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【発明の名称】 微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法
【発明者】 【氏名】桝田 正美

【氏名】上原 義貴

【氏名】太田 稔

【氏名】▲高▼嶋 和彦

【要約】 【課題】ワークに負荷される荷重及び加工工具の変位を測定演算して、ワーク負荷荷重及び加工工具の変位の双方を制御することができ、その結果、ワークの材質や加工工具の形状の違いに起因する塑性変形挙動の変化による微細凹部の形状のばらつきを少なく抑えることが可能である微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供する。

【構成】微細突起3aを先端部に有する加工工具3を着脱可能に取り付けたクロスヘッド4と、クロスヘッド4を鉛直方向に移動させて加工工具3をワークWの表面Waに押し付け可能とした押圧機構としてのサーボモータ5及びボールねじ6と、クロスヘッド4の移動を制御する演算・制御部7を備え、加工工具3に負荷される荷重を測定して演算・制御部7に出力する荷重センサ8と、加工工具3とワークWの変位を測定して演算・制御部7に出力する変位センサ9を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、表面に微細な凹凸を具備した加工工具と、この加工工具をワークに接近離間させて加工工具の表面を上記ワークの表面に押し付け可能とした押圧機構と、この押圧機構によってワークに負荷される荷重を測定する荷重測定手段と、上記加工工具の変位を測定する変位測定手段を備え、上記荷重測定手段及び変位測定手段の双方からの信号を演算して、上記加工工具に加えられる荷重及び加工工具の変位を制御する制御手段を設けたことを特徴とする微細凹部加工装置。
【請求項2】
制御手段は、荷重測定手段で検出したワーク表面の位置からの加工工具の相対的な変位が所定の変位となるように制御する変位測定手段による変位制御と、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重が所定の荷重となるように制御する荷重制御との2種類の制御を加工中に切り替え可能としている請求項1に記載の微細凹部加工装置。
【請求項3】
制御手段は、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重と、変位測定手段で検出される加工工具の変位とを常にモニタして記録し、検出された荷重と変位との各変化率を演算して得た演算結果に基づいて、変位制御及び荷重制御の加工中における切り替えを可能としている請求項2に記載の微細凹部加工装置。
【請求項4】
加工後のワークの表面に形成された微細凹部の形状を測定する加工形状測定手段を設け、制御手段は、加工形状測定手段で検出される微細凹部の加工深さの分布に基づいて、変位制御及び荷重制御の加工中における切り替えを可能としている請求項1〜3のいずれか一つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項5】
押圧機構が、圧電素子によって動作するアクチュエータである請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項6】
押圧機構が、超磁歪素子によって動作するアクチュエータである請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項7】
押付機構が、コイルばねを具備している請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項8】
加工工具は、その表面に多数の微細な突起を具備している請求項1〜7のいずれか一つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項9】
外周面に多数の微細な突起を具備して、ローラ軸回りに回転する加工ローラを加工工具とした請求項1〜7のいずれか一つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項10】
請求項1〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いてワークの表面に微細凹部を形成するに際して、荷重測定手段によって加工工具がワーク表面に接触するのを検出し、制御手段により、ワーク表面の位置からの相対的な変位を加工工具のワーク表面への押込み変位量として設定して、上記加工工具の相対的な変位が所定の変位となるように制御する変位測定手段による変位制御と、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重が所定の荷重となるように制御する荷重制御との2種類の制御を加工中に切り替えて加工することを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項11】
制御手段により、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重と、変位測定手段で検出される加工工具の変位とを常にモニタして記録し、検出された荷重と変位との各変化率を演算して得た演算結果に基づいて、変位制御及び荷重制御の加工中における切り替えを行う請求項10に記載の微細凹部加工方法。
【請求項12】
請求項4〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いてワークの表面に微細凹部を形成するに際して、制御手段により、加工形状測定手段で検出される微細凹部の加工深さの分布に基づいて、荷重測定手段で検出したワーク表面の位置からの加工工具の相対的な変位が所定の変位となるように制御する変位測定手段による変位制御と、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重が所定の荷重となるように制御する荷重制御との2種類の制御を加工中に切り替えることを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を摺動面に有することを特徴とする摺動部材。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をシリンダボアの内周面に有することを特徴とするシリンダブロック。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をクランクジャーナル部に有することを特徴とするクランク。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をクランクピン部に有することを特徴とするクランク。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をカムジャーナル部に有することを特徴とするカム。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をカムロブ部に有することを特徴とするカム。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をジャーナル部に有することを特徴とするバランサシャフト。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用エンジンのシリンダブロックにおけるシリンダボア(円形孔)の内周面や、クランクジャーナル,クランクピン,カムジャーナルなどの部材の外周面に、低フリクション化を実現するための微細な凹部(油だまり)を形成するのに用いられる微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの表面に微細凹部を形成する方法としては、例えば、周知の転造装置に、ワークとともに微細な形状の圧子を押込むことで、微細凹部をワークに転写して形成する加工方法がある。
【非特許文献1】社団法人 日本機械学会 「機械工学便覧」昭和63年5月15日、B2−111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記したような、転造装置にワークとともに微細な形状の圧子を押込む加工方法にあっては、圧子の変位及び荷重のいずれか一方が所定量となるように制御されることから、圧子の形状や材料特性、あるいは、圧子の押込み深さや押込み荷重によって、押込み変位と押込み荷重との関係が大幅に変化すると、微細凹部の形状、例えば加工深さのばらつきが大きくなってしまう可能性があるという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0004】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたものであり、ワークに負荷される荷重及び加工工具の変位を測定演算して、ワーク負荷荷重及び加工工具の変位の双方を制御することができ、その結果、ワークの材質や加工工具の形状の違いに起因する塑性変形挙動の変化による微細凹部の形状のばらつきを少なく抑えることが可能である微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワークの表面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、表面に微細な凹凸を具備した加工工具と、この加工工具をワークに接近離間させて加工工具の表面を上記ワークの表面に押し付け可能とした押圧機構と、この押圧機構によってワークに負荷される荷重を測定する荷重測定手段と、上記加工工具の変位を測定する変位測定手段を備え、上記荷重測定手段及び変位測定手段の双方からの信号を演算して、上記加工工具に加えられる荷重及び加工工具の変位を制御する制御手段を設けた構成としたことを特徴としており、この微細凹部加工装置の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0006】
一方、本発明の微細凹部加工方法は、上記した微細凹部加工装置を用いてワークの表面に微細凹部を形成するに際して、荷重測定手段によって加工工具がワーク表面に接触するのを検出し、制御手段により、ワーク表面の位置からの相対的な変位を加工工具のワーク表面への押込み変位量として設定して、上記加工工具の相対的な変位が所定の変位となるように制御する変位測定手段による変位制御と、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重が所定の荷重となるように制御する荷重制御との2種類の制御を加工中に切り替えて加工する構成としたことを特徴としており、この微細凹部加工方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0007】
本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法では、制御手段によって、ワークに負荷される荷重及び加工工具の変位をそれぞれ測定して演算し、変位測定手段による変位制御と荷重測定手段による荷重制御との2種類の制御を加工中に切り替えて加工するようになせば、ワーク負荷荷重及び加工工具の変位の双方を制御し得ることとなり、その結果、ワークの材質や加工工具の形状の違いにかかわりなく、ワークの表面の被加工部位全域にわたって、微細凹部をほとんどばらつきなく形成し得ることとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワークに負荷される荷重及び加工工具の変位を測定演算して、ワーク負荷荷重及び加工工具の変位の双方を制御することが可能であり、したがって、ワークの材質や加工工具の形状の違いに起因する塑性変形挙動の変化による微細凹部の形状のばらつきを少なく抑えることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の微細凹部加工装置において、制御手段は、荷重測定手段で検出したワーク表面の位置からの加工工具の相対的な変位が所定の変位となるように制御する変位測定手段による変位制御と、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重が所定の荷重となるように制御する荷重制御との2種類の制御を加工中に切り替え可能としている構成としたり、制御手段は、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重と、変位測定手段で検出される加工工具の変位とを常にモニタして記録し、検出された荷重と変位との各変化率を演算して得た演算結果に基づいて、変位制御及び荷重制御の加工中における切り替えを可能としている構成としたりすることが可能であり、いずれの場合も、ワークの材質や加工工具の形状の違いに起因する塑性変形挙動の変化による微細凹部の形状のばらつきをより少なく抑え得ることとなる。
【0010】
また、本発明の微細凹部加工装置において、加工後のワークの表面に形成された微細凹部の形状を測定する加工形状測定手段を設け、制御手段は、加工形状測定手段で検出される微細凹部の加工深さの分布に基づいて、変位制御及び荷重制御の加工中における切り替えを可能としている構成とすることも可能であり、この場合には、加工後のワークの表面に形成された微細凹部の形状を測定し、その形状のばらつきから変位制御及び荷重制御のうちのいずれかを選択して加工を行うことができるので、ばらつきのより一層少ない微細凹部の加工を行い得ることとなる。
【0011】
さらに、本発明の微細凹部加工装置において、押圧機構が、圧電素子によって動作するアクチュエータである構成としたり、押圧機構が、超磁歪素子によって動作するアクチュエータである構成としたり、押付機構が、コイルばねを具備している構成としたりすることができる。
【0012】
押圧機構が、圧電素子によって動作するアクチュエータである構成とすると、ワークの表面に対する加工工具の押し付けを高速で行い得ることとなって、加工時間の短縮化が図られることとなり、押圧機構が、超磁歪素子によって動作するアクチュエータである構成とすると、ワークの表面に対する加工工具の押し付けをより高速で行い得ることとなって、加工時間のさらなる短縮化が図られることとなり、加えて、同じサイズの超磁歪素子であれば、より大きな変位が得られるので、装置の小型化をも図られることとなり、押付機構が、コイルばねを具備している構成とすると、ワークの精度や振動などの外乱による荷重の変動を低減し得ることとなる。
【0013】
さらにまた、本発明の微細凹部加工装置において、加工工具は、その表面に多数の微細な突起を具備している構成を採用することが可能であり、この構成を採用すると、ワークの表面の被加工部位全域にわたって、短時間で複数の微細凹部を加工し得ることとなる。
【0014】
さらにまた、本発明の微細凹部加工装置において、外周面に多数の微細な突起を具備して、ローラ軸回りに回転する加工ローラを加工工具とした構成とすることができ、この構成を採用すると、加工ローラを回転させながら加工を行うことで、ワークの表面の被加工部位全域にわたって、短時間のうちに微細凹部を加工し得ることとなる。
【0015】
一方、本発明の微細凹部加工方法において、制御手段により、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重と、変位測定手段で検出される加工工具の変位とを常にモニタして記録し、検出された荷重と変位との各変化率を演算して得た演算結果に基づいて、変位制御及び荷重制御の加工中における切り替えを行う構成とすることができ、この場合にも、ワークの材質や加工工具の形状の違いにかかわりなく、ワークの表面の被加工部位全域にわたって、微細凹部をほとんどばらつきなく形成し得ることとなる。
【0016】
また、本発明の微細凹部加工方法において、加工形状測定手段を有する微細凹部加工装置を用いてワークの表面に微細凹部を形成するに際して、制御手段により、加工形状測定手段で検出される微細凹部の加工深さの分布に基づいて、変位測定手段で検出したワーク表面の位置からの加工工具の相対的な変位が所定の変位となるように制御する変位測定手段による変位制御と、荷重測定手段で検出されるワーク負荷荷重が所定の荷重となるように制御する荷重制御との2種類の制御を加工中に切り替える構成とすることが可能であり、この構成を採用すると、ばらつきのより一層少ない微細凹部の加工を行い得ることとなる。
【0017】
そして、上記した微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を摺動面に有する摺動部材、例えば、図15に示すように、微細凹部TをシリンダボアBの内周面Baに有するエンジンのシリンダブロックSBは、ピストンが摺動するシリンダボアBの内周面Baの摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
【0018】
一方、上記した微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を摺動面としての外周面に有する摺動部材、例えば、図16に示すように、クランクジャーナル部Caやクランクピン部Cbに微細凹部Tを有するクランクC、カムジャーナル部やカムロブ部に微細凹部を有するカム、ジャーナル部に微細凹部を有するバランサシャフトなどのエンジン用部材は、摺動面である外周面の摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
図1及び図2に示すように、この微細凹部加工装置1は、平板状のワークWの表面に微細凹部を形成するNC工作機械であって、ワークWを載置して水平面内で移動可能としたステージ2と、ダイヤモンドや超硬合金で作られた微細で高硬度な突起3aを先端部に有する加工工具3を着脱可能に取り付けたクロスヘッド4と、このクロスヘッド4を鉛直方向に移動させて加工工具3をワークWの表面Waに押し付け可能とした押圧機構としてのサーボモータ5及びボールねじ6と、ステージ2及びクロスヘッド4の移動を制御する制御手段としての演算・制御部7を備えており、クロスヘッド4には、加工工具3に負荷される荷重を測定して演算・制御部7に出力する荷重測定手段としての荷重センサ8と、加工工具3とワークWの変位を測定して演算・制御部7に出力する変位測定手段としての変位センサ9が取り付けてある。
【0021】
この微細凹部加工装置1を用いてワークWの表面Waに微細凹部を形成するに際しては、図3に示すように、まず、ワークWをステージ2に取り付け(ステップS1)、加工位置が加工工具3の真下にくるようにステージ2を移動させると共に、加工工具3の先端部がワークWの近傍にくるようにクロスヘッド4を降下させたのち、演算・制御部7に加工深さ(目標の押込み深さや押込み荷重)や加工範囲や加工速度などの加工条件を入力する(ステップS2)。
【0022】
この際、塑性加工では、素材のスプリングバックや材料の塑性流動によって、加工工具3の押込み深さと加工深さが一致しないため、所望の加工深さが得られるような目標押込み深さ及び押込み荷重を予備実験等で明らかにしておき、その値を入力する。なお、加工中の加工工具3の制御は、荷重センサ8から測定される荷重が加工前に設定した目標の荷重になるように制御する荷重制御と、ワーク表面Waからの押込み量が加工前に設定した目標の押込み変位となるように制御する変位制御のいずれかの方式で行う。
【0023】
次に、加工工具3の変位と荷重を測定しながら加工工具3をワークWに接近させて加工を開始する(ステップS3,S4)。ここで、図5(a)に示すように、加工工具3とワークWが接触するまでは、加工工具3の変位のみが増加し荷重は発生しない(図6の状態I)。そして、図5(b)に示すように、加工工具3をワークWに接触させると、荷重が発生する(図6の状態II)。このときのワーク表面Waからの加工工具3の相対的な変位がワーク表面Waからの押込み量となり、変位制御において、このワーク表面Waからの押込み量が目標の押込み量となるように制御する(ステップS5,S6)。
【0024】
さらに、図5(c)に示すように、加工工具3に負荷される荷重及び変位を測定しながら押付けて加工を行い(図6の状態III)、演算・制御部7において、この加工中に順次測定される荷重及び変位に基づいて、所定の時間間隔での押付け荷重と押付け変位の変化割合(傾き)を計算する(ステップS7)。
【0025】
まず、上記変化割合がある割合Aよりも大きい場合(押付け変位に対して押付け荷重の増加が大きい場合:図7中で領域アの場合)は荷重制御を行い(ステップS8〜S10)、これとは逆に、変化割合がある割合Aよりも小さい場合(押付け変位に対して押付け荷重の増加が小さい場合:図7中で領域ウの場合)は変位制御を行う(ステップS8,S11,S12)。
【0026】
ここで、変化割合の大小の基準となる割合Aは、使用する装置の変位や荷重の測定制御精度や予備実験等から事前に決定して入力しておく。また、これと同時に、この変位と荷重の変化割合の時間的変動も演算し、変化割合の増減(図7中における領域ア→イの場合や図7中における領域ウ→エの場合)によって、再度制御方式の選択を行い(ステップS9、S13,S14;ステップS11、S15,S16)、これらの判断に基づいて決定した制御方式によって押付けを終了させる。
【0027】
そして、押付け終了後において、加工工具3をワークWから離間させると(ステップS17)、1回目の加工が終了となる。この間の加工では、加工する深さや荷重による材料の変形挙動に合わせて制御方式を変更しているので、加工される微細凹部の加工深さのばらつきが少なく抑えられる。この後、ステージ2を次の加工位置に移動させて上記加工を再度行い、これらの作業を複数回繰り返して、加工面範囲全面に微細凹部を形成する(ステップS18,S19)。
【0028】
この際、図2(b)に示すように、微細な突起3aを複数有する加工工具3を使用すると、加工回数を少なくすることができ、その結果、加工時間の短縮が図られることとなる。
【0029】
また、初めに加工した時の最終的な制御方式が荷重制御(図7中における領域ア又は領域エの場合)であり、且つ、ワークWの加工範囲全域が均一な材料特性であることが判っているのであれば(ステップS20)、2回目以降は上記したような制御方式の変更を行わず、加工工具3に働く荷重の測定及びこの測定値による荷重制御を行うようになすことで(ステップS21;図4に示すフローチャートにおけるステップS22〜S28)、微細凹部の加工深さのばらつきを少なく抑えつつ、加工制御の簡素化及び加工速度の向上をを実現できる。
【0030】
上記した実施例では、加工工具3をワークWの表面Waに押し付け可能とした押圧機構が、サーボモータ5及びボールネジ6を具備している場合を示したが、これに限定されるものではなく、他の構成として、例えば、図8に示すように、押付機構として、圧電素子(あるいは超磁歪素子)によって動作するアクチュエータ15を採用することができる。
【0031】
圧電素子によって動作するアクチュエータ15を押圧機構とした場合には、ワークWの表面Waに対する加工工具3の押し付けを高速で行い得ることとなって、加工時間の短縮化が図られることとなり、この際、アクチュエータ15が超磁歪素子によって動作するように成すと、ワークWの表面Waに対する加工工具3の押し付けをより高速で行い得ることとなって、加工時間のさらなる短縮化が図られることとなり、加えて、同じサイズの超磁歪素子であれば、より大きな変位が得られるので、装置の小型化をも図られることとなる。
【0032】
また、図9に示すように、押付機構が、アクチュエータ25及びコイルばね26を具備している構成としてもよく、この場合には、ワークの精度や振動などの外乱による荷重の変動を低減し得ることとなる。
【0033】
図10は、本発明の他の実施例による微細凹部加工装置を示している。この微細凹部加工装置31は、ワークWBの円形孔内周面WBaに微細凹部を形成するものであって、鉛直方向の回転軸L回りに回転する主軸32と、先端部に微細な凹凸を具備した加工工具33と、この加工工具33を支持する工具支持部34と、この工具支持部34を主軸32と直交する方向に移動可能に保持するハウジング35と、中心軸を主軸32の回転軸Lに合致させたワークWBの円形孔内周面WBaに加工工具33を接近離間させてその先端部の微細な凹凸を押し付け可能とした押圧機構40を備えており、工具支持部34は、その加工工具33とは反対側に設けたスプラインシャフト34aをハウジング35に設けたスプラインナット35aに摺動可能に嵌合することで、主軸32と直交する方向に移動可能となっている。
【0034】
上記押圧機構40は、工具支持部34とハウジング35との間に位置させた圧縮コイルばね41と、ハウジング35の上端に内蔵した図示しないステッピングモータを具備しており、この押圧機構40のステッピングモータの作動により、ハウジング35の全体をワークWBの円形孔内周面WBaに対して接近させて、圧縮コイルばね41により加工工具33に対して主軸32と直交する方向の荷重を付与することで、円形孔内周面WBaに加工工具33の微細な凹凸を押し付けるようにしている。
【0035】
また、この微細凹部加工装置31は、押圧機構40の図示しないステッピングモータの動作を制御する制御手段としての演算・制御部37を備えており、ハウジング35と圧縮コイルばね41との間には、加工工具33に負荷される荷重を測定して演算・制御部37に出力する荷重測定手段としての荷重センサ38が設けてあると共に、工具支持部34とハウジング35との間には、加工工具33とワークWBの変位を測定して演算・制御部37に出力する変位測定手段としての変位センサ39が設けてある。
【0036】
この微細凹部加工装置31では、上記した構成としているので、ワークWBの円形孔内周面WBaの被加工部位全域にわたって、微細凹部をほとんどばらつきなく形成し得ることとなる。
【0037】
図11及び図12は、本発明のさらに他の実施例による微細凹部加工装置を示している。図11に示すように、この微細凹部加工装置51は、外周面に微細な突起53aを具備してローラ軸52回りに回転する加工ローラ53と、この加工ローラ53を上記ローラ軸52と平行を成す主軸(回転軸)54回りに回転するワークWCに接近離間させて加工ローラ53の突起53aを上記ワークWCの外周面WCaに押し付け可能とした押圧機構60と、上記加工ローラ53のワークWCに対する押し付け荷重を測る荷重測定手段としての荷重センサ58と、加工ローラ53とワークWCの変位を測定する変位測定手段としての変位センサ59と、荷重センサ58及び変位センサ59の双方からの信号を演算して加工ローラ53に加えられる荷重及び加工ローラ53の変位を制御する演算・制御部57を備えている。
【0038】
押圧機構60は、油圧等のアクチュエータ65の作動により上下方向に往復移動するスライダ61と、このスライダ61に支持されるハウジング62と、ローラ軸52を介して加工ローラ53を支持してハウジング62に対して上下方向に進退可能としたアーム63と、このアーム63を介して加工ローラ53をワークWCに押し付けるコイルばね64を備えている。
【0039】
この微細凹部加工装置51では、ワークWCをチャック55を介して主軸54に取り付け、加工部位が加工ローラ53の真下に位置するように移動させる。また、これと同時に、加工ローラ53の先端がワークWCの近傍に位置するように、アクチュエータ65によって加工ローラ53を降下させる。
【0040】
このとき、図12に示すように、アーム63にはロケートピン65が設けてあり、このロケートピン65で加工ローラ53を固定することによって、その外周面に配置した複数の微細突起53aのうちのいずれか1つの微細突起53aを、ワークWCに対して垂直に対向させることができるようにしている。
【0041】
この後、上記した先の実施例と同様の加工順序でワークWCに加工ローラ53の微細突起53aを押付けるが、この際の制御方式やその選択方法は、先の実施例と同じである。
【0042】
そして、所定の位置まで加工ローラ53を押込んだ後、加工前に加工ローラ53を固定していたロケートピン65を加工ローラ53から離間させて、加工ローラ53の回転をフリーにする。
【0043】
また、これと同時に、このときの押付け荷重を演算・制御部57で記録し、続いて、加工ローラ53をワークWCに押付けながらワークWCを回転させ、被加工部位全域にわたって微細凹部を形成する。
【0044】
この際、ワークWCの精度等による変位のばらつきを考慮して、加工ローラ53の回転中は初めの押付け終了時に記録した荷重で一定になるように制御するようになせば、被加工部位全域にばらつきの少ない微細凹部を高速加工し得ることとなる。
【0045】
図13及び図14は、本発明のさらに他の実施例による微細凹部加工装置を示している。図13に示すように、この微細凹部加工装置71が先の実施例による微細凹部加工装置1と相違するところは、押付機構として、圧電素子(あるいは超磁歪素子)によって動作するアクチュエータ75を採用し、加工後のワークWの表面Waに形成された微細凹部Tの形状を測定する加工形状測定手段としてのレーザ変位計76(渦電流式測定機や触針式測定機でもよい)を設けた点にあり、他の構成は、先の実施例による微細凹部加工装置1と同じである。
【0046】
この微細凹部加工装置71では、加工部位が加工工具3の真下に位置するようにワークWを移動させる。また、これと同時に、加工工具3の先端がワークWの近傍に位置するように、アクチュエータ75によって加工工具3を降下させたのち、演算・制御部7に加工深さ(目標の押込み深さや押込み荷重)や加工範囲や加工速度などの加工条件を入力する。
【0047】
これに続いて加工を開始するが、加工中の制御は、先の実施例で説明した荷重制御及び変位制御のいずれの制御を用いてよい。荷重制御及び変位制御のいずれかの制御方式で所定回数の加工を行い、加工された微細凹部Tの加工深さをレーザ変位計76によって測定し、この測定結果を演算・制御部7に出力して、標準偏差や分散などの分布ばらつきを計算する。
【0048】
次いで、上記の制御方式とは別の制御方式で同じ回数の加工を行い、上記と同様に加工形状をレーザ変位計76で測定して、標準偏差や分散などの分布ばらつきを計算する。
【0049】
そして、これらのばらつきを、図14に示すようにして比較し、よりばらつきが少ない制御方式でその後の加工を行う(図14中では制御Aとする)が、この後の加工中も引き続き加工深さのばらつきを測定して演算し、加工範囲の材料特性の変化等によってばらつきが増加した場合は、再度制御方式の変更を行う。このように、レーザ変位計76で検出される微細凹部Tの加工深さの分布に基づいて、変位制御及び荷重制御の変更を行いつつ加工をなすことで、被加工部位全域にわたって加工深さばらつきの少ない微細凹部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の微細凹部加工装置の一実施例を示す正面説明図である。(実施例1)
【図2】図1における微細凹部加工装置の加工工具先端部分の斜視説明図(a)及び微細突起を多数配置した加工工具先端部分の斜視説明図(b)である。(実施例1)
【図3】図1に示した微細凹部加工装置による加工の制御フローチャートである。(実施例1)
【図4】図1に示した微細凹部加工装置による加工の荷重制御のみの場合のフローチャートである。(実施例1)
【図5】図1に示した微細凹部加工装置による加工中のワークと加工工具との相対変位説明図(a)〜(c)である。
【図6】図5のワークと加工工具との相対変位に対応する押付け荷重,変位と時間との関係を表すグラフである。
【図7】図1に示した微細凹部加工装置の加工工具の押付け荷重と押付け変位との関係を表すグラフである。
【図8】図1における微細凹部加工装置の他の構成例を示す正面説明図である。
【図9】図1における微細凹部加工装置のさらに他の構成例を示す正面説明図である。
【図10】本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を示す断面説明図である。(実施例2)。
【図11】本発明の微細凹部加工装置のさらに他の実施例を示す正面説明図である。(実施例3)。
【図12】図11における微細凹部加工装置の加工ローラの拡大側面図である。
【図13】本発明の微細凹部加工装置のさらに他の実施例を示す正面説明図である。(実施例4)
【図14】図13の微細凹部加工装置により形成された微細凹部の加工形状のばらつき具合を示すグラフである。
【図15】本発明の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をシリンダボアの内周面に有するシリンダブロックの平面説明図(a),微細凹部形成部分の拡大断面説明図(b)及びシリンダブロックの断面説明図(c)である。
【図16】本発明の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をクランクジャーナル部やクランクピン部に有するクランクの正面説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1,31,51,71 微細凹部加工装置
3,33 加工工具
5 サーボモータ(押圧機構)
6 ボールねじ(押圧機構)
7,37,57 演算・制御部(制御手段)
8,38,58 荷重センサ(荷重測定手段)
9,39,59 変位センサ(変位測定手段)
15,25,65,75 アクチュエータ(押圧機構)
26,41,64 コイルばね(押圧機構)
40,60 押圧機構
53 加工ローラ(加工工具)
76 レーザ変位計(加工形状測定手段)
B シリンダボア
Ba シリンダボアの内周面
C クランク
Ca クランクジャーナル部
Cb クランクピン部
SB シリンダブロック
T 微細凹部
W,WB,WC ワーク
Wa,WBa,WCa ワークの表面
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲


【公開番号】 特開2008−12585(P2008−12585A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188820(P2006−188820)