トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 微細凹部加工装置及び加工方法
【発明者】 【氏名】▲高▼嶋 和彦

【氏名】太田 稔

【氏名】上原 義貴

【要約】 【課題】円周状被加工面の軸線に沿う方向の配列において微細凹部を規則的な配置で形成し、材料のスプリングバックによる影響を解消して所望の形状の微細凹部を高精度に形成する微細凹部加工装置を提供する。

【解決手段】微細凹部形成用の凸部11aを有するフォームローラ11と、内周面Baの軸線に直交する回転軸14によりフォームローラ11を回転自在に支持するアーム12及び工具ホルダ10と、フォームローラ11を内周面Baに圧接させる圧縮コイルばね18と、シリンダブロックCBを移動させるテーブル4を備えると共に、フォームローラの凸部が、シリンダブロックCBの材料のスプリングバック量を見込んだ形状である微細凹部加工装置1とすることで、微細凹部Pを規則的な配置で形成し且つスプリングバックによる影響を解消する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物における円柱部の外周面や円形孔の内周面である円周状被加工面に多数の微細凹部を形成する装置であって、
外周部に微細凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、
円周状被加工面の軸線に直交する回転軸によりフォームローラを回転自在に支持するローラ支持部材と、
ローラ支持部材を保持する工具ホルダと、
ローラ支持部材に荷重を付与してフォームローラの凸部を円周状被加工面に圧接させる荷重付与手段と、
被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線に沿う方向に移動させる軸線方向移動手段を備えると共に、
フォームローラの凸部が、被加工物の材料のスプリングバック量を見込んだ形状であることを特徴とする微細凹部加工装置。
【請求項2】
被加工物における円柱部の外周面や円形孔の内周面である円周状被加工面に多数の微細凹部を形成する装置であって、
外周部に微細凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、
円周状被加工面の軸線に直交する回転軸によりフォームローラを回転自在に支持するローラ支持部材と、
ローラ支持部材を保持する工具ホルダと、
被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の半径方向に移動させてフォームローラの凸部を円周状被加工面に圧接させる半径方向移動手段と、
被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線に沿う方向に移動させる軸線方向移動手段を備えると共に、
フォームローラの凸部が、被加工物の材料のスプリングバック量を見込んだ形状であることを特徴とする微細凹部加工装置。
【請求項3】
被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線回りに回転させる回転駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細凹部加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の微細凹部加工装置を用いて被加工物の円周状被加工面に微細凹部を形成するに際し、円周状被加工面にフォームローラを圧接させ、被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線に沿う方向に移動させてフォームローラを転動させることにより、円周状被加工面の軸線に沿う方向に微細凹部を連続的に形成することを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項5】
請求項3に記載の微細凹部加工装置を用いて被加工物の円周状被加工面に微細凹部を形成するに際し、円周状被加工面にフォームローラを圧接させ、被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線回りに回転させながら、被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線に沿う方向に移動させてフォームローラを転動させることにより、円周状被加工面の軸線回りの螺旋に沿って微細凹部を連続的に形成することを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項6】
円周状被加工面の軸線方向にわたる微細凹部の連続的な形成を終えた後、被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を所定角度回転させ、その後、円周状被加工面の軸線方向にわたる微細凹部の連続的な形成と、被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方の所定角度回転を交互に繰り返すことを特徴とする請求項4又は5に記載の微細凹部形成方法。
【請求項7】
円柱部の外周面や円形孔の内周面である円周状摺動面を有する摺動部材であって、請求項4〜6のいずれか1項に記載の微細凹部加工方法により、円周状被加工面である円周状摺動面に多数の微細凹部を形成したことを特徴とする摺動部材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用エンジンにおけるカムシャフトやシリンダブロックの摺動面すなわちジャーナルの外周面やシリンダボアの内周面といった円周状被加工面に、低フリクション化を実現するための油溜りとして機能する多数の微細凹部を形成するのに用いられる微細凹部加工装置及び加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の微細凹部加工装置としては、外周部に微細凹部形成用の凸部を有するフォームローラを備えると共に、被加工物における円柱部の外周面や円形孔の内周面といった円周状被加工面に対して、その軸線とフォームローラの回転軸が平行になるように被加工物とフォームローラを配置したものがあった。
【0003】
上記の微細凹部加工装置は、円周状被加工面が被加工物における円柱部の外周面である場合には、特許文献1に示されるように、円周状被加工面にフォームローラを圧接させて、被加工物を円周状被加工面の軸線回りに回転させることにより、フォームローラを転動させて微細凹部を形成し、また、円周状被加工面が被加工物における円形孔の内周面である場合には、特許文献2に示されるように、円周状被加工面にフォームローラを圧接させて、フォームローラを保持する工具ホルダを円周状被加工面の軸線回りに回転させることにより、フォームローラを転動させて微細凹部を形成する。
【0004】
このようなフォームローラを用いた微細凹部の形成は、機械加工であるため、例えばショットブラスト等によって微細凹部を形成する場合に比べて、微細凹部を高精度に且つ効率良く形成することができ、生産性の向上や製造コストの低減を実現するうえで非常に有効なものとなっている。
【特許文献1】特開2005−169496号公報
【特許文献2】特開2005−319476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したような従来の微細凹部加工装置では、被加工物の円周状被加工面の軸線回りにフォームローラを転動させていたため、円周状被加工面の直径とフォームローラの直径の寸法関係によっては、円周状被加工面の軸線に沿う方向の配列において微細凹部の配置に円周方向のずれが生じ、これにより摺動抵抗を充分に低減できないという問題点があり、このほか、被加工物の材料のスプリングバックにより、微細凹部の所望の形状すなわち摺動抵抗を充分に低減し得る規定の形状が得られないという問題点があり、これらの問題点を解決することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたものであって、円周状被加工面の軸線に沿う方向の配列において、微細凹部を規則的な配置で形成することができると共に、被加工物の材料のスプリングバックによる影響を解消して所望の形状の微細凹部を高精度に形成することができる微細凹部加工装置及び加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微細凹部加工装置は、被加工物における円柱部の外周面や円形孔の内周面である円周状被加工面に多数の微細凹部を形成する装置である。そして、外周部に微細凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、円周状被加工面の軸線に直交する回転軸によりフォームローラを回転自在に支持するローラ支持部材と、ローラ支持部材を保持する工具ホルダと、ローラ支持部材に荷重を付与してフォームローラの凸部を円周状被加工面に圧接させる荷重付与手段と、被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線に沿う方向に移動させる軸線方向移動手段を備えると共に、フォームローラの凸部が、被加工物の材料のスプリングバック量を見込んだ形状である構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
また、本発明の微細凹部加工方法は、上記したような微細凹部加工装置を用いて、被加工物の円周状被加工面に微細凹部を形成するに際し、円周状被加工面にフォームローラを圧接させ、被加工物及び工具ホルダの少なくとも一方を円周状被加工面の軸線に沿う方向に移動させてフォームローラを転動させることにより、円周状被加工面の軸線に沿う方向に微細凹部を連続的に形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微細凹部加工装置及び加工方法によれば、円周状被加工面の軸線に沿う方向の配列において、微細凹部を規則的な配置で効率良く形成することができると共に、被加工物の材料のスプリングバックによる影響を解消して、規定通りの形状の微細凹部を高精度に形成することができ、これにより被加工面である摺動面の摺動抵抗が充分に低減された摺動部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の微細凹部加工装置及び加工方法の一実施例を説明する。なお、本発明は、その詳細な構成が以下の実施例に限定されるものではない。
【0011】
図2に示す微細凹部加工装置1は、自動車用エンジンのシリンダブロックCBにおけるシリンダボアBの内周面Baに微細凹部Pを形成するNC工作機械であって、鉛直方向に昇降可能な主軸ヘッド2と、主軸ヘッド2から垂下した状態で支持された主軸3と、主軸ヘッド2の下方において水平面内で互いに直交する二軸方向に移動可能なワーク載置用のテーブル4と、主軸3に同軸に装着されて一体的に回転する工具ホルダ10を備えている。シリンダブロックは、ワーク載置用のテーブル4において、シリンダボアBの軸線を鉛直にした状態で位置決めされる。
【0012】
工具ホルダ10は、図1に示すように、主軸3への装着部位であるボディ部10Aを有しており、このボディ部10Aの下側には、外周部に微細凹部形成用の凸部を有するフォームローラ11と、シリンダボアBの軸線に直交する回転軸14によりフォームローラ11を回転自在に支持するローラ支持部材としてのアーム12と、工具ホルダ10におけるアーム12の保持部分となるハウジング13が設けてある。
【0013】
フォームローラ11は、材料がとくに限定されるものではないが、例えば、超硬、超硬以外の硬質金属やアルミナ、窒化珪素等のセラミックスなどから成るものであって、シリンダボアBの直径よりも小さい直径を有している。このフォームローラ11は、図3にも示すように、外周部に微細凹部形成用の多数の凸部11aを一定間隔で有している。そして、フォームローラ11の凸部11aは、後に詳述するように、被加工物(シリンダブロックCB)の材料のスプリングバック量を見込んだ形状となっている。
【0014】
アーム12は、主軸3に対して垂直すなわち軸線が鉛直である主軸3に対して水平な回転軸14を備えており、この回転軸14によりフォームローラ11を回転自在に支持している。ハウジング13は、中空ブロック状を成すものであって、下端側中空部分には軸線を水平方向としたスプラインナット15が嵌合固定してあり、このスプラインナット15と、上記アーム12に連結したスプラインシャフト16とを互いにスプライン結合することで、アーム12を主軸3と直交する水平方向に移動可能に保持している。
【0015】
アーム12とハウジング13の上端側中空部分に嵌めこんだキャップ17との間には、圧縮コイルばね18が介装してあり、アーム12に対して主軸3と直交する水平方向の荷重を付与することで、シリンダボアBの内周面Baにフォームローラ11の凸部を圧接させるようにしている。この場合、キャップ17と圧縮コイルばね18との間には、荷重検出手段としての圧電型のロードセル19が設けてある。
【0016】
また、ハウジング13においてスプラインシャフト16のアーム12の反対側には、スプラインシャフト16の直径よりも大径で且つウレタン樹脂などの軟質材料から成る止め具20が固定してあり、この止め具20は、圧縮コイルばね18の伸びを抑えると共に、この圧縮コイルばね18が伸びきった際の衝撃を緩和し、そして、ハウジング13からアーム12が脱落するのを阻止するものとなっている。
【0017】
さらに、圧縮コイルばね18とロードセル19の間には、圧縮コイルばね18に予圧を与える調整駒21が設けてあり、この調整駒21の長さ(圧縮コイルばね18の伸縮方向の長さ)を選択することで、予圧力を調整することができるようにしてある。なお、ロードセル19は、調整駒21との接触部19aを球状の突部としており、これにより、圧縮コイルばね18の伸縮方向に対する倒れを吸収することができるようにしてある。
【0018】
この実施例では、シリンダブロックCBが被加工物に相当し、シリンダボアBの内周面Baが、被加工物における円形孔の内周面である円周状被加工面に相当する。また、この実施例では、圧縮コイルばね18が、ローラ支持部材(アーム12)に荷重を付与してフォームローラ11の凸部11aを円周状被加工面(シリンダボアBの内周面Ba)に圧接させる荷重付与手段に相当する。
【0019】
さらに、この実施例では、鉛直方向に昇降する主軸ヘッド2が、被加工物(シリンダブロックCB)及び工具ホルダ10の少なくとも一方を円周状被加工面(シリンダボアBの内周面Ba)の軸線に沿う方向に移動させる軸線方向移動手段に相当し、ここでは工具ホルダ10を垂直方向に移動させる。さらに、この実施例では、主軸3が、被加工物(シリンダブロックCB)及び工具ホルダ10の少なくとも一方を円周状被加工面(シリンダボアBの内周面Ba)の軸線回りに回転させる回転駆動手段に相当し、ここでは工具ホルダ10を回転駆動する。
【0020】
さらに、この実施例では、水平方向に移動するワーク載置用テーブル4が、被加工物(シリンダブロックCB)及び工具ホルダ10の少なくとも一方を円周状被加工面(シリンダボアBの内周面Ba)の半径方向に移動させてフォームローラ11の凸部11aを円周状被加工面(シリンダボアBの内周面Ba)に圧接させる半径方向移動手段に相当し、ここでは被加工物(シリンダブロックCB)を移動させる。なお、この半径方向移動手段は、同様の機能を有する荷重付与手段(圧縮コイルばね18)と併用することも可能であるし、荷重付与手段の代わりに用いることも可能である。
【0021】
上記した微細凹部加工装置1において、シリンダボアBの内周面Baに微細凹部Pを形成するに際しては、まず、主軸3とシリンダボアBの軸線(中心線)とが同軸上に一致するように位置決めをして、主軸ヘッド2とともに工具ホルダ10を下降させ、シリンダボアB内にフォームローラ11を挿入する。
【0022】
次に、テーブル4を作動させて、シリンダボアBの内周面Baに対してフォームローラ11を接触させ、ロードセル19により検出した荷重が予め設定した値になるまでテーブル4の移動を継続させる。
【0023】
つまり、シリンダボアBの内周面Baにフォームローラ11が接触した後、テーブル4の移動を継続させると、アーム12とハウジング13との間で圧縮コイルばね18が圧縮され、その反発力が荷重としてフォームローラ11に付与されると同時に、ロードセル19によりこの荷重が検出されることから、ロードセル19の検出荷重が設定値になるまでテーブル4の移動を継続させれば、シリンダボアBの内周面Baを所定の荷重で加圧し得ることとなる。
【0024】
そして、上記のように荷重の設定値を検出した段階において、テーブル4の移動を停止し、主軸ヘッド2とともに工具ホルダ10を下降させると、シリンダボアBの内周面Baに押し付けられているフォームローラ11が下降しつつ連れ回りし、このフォームローラ11の転動により、シリンダボアBの内周面Baにその軸線方向にわたって一列の微細凹部Pが連続的に形成される。この際、一列の微細凹部Pは、円周方向にずれることなく形成される。
【0025】
次に、テーブル4の移動によりフォームローラ11をシリンダボアBの内周面Baから離間させ、主軸3により工具ホルダ10を所定の角度回転させる。そして、テーブル4を作動させ、再度フォームローラ11を設定荷重でシリンダボアBの内周面Baに押付け、主軸ヘッド2とともに工具ホルダ10を上昇させると、シリンダボアBの内周面Baに押し付けられているフォームローラ11が上昇しつつ連れ回りし、このフォームローラ11の転動により、シリンダボアBの内周面Baにその軸線方向にわたって次の一列の微細凹部Pが連続的に形成される。
【0026】
これらの動作を繰り返し実施することで、シリンダボアBの内周面Baの広い領域において、図7に示すように、軸線方向(図7上下方向)及び円周方向(図7左右方向)に規則的に配列された微細凹部Pを形成することができる。
【0027】
ここで、フォームローラ11の凸部11aは、先述の如く、被加工物(シリンダブロックCB)の材料のスプリングバック量を見込んだ形状となっている。具体的には、図7に示すように、微細凹部Pの形状がシリンダボアBの円周方向を長辺とする矩形状である場合、凸部11aは、図3(c)及び図5(a)に示すように、先端部の長辺の曲率半径rをシリンダボアBの内周面Baの曲率半径Rよりも小さくし、フォームローラ11をシリンダボアBの内周面Baに押付けた際に、凸部11aの両端部の内側がより深く内周面Baに押付けられるようにする。
【0028】
これに対して、図6は、凸部11aの長辺の曲率半径rがシリンダボアBの内周面Ba曲率半径Rと同一の場合、又は凸部11aの先端が平面である場合を示す図である。このような凸部11aを有するフォームローラ11を用いて微細凹部Pを形成すると、図6(b)に示すように、塑性加工による材料のスプリングバックの影響により、微細凹部Pの底部が盛り上がって中央部の深さが周辺部に対して小さくなり、このように微細凹部Pの深さが不均一になると、シリンダボアBの内周面Baの摺動抵抗を充分に低減することが困難になる。
【0029】
そこで、フォームローラ11の凸部11aを被加工物の材料のスプリングバック量を見込んだ形状とすることで、図5(b)に示すように、材料のスプリングバックが生じても結果的に深さが均一な微細凹部Pを形成することができ、シリンダボアBの内周面Baの摺動抵抗を充分に低減し得るものとなる。
【0030】
このように、上記実施例で説明した微細凹部加工装置1及び加工方法によれば、シリンダボアBの内周面Baの軸線に沿う方向及び円周方向の広い範囲にわたって、微細凹部Pを規則的な配置で正確に効率良く形成することができると共に、被加工物(シリンダブロックCB)の材料のスプリングバックによる影響を解消して、規定通りの形状の微細凹部Pを高精度に形成することができ、これによりシリンダボアBの内周面(摺動面)Baの摺動抵抗が充分に低減された摺動部材すなわちシリンダブロックCBを提供することができる。
【0031】
また、上記の微細凹部加工装置1及び加工方法によれば、シリンダボアの内周面の軸線と平行な回転軸を中心にして回転するフォームローラを用いた従来の加工と比較すると、シリンダボアBの内周面Baの軸線に直交する回転軸14を中心にして回転するフォームローラ11を採用したことにより、同内周面Baの軸線に沿う方向の配列において、微細凹部Pの円周方向のずれを防止するだけでなく、円周方向における微細凹部Pの数が少ない場合には、同内周面Baの全体にわたって従来の加工よりも短時間で微細凹部Pを規則的に形成することができる。
【0032】
さらに、上記の微細凹部加工装置1及び加工方法によれば、従来の加工に比べて、フォームローラ11の作製が非常に容易になる。つまり、図7に示す矩形状の微細凹部Pを形成する場合、内周面の軸線回りに転動する従来のフォームローラでは、図4に一部を示すように外周部に所定間隔で凸部11aを有し、各凸部11aは、長辺がフォームローラ11の円周方向に沿う向きになる。
【0033】
このような従来のフォームローラにおいて、各凸部11aを被加工物の材料のスプリングバック量を見込んだ形状、すなわち凸部11aの長辺をフォームローラ11の曲率半径と異なる曲率半径にして先端面を曲面に加工し、必要に応じて先端面と側面との角部も所定の曲率半径の曲面に加工しようとすると、各凸部11aが上述の如く長辺を円周方向とする向きであるから、多数の凸部11aに対して個別に曲面加工を施さねばならず、フォームローラの作製に多くの手間と時間がかかる。
【0034】
これに対して、上記実施例で説明したフォームローラ11は、内周面Baの軸線に沿う方向に転動することから、凸部11aの向きが上記従来のものと90度異なり、長辺がフォームローラ11の幅方向に沿う向きとなる。このため、各凸部11aが上記の如く曲面を有するものであっても、個々の曲面が円周方向に連続しているとみなすことができるので、複数の凸部11aに対して同時に又は連続的に曲面加工を施すことが可能となり、従来のものに比べて手間と時間を節減して容易に作製することができる。
【0035】
また、当該微細凹部加工装置1は、シリンダボアBの内周面Baに微細凹部Pを形成する際に、荷重付与手段(圧縮コイルばね18)による負荷を変更することで、内周面Baの特定範囲における微細凹部Pの深さを意図的に変化させることも可能である。
【0036】
さらに、当該微細凹部加工装置1は、工具ホルダ10を内周面Baの軸線回りに回転させながら、フォームローラ11を内周面Baの軸線に沿う方向に移動(転動)させることにより、図8に示すように、内周面Baの軸線回りの螺旋に沿って微細凹部Pを形成すると共に、これを円周方向に複数条形成することができ、さらには、主軸ヘッド2とともに工具ホルダ10を連続的に上下動させることにより、ジグザグ状の螺旋に沿って微細凹部Pを形成することもできる。
【0037】
上記のように、内周面Baの軸線回りの螺旋に沿って微細凹部Pを形成した場合には、軸線に沿う方向の微細凹部Pの配列としては円周方向にずれたことになるが、これは従来において問題点とした不規則なずれではなく、均一なずれであって、微細凹部Pを規則的な配置で形成したことに変わりはなく、摺動抵抗の低減に貢献することができる。
【0038】
図9は、本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を説明する図である。図示の微細凹部加工装置31は、工具ホルダ10のボディ部10Aに、フォームローラ11を支持するローラ支持部材であるアーム12を直接固定したものであり、水平に移動可能なテーブル(図2参照)の作動により、シリンダボアBの内周面Baに対するフォームローラ11の押し付け力を調整することができる。
【0039】
上記の微細凹部加工装置31では、工具ホルダ10におけるハウジングや荷重付与手段である圧縮コイルばね等の構成を省略して、装置構造を簡略化することができ、これにより微細凹部加工装置の製造コストを大幅に低減することができる。
【0040】
図10は、本発明の微細凹部加工装置のさらに他の実施例を説明する図である。先の各実施例では、被加工物における円形孔である円周状被加工面として、シリンダブロックCBにおけるシリンダボアBの内周面Baを例示していたのに対して、この実施例の微細凹部加工装置41は、被加工物における円柱部の外周面である円周状被加工面として、シャフトSTにおける円柱部Cの外周面Caを例示している。
【0041】
図示の微細凹部加工装置41は、回転駆動される主軸42及びチャッキング装置43を設けた主軸台44と、主軸42と同軸上にセンタ45を設けた心押し台46と、主軸台44に向けて心押し台46を進退させるスライド47を備え、チャッキング装置43でシャフトSTの一端部を把持すると共に、センタ45でシャフトSTの多端部を回転自在に支持することにより、シャフトSTを軸線回りに回転駆動する。
【0042】
また、微細凹部加工装置41は、工具ホルダ50に、回転軸14を介してフォームローラ11を回転自在に支持するローラ支持部材としてのアーム12と、アーム12を保持する半径方向移動手段48と、アーム12とともに半径方向移動手段48を保持する軸線方向移動手段49を備えている。
【0043】
半径方向移動手段48は、被加工物(シャフトST)及び工具ホルダ50の少なくとも一方を円周状被加工面(円柱部Cの外周面Ca)の半径方向に移動させてフォームローラ11の凸部を円周状被加工面(円柱部Cの外周面Ca)に圧接させるものであり、この実施例では工具ホルダ50を移動させる。
【0044】
また、軸線方向移動手段49は、被加工物(シャフトST)及び工具ホルダ50の少なくとも一方を円周状被加工面(円柱部Cの外周面Ca)の軸線に沿う方向に移動させるものであり、この実施例では工具ホルダ50を移動させる。
【0045】
さらに、この実施例では、主軸42が、被加工物(シャフトST)及び工具ホルダ50の少なくとも一方を円周状被加工面(円柱部Cの外周面Ca)の軸線回りに回転させる回転駆動手段に相当し、ここでは被加工物(シャフトST)を回転駆動する。
【0046】
上記の微細凹部加工装置41は、半径方向移動手段48により、シャフトSTの円柱部Cの外周面Caにフォームローラ11を圧接させて、軸線方向移動手段49で工具ホルダ50を外周面Caの軸線に沿う方向に移動させることにより、フォームローラ11を転動させて外周面Caに微細凹部Pを連続的に形成する。
【0047】
また、微細凹部加工装置41は、上記の微細凹部Pの形成の間に、主軸42によりシャフトSTを間歇的に回転又は連続的に回転させることにより、外周面Caの広い範囲にわたって、同外周面Caの軸線方向及び円周方向に規則的に微細凹部Pを効率良く形成(図7参照)、又は同外周面Ca軸線回りの螺旋及び円周方向に沿って規則的に微細凹部Pを効率良く形成(図8参照)することができる。
【0048】
本発明の微細凹部加工装置及び加工方法は、上記の実施例に挙げたシリンダブロックCBやシャフトSTのほか、具体的には、自動車用エンジンを構成するクランクシャフトやカムシャフト等のシャフト類、ピストン及びピストンピンなどの摺動面を有する各種摺動部材に適用することができ、これらの摺動部材の円周状摺動面に対して、深さが均一な微細凹部Pを規則的に効率良く形成することができ、摺動抵抗が小さい優れた摺動部材を提供することができる。
【0049】
また、微細凹部や材料のスプリングバック量を見込んだ凸部は、その形状が上記実施例に限定されることはなく、目的の摺動抵抗に応じて微細凹部の形状を変更することも可能であり、さらに、凸部にあっては、実施例のように先端面を曲面とするほか、球面や、複数の平面から形成した尖頭状あるいは錘状などの適宜形状を選択し得る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の微細凹部加工装置の一実施例を説明する断面図である。
【図2】微細凹部加工装置の全体を説明する斜視図である。
【図3】フォームローラを説明する正面図(a)、側面図(b)及び外周部の断面図(c)である。
【図4】従来のフォームローラの一部を説明する側面図である。
【図5】本発明のフォームローラの凸部形状を説明する微細凹部形成時の断面図(a)及び微細凹部形成後の断面図(b)である。
【図6】比較例としてのフォームローラの凸部形状を説明する微細凹部形成時の断面図(a)及び微細凹部形成後の断面図(b)である。
【図7】形成した微細凹部の配列を説明する内周面の部分平面図である。
【図8】形成した微細凹部の他の配列を説明する内周面の部分平面図である。
【図9】本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を説明する断面図である。
【図10】本発明の微細凹部加工装置のさらに他の実施例を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0051】
B シリンダボア(円形孔)
Ba 内周面(円周状被加工面)
CB シリンダブロック(被加工物)
C 円柱部
Ca 外周面(円周状被加工面)
P 微細凹部
ST シャフト(被加工物)
1 31 42 微細凹部加工装置
2 主軸ヘッド(軸線方向移動手段)
3 42 主軸(回転駆動手段)
4 テーブル(半径方向移動手段)
10 50 工具ホルダ
11 フォームローラ
11a 凸部
12 アーム(ローラ支持部材)
14 回転軸
18 圧縮コイルばね(荷重付与手段)
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年11月24日(2006.11.24)
【代理人】 【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲


【公開番号】 特開2008−126303(P2008−126303A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−317115(P2006−317115)