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【発明の名称】 微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法
【発明者】 【氏名】上原 義貴

【氏名】太田 稔

【氏名】▲高▼嶋 和彦

【要約】 【課題】被加工物の外周面に、低フリクション化を実現するための微細な凹部を形成することができる微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供する。

【構成】被加工物Wの外周面Waに微細な凹部を形成する微細凹部加工装置であって、被加工物Wを保持して回転駆動する主軸3と、外周面に微細な凸部を具備してローラ軸4に回転自在に支持される加工ローラ5と、加工ローラに荷重を付与して被加工物Wの外周面Waに微細な凸部を押し付けるコイルばね23と、荷重を測定するロードセル6を備え、加工ローラ5の外周面に具備した微細な凸部をローラ軸4に対して傾けてある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の外周面に微細な凹部を形成する微細凹部加工装置であって、被加工物を保持してこれを回転駆動する主軸と、外周面に微細な凸部を具備してローラ軸に回転自在に支持される加工ローラと、この加工ローラに対してその径方向の荷重を付与して回転する被加工物の外周面に加工ローラの微細な凸部を押し付ける荷重発生手段と、荷重発生手段による荷重を測定する荷重測定手段を備え、加工ローラの外周面に具備した微細な凸部をローラ軸に対して傾けてあることを特徴とする微細凹部加工装置。
【請求項2】
加工ローラの外周面に具備した微細な凸部は、加工ローラの一端面側で且つ回転方向前側に位置する鋭角刃先及び加工ローラの他端面側で且つ回転方向後側に位置する鈍角刃先を有し、加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径及び他端面側の鈍角刃先回転径を互いに違えてある請求項1に記載の微細凹部加工装置。
【請求項3】
加工ローラを被加工物に押し付けた段階における押し付け変位量を測定する押し付け変位量測定手段と、加工ローラのローラ軸を主軸に回転駆動される被加工物の回転軸に対して傾けるローラ傾斜手段を備えた請求項1又は2に記載の微細凹部加工装置。
【請求項4】
加工中に押し付け変位量測定手段で測定した押し付け変位量と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅と、被加工物の径とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算し、その計算結果をローラ傾斜手段に出力する制御部を備えた請求項3に記載の微細凹部加工装置。
【請求項5】
被加工物の寸法が異なる部位の径を測定するべく二個以上の被加工物径測定手段を備え、制御部において、加工中に押し付け変位量測定手段で測定した押し付け変位量と、被加工物径測定手段で測定した寸法が異なる部位毎の径と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力する請求項4に記載の微細凹部加工装置。
【請求項6】
被加工物の外周面に形成された微細凹部の形状を測定する加工形状測定手段を備え、制御部において、加工形状測定手段で測定した加工直後の微細凹部の形状に基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力してローラ軸の傾斜角度の修正を行う請求項4又は5に記載の微細凹部加工装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、主軸を作動させて被加工物を回転駆動すると共に、荷重発生手段から加工ローラにその径方向の荷重を付与して加工ローラの微細な凸部を回転する被加工物の外周面に押し付けることを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項8】
請求項3に記載の微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動することを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項9】
加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径よりも他端面側の鈍角刃先回転径の方を小さくするべく、被加工物の回転軸に対して被加工物のローラ軸を傾斜させる請求項8に記載の微細凹部加工方法。
【請求項10】
請求項4に記載の微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動することで加工を行い、加工中における加工ローラの押し付け変位量を押し付け変位量測定手段により測定し、制御部において、この押し付け変位量と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅と、被加工物の径とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力することを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項11】
押し付け変位量をη、加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径をd、加工ローラの他端面側の鈍角刃先回転径をd、加工ローラ幅をw、加工ローラの刃先ずれ角をP、被加工物の径をDとした場合、加工ローラのローラ軸の傾斜角度γは、制御部において、
γ=180−cos−1{(2δ−d+d)/2w}−tan−1{2w/(d−d)}、
δ={(D/2)+(d/2)}−η−dcos(θ+P)−[D+{dsin(θ+P)}1/2
θ=cos−1{d+D+(d+D−2η)}/4d(d+D−2η)
の計算式に基づいて算出される請求項10に記載の微細凹部加工方法。
【請求項12】
請求項5に記載の微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動することで加工を行い、加工中における加工ローラの押し付け変位量を押し付け変位量測定手段により測定すると共に寸法が異なる部位毎の径を被加工物径測定手段により測定し、制御部において、押し付け変位量と、寸法が異なる部位毎の径と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力することを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項13】
押し付け変位量をη、加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径をd、加工ローラの他端面側の鈍角刃先回転径をd、加工ローラ幅をw、加工ローラの刃先ずれ角をP、被加工物の鋭角刃先に対応する鋭角刃先側径をD、被加工物の鈍角刃先に対応する鈍角刃先側径をDとした場合、加工ローラのローラ軸の傾斜角度γは、制御部において、
γ=180−cos−1{(2δ−d+d)/2w}−tan−1{2w/(d−d)}、
δ={(D/2)+(d/2)}−η−dcos(θ+P)−[D+{dsin(θ+P)}1/2
θ=cos−1{d+D+(d+D−2η)}/4d(d+D−2η)
の計算式に基づいて算出される請求項12に記載の微細凹部加工方法。
【請求項14】
請求項6に記載の微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動することで加工を行い、制御部において、加工形状測定手段で測定した加工直後の微細凹部の形状に基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力してローラ軸の傾斜角度の修正を行うことを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項15】
加工ローラのローラ軸を傾斜させた状態において、加工ローラの傾斜中心位置を通過し且つ被加工物の回転軸と平行を成す軸を回転軸とし、この回転軸から加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転軌跡及び他端面側の鈍角刃先回転軌跡までの最短距離を半径とした形状の加工ローラを使用する請求項7〜14のいずれかに記載の微細凹部加工方法。
【請求項16】
摺動面としての外周面を具備し、請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置により加工された微細凹部を摺動面としての外周面に有することを特徴とする摺動部材。
【請求項17】
摺動面としての外周面を具備し、請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置により加工された微細凹部を摺動面としての外周面に有することを特徴とするエンジン部品。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置により加工された微細凹部を外周面に有するジャーナルを備えたことを特徴とするクランクシャフト。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置により加工された微細凹部を外周面に有するピンを備えたことを特徴とするクランクシャフト。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置により加工された微細凹部を外周面に有するジャーナルを備えたことを特徴とするカムシャフト。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置により加工された微細凹部を外周面に有するカムロブを備えたことを特徴とするカムシャフト。
【請求項22】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置により加工された微細凹部を外周面に有するジャーナルを備えたことを特徴とするバランサシャフト。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の外周面、例えば、クランクピンやジャーナルやカムジャーナルの外周面に、低フリクション化を実現するための微細な凹部(油だまり)を形成する際に用いられる微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したようなクランクピンやジャーナルやカムジャーナル等の被加工物の外周面に微細な凹部を形成する微細凹部加工装置としては、例えば、外周面に微細な凸部を具備してローラ軸に回転自在に支持される加工ローラを備えたものがあり、この加工装置では、加工ローラの微細な凸部を被加工物の外周面に一定荷重で押し付けつつ、被加工物を回転させることで、被加工物の外周面に微細な凹部を形成するようにしている。
【特許文献1】特開2002−361351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の微細凹部加工装置では、この微細凹部加工装置を用いて微細凹部加工を行うと、被加工物の外周面には、被加工物の回転軸に沿う微細な凹部が形成されることから、十分な低フリクション効果を期待することができないという問題を有しており、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0004】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたものであり、被加工物の外周面に、低フリクション化を実現するための微細な凹部を形成することができる微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、外周面に微細な凸部を具備した加工ローラを用いて被加工物の外周面に微細凹部を形成する場合において、加工ローラの微細な凸部をローラ軸に対して傾けるようになすことで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の微細凹部加工装置は、被加工物の外周面に微細な凹部を形成する微細凹部加工装置であって、被加工物を保持してこれを回転駆動する主軸と、外周面に微細な凸部を具備してローラ軸に回転自在に支持される加工ローラと、この加工ローラに対してその径方向の荷重を付与して回転する被加工物の外周面に加工ローラの微細な凸部を押し付ける荷重発生手段と、荷重発生手段による荷重を測定する荷重測定手段を備え、加工ローラの外周面に具備した微細な凸部をローラ軸に対して傾けてある構成としたことを特徴としており、この微細凹部加工装置の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0007】
この際、加工ローラの外周面に具備した微細な凸部は、加工ローラの一端面側で且つ回転方向前側に位置する鋭角刃先及び加工ローラの他端面側で且つ回転方向後側に位置する鈍角刃先を有し、加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径及び他端面側の鈍角刃先回転径を互いに違えてある構成とすることができる。
【0008】
一方、本発明の微細凹部加工方法は、上記微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、主軸を作動させて被加工物を回転駆動すると共に、荷重発生手段から加工ローラにその径方向の荷重を付与して加工ローラの微細な凸部を回転する被加工物の外周面に押し付ける構成としたことを特徴としており、この微細凹部加工方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法において、加工ローラの外周面に具備した微細な凸部をローラ軸に対して傾斜させているので、被加工物の外周面には、被加工物の回転軸に対して傾きを有する微細な凹部が形成されることとなり、したがって、十分な低フリクション効果を期待し得ることとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記した構成としているので、被加工物の外周面に、低フリクション化を実現するための微細な凹部を形成することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の微細凹部加工装置では、加工ローラの外周面に具備した微細な凸部をローラ軸に対して傾斜させた構成としているが、この加工ローラを被加工物の外周面に押し付けて加工を行う場合には、加工ローラの微細な凸部が部分的に被加工物の外周面に接触する瞬間(加工ローラの一端面側で且つ回転方向前側に位置する鋭角刃先が被加工物の外周面に片当たりする瞬間)があるので、工具寿命が短くなってしまう懸念が生じる。
【0012】
そこで、本発明の微細凹部加工装置において、加工ローラを被加工物に押し付けた段階における押し付け変位量を測定する押し付け変位量測定手段と、加工ローラのローラ軸を主軸に回転駆動される被加工物の回転軸に対して傾けるローラ傾斜手段を備えた構成を採用することが望ましく、この場合には、加工ローラと被加工物との接触状態を変化させ得るので、すなわち、被加工物の形状に合わせて加工ローラの押し付け角度を変更し得るので、加工ローラの部分面圧を制御することで、微細凹部の深さを部分的に変化させ得ることとなり、加工ローラの長寿命化も図られることとなる。
【0013】
また、本発明の微細凹部加工装置において、加工中に押し付け変位量測定手段で測定した押し付け変位量と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅と、被加工物の径とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算し、その計算結果をローラ傾斜手段に出力する制御部を備えた構成とすることができ、この場合は、加工ローラと被加工物との部分的な接触を少なく抑え得るので、加工ローラの応力集中を緩和でき、その結果、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
【0014】
さらに、本発明の微細凹部加工装置において、被加工物の寸法が異なる部位の径を測定するべく二個以上の被加工物径測定手段を備え、制御部において、加工中に押し付け変位量測定手段で測定した押し付け変位量と、被加工物径測定手段で測定した寸法が異なる部位毎の径と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力する構成とすることが可能であり、この構成を採用すると、部分的に径が異なる被加工物の加工を行うに際して、加工ローラの応力集中を緩和でき、その結果、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
【0015】
さらにまた、本発明の微細凹部加工装置において、被加工物の外周面に形成された微細凹部の形状を測定する加工形状測定手段を備え、制御部において、加工形状測定手段で測定した加工直後の微細凹部の形状に基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力してローラ軸の傾斜角度の修正を行う構成を採用することができ、この場合は、構造の簡略化を図ったうえで、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
【0016】
一方、本発明の微細凹部加工方法において、ローラ傾斜手段を備えた微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動する構成とすることができ、この場合には、加工ローラと被加工物との接触状態を変化させ得るので、すなわち、被加工物の形状に合わせて加工ローラの押し付け角度を変更し得るので、加工ローラの部分面圧を制御することで、微細凹部の深さを部分的に変化させ得ることとなり、加工ローラの長寿命化も図られることとなる。
【0017】
また、本発明の微細凹部加工方法において、加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径よりも他端面側の鈍角刃先回転径の方を小さくするべく、被加工物の回転軸に対して被加工物のローラ軸を傾斜させる構成とすることができ、この構成を採用すると、加工ローラと被加工物との部分的な接触を少なく抑え得るので、加工ローラの応力集中を緩和でき、その結果、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
【0018】
さらに、本発明の微細凹部加工方法では、制御部を備えた微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動することで加工を行い、加工中における加工ローラの押し付け変位量を押し付け変位量測定手段により測定し、制御部において、この押し付け変位量と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅と、被加工物の径とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力する構成としてもよく、この場合には、加工ローラと被加工物との部分的な接触をより少なく抑え得るので、加工ローラの応力集中を緩和でき、その結果、加工ローラのより一層の長寿命化が図られることとなる。
【0019】
ここで、図3に示すように、押し付け変位量をη、加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径をd、加工ローラの他端面側の鈍角刃先回転径をd、加工ローラ幅をw、加工ローラの刃先ずれ角をP、被加工物の径をDとした場合、加工ローラのローラ軸の傾斜角度γは、制御部において、
γ=180−cos−1{(2δ−d+d)/2w}−tan−1{2w/(d−d)}、
δ={(D/2)+(d/2)}−η−dcos(θ+P)−[D+{dsin(θ+P)}1/2
θ=cos−1{d+D+(d+D−2η)}/4d(d+D−2η)
の計算式に基づいて算出され、これにより求められる傾斜角度γで加工ローラのローラ軸を傾斜させて加工を行うと、加工ローラのさらなる長寿命化が図られることとなる。
【0020】
さらにまた、本発明の微細凹部加工方法において、二個以上の被加工物径測定手段を備えた微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動することで加工を行い、加工中における加工ローラの押し付け変位量を押し付け変位量測定手段により測定すると共に寸法が異なる部位毎の径を被加工物径測定手段により測定し、制御部において、押し付け変位量と、寸法が異なる部位毎の径と、加工ローラの両端面側の各刃先回転径と、加工ローラの刃先ずれ角と、加工ローラ幅とに基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力する構成を採用することができ、この場合には、部分的に径が異なる被加工物の加工を行うに際して、加工ローラの応力集中を緩和でき、その結果、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
【0021】
ここで、図9に示すように、押し付け変位量をη、加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転径をd、加工ローラの他端面側の鈍角刃先回転径をd、加工ローラ幅をw、加工ローラの刃先ずれ角をP、被加工物の鋭角刃先に対応する鋭角刃先側径をD、被加工物の鈍角刃先に対応する鈍角刃先側径をDとした場合、加工ローラのローラ軸の傾斜角度γは、制御部において、
γ=180−cos−1{(2δ−d+d)/2w}−tan−1{2w/(d−d)}、
δ={(D/2)+(d/2)}−η−dcos(θ+P)−[D+{dsin(θ+P)}1/2
θ=cos−1{d+D+(d+D−2η)}/4d(d+D−2η)
の計算式に基づいて算出され、これにより求められる傾斜角度γで加工ローラのローラ軸を傾斜させて加工を行うと、加工ローラのさらなる長寿命化が図られることとなる。
【0022】
さらにまた、本発明の微細凹部加工方法において、加工形状測定手段を備えた微細凹部加工装置を用いて被加工物の外周面に微細な凹部を形成するに際して、ローラ傾斜手段により加工ローラのローラ軸を被加工物の回転軸に対して傾斜させ、この状態の加工ローラに荷重発生手段から径方向の荷重を付与して微細な凸部を被加工物の外周面に押し付けると共に、主軸を作動させて被加工物を回転駆動することで加工を行い、制御部において、加工形状測定手段で測定した加工直後の微細凹部の形状に基づいて、加工ローラのローラ軸の傾斜角度を計算して、その計算結果をローラ傾斜手段に出力してローラ軸の傾斜角度の修正を行う構成を採用することができ、この場合には、構造の簡略化を図ったうえで、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
【0023】
さらにまた、本発明の微細凹部加工方法において、加工ローラのローラ軸を傾斜させた状態において、加工ローラの傾斜中心位置を通過し且つ被加工物の回転軸と平行を成す軸を回転軸とし、この回転軸から加工ローラの一端面側の鋭角刃先回転軌跡及び他端面側の鈍角刃先回転軌跡までの最短距離を半径とした形状の加工ローラを使用する採用することができ、この場合には、加工ローラの形状を最適化しているので、特殊な制御を行わなくても、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
【0024】
そして、上記した本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を用いて加工された微細凹部を摺動面としての外周面に有する摺動部材において、その摺動面に形成された微細凹部の形状精度が良好であることから、この微細凹部が潤滑油溜まりとなって潤滑油の流れを効率的に制御し得ることとなり、その結果、摩擦の低減が図られることとなる。
【0025】
すなわち、上記摺動部材が、微細凹部を外周面に有するジャーナル及びピンを備えたクランクシャフトや、微細凹部を外周面に有するジャーナル及びカムロブを備えたカムシャフトや、微細凹部を外周面に有するジャーナルを備えたバランサシャフトなどのエンジン部品である場合には、摺動面としての外周面に形成された微細凹部が潤滑油溜まりとなって潤滑油の流れを効率的に制御し得ることとなり、その結果、摺動抵抗が低いものとなって、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、この微細凹部加工装置1は、チャック2を介して保持した被加工物(摺動部材)Wを回転駆動する主軸3と、ローラ軸4に回転自在に支持される加工ローラ5と、この加工ローラ5に対してその径方向(Z軸方向)の荷重を付与して回転する被加工物Wの外周面Waに加工ローラ5の微細な凸部を押し付ける荷重発生機構20と、荷重発生機構20による荷重を測定する荷重測定手段としてのロードセル6と、加工ローラ5を被加工物Wに押し付けた段階における押し付け変位量を測定する押し付け変位量測定手段としての押し付け量測定部7を備えており、加工ローラ5は、その外周面にローラ軸4に対して傾きを持たせた微細な凸部を具備している。
【0028】
この場合、加工ローラ5の外周面に具備した微細な凸部は、図3に示すように、加工ローラ5の一端面側で且つ回転方向前側に位置する鋭角刃先5a及び加工ローラ5の他端面側で且つ回転方向後側に位置する鈍角刃先5bを有するものとしており、加工ローラ5の一端面側の鋭角刃先5aの回転径d及び他端面側の鈍角刃先5bの回転径dを互いに違えてある。
【0029】
荷重発生機構20は、ハウジング21と、ローラ軸4を介して加工ローラ5を支持してハウジング21に対してZ軸方向に進退可能としたアーム22と、ハウジング21内に配置されてアーム22を介して加工ローラ5を被加工物Wに押し付け付勢する荷重発生手段としてのコイルばね23を具備しており、ハウジング21とコイルばね23との間に上記したロードセル6が配置してあると共に、ハウジング21の下端に上記した押し付け量測定部7が配置してある。
【0030】
また、この微細凹部加工装置1は、図2に示すように、加工ローラ5のローラ軸4を主軸3に回転駆動される被加工物Wの回転軸Lに対して傾けるローラ傾斜手段としてのアクチュエータ8を備えている。このアクチュエータ8は回転駆動軸8aを有していて、この回転駆動軸8aに一端を固定したスイングアーム9の他端を荷重発生機構20のハウジング21に連結すると共に、回転駆動軸8aの延長線上と加工ローラ5のローラ軸4とが交差するようになすことで、加工ローラ5のローラ軸4を回転軸Lに対して傾ける(B軸回りに回動させる)ことができるようにしてある。
【0031】
そして、このアクチュエータ8を互いに直交する三軸方向(X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向)に移動する可動ベッド10上に配置することで、加工ローラ5をローラ押し付け方向(Z軸方向)とこれと直交する方向(X軸方向及びY軸方向)に移動させることができるようにしてある。
【0032】
さらに、この微細凹部加工装置1は、加工中に押し付け量測定部7で測定した押し付け変位量と、加工ローラ5の両端面側の各刃先5a,5bの各回転径d,dと、加工ローラ5の刃先ずれ角Pと、加工ローラ5の幅wと、被加工物Wの径Dとに基づいて、加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γを計算し、その計算結果をアクチュエータ8に出力する制御部11を備えており、この制御部11において、加工ローラのローラ軸の傾斜角度γは、
γ=180−cos−1{(2δ−d+d)/2w}−tan−1{2w/(d−d)}、
δ={(D/2)+(d/2)}−η−dcos(θ+P)−[D+{dsin(θ+P)}1/2
θ=cos−1{d+D+(d+D−2η)}/4d(d+D−2η)
の計算式に基づいて算出されるようになっている。
【0033】
そこで、上記した微細凹部加工装置1を用いて被加工物Wの外周面Waに微細凹部を形成する要領、すなわち、本発明の一実施例による微細凹部加工方法を説明する。
【0034】
まず、図4に示すように、ステップ101において、加工ローラ5の両端面側の各刃先5a,5bの各回転径d,dと、加工ローラ5の刃先ずれ角Pと、加工ローラ5の幅wと、被加工物Wの径Dと、押し付け荷重と、加工範囲と、被加工物Wの回転速度と、X軸方向への送り速度などの事前に測定した加工条件を制御部11に入力するのに続いて、ステップ102において、チャック2を介して被加工物Wを主軸3に保持させると共に、加工ローラ5を加工開始位置に移動させた後、ステップ103において、加工ローラ5の降下を開始して、加工ローラ5を被加工物Wの外周面Waに押し付け、ステップ104において、加工ローラ5の被加工物Wへの押し付け変位量ηを押し付け量測定部7によって測定する。
【0035】
次いで、ステップ105において、測定した押し付け変位量ηと、事前に入力した加工ローラ5の両端面側の各刃先5a,5bの各回転径d,dと、刃先ずれ角Pと、加工ローラ5の幅wと、被加工物Wの径Dに基づいて、
γ=180−cos−1{(2δ−d+d)/2w}−tan−1{2w/(d−d)}、
δ={(D/2)+(d/2)}−η−dcos(θ+P)−[D+{dsin(θ+P)}1/2
θ=cos−1{d+D+(d+D−2η)}/4d(d+D−2η)
の計算式による演算が制御部11でなされ、これによって加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γが算出され、ステップ106において、この計算結果を受けたアクチュエータ8が作動して、加工ローラ5のローラ軸4をγだけ傾ける。
【0036】
このとき、加工ローラ5の位置は、図5に示すように、X軸方向に移動するため、ステップ107において、加工ローラ5を所定の加工部位に位置させるべく可動ベッド10を作動させて、加工ローラ5のX軸方向位置を修正する。
【0037】
これらのステップ103〜107の動作、すなわち、加工ローラ5の被加工物Wへの押し付け動作→加工ローラ5の押し付け変位量ηの測定→加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γの計算→加工ローラ5のローラ軸4の傾斜→加工ローラ5のX軸方向位置の修正を、ステップ108において、ロードセル6からの信号が所定の荷重になるまで繰り返す。
【0038】
ここで、加工ローラ5の押し付け変位量ηは、事前に調査して加工開始時に加工ローラ5の径などと一緒に入力し、加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γを計算して傾斜させるのに続いて、加工ローラ5のX軸方向位置を修正した後に、加工ローラ5を被加工物Wに押し付けるようにしてもよい。
【0039】
次に、ステップ108において、ロードセル6からの信号が所定の荷重に到達した段階で、ステップ109において、主軸3を作動させて被加工物Wを回転させると共に、可動ベッド10を作動させて加工ローラ5のX軸方向の送りを開始する。
【0040】
そして、ステップ110において、上記したような制御による加工を被加工物Wの外周面Wa全面にわたって実施し、被加工物Wの外周面Wa全面に微細凹部が形成された時点で、ステップ111において、加工ローラ5を上昇させ、ステップ112において、加工を終了する。
【0041】
上記したように、この実施例における微細凹部加工装置1を用いた微細凹部加工方法では、加工ローラ5の微細な凸部を、加工ローラ5の一端面側で且つ回転方向前側に位置する鋭角刃先5a及び加工ローラ5の他端面側で且つ回転方向後側に位置する鈍角刃先5bを有するものとし、加えて、加工ローラ5のローラ軸4を回転軸Lに対して傾けるようにしているので、加工ローラ5の微細凸部と被加工物Wとの部分的な接触を少なく抑え得ることとなり(微細な凸部の鋭角刃先5aが被加工物Wに片当たりするのを少なく抑え得ることとなり)、その結果、加工ローラ5の大幅な長寿命化が図られることとなる。
【0042】
この実施例において、加工ローラ5の押し付けは、所定荷重となるように定圧制御しているが、加工ローラ5の押し付け変位量ηが所定値となるように定寸制御を行うことも可能である。
【0043】
図6〜図10は本発明の他の実施例による微細凹部加工装置を示している。図6及び図7に示すように、この実施例の微細凹部加工装置31が、先の実施例における微細凹部加工装置1と相違するところは、被加工物Wの寸法が異なる部位の径を測定する二個の被加工物径測定部(被加工物径測定手段)12,13を設け、制御部11において、加工中に押し付け量測定部7で測定した押し付け変位量ηと、被加工物径測定部12,13で測定した寸法が異なる部位毎の径D,Dと、加工ローラの両端面側の各刃先回転径d,dと、加工ローラの刃先ずれ角Pと、加工ローラ幅wとに基づいて、加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γを計算して、その計算結果をアクチュエータ8に出力するようにした点にあり、他の構成は先の実施例における微細凹部加工装置1と同じである。
【0044】
そこで、上記した微細凹部加工装置31を用いて被加工物Wの外周面Waに微細凹部を形成する要領、すなわち、本発明の他の実施例による微細凹部加工方法を説明する。
【0045】
まず、図10に示すように、ステップ201において、加工ローラ5の両端面側の各刃先5a,5bの各回転径d,dと、加工ローラ5の刃先ずれ角Pと、加工ローラ5の幅wと、押し付け荷重と、加工範囲と、被加工物Wの回転速度と、X軸方向への送り速度などの事前に測定した加工条件を制御部11に入力するのに続いて、ステップ202において、チャック2を介して被加工物Wを主軸3に保持させると共に、加工ローラ5を加工開始位置に移動させる。
【0046】
次に、ステップ203において、加工ローラ5の降下を開始し、ステップ204において、図8に示すように、被加工物径測定部12で被加工物Wの鋭角刃先5aに対応する鋭角刃先側径Dを測定すると共に、被加工物径測定部13で被加工物Wの鈍角刃先5bに対応する鈍角刃先側径Dを測定し、この後さらに加工ローラ5を降下させて、加工ローラ5を被加工物Wの外周面Waに押し付け、加工ローラ5の被加工物Wへの押し付け変位量ηを押し付け量測定部7によって測定する。
【0047】
次いで、ステップ205において、被加工物径測定部12,13で測定した被加工物Wの鋭角刃先側径D,鈍角刃先側径Dと、押し付け量測定部7で測定した押し付け変位量ηと、事前に入力した加工ローラ5の両端面側の各刃先5a,5bの各回転径d,dと、刃先ずれ角Pと、加工ローラ5の幅wに基づいて、
γ=180−cos−1{(2δ−d+d)/2w}−tan−1{2w/(d−d)}、
δ={(D/2)+(d/2)}−η−dcos(θ+P)−[D+{dsin(θ+P)}1/2
θ=cos−1{d+D+(d+D−2η)}/4d(d+D−2η)
の計算式による演算が制御部11でなされ、これによって加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γが算出され、ステップ206において、この計算結果を受けたアクチュエータ8が作動して、加工ローラ5のローラ軸4をγだけ傾ける。
【0048】
このときも、上記した実施例の場合と同様に、加工ローラ5の位置は、X軸方向に移動するため(図5参照)、ステップ207において、加工ローラ5を所定の加工部位に位置させるべく可動ベッド10を作動させて、加工ローラ5のX軸方向位置を修正する。
【0049】
これらのステップ203〜207の動作、すなわち、加工ローラ5の被加工物Wへの押し付け動作→被加工物Wの鋭角刃先側径D及び鈍角刃先側径Dの測定並びに加工ローラ5の押し付け変位量ηの測定→加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γの計算→加工ローラ5のローラ軸4の傾斜→加工ローラ5のX軸方向位置の修正を、ステップ208において、ロードセル6からの信号が所定の荷重になるまで繰り返す。
【0050】
ここで、被加工物Wの鋭角刃先側径D,鈍角刃先側径D及び加工ローラ5の押し付け変位量ηは、事前に調査して加工開始時に加工ローラ5の径などと一緒に入力し、加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γを計算して傾斜させるのに続いて、加工ローラ5のX軸方向位置を修正した後に、加工ローラ5を被加工物Wに押し付けるようにしてもよい。
【0051】
次に、ステップ208において、ロードセル6からの信号が所定の荷重に到達した段階で、ステップ209において、主軸3を作動させて被加工物Wを回転させると共に、可動ベッド10を作動させて最初に入力した加工条件で加工ローラ5をX軸方向に移動させ、加工を開始する。
【0052】
そして、加工中は、ステップ210において、常時被加工物径測定部12,13で被加工物Wの鋭角刃先側径D及び鈍角刃先側径Dを測定すると共に、押し付け量測定部7で押し付け変位量ηを測定し、ステップ211において、これらの測定値D,D,ηと、加工ローラ5の両端面側の各刃先5a,5bの各回転径d,dと、刃先ずれ角Pと、加工ローラ5の幅wに基づいて、加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γが算出され、ステップ212において、この計算結果を受けたアクチュエータ8が作動して、加工ローラ5のローラ軸4をγだけ傾けるのに続いて、ステップ213において、ローラ軸4が傾斜することで生じる加工ローラ5のX軸方向位置を修正する。
【0053】
ここでも、被加工物Wの鋭角刃先側径D,鈍角刃先側径D及び加工ローラ5の押し付け変位量ηは、事前に調査して加工開始時に加工ローラ5の径などと一緒に入力した値を用いてもよい。
【0054】
上記した加工ローラ5のX軸方向位置の修正に続いて、ステップ214において、加工ローラ5の押し付け荷重の測定を行い、この押し付け荷重が常に一定になるように加工ローラ5のZ軸方向位置を補正する。すなわち、ステップ210〜214における加工ローラ5の被加工物Wへの押し付け動作→被加工物Wの鋭角刃先側径D及び鈍角刃先側径Dの測定並びに加工ローラ5の押し付け変位量ηの測定→加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γの計算→加工ローラ5のローラ軸4の傾斜→加工ローラ5のX軸方向位置の修正→押し付け荷重の測定、といったZ軸方向制御を加工中において常時繰り返し行う。
【0055】
そして、ステップ215において、上記したような制御による加工を被加工物Wの外周面Wa全面にわたって実施し、被加工物Wの外周面Wa全面に微細凹部が形成された時点で、ステップ216において、加工ローラ5を上昇させ、ステップ217において、加工を終了する。
【0056】
上記したように、この実施例における微細凹部加工装置31を用いた微細凹部加工方法では、加工ローラ5の微細な凸部を、加工ローラ5の一端面側で且つ回転方向前側に位置する鋭角刃先5a及び加工ローラ5の他端面側で且つ回転方向後側に位置する鈍角刃先5bを有するものとしていると共に、加工ローラ5のローラ軸4を回転軸Lに対して傾けるようにしており、加えて、二個の被加工物径測定部12,13で測定した寸法が異なる部位毎の径D,Dに基づいて、加工を行うようにしているので、部分的に径が異なる被加工物Wの加工を行うに際しても、加工ローラ5の微細凸部と被加工物Wとの部分的な接触を少なく抑え得ることとなり(微細な凸部の鋭角刃先5aが被加工物Wに片当たりするのを少なく抑え得ることとなり)、その結果、加工ローラ5の大幅な長寿命化が図られることとなる。
【0057】
また、この実施例における微細凹部加工装置31を用いた微細凹部加工方法では、上記したように、二個の被加工物径測定部12,13で測定した寸法が異なる部位毎の径D,Dに合わせて加工を行うようにしているので、部分的に径が異なる被加工物Wの外周面Waに対しても、高精度の微細凹部を形成し得ることとなる。
【0058】
この実施例においても、加工ローラ5の押し付けは、所定荷重となるように定圧制御しているが、加工ローラ5の押し付け変位量ηが所定値となるように定寸制御を行うことも可能である。
【0059】
図11及び図12は本発明のさらに他の実施例による微細凹部加工装置を示している。図11に示すように、この実施例の微細凹部加工装置51が、先の実施例における微細凹部加工装置1と相違するところは、加工ローラ5によって被加工物Wの外周面Waに形成した加工直後の微細な凹部を測定するモニタ(加工形状測定手段)15を設け、制御部11において、モニタ15で測定した加工直後の微細な凹部の形状に基づいて、加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γを計算して、その計算結果をアクチュエータ8に出力してローラ軸4の傾斜角度γの修正を行うようにした点にあり、他の構成は先の実施例における微細凹部加工装置1と同じである。
【0060】
そこで、上記した微細凹部加工装置51を用いて被加工物Wの外周面Waに微細凹部を形成する要領、すなわち、本発明のさらに他の実施例による微細凹部加工方法を説明する。
【0061】
まず、図12に示すように、ステップ301において、押し付け荷重や被加工物Wの回転速度やX軸方向への送り速度などの加工条件を制御部11に入力するのに続いて、ステップ302において、チャック2を介して被加工物Wを主軸3に保持させると共に、加工ローラ5を加工開始位置に移動させた後、ステップ303において、加工ローラ5の降下を開始し、ステップ304において、ロードセル6からの信号が所定の荷重になるまで加工ローラ5を降下させる。
【0062】
次いで、ステップ305において、主軸3を作動させて被加工物Wを回転させると共に、可動ベッド10を作動させて加工ローラ5のX軸方向の送りを開始し、加工中は、ステップ306において、被加工物Wの外周面Waに形成された直後の微細凹部をモニタ15で測定すると共に、この測定結果に基づいて、制御部11において、微細凹部の最大幅Tw1及び最小幅Tw2が算出される。
【0063】
この後、ステップ307及びステップ308において、制御部11で算出された微細凹部の最大幅Tw1及び最小幅Tw2の比較がなされ、ステップ307において、Tw1>Tw2と判定された場合は、ステップ309において、加工ローラ5のローラ軸4を回転軸Lに対して鈍角側に傾斜させ、一方、ステップ308において、Tw1<Tw2と判定された場合は、ステップ310において、加工ローラ5のローラ軸4を回転軸Lに対して鋭角側に傾斜させて、Tw1=Tw2とするべく制御がなされる。
【0064】
この際、微細凹部の最大幅Tw1及び最小幅Tw2に許容範囲を設定しておき、厳密にTw1=Tw2とならない場合であったとしても、この許容範囲内に微細凹部の最大幅Tw1及び最小幅Tw2が含まれるように制御してもよい。
【0065】
そして、ステップ311において、上記したような制御による加工を被加工物Wの外周面Wa全面にわたって実施し、被加工物Wの外周面Wa全面に微細凹部が形成された時点で、ステップ312において、加工ローラ5を上昇させて、ステップ313において、加工を終了する。
【0066】
上記したように、この実施例における微細凹部加工装置51を用いた微細凹部加工方法では、加工中にモニタ15で測定した加工直後の微細な凹部の形状に基づいて、加工ローラ5のローラ軸4の傾斜角度γを計算して、その計算結果をアクチュエータ8に出力してローラ軸4の傾斜角度γの修正を行うようにしているので、構造の簡略化を図ったうえで、加工ローラ5の微細凸部と被加工物Wとの部分的な接触を少なく抑え得ることとなり(微細な凸部の鋭角刃先5aが被加工物Wに片当たりするのを少なく抑え得ることとなり)、その結果、加工ローラ5の大幅な長寿命化が図られることとなる。
【0067】
また、この実施例における微細凹部加工装置51を用いた微細凹部加工方法においても、部分的に径が異なる被加工物Wの外周面Waに対して、高精度の微細凹部を形成し得ることとなる。
【0068】
なお、本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法において、例えば、図13に示すように、ローラ軸4を回転軸Lに対して傾けていない加工ローラ5Aであって、その外周面の微細凸部が、上記した各実施例における加工ローラ5のローラ軸4を回転軸Lに対して傾けた状態で被加工物Wの外周面Waに接触する微細凸部の形状を成している加工ローラ5Aを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記した実施例の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を用いて加工された微細凹部を摺動面としての外周面に有する摺動部材が、微細凹部を外周面に有するジャーナル及びピンを備えたクランクシャフトや、微細凹部を外周面に有するジャーナル及びカムロブを備えたカムシャフトや、微細凹部を外周面に有するジャーナルを備えたバランサシャフトなどのエンジン部品である場合には、摺動面としての外周面に形成された微細凹部が潤滑油溜まりとなって潤滑油の流れを効率的に制御し得ることとなり、その結果、摺動抵抗が低いものとなって、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の微細凹部加工装置の一実施例を示す正面説明図である。(実施例1)
【図2】図1の微細凹部加工装置の側面説明図である。(実施例1)
【図3】図1の微細凹部加工装置における加工ローラの被加工物に対する当たり具合を示す部分拡大側面説明図(a)及び拡大正面説明図(b)である。(実施例1)
【図4】図1の微細凹部加工装置を用いて行う一実施例による微細凹部加工方法のフローチャートである。(実施例1)
【図5】図1の微細凹部加工装置における加工ローラのX軸方向の修正要領を示す加工ローラ部分の拡大正面説明図である。
【図6】本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を示す正面説明図である。(実施例2)
【図7】図6の微細凹部加工装置の側面説明図である。(実施例2)
【図8】図6の微細凹部加工装置における加工ローラ部分の拡大正面説明図である。(実施例2)
【図9】図6の微細凹部加工装置における加工ローラの被加工物に対する当たり具合を示す部分拡大側面説明図(a)及び拡大正面説明図(b)である。(実施例2)
【図10】図6の微細凹部加工装置を用いて行う他の実施例による微細凹部加工方法のフローチャートである。(実施例2)
【図11】本発明の微細凹部加工装置のさらに他の実施例を示す加工ローラ部分の拡大正面説明図(a)及び拡大側面説明図(b)である。(実施例3)
【図12】図11の微細凹部加工装置を用いて行うさらに他の実施例による微細凹部加工方法のフローチャートである。(実施例3)
【図13】本発明の微細凹部加工装置に用いる加工ローラの他の構成例を示す加工ローラ部分の拡大正面説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1,31,51 微細凹部加工装置
3 主軸
4 ローラ軸
5 加工ローラ
5a 微細凸部の鋭角刃先
5b 微細凸部の鈍角刃先
6 ロードセル(荷重測定手段)
7 押し付け量測定部(押し付け変位量測定手段)
8 アクチュエータ(ローラ傾斜手段)
11 制御部
12,13 被加工物径測定部(被加工物径測定手段)
15 モニタ(加工形状測定手段)
23 コイルばね(荷重発生手段)
D 被加工物の径
被加工物の鋭角刃先側径
被加工物の鈍角刃先側径
鋭角刃先の回転径
鈍角刃先の回転径
P 加工ローラの刃先ずれ角
W 被加工物
Wa 被加工物の外周面
w 加工ローラの幅
γ ローラ軸の傾斜角度
η 押し付け変位量
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲


【公開番号】 特開2008−23541(P2008−23541A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196892(P2006−196892)