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【発明の名称】 ゴム被覆線状部材の形成方法及び環状構造体
【発明者】 【氏名】横堀 志津雄

【氏名】押方 満男

【氏名】上坪 一晴

【要約】 【課題】線状部材をその両端の接続性を良好にしつつ滑り止めとしての未加硫ゴムで被覆することができるゴム被覆線状部材の形成方法の提供。

【構成】撚り線11を切断して両端の揃った複数の線状部材3を形成する。芯線4を外周線5から長さ方向に引き出して、線状部材3の両端に凹部3a及び凸部3bを形成する。凹部3a及び凸部3bを嵌合して複数の線状部材3を連続させる。連続する線状部材3を未加硫ゴム3cで被覆する。隣り合う線状部材3の凹部3a及び凸部3bを嵌合しているので、凹部3a及び凸部3bを除く部位のみが被覆される。凹部3a及び凸部3bの嵌合を外して分割する。線状部材3の両端の凹部3a及び凸部3bを除く部位を未加硫ゴム3cで被覆したゴム被覆線状部材6を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端を接続されて環状構造体に構成されるゴム被覆線状部材の形成方法であって、
複数本の線材を束ねてなる線状部材の両端を揃え、次いで、その一部の線材を長さ方向に引き出すことにより、線状部材の両端に互いに嵌合する凹凸を形成し、その後、前記線状部材を未加硫ゴムで被覆することを特徴とするゴム被覆線状部材の形成方法。
【請求項2】
前記線状部材は、芯線と、該芯線の周囲に配されて撚り合わされた複数本の外周線とからなり、前記外周線から芯線を引き出して線状部材の両端に前記凹凸を形成することを特徴とする請求項1に記載のゴム被覆線状部材の形成方法。
【請求項3】
複数の線状部材の両端に前記凹凸を形成し、該凹凸を嵌合して複数の線状部材を連続させ、連続する線状部材を未加硫ゴムで被覆した後、各線状部材に分割することにより、前記線状部材のうち、両端の前記凹凸を除く部位を未加硫ゴムで被覆することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム被覆線状部材の形成方法。
【請求項4】
前記連続する線状部材をカレンダーロールによって未加硫ゴムで被覆することを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載のゴム被覆線状部材の形成方法。
【請求項5】
前記カレンダーロール及び搬送ローラの間隔を各線状部材の長さよりも小さく設定することを特徴とする請求項4に記載のゴム被覆線状部材の形成方法。
【請求項6】
複数の前記連続する線状部材を並列に配置すると共に、各線状部材同士の接続位置を互いに長さ方向にずらして配置することを特徴とする請求項4又は5に記載のゴム被覆線状部材の形成方法。
【請求項7】
両端を接続されて環状構造体に構成されるゴム被覆線状部材の形成方法であって、
芯線と、該芯線の周囲を覆うシースとからなる線状部材の両端を揃え、次いで、その芯線を長さ方向に引き出した後、前記シースを未加硫ゴムで被覆することを特徴とするゴム被覆線状部材の形成方法。
【請求項8】
ゴム製部材を補強するための環状構造体であって、線状部材の両端を接続することによって環状に構成してなり、前記線状部材は、未加硫ゴムで被覆されると共に、両端に互いに嵌合する凹凸が形成されたことを特徴とする環状構造体。
【請求項9】
筒状のゴム膜に補強コード層を設けてなるゴム製筒体に、その中心軸方向における少なくとも一方の端部に埋設され、前記補強コード層の端部を係止するビードワイヤとされ、
前記補強コード層は、ゴム製筒体の両端部を通るよう中心軸方向に対して傾斜しつつ中心軸を複数回取り巻く補強コードを、一回の取り巻きごとに周方向に所定のピッチだけずらすことによって周方向に配列してなり、
前記補強コードのうちのゴム製筒体の端部を通る部位に掛けるよう配置されて補強コード層を係止することを特徴とする請求項8に記載の環状構造体。
【請求項10】
前記線状部材は、複数本の線材を束ねてなり、その一部の線材を長さ方向にずらすことにより、両端に前記凹凸が形成されたことを特徴とする請求項8又は9に記載の環状構造体。
【請求項11】
前記線状部材は、芯線と、該芯線の周囲に配されて撚り合わされた複数本の外周線とからなり、前記外周線から芯線が引き出されて両端に前記凹凸が形成されたことを特徴とする請求項10に記載の環状構造体。
【請求項12】
前記線状部材は、その芯線及び外周線の少なくとも一方が複数本の素線を撚り合わせてなる撚線とされたことを特徴とする請求項11に記載の環状構造体。
【請求項13】
前記線状部材は、両端に形成された前記凹凸を除く部位が未加硫ゴムで被覆されたことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の環状構造体。
【請求項14】
前記線状部材の両端がその凹凸間に侵入したゴムを介して接続されたことを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の環状構造体。
【請求項15】
前記線状部材は、ゴムとの接着性を高める表面処理が施されたことを特徴とする請求項8〜14のいずれかに記載の環状構造体。
【請求項16】
ゴム製部材を補強するための環状構造体であって、線状部材の両端を接続することによって環状に構成され、
前記線状部材は、芯線と、該芯線の周囲を覆うシースとからなり、前記シースが未加硫ゴムで被覆されると共に、両端を接続したときの芯線の継ぎ目の位置とシースの継ぎ目の位置とがずれるよう、前記シース及び芯線が互いに長さ方向にずらして設けられたことを特徴とする環状構造体。
【請求項17】
ダイヤフラムとしてのゴム製筒体の両端部に金具を止着してなり、前記ゴム製筒体の少なくとも一方の端部を補強するビードとして、請求項8〜16のいずれかに記載の環状構造体が設けられたことを特徴とする空気ばね。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、線状部材を未加硫ゴムで被覆するためのゴム被覆線状部材の形成方法、及び線状部材の両端を接続して構成するビードワイヤなどの環状構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラックやバスなどに装備される空気ばねや、タイヤ、エアローラ、配管継手などが備えるゴム製部材には、その端部を補強するための環状のビードが埋設されている(例えば特許文献1)。
【0003】
ゴム製部材にビードを埋設するには、ゴム製部材に加硫成形する前の未加硫ゴムを成型する際に、その成型中の未加硫ゴムに予め環状に形成したビードを被せる方法や、成型中の未加硫ゴムに細い線材を複数回巻き付けてビードを形成する方法を採用することが多い。
【0004】
ただ、これらの方法のうち、予め環状に形成したビードを用いる方法は、環状のビードを未加硫ゴムに被せる分、その配置に手間がかかり、また、細い線材を複数回巻き付ける方法は、その巻き付けに手間がかかるため、これらとは別の方法として、成型中の未加硫ゴムの周りに線状部材を配置し、その両端を接続して環状のビードを形成することが求められる。
【特許文献1】特開2003−202045(段落番号0032)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、線状部材の両端を接続する方法として、ロウ付けによる方法が考えられるが、この方法は、ゴムを加熱することになるため、ゴム製部材のビードの形成に採用することができない。
【0006】
また、線状部材の両端を接続する別の方法として、線状部材の両端をラップさせて接続する方法が考えられるが、単に線状部材の両端をラップさせたものは、そのラップ部分でゴム製部材の肉厚が厚くなるため、ラップ部分の近傍の寸法が不均一になることによる取付金具とのシール性の低下や、ラップ部分の剛性が他の部位よりも大きいことによる製品特性の低下が懸念される。
【0007】
さらに、線状部材の両端を鋭利なテーパー状にカットし、そのテーパー面を合わせるようにして両端をラップさせることにより、ラップ部分の近傍の肉厚が厚くなったり剛性が大きくなったりするのを防ぐことも考えられるが、両端のテーパー面がずれやすく、しかも、ラップ長を十分な長さに設定できない分、ビードに求められる十分な引張強度を得ることもできない。また、撚り線を用いて柔軟性を高めたビードワイヤは鋭利なテーパー状にカットするのが難しく、単線を多数並列に配置したビードワイヤは、鋭利にカットできるものの、曲げ剛性が大きい分、環状に形成しにくい。
【0008】
また、線状部材を精度よく配置するための滑り止めとして、線状部材を未加硫ゴムで被覆するのが望ましいが、この場合、線状部材を単に未加硫ゴムで被覆するだけでなく、未加硫ゴムで被覆しつつ両端の接続性を良好に保つ必要がある。
【0009】
本発明は、線状部材をその両端の接続性を良好にしつつ滑り止めとしての未加硫ゴムで被覆することができるゴム被覆線状部材の形成方法、及び線状部材の両端を接続して環状に形成しつつ、全周に渡って均一な剛性かつ十分な引張強度を得ることができるビードワイヤなどの環状構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るゴム被覆線状部材の形成方法は、両端を接続して環状構造体に構成するためのゴム被覆線状部材を形成するものであり、複数本の線材を束ねてなる線状部材の両端を揃え、次いで、その一部の線材を長さ方向に引き出すことにより、線状部材の両端に互いに嵌合する凹凸を形成し、その後、線状部材を未加硫ゴムで被覆するものである。
【0011】
上記構成によれば、一部の線材を引き出した後に線状部材を未加硫ゴムで被覆するので、線状部材を滑り止めとしての未加硫ゴムで被覆しつつ、その線状部材の両端に凹凸を形成することができ、しかも、その凹凸を形成時の状態に維持することができる。つまり、線状部材を被覆する未加硫ゴムは、線材の引き出しを阻害する線材間の滑り止めにもなるが、未加硫ゴムで被覆するよりも前に一部の線材を引き出すことにより、線状部材の両端に凹凸を形成することができ、しかも、線状部材を未加硫ゴムで被覆した後は、その全体の滑りを阻止すると共に、線材間の滑りを阻止して凹凸形状を維持することができる。
【0012】
これにより、線状部材を未加硫ゴムの滑り止め効果によって精度よく配置することができると共に、両端の凹凸を互いに嵌合させることにより、両端の位置ずれを阻止しながら接続して環状構造体を形成することができる。しかも、凹凸を嵌合させて線状部材の両端を接続するので、その接続部の肉厚や剛性を他の部位とほぼ等しくすることができ、さらに、凹凸の長さを所望の長さに設定することにより、十分な引張強度を得ることができる。なお、複数本の線材を束ねてなる線状部材の両端を切断するなどして揃え、その一部の線材を長さ方向に引き出して両端の凹凸を形成するので、その凹凸を同じ形状に設定することができる。
【0013】
線状部材を、芯線と、この芯線の周囲に配されて撚り合わされた複数本の外周線とから構成し、外周線から芯線を引き出して線状部材の両端に凹凸を形成すれば、その複数本の外周線を撚り合わせているので、芯線を引き出して凹部を形成した状態においても、複数本の外周線が互いにばらばらになるのを阻止して凹部の形状を保つことができる。
【0014】
複数の線状部材を未加硫ゴムで被覆するには、その複数の線状部材の両端に凹凸を形成し、この凹凸を嵌合して複数の線状部材を連続させ、連続する線状部材を未加硫ゴムで被覆した後、各線状部材に分割することにより、線状部材のうち、両端の凹凸を除く部位を未加硫ゴムで被覆するのがよい。
【0015】
そうすれば、複数の線状部材を一つの工程で未加硫ゴム被覆することができ、しかも、凹凸を嵌合して未加硫ゴムで被覆することによって、各線状部材の凹部及び凸部を未加硫ゴムから露出させることができるので、ゴム被覆線状部材の両端を接続して環状構造体を構成する際、未加硫ゴムが両端の凹凸の嵌合を阻害することがない。なお、線状部材を連続させることなく、一本ずつ型で取り囲んで未加硫ゴム被覆することもでき、この場合、凹部及び凸部の表面を型で覆って凹凸を未加硫ゴムから露出させるようにすればよい。
【0016】
連続する線状部材をカレンダーロールによってゴム被覆すれば、未加硫ゴム被覆する工程の効率を高めることができると共に、その工程に既存の設備を用いることができる。また、カレンダーロール及び搬送ローラの間隔を各線状部材の長さよりも小さく設定すれば、凹凸の嵌合部を引っ張ることなく、未加硫ゴム被覆中の各線状部材を常にいずれかのローラで直接送ることができるので、凹凸の嵌合の外れを阻止することができる。
【0017】
複数の連続する線状部材を並列に配置すると共に、各線状部材同士の接続位置を互いに長さ方向にずらして配置すれば、複数の連続する線状部材を同時に未加硫ゴム被覆することができ、しかも、各線状部材同士の接続位置を長さ方向に分散させて、未加硫ゴム被覆中における凹凸の嵌合の外れをより生じにくくすることができる。
【0018】
また、本発明は、両端を接続されて環状構造体に構成されるゴム被覆線状部材の形成方法であって、芯線と、該芯線の周囲を覆うシースとからなる線状部材の両端を揃え、次いで、その芯線を長さ方向に引き出した後、前記シースを未加硫ゴムで被覆することを特徴とするゴム被覆線状部材の形成方法を提供する。
【0019】
この構成によれば、滑り止めとなる未加硫ゴムで被覆する前に芯線をシースから引き出すので、ゴム被覆線状部材の両端を接続して環状に構成した状態で、芯線の継ぎ目の位置とシースの継ぎ目の位置とをずらすことができる。これにより、芯線の継ぎ目をシースで補強すると共に、シースの継ぎ目を芯線で補強することができ、しかも、継ぎ目付近の膨らみを分散させることができる。
【0020】
ここで、芯線としては、単線や撚り線などの他、管状の線材、あるいは、シート状の素材を丸めて棒状や管状に構成したものを例示できる。また、シースは、管状の線材の他、シート状の素材を管状に丸めたもの、あるいは、複数の線材を撚り合わせて全体として管状に構成したものを例示できる。なお、芯線及びシースには、柔軟なものを採用するのが好適である。
【0021】
また、本発明は、ゴム製部材を補強するための環状構造体であって、線状部材の両端を接続することによって環状に構成してなり、前記線状部材は、未加硫ゴムで被覆されると共に、両端に互いに嵌合する凹凸が形成されたことを特徴とする環状構造体を提供する。
【0022】
上記構成によれば、ゴム被覆線状部材をその未加硫ゴムの滑り止め効果によって精度よく配置することができると共に、ゴム被覆線状部材の両端の凹凸を嵌合させることによって、両端の位置ずれを阻止しながら接続しつつ、接続部の肉厚や剛性を他の部位とほぼ等しくすることができ、しかも、凹凸の長さを所望の長さに設定することにより、十分な引張強度を得ることができる。
【0023】
本発明に係る環状構造体は、袋状のゴム製部材の開口を取り囲んで補強するもの、あるいは、筒状部材や棒状部材の中央部を取り巻いて補強するものなど、あらゆるゴム製部材の補強に使用することができるが、「筒状のゴム膜に補強コード層を設けてなるゴム製筒体に、その中心軸方向における少なくとも一方の端部に埋設され、前記補強コード層の端部を係止するビードワイヤ」として、好適に使用することができ、さらに、「前記補強コード層は、ゴム製筒体の両端部を通るよう中心軸方向に対して傾斜しつつ中心軸を複数回取り巻く補強コードを、一回の取り巻きごとに周方向に所定のピッチだけずらすことによって周方向に配列してなり、前記補強コードのうちのゴム製筒体の端部を通る部位に掛けるよう配置されて補強コード層を係止するビードワイヤ」として、特に好適に使用することができる。
【0024】
つまり、ゴム製筒体の両端部を通るよう一本又は数本の補強コードを連続して巻き付けながら周方向に少しずつ位置をずらせて補強コード層を形成する場合、この補強コード層を係止するには、補強コードのうちのゴム製筒体の端部を通る部位に掛けるようにビードワイヤを配置する必要がある。この場合、予め環状に形成したビードや、細いワイヤを複数回巻き付けて形成するビードを使用することができないが、本発明に係る環状構造体を採用すれば、補強コードを巻き付けながら、これに掛けるように線状部材を配置し、補強コードの巻き付けが終了するときに線状部材の両端を接続することにより、環状のビードワイヤを配置することができる。しかも、線状部材を被覆する未加硫ゴムが、線状部材と補強コードとを密着させて、補強コードを巻き付けるときの滑り止めとなるので、ビードワイヤ及び補強コードを精度よく位置決めすることができる。
【0025】
なお、スダレコードを巻き付けて補強コード層を形成することもでき、この補強コード層の端部をビードワイヤに係止するには、巻き付けたスダレコードの端部外側に線状部材を配置して、この線状部材の両端を接続することによってビードワイヤを形成し、このビードワイヤに係止するようスダレコードの端部を折り返せばよい。
【0026】
線状部材を複数本の線材を束ねた構成とし、その一部の線材を長さ方向にずらすことにより、両端に凹凸を形成するようにすれば、線状部材を所望の引張強度に設定しつつ、容易に環状に曲げられる程度まで曲げ剛性を小さくし、さらに、その両端の凹凸の形成を容易にすることができる。
【0027】
ここで、線状部材の両端に凹凸を形成するには、複数本の線材を束ねて両端を切断するなどして、同じ長さの複数本の線材を束ね、その一部の線材を長さ方向に引き出してずらすのが特に好適であり、これにより、両端の凹凸を同じ形状に設定することができる。なお、線状部材の両端に凹凸を形成するための他の手法として、複数本の線材を束ねる際にその一部の線材を長さ方向にずらすようにしてもよく、各線材のそれぞれの両端に凹凸を形成してもよい。また、複数本の線材が互いに異なる長さであってもよく、両端に凹凸を形成した一本の線材を線状部材として使用してもよい。
【0028】
線状部材を、芯線と、この芯線の周囲に配して撚り合わせた複数本の外周線とから構成し、外周線から芯線を引き出して両端に凹凸を形成すれば、その複数本の外周線を撚り合わせているので、芯線を引き出して凹部を形成した状態においても、複数本の外周線が互いにばらばらになるのを阻止して凹部の形状を保つことができる。
【0029】
線状部材の芯線及び外周線の少なくとも一方を複数本の素線を撚り合わせてなる撚線とすれば、線状部材の曲げ剛性をより小さくして変形性能及び復元性能を高めると共に、ゴムとの接着性を高めることができる。
【0030】
線状部材のうち、両端に形成した凹凸を除く部位を未加硫ゴムで被覆すれば、その凹部及び凸部を未加硫ゴムから露出させることができるので、ゴム被覆線状部材の両端を接続して環状構造体を構成する際、未加硫ゴムが両端の凹凸の嵌合を阻害することがない。
【0031】
線状部材の両端をその凹凸間に侵入したゴムを介して接続するようにすれば、両端の位置ずれを阻止可能な程度に凹凸を嵌合させればよいので、引張力に耐え得る程度まで凹凸を強く押し込んだり、別に接着剤を塗布したりする必要がなく、線状部材の両端の接続を容易にすることができる。
【0032】
線状部材に、ゴムとの接着性を高める表面処理を施せば、環状構造体を周囲のゴムと十分に一体化すると共に、ゴムを介して線状部材の両端をより確実に接続することができる。特に、凹凸間に侵入したゴムを介して線状部材の両端を接続することにより、その接続部においても十分な引張強度を得ることができる。ここで、表面処理としては、線状部材を構成する線材に施すブラスメッキや、亜鉛メッキ、ブロンズメッキを例示でき、さらに、接着剤処理なども採用可能である。
【0033】
また、本発明は、ゴム製部材を補強するための環状構造体であって、線状部材の両端を接続することによって環状に構成され、前記線状部材は、芯線と、該芯線の周囲を覆うシースとからなり、前記シースが未加硫ゴムで被覆されると共に、両端を接続したときの芯線の継ぎ目の位置とシースの継ぎ目の位置とがずれるよう、前記シース及び芯線が互いに長さ方向にずらして設けられたことを特徴とする環状構造体を提供する。
【0034】
この構成によれば、環状構造体をその未加硫ゴムの滑り止め効果によって精度よく配置することができると共に、線状部材の両端を接続して環状に構成した状態で、芯線の継ぎ目の位置とシースの継ぎ目の位置とをずらすので、芯線の継ぎ目をシースで補強すると共に、シースの継ぎ目を芯線で補強することができ、しかも、継ぎ目付近の膨らみを分散させることができる。
【0035】
また、本発明は、ダイヤフラムとしてのゴム製筒体の両端部に金具を止着してなり、前記ゴム製筒体の少なくとも一方の端部を補強するビードとして、上記の環状構造体を設けた空気ばねを提供する。この空気ばねの構成を採用することにより、上記の環状構造体を採用することによる効果と同じ効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のとおり、本発明によると、ビードワイヤなどの環状構造体に構成するための線状部材を未加硫ゴムで被覆するので、その未加硫ゴムの滑り止め効果により、線状部材をゴム製部材の未加硫ゴムの周りに精度よく配置することができる。さらに、線状部材の両端に形成する凹凸を未加硫ゴムから露出させることができるので、この凹凸を嵌合させて線状部材の両端を接続することにより、その接続部の近傍の寸法や剛性を他の部位とほぼ等しくすると共に、十分な引張強度を得ることができ、ゴム製部材と取付金具とのシール性や製品特性の低下を防止することができる。
【0037】
また、一本又は数本の補強コードを連続して巻き付けることによって補強コード層を形成する場合であっても、補強コードを巻き付けながらこれに掛けるように線状部材を配置し、補強コードの巻き付けが終了するときに線状部材の両端を接続してビードワイヤとすることにより、このビードワイヤで補強コード層を係止することができる。しかも、線状部材を被覆する未加硫ゴムの滑り止め効果により、ビードワイヤ及び補強コードを精度よく位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係るゴム被覆線状部材の形成方法及び環状構造体を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明に係る環状構造体としてのビードワイヤを備えたゴム製筒体の断面図であり、左半分は加硫成形前の状態を示し、右半分は加硫成形後の状態を示す。図2はゴム被覆線状部材の側面図であり、左端は軸方向断面図を示す。図3はゴム被覆線状部材の横断面図である。図4は線状部材の両端の接続を示す模式図であり、(a)は接続前の状態を示し、(b)は接続後の状態を示す。
【0039】
本発明に係る環状構造体としてのビードワイヤ1は、ゴム製筒体2の端部に埋設して、このゴム製筒体2の端部を補強するためのものであり、両端に凹部3a及び凸部3bが形成された線状部材3を曲げて、その凹部3a及び凸部3bを嵌合することにより、線状部材3の両端を接続して環状に構成するようになっている。
【0040】
図2及び図3に示すように、線状部材3は、複数本の芯線4と、この芯線4の周囲に配されて撚り合わされた複数本の外周線5とから構成され、例えば、線状部材3の両端を切断するなどして揃えた後、芯線4を外周線5から引き出して長さ方向にずらすことにより、両端に凹部3a及び凸部3bが形成されている。
【0041】
さらに、線状部材3の凹部3a及び凸部3bを除く部位を未加硫ゴム3cで被覆することにより、ゴム被覆線状部材6が構成されている。線状部材3の芯線4は単線とされ、外周線5は複数本の素線5aを撚り合わせてなる撚線とされ、芯線4及び外周線5の素線5aに、ゴムとの接着性を高めるためのブラスメッキなどの表面処理が施されている。
【0042】
ここで、線状部材3の両端の接続について説明すると、まず、図4(a)に示すように、ゴム被覆線状部材6を曲げて両端を対向させ、さらに、両端の凹部3a及び凸部3bを嵌合して未加硫ゴム3c及びその周囲の未加硫ゴムを加硫成形する。これにより、凹部3aと凸部3bとの隙間にゴムが侵入して芯線4及び外周線5の素線5aと加硫接着され、このゴムを介して、線状部材3の両端が十分な引張強度で接続され、図4(b)に示すように、環状のビードワイヤ1が構成される。
【0043】
なお、図5に示すように、単線からなる複数本の芯線4と撚線からなる複数本の外周線5とから構成される線状部材3を未加硫ゴム3cで被覆してなるゴム被覆線状部材6に代えて、単線からなる一本の芯線7の周りに単線からなる複数本の外周線8を配置して撚り合わせた線状部材9を未加硫ゴム9aで被覆してなるゴム被覆線状部材10を使用するようにしてもよい。
【0044】
次に、ゴム被覆線状部材の形成方法を説明する。図6はゴム被覆線状部材を形成する手順を説明する図である。図7は連続する線状部材を未加硫ゴムで被覆するカレンダーロールを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0045】
まず、図6(a)に示すように、芯線4の周囲に複数本の外周線5を配して、これらを撚り合わせて撚り線11を構成した後、図6(b)に示すように、撚り線11を所望の長さに切断して両端の揃った複数の線状部材3を形成し、さらに、図6(c)に示すように、芯線4を外周線5から長さ方向に引き出して、各線状部材3の両端に互いに嵌合する凹部3a及び凸部3bを形成する。
【0046】
次いで、図6(d)に示すように、凹部3a及び凸部3bを嵌合して複数の線状部材3を連続させ、図6(e)に示すように、連続する線状部材3を未加硫ゴム3cで被覆する。このとき、隣り合う線状部材3の凹部3a及び凸部3bを嵌合しているので、線状部材3のうち、凹部3a及び凸部3bを除く部位のみが未加硫ゴム3cで被覆される。この未加硫ゴム3cは、芯線4と外周線5とのずれを阻止して、凹部3a及び凸部3bの形状を維持する。
【0047】
ここで、連続する線状部材3を未加硫ゴム3cで被覆する手順を説明する。図7に示すように、連続する線状部材3を、例えば2本〜5本程度の複数本を並列に、かつ、各線状部材3同士の接続位置3dを互いに長さ方向にずらして配置し、これらを同時にカレンダーロール12によって未加硫ゴム3cで被覆する。
【0048】
カレンダーロール12は、4本のロール12a、12b、12c、12dを備え、上側の2本のロール12a、12bの間、及び下側の2本のロール12c、12dの間から未加硫ゴム3cを供給し、この未加硫ゴム3cで中央のロール12b、12cの間を通る線状部材3を被覆するようになっている。
【0049】
カレンダーロール12の上流側には、搬送ローラとして線状部材3を送り込む一対の送り込みロール13が設けられ、カレンダーロール12の下流側には、搬送ローラとして線状部材3を引き出す一対の引き出しロール14が設けられている。これらの送り込みロール13及び引き出しロール14は、カレンダーロール12との間隔を各線状部材3の長さよりも小さく設定され、線状部材3同士の凹部3a及び凸部3bの嵌合の外れを防止している。
【0050】
なお、連続する線状部材3の複数本を同時に未加硫ゴム3cで被覆する代わりに、連続する線状部材3を1本ずつ未加硫ゴム3cで被覆するようにしてもよい。この場合、図8に示すように、カレンダーロール12に溝15を形成して、未加硫ゴム3cの幅方向への広がりを阻止するのがよい。
【0051】
その後、図6(f)に示すように、凹部3a及び凸部3bの嵌合を外して、未加硫ゴム3cで被覆した連続する線状部材3を各線状部材3に分割することにより、線状部材3の両端の凹部3a及び凸部3bを除く部位を未加硫ゴム3cで被覆したゴム被覆線状部材6を得る。
【0052】
次に、図1に示すゴム製筒体2について説明する。図9は補強コード層を示す斜視図であり、成型フォーマ及び内面未加硫ゴムの外側に形成した状態を示している。なお、図9は、下端部を見やすいように上下を逆に図示し、さらに、成型フォーマ及び内面未加硫ゴムは、下部(図9における上部)のみを図示している。
【0053】
ゴム製筒体2は、例えばトラックやバスに装備される空気ばねのダイヤフラムとして使用されるものであり、上端部を一対の締結金具16a、16bで挟持されると共に、下端部にピストン17の挿入部17aが圧入される。このゴム製筒体2は、中央部が両端部よりも大径で全体として略球状の筒状ゴム膜18に、内圧や伝達力に対する抵抗を高めるための補強コード層19を設けると共に、下端部にビードワイヤ1を埋設して補強コード層19を係止した構造とされる。
【0054】
筒状ゴム膜18は、補強コード層19を介在させる内面ゴム18a及び外面ゴム18bからなり、内面未加硫ゴム20a及び外面未加硫ゴム20bから構成される筒状未加硫ゴム膜20を加硫成形してなる。筒状未加硫ゴム膜20は、中央部が一定径で両端部が中央部よりも小径に設定され、加硫成形する際に略球状とされる。
【0055】
補強コード層19は、筒状ゴム膜18の中央部に内面側補強コード層19a及び外面側補強コード層19bの二層に設けられ、この内面側補強コード層19a及び外面側補強コード層19bが、ゴム製筒体1の中心軸を取り巻く一本の補強コード21から構成されている。
【0056】
補強コード21は、中心軸を取り巻きつつ中心軸方向に対して一定の傾斜角度で傾斜して筒状ゴム膜18の両端部を通り、さらに、一回の取り巻きごとに周方向に所定のピッチだけずれながら配列位置が中心軸周りに一周するまで中心軸を複数回取り巻いている。これにより、内面側補強コード層19a及び外面側補強コード層19bに、補強コード21がゴム製筒体2の中心軸方向に対して傾斜しつつ周方向に配列され、さらに、内面側補強コード層19a及び外面側補強コード層19bに配列される補強コード21が、互いに編み込まれることなく、その傾斜方向が互いに交差する方向に設定されている。
【0057】
ゴム製筒体2の下端部に埋設されたビードワイヤ1は、補強コード21のうち、ゴム製筒体2の下端部を通る掛け部21aに掛けるよう配置され、このビードワイヤ1が補強コード層19の下端部を係止すると共に、ゴム製筒体2の下端部を補強してその広がりを規制し、ゴム製筒体2とピストン17とのシール性を高める。
【0058】
なお、内面側補強コード層19a及び外面側補強コード層19bに配列される補強コード21の中心軸に対する傾斜角度は、筒状未加硫ゴム膜20に埋設された状態でβ(−β)に設定され、筒状ゴム膜18に加硫成形した後にβ1(−β1)に変化するようになっている。
【0059】
次に、ゴム製筒体2の製造方法を説明する。図10は補強コードが中心軸を取り巻く様子を示す斜視図である。なお、図10は、下端部を見やすいように上下を逆に図示している。また、図11はビードワイヤを配置する様子を示す底面図、図12は補強コードが中心軸を取り巻く様子を示す底面図である。図13は成型フォーマの周りに形成した筒状未加硫ゴム膜を示す図であり、(a)は軸方向断面図、(b)は軸直角方向断面図である。図14は筒状未加硫ゴム膜及び筒状ゴム膜の軸方向断面図である。
【0060】
まず、中心軸方向両端部の外径が中央部の外径よりも小径に設定されたコア式成型フォーマ22に内面未加硫ゴム20aを巻き付ける。
【0061】
次いで、図10に示すように、未加硫ゴムで被覆した一本の補強コード21を中心軸に対して一定の傾斜角度β(−β)で傾斜させて、内面未加硫ゴム20aの両端部に掛けつつ中心軸を取り巻き、かつ一回の取り巻きごとに周方向に所定のピッチだけずらしながら配列位置が中心軸周りに一周するまで中心軸を複数回取り巻く。これにより、補強コード21が周方向に配列されて内面未加硫ゴム20aの外側全周に内面側補強コード層19a及び外面側補強コード層19bが形成されて、図9に示す状態を得る。
【0062】
さらに、補強コード21を内面未加硫ゴム20aの下端部に掛ける際、図10及び図11に示すように、線状部材3を未加硫ゴム3cで被覆してなるゴム被覆線状部材6を補強コード21で内面未加硫ゴム20aの下端部に押さえ付けるようにしながら、ゴム被覆線状部材6を徐々に配置することにより、全周に渡って線状部材3を補強コード21に掛ける。このとき、ゴム被覆線状部材6の未加硫ゴム3cが線状部材3と補強コード21を密着させるので、その滑り止め効果によって、線状部材3と補強コード21を精度よく配置することができる。補強コード21の取り巻きが完了するとき、線状部材3の両端の凹部3a及び凸部3bを嵌合して環状のビードワイヤ1に構成する。
【0063】
ここで、補強コード21が中心軸を取り巻く様子、及び線状部材3が補強コード21に掛かる様子をより詳しく説明する。まず、補強コード21をあらかじめ定めた傾斜角度(β)で内面未加硫ゴム20aの中央部外周面に配列し、内面未加硫ゴム20aの端部外周面に掛けて、中心軸を挟んで反対側の外周面まで導く。次いで、傾斜角度(−β)で内面未加硫ゴム20aの反対側の中央部外周面に配列し、内面未加硫ゴム20aの端部外周面に掛けて元の外周面まで導く。
【0064】
このとき、一回の掛け回しにおける始点23aと終点23bとを、コード径以上に設定された所定のコードピッチ分だけ周方向にずらす。また、端部外周面に掛ける際、補強コード21の傾斜角度をできるだけ変化させないようにする。なお、端部を中央部よりも小径に設定しているので、端部と中央部との段差が補強コード21を係止してずれを阻止する。
【0065】
これにより、補強コード21が中心軸を挟んで反対側に一列ずつ互いにほぼ平行に配列され、補強コード21の一回の取り巻き操作が完了する。このとき、中心軸を挟んで反対側に配列された補強コード21は、外周側から見て同じ大きさで傾斜方向が反対の傾斜角度(β、−β)に設定されている。
【0066】
取り巻きの際のコードピッチ分のずれにより、中心軸に対する補強コード21の傾斜角度(β、−β)を維持しつつ中心軸周りに傾斜方向が変化し、補強コード21の取り巻き操作を繰り返すことにより、補強コード21が周方向に配列される。同一方向に傾斜する補強コード21の配列が周方向に一周するまで取り巻き操作を繰り返すことにより、補強コード21が互いに編み込まれることなく、傾斜方向が互いに交差する円筒状の内面側補強コード層19a及び外面側補強コード層19bが形成される。
【0067】
また、図12に示すように、補強コード21を内面未加硫ゴム20aの下端部に掛ける際、まず、その掛け部21aの終端側でゴム被覆線状部材6の始端側を押さえ付けるように補強コード21を掛けて、ゴム被覆線状部材6の始端側を掛け部21aの終端側の内側に配置した後、ゴム被覆線状部材6の終端側を掛け部21aの始端側の外側に配置しつつ、補強コード21の一回の取り巻き操作を完了させる。これにより、補強コード21の一回の取り巻き操作において、補強コード21の掛け部21aの内外を線状部材3が通ることになり、一つの掛け部21aに線状部材3が掛かる。
【0068】
同様の手順で、ゴム被覆線状部材6を掛け部21aの内側から外側に通しつつ、補強コード21の取り巻き操作を繰り返すことにより、ゴム被覆線状部材6を徐々にかつ全周に配置して、線状部材3を補強コード21の全ての掛け部21aに掛ける。補強コード21の取り巻きが完了して全周にゴム被覆線状部材6が配置されたとき、線状部材3の両端の凹部3a及び凸部3bを嵌合する。
【0069】
その後、補強コード層19の外側に外面未加硫ゴム20bを巻き付けて、筒状未加硫ゴム膜20を構成し、図1の左半分、図10、及び図11の実線に示す状態を得る。このとき、線状部材3の両端の凹部3a及び凸部3bの隙間に侵入したゴムを介して、線状部材3の両端が接続されて環状のビードワイヤ1に構成される。なお、ビードワイヤ1の周囲は、未加硫ゴムで被覆した補強コード21の掛け部21aが密に配置される部位であり、その未加硫ゴムがゴム被覆線状部材6の未加硫ゴム3cに加わるので、凹部3a及び凸部3bの隙間に侵入するのに十分な量のゴムが存在する。
【0070】
さらに、コア式成型フォーマ22を分解して筒状未加硫ゴム膜20を取り外し、これを外型に組み込んで内側にバッグを挿入し、筒状未加硫ゴム膜20を加圧加熱して略球状の筒状ゴム膜18に加硫成形することにより、図1の右半分、及び図11の二点鎖線に示す状態のゴム製筒体2を得る。
【0071】
次に、空気ばねを例にとって、本発明のビードワイヤを備えた本発明品と、従来のビードワイヤを備えた従来品とを比較する。本発明品1、2及び従来品1、2は、いずれも図1に断面図を示すものであり、ゴム製筒体2の上端部を一対の締結金具16a、16bで挟持すると共に、下端部にピストン17の挿入部17aを圧入している。なお、従来品1、2は、本発明品1、2が備えるビードワイヤ1に代えて、ビードワイヤ24、25を備えたものである。
【0072】
ゴム製筒体2は、いずれも内径がφ150mmで、中央部の外径がφ240mm、高さ(B1)が140mm、補強コード21の傾斜角度(β1)が55°、下端部に埋設した環状のビードワイヤ1、24、25の中心径(D)がφ160mmの空気ばね用ダイヤフラムとし、加硫成形前の中央部の外径をφ216mm、高さ(B)を170mm、補強コード21の傾斜角度(β)を48°とする。
【0073】
補強コード層19は、中心軸を取り巻く一本の補強コード21から形成したものであり、筒状ゴム膜18の下端部を通る掛け部21aをビードワイヤ1、24、25に掛けている。掛け部21aの直線長さ(H)は、傾斜角度(β=48°)及び高さ(B=170mm)より、153mmとしている。
【0074】
補強コード21は、コード径が0.6mmのポリエステルコードを未加硫ゴムで被覆したゴム被覆コードとし、そのコードピッチを1mmとする。また、未加硫ゴムで被覆した状態の補強コード21の径をφ1.0mmとする。
【0075】
本発明品1、2及び従来品1、2におけるビードワイヤ1、24、25は、いずれもブラスメッキを施した撚り鋼線である線状部材3、9、26、27の両端を接続して環状に構成したものである。撚り鋼線の構成は、本発明品1、従来品1及び従来品2で、1×2.1+6×1.0とし、本発明品2で、3×1.2+(6×3)×0.5とする。
【0076】
本発明品1、2の線状部材3、9は、その芯線4、7を外周線5、8から30mm引き出して両端に凹部3a及び凸部3bを形成し、さらに未加硫ゴム3cで被覆したものであり、凹部3a及び凸部3bを嵌合して両端を接続することにより、ビードワイヤ1に構成される。
【0077】
従来品1の線状部材26は、図15(a)に示すように、その両端部の20mmの範囲をテーパー状にカットしたものであり、テーパー面を合わせて両端部をラップさせて接続することにより、ビードワイヤ24に構成される。従来品2の線状部材27は、図15(b)に示すように、撚り鋼線をそのまま使用するものであり、両端部の30mmの範囲をそのままラップさせて接続することにより、ビードワイヤ25に構成される。
【0078】
未加硫ゴム膜成型時の挙動、加硫成形時の挙動、ピストン挿入部とのシール性、耐久性の4項目について、本発明品と従来品とを比較した結果を表1に示す。
【0079】
【表1】


【0080】
表1により、本発明品は、4項目の全てについて従来品よりも優れていることがわかる。すなわち、本発明の方法は、未加硫ゴム膜を成型する際、ビードワイヤ接続部の位置ずれや素線のもつれ、補強コードの乱れを生じさせず、しかも、未加硫ゴムが芯線と外周線とのずれを阻止し、かつ補強コード層の成型精度を良好にする。また、加硫成形する際、ビードワイヤ接続部の位置ずれや両端の開き、変形を生じさせず、さらに、ピストンとのシール性の低下を阻止し、耐久性を向上させることができる。
【0081】
上記構成によれば、未加硫ゴム3c、9cで被覆した線状部材3、9の両端を接続することによってビードワイヤ1を構成するので、ゴム製筒体2へのビードワイヤ1の配置を容易にすることができる。特に、一本又は数本の補強コード21で中心軸を取り巻きながら、ゴム被覆線状部材6、10をその始端側から徐々に配置して全周に配置した後、線状部材3、9の両端を接続してビードワイヤ1を構成することにより、補強コード21の全ての掛け部21aにビードワイヤ1を掛けて補強コード層19を係止することができる。しかも、ゴム被覆線状部材6、10の未加硫ゴム3c、9cが線状部材3、9及び補強コード21を密着させるので、これらを精度よく配置することができる。
【0082】
これにより、ピストンタイプの空気ばねのようなビードワイヤ1が必須である片側シールの構造のゴム製筒体2にも、一本又は数本の補強コード21を巻き付けて形成する補強コード層19を採用することができる。特に、ピストンタイプを採用することが多く、ビードワイヤ1に求められる強度の小さい小型の空気ばねに、本発明のビードワイヤ1を好適に使用することができる。
【0083】
線状部材3、9を未加硫ゴム3c、9cで被覆するとき、複数の線状部材3、9の凹部3a及び凸部3bを嵌合して連続させておくので、その被覆を容易にすることができる。しかも、凹部3a及び凸部3bを未加硫ゴム3c、9cから露出させることができるので、未加硫ゴム3c、9cが線状部材3、9の両端を接続する際の障害となるのを防止することができる。
【0084】
線状部材3、9は、未加硫ゴム3c、9cで被覆する前に、その芯線4、7を外周線5、8から引き出すことにより、容易に両端の凹部3a及び凸部3bを形成することができる。未加硫ゴム3c、9cで被覆するまでは、芯線4、7を10mm〜30mm程度まで容易に引き出すことができ、撚られた外周線5、8は、芯線4、7を引き出しても、十分にその形状を保持する。しかも、未加硫ゴム3c、9cで被覆した後は、芯線4、7と外周線5、8とのずれを阻止することができ、成型性を高めることができる。
【0085】
線状部材3、9の両端の凹部3a及び凸部3bを嵌合して接続するので、両端のずれを阻止すると共に、ビードワイヤ1の外径、断面形状を全周に渡って同一にすることができ、製品形状を安定かつ美しくすることができる。しかも、接続部においてもビードワイヤ1の剛性が全く変わらないので、必要な引張強度に応じて、凹部3a及び凸部3bの嵌合長さを自由に選択することができる。
【0086】
ビードワイヤ1を柔軟な撚り線から形成するので、その線状部材3、9を未加硫ゴム3a、9aで被覆したゴム被覆線状部材6、10を始端側から徐々に配置する際の取り扱いが簡単であり、しかも、ピストンの挿入やタイヤホイールなどの金具を取り付ける際の変形にも十分に追随し、かつ速やかに元の形状に復元する。
【0087】
線状部材3、9の引張強度は、芯線4、7のみの強度、あるいは外周線5、8のみの強度で十分な大きさであり、両端の凹部3a又は凸部3bにおいても十分な引張強度を得ることができる。なお、従来のビードワイヤは、金具との締結形状安定性を高めるため、あるいはラップジョイントを使用するため、大きな形状のビードワイヤにすることが多い。
【0088】
また、線状部材3、9の両端を凹部3a及び凸部3b間に侵入するゴムを介して接続するので、その嵌合長さを芯体の径の5倍〜10倍程度に設定することにより、十分な引張強度で接続することができ、ビードワイヤ1を引っ張る力による部分的な変形を阻止することができる。
【0089】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、線状部材3を未加硫ゴム3aで被覆するには、カレンダーロール12によって連続する線状部材3を未加硫ゴム3aで被覆するだけでなく、線状部材3を一つずつ型で取り囲んで被覆することもできる。この場合、凹部3a及び凸部3bの表面を覆っておけばよい。
【0090】
また、本発明に係る環状構造体としてのビードワイヤ1が補強するゴム製筒体2は、空気ばねのダイヤフラムに限らず、タイヤや、エアローラ、配管継手などが備えるものであってもよい。また、ゴム製筒体の補強コード層は、一本又は数本の補強コード21で中心軸を取り巻いて形成するものだけでなく、幅広のスダレコードを巻き付けたものであってもよい。
【0091】
ビードワイヤ1は、ゴム製筒体2の中心軸方向における一方の端部に埋設するだけでなく、ゴム製筒体の両端部に埋設することもできる。さらに、本発明に係る環状構造体は、ビードワイヤ1に限らず、袋状のゴム製部材の開口周縁を補強するものや、筒状や棒状のゴム製部材の中央部を取り巻いて補強するものであってもよい。
【0092】
線状部材は、その芯線が複数本の素線を撚り合わせてなる撚線であってもよい。また、線状部材は、芯線の周りに配した外周線を撚り合わせた撚り線に限らず、複数の線材を束ねただけのものであってもよい。
【0093】
さらに、芯線は、柔軟でかつ十分な引張強度を有するものであればよく、単線や複数本の芯線4、7に代えて、管状の線材、あるいは、シート状の素材を丸めて棒状や管状に構成した芯線を使用することができる。また、撚り合わせた複数本の外周線5、8に代えて、管状の線材や、シート状の素材を管状に丸めてなる柔軟なシースを使用することもできる。この場合も、両端を接続したときの芯線の継ぎ目の位置とシースの継ぎ目の位置とをずらすので、芯線の継ぎ目をシースで補強すると共に、シースの継ぎ目を芯線で補強することができ、しかも、継ぎ目付近の膨らみを分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る環状構造体としてのビードワイヤを備えたゴム製筒体の断面図であり、左半分は加硫成形前の状態を示し、右半分は加硫成形後の状態を示す
【図2】ゴム被覆線状部材の側面図
【図3】ゴム被覆線状部材の横断面図
【図4】線状部材の両端の接続を示す模式図であり、(a)は接続前の状態を示し、(b)は接続後の状態を示す
【図5】ゴム被覆線状部材の別の形態の横断面図
【図6】ゴム被覆線状部材を形成する手順を説明する図
【図7】連続する線状部材を未加硫ゴムで被覆するカレンダーロールを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図
【図8】カレンダーロールの別の形態の正面図
【図9】補強コード層を示す斜視図
【図10】補強コードが中心軸を取り巻く様子を示す斜視図
【図11】ビードワイヤを配置する様子を示す底面図
【図12】補強コードが中心軸を取り巻く様子を示す底面図
【図13】成型フォーマの周りに形成した筒状未加硫ゴム膜を示す図であり、(a)は軸方向断面図、(b)は軸直角方向断面図
【図14】筒状未加硫ゴム膜及び筒状ゴム膜の軸方向断面図
【図15】従来品のビードワイヤの接続を示す模式図
【符号の説明】
【0095】
1 ビードワイヤ
2 ゴム製筒体
3、9 線状部材
3a 凹部
3b 凸部
3c、9c 未加硫ゴム
4、7 芯線
5、8 外周線
5a 素線
6、10 ゴム被覆線状部材
12 カレンダーロール
19 補強コード層
21 補強コード
21a 掛け部
【出願人】 【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫

【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三

【識別番号】100106873
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 誠司

【識別番号】100135574
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 順子


【公開番号】 特開2008−30084(P2008−30084A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205565(P2006−205565)