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【発明の名称】 コイルスプリングの製造装置
【発明者】 【氏名】長久保 眞一

【氏名】阿部 正美

【氏名】大木 哲也

【氏名】神 雅彦

【要約】 【課題】コイルスプリングの形状ばらつきを最小限にし、寸法精度の良い安定したコイルスプリングを成形する。

【解決手段】フィードローラ11〜14を介して、右方向へ供給される材料Wを、コイリングピン15に押し当て、次いでコイリングピン16に押し当てて材料を塑性変形させて曲率を付与する。コイリングピン15,16は、コイリングピンホルダー17,18に保持され、さらに、コイリングピンホルダー17は振動発生装置19に保持されている。振動発生装置19は、微細振動を発生して、その微細振動がコイリングピンホルダー17を介して、コイリングピン15に伝えられる。その結果、材料Wに接触するコイリングピン15の先端も微細振動することにより、コイリングピン15と材料Wとの摩擦抵抗が低減されるとともに摩擦抵抗の変動も低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料をその長手方向に送り出しながら、その側面にコイリングピンを押し当てることにより材料を塑性変形させてコイリングするコイルスプリングの製造装置において、
前記コイリングピンに微細振動を付与したことを特徴とするコイルスプリングの製造装置。
【請求項2】
材料をその長手方向に送り出しながら、その側面にコイリングピンを押し当てることにより材料を塑性変形させてコイリングするコイルスプリングの製造装置において、
前記コイリングピンのホルダー部を振動発生装置の振動子により保持したことを特徴とするコイルスプリングの製造装置。
【請求項3】
材料をその長手方向に送り出しながら、その側面にコイリングピンを押し当てることにより材料を塑性変形させてコイリングするコイルスプリングの製造装置において、
前記コイリングピンの基端部に振動発生装置の振動子を取り付けたことを特徴とするコイルスプリングの製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のコイルスプリングの製造装置において、
前記コイリングピンに付与される微細振動、または前記振動発生装置の発生振動は、超音波振動であることを特徴とするコイルスプリングの製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぼ線形の材料を塑性変形させてコイルスプリングを製造するコイルスプリングの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルスプリングの製造装置は、フィードローラにより線形の材料を供給しながら、材料にコイリングピンを押し当てて材料を塑性変形させて曲率を付与することによりコイリングしていた。図3に従来のコイリングマシンのコイリング機構部を示し、図4にコイルスプリングの外形を示す。図3において、フィードローラ1,2等を介して供給される材料Wを、コイリングピン3,4に押し当てて材料を塑性変形させて曲率を付与する。その際、特に第1のコイリングピン3と材料Wの間には、大きな摩擦抵抗が発生する。その摩擦抵抗の変動により、コイルスプリングSのコイル径Doの変動及び自由高さHの変動を誘発する。なお、公知のコイルスプリングの製造装置としては、特許文献1に記載のコイルスプリングの製造方法およびその装置がある。
【特許文献1】特開平10−305342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した図3のコイルスプリングの製造装置では、フィードローラを介して供給される線形の材料を、コイリングピンに押し当て材料を塑性変形させて曲率を付与する際、コイリングピンと材料との間に、コイリング始めは静摩擦のため大きな摩擦抵抗が発生する。次いで、コイリング中には動摩擦となり摩擦抵抗は減少するが材料のばらつきや潤滑状態のばらつきにより摩擦抵抗の変動が発生し、コイルスプリングのコイル径の変動及び自由長の変動を誘発し、寸法精度の良い安定したコイルスプリングが成形できないという問題があった。つまり、図3において、第1のコイリングピン3と材料Wの間には、コイリング始めに大きな摩擦抵抗が発生する。その摩擦抵抗の変動により、コイルスプリングSのコイル径Doの変動及び自由高さHの変動を誘発する。
【0004】
また、コイリングピン3と材料Wとの摩擦抵抗及び摩擦抵抗変動により材料Wに傷を発生させることもある。さらに、材料Wの線径dが小さい場合には、材料を送る力と、コイリングピンと材料との摩擦抵抗のバランスから、材料Wが座屈してコイリングできないということがあった。また、ばね指数(コイル平均径/線径)が小さいほど(曲率が大きいほど)、塑性変形に要する力が強くなるため、コイリングピンと材料との摩擦抵抗が大きくなり、ばね指数の小さいコイルスプリングを成形することが困難であった。
【0005】
その対策として、摩擦抵抗を低減するために、コイリングピンの先端にローラを付ける方法がある。しかしながらこの方法では、コイル径の小さいスプリングの場合ローラを小さくする必要があり、取り付けが難しいことと強度上の問題がある。また他の方法として、材料自体に潤滑性を持たせ摩擦抵抗を低減する手法もいくつかあるが、それぞれについては次のような問題がある。
(1)材料に油をつける方法では、コイリング後の熱処理で油煙が発生し、コイルスプリングに油の焼き付けが発生する。
(2)ステンレス材などにNiめっきを施し潤滑性を上げる方法は、価格アップとなる。
(3)材料の表面に樹脂コートを施し潤滑性を上げる方法は、価格アップとなる。
(4)材料の表面に形成される表面スケールにより潤滑性を改善できる可能性もあるが、この方法では、安定した厚さのスケール付着が難しい。また、この方法では、材料伸線のためのボンデライト皮膜が付くピアノ線,鋼硬線についてはコイリング時有効であるが、オイルテンパー線には皮膜が付かないためコイリング時には無効である。
そこで、本発明は、コイリングピンと材料との摩擦抵抗を確実に低減することにより、形状のばらつきを最小限にし、寸法精度の良いコイルスプリングの製造を可能にするコイルスプリングの製造装置を提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、材料をその長手方向に送り出しながら、その側面にコイリングピンを押し当てることにより材料を塑性変形させてコイリングするコイルスプリングの製造装置において、前記コイリングピンに微細振動を付与したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、材料をその長手方向に送り出しながら、その側面にコイリングピンを押し当てることにより材料を塑性変形させてコイリングするコイルスプリングの製造装置において、前記コイリングピンのホルダー部を振動発生装置の振動子により保持したことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、材料をその長手方向に送り出しながら、その側面にコイリングピンを押し当てることにより材料を塑性変形させてコイリングするコイルスプリングの製造装置において、前記コイリングピンの基端部に振動発生装置の振動子を取り付けたことを特徴とする。
【0009】
なお、前記コイリングピンに付与される微細振動、または前記振動発生装置の発生振動は、超音波振動であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように本発明によれば、材料に潤滑性を付与することなく、コイリングピンに、超音波振動等の微細振動を与えることにより、コイリングピンと材料との摩擦抵抗の低減及び摩擦抵抗変動の低減が可能となる。その結果、コイル径や自由長のばらつきを最小限にし、寸法精度の良い安定したコイルばねの成形が可能となる。また、摩擦抵抗の低減により、従来加工できなかったばね指数の小さいコイルスプリングの成形が可能となるとともに、同一サイズのコイルスプリング製造装置であれば、従来より太い材料での成形が可能となる。さらに、従来よりも成形速度を高めることも可能となる。またさらに、材料表面の傷の発生も最小限に留めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1に本発明に係るコイルスプリングの製造装置の第1の実施形態のコイリング機構部を示す。図1において、フィードローラ11〜14を介して、右方向へ供給される材料Wを、コイリングピン15に押し当て、次いでコイリングピン16に押し当てて材料を塑性変形させて曲率を付与する。コイリングピン15,16は、コイリングピンホルダー17,18に保持され、さらに、コイリングピンホルダー17は振動発生装置19に保持されている。振動発生装置19は、微細振動を発生して、その微細振動がコイリングピンホルダー17を介して、コイリングピン15に伝えられる。
【0012】
その結果、材料Wに接触するコイリングピン15の先端も微細振動することにより、コイリングピン15と材料Wとの摩擦抵抗が低減されるとともに摩擦抵抗の変動も低減され、材料Wはコイリングピン15に対して滑らかに摺動しながら所定の曲率に塑性変形される。こうして、成形されたコイルスプリングSは、コイル径や自由長のばらつきが小さくなり、寸法精度の良い安定した品質となる。なお、図中の20はコイルスプリングSにピッチを付与するピッチシールであり,21はコイルスプリングSの端末を切断するカッターであり、22〜24は材料Wのガイドであり、25はコイルスプリングSの内側を支える内型である。また、図1では、コイリングピンホルダー17のみに、振動発生装置19を取り付けているが、コイリングピンホルダー18にも、同様に、振動発生装置を取り付けることが可能である。コイリングピンホルダー18にも、振動発生装置を取り付けると、材料Wに発生する摩擦抵抗がさらに低減される。
【0013】
図2に本発明に係るコイルスプリングの製造装置の第2の実施形態のコイリング機構部を示す。この実施形態の構成は、図1の第1の実施形態とほぼ共通であり、共通部分は同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみ説明する。材料Wに接触するコイリングピン26は、その基端部が振動発生装置27の振動子に直に保持され、その振動発生装置27がコイリングピンホルダー28に保持されている。この場合は、振動発生装置27にコイリングピン26が保持されたことで、振動発生装置27の振動が直接にコイリングピン26に伝えられて効率が良い。
【0014】
図1の振動発生装置19および図2の振動発生装置27は、微細振動を発生するがその振動数は1000Hz以上であることが好ましい。特に、振動数が20kHz以上の超音波振動であると、摩擦抵抗の低減効果が著しいことが確認できた。振動発生装置としては、圧電セラミックス型振動子、ランジュバン型超音波振動子等の使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るコイルスプリングの製造装置の第1の実施形態のコイリング機構部を示す側面図である。
【図2】本発明に係るコイルスプリングの製造装置の第2の実施形態のコイリング機構部を示す側面図である。
【図3】従来のコイルスプリングの製造装置のコイリング機構部を示す側面図である。
【図4】コイルスプリングの外形図である。
【符号の説明】
【0016】
11〜14 フィードローラ
15,16 コイリングピン
17,18 コイリングピンホルダー
19 振動発生装置
20 ピッチシール
21 カッター
22〜24 ガイド
25 内型
26 コイリングピン
27 振動発生装置
28 コイリングピンホルダー
S コイルスプリング
W 材料



【出願人】 【識別番号】591006531
【氏名又は名称】村田発條株式会社
【識別番号】591287118
【氏名又は名称】学校法人日本工業大学
【出願日】 平成19年6月15日(2007.6.15)
【代理人】 【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫


【公開番号】 特開2008−307580(P2008−307580A)
【公開日】 平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願番号】 特願2007−158216(P2007−158216)