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【発明の名称】 ねじ固定具及びねじ固定具の製造方法
【発明者】 【氏名】三浦 義洋

【要約】 【課題】ねじ溝の形成を含む一連の製造工程を全てプレス処理で行うことで、ねじ切り忘れを防止し、確実にねじ切り加工がされている製品が得られるねじ固定具の構造、及び、ねじ固定具の製造方法を提供する。

【構成】本体フレーム50に形成された穴51にかしめ処理45されることで本体フレームに対して固定可能なフランジ部13と、フランジ部に連続し内部に空間部15を存在させた円筒部10とを具備するねじ固定具1であって、円筒部の反フランジ部を塞ぐ頂面11に、プレス加工処理により一口のねじ溝20を形成することで、ねじ溝の形成を含む一連の製造工程を全てプレス処理で行うことを可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板に形成された穴にかしめ処理されることで前記平板に対して固定可能なフランジ部と、該フランジ部に連続し内部に空間を存在させた円筒部とを具備するねじ固定具であって、
前記円筒部の反フランジ部を塞ぐ頂面に、プレス加工処理により一口のねじ溝を形成して成る
ことを特徴とするねじ固定具。
【請求項2】
電器製品等に内在される平板状の本体フレームに対して複数のねじ固定具をそれぞれかしめ処理で固定し、前記各ねじ固定具に対してねじを介して回路基板等を固定する場合の円筒状のねじ固定具であって、
本体フレームに形成された穴にかしめ処理されることで前記本体フレームに対して固定可能なフランジ部と、
該フランジ部に連続し内部に空間を存在させた円筒部と、
前記円筒部の反フランジ部を塞ぐ頂面に、プレス加工処理により形成された一口のねじ溝と
を具備して成ることを特徴とするねじ固定具。
【請求項3】
帯状板を流れ作業で複数回プレス加工することで一端にフランジ部を他端にねじ溝を有する円筒状のねじ固定具を製造する方法であって、
一端が開口し他端に頂面を有する円筒状となるように複数回のプレス加工で円筒体を形成する本体形成工程と、
前記円筒体の頂面にプレス加工で穴を穿孔する孔形成工程と、
孔が形成された頂面に一口のねじ溝をプレス加工で形成するねじ溝加工工程と、
前記帯状板からねじ溝が形成された円筒体を周囲にフランジ部を有するように切り落とす切り落し加工工程と、
を具備することを特徴とするねじ固定具の製造方法。
【請求項4】
前記孔形成工程において、前記円筒体の頂面にプレス加工で穿孔する穴は、円形部に長孔部を連結した形状を基本形状とし、前記円形部と長孔部との連結付近において左右非対称の形状である請求項3に記載のねじ固定具の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶テレビの本体フレームにねじを用いて回路基板を装着するに際して、本体フレーム側に対してねじを固定するためのねじ固定具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶テレビの本体フレームに対しては、固定具及びねじを用いて回路基板を装着することが行われていた。
固定具40は、図4に示すように、円柱部41の中央に上面よりねじ溝42が螺旋状に切られ、下端に円柱部41より大径のフランジ部43が形成されている。
【0003】
そして、図5に示すように、本体フレーム50に形成された複数の穴51に固定具40のフランジ部43をかしめ処理45することで、本体フレーム50に対して固定具40を固定し一体化させた後、固定具40の上面側に回路基板60を配置し、回路基板60の孔61及び固定具40のねじ溝42にねじ70を挿入することで、回路基板60を本体フレーム50に対して固定することが行われていた。
また、かしめ処理45に際しては、本体フレーム50側の膨出部分が円柱部41に形成された切削溝部44に侵入して固定が確実になるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した固定具40は、各円柱部41にそれぞれねじ溝42を手作業や2次加工によるねじ切り作業が必要であるため、製造に手間がかかるという一面があった。また、大量の固定具40に対して一つずつねじ溝42のねじ切り処理を必要とするため、製造した多数の固定具の数個について、処理ミス(ねじ切り忘れ)によりねじ溝42の切り込みが施されない事態が生じる場合があった。
そして、本体フレーム50に固定具40をかしめ処理45をした段階で、固定具40の一つにねじ溝42が切り込まれていなかったような場合、回路基板60を装着することができず、一体化された本体フレーム50ごと不良品扱いになるという不都合があった。
【0005】
また、ねじを固定するための固定具については、下記特許文献に示されるように各種提案されているが、本体フレーム50に対して回路基板60を固定するに適した構造は存在しなかった。
【特許文献1】特開平10−285720
【特許文献2】特開平09−137816
【0006】
本発明は上記実情を考慮して提案されたもので、ねじ固定具においてねじ溝の形成を含む一連の製造工程を全てプレス処理で行うことで、ねじ切り忘れを防止し、確実にねじ切り加工がされている製品が得られるねじ固定具の構造、及び、ねじ固定具の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、平板(本体フレーム50)に形成された穴51にかしめ処理45されることで前記平板(本体フレーム50)に対して固定可能なフランジ部13と、該フランジ部13に連続し内部に空間部15を存在させた円筒部10とを具備するねじ固定具1であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記円筒部10の反フランジ部を塞ぐ頂面11に、プレス加工処理により一口(一周分)のねじ溝20を形成する。
【0008】
請求項2の発明は、電器製品等に内在される平板状の本体フレーム50に対して複数のねじ固定具1をそれぞれかしめ処理45で固定し、前記各ねじ固定具1に対してねじ70を介して回路基板60を固定する場合の円筒状のねじ固定具1であって、次の構成を含むことを特徴としている。
本体フレーム50に形成された穴にかしめ処理45されることで前記本体フレーム50に対して固定可能なフランジ部13を設ける。
該フランジ部13に連続し内部に空間部15を存在させた円筒部10を設ける。
前記円筒部10の反フランジ部を塞ぐ頂面11に、プレス加工処理により形成された一口(一周分)のねじ溝20を設ける。
【0009】
請求項3の発明方法は、帯状板30を流れ作業で複数回プレス加工することで一端にフランジ部13を他端にねじ溝20を有する円筒状のねじ固定具1を製造する方法であって、次の各工程を含むことを特徴としている。
本体形成工程。この工程は、一端が開口し他端に頂面11を有する円筒状となるように複数回のプレス加工で円筒体を形成するものである。
孔形成工程。この工程は、前記円筒体の頂面11に円形部34aと長孔部34bを連結したひょうたん型に似た穴34をプレス加工で穿孔するものである。
ねじ溝加工工程。この工程は、ひょうたん型に似た穴34が形成された頂面11に段差吸収孔21を備えた一口(一周分)のねじ溝20をプレス加工で形成するものである。
切り落し加工工程。この工程は、前記帯状板からねじ溝が形成された円筒体を周囲にフランジ部13を有するように切り落してねじ固定具を得るものである。
請求項4は、請求項3のねじ固定具の製造方法の孔形成工程において、前記円筒体の頂面にプレス加工で穿孔する穴は、円形部に長孔部を連結した形状を基本形状とし、前記円形部と長孔部との連結付近において左右非対称の形状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のねじ固定具1によれば、ねじ70が螺着するねじ溝20をプレス加工処理による一口(一周分)のねじ溝20で形成するので、一連の製造工程を全てプレス処理で行うことができ、ねじ溝20が確実に形成されるねじ固定具1の構造とすることができる。
また、ねじ固定具を製造する場合に、円筒体の頂面にプレス加工で穿孔する穴(円形部に長孔部を連結した形状)について、左右非対称の形状とすることで、その後のねじ溝加工工程で形成するねじ溝20について、ねじ山に接している部分を多くしたねじ溝とすることができ、ねじ装着時の安定性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
本発明によるねじ固定具1は、図1に示されるように、一方側が開口し、他方側が頂面11によって塞がれた円筒部10を有して構成されている。円筒部10の開口側下端には、円筒部10の外側周囲に突出するフランジ部13が形成されている。フランジ部13の周囲面は、山状13aと谷状13bから成る凹凸が連続形成されている。これはフランジ部13が平面板の穴にかしめ処理される際に、穴の内壁部を凹凸により変形し易くするためであり、また、ねじ締め時の供回りの防止(回転防止)を図るためである。
また、フランジ部13の直径は、かしめ処理を行うため、ねじ固定具1が装着される本体フレームの穴の径より若干大きな径となっている。本体フレームにねじ固定具1がかしめ処理により装着された状態については後述する。
【0012】
円筒部10の頂面11には、プレス加工処理により一口(一周分)のねじ溝20となる孔が形成されている。このねじ溝20は、図1(a)(c)に示すように、穿孔された穴(後述する図2及び図6に示されたひょうたん型に似た形状の穴34)に対して、この部分に装着されるねじのねじ山一つ分(一周分)に対応して嵌合する形状にプレス加工処理で変形することにより形成するものである。ねじ溝20(孔)には、段差吸収孔21を設けることで、この部分の存在によりねじ溝20にねじ山に対応する段差が形成できるように構成されている。
すなわち、ねじ溝20は、段差吸収孔21を隔ててねじの一山に対応する段差を有するとともに、ねじの一山に対応する螺旋形状を有して構成されている。
【0013】
また、円筒部10の内部には、ねじの先端部分が収納可能な空間部15が形成されている。円筒部10の長さは、ねじ固定具1に固定されるねじの長さや設計上必要な高さに応じて設定される。
【0014】
次に、上記構造のねじ固定具1の基本的な製造方法について、図2を参照しながら説明する。
ねじ固定具1は、帯状板30を流れ作業で上型及び下型による垂直方向の複数回プレス加工することで、一端にフランジ部13を有し、他端にねじ溝20を有する円筒体とすることで形成される。
図2に示す一連の工程は、金属片から構成される帯状板30の上下に配置された上型及び下型の各プレ−ト(図示せず)を同期させて帯状板30に対して近接・離隔するようにし、各プレ−トによって帯状板30をクランプした状態において各工程を同時に実施し、工程終了後各プレ−トを離隔させ、帯状板30を所定の距離だけ図面右方向へ移動させ、各加工部分を次の工程へ順次移動させて行われる。
【0015】
先ず、帯状板30に対して、図2(a)〜(d)における複数回のプレス加工(順送金型加工)により、一端が開口し他端に頂面を有する円筒体31,32,33を順次成型し、最終的には頂面11が形成された円筒部10を有するようにプレス処理が施される(本体形成工程)。この処理は、1回のプレス処理で所望の円筒体を得ることができないため、複数回のプレス加工を順次流れ作業的に行うことで、所望形状の円筒部10を有する円筒体を形成することが可能となる(図2(d))。
【0016】
次に、成型された円筒体の頂面11に、穴開けパンチ(図示せず)によって打ち抜くプレス加工により、図6に示されるような略円形部34aに対して長孔部34bが連結されたような形状(ひょうたん型に似た形状)の穴34を穿孔する(孔形成工程)(図2(e))。
穴34は、図6に示されるように、略円形部34aに対して長孔部34bが連結されたような形状に穿孔されている。穴34は、図6の左右において対称形状ではなく、略円形部34aと長孔部34bとの連結部分における図の左側部分の穴の半径R1が右側の半径R2より大きくなるように形成されることで、略円形部と長孔部との連結付近において左右非対称の形状となっている。これは、後述するプレス加工で形成されたねじ溝にねじを装着した場合に、ねじ山に接して(支えて)いるねじ溝部分を多くすることで、ねじ装着の安定性を確保するためである。
【0017】
続いて、穴34を含む頂面11に対してプレス加工を行うことにより、穴34を変形させ、図7に示されるように、前記略円形部34aを変形したねじ溝20及び長孔部34bを変形した段差吸収孔21を形成することで一口(一周分)のねじ溝20を構成する(ねじ溝加工工程)(図2(f))。
すなわち、ねじ溝加工工程においては、長孔部34bが変形されることで、図7(a)(b)(c)に示されるような、ねじ溝20の高い位置と低い位置との間にねじ溝がない空間を介在させるための段差吸収孔21が形成され、略円形部34aが変形されることで、一周分の高低差を有する螺旋形状のねじ溝20が形成される。
また、ねじ溝20においては、図7の左側がねじピッチの始まりとなり、右側がねじピッチの終わりとなるようにし、プレス加工で段差吸収孔21を有するねじ溝20が形成された場合、ねじ山に接して(支えて)いるねじ溝部分を多くするとともに、右側のねじピッチの終わり側を高く曲げる(図7(c)を参照)必要がある。そのため、右側のねじピッチの終わり位置は、曲げ位置に対して左側のそれよりも長くなるようにするため、プレス加工前の図6の状態では穴34は非対称となっている。
【0018】
次に、円筒体の周囲にフランジ部13の外周となる凹凸が繰り返される切り込み溝をプレス加工により形成する(図2(g))。
【0019】
最後に、穴開けパンチ(図示せず)によって打ち抜くことで、帯状板30からねじ溝20が形成された円筒体を切り落すことで、製品としてのねじ固定具1を得るものである(図2(h))。
上記した一連の製造工程は、ねじ溝20の形成を含む一連の製造工程を全てプレス処理(順送金型加工)で行われるので、ねじ切り忘れを防止し、確実にねじ切り加工がされている製品(プレス処理のみでねじ溝20が形成されたねじ固定具1)を得ることができる。
【0020】
続いて、上記したねじ固定具1の使用の仕方について、図3を参照しながら説明する。
ねじ固定具1は、液晶テレビ等の本体フレーム50に回路基板60を装着するためのものであり、例えば回路基板60の四隅等に対応する複数個所に用いられる。
【0021】
先ず、本体フレーム50に形成された複数の穴51に、それぞれねじ固定具1をその頂面11側から挿入する(図3(a))。ねじ固定具1のフランジ部13の直径は穴51より大きく形成されているので、フランジ部13が本体フレーム50の裏面に当接する。
この状態で、当て板100に配置されたねじ固定具1を本体フレーム50側から押し付けることで、フランジ部13が穴51へ押し込まれ、フランジ部13の周囲の山状13a及び谷状13bが本体フレーム50側に埋没される(図3(b))。
【0022】
固定されたねじ固定具1上に回路基板60を設置し、回路基板60に設けられた孔61とねじ固定具1の頂面11部分を合わせ、ねじ70を装着する。回路基板60に形成された孔61は、ねじ70のねじ径より大きく形成されているので、ねじ70のねじ山は、ねじ固定具1のねじ溝20にのみ嵌合し、ねじ70を螺進させることで嵌合箇所(一つの谷部)がねじ根元側に移動し、ねじ固定具1と回路基板60との間でねじ70が締結される(図3(c))。
ねじの嵌合箇所は、図3(c)に示すように、ねじ山の一つの谷部71がねじ溝20に位置し、谷部71に対して下側のねじ山頂上線がねじ溝20に沿って当接することで、ねじ固定具1に対してねじ70が固定される。
【0023】
上記したねじ固定具1の構造によれば、ねじ70が螺着するねじ溝20を一連のプレス加工処理による一口(一周分)のねじ溝20で形成するので、ねじ溝20が確実に形成されたねじ固定具1を得ることができ、従来例で述べたように、本体フレーム50にねじ固定具1を装着した段階で不良品が発生することがなく、無駄になる部材の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のねじ固定具の一実施例を示すもので、(a)は平面説明図、(b)は側面説明図、(c)は平面図のA−A線断面説明図である。
【図2】(a)〜(h)は、本発明のねじ固定具の製造工程を説明するための工程説明図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明のねじ固定具の使用の仕方を説明するための断面説明図である。
【図4】従来のねじ固定具の構造を示すもので、(a)は平面説明図、(b)は側面説明図、(c)は断面説明図である。
【図5】従来のねじ固定具を使用した本体フレームと回路基板との固定状態を示す断面説明図である。
【図6】ねじ固定具の製造工程における孔形成工程で穿孔される穴の形状を示す平面図である。
【図7】(a)(b)(c)はねじ固定具の製造工程におけるねじ溝加工工程でプレス加工されたねじ溝を示すもので、(b)は平面説明図、(a)は(b)のA矢視説明図、(c)は(b)のB−B断面説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ねじ固定具
10 円筒部
11 頂面
13 フランジ部
15 空間部
20 ねじ溝
21 段差吸収孔
30 帯状板
34 穴
43 フランジ部
45 かしめ処理
50 本体フレーム
60 回路基板
70 ねじ
71 谷部
【出願人】 【識別番号】591042171
【氏名又は名称】株式会社オチアイ
【出願日】 平成19年7月4日(2007.7.4)
【代理人】 【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝

【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏


【公開番号】 特開2008−36711(P2008−36711A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2007−176322(P2007−176322)