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【発明の名称】 線材のチャック装置及び圧造機
【発明者】 【氏名】奥浦 茂

【氏名】岡 和富

【氏名】福原 哲一

【要約】 【課題】作動速度の高速化が達成される線材のチャック装置及びこのチャック装置を備え、生産性の向上を図ることができる線材の圧造機を提供する。

【解決手段】圧造機に組み込まれたチャック装置は、回転自在に支持された一対のチャック円筒(52,52)と、これらチャック円筒(52,52)の外周面にそれぞれ形成され、移送経路2を挟んで対向したとき、線材Aの挟持通路を形成する一対のチャック溝と、一方のチャック円筒(52)を他方のチャック円筒(52)に向けて押圧し、挟持通路内の線材Aを一対のチャック溝間にて締め付けるチャックシリンダ(54)と、一対のチャック円筒(52,52)を互いに逆向きに回転させ、チャック溝間の線材Aを挟持通路から解放させる回転装置(80)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材の移送経路の両側にそれぞれ配置され、前記移送経路に沿って延びる軸線を有し、この軸線回りに回転自在且つ前記移送経路の横断方向に相対的に接離自在に支持された一対のチャック円筒と、
前記一対のチャック円筒の外周面に前記移送経路を挟んで対向すべく形成され、前記移送経路の途中に前記線材の挟持通路を確保する一対のチャック溝と、
前記一対のチャック円筒を前記横断方向に相対的に接離させ、前記チャック溝間にて前記挟持通路内の前記線材を解放可能に締付けてチャックする締付け手段と、
前記一対のチャック円筒を互いに逆向きに回転させ、前記一対のチャック溝が対応するチャック円筒の周方向に沿って往復動することで前記一対のチャック溝間の離間距離を拡縮する回転手段と、
を具備したことを特徴とする線材のチャック装置。
【請求項2】
各チャック円筒は、その周方向に互いに離間して形成され、サイズが互いに異なる複数のチャック溝を有することを特徴とする請求項1に記載の線材のチャック装置。
【請求項3】
前記各チャック円筒の外周面に形成され、前記チャック溝を横断し且つ前記チャック円筒の軸線方向に間隔を存した複数の横断溝を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の線材のチャック装置。
【請求項4】
前記移送経路は水平に延び、
前記一対のチャック溝間の離間距離が拡開されるとき、前記移送経路上の前記線材を前記一対のチャック円筒間から上方に向けて持ち上げるリフト手段を更に具備したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の線材のチャック装置。
【請求項5】
前記回転手段及び前記リフト手段は共通の駆動源を含むことを特徴とする請求項4に記載の線材のチャック装置。
【請求項6】
請求項4又は5の何れかに記載の線材のチャック装置と、
前記線材の移送方向でみて前記チャック装置の前方に配置され、前記一対のチャック円筒から前記線材の一端部が突出し且つ前記チャック装置に前記線材がチャックされた状態で、前記線材の一端部を据え込んで拡径させる据込み装置と
を具備したことを特徴とする線材の圧造機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、線材をチャックするチャック装置及びこのチャック装置を使用し、線材の一端部を据え込んで拡径させる圧造機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の線材の圧造機及びチャック装置は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1のチャック装置は分割構造のチャックを備え、このチャックは線材の移送経路を囲むように配置された複数のチャックユニットを有する。これらチャックユニットは互いに協働して移送経路に線材の挟持通路を形成し、そして、この挟持通路の径方向に連動して往復動することにより挟持通路を開閉可能でなっている。
【0003】
また、線材の移送方向でみて、チャックの後端部つまりチャックユニットの後端部は互いに協働して、複数の割溝を有する雄テーパ筒部を形成しており、この雄テーパ筒部は挟持通路と同心にして挟持通路に沿って延びている。
それ故、線材が挟持通路を通過し且つ挟持通路が閉じた状態にて、雄テーパ筒部に外側から雌テーパ筒部がテーパ嵌合されたとき、各チャックユニットは挟持通路内の線材に向けて押圧され、この結果、チャックは線材を強固にチャックすることができる。
【0004】
一方、特許文献1の圧造機は、線材の移送方向でみてチャック装置の前方に据込み装置を備えており、この据込み装置は、チャック装置に線材がチャックされている状態で、チャック装置から突出した線材の一端部を据え込んで拡径させる加工を施す。
【特許文献1】特公昭52-478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のチャック装置の場合、線材の強固な締付けが前述した雌雄のテーパ筒部のテーパ嵌合によりもたらされるため、雌テーパ筒部の往復ストロークは長くなり、チャック装置の締付け及びその解除にも多大な時間を要する。
しかも、特許文献1の圧造機の場合、線材の一端部に据込み装置により加工が施された後、線材は移送経路に沿ってチャック装置の後方に戻されるが、この際、線材の一端部は拡径部として既に形成されているため、チャック装置の挟持通路はその内径が拡径部の外径よりも大となるべく開かれていなければならない。このため、チャック装置における各チャックユニットの往復ストロークが長くなり、挟持通路の開閉に多大な時間を要する。
【0006】
この結果、上述したタイプのチャック装置を使用した圧造機の場合、加工処理した線材の生産性がチャック装置の作動速度に制約されてしまい、その生産性の更なる向上を図ることができない。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、その作動速度の高速化が可能となる線材のチャック装置及びこのチャック装置を使用し、生産性の向上を図ることができる線材の圧造機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の線材のチャック装置は、線材の移送経路の両側にそれぞれ配置され、移送経路に沿って延びる軸線を有し、この軸線回りに回転自在且つ移送経路の横断方向に相対的に接離自在に支持された一対のチャック円筒と、一対のチャック円筒の外周面に移送経路を挟んで対向すべく形成され、移送経路の途中に線材の挟持通路を確保する一対のチャック溝と、一対のチャック円筒を前記横断方向に相対的に接離させ、前記チャック溝間にて挟持通路内の線材を解放可能に締付けてチャックする締付け手段と、一対のチャック円筒を互いに逆向きに回転させ、一対のチャック溝が対応するチャック円筒の周方向に沿って往復動することで一対のチャック溝間の離間距離を拡縮する回転手段とを備える(請求項1)。
【0008】
上述のチャック装置によれば、一対のチャック溝間にて挟持通路が形成されている状態で挟持通路内に線材を挿通し、この後、締付け手段により一対のチャック円筒を相対的に押し付け合うことで、一対のチャック溝間にて線材を締付け、この線材をチャックする。
この後、線材に対して所定の加工が施された後、締付け手段による線材のチャックを解放し、回転手段により一対のチャック円筒を互いに逆向きに回転させれば、一対のチャック溝がそのチャック円筒の回転に伴って互いに離れることで、挟持通路が開かれる。それ故、線材は一対のチャック溝から解放され、一対のチャック円筒間から排出可能となる。
【0009】
好ましくは、各チャック円筒は、その周方向に互いに離間して形成され、サイズが互いに異なる複数のチャック溝を有する(請求項2)。この場合、一対のチャック円筒はそれらの軸線回りに回転され、移送経路を挟んで、線材の外径に応じて選択された一対のチャック溝が対向すべく配置される。
このように各チャック円筒にサイズの異なるチャック溝が備えられていれば、外径が異なる複数種の線材を同一のチャック装置によりチャック可能となる。
【0010】
また、各チャック円筒はその外周面に形成された複数の横断溝を更に含むことができ、これら横断溝は、チャック溝を横断し且つチャック円筒の軸線方向に間隔を存して配置されている(請求項3)。
このような横断溝は、一対のチャック溝間にて線材が締付けられたとき、チャック溝のグリップ力を増加させる。
【0011】
更に、移送経路が水平に延びている場合、チャック装置は、一対のチャック溝間の離間距離が拡開されるとき、移送経路上の線材を一対のチャック円筒間から上方に向けて持ち上げるリフト手段を更に備えることができる(請求項4)。この場合、加工後の線材は、移送経路の上方に持ち上げられ、そして、一対のチャック円筒と干渉することなく、移送経路に沿ってチャック装置の後方に移送可能となる。
【0012】
好ましくは、回転手段及びリフト手段は共通の駆動源を含むことができ(請求項5)、この場合、回転手段及びリフト手段は互いに連動して作動する。
更に、本発明は、特許文献1の圧造機と同様に線材の一端部に拡径部を形成する圧造機をも提供し、この圧造機は、請求項4又は5の何れかに記載のチャック装置と、線材の移送方向でみてチャック装置の前方に配置され、一対のチャック円筒から線材の一端部が突出し且つチャック装置に線材がチャックされた状態で、線材の一端部を据え込んで拡径させる据込み装置とを備えている(請求項6)。
【0013】
上述の圧造機によれば、線材の一端部に拡径部が形成された後、加工済みの線材はチャック装置の一対のチャック溝から解放されると同時に、リフト手段により移送経路の上方位置、具体的には、加工済みの線材の拡径部が一対のチャック円筒の外周面より外側に位置した上方位置に持ち上げられる。それ故、このような持ち上げ状態にあれば、加工済み線材はその拡径部が一対のチャック円筒に干渉することなく、移送経路に沿ってチャック装置の後方に引き戻される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の線材のチャック装置は一対のチャック円筒を備え、これらチャック円筒の一対のチャック溝間にて線材を締付けてチャックすることから、一対のチャック溝により形成される線材の挟持通路は線材の通過を許容する程度の通路断面積を有していればよく、締付け手段による線材の締付けに要求される一対のチャック円筒の相対的な接離距離、即ち、その押圧ストロークは短くて済む。また、挟持通路は一対のチャック円筒を互いに逆向きに所定の回転角だけ回転させることで開放されるから、挟持通路の開閉を迅速に行うことができる。この結果、締付け手段による締付けや一対の挟持通路の開閉を含む作動に関し、その作動速度の高速化を達成したチャック装置が提供される。
【0015】
請求項2のチャック装置は、複数対のチャック溝を備えているので、外径が異なる複数種の線材のチャックに使用でき、請求項3のチャック装置は線材のグリップ力を増加し、挟持通路内での線材の滑りを防止することができる。
請求項4のチャック装置は、挟持通路が開放されるとき、リフト手段により線材を一対のチャック円筒の上方まで持ち上げることができ、これらチャック円筒の存在に拘わりなく、線材はチャック円筒の後方に向けて引き戻すことができる。
【0016】
請求項5のチャック装置は、回転手段及びリフト手段が共通の駆動源より互いに連動して作動することから、リフト手段による線材の持ち上げタイミングが正確になり、しかも、省エネ対策にも有効となる。
請求項6の圧造機は、チャック装置の作動が高速であるので、その一端部に拡径部を形成した線材の生産性を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、一実施例の線材の圧造機を概略的に示す。
圧造機は線材Aの移送経路2を備え、この移送経路2は水平に延びている。ここで、線材AはPC(プレストレストコンクリート)鋼棒からなり、その外周面に複数状の螺旋溝(図示しない)を有する。
移送経路2の下流端には据込み装置4が配置され、そして、この据込み装置4の上流側には線材Aの移送装置が配置され、この移送装置は図1中、一対のピンチローラ6のみで示されている。これらピンチローラ6は移送経路2を挟んで配置されているとともに互いに接離可能であり、線材Aが移送装置により移送経路2に沿って往復的に移送される際、その移送を案内する。即ち、線材Aは据込み装置4に対して進退可能となっている。
【0018】
更に、一対のピンチローラ6と据込み装置4との間にはチャック装置8が配置されており、このチャック装置8については後述する。
据込み装置4はシリンダブロック10を備え、このシリンダブロック10は移送経路2と同軸のシリンダボア12を有する。このシリンダボア12にはプランジャ14が摺動自在に嵌合され、プランジャ14はシリンダボア12からチャック装置8に向けて突出する。プランジャ14の突出端には圧造パンチ16が取り付けられ、この圧造パンチ16は移送経路2上に位置付けられている。
【0019】
一方、シリンダボア12には複動型の圧造シリンダ18が接続されており、この圧造シリンダ18はシリンダボア12内に進入するピストンロッド20を有する。
更に、シリンダブロック10にはシリンダボア12と平行なシリンダボア22が形成されており、このシリンダボア22には複動型の寸出しシリンダ24のピストンロッド26が摺動自在に嵌合されている。ピストンロッド26はシリンダブロック10からチャック装置8に向けて突出している。
【0020】
プランジャ14及びピストンロッド26それぞれの突出端部は互いにアーム28を介して連結されている。より詳しくは、アーム28はプランジャ14に固定されているものの、ピストンロッド26に対しては図1に示す状態から右方のみに移動可能である。つまり、ピストンロッド26の突出端部はその先端側が小径部として形成され、この小径部との境界に段差面を有する段付き形状をなし、図示の状態にあるとき、アーム28はピストンロッド26の段差面に当接している。
【0021】
そして、ピストンロッド26の先端に設けたばね座30とアーム28との間には圧縮コイルばね32が架け渡されており、この圧縮コイルばね32はアーム28とばね座30とを連結し、アーム28をピストンロッド26の段差面に向けて押圧付勢している。
更に、アーム28にはラック34が取り付けられており、このラック34にはピニオン36を介してロータリエンコーダ38に接続されている。ロータリエンコーダ38はシリンダブロック10側に固定されている。
【0022】
上述した圧造シリンダ18及び寸出しシリンダ24は図1に示す油圧回路40からの圧油の供給を受けて作動する。具体的には、油圧回路40は油圧源42を備え、この油圧源42はモータ駆動の油圧ポンプ43を含む。油圧源42と圧造シリンダ18との間には電磁方向切換弁44,46が配置され、これら電磁方向切換弁44,46はそれらの切換作動により圧造シリンダ18に対する圧油の給排を制御し、圧造シリンダ18のピストンロッド20を往復動させる。
【0023】
また、油圧源42と寸出しシリンダ24との間にも電磁方向切換弁48が配置され、この電磁方向切換弁48はその切換作動により寸出しシリンダ24に対する圧油の給排を制御し、寸出しシリンダ24のピストンロッド26を往復動させる。
更に、前述した圧造パンチ16とチャック装置8との間には移送経路2と同心にして誘導加熱コイル50が配置されており、図1に示す状態にあるとき、誘導加熱コイル50は圧造パンチ16から移送経路2の上流側の領域に亘って延びている。誘導加熱コイル50はリード線を介して給電源(図示しない)に電気的に接続されている。
【0024】
次に、前述したチャック装置8について説明する。
図1の下部に示したチャック装置8から明らかなように、チャック装置8は一対のチャック円筒52,52を備えている。これらチャック円筒52,52は移送経路2を挟んで移送経路2の両側にそれぞれ配置され、移送経路2と平行な軸線を有する。チャック円筒52,52はこれらの外周面を部分的に覆う受け部材53により、軸線回りに回転自在に支持される一方、チャック円筒52に対し、チャック円筒52はその受け部材53を介して移送経路2を横断する方向に接離自在に支持されている。即ち、この実施例の場合、チャック円筒52が水平方向に移動自在となっている。
【0025】
また、一対のチャック円筒52,52はその軸線方向に関し、移送経路2の上流側に位置した端面が端板55にてそれぞれ支持され、この端板55は図1の上部に示したチャック装置8に示されている。
図1から明らかなようにチャック円筒52の側方にはチャックシリンダ54が配置されており、このチャックシリンダ54はチャック円筒52に対向するピストン56を含む。ピストン56はチャック円筒52に向けて露出した先端面を有し、この先端面は押圧部材(図示しない)を介してチャック円筒52の前述した受け部材53に当接されている。
【0026】
更に、チャックシリンダ54はプルロッド60を備えており、このプルロッド60はチャック円筒52の受け部材53にねじ込まれた内端58と、チャックシリンダ54の外筒を形成する端壁から外側に突出した外端とを有し、この外端と外筒との間に圧縮コイルばねからなるプルスプリング62が架け渡されている。このプルスプリング62はピストン56をチャック円筒52から離間する方向に付勢している。
【0027】
一方、チャックシリンダ54もまた前述した油圧回路40に接続され、油圧源42とチャックシリンダ54との間には電磁方向切換弁64及びブーストシリンダ66が油圧源42側から順次配置されている。電磁方向切換弁64はその切換作動によりブーストシリンダ66に対する圧油の給排を制御し、ブーストシリンダ66を作動させる。
休止位置(図示の位置)から作動位置への電磁方向切換弁64の切り換え作動を受けて、ブーストシリンダ66が作動したとき、ブーストシリンダ66はチャックシリンダ54に高圧の圧油を供給し、これにより、チャックシリンダ54のピストン56は押圧部材及び受け部材53を介し、チャック円筒52をその休止位置からチャック円筒52に向けて押圧する。それ故、受け部材53に連結されているプルロッド60はプルスプリング62の付勢力に抗し、このプルスプリング62を収縮させながら受け部材53とともにチャック円筒52L側に移動される。
【0028】
一方、電磁方向切換弁64が休止位置に戻されると、プルロッド60はプルスプリング62の付勢力を受けて引き戻され、これに伴い、受け部材53はチャック円筒52を伴って引き戻され、これにより、チャックシリンダ54のピストン56、そして、ブーストシリンダ66のピストンもまた休止位置に戻される。
図2〜図4はチャック円筒52,52を詳細に示す。
【0029】
チャック円筒52,52は同一の構造を有しているので、以下には、一方のチャック円筒52に着目し、その構造を説明する。
チャック円筒52はその外周面に複数、図示の実施例の場合には4個のチャック溝68a〜68dを有し、これらチャック溝68a〜68dはチャック円筒52の周方向に等間隔を存して配置されている。各チャック溝68は断面円弧形状をなし、チャック円筒52の全長に亘り、その軸線に沿って延びている。
【0030】
図3及び図4から明らかなようにチャック溝68a〜68dのサイズ、即ち、その径寸法は互いに異なり、これら径寸法はチャック溝68a〜68dの順序にて拡大している。
また、チャック円筒52の外周面には各チャック溝68をそれぞれ横断する多数の横断溝70が形成されており、これら横断溝70はそのチャック溝68の長手方向、即ち、チャック円筒52の軸線方向に所定の間隔を存して配置され、チャック円筒52の周方向に所定の回転角域に亘って延びている。なお、横断溝70の深さはチャック溝68の深さよりも大である。
【0031】
更に、前述した端板55側に位置したチャック円筒52の端面には、チャック溝68の端部をそれぞれ拡径させるテーパ面72(図4参照)が形成され、このテーパ面72は線材Aの先頭を案内するガイドを形成する。
上述した一対のチャック円筒52,52は、互いに対応する一対のチャック溝68(即ち、その添え字a〜dが同一のチャック溝68)が移送経路2を挟んで互いに対向するように配置され、図1から明らかなように、一対のチャック溝68は移送経路2の途中に線材Aのための挟持通路78を形成する。ここで、挟持通路78を形成する一対のチャック溝68は線材Aの外径に応じて選択され、そして、挟持通路78は線材Aの挿通を許容する程度の内径を有する。より詳しくは、チャック円筒52,52が前述したように互いに押圧された状態にあるとき、挟持通路78は線材Aの外径と略同一の内径となり、線材Aとの間に所望の摩擦を発生することができる。
【0032】
即ち、挟持通路78に線材Aが挿通されているとき、前述したチャックシリンダ54はそのピストン56を1mm程度押し出すだけで、一対のチャック円筒52,52の軸線間隔を狭め、一対のチャック溝68間にて線材Aを強固に締付けることができる。また、この際、チャック溝68には前述した横断溝70を備えているので、これら横断溝70のエッジが線材Aの外周面に食い込むことで、一対のチャック溝68は線材Aにその長手方向の滑りを生じさせることなく、線材Aを強固にチャック可能となる。
【0033】
また、前述の説明から明らかなように、各チャック円筒52は複数のサイズのチャック溝68を備えているので、外径の異なる線材Aであっても、選択した一対のチャック溝68間にて、そのチャックが可能となる。
なお、図1の下部に示した一対のチャック円筒52,52は、それらのチャック溝68のうちの1個のみを有する状態で示されている。
【0034】
一方、一対のチャック円筒52,52は回転手段として回転装置80に接続されており、この回転装置80について以下に説明する。
回転装置80は、駆動源としての排出シリンダ82を備え、この排出シリンダ82は一対のチャック円筒52,52の下方に配置され、これらチャック円筒52,52に向けて上方に延びるピストンロッド84を有する。ピストンロッド84の上端にはロッドエンド86が取り付けられ、このロッドエンド86は左右一対ずつリンクアーム88,90を介して対応する側のチャック円筒52に接続されている。
【0035】
より詳しくは、上側のリンクアーム90は軸92に取り付けられており、この軸92は対応する側のチャック円筒52に複数の連結ボルト(図示しない)を介して連結されている。なお、図2中、参照符号74は、連結ボルトのためのねじ孔を示している。
図示の状態から、排出シリンダ82のピストンロッド84が収縮されると、ロッドエンド86は下降し、この下降は左右一対ずつのリンクアーム88,90を介して対応するチャック円筒52の回転に変換される。この場合、一対のチャック円筒52,52はその チャック溝68が上方に向けて移動するべく互いに逆向きに回転する。それ故、挟持通路78を形成する一対のチャック溝68は互いに離れ、これにより、挟持通路78が開かれることになる。
【0036】
この後、排出シリンダ82のピストンロッド84が伸長されると、一対のチャック円筒52,52はそれぞれ逆向きに回転され、一対のチャック溝68は移送経路2を挟み、挟持通路78を再び形成する。
従って、一対のチャック溝68間の離間距離が線材Aの外径を超える程度に、一対のチャック円筒52,52を回転させるだけで、挟持通路78の開閉がなされ、この開閉は迅速に実施可能である。
【0037】
上述した排出シリンダ82のピストンロッド84を伸縮させるため、排出シリンダ82もまた前述した油圧回路40に接続されており、油圧源42と排出シリンダ82との間に電磁方向切換弁94が配置されている。この電磁方向切換弁94はその切換作動により排出シリンダ82に対する圧油の給排を制御し、排出シリンダ82のピストンロッド84を伸縮させる。
【0038】
なお、必要に応じて、ピストンロッド84の近傍には近接スイッチ96が配置され、一方、ロッドエンド86には近接スイッチ96をオンオフ作動させる被検出子98が取り付けられる。これら近接スイッチ96及び被検出子98は、圧造機の自動運転が実施される場合、排出シリンダ82の作動、つまり、チャック円筒52,52の回転を検出するために使用される。
【0039】
図5は前述したチャック装置8をより具体的に示す。
図5の左半分は、排出シリンダ82のピストンロッド84が上方に向けて伸長した状態を示し、図5の右半分はそのピストンロッド84が下方に向けて収縮した状態を示している。
図5から明らかなように、排出シリンダ82は取付ベース100に対し、取付台102を介して取り付けられ、ピストンロッド84は取付台102を貫通して上方に延びている。
【0040】
前述したロッドエンド86は、ピストンロッド84の上端に連結された昇降台104を有しており、チャック円筒52側に位置した昇降台104の側端からはガイド106が突出している。このガイド106は昇降台104にねじ込まれたボルトからなり、ロッドエンド86の昇降に伴い、ガイドブラケット108のガイド溝110内を上下に案内される。ガイドブラケット108は取付台102から立設されている。
【0041】
更に、ロッドエンド86は、前述した左右のリンクアーム88の下端にピン112を介して連結される左右のピンブラケット114,114を有し、これらピンブラケット114,114は昇降台104上に取り付けられている。
ここで、ピンブラケット114は昇降台104に固定されているが、ピンブラケット114は、ピンブラケット114に対して接離自在にして昇降台104上に支持されている。より詳しくは、図6に示されるように、ピンブラケット114と昇降台104との間にはスライドテーブル116が設けられており、ピンブラケット114はピンブラケット114に対して円滑に接離することができる。
【0042】
更に、ピンブラケット114内には圧縮コイルばね118が収容され、この圧縮コイルばね118はピンブラケット114とピンブラケット114との間に架け渡されている。圧縮コイルばね118は、ピンブラケット114から離間するF方向にピンブラケット114を付勢し、これにより、ピンブラケット114は昇降台104に固定されたストッパ120に押し付けられている。
【0043】
ピンブラケット114は、チャック円筒52とロッドエンド86との間のリンクアーム88,90の接続に使用されるものであるから、前述したチャック円筒52がチャック円筒52に対して接離するときには、チャック円筒52の動きに連動してピンブラケット114もまた圧縮コイルばね118の助けを借りて、ピンブラケット114に対して接離でき、ロッドエンド86がチャック円筒52の接離運動、つまり、前述した線材Aのチャック作動を阻害するようなことはない。
【0044】
再度、図5を参照すれば、移送経路2でみて、前述したチャック装置8の上流側にはリフト装置122が配置され、このリフト装置122は線材受124を含んでいる。この線材受124はその上部に鉛直断面でみて円弧状をなした受面を有し、この受面にて線材Aを支持することができ、移送経路2の直下の休止位置と、移送経路2よりも上方の作動位置との間にて昇降可能となっている。
【0045】
より詳しくは、図7から明らかなように、線材受124からは下方に向けてガイドシャフト126が延び、このガイドシャフト126は中空のガイドパイプ128に摺動自在に挿入されている。このガイドパイプ128は前述した取付ベース100から立設されている。
一方、図5に示されているように、線材受124の左右の下部からは一対ずつのリンクアーム130,132がそれぞれ延びており、その先端、つまり、リンクアーム132の先端は前述したチャック装置8の対応する側のリンクアーム90に図8に示す連結部材134を介して相互に連結されている。
【0046】
従って、前述した挟持通路78を開くべく、チャック装置8の左右のリンクアーム90が回動されたとき、これらリンクアーム90の回動はリンクアーム130,132を介して線材受124をその休止位置から上方の作動位置にリフトさせる。即ち、リフト装置122は、チャック装置8の排出シリンダ82を共通の駆動源として、線材受124を上下動させることができる。
【0047】
なお、図7中、参照符号136はチャック装置8及びリフト装置122を囲繞するカバーを示す。このカバー136は移送経路2の上流側を向いた端面138を有し、この端面138は図9に示されるように、その上部に略U字形状の入口開口140を有し、移送経路2は入口開口140を通過して延びている。
また、入口開口140の上流側にはV字形状の線材ガイド144が配置され、この線材ガイド144はカバー136の端面138にブラケット142を介して取り付けられている。また、端面138には入口開口140の両側に取付板146がそれぞれ取り付けられており、これら取付板146はその入口開口140側の端部に回動ゲート148を有する。回動ゲート148はその取付板146に回動自在に支持され、引っ張りコイルばね150により互いに当接する方向に回動付勢され、移送経路2を上側から覆っている。なお、引っ張りコイルばね150は回動ゲート148と取付板146との間に架け渡されている。
【0048】
次に、前述した圧造機の作動に関し、図10を参照しながら説明する。
なお、図10中、作図上の都合から回転装置80及び一対のピンチローラ6の姿勢は実際の姿勢とは異なる状態で示されている。
図10(a)は、据込み装置4における寸出しシリンダ24のピストンロッド26が所定の長さだけ伸長された状態を示す。ピストンロッド26の伸長に伴い、ピストンロッド26はアーム28を介して据込み装置4のプランジャ14をチャック装置8に向けて引き出しており、これにより、圧造パンチ16とチャック装置8の挟持通路78との間に所定の間隔が確保されている。なお、この際の寸出しシリンダ24の伸長長さは、その先端に設けたスペーサの厚みにより調整可能となっている。
【0049】
一方、図10(a)に示す状態にあるとき、線材Aは移送装置より据込み装置4に向けて既に移送されており、チャック装置8の挟持通路78を通過した後、その一端が圧造パンチ16の先端に当接されている。即ち、線材Aの移送はその一端が圧造パンチ16の先端に当接した時点で停止され、線材Aの一端部は挟持通路78から一定の長さだけ突出し、前述した誘導加熱コイル50に囲まれた状態にある。
【0050】
そして、圧造パンチ16に線材Aが当接すると(図10(a))、図示しないスイッチ回路から信号が出力され、この信号出力を受けてチャックシリンダ54が作動される一方、寸出しシリンダ24が収縮されるとともに、給電源から誘導加熱コイル50に通電され、線材Aの一端部は所定の温度まで急速に加熱される(図10(b))。
前述したようにチャックシリンダ54はチャック円筒52をチャック円筒52に向けて押し出すことから、挟持通路78内の線材Aは、挟持通路78を形成する一対のチャック溝68間にて締付けられる。即ち、線材Aは、チャック円筒52,52間に強固にチャックされる。
【0051】
ここで、チャックシリンダ54におけるピストン56の押圧ストロークは前述したように1mm程度であるから、チャック円筒52,52間への線材Aのチャック動作は迅速に実施される。
線材Aの一端部が所定の加熱温度に達すると、寸出しシリンダ24は圧造パンチ16を線材Aの一端部に当接させる(図10c)。この後、圧造シリンダ18は作動され、そのピストンロッド20を介してプランジャ14が圧造パンチ16とともに線材Aの一端に向けて急速に押し出され、圧造パンチ16は線材Aの一端部を据え込み、拡径した据込み端Bに形成する(図10(d))。この際、圧造パンチ16の押込みは寸出しシリンダ24の圧縮コイルばね32を収縮させる。なお、この際、エンコーダ38は、圧造パンチ16が線材Aの一端部に当接した後の押し込み量、即ち、据込み量を計測する。
【0052】
据込みが完了すると、チャックシリンダ54の作動解除を受け、一対のチャック円筒52,52による線材Aの締付けが解放され、この後、圧造シリンダ18は更に作動し、圧造パンチ16を介して線材Aの据込み端Bを一対のチャック円筒52,52に向けて押し戻す(図10(e))。このような据込み端Bの押し込みは、据込み端Bを誘導加熱コイル50から逃がす。
【0053】
この後、図10(e)に示されるように回転装置80、即ち、その排出シリンダ82が作動され、チャック円筒52,52は互いに逆向きに回転される。それ故、一対のチャック溝68間により形成されていた挟持通路78は前述したように開放されると同時に、リフト装置122が作動し、その線材受124が上昇する。それ故、線材Aは線材受124に受け止められ、そして、線材受124とともに上方位置までリフトされる。この際、線材Aの据込み端Bと一対のピンチローラ6との間には十分な間隔が確保されており、線材Aの据込み端B側の部位は撓みを伴いながらリフトし、チャック円筒52,52の外周面よりも外側の上方位置に抜け出すことができる。ここでの上方位置とは、線材Aの据込み部Bがチャック円筒52,52の外周よりも外側となる位置を示す。
【0054】
前述したように、ここでのチャック円筒52,52に要求される回転角は僅かであるので、挟持通路78からの線材Aのリフトもまた迅速に行え、この結果、前述したチャックシリンダ54の僅かな押圧ストロークと共に、チャック装置8における作動速度の高速化が達成される。
なお、線材Aが線材受124とともに上昇する際、線材Aは前述した線材ガイド144からも持ち上げられることになるが、この際、線材Aは前述した一対の回動ゲート148をそれらの引っ張りコイルばね150の付勢力に抗して上方に回動させて開き、回動ゲート148の存在に拘わりなくリフト可能である。
【0055】
この後、前述したピンチローラ6を作動させれば、線材Aの据込み端Bをチャック円筒52,52や、線材受124及び回動ゲート148等と干渉させることなく、線材Aを移送経路2に沿って引き戻し可能となる(図10(f))。
ここで、図10(f)に示されるように、移送装置はその一対のピンチローラ6の直上流にひげ状の被検出子152及びリミットスイッチ154を備えており、線材Aの据込み端Bが被検出子152を通過すると、被検出子152は線材Aから解放され、リミットスイッチ154をオン作動させる。このオン作動を受け、図10(g)に示されるように一対のピンチローラ6は据込み端Bの通過を許容すべく互いに離間し、これにより、これらピンチローラ6の存在に拘わらず、線材Aは移送経路2上から後段のステージ(図示しない)に向けて移動される一方、新たな線材Aが移送経路2に供給され、そして、圧造シリンダ18及びリフト装置122等がそれぞれ図10(a)に示す状態に復帰し、圧造機は新たな線材Aに対して上述の圧造を繰り返す。
【0056】
なお、図10(a)から明らかなように、線材Aがチャック装置8に向けて移送され、一対のピンチローラ6を通過した時点で、線材Aは被検出子152と当接して、被検出子152をリミットスイッチ154から離間させ、リミットスイッチ154をオフ作動させている。
上述した圧造機は、その作動が高速化されたチャック装置8を備えているので、線材Aの一端部への据込み加工を迅速に行え、加工済みの線材Aの生産性を大幅に向上することができる。
【0057】
本発明は、上述の一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、本発明のチャック装置及び圧造機の具体的な構造は、本発明の要旨を逸脱することなく任意に変更可能であることは勿論、チャック装置は上述した圧造機に限らず、線材に対する種々の加工装置にも同様に適用でき、また、線材もまたPC鋼棒に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】一実施例の圧造機をその油圧回路とともに概略的に示す構成図である。
【図2】チャック円筒を一部破断して示す図である。
【図3】図2のチャック円筒の誘導加熱コイル側の端面を示した図である。
【図4】図2のチャック円筒の移送装置側の端面を示した図である。
【図5】図2のチャック装置の回転装置及びリフト装置を詳細に示す側面図である。
【図6】図5の回転装置のロッドエンドを詳細に示す図である。
【図7】図5のチャック装置の回転装置及びリフト装置を部分的に破断して示す正面図である。
【図8】回転装置とリフト装置とを連動させる機構を示した図である。
【図9】図7中、IX-IX線に沿う矢視図である。
【図10】一実施例の圧造機の作動手順を(a)〜(g)の順序で示した図である。
【符号の説明】
【0059】
2 移送経路
4 据込み装置
8 チャック装置
52,52 チャック円筒
54 チャックシリンダ(締付け手段)
68a〜68d チャック溝
70 横断溝
78 挟持通路
80 回転装置(回転手段)
82 排出シリンダ(駆動源)
122 リフト装置(リフト手段)
【出願人】 【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
【出願日】 平成18年11月21日(2006.11.21)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二

【識別番号】100116447
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 純一


【公開番号】 特開2008−126270(P2008−126270A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−314058(P2006−314058)