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【発明の名称】 フローフォーミング成形方法及びフローフォーミング成形装置
【発明者】 【氏名】茂木 清二

【要約】 【課題】ワークを薄肉化したとしてもワークの薄肉部分に割れが生じ難いフローフォーミング成形方法及びフローフォーミング成形装置の提供。

【構成】第1フォーミングローラ53による円盤部21の拡径と第2フォーミングローラ63による外周面21aの拘束とを繰り返し行うことにより、円盤部21の外周面21aを自己発熱させて昇温するようにした。これにより、円盤部21の外周面21aにおける延性限界を高めることができるので、円盤部21の外周面21aにおける割れが生じ難くなってワーク20の薄肉化に対応することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの円盤部の一方の端面が突き当てられる突き当て面を有するマンドレル金型により前記ワークを回転した状態のもとで、前記円盤部を薄肉化して大径に塑性加工するフローフォーミング成形方法であって、
前記円盤部の他方の端面に押し付けられる第1の回転工具により前記円盤部を押し付けるとともに、押し付けにより拡径した前記円盤部の外周面を第2の回転工具により拘束し、前記円盤部を自己発熱により昇温する工程と、
昇温された円盤部を前記第1の回転工具を径方向外方に移動させて大径に延伸加工する工程とを有することを特徴とするフローフォーミング成形方法。
【請求項2】
請求項1記載のフローフォーミング成形方法において、前記第1の回転工具により前記円盤部を延伸加工する際に、前記第2の回転工具により前記円盤部の外周面を拘束しながら前記第1の回転工具と同期させて前記第2の回転工具を径方向外方に移動させることを特徴とするフローフォーミング成形方法。
【請求項3】
ワークの円盤部を薄肉化して大径に塑性加工するフローフォーミング成型装置であって、
前記円盤部の一方の端面が突き当てられる突き当て面を有し前記ワークを回転するマンドレル金型と、
前記ワークが回転された状態のもとで前記円盤部の他方の端面から押し付けて前記円盤部を薄肉に加工するとともに、前記円盤部の径方向外方に移動させて前記円盤部を径方向外方に延伸加工する第1の回転工具と、
押し付けにより拡径した前記円盤部の外周面を前記ワークが回転された状態のもとで拘束し、拡径と拘束との繰り返しにより前記円盤部を自己発熱により昇温する第2の回転工具とを有することを特徴とするフローフォーミング成形装置。
【請求項4】
請求項3記載のフローフォーミング成形装置において、前記第1の回転工具により前記円盤部を延伸加工する際に、前記第2の回転工具により前記円盤部の外周面を拘束しながら前記第1の回転工具と同期させて前記第2の回転工具を径方向外方に移動させることを特徴とするフローフォーミング成形装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの円盤部を薄肉化して大径に塑性加工するフローフォーミング成形方法及びフローフォーミング成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属よりなるワークを塑性変形させて所定形状に成形する加工方法としては、例えば、板状またはパイプ状のワークを駆動機構(回転モータ)に支持させて、駆動機構によって回転するワークを回転工具(フォーミングローラ)によって塑性変形させるスピニング加工(へら絞り加工)が知られている。このスピニング加工は、比較的薄肉(例えば3mm)の板状またはパイプ状のワークを、それぞれ例えば、椀状または蛇腹状に屈曲成形するための加工方法の一つとなっている。
【0003】
また、前記板状またはパイプ状のワークよりも比較的厚みのあるワーク、例えば、直径寸法150mm,厚み寸法30mmの円盤状の金属ブロック等よりなるワークを、塑性変形させて所定形状に成形する加工方法としては、例えば、フローフォーミング加工が知られている。このフローフォーミング加工は、駆動機構によって回転するワークに対して、所定圧の外力を回転工具によって加えることにより、ワークを塑性流動変形させ、金属ブロックを種々の形状、例えば、段付筒状体等に成形するための加工方法の一つとなっている。
【0004】
室温雰囲気、つまり冷間雰囲気でワークの塑性変形を行うフローフォーミング成形方法としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られており、この特許文献1に記載された技術は、回転される円盤状のワークを、フォーミングローラと背圧付与ローラとを用いて成形することにより、軸方向に延びる円筒部をワークに対して一体成形するようにしている。フォーミングローラはワークを塑性変形させて円筒部を成形し、背圧付与ローラは円筒部の開放端面部を押し当てるようなっており、これにより、開放端面部における塑性流動変形が抑制され、当該部分における割れやしわの発生を抑えることができる。
【特許文献1】特開2005−103563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたフローフォーミング成形方法によれば、例えば、被加工対象物となる部品の軽量化等に対応するために、円筒部をより薄肉化するような場合においては、冷間雰囲気で成形(冷間成形)することから円筒部の薄肉化を進めていくうちに当該部分が延性限界を超えてしまい、これにより円筒部の開放端面部において割れが発生するおそれがある。したがって、特許文献1に記載されたフローフォーミング成形方法では、ワークの薄肉化への対応に限界があり、被加工対象物である部品の軽量化等のニーズに十分に対応することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、ワークを薄肉化したとしてもワークの薄肉部分に割れが生じ難いフローフォーミング成形方法及びフローフォーミング成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフローフォーミング成形方法は、ワークの円盤部の一方の端面が突き当てられる突き当て面を有するマンドレル金型により前記ワークを回転した状態のもとで、前記円盤部を薄肉化して大径に塑性加工するフローフォーミング成形方法であって、前記円盤部の他方の端面に押し付けられる第1の回転工具により前記円盤部を押し付けるとともに、押し付けにより拡径した前記円盤部の外周面を第2の回転工具により拘束し、前記円盤部を自己発熱により昇温する工程と、昇温された円盤部を前記第1の回転工具を径方向外方に移動させて大径に延伸加工する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のフローフォーミング成形方法は、前記第1の回転工具により前記円盤部を延伸加工する際に、前記第2の回転工具により前記円盤部の外周面を拘束しながら前記第1の回転工具と同期させて前記第2の回転工具を径方向外方に移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明のフローフォーミング成形装置は、ワークの円盤部を薄肉化して大径に塑性加工するフローフォーミング成型装置であって、前記円盤部の一方の端面が突き当てられる突き当て面を有し前記ワークを回転するマンドレル金型と、前記ワークが回転された状態のもとで前記円盤部の他方の端面から押し付けて前記円盤部を薄肉に加工するとともに、前記円盤部の径方向外方に移動させて前記円盤部を径方向外方に延伸加工する第1の回転工具と、押し付けにより拡径した前記円盤部の外周面を前記ワークが回転された状態のもとで拘束し、拡径と拘束との繰り返しにより前記円盤部を自己発熱により昇温する第2の回転工具とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のフローフォーミング成形装置は、前記第1の回転工具により前記円盤部を延伸加工する際に、前記第2の回転工具により前記円盤部の外周面を拘束しながら前記第1の回転工具と同期させて前記第2の回転工具を径方向外方に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、円盤部の他方の端面に押し付けられる第1の回転工具により円盤部を押し付けるとともに、押し付けにより拡径した円盤部の外周面を第2の回転工具により拘束し、円盤部を自己発熱により昇温する工程と、昇温された円盤部を第1の回転工具を径方向外方に移動させて大径に延伸加工する工程とを有するので、円盤部の外周面を昇温させて当該部分における延性限界を高めることができる。したがって、円盤部の外周面における割れが生じ難くなってワークの薄肉化に対応することができる。この場合、第1の回転工具により円盤部を延伸加工する際に、第2の回転工具により円盤部の外周面を拘束しながら第1の回転工具と同期させて第2の回転工具を径方向外方に移動させることにより、ワークを薄肉化することができる。
【0012】
本発明によれば、フローフォーミング成形装置を、円盤部の一方の端面が突き当てられる突き当て面を有しワークを回転するマンドレル金型と、ワークが回転された状態のもとで円盤部の他方の端面から押し付けて円盤部を薄肉に加工するとともに、円盤部の径方向外方に移動させて円盤部を径方向外方に延伸加工する第1の回転工具と、押し付けにより拡径した円盤部の外周面をワークが回転された状態のもとで拘束し、拡径と拘束との繰り返しにより円盤部を自己発熱により昇温する第2の回転工具とから構成したので、簡単な構成の汎用フローフォーミング成形装置を用いることができる。この場合、第1の回転工具により円盤部を延伸加工する際に、第2の回転工具により円盤部の外周面を拘束しながら第1の回転工具と同期させて第2の回転工具を径方向外方に移動させることにより、円盤部の外周面を昇温させ、当該部分における割れを生じ難くしてワークを薄肉化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明におけるフローフォーミング成形装置を示す部分断面図を、図2は図1の装置によって成形されるワークの成形手順を示す成形工程図をそれぞれ表している。図3はワークの拡径作業における第1段階を説明する部分拡大断面図を、図4はワークの拡径作業における第2段階を説明する部分拡大断面図を、図5はワークの拡径作業における第3段階を説明する部分拡大断面図をそれぞれ示している。また、図6はワークの外周部における昇温のメカニズムを説明する説明図を示している。
【0015】
本発明の一実施の形態におけるフローフォーミング成形装置10は、駆動機構としての回転モータ(図示せず)によって回転する回転部材11に固定され、ワーク20がセットされるマンドレル金型30と、マンドレル金型30の図中上方の回転部材11における軸線上に配置され、ワーク20をマンドレル金型30に向けて押圧する押圧機構40と、ワーク20の軸方向からワーク20を押圧する第1ローラ機構50と、ワーク20の径方向からワーク20を拘束する第2ローラ機構60とを有している。
【0016】
マンドレル金型30は、回転部材11に対して、例えば4本のボルト12(図では2本のみ示す)によって固定されており、回転モータの回転力が回転部材11を介してマンドレル金型30に伝達されるようになっている。マンドレル金型30は、図示しないコントローラ(制御装置)によって所定速度で回転駆動されるようになっており、マンドレル金型30の回転速度は、成形すべきワーク20の材質(金属組成)や成形形状等(厚み寸法等)によって、適宜調節されるようになっている。
【0017】
マンドレル金型30は、ワーク20よりも高硬度の金属材料によって略円柱形状に形成されており、マンドレル金型30の図中上方には突き当て面31が形成されている。この突き当て面31には、ワーク20の一方側の端面(図中下方側の端面)が突き当てられるようになっており、突き当て面31には、図3に示すように、ワーク20の後述する中央筒部71を支持する第1凹所32と、ワーク20の一方側の端面を形作る環状凸部33および環状凹部34とが形成されている。また、第1凹所32のさらに径方向内側には、押圧機構40に設けられる押圧金型42の円柱部42aが入り込む第2凹所35が形成されている。
【0018】
押圧機構40は、図示しないスライドアクチュエータ等の駆動機構によって、図中上下方向に移動可能な昇降シャフト41と、昇降シャフト41の先端側(図中下方側)に一体的に固定され、中心軸線がマンドレル金型30の中心軸線と一致するようにマンドレル金型30に対向して設けられる略円柱形状の押圧金型42とを有している。昇降シャフト41は、押圧金型42を介してワーク20をマンドレル金型30に対して所定圧(例えば40トン)で押圧するとともに、マンドレル金型30の回転に追従して回転し、これにより、フローフォーミング成形時におけるワーク20のスリップ(滑り回転)を防止するようにしている。
【0019】
押圧金型42の先端側(図中下方側)には、押圧金型42の本体部分よりも小径で、マンドレル金型30の第2凹所35の内部に挿入可能な円柱部42aが一体成形されている。また、この円柱部42aの径方向外側には、ワーク20をマンドレル金型30との間で挟持するとともにワーク20の図中上側面を形作る環状押圧部42bが一体成形されている。なお、押圧金型42についても、ワーク20よりも高硬度の金属材料によって成形されている。
【0020】
第1ローラ機構50は、図示しないスライドアクチュエータ等の駆動機構によって、図中上下左右方向に移動可能なシャフト部材51と、シャフト部材51の先端側(図中下端側)に一体的に固定され、第1の回転工具としての第1フォーミングローラ53を回転自在に支持する支持ブロック52とを有している。
【0021】
支持ブロック52には、第1フォーミングローラ53の回転中心となる回転軸54が固定されており、この回転軸54には、一対の円すいころ軸受55a,55bを介して第1フォーミングローラ53が装着されている。回転軸54には、一端側が一対の円すいころ軸受55a,55b間に連通し、他端側が回転軸54の軸心部分を介して外部に連通する略L字形状の連通孔54aが設けられ、この連通孔54aを介して、円すいころ軸受55a,55b間に定期的に摺動グリスを注入することにより、第1フォーミングローラ53を略摺動抵抗無く円滑に回転できるようにしている。
【0022】
第1フォーミングローラ53は、略算盤珠形状に形成されており、その外周側にはワーク20の円盤部21の他方の端面(図中上方側の端面)を押圧する断面が半円弧形状の環状の円弧部53aが成形されている。そして、マンドレル金型30にセットされるワーク20の中心軸と、第1フォーミングローラ53を回転自在に支持する回転軸54の中心軸とは、略45°の角度差を有しており、これにより、図1中破線で示すように、第1フォーミングローラ53の円弧部53aがワーク20の円盤部21の軸方向から臨んで、円盤部21を軸方向に対して所定圧で押圧可能となっている。
【0023】
第2ローラ機構60は、押圧機構40を挟むようにして、第1ローラ機構50に対して対向配置されており、この第2ローラ機構60は、図示しないスライドアクチュエータ等の駆動機構によって、図中上下左右方向に移動可能なシャフト部材61と、シャフト部材61の先端側(図中下端側)に一体的に固定され、第2の回転工具としての第2フォーミングローラ63を回転自在に支持する支持ブロック62とを有している。
【0024】
支持ブロック62には、第2フォーミングローラ63の回転中心となる回転軸64が固定されており、この回転軸64には、一対の円すいころ軸受65a,65bを介して第2フォーミングローラ63が装着されている。回転軸64には、一端側が一対の円すいころ軸受65a,65b間に連通し、他端側が回転軸64の軸心部分を介して外部に連通する略L字形状の連通孔64aが設けられ、この連通孔64aを介して、円すいころ軸受65a,65b間に定期的に摺動グリスを注入することにより、第2フォーミングローラ63を略摺動抵抗無く円滑に回転できるようにしている。
【0025】
第2フォーミングローラ63は、略円すい台形状に形成されており、その外周側には、ワーク20における円盤部21の外周面21aを径方向外側から拘束する垂直壁部63aが成形されている。そして、マンドレル金型30にセットされるワーク20の中心軸と、第2フォーミングローラ63を回転自在に支持する回転軸64の中心軸とは、略30°の角度差を有しており、これにより、図1中破線で示すように、第2フォーミングローラ63の垂直壁部63aがワーク20の円盤部21の径方向から臨んで、円盤部21の外周面21aを径方向に対して拘束可能となっている。
【0026】
ここで、第1フォーミングローラ53と第2フォーミングローラ63とのそれぞれは、マンドレル金型30によって回転するワーク20に圧接されることで回転するようになっている。また、第1フォーミングローラ53及び第2フォーミングローラ63についても、ワーク20よりも高硬度の金属材料によって成形されている。
【0027】
このように構成されるフローフォーミング成形装置10によって成形されるワーク20は、例えば、自動車等の車両におけるデファレンシャルのケース用部品(ケース蓋等)として成形するもので、図2のSTEP3に示すような形状となっている。ケース用部品70(ワーク20の完成品)は、図2のSTEP3に示すように、中央筒部71と、中央筒部71の外周側に接続される環状の底壁部72と、底壁部72の外周側に接続される段付ボス部73と、段付ボス部73の図中下端側に接続され、径方向外側に延びるフランジ部74と、フランジ部74よりも図中下方側に突出する環状突起75とを備えている。
【0028】
ケース用部品70を成形するに当たり、まず、図2のSTEP1に示す形状のワーク20を準備する。このワーク20は、所定形状の金型を用いることにより別の成形工程(第1成形工程)で成形された熱間鍛造成形品であり、このワーク20は、直径寸法が略150mmで厚み寸法が略30mmの円盤状の金属ブロックとなっている。なお、ワーク20には、第1成形工程(鍛造成形工程)によって中央筒部71と底壁部72とが予め一体成形されている。
【0029】
第1成形工程によって熱間鍛造成形されたワーク20を、例えば、切削加工等により仕上げた後、フローフォーミング成形装置10におけるマンドレル金型30の突き当て面31にセット(図1参照)して押圧機構40の昇降シャフト41を下降し、押圧金型42によってワーク20をマンドレル金型30に押圧固定した状態で、フローフォーミング成形装置10によって図2のSTEP2に示す形状に成形する(第2成形工程)。この第2成形工程では、ワーク20の円盤部21を、径方向外側から第1フォーミングローラ53と第2フォーミングローラ63とを臨ませて部分的にフローフォーミング成形しており、この第2成形工程のフローフォーミング成形により円筒形状の段付ボス部73を成形するようにしている。
【0030】
このように第1成形工程および第2成形工程を終えたワーク20は、以下に説明する本発明に係るフローフォーミング成形工程(第3成形工程)を経て、最終的に完成品、つまり、図2のSTEP3に示すケース用部品70となる。以下、本発明の一実施の形態におけるフローフォーミング成形装置10の動作(第3成形工程の動作)について詳細に説明する。
【0031】
第3成形工程においては、フローフォーミング成形装置10におけるマンドレル金型30の突き当て面31と押圧金型42との間にスリップ止めされて配置されたワーク20に対して、図2のSTEP3に示す比較的薄肉のフランジ部74を成形する作業を行う。
【0032】
まず、第2成形工程を終えた状態で、引き続きコントローラ(制御装置)により回転モータ(駆動機構)を所定速度(例えば200〜800rpm)で回転駆動してワーク20を回転駆動させる。その後、回転するワーク20に対して、第1ローラ機構50を図中上下左右方向に位置制御して、第1ローラ機構50を構成する第1フォーミングローラ53の円弧部53aを、円盤部21に対して図中上方から臨ませる。このとき、第2ローラ機構60の第2フォーミングローラ63は、図3に示すようにコントローラによって位置制御され、ワーク20における円盤部21の外周面21aに対する径方向外側において、所定距離をもって臨むように配置され、その場所で停止(待機)されている。
【0033】
その後、第1ローラ機構50を所定の下降速度(例えば20〜300mm/min)で駆動制御(位置制御)して、第1フォーミングローラ53を円盤部21の図中上方側の端面に押し付けることにより円盤部21を塑性流動変形(塑性加工)させ、拡径して薄肉化していく。すると、円盤部21の拡径に伴って外周面21aが第2フォーミングローラ63の垂直壁部63aに当接するようになる(図4参照)。このようにして、円盤部21の拡径作業における第1段階を終える。
【0034】
ここで、塑性流動変形時に生じる円盤部21からの過剰な発熱を抑制するとともに第1フォーミングローラ53の移動を滑らかにするために、図中破線で示すように、クーラント溶液Lを第1フォーミングローラ53の円弧部53a近傍に供給または散布するようにしても良い。
【0035】
円盤部21の拡径作業における第1段階に引き続き、第1フォーミングローラ53による円盤部21の拡径作業を継続して行い、これにより、円盤部21の塑性流動変形が継続して行われ、円盤部21の拡径作業が継続される。このとき、第2フォーミングローラ63の垂直壁部63aが円盤部21の外周面21aに当接して外周面21aを拘束しているので、第1フォーミングローラ53によって拡径された円盤部21の拡径部分(図6中一点鎖線)が、第2フォーミングローラ63によって径方向内側に縮径される。その後、縮径された円盤部21は、ワーク20の回転に伴って、再び第1フォーミングローラ53によって拡径される。このように、円盤部21の拡径と縮径(拘束)とが繰り返されること、つまり、塑性流動変形が短時間で繰り返されることにより、円盤部21の外周面21aが自己発熱し、再結晶温度以下の温度(例えば、400〜700℃)まで昇温される。このようにして、円盤部21の拡径作業における昇温工程としての第2段階を終える。
【0036】
円盤部21の拡径作業における第2段階に引き続き、第1ローラ機構50と第2ローラ機構60とを同期させて駆動制御(位置制御)して、それぞれを径方向外方に離間するように所定の同じ離間速度(例えば50〜400mm/min)で移動させる。すると、円盤部21の外周面21aが昇温された状態で円盤部21の拡径作業が継続されて、円盤部21が薄肉化されていく。このとき、円盤部21の外周面21aは、塑性流動変形を繰り返すことにより400〜700℃に昇温されているので、温間成形に略等しい成形条件となっており、したがって、円盤部21の延性限界は高くなっている。よって、円盤部21は容易に変形可能な状態が保持されている。このようにして、円盤部21の拡径作業における第3段階(延伸加工工程)を終える。ここで、上記各ローラ機構50及び60の離間速度は、ワーク20から放熱する放熱量よりも昇温による発熱量が上回るように調節するようにする。
【0037】
このように、第1段階から第3段階を順次終えることにより、ワーク20の円盤部21は、マンドレル金型30の突き当て面31の形状に倣って塑性流動変形して薄肉化され、最終的にケース用部品70(図2参照)のフランジ部74を成形することができる。
【0038】
ここで、上述のように円盤部21の外周面21aを昇温した場合と、第2フォーミングローラ63で外周面21aを拘束せずに昇温しなかった場合とで、ワーク20の完成品における直径寸法を比較した。その結果、前者(昇温した場合)は略172mmで後者(昇温しなかった場合)は略161mmとなり、約6%の直径寸法の拡大を図ることができた。
【0039】
以上詳述したように、本発明における一実施の形態によれば、昇温工程と延伸加工工程とを有するので、円盤部21の外周面21aを昇温させて当該部分における延性限界を高めることができる。したがって、円盤部21の外周面21aにおける割れが生じ難くなってワーク20の薄肉化に対応することができ、被加工対象物であるケース用部品70の軽量化を図ることができる。
【0040】
また、ワーク20の回転に応じて円盤部21の外周面21aを自己発熱により昇温させるようにしたので、別途、電気抵抗加熱器等の加熱装置を設ける必要が無く、フローフォーミング成形装置の大型化を回避できるとともに、省エネ化を図ることができる。
【0041】
さらに、本発明における一実施の形態によれば、円盤部21の一方の端面が突き当てられる突き当て面31を有しワーク20を回転するマンドレル金型30と、ワーク20が回転された状態のもとで円盤部21の他方の端面から押し付けて円盤部21を薄肉に加工するとともに、円盤部21の径方向外方に移動させて円盤部21を径方向外方に延伸加工する第1フォーミングローラ53と、押し付けにより拡径した円盤部21の外周面21aをワーク20が回転された状態のもとで拘束し、拡径と拘束との繰り返しにより円盤部21を自己発熱により昇温する第2フォーミングローラ63とから構成したので、簡単な構成の汎用フローフォーミング成形装置を用いることができる。この場合、第1フォーミングローラ53及び第2フォーミングローラ63を、コントローラ等によってワーク20に対して適宜位置制御することにより、円盤部21の外周面21aを任意の温度に自己発熱させることができるので、ワーク20の材質(金属組成)に係らず当該部分における割れを生じ難くして薄肉化することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態においては、押圧機構40が起立するように垂直状態でフローフォーミング成形装置10を使用するものについて説明したが、本発明はこれに限らず、押圧機構が地面に対して水平となるように水平状態で使用するフローフォーミング成形装置にも適用することができる。
【0043】
また、上記実施の形態においては、フローフォーミング成形装置10によって成形されるワークを、段付ボス部73を有するワーク20を対象としたものを示したが、本発明はこれに限らず、段付ボス部等の円筒部を備えない、単純な円盤形状のワークにも適用することができる。要は、軸方向から挟んで固定可能な形状であればその形状は問わず、冷間成形において薄肉化が必要な各種ワークに適用することができる。
【0044】
さらに、上記実施の形態においては、第1フォーミングローラ53と第2フォーミングローラ63とを、それぞれ対向配置して1つずつ設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、いずれか一方または他方を複数設けたり、両方を複数設けたりしても良い。この場合、各フォーミングローラを対向するように配置(180°配置)しなくとも、例えば、60°間隔で交互に配置するようにしても構わない。
【0045】
また、上記実施の形態においては、第1及び第2の回転工具として、それぞれ略算盤珠形状及び円すい台形状に形成した第1及び第2フォーミングローラ53,63を用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ボール形状(球状)の回転工具を用いることもできる。
【0046】
さらに、上記実施の形態においては、冷間成形するワーク20を対象にしたものを示したが、本発明はこれに限らず、温間成形や熱間成形するワークを対象とすることもでき、要は、ワークの延性限界を高める必要があるフローフォーミング成形に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明におけるフローフォーミング成形装置を示す部分断面図である。
【図2】図1の装置によって成形されるワークの成形手順を示す成形工程図である。
【図3】ワークの拡径作業における第1段階を説明する部分拡大断面図である。
【図4】ワークの拡径作業における第2段階を説明する部分拡大断面図である。
【図5】ワークの拡径作業における第3段階を説明する部分拡大断面図である。
【図6】ワークの外周部における昇温のメカニズムを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10 フローフォーミング成形装置
20 ワーク
21 円盤部(ワーク)
21a 外周面
30 マンドレル金型
31 突き当て面
53 第1フォーミングローラ(第1の回転工具)
63 第2フォーミングローラ(第2の回転工具)
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成18年9月4日(2006.9.4)
【代理人】 【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和

【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高

【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子


【公開番号】 特開2008−55494(P2008−55494A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−238538(P2006−238538)