トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 ディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法
【発明者】 【氏名】八木 晴雄

【要約】 【課題】インナパッド収納部の内周縁とインナパッドを構成するプレッシャプレートの外周縁との係り代及び当接面積を十分に確保でき、しかも亀裂等の損傷を発生しにくいディスクブレーキ用板金製サポートを得られる製造方法を実現する。

【構成】(A)に示す様に、コイニング加工によりサポートを構成する金属板31の一部を押し潰し、押し潰された部分に隣接する部分の厚さ寸法Tをこの金属板31の元々の厚さ寸法tよりも大きくする。その後、(B)に示す様に、このコイニング加工に伴って厚さ寸法が大きくなった板厚増大部分36の一部を、このコイニング加工により押し潰された部分を含めて除去する。そして、上記インナパッド収納部の内面の幅寸法Tを、上記金属板31の元々の厚さ寸法tよりも大きくする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板製で、車体に取り付ける為の基板部と、この基板部の周方向中間部に設けられたインナパッド収納部とを備えるディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法であって、上記金属板の一部で、上記ロータの回転方向に関して上記インナパッド収納部の両端部を構成する部分に、上記金属板の一部をこの金属板の片面側から厚さ方向に押し潰すと共にこの金属板の他面側の一部を他の部分よりも膨出させて、押し潰された部分に隣接する部分の厚さ寸法を上記金属板の元々の厚さ寸法よりも大きくするコイニング加工を施した後、このコイニング加工に伴って厚さ寸法が大きくなった板厚増大部分の一部を、このコイニング加工により押し潰された部分を含めて除去する事により、上記インナパッド収納部の内面のうちで上記ロータの回転方向に関して両端部の、上記ロータの軸方向に関する幅寸法を、上記金属板の元々の厚さ寸法よりも大きくする工程を有するディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法。
【請求項2】
上記コイニング加工により上記金属板の片面側に凹入部を、同じく他面側に、他の部分よりも厚さ方向に突出した、上記ロータの回転方向に関する寸法が上記凹入部の同方向の寸法よりも大きい平面部を、それぞれ形成した後、上記金属板を、この平面部の先端から上記凹入部の寸法を越えてこの金属板の内部に入り込んだ位置で除去する、請求項1に記載したディスクブレーキ用板金サポートの製造方法。
【請求項3】
上記インナパッド収納部の両端部を構成する部分のうちの少なくとも一方の部分で、上記コイニング加工により上記内面の幅寸法を上記金属板の元々の厚さ寸法よりも大きくする部分を、当該部分でインナパッドのプレッシャプレートの端縁と対向する部分のうちの一部のみとした、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法。
【請求項4】
ディスクブレーキ用板金製サポートは、1枚の金属板を曲げ加工する事により、一体で、アウタパッド収納部及びインナパッド収納部とを備えたものであり、このうちのインナパッド収納部の内面のうちで上記ロータの回転方向に関して両端部の、上記ロータの軸方向に関する幅寸法を、上記金属板の元々の厚さ寸法よりも大きくする工程を、上記金属板を曲げ加工して上記アウタパッド収納部を形成した後に実施する、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の制動に使用するディスクブレーキを構成するサポートのうち、金属板にプレス加工等による曲げ加工を施して造る板金製サポートの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の制動に使用するディスクブレーキとして、従来から各種構造のものが知られているが、厚肉鋼板等の金属板に曲げ加工を施して成る板金製サポートを使用するものが、コスト並びに重量の低減を図る面から研究が進められている。図10〜13は、この様な板金製サポートを組み込んだディスクブレーキの1例として、特許文献1に記載されたものを示している。先ず、この従来構造に就いて簡単に説明する。
【0003】
このディスクブレーキは、車輪と共に回転するロータ1に隣接した状態で懸架装置に対し固定されるサポート2にキャリパ3を、1対のガイドピン4a、4bにより、上記ロータ1の軸方向(図10の上下方向、図11の左右方向)の変位を可能に支持している。上記サポート2には、上記ロータ1を挟んでアウタ側(車両の幅方向に関して外側)のパッド5a及びインナ側(車両の幅方向に関して中央側)のパッド5bを、上記ロータ1の軸方向の変位を可能に支持している。又、上記キャリパ3のシリンダ部6に嵌装したピストン7の先端面(図11の左端面)を、上記インナ側のパッド5bを構成するプレッシャプレート8bに突き当て、上記キャリパ3のアウタ側端部に形成したキャリパ爪9の内側面を、アウタ側のパッド5aを構成するプレッシャプレート8aに当接させている。
【0004】
制動を行なう場合には、上記シリンダ部6内への圧油の送り込みにより、上記ピストン7で上記インナ側のパッド5bを、上記ロータ1の側面に押し付ける。この押し付けの反作用として、上記キャリパ3がインナ側に変位するので、上記キャリパ爪9が上記アウタ側のパッド5aを、上記ロータ1の側面に押し付ける。この結果、このロータ1が1対のパッド5a、5bのライニング10a、10bにより両側から強く挟持されて、制動が行なわれる。この制動の際、これら各ライニング10a、10bとロータ1との摩擦に伴って上記各パッド5a、5bに加わる制動トルクは、これら各パッド5a、5bのプレッシャプレート8a、8bを支持した、上記サポート2により支承される。
【0005】
又、特許文献2には、能率良く、且つ精度良く造れるディスクブレーキ用板金製サポートとして、図14〜17に示す様な板金製サポート11及びこの板金製サポート11を組み込んだディスクブレーキが記載されている。この板金製サポート11は、厚肉鋼板等の十分な剛性を有する金属板を曲げ形成する事により一体に造られたもので、基板部12と、インナパッド収納部13と、それぞれ1対ずつの連結板部14a、14bと突出板部15a、15bと係止部16a、16bとを備える。このうちの基板部12は、上記板金製サポート11を車体(懸架装置を構成するナックル等の保持部材)に取り付ける為のもので、径方向内端側の周方向両端部(図15の下側左右両端部)に、車体への固定の為のボルトを螺合させるねじ孔17、17を形成している。
【0006】
又、上記インナパッド収納部13は、上述の様な基板部12の周方向中間部に、この基板部12の外周縁側が開口する状態で形成されている。ロータ1の回転方向に関して、この様なインナパッド収納部13は、インナパッド18を構成するプレッシャプレート19を、上記ロータ1の軸方向(図16の表裏方向)の変位を可能に、且つ、制動時に上記インナパッド18に加わる制動トルクを支承する様に支持する。この為に、上記インナパッド収納部13の両端部に、互いに対称形の係止切り欠き20、20を形成し、更にこれら両係止切り欠き20、20の開口部に、係止突片21、21を形成している。この様なインナパッド収納部13に支持する、上記インナパッド18のプレッシャプレート19の両端部には、それぞれ上記各係止切り欠き20、20及び係止突片21、21と係合自在な係止鉤部22、22を形成している。上記インナパッド18は、これら各係止鉤部22、22を上記各係止切り欠き20、20に進入させた状態で、上記インナパッド収納部13に、上記ロータ1の軸方向の変位を可能に支持している。
【0007】
又、上記各連結板部14a、14bは、上記基板部12の周方向両端部の外周縁部からアウタ側に折れ曲がったもので、車体への取付状態では、上記各連結板部14a、14bの内周面と上記ロータ1の外周縁とが対向する。そして、これら各連結板部14a、14bの先端部から前記各突出板部15a、15bが、互いに近づき合う方向に延出されている。更に、これら両突出板部15a、15bの先端部から径方向外方(図15〜16の上方)に折れ曲がった、前記両係止部16a、16bを形成している。そして、これら両係止部16a、16b同士の間でアウタパッド23のプレッシャプレート24を、上記ロータ1の軸方向の変位を可能に、且つ、制動時にこのアウタパッド23に加わる制動トルクの支承自在に支持している。即ち、上記両突出板部15a、15b及び上記両係止部16a、16bにより、アウタパッド収納部25を構成している。
【0008】
前述した特許文献1に記載した構造にしても、上述した特許文献2に記載した構造にしても、1枚の金属板を曲げ加工する事により一体に造られた板金製サポート11の場合には、インナパッド収納部13とインナパッド18のプレッシャプレート19との係り代を確保する事が難しい。この点に就いて、図14を参照しつつ説明する。このプレッシャプレート19を上記インナパッド収納部13に係止した状態で、前記ロータ1の回転方向に関して、このプレッシャプレート19の両端縁部は、上記基板部12の一部で、上記インナパッド収納部13の内周縁部に対向する。この状態では、上記プレッシャプレート19の端縁部がこの内周縁部に係合している限り、上記制動トルクに拘らず、上記インナパッド18が上記ロータ1の回転方向にずれ動く事はない。但し、上記端縁部と上記内周縁部とは、上記制動トルクを支承できる(この制動トルクにより塑性変形しない)程度に十分な係り代で係合している事が必要である。
【0009】
一方、上記図14から明らかな通り、上記ロータ1の軸方向に関する上記インナパッド収納部13の幅寸法W13は、上記金属板の厚さ寸法のままである。この点で、このインナパッド収納部13は、この金属板の厚さ寸法よりも大きな幅寸法W25を確保できる、上記アウタパッド収納部25とは異なる。何れにしても、上記インナパッド収納部13の幅寸法W13を、上記金属板の厚さ寸法を越えて大きくできないと、使用可能なインナパッド18が限定される。具体的には、このインナパッド18として、未使用状態でのライニングの厚さ寸法が大きなものを使用できない。この為、板金製サポート11を備えたディスクブレーキの設計の自由度が制限される他、上記インナパッド18を含めたブレーキパッドの交換の頻度が高くなる。この理由は、次の通りである。
【0010】
上記インナパッド18(勿論、前記アウタパッド23も同様であるが、本発明はインナパッド収納部13の改良に関するので、インナパッド18で話を進める)のライニング10b(図10〜11参照)は、制動の繰り返しに伴って次第に摩耗して薄くなる。又、ディスクブレーキには、非制動状態での上記ライニング10bと上記ロータ1の側面との間の隙間を一定に保つ為の、間隙調整機構が組み込まれている。従って、上記インナパッド18を構成するプレッシャプレート19は、上記ライニング10bの摩耗の進行に伴って、制動時、非制動時を問わず、上記ロータ1の側面に近づく。例えば、上記ライニング10bが未だ摩耗していない状態では、上記プレッシャプレート19は、図14に破線で示す様に、上記ロータ1の側面から比較的離れた位置に存在する。これに対して、上記ライニング10bの摩耗が進んだ状態では、図14に鎖線で示す様に、上記ロータ1の側面に比較的近い位置に存在する。このロータ1の軸方向(図14の上下方向)に関する、上記破線と鎖線との変位量Lが、上記ライニング10bの摩耗量である。
【0011】
上記インナパッド18が新品の状態から交換直前の状態迄、前記インナパッド収納部13で前記制動トルクを確実に(前記塑性変形を生じる事なく)支承する為には、上記破線で示した状態での、上記プレッシャプレート19の外周縁と上記インナパッド収納部13の内周縁との係り代δN にしても、上記鎖線で示した状態での同係り代δO にしても、十分に確保する必要がある。そして、上記ライニング10bの摩耗許容量(「新品時の厚さ」−「要交換状態での厚さ」=L)を確保し、しかも、上記両係り代δN 、δO を大きくする為には、上記インナパッド収納部13の内周縁の幅寸法W13を大きくする必要がある。但し、前記特許文献1、2に記載された従来構造の場合には、前述した様に、上記幅寸法W13が前記金属板の厚さ寸法のままである為、上記両係り代δN 、δO を大きくする面からは不利である。
【0012】
勿論、上記金属板として、厚さ寸法が大きなものを使用すれば、上記両係り代δN 、δO を大きくする事はできる。但し、この場合には、材料費が嵩むだけでなく、この金属板を加工する為に要する荷重が大きくなり、板金製サポート11の製造コストが嵩んでしまう。しかも、所謂ばね下荷重になる、この板金製サポート11の重量が嵩み、乗り心地、走行安定性を中心とする、自動車の性能を低下させる原因となる為、上記金属板の厚さ寸法を、強度確保の面から必要とされる以上に大きくする事は好ましくない。
【0013】
この様な事情に鑑みて考えられた構造として、特許文献3には、図18に示す様に、サポートを構成する金属板26の一部でインナパッド収納部の内周縁部分を面方向に押圧し、片面側に凹部27、27を、他面側に凸部28、28を、それぞれ形成する事で、当該内周縁部分の形状をクランク形にした構造が記載されている。この様な特許文献3に記載された構造によれば、パッド収納部の見掛け上の幅寸法Wを、金属板の厚さ寸法tよりも大きくできる。但し、この様な特許文献3に記載された構造の場合には、依然として、次の様な問題がある。
【0014】
先ず、上記金属板26の他面側に凸部28、28を形成する事で、上記パッド収納部の見掛け上の幅寸法Wを大きくはできるが、上記金属板26の片面側に凹部27、27が形成される為、制動トルクを支承する部分の面積を確保できる訳ではない。要するに、プレッシャプレートが上記片面側或いは他面側に偏った状態では、このプレッシャプレートの外周縁と上記パッド収納部の内周縁との当接面積が狭くなり、上記制動トルクを支承する事に伴って、前述の様な塑性変形が生じる可能性がある。
【0015】
又、上記金属板の一部で面方向に押圧した内周縁部分で上記各凹部27、27及び上記各凸部28、28を囲む部分に、剪断応力が残留する事が避けられないものと考えられる。上記各凹部27、27及び上記各凸部28、28を形成した部分は、制動時に大きな制動トルクを支承するだけでなく、制動に伴う振動が加わる部分である為、上記剪断応力が残留すると、亀裂等の損傷を発生し易くなるものと考えられる。
【0016】
【特許文献1】実開昭52−80389号公報
【特許文献2】特開2002−295538号公報
【特許文献3】特開平8−128468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、インナパッド収納部の内周縁とインナパッドを構成するプレッシャプレートの外周縁との係り代及び当接面積を、必要に応じて十分に確保でき、しかも亀裂等の損傷を発生しにくいディスクブレーキ用板金製サポートを得られる製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の製造方法の対象となるディスクブレーキ用板金製サポートは、金属板製で、車体に取り付ける為の基板部と、この基板部の周方向中間部に設けられたインナパッド収納部とを備える。
より具体的には、例えば、1枚の金属板を曲げ加工する事により、一体で、アウタパッド収納部及びインナパッド収納部とを備えた構造とする。そして、車輪と共に回転するロータの両側にアウタパッドとインナパッドとを、このロータの軸方向の変位を可能に支持すると共に、これら両パッドをこのロータの両側面に押し付ける為のキャリパを、ガイドピンにより、このロータの軸方向の変位を可能に支持する。
この様なディスクブレーキ用板金製サポートは、基板部と、インナパッド収納部と、アウタパッド収納部とを備える。
このうちの基板部は、車体に取り付ける為に上記ロータのインナ側に、このロータに隣接して設けられている。
又、上記インナパッド収納部は、上記基板部の周方向中間部に、この基板部の外周縁側が開口する状態で形成されている。
又、上記アウタパッド収納部は、上記基板部の周方向両端部から上記ロータの外周縁部を越えてアウタ側に伸びた1対の連結板部と、これら両連結板部の先端部から互いに近づき合う方向に延出された1対の突出板部とにより構成される。
【0019】
上述の様なディスクブレーキ用板金製サポートを造る為の、本発明のディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法は、先ず、上記金属板の一部で、上記ロータの回転方向に関して上記インナパッド収納部の両端部に、コイニング加工を施す。このコイニング加工では、上記金属板の一部をこの金属板の片面側から厚さ方向に押し潰すと共にこの金属板の他面側の一部を他の部分よりも膨出させて、押し潰された部分に隣接する部分の厚さ寸法を、上記金属板の元々の厚さ寸法よりも大きくする。上記コイニング加工は、例えば図1に示す様に、下型29の上面に載置し、押さえ型30により押さえ付けた金属板31の一部を、コイニングパンチ32により上記下型29の上面に向け押し潰す事により行なう。
【0020】
上記下型29の上面の一部で、上記金属板31の板厚を増大させるべき部分には、凹部33が形成されている。又、上記コイニングパンチ32の先端部には、上記金属板31を構成する金属材料が上記インナパッド収納部の内側(図1の左側)に流動(フロー)する事を抑える為の、抑え部34が存在する。従って、上記コイニングパンチ32による押し潰しに伴って流動した金属材料は、上記凹部33内に入り込む。この結果、上記金属板31の一部で、上記コイニングパンチ32による押し潰され部35に隣接する部分に、上記金属板31の元々の厚さ寸法tよりも大きな厚さ寸法Tを有する、板厚増大部分(アップセット部分)36が形成される。
【0021】
上述の様なコイニング加工により上記板厚増大部分36を形成したならば、その後、図2の(A)→(B)に示す様に、この板厚増大部分36の一部{図2の(A)の斜格子部分}を、このコイニング加工により押し潰された、上記押し潰され部35(この押し潰され部35全体)を含めて除去する。そして、上記インナパッド収納部の内面のうちで上記ロータの回転方向に関して両端部の、上記ロータの軸方向に関する幅寸法Tを、上記金属板31の元々の厚さ寸法tよりも大きく(T>t)する。
【0022】
上述の様な本発明のディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法を実施する場合に、例えば請求項2に記載した如く、図2に示す様に、上記コイニング加工により上記金属板31の片面(図2の上面)側に凹入部37を、同じく他面(図2の下面)側に、他の部分よりも厚さ方向に突出した、上記ロータの回転方向(図2の左右方向)に関する寸法L38が上記凹入部37の同方向の寸法L37よりも大きい(L38>L37)平面部38を、それぞれ形成する。この平面部38の寸法L38は、上記下型29の凹部33の底面部の寸法と一致する為、この下型29の設計により、任意に規制できる。その後、上記図2の(A)→(B)に示す様に、上記金属板31を、上記平面部38の先端(図2の左端)から上記凹入部37の寸法L37を越えてこの金属板31の内部に入り込んだ位置で除去する。この場合に、削り取り部分の寸法LS の最大値は、上記平面部38の寸法L38とする(L38≧LS >L37)。
【0023】
或いは、請求項3に記載した如く、図3に斜格子で示す様に、上記インナパッド収納部の両端部を構成する部分のうちの少なくとも一方の部分で、上記コイニング加工により上記内面の幅寸法を上記金属板31の元々の厚さ寸法よりも大きくする部分を、当該部分でインナパッドのプレッシャプレートの端縁と対向する部分のうちの一部のみとする事もできる。
【0024】
又、好ましくは、請求項4に記載した様に、ディスクブレーキ用板金製サポートを、1枚の金属板を曲げ加工する事により、一体で、アウタパッド収納部及びインナパッド収納部とを備えたものとする。そして、上記インナパッド収納部の内面のうちで上記ロータの回転方向に関して両端部の、上記ロータの軸方向に関する幅寸法を、上記金属板の元々の厚さ寸法よりも大きくする工程を、上記金属板を曲げ加工して上記アウタパッド収納部を形成した後に実施する。
【発明の効果】
【0025】
上述の様に構成する本発明のディスクブレーキ用板金製サポートの製造方法によれば、インナパッド収納部の内周縁とインナパッドを構成するプレッシャプレートの外周縁との係り代及び当接面積を、必要に応じて十分に確保でき、しかも亀裂等の損傷を発生しにくいディスクブレーキ用板金製サポートを得られる。
先ず、上記係り代及び当接面積を必要に応じて十分に確保できる理由は、上記インナパッド収納部の内面の幅寸法を、見掛け上ではなく、実際に大きくできる為である。即ち、本発明の場合には、コイニング加工により押し潰した部分に隣接する部分(板厚増大部分36)の厚さ寸法Tが、金属板31の元々の厚さ寸法tよりも増大する事を利用して、上記内面の幅寸法を大きくするので、前述の図18に示した従来構造の第3例の構造の様に、凹部27、27の存在により当接面積を狭くする事がない。この為、インナパッド収納部の内周縁とインナパッドを構成するプレッシャプレートの外周縁との係り代を、当接面積を確保しつつ、大きくできる。又、上記インナパッドを構成するライニングが偏摩耗して、上記プレッシャプレートが上記インナパッド収納部に対し傾斜した場合にも、このプレッシャプレートの外周縁と上記凹部27、27とが(凹部が存在しないので)引っ掛かる事がなく、ロータの軸方向に関する上記インナパッドの変位を円滑に行なわせる事ができる。
【0026】
又、亀裂等の損傷を発生しにくいと言った効果は、上記コイニング加工により上記内面の幅寸法を増大させる事により得られる。コイニング加工により上記金属板31の一部を押し潰し、隣接する部分の板厚を増大させる場合、この金属板31の内部には、この板厚が増大する部分(板厚増大部分36)を含めて、圧縮方向の応力が加わる。そして、この板厚増大部分36の一部を除去し、この板厚増大部分36の残部により上記インナパッド収納部の内面を構成した後の状態でも、この内面及びその近傍部分には残留圧縮応力が存在する。金属加工の分野で周知の様に、金属部品の内部に残留圧縮応力が存在すると、亀裂損傷が発生しにくい。この為、本発明の製造方法により造られた板金製サポートは、十分な耐久性を確保し易い。しかも、上記板厚増大部分36の硬度は、加工硬化により、素材となる上記金属板31の硬度よりも高くなるので、上記インナパッド収納部の内面の耐摩耗性も向上する。
【0027】
又、請求項2に記載した構成を採用すれば、上記インナパッド収納部のうちで板厚増大部分36の面積を少なく抑え、板金製サポート全体としての軽量化を図れる。又、上記インナパッド収納部のうちで上記板厚増大部分36以外の部分(厚さ寸法が素材となる金属板31の厚さ寸法のままの部分)の割合を増やせる。この為、上記板金製サポートとキャリパ等の他の部材との干渉防止を図り易くなり、この板金製サポートを設計する上での自由度が向上する。
又、請求項3に記載した構成を採用した場合にも、別の面から、上記板金製サポートを設計する上での自由度が向上する。例えば、図3に示す様に、板厚増大部分36a、36aを、上記インナパッド収納部の端部毎に複数個所ずつ、間隔をあけて設け、これら板厚増大部分36a、36a同士の間に存在する、厚さ寸法が素材となる金属板の厚さ寸法のままの部分に、パッドクリップ39の爪部40を係合させて、このパッドクリップ39のずれ止めを図る等の設計が可能になる。
【0028】
更に、請求項4に記載した構成を採用した場合には、金属板31を曲げ加工して上記アウタパッド収納部を形成する事に伴い、上記板厚増大部分36の寸法及び形状が歪む事を防止できる。従って、コイニング加工後にこの板厚増大部分36の一部を除去する事で、上記インナパッド収納部の内面のうちで上記ロータの回転方向に関して両端部の幅寸法を増大させる加工を終了できる。言い換えれば、上記アウタパッド収納部加工に伴う歪みを矯正する為の工程が不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[実施の形態の第1例]
図4〜6は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の場合には、素材となる金属板にプレスによる打ち抜き加工を施して、図4に示した様な、平板状の中間素材41を形成した後、この中間素材41のうちで、インナパッドの収納部の両端部となるべき部分の板厚を増大させる。尚、この中間素材41が、先の説明に於ける金属板31(図1〜2参照)に相当する。上記板厚を増大させる為に、先ず、図5に示したコイニング加工装置42により図4の斜格子部分を押し潰した後、図6に示したトリミング加工装置43により、この斜格子部分を囲む、図4の鎖線α、αの内側部分を削り取る。これら一連の加工により、これら各鎖線α、α部分に、上記中間素材41の元々の板厚tよりも大きな幅寸法Tを有する、インナパッド18のプレッシャプレート19(図16参照)の端部を案内する為の、案内面44(図6の左半部参照)を形成する。以下、この案内面44を得る為の加工工程に就いて、順番に説明する。
【0030】
上記中間素材41は、先ず、図5の右半部に示す様に、上記コイニング加工装置42を構成する、固定の下型29の上面に載置する。この下型29の上面のうちで、上記中間素材41の板厚を増大させるべき部分に対向する部分には、凹部33を設けている。又、上記下型29の上方に設けたプレス加工機のラム(図示省略)の下面に固定した昇降フレーム45の下面中央部にコイニングパンチ32を固定し、上記ラムによりこのコイニングパンチ32を、下方に向け強く押圧可能としている。このコイニングパンチ32の先端部(下端部)には、上記図4の斜格子部分を押し潰す為の押圧面46と、この押圧面46により上記中間素材41を押し潰す際に、この中間素材41を構成する金属材料がインナパッド収納部の内側(図5の左右方向中央側)に流動(フロー)する事を抑える為の抑え部34とを設けている。又、上記昇降フレーム45の下面でこのコイニングパンチ32の周囲部分に押さえ型30を、この昇降フレーム45に対する若干の昇降を可能に支持している。この押さえ型30は、上記コイニングパンチ32が上記中間素材41の一部を押し潰す間、この中間素材41を上記下型29の上面に、自重或いはばねの弾力により押さえ付けて、この中間素材41の姿勢を安定させる。
【0031】
上述の様な構成を有する、上記コイニング加工装置42の下型29の上面に上記中間素材41を、図5の右半部に示す様に載置したならば、上記ラムにより昇降フレーム45を下降させる。そして、上記押さえ型30により上記中間素材41を押さえつつ、上記コイニングパンチ32の押圧面46を、この中間素材41の一部(図4の斜格子部分)に押し付ける。この結果、図5の左半部に示す様に、この中間素材41の一部が上記コイニングパンチ32により押し潰されて、押し潰され部35が形成され、この押し潰され部35に隣接する(この押し潰され部35を囲む)部分に、板厚増大部分36が形成される。前述した通り、この板厚増大部分36の厚さTは、上記中間素材41の元々の厚さtよりも大きい。
【0032】
この様にして、上記中間素材41の一部に上記板厚増大部分36を形成して、第二中間素材47としたならば、この第二中間素材47を、図6の右半部に示す様に、前記トリミング加工装置43を構成する、固定の下型(受型)48の上面に載置する。この下型48は、上記第二中間素材47の下面を、上記板厚増大部分36の先端部を除いて密に当接させる上面形状を有し、中央部に、前記図4の鎖線α、αに見合う形状の受孔49を設けている。又、上記下型48の上方に設けた、上記コイニング加工装置42とは別のプレス加工機のラム(図示省略)の下面に、昇降フレーム50を固定している。更に、この昇降フレーム50の下面中央部にトリミングパンチ51を固定し、上記ラムによりこのトリミングパンチ51を、下方に向け強く押圧可能としている。このトリミングパンチ51の先端部外周縁(下端部外周縁)の形状は、上記図4の鎖線α、αの形状にほぼ合致している。又、上記昇降フレーム50の下面で上記トリミングパンチ51の周囲部分に押さえ型52を、この昇降フレーム50に対する若干の昇降を可能に支持している。この押さえ型52は、上記トリミングパンチ51が上記第二中間素材47の一部を押し潰す間、この第二中間素材47を上記下型48の上面に、自重或いはばねの弾力により押さえ付けて、この第二中間素材47の姿勢を安定させる。
【0033】
上述の様な構成を有する、上記トリミング加工装置43の下型48の上面に上記第二中間素材47を、図6の右半部に示す様に載置したならば、上記ラムにより昇降フレーム50を下降させる。そして、上記押さえ型52により上記第二中間素材47を押さえつつ、上記トリミングパンチ51の先端部外周縁を、この第二中間素材47の一部(図4の鎖線α、α部分)に押し付ける。この結果、図6の左半部に示す様に、この第二中間素材47の一部で上記板厚増大部分36が、前記押し潰され部35の周囲部分で削り取られる。
【0034】
上述の様にして行なうトリミング加工により、インナパッド18のプレッシャプレート19(図16参照)の両端縁部を案内する面の幅寸法Tが元々の金属板の厚さtよりも大きな、第三中間素材53を得られる。そこで、この第三中間素材53を、図4の鎖線β、β同士の間部分で折り返すと共に突出板部15a、15bに適切な曲げ加工を施した後、仕上の為のシェービング加工を施す事により、前述の図14〜17に示した従来構造の第2例に類似した、板金製サポートとする。この様にして得られる板金製サポートが、インナパッド収納部の内周縁と上記プレッシャプレート19の外周縁との係り代及び当接面積を十分に確保でき、しかも亀裂等の損傷を発生しにくい事は、前述した通りである。尚、上記鎖線β、β同士の間部分での折り返し加工と上記突出板部15a、15bの曲げ加工とをトリミング加工に先立って行なえば、このトリミング加工により、上記板金製サポートの加工を完了できる(シェービング加工を省略できる)。
尚、本例の方法により一部の厚さを増大させる中間素材の形状は、図4に示したものに限らない。例えば、図7に示す様な中間素材41aのうち、同図に斜格子で示す部分の厚さ寸法を、上述の様にして増大させる事もできる。
【0035】
[実施の形態の第2例]
図8〜9は、請求項1、2、4に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、金属板の一部でインナパッド収納部の両端部に対応する部分の厚さを増大させる加工を、この金属板を曲げ加工してインナパッド収納部13と上記アウタパッド収納部25とを形成した後に行なう様にしている。即ち、図4或いは図7に示す様な中間素材41、41aに曲げ加工を施して、上記インナパッド収納部13とアウタパッド収納部25とを形成した第四中間素材54に、図8に示す様なコイニング加工装置42aによりコイニング加工を施した後、図9に示す様なトリミング加工装置43aによりトリミング加工を施す様にしている。これらコイニング加工装置42a及びトリミング加工装置43aの構成に関しては、コイニング加工及びトリミング加工を施す対象(ワーク)が、平板状の中間素材41、41aから立体の第四中間素材54に変わり、押さえ型30a、52a等の形状を、上記第四中間素材54との干渉防止の為に変更した点以外、上述した第1例の場合と同様である。
【0036】
本例の場合には、実施の形態の第1例の様に、既にインナパッド収納部13の一部の板厚を増大させた平板状の第三中間素材53(図6の左半部参照)を曲げ加工して上記アウタパッド収納部25を形成する事はない。この為、このアウタパッド収納部25の加工に伴って、板厚増大部分36の寸法及び形状が歪む事を防止できる。従って、コイニング加工後にこの板厚増大部分36の一部を除去する事で、上記インナパッド収納部13の内面のうちで上記ロータの回転方向に関して両端部の幅寸法を増大させる加工を終了できる。即ち、上記アウタパッド収納部25の加工に伴う歪みを矯正する為の工程(仕上の為のシェービング加工)が不要になり、加工コストの低減を図れる。
尚、本発明を実施する場合に、コイニング加工に伴って金属板の厚さ寸法を増大させる方向は特に問わない。実施の形態の各例で、平面部38をロータに対向する側に形成しても、或いは逆側(反ロータ側)に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を実施する場合に行なうコイニング加工を示す部分断面図。
【図2】同じくトリミング加工を工程順に示す部分断面図。
【図3】板厚増大部分を間欠的に設けた状態を示しており、(A)は部分正面図、(B)はパッドクリップを装着した状態を示す図、(C)は(B)のイ−イ断面図。
【図4】本発明の実施の形態の第1例を示す、(A)は中間素材の1例を示す平面図、(B)は(A)のロ−ロ断面図。
【図5】コイニング加工の実施状況を示す断面図。
【図6】トリミング加工の実施状況を示す断面図。
【図7】中間素材の別例を示す、(A)は平面図、(B)は(A)のハ−ハ断面図。
【図8】本発明の実施の形態の第2例でのコイニング加工の実施状況を示す断面図。
【図9】同じくトリミング加工の実施状況を示す断面図。
【図10】板金製サポートを備えたディスクブレーキの従来構造の第1例を、一部を切断して外径側から見た状態で示す図。
【図11】図10のニ−ニ断面図。
【図12】図10のサポートのみを取り出して外径側から見た状態で示す図。
【図13】図12の下方に相当するインナ側から見た図。
【図14】板金製サポートの従来構造の第2例を、ロータの径方向外方から見た状態で示す図。
【図15】同じくアウタ側から見た状態で示す図。
【図16】同じくディスクブレーキに組み込み、一部を切断してアウタ側から見た図。
【図17】板金製サポートとアウタパッドとを取り出してアウタ側から見た図。
【図18】板金製サポートの従来構造の第2例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1 ロータ
2 サポート
3 キャリパ
4a、4b ガイドピン
5a、5b パッド
6 シリンダ部
7 ピストン
8a、8b プレッシャプレート
9 キャリパ爪
10a、10b ライニング
11 板金製サポート
12 基板部
13 インナパッド収納部
14a、14b 連結板部
15a、15b 突出板部
16a、16b 係止部
17 ねじ孔
18 インナパッド
19 プレッシャプレート
20 係止切り欠き
21 係止突片
22 係止鉤部
23 アウタパッド
24 プレッシャプレート
25 アウタパッド収納部
26 金属板
27 凹部
28 凸部
29 下型
30、30a 押さえ型
31 金属板
32 コイニングパンチ
33 凹部
34 抑え部
35 押し潰され部
36、36a 板厚増大部分
37 凹入部
38 平面部
39 パッドクリップ
40 爪部
41、41a 中間素材
42、42a コイニング加工装置
43、43a トリミング加工装置
44 案内面
45 昇降フレーム
46 押圧面
47 第二中間素材
48 下型
49 受孔
50 昇降フレーム
51 トリミングパンチ
52、52a 押さえ型
53 第三中間素材
54 第四中間素材
【出願人】 【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男

【識別番号】100141508
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 隆史

【識別番号】100056833
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 欽造


【公開番号】 特開2008−12579(P2008−12579A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188016(P2006−188016)