日(2006.12.21)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣

【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠


【公開番号】 特開2008−155229(P2008−155229A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−344763(P2006−344763)