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【発明の名称】 微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法
【発明者】 【氏名】上原 義貴

【氏名】太田 稔

【氏名】▲高▼嶋 和彦

【氏名】中山 達臣

【氏名】保田 芳輝

【要約】 【課題】工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供すること。

【構成】凹部形成用の凸部を有するフォームローラ10と、フォームローラを回転自在に支持するローラ支持部材20と、円周面の中心軸とフォームローラの回転軸とが平行となる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダ30と、ローラ支持部材に対して荷重を付与してフォームローラを円周面に圧接させる荷重付与手段40と、フォームローラと被加工物の間のすべりを検出するすべり検出手段70と、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させる荷重制御手段とを備え、被加工物の円周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の円周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、
凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、
フォームローラを回転自在に支持するローラ支持部材と、
円周面の中心軸とフォームローラの回転軸とが平行となる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダと、
ローラ支持部材に対して荷重を付与してフォームローラを円周面に圧接させる荷重付与手段と、
フォームローラと被加工物の間のすべりを検出するすべり検出手段と、
すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させる荷重制御手段と、
を備えることを特徴とする微細凹部加工装置。
【請求項2】
被加工物と工具ホルダが円周面の中心軸回りに相対的に回転できる回転機構を更に有すると共に、すべり検出手段が、フォームローラの接線方向の力を測定するものであることを特徴とする請求項1に記載の微細凹部加工装置。
【請求項3】
すべり検出手段が、フォームローラと被加工物の回転速度差を測定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の微細凹部加工装置。
【請求項4】
すべり検出手段が、ローラ支持部材の歪みを測定するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項5】
すべり検出手段が、被加工物のトルク変動を測定するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項6】
すべり検出手段が、加工後の2個以上の微細形状間の距離を測定するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項7】
荷重制御手段が、すべり検出手段から入力されるフォームローラと各被加工物の間のすべりの平均値を演算し、次の被加工物の円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項8】
荷重制御手段が、すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間の1回転分のすべりの平均値を演算し、被加工物の円周面に対するフォームローラの次の1回転分の圧接荷重を変化させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項9】
荷重制御手段が、すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間のすべりが一定となるように、被加工物の円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項10】
すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間のすべりの変化、又は被加工物の円周面に対するフォームローラの圧接荷重の変化からフォームローラの摩耗を判断する摩耗判断手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項11】
すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間のすべりの変化からフォームローラの破損を判断する破損判断手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つの項に記載の微細凹部加工装置を用い、被加工物の円周面に微細凹部を形成する加工方法であって、
荷重付与手段によりローラ支持部材に荷重を付与してフォームローラの凸部を被加工物の円周面に圧接させ、被加工物の円周面に圧接させたフォームローラを円周面に沿って転動させることにより、同円周面に微細凹部を形成するに当たり、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を荷重制御手段で変化させながら微細凹部を形成することを特徴とする微細凹部加工方法。
【請求項13】
請求項12に記載の微細凹部加工方法によって、円周面に微細凹部を形成したことを特徴とする摺動部材。
【請求項14】
請求項12に記載の微細凹部加工方法によって、円周面に微細凹部を形成したジャーナル及び/又はピンを有することを特徴とするクランクシャフト。
【請求項15】
請求項12に記載の微細凹部加工方法によって、円周面に微細凹部を形成したジャーナル及び/又はカムロブを有することを特徴とするカムシャフト。
【請求項16】
請求項12に記載の微細凹部加工方法によって、円周面に微細凹部を形成したジャーナルを有することを特徴とするバランサシャフト。
【請求項17】
請求項12に記載の微細凹部加工方法によって、円周面に微細凹部を形成したことを特徴とするピストンピン。
【請求項18】
請求項12に記載の微細凹部加工方法によって、円周面に微細凹部を形成したシリンダボアを有することを特徴とするシリンダブロック。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法に係り、更に詳細には、例えば自動車用エンジンにおけるシリンダブロックのシリンダボアの内周面や、カムシャフトのジャーナル部やピストンの外周面などのように摺動接触を伴う被加工物の内周面や外周面などの円周面に、低フリクション化を実現するための微細凹部(油だまり)を形成するのに用いられる微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外周面に凹凸のあるローラを被加工物に所定の荷重で押し込み、被加工物を回転させ、被加工物表面に微細な凹凸を形成する加工装置や加工方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−361351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フォームローラの外周部に設けられた突起の摩耗によって、フォームローラと被加工物との接触状態(面圧)が変化し、加工される微細形状の加工深さにばらつきが発生することがあった。
また、被加工物の硬さのばらつきなどによっても、同様に、加工される微細形状の加工深さにばらつきが発生することがあった。
そして、従来は、加工深さの測定は、加工後に粗さ計や非接触式の3次元測定器を使用して深さを測定する必要があり、上記のような理由によって発生する加工深さのばらつきを判断するために非常に多くの時間を要していた。
【0004】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねたところ、荷重付与手段によりローラ支持部材に荷重を付与してフォームローラの凸部を被加工物の円周面に圧接させ、被加工物の円周面に圧接させたフォームローラを円周面に沿って転動させることにより、同円周面に微細凹部を形成するに当たり、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を荷重制御手段で変化させながら微細凹部を形成することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の微細凹部加工装置は、被加工物の円周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、フォームローラを回転自在に支持するローラ支持部材と、円周面の中心軸とフォームローラの回転軸とが平行となる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダと、ローラ支持部材に対して荷重を付与してフォームローラを円周面に圧接させる荷重付与手段と、フォームローラと被加工物の間のすべりを検出するすべり検出手段と、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させる荷重制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の微細凹部加工方法は、上記本発明の微細凹部加工装置を用い、被加工物の円周面に微細凹部を形成する加工方法であって、荷重付与手段によりローラ支持部材に荷重を付与してフォームローラの凸部を被加工物の円周面に圧接させ、被加工物の円周面に圧接させたフォームローラを円周面に沿って転動させることにより、同円周面に微細凹部を形成するに当たり、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を荷重制御手段で変化させながら微細凹部を形成することを特徴とする。
【0008】
更に、本発明の摺動部材、クランクシャフト、カムシャフト、バランサシャフト、ピストンピン及びシリンダブロックは、それぞれ円周面に微細凹部を形成したこと、円周面に微細凹部を形成したジャーナル及びカムロブの少なくとも一方を有すること、円周面に微細凹部を形成したことジャーナルを有すること、円周面に微細凹部を形成したこと、並びに円周面に微細凹部を形成したシリンダボアを有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷重付与手段によりローラ支持部材に荷重を付与してフォームローラの凸部を被加工物の円周面に圧接させ、被加工物の円周面に圧接させたフォームローラを円周面に沿って転動させることにより、同円周面に微細凹部を形成するに当たり、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を荷重制御手段で変化させながら微細凹部を形成することなどとしたため、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の微細凹部加工装置について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の微細凹部加工装置は、被加工物の円周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、フォームローラを回転自在に支持するローラ支持部材と、円周面の中心軸とフォームローラの回転軸とが平行となる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダと、ローラ支持部材に対して荷重を付与してフォームローラを円周面に圧接させる荷重付与手段と、フォームローラと被加工物の間のすべりを検出するすべり検出手段と、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させる荷重制御手段とを備え、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る。
【0011】
また、本発明の微細凹部加工装置においては、被加工物と工具ホルダが円周面の中心軸回りに相対的に回転できる回転機構を更に有すると共に、備えるすべり検出手段を、フォームローラの接線方向の力を測定するものとすることができ、これによって、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る。
【0012】
更に、本発明の微細凹部加工装置においては、備えるすべり検出手段を、フォームローラと被加工物の回転速度差を測定するものとすることができ、これによって、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る。また、すべりの検出速度が早いので、インプロセスで加工深さの判断をすることができ、加工深さのばらつきをより抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明の微細凹部加工装置においては、備えるすべり検出手段を、ローラ支持部材の歪みを測定するものとすることができ、これによって、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る。また、すべりの検出をローラ維持部材の歪みから検出することができるので、装置構成を簡略化することができるという利点がある。
【0014】
更に、本発明の微細凹部加工装置においては、備えるすべり検出手段を、被加工物のトルク変動を測定するものとすることができ、これによって、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る。また、すべりの検出を被加工物のトルクから検出することができるので、装置構成を簡略化することができるという利点がある。
【0015】
更にまた、本発明の微細凹部加工装置においては、備えるすべり検出手段を、加工後の2個以上の微細形状間の距離を測定するものとすることができ、これによって、工具摩耗や被加工物の硬さのばらつきによる加工深さのばらつきを抑制し得る。また、すべりの検出を加工後の微細形状間の距離から検出することができるので、装置構成を簡略化することができるという利点がある。
【0016】
また、本発明の微細凹部加工装置においては、備える荷重制御手段を、すべり検出手段から入力されるフォームローラと各被加工物の間のすべりの平均値を演算し、次の被加工物の円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させるものとすることができるので、各被加工物間の加工深さやパターンのばらつきをより低減することができる。
【0017】
更に、本発明の微細凹部加工装置においては、備える荷重制御手段を、すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間の1回転分のすべりの平均値を演算し、被加工物の円周面に対するフォームローラの次の1回転分の圧接荷重を変化させるものとすることができるので、1つの被加工物内での加工深さやパターンのばらつきをより低減することができる。
【0018】
更にまた、本発明の微細凹部加工装置においては、備える荷重制御手段を、すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間のすべりが一定となるように、被加工物の円周面に対するフォームローラの圧接荷重を変化させるものとすることができるので、加工深さやパターンのばらつきを更に低減することができる。
【0019】
また、本発明の微細凹部加工装置においては、すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間のすべりの変化、又は被加工物の円周面に対するフォームローラの圧接荷重の変化からフォームローラの摩耗を判断する摩耗判断手段を更に備えるものとすることも可能であり、これによって、フォームローラを直接測定せずに、フォームローラの摩耗が判断できるので、フォームローラの検査工程を省いても、フォームローラを寿命限界まで使用することができるという利点がある。
【0020】
更に、本発明の微細凹部加工装置においては、すべり検出手段から入力されるフォームローラと被加工物の間のすべりの変化からフォームローラの破損を判断する破損判断手段を更に備えるものとすることも可能であり、これによって、フォームローラを直接測定せずに、フォームローラの破損が判断できるので、フォームローラの急な破損による不良品の発生を低減することができる。
【0021】
次に、本発明の微細凹部加工方法、及びこれにより得られる摺動部材等について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の微細凹部加工方法は、上記本発明の微細凹部加工装置を用い、被加工物の円周面に微細凹部を形成する加工方法であって、荷重付与手段によりローラ支持部材に荷重を付与してフォームローラの凸部を被加工物の円周面に圧接させ、被加工物の円周面に圧接させたフォームローラを円周面に沿って転動させることにより、同円周面に微細凹部を形成するに当たり、すべり検出手段から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を荷重制御手段で変化させながら微細凹部を形成する加工方法であって、例えば所望の微細凹部を有する摺動部材やクランクシャフト、カムシャフトバランサシャフト、ピストンピン、シリンダブロックなどを製造することができる。
このような構成とすることにより、加工後の溝深さを測らないでも加工深さの変動を検知することができるので、加工後に加工深さの測定をしなくても、加工深さの品質を管理することができる。つまり、加工品全数の検査をしなくても、抜き取り検査によって品質を管理することができる。
なお、加工深さの品質は、例えば加工深さとすべりの関係を予め実験等により求めておき、その結果より、加工深さの品質限界となるすべりを求め、その値をすべりの限界値として設定することで管理できる。
また、工具摩耗や被加工物のばらつき(形状や硬さなど。)による加工深さの変動を修正することもできる。
そして、このような加工方法で形成した微細凹部は、潤滑油溜まりとなり、また潤滑油の流れを効率的に制御することができるので、摺動部材の摩擦を低減することができる。
また、円周面に微細凹部を形成したジャーナル及びピンの少なくとも一方を有するクランクシャフトや円周面に微細凹部を形成したジャーナル及びカムロブの少なくとも一方を有するカムシャフト、円周面に微細凹部を形成したジャーナルを有するバランサシャフト、円周面に微細凹部を形成したピストンピン、円周面に微細凹部を形成したシリンダボアを有するシリンダブロックにおいても同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1−1)
図1は、本発明の微細凹部加工装置の第1実施例の構成を示す説明図である。同図に示すように、同図に垂直な回転軸を中心に回転可能に保持された被加工物Wが保持されている。そして、本例の微細凹部加工装置は、凹部形成用の凸部を有するフォームローラ10の一例である外周部に微細な突起を有し、高硬度な部材から成る円筒状のフォームローラ12と、フォームローラ12を回転自在に支持するローラ支持部材20の一例であるアーム22と、被加工物Wの円周面の中心軸とフォームローラ12の回転軸とが平行となる状態にローラ支持部材20と後述する荷重付与手段40と荷重付与手段40で発生した荷重を検出する荷重検出器50を保持すると共に、図中のX、Z及びC方向に移動可能な工具ホルダ30の一例であるボディ32と、ローラ支持部材20に対して荷重を付与してフォームローラ12を所定の荷重で円周面に圧接させる荷重付与手段40の一例である弾性体(例えばバネなど。)42と、ローラ支持部材20をほぼ水平方向に支える支持部材60と、フォームローラ12と被加工物Wの間のすべりを検出するすべり検出手段70の一例であるフォームローラ12の接線方向の力を測定するすべり検出器71とを備える。
そして、すべり検出手段70から入力されるデータによって、円周面に対するフォームローラ12の圧接荷重を変化させる荷重制御手段とを更に備える。
なお、荷重検出器は、荷重制御手段の一部を構成する。
【0024】
図2は、本例の微細凹部加工装置を使用した微細凹部加工方法の一実施例を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、Step101(以下、「S101」のように略記する。)において、被加工物を微細凹部加工装置に取り付ける。
次に、S102において、すべりの値の限界値、すべりと荷重の相関データ、工具寿命荷重、加工荷重、加工速度及び加工範囲などの加工条件を入力する。
ここで、「すべりの値」とは、本例においては、すべり検出器で測定された荷重をいう。また、加工深さを一定にしたときのすべりの値(摩擦係数)と圧接荷重とは、図3に示すような相関関係を有する。図3は、加工深さを一定にしたときのすべりの値(摩擦係数)と圧接荷重との関係を示すグラフ図である。このような相関データは、すべりの値の限界値及び工具寿命荷重と共に、事前に予備実験等を行って求めておく。
【0025】
次に、S103において、フォームローラを被加工物の真上に移動させる。
次に、S104において、フォームローラをZ方向に移動させ、被加工物に圧接させる。
このとき、フォームローラはバネなどの弾性体で構成される荷重付与手段を介して押し付けられるので、被加工物の形状が若干変形していても、ほぼ一定の圧接荷重で被加工物に押し付けられる。
【0026】
次に、S105において、圧接荷重がS102で入力された加工荷重となったか否かを判断し、YESの場合には、S106に進む。
【0027】
S106において、フォームローラのZ方向の移動を停止し、被加工物を回転させると共に、フォームローラを被加工物の回転軸方向への送りを開始する。
次に、S107において、すべり検出器により、すべりの値の測定と記録を開始する。
このとき、加工中はすべり検出器により常に測定と記録を行う。
【0028】
次に、S108において、加工範囲全面に加工が終了したか否かを判断し、YESの場合には、S109に進む。
【0029】
S109において、すべり検出器で測定されたすべりの値の平均値を演算する。
次に、S110において、すべりの値の平均値がS102で入力されたすべりの値の限界値以下か否かを判断し、YESの場合には、S111に進む。
【0030】
S111において、加工後の被加工物を取り出す。
次に、S112において、次の被加工物の加工を開始する。
【0031】
一方、S105において、圧接荷重がS102で入力された加工荷重となったか否かを判断し、NOの場合には、S104に進む。
【0032】
また、S108において、加工範囲全面に加工が終了したか否かを判断し、NOの場合には、S106に進む。
【0033】
更に、S110において、すべりの値の平均値がS102で入力されたすべりの値の限界値以下か否かを判断し、NOの場合には、S113に進む。
【0034】
S113において、すべりと荷重の相関データから荷重補正値を計算し、加工荷重を修正する。
次に、S114において、修正加工荷重が工具寿命荷重以下か否かを判断し、YESの場合には、S111に進む。
【0035】
更にまた、S114において、修正加工荷重が工具寿命荷重以下か否かを判断し、NOの場合には、フォームローラの摩耗が著しく大きくなったと判断し、S115に進む。
【0036】
S115において、フォームローラを交換し、修正加工荷重を初期の加工荷重に修正する。
【0037】
なお、すべりの値の記録から図4に示すような急激な変化が検出された場合には、図示しないがフォームローラの外周部の微細な凸部に破損が発生したと判断し、その場でフォームローラを交換してもよい。
このときは、破損した凸部の数を積算し、所定の数となったときに、フォームローラの交換を行ってもよい。
【0038】
また、このような加工方法によって、フォームローラの摩耗や被加工物間の硬さの変化などによる加工深さの変動を管理することもできる。この加工深さの管理によって、加工した微細凹部の加工後に全数測定しなくとも、加工深さの変動を管理することができ、抜き取り検査は必要とするが、加工後の部品を測定する工程を省くことができる。
更に、加工深さのばらつきを所定のばらつき以下に低減することもできる。更にまた、フォームローラを直接測定しなくてもフォームローラの摩耗を判断することができ、フォームローラの測定工程を省くことができ、更にフォームローラを工具寿命限界まで使用することができる。
【0039】
(実施例1−2)
図5は、本発明の微細凹部加工装置の第2実施例の構成を示す説明図である。同図に示すように、本例の微細凹部加工装置は、実施例1の微細凹部加工装置とほぼ同じであるが、フォームローラ12と被加工物Wの間のすべりを検出するすべり検出手段70として、フォームローラ12の接線方向の力を測定するすべり検出器71に代えて、フォームローラ12と被加工物Wの回転速度差を測定する回転速度検出器72を備え、フォームローラ12と被加工物Wの周速度差を測定して、すべりを検出できるようになっている。ここで、すべり速度は、Vw−Vtで算出される。
【0040】
(実施例1−3)
図6は、本発明の微細凹部加工装置の第3実施例の構成を示す説明図である。同図に示すように、本例の微細凹部加工装置は、実施例1の微細凹部加工装置とほぼ同じであるが、フォームローラ12と被加工物Wの間のすべりを検出するすべり検出手段70として、フォームローラ12の接線方向の力を測定するすべり検出器71に代えて、ローラ支持部材20の被加工物Wの接線方向における歪みを測定する歪みゲージ73を備え、ローラ支持部材20の被加工物Wの接線方向における歪みを測定して、すべりを検出できるようになっている。
【0041】
(実施例1−4)
図7は、本発明の微細凹部加工装置の第4実施例の構成を示す説明図である。同図に示すように、本例の微細凹部加工装置は、実施例1の微細凹部加工装置とほぼ同じであるが、フォームローラ12と被加工物Wの間のすべりを検出するすべり検出手段70として、フォームローラ12の接線方向の力を測定するすべり検出器71に代えて、図示しない被加工物Wの回転トルク変動を測定するセンサーを備え、被加工物の回転トルク変動を測定して、すべりを検出できるようになっている。
【0042】
(実施例1−5)
図8(a)は、本発明の微細凹部加工装置の第5実施例の構成を示す説明図である。同図に示すように、本例の微細凹部加工装置は、実施例1の微細凹部加工装置とほぼ同じであるが、フォームローラ12と被加工物Wの間のすべりを検出するすべり検出手段70として、フォームローラ12の接線方向の力を測定するすべり検出器71に代えて、加工後の2個以上の微細形状間の距離を測定する加工形状測定装置75を備え、加工直後の微細形状間の距離を測定して、すべりを検出できるようになっている。なお、同図(b)は、実際に加工された微細形状の様子を示す説明図である。
【0043】
(実施例2)
本例においても、実施例1−1と同様の微細凹部加工装置を使用して被加工物の円周面に微細凹部を形成した。
図9は、本例の微細凹部加工装置を使用した微細凹部加工方法の他の実施例を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、S201において、被加工物を微細凹部加工装置に取り付ける。
次に、S202において、すべりと荷重の相関データ、加工荷重、加工速度及び加工範囲などの加工条件を入力する。
次に、S203において、フォームローラを被加工物の真上に移動させる。
次に、S204において、フォームローラをZ方向に移動させ、被加工物に圧接させる。
次に、S205において、圧接荷重がS202で入力された加工荷重となったか否かを判断し、YESの場合には、S206に進む。
【0044】
S206において、フォームローラのZ方向の移動を停止し、被加工物を回転させると共に、フォームローラを被加工物の回転軸方向への送りを開始する。
次に、S207において、すべり検出器により、すべりの値の測定と記録を開始する。
このとき、加工中はすべり検出器により常に測定と記録を行う。
【0045】
次に、S208において、加工範囲全面に加工が終了したか否かを判断し、YESの場合には、S209に進む。
【0046】
S209において、すべり検出器で測定されたすべりの値の平均値を演算し、直前の被加工物におけるすべりの値の平均値との差を更に演算する。
次に、S210において、すべりと荷重の相関データから荷重補正値を計算し、加工荷重を修正する。
次に、S211において、加工後の被加工物を取り出す。
次に、S212において、次の被加工物の加工を開始する。
【0047】
また、S205において、圧接荷重がS202で入力された加工荷重となったか否かを判断し、NOの場合には、S204に進む。
【0048】
更に、S208において、加工範囲全面に加工が終了したか否かを判断し、NOの場合には、S206に進む。
【0049】
このような加工方法によって、加工された被加工物間で、加工深さやパターンのばらつきが少ない微細形状を加工することができる。
【0050】
(実施例3)
本例においても、実施例1−1と同様の微細凹部加工装置を使用して被加工物の円周面に微細凹部を形成した。
図10は、本例の微細凹部加工装置を使用した微細凹部加工方法の更に他の実施例を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、S301において、被加工物を微細凹部加工装置に取り付ける。
次に、S302において、加工荷重、加工速度及び加工範囲などの加工条件を入力する。
次に、S303において、フォームローラを被加工物の真上に移動させる。
次に、S304において、フォームローラをZ方向に移動させ、被加工物に圧接させる。
次に、S305において、圧接荷重がS302で入力された加工荷重となったか否かを判断し、YESの場合には、S306に進む。
【0051】
S306において、フォームローラのZ方向の移動を停止し、被加工物を回転させると共に、フォームローラを被加工物の回転軸方向への送りを開始する。
次に、S307において、すべり検出器により、すべりの値の測定と記録を開始する。
このとき、加工中はすべり検出器により常に測定と記録を行う。
【0052】
次に、S308において、すべりの値が変化したか否かを判断し、YESの場合には、S309に進む。
【0053】
S309において、すべりの値が増加したか否かを判断し、YESの場合には、S310に進む。
【0054】
S310において、圧接荷重を減少させる。
次に、S311において、加工範囲全面に加工が終了したか否かを判断し、YESの場合には、S312に進む。
【0055】
S312において、加工後の被加工物を取り出す。
次に、S313において、次の被加工物の加工を開始する。
【0056】
また、S305において、圧接荷重がS302で入力された加工荷重となったか否かを判断し、NOの場合には、S304に進む。
【0057】
更に、S308において、すべりの値が変化したか否かを判断し、NOの場合には、S311に進む。
【0058】
また、S309において、すべりの値が増加したか否かを判断し、NOの場合には、S314に進む。
【0059】
S314において、圧接荷重を増加させる。
【0060】
更に、S311において、加工範囲全面に加工が終了したか否かを判断し、NOの場合には、S306に進む。
【0061】
このような加工方法により、即ち、すべりの値が一定になるように圧接荷重を制御し、これを加工範囲全面に微細凹部が形成されるまで行うことによって、同一の部品内で加工深さのばらつきが少なく、均一なパターンの微細凹部を形成することができる。
【0062】
以上、本発明を若干の実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施例では、円筒形状の外周面に微細凹部を加工する場合を説明したが、円筒形状の内周面に微細凹部を加工する場合においても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
また、上記の実施例で示した微細凹部加工方法を例えば自動車用のクランクやカム、バランサなどの摺動部材の摺動部に適用することによって、加工された微細形状が潤滑油溜りとして機能したり、潤滑油の流れを制御したりすることができ、その摩擦を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の微細凹部加工装置の第1実施例の構成を示す説明図である。
【図2】本例の微細凹部加工装置を使用した微細凹部加工方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図3】加工深さを一定にしたときのすべりの値(摩擦係数)と圧接荷重との関係を示すグラフ図である。
【図4】すべりの値の記録を示すグラフ図である。
【図5】本発明の微細凹部加工装置の第2実施例の構成を示す説明図である。
【図6】本発明の微細凹部加工装置の第3実施例の構成を示す説明図である。
【図7】本発明の微細凹部加工装置の第4実施例の構成を示す説明図である。
【図8】本発明の微細凹部加工装置の第5実施例の構成を示す説明図(a)及び実際に加工された微細形状の様子を示す説明図(b)である。
【図9】本例の微細凹部加工装置を使用した微細凹部加工方法の他の実施例を示すフローチャートである。
【図10】本例の微細凹部加工装置を使用した微細凹部加工方法の更に他の実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10,12 フォームローラ
20 ローラ支持部材
22 アーム
30 工具ホルダ
32 ボディ
40 荷重付与手段
42 弾性体
50 荷重検出器
60 支持部材
70 すべり検出手段
71 すべり検出器
72 回転速度検出器
73 歪みゲージ
75 加工形状測定装置
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲


【公開番号】 特開2008−12559(P2008−12559A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185361(P2006−185361)