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【発明の名称】 外スプラインの転造装置及び転造方法
【発明者】 【氏名】山崎 卓矢

【要約】 【課題】コストの上昇を抑制しながらワークに成形されるスプラインの精度を向上させる。

【構成】本発明の外スプラインの転造装置は、加工対象であるワーク2と一体回転するワーク軸3と、複数の加工歯を外周に有するローラダイス4と一体回転するダイス軸5と、ワーク軸又はダイス軸を回転駆動する軸駆動手段と、ワーク軸及びダイス軸にそれぞれ設けられ、互いに噛み合うことでワーク軸の回転とダイス軸の回転とを同期させるシンクロギア6、7とを備え、ワーク軸とダイス軸とが同期回転しているとき、ローラダイスをワークに押し込み、ローラダイスの押し込み量が全押し込み量の一部である所定の押し込み量を超えたとき、シンクロギアの締結を解除して、ローラダイスの押し込み量が全押し込み量となるまでローラダイスをさらに押し込む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象であるワークと一体回転するワーク軸と、
複数の加工歯を外周に有するローラダイスと一体回転するダイス軸と、
前記ワーク軸又は前記ダイス軸を回転駆動する軸駆動手段と、
前記ワーク軸及び前記ダイス軸にそれぞれ設けられ、互いに噛み合うことで前記ワーク軸の回転と前記ダイス軸の回転とを同期させるシンクロギアと、
前記ワーク軸と前記ダイス軸とが同期回転しているとき、前記ローラダイスを前記ワークに押し込む押し込み手段と、
前記ローラダイスの押し込み量が全押し込み量の一部である所定の押し込み量を超えたとき、前記シンクロギアの締結を解除するシンクロギア解放手段と、
を備え、
前記押し込み手段は、前記シンクロギアの締結を解除した後、前記ローラダイスの押し込み量が全押し込み量となるまで前記ローラダイスをさらに押し込むことを特徴とする外スプラインの転造装置。
【請求項2】
前記軸駆動手段は前記ワーク軸を回転駆動することを特徴とする請求項1に記載の外スプラインの転造装置。
【請求項3】
前記ローラダイスは前記ワーク及び前記シンクロギアより幅が大きく、
前記シンクロギア解放手段は、前記ダイス軸又は前記ワーク軸を軸方向にスライドさせるスライド機構であることを特徴とする請求項1又は2に記載の外スプラインの転造装置。
【請求項4】
前記シンクロギア解放手段は、前記ダイス軸に設けられるシンクロギアと前記ダイス軸との間に設けられ、前記シンクロギアが一方に回転するとき前記シンクロギアと前記ダイス軸との間を締結し、他方に回転するとき前記シンクロギアと前記ダイス軸との間を解放するワンウェイクラッチであることを特徴とする請求項1又は2に記載の外スプラインの転造装置。
【請求項5】
加工対象であるワークと一体回転するワーク軸と、複数の加工歯を外周に有するローラダイスと一体回転するダイス軸とのうち一方を駆動する工程と、
前記ワーク軸の回転と前記ダイス軸の回転とをシンクロギアによって同期させる工程と、
前記ワーク軸と前記ダイス軸とが同期回転しているとき、前記ローラダイスを前記ワークに押し込む工程と、
前記ローラダイスの押し込み量が全押し込み量の一部である所定の押し込み量を超えたとき、前記シンクロギアの締結を解除する工程と、
前記シンクロギアの締結を解除した後、前記ローラダイスの押し込み量が全押し込み量となるまで前記ローラダイスをさらに押し込む工程と、
を含むことを特徴とする外スプラインの転造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は外スプラインの転造装置及び転造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークと歯車状のローラダイスとを同期回転させながらローラダイスをワークに押し込むことでワークの外周部にスプラインを成形する転造装置が知られている。ワーク及びローラダイスの各回転軸にはシンクロギアが設けられ、このシンクロギアを締結することでワークとローラダイスとを同期回転させる構成が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2001−239342公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ワークのスプラインの成形がほとんど完了したとき、ワークとローラダイスとが互いに噛み合ってシンクロギアと同様に作用するので、ワーク軸とダイス軸との間で回転駆動力が伝達される箇所がシンクロギア間とワーク−ローラダイス間との2箇所となる。
【0004】
これにより、シンクロギアにガタなどがあるとシンクロギア間とワーク−ローラダイス間との間のギア比にずれを生じ、ローラダイスの歯とこれに対応するワーク外周のスプラインとの相対的な位置がずれる可能性がある。ワークはローラダイスより強度が低いので、この位置ずれに相当する分ワークが余計に押し込まれてワークのスプラインの精度が悪化する。
【0005】
また、シンクロギアを設けずワーク側の回転軸とダイス側の回転軸とをそれぞれNC制御によって同期させる方法も知られているが、2つの軸をNC制御するための装置が必要となりコストが上昇する。
【0006】
本発明は、コストの上昇を抑制しながらワークに成形されるスプラインの精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外スプラインの転造装置は、加工対象であるワークと一体回転するワーク軸と、複数の加工歯を外周に有するローラダイスと一体回転するダイス軸と、ワーク軸又はダイス軸を回転駆動する軸駆動手段と、ワーク軸及びダイス軸にそれぞれ設けられ、互いに噛み合うことでワーク軸の回転とダイス軸の回転とを同期させるシンクロギアと、ワーク軸とダイス軸とが同期回転しているとき、ローラダイスをワークに押し込む押し込み手段と、ローラダイスの押し込み量が全押し込み量の一部である所定の押し込み量を超えたとき、シンクロギアの締結を解除するシンクロギア解放手段とを備え、押し込み手段は、シンクロギアの締結を解除した後、ローラダイスの押し込み量が全押し込み量となるまでローラダイスをさらに押し込む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワーク軸とダイス軸とをシンクロギアで同期回転させながらローラダイスをワークに押し込んでワークにスプラインを形成する際に、ローラダイスの押し込み量が所定量を超えたときシンクロギアの締結を解除することにより、ワーク軸とダイス軸との間で回転駆動力が伝達される箇所が1箇所となり、シンクロギアの噛み合いとワーク−ローラダイス間の噛み合いとの間にずれを生じることがないので、ワークのスプラインの精度を向上させることができる。また、ワーク軸及びダイス軸の2つの軸をNC制御する必要がないのでコストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下では図面等を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本実施形態における外スプラインの転造装置を示す概略構成図である。転造装置1には、加工対象であるワーク2が取り付けられるワーク軸3と、歯車状のローラダイス4が取り付けられるダイス軸5とが平行に近接して配設される。ワーク軸3及びダイス軸5には一対のシンクロギア6、7が互いに噛み合う位置に設けられる。ワーク軸が駆動されることで駆動力がシンクロギア6、7を介してダイス軸5へ伝達され、ワーク軸3及びダイス軸5は同期回転する。
【0011】
ダイス軸5は、ローラダイス4が取り付けられる部分5aと、シンクロギア7が取り付けられる部分5bと、それらを連結するユニバーサルジョイント5cとによって構成される。ダイス軸5にはダイス軸5全体を軸方向にスライドさせるスライド機構8(シンクロギア解放手段)と、ローラダイス4をワーク2に押し込む押し込み機構9(押し込み手段)とが設けられる。これにより、ダイス軸5は軸方向に移動可能であり、ローラダイス4はシンクロギア7に対して径方向に移動可能である。
【0012】
ローラダイス4を径方向にワーク側へ移動させワーク2に押し込んでいくと、ワーク2の外周にはローラダイスの歯形によってスプラインが形成される。これにより、例えばクラッチドラムなどを成形することができる。
【0013】
図2はダイス軸を軸方向へスライドさせた状態を示す概略構成図である。ダイス軸5をスライドさせるとシンクロギア6、7の締結が解除される。また、シンクロギア6、7及びワーク2はともにローラダイス4より幅が狭くなっているので、シンクロギア6、7の締結が解除されてもワーク2とローラダイス4との接触は保持される。
【0014】
次に図3のフローチャートを参照しながら本実施形態における外スプラインの転造装置の作動について説明する。
【0015】
ステップS1では、ワーク軸3とダイス軸5とを同期回転させる。この時点では、まだローラダイス4はワーク2と接触していない。
【0016】
ステップS2では、ワーク2にスプラインを成形するためにローラダイス4に送りを与えてローラダイス4をワーク2に押し込んでいく。これによりローラダイス4がワーク2と接触すると、ワーク2がローラダイス4の歯によって押しつけられて塑性変形し、ワーク2にスプラインが形成される。
【0017】
ステップS3では、押し込み量が所定押し込み量を超えたか否かを判定する。押し込み量が所定押し込み量を超えたときステップS4へ進み、押し込み量が所定押し込み量以下であるときステップS2へ戻ってローラダイス4をワーク2にさらに押し込む。所定押し込み量は、ローラダイス4の全押し込み量の一部であり、スプラインの成形がほぼ完了したことを判断できる程度の値に設定される。所定押し込み量は例えばワーク2にスプラインを形成するのに必要な全押し込み量の9割に設定される。
【0018】
ローラダイス4の押し込み量が所定押し込み量となると、ワーク2とローラダイス4とは十分噛み合い、シンクロギア6、7が締結していなくてもダイス軸5はワーク軸3と同期回転する。
【0019】
ステップS4では、ダイス軸5を軸方向へスライドさせてシンクロギア6、7の締結を解除する。図2に示すようにダイス軸5を軸方向へスライドさせることでシンクロギア6、7の締結は解除されるが、ローラダイス4はワーク2より幅が広いのでローラダイス4とワーク2との接触は保持される。
【0020】
ステップS5では、ローラダイス4の押し込み量が全押し込み量となるまでローラダイス4をワーク2に押し込むことでワーク2の仕上げ転造が行われる。これにより、ワーク2にはローラダイス4の歯形に対応するスプラインが形成される。
【0021】
以上のように本実施形態では、ワーク軸3とダイス軸5とをシンクロギア6、7で同期回転させながらローラダイス4をワーク2に押し込むことでワーク2にスプラインを形成する際に、ローラダイス4の押し込み量が所定量を超えたときダイス軸5をスライドさせることでシンクロギア6、7の締結を解除することにより、ワーク軸3とダイス軸5との間で回転駆動力が伝達される箇所が1箇所となり、シンクロギア6、7の噛み合いとワーク−ローラダイス間の噛み合いとの間にずれを生じることがないので、ワーク2のスプライン精度を向上させることができる。(請求項1、3、5に対応)
また、ワーク軸3及びダイス軸5のうちワーク軸3のみを回転駆動することで、ダイス軸5に回転駆動させるための機構を設ける必要がなく、軸方向にスライドさせる軸と回転駆動する軸とを別々にすることができるので、構造が複雑化することを防止できる。(請求項2に対応)
(第2実施形態)
図4は本実施形態における外スプラインの転造装置を示す概略構成図である。本実施形態では転造装置20の構造は第1実施形態と同様であり、第1実施形態のスライド機構8が設けられない代わりにワンウェイクラッチ21が設けられる。ワンウェイクラッチ21はシンクロギア7とダイス軸5との間に設けられ、シンクロギア7の回転とダイス軸5の回転を断続可能である。ワーク軸3及びシンクロギア6の回転によってシンクロギア7が一方に回転するときワンウェイクラッチ21が締結してダイス軸5が同期回転し、ワーク軸3及びシンクロギア6が逆回転してシンクロギア7が逆回転するときワンウェイクラッチ21が解放状態となってダイス軸に回転駆動力は伝達されない。
【0022】
次に図5のフローチャートを参照しながら本実施形態における外スプラインの転造装置の作動について説明する。
【0023】
ステップS11では、ワーク軸3とダイス軸5とを同期回転させる。このとき、ダイス軸5はワンウェイクラッチ21が締結する側に回転する。この時点では、まだローラダイス4はワーク2と接触していない。
【0024】
ステップS12では、ワーク2にスプラインを成形するためにローラダイス4に送りを与えてローラダイス4をワーク2に押し込んでいく。これによりローラダイス4がワーク2と接触すると、ワーク2がローラダイス4の歯によって押しつけられて塑性変形し、ワーク2にスプラインが形成される。
【0025】
ステップS13では、押し込み量が所定押し込み量を超えたか否かを判定する。押し込み量が所定押し込み量を超えたときステップS14へ進み、押し込み量が所定押し込み量以下であるときステップS12へ戻ってローラダイス4をワーク2にさらに押し込む。所定押し込み量は、第1実施形態と同様にローラダイス4の全押し込み量の一部であり、スプラインの成形がほぼ完了したことを判断できる程度の値に設定される。
【0026】
ステップS14では、ワーク軸3を逆回転させる。これにより、ダイス軸5とシンクロギア7との間のワンウェイクラッチ21の締結が解除され、シンクロギア7の回転はダイス軸に伝達されなくなる。これにより、ワーク軸3からダイス軸5へとシンクロギア6、7を介して回転駆動力が伝達されることはないが、ワーク2とローラダイス4とが噛み合っているのでワーク軸3とダイス軸5とは同期回転する。
【0027】
ステップS15では、ローラダイス4の押し込み量が全押し込み量となるまでローラダイス4をワーク2に押し込むことでワーク2の仕上げ転造が行われる。これにより、ワーク2にはローラダイス4の歯形に対応するスプラインが形成される。
【0028】
以上のように本実施形態では、ワーク軸3とダイス軸5とをシンクロギア6、7で同期回転させながらローラダイス4をワーク2に押し込むことでワーク2にスプラインを形成する際に、ローラダイス4の押し込み量が所定量を超えたときダイス軸5を逆回転させることでシンクロギア6、7の締結を解除することにより、ワーク軸3とダイス軸5との間で回転駆動力が伝達される箇所が1箇所となり、シンクロギア6、7の噛み合いとワーク−ローラダイス間の噛み合いとの間にずれを生じることがないので、ワーク2のスプライン精度を向上させることができる。(請求項1、4、5に対応)
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【0029】
例えば、第1、第2実施形態ではワーク軸3のみを駆動しているが、ダイス軸5のみを駆動しても同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
また、第1実施形態においてスライド機構8はダイス軸5を軸方向にスライドさせるものであるが、これに代えてワーク軸3をスライドさせるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態における外スプラインの転造装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】ダイス軸を軸方向へスライドさせた状態を示す概略構成図である。
【図3】第1実施形態における外スプラインの転造装置の作動を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態における外スプラインの転造装置の構成を示す概略構成図である。
【図5】第2実施形態における外スプラインの転造装置の作動を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 転造装置
2 ワーク
3 ワーク軸
4 ダイス
5 ダイス軸
6 シンクロギア
7 シンクロギア
8 スライド機構(シンクロギア解放手段)
9 押し込み機構(押し込み手段)
20 転造装置
21 ワンウェイクラッチ(シンクロギア解放手段)
【出願人】 【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜

【識別番号】100114236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 正弘

【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭


【公開番号】 特開2008−6452(P2008−6452A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177757(P2006−177757)