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【発明の名称】 コネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法
【発明者】 【氏名】熊谷 正男

【氏名】安岡 徹

【氏名】大関 幸雄

【氏名】志田 浩次

【要約】 【課題】コネクティングロッドの大端孔の内周面に一対のクラッキング溝を確実且つ低コストで形成することにある。

【構成】ホルダ18のスリット20内に略平行に軸支された一対の回転転造手段30a、30bを流体圧シリンダ14によって降下させ、前記一対の回転転造手段30a、30bの刃部22を前記コネクティングロッド24の大端部38の大端孔26における内周面の相互に対向する位置に当接させる。続いて、さらに前記一対の回転転造手段30a、30bを降下させ、該一対の回転転造手段30a、30bの刃部22を自転させることによって前記大端孔26の相互に対向する内周面に断続的な直線状の溝からなる一対のクラッキング溝が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大端部と小端部を有し、一体成形されたコネクティングロッドを、ロッド部とキャップ部とに破断分離するために前記大端部の大端孔における内周面の対向する位置に一対のクラッキング溝を形成するコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法において、
ホルダに略平行に軸支された一対の回転転造手段を昇降機構によって降下させ、前記一対の回転転造手段の刃部を前記コネクティングロッドの大端部の大端孔における内周面の相互に対向する位置に当接させた後、さらに前記一対の回転転造手段を降下させて該一対の回転転造手段の刃部を自転させることによって前記大端孔の相互に対向する内周面に断続的な直線状の溝が形成されることを特徴とするコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用のエンジンを構成するコネクティングロッドが一体成形された後、前記コネクティングロッドの大端孔の内周面に該コネクティングロッドをキャップ部とロッド部とに破断分離するためのクラッキング溝を形成するコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用のエンジンのクランクシャフトとピストンとを連結するためにコネクティングロッド(以下、単にコンロッドという)が用いられている。
【0003】
このコンロッドは、その一端部側の大端部に形成される大端孔の内周面に軸受が装着され、前記クランクシャフトのジャーナルを軸支すると共に、他端部側の小端部に形成される小端孔には別個の軸受を介してピストンに挿通されるピストンピンが挿入される。
【0004】
そして、一般的に、前記コンロッドは鍛造成形によって形成され、予めコンロッド本体である軸部(ロッド部)とキャップ部とをそれぞれ別個に製造する方法と、前記コンロッドを一体的に製造した後に前記軸部(ロッド部)と前記キャップ部とに分離するコンロッドのクラッキング製造方法が知られている。
【0005】
一体に製造されたコンロッドを前記軸部とキャップ部とに分離する場合には、先ず大端部に形成される大端孔の内周面における軸部とキャップ部との境界となる位置に、一対の破断促進用の溝を対向するように形成している。この溝は、コンロッドの成形段階又は成形後に加工用切削工具によるブローチ加工やレーザ加工によって所定深さに形成される。例えば、特許文献1にはエンドミルカッタによって溝加工を遂行することが記載されている。
【0006】
このような加工装置では、治具の外周面に軸線方向に沿ってブローチ刃が形成され、前記治具をコンロッドの大端孔に挿入して該大端孔の内周面にブローチ刃を当接させながら変位させる。これにより、大端孔の内周面に軸線方向に沿ってブローチ溝を形成している(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−205238号公報
【特許文献2】特許第3012510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記特許文献2に開示されたコンロッドの加工装置によって該コンロッドの大端孔にブローチ加工を行う場合には、その軸部とキャップ部とを均等且つ円滑に破断分離させるために、前記大端孔の内周面に形成される破断促進用の溝の位置及び深さ等が略均等であること、換言すると、前記大端孔に形成される一対の溝が、互いに対称形状に形成されることが要求されている。
【0009】
前記破断促進用の溝をブローチ加工によって形成する際、ブローチ加工に用いられる治具のブローチ刃は、その断面形状が略V字状に形成されているため、前記治具によって形成される溝形状が略V字状となる。しかしながら、前記治具のブローチ刃では、破断促進用の溝を鋭角な略V字状に形成することが困難であるため、前記破断促進用の溝によってコンロッドを軸部とキャップ部とに分離する際の衝撃荷重を大きくする必要があると共に、前記コンロッドを確実且つ均等に破断分離することが困難である。
【0010】
また、スローアウェイチップ等を用いたチップ加工方法では、回転する複数のチップによってコンロッドの大端孔の内周面が断続的に切削されるため、前記複数のチップの切刃の頂部が摩耗し、溝入れでは溝角度を鋭角に加工することが困難でありクラッキング時の応力集中性が低くなる。
【0011】
本発明は、コネクティングロッドの大端孔の内周面に一対のクラッキング溝を確実且つ低コストで形成することが可能なコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明では、先ず、ホルダに略平行に軸支された一対の回転転造手段を昇降機構によって降下させ、前記一対の回転転造手段の刃部を前記コネクティングロッドの大端部の大端孔における内周面の相互に対向する位置に当接させる。この場合、前記一対の回転転造手段には、モータ等の回転駆動源が連結されていない。
【0013】
続いて、さらに前記一対の回転転造手段を降下させ、該一対の回転転造手段の刃部を自転させることによって前記大端孔の相互に対向する内周面に断続的な直線状の溝が形成される。
【0014】
このように、本発明によれば、昇降機構の昇降作用下にホルダに略平行に配置された一対の回転転造手段をコネクティングロッドの大端孔の内周面に沿って圧入し、前記回転転造手段の刃部によって前記内周面に対し、直線状に延在する断続的な点線状の溝からなる一対のクラッキング溝が転造成形される。なお、前記転造成形された前記一対のクラッキング溝は、それぞれ、加工硬化される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、例えば、モータ等の回転駆動源を用いることがなく、コネクティングロッドの大端孔の内周面に一対のクラッキング溝を確実且つ低コストで形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法について、前記加工方法を実施する装置との関係において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
図1〜図4において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法を実施する加工装置を示す。
【0018】
この加工装置10は、図示しない固定台上に固定され上下方向に沿って昇降自在なピストンロッド12を有する流体圧シリンダ14と、前記ピストンロッド12の下端部に連結され該ピストンロッド12と共に昇降自在に設けられた溝加工部16とから構成される。なお、流体圧シリンダ14は、溝加工部16の昇降機構として機能するものである。
【0019】
前記溝加工部16は、ピストンロッド12の下端部に連結されて前記流体圧シリンダ14の駆動作用下に昇降自在に設けられた直方体状のホルダ18と、前記ホルダ18に形成されたスリット20内に回転自在に軸支され、前記スリット20から外部に露呈する鋸状の刃部22によりコネクティングロッド24(以下、単にコンロッド24という)の大端孔26の相互に対向する内周面に一対のクラッキング溝28(図9A参照)をそれぞれ同時に形成する一対の回転転造手段30a、30bと、前記一対の回転転造手段30a、30bを水平方向に沿って所定間隔離間させた状態でそれぞれ回転自在に軸支する一対の軸受32とを有する。
【0020】
この場合、前記クラッキング溝28は、直線状に連続して形成された溝ではなく、図9Aに示されるように、例えば、ミシン目状のように断続的な直線状の溝(小孔)によって構成される。
【0021】
前記一対の回転転造手段30a、30bは、例えば、金属製材料により形成された円盤からなり、その外周縁には、半径外方向に向かって先細りとなる鋭角状の複数の刃部22が等角度離間して連続的に設けられている。また、前記一対の回転転造手段30a、30bには、それぞれモータ等の回転駆動源が連結されておらず、フリーな状態で回転自在に設けられている。
【0022】
なお、図2に示されるように、一方の回転転造手段30aの刃部22から他方の回転転造手段30bの刃部22までの水平方向に沿った最大直線距離Aは、コンロッド24の大端孔26の内径Bよりも僅かに大きくなるように設定されている(A>B)。前記最大直線距離Aと前記内径Bとの差を二分したもの((A−B)/2)が、クラッキング溝28の溝深さとなる。
【0023】
また、溝加工部16の下方側には、コンロッド24が載置される載置台34が配設され、この載置台34の上面には、コンロッド24の略中央部を固定する第1固定部材36と、押圧力を付与するボルト37aによってコンロッド24の大端部を固定する第2固定部材37bが設けられる。前記載置台34のコンロッド24の大端部38がセットされる部位には、略円形状の貫通孔からなる逃げ孔40が形成される。
【0024】
コンロッド24は、図9Aに示されるように、一端部側に幅広に形成される大端部38と、他端部側に幅狭に形成される小端部42とからなり、前記大端部38には図示しないクランクシャフトのジャーナルが挿通される大端孔26が形成されている。
【0025】
本発明の実施の形態に係るコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法を実施する加工装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、図1に示されるように、クラッキング溝28が形成されるコンロッド24が、載置台34の上面に第1及び第2固定部材36、37bを介して固定され、前記コンロッド24の上方に加工装置10が待機した状態を初期位置として説明する。
【0026】
図5に示されるように、コンロッド24の軸線D(図3及び図4参照)と略直交し、且つ、大端孔26の中心を通る基線Eに沿って相互に対向するコンロッド24の上方位置に一対の回転転造手段30a、30bをそれぞれ位置決めする。
【0027】
先ず、コンロッド24が載置台34の上面で所定位置に位置決めされて第1固定部材36及び第2固定部材37bによって固定された状態において、図示しない圧力流体源を付勢して流体圧シリンダ14の図示しないシリンダ室に圧力流体を供給することにより前記シリンダ室に沿ってピストン(図示せず)が変位し、ピストンに連結されたピストンロッド12が該ピストンと一体的に鉛直下方向に変位することにより溝加工部16がコンロッド24の大端孔26に向かって下降する(図5参照)。
【0028】
続いて、流体圧シリンダ14の駆動作用下に溝加工部16が徐々に鉛直下方向(矢印X方向)へと変位することにより、ホルダ18に略平行に軸支された一対の回転転造手段30a、30bの刃部22がコンロッド24の大端孔26の内周面に同時に当接し、前記一対の回転転造手段30a、30bが相互に異なる回転方向(図7の矢印参照)に自転しながら同時に下方へと変位する(図6及び図7参照)。
【0029】
すなわち、前記一対の回転転造手段30a、30bの外周部に形成された刃部22がコンロッド24の大端孔26の内周面を押圧(圧入)し、前記大端孔26の内周面に対して断続的な点線状の溝(小孔)からなるクラッキング溝28を転造しながら下方に向かって徐々に変位する(図7参照)。
【0030】
そのため、コンロッド24の大端孔26の相互に対向する内周面には、略均一の深さを有する一対のクラッキング溝28が同時に形成される。この一対のクラッキング溝28は、コンロッド24の軸線Dと略直交する方向に相互に対向して形成され、その断続的な溝形状は鋭角状の断面形状からなる回転転造手段30a(30b)の刃部22によって断面略V字状に形成される。
【0031】
なお、コンロッド24の大端孔26の相互に対向する内周面に一対のクラッキング溝28を形成した後、前記溝加工部16が載置台34に形成される逃げ孔40の内部を挿通してコンロッド24の下方に位置した状態となる(図8参照)。この場合、前記逃げ孔40は、その直径が大端孔26の直径より大きく形成されているため、前記溝加工部16が逃げ孔40の内部に挿通された際に前記回転転造手段30a、30bの刃部22が接触することがない。
【0032】
クラッキング溝28が形成された後、図示しない切換弁の切り換え作用下に流体圧シリンダ14を付勢することによりピストンロッド12及び溝加工部16が一体的に上昇し、前記溝加工部16がコンロッド24の上方の所定位置に到達することにより図1に示される初期位置に復帰する。
【0033】
その結果、載置台34の上面に固定されたコンロッド24の大端孔26の内周面に、相互に対向する一対のクラッキング溝28が、コンロッド24の軸線Dに対してその位置及び深さ等が略均一の対称形状に形成される。
【0034】
以上のように、本実施の形態では、流体圧シリンダ14の昇降作用下に一対の回転転造手段30a、30bが設けられた溝加工部16をコンロッド24の大端孔26の内周面に沿って圧入し、前記回転転造手段30a、30bの刃部54によって前記内周面に対し、直線状に延在する断続的な点線状の溝(小孔)からなる最適な破断促進用の断面略V字状の一対のクラッキング溝28を転造成形することができる。なお、前記転造成形された前記一対のクラッキング溝28は、それぞれ、加工硬化される。
【0035】
このため、後工程において、例えば、一対のクラッキング溝28が形成されたコンロッド24の大端孔26に図示しない破断分離用の治具等を挿入し、前記大端孔26の内周面に半径外方向に向かって加圧することにより、前記コンロッド24を一対のクラッキング溝28をその破断起点として確実にコントロールすることができると共に、ロッド部24aとキャップ部24bとに確実且つ高精度に破断して分離することができる(図9B参照)。その際、従来より小さな加圧力で前記破断分離用の治具によってコンロッド24をクラッキング溝28から確実且つ高精度に分離させることが可能となる。
【0036】
またさらに、従来のブローチ加工やレーザ加工によって大端孔26に溝を形成する場合と比較して、設備コストを削減することができる。
【0037】
本実施の形態によれば、最適な破断促進用のクラッキング溝28を形成することにより、キャップ部24bとロッド部24aとに破断分割する際の破断荷重を小さくすることができ、しかも最適な部位から最適な破断面を有する破断を行うことができる。従って、後工程において破断分割されたキャップ部24bとロッド部24aとの仮再結合を確実に遂行することができる。
【0038】
また、本実施の形態では、モータ等の回転駆動源を用いることなく、溝加工部16を昇降させる昇降機構として、例えば、流体圧シリンダ14等のアクチュエータを設けるだけでよいため、安価な加工設備によって対応することができ、加工溝形状もレーザ加工と同レベルに加工することができる。この結果、本実施の形態では、クラッキング溝28の溝形状の制御を精度良く遂行することができ、容易に最適な破断促進用の溝形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係るコネクティングロッド用クラッキング溝の加工方法を実施する加工装置の斜視図である。
【図2】図1に示す加工装置の一部破断側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った拡大横断面図である。
【図4】図2の矢印Z方向から見た一部破断側面図である。
【図5】溝加工部に設けられた一対の回転転造手段がコネクティングロッドの大端孔に接触する前の状態を示す一部破断側面図である。
【図6】図5に示す状態から溝加工部が下降して、一対の回転転造手段の刃部がコネクティングロッドの大端部に接触した状態を示す一部破断側面図である。
【図7】図6に示す状態から溝加工部がさらに下降して、一対の回転転造手段の刃部によって断続的な小孔からなるクラッキング溝が転造成形される状態を示す一部破断側面図である。
【図8】図7に示す状態から溝加工部がさらに下降し、一対の回転転造手段が載置台の逃げ孔に臨む状態を示す一部破断側面図である。
【図9】図9Aは、コネクティングロッドの大端部の大端孔における内周面の相互に対向する部位に一対のクラッキング溝が形成された状態を示し、図9Bは、前記大端部がキャップ部とロッド部とに破断分割された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10…加工装置 12…ピストンロッド
14…流体圧シリンダ 16…溝加工部
18…ホルダ 20…スリット
22…刃部 24…コネクティングロッド
24a…ロッド部 24b…キャップ部
26…大端孔 28…クラッキング溝
30a、30b…回転転造手段 32…軸受
34…載置台 38…大端部
40…逃げ孔
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成18年8月10日(2006.8.10)
【代理人】 【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏

【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸

【識別番号】100142066
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 直樹

【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫


【公開番号】 特開2008−36706(P2008−36706A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−218131(P2006−218131)