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【発明の名称】 ローラヘミング装置
【発明者】 【氏名】長谷川 栄作

【氏名】中村 剛

【氏名】美和 浩

【氏名】伊賀上 光隆

【要約】 【課題】大きな曲率の部位のヘミング加工が可能であって且つ安価なローラヘミング装置を提供することを課題とする。

【構成】ローラヘミング装置10のフリーベアリング62は、第1案内溝21又は第2案内溝22に沿って転がる鋼製球体69を備えていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に案内溝を備えた金型とこの金型に対して独立して移動する押圧ローラとこの押圧ローラに向かって進退するガイド部材とを準備し、縁に起立フランジを備えた板材を前記金型の上面に載せ、前記ガイド部材を前記案内溝に嵌め、この状態で前記押圧ローラを前記起立フランジに作用させることで、起立フランジを折り曲げるローラヘミング装置において、
前記ガイド部材は、前記案内溝に沿って転がる球体を備えていることを特徴とするローラヘミング装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、板材の縁に備えた起立フランジを折り曲げるローラヘミング装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
板材の縁のフランジを折り曲げる加工法は、ヘミングと呼ばれる。このヘミングの中で、フランジにローラを押し当てて折り曲げるローラヘミング法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第2561596号公報(図3)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図11は従来の技術の基本構成を説明する図であり、ヘミング装置100は、ロボットアーム101の先端に取付けた支持部材102に固設する案内筒103、103と、これらの案内筒103、103に摺動可能に案内支持するスライドシャフト104、104と、これらのスライドシャフト104、104に固定するスライダ105、105と、これらのスライダ105、105に結合すると共に支持部材102に固設するシリンダ106と、スライダ105、105に回転自在に軸支するヘミングローラ107と、支持部材102に軸支するガイドローラ108と、このガイドローラ108を案内すると共に下型109に傾斜下向きに設ける予備曲げ用ガイドレール111と、ガイドローラ108を案内すると共に下型109に鉛直下向きに設ける本曲げ用ガイドレール112とからなる。
【0004】
先ずガイドローラ108を本曲げ用ガイドレール112と係合させる。これによりヘミングローラ107は水平方向に位置する。次にシリンダ106の後退作動により、45°に予備曲げした下側板金113の端縁114を上側板金115の端縁116の上に折り曲げて、挟着状態とする本曲げ加工を行う。これで下側板金113と上側板金115の縁同士を連結することができる。
【0005】
ところで、ガイドローラ108は、鍔付き車輪と同様の形状を呈するため、本曲げ用ガイドレール112が、ある程度以上急激に曲がっていると、脱輪する。
そのため、特許文献1のヘミング装置100は、図表裏方向に緩やかに曲がっている端縁114にだけ、適用可能となる。
【0006】
なお、急激に曲がっていることを、「曲率が大きい」と読み換えることができ、緩やかに曲がっていることを「曲率が小さい」と読み換えることができる。曲率は半径の逆数である。
車両のボンネットなどのワークでは、四隅に曲率の大きな隅部を有する。このようなワークは、上記ヘミング装置100で加工することができない。
【0007】
この不具合を解消することができるヘミング成形方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特許第2579530号公報(第1図)
【0008】
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図12は従来の技術の基本構成を説明する図であり、ヘミング成形装置200は、インナパネル201を載せたアウタパネル202を受ける治具203と、この治具203の側方に配設したコンベア装置204に載せる多関節ロボット205と、この多関節ロボット205のロボットアーム206の先端に取付けるローラホルダ207と、このローラホルダ207の先端に取付ける成形ローラ208と、治具203の四隅部の近傍に各々配設する型駆動装置209と、この型駆動装置209に各々取付ける成形型211とからなる。
【0009】
曲率の小さい略直線部は、成形ローラ208を上方から押圧して走行させる一方、曲率の大きい四隅部は各々成形型211により加圧成形することで、アウタパネル202に備えた折曲部をインナパネル201に折り曲げてヘミング加工を完了させることができる。
【0010】
すなわち、特許文献2のヘミング成形装置200では、ワークの直線部は成形ローラ208で加工し、ワークの四隅部は成形型211で加工する。成形型211が4個必要になるため、ヘミング成形装置200は高価になる。
以上に述べたように特許文献1の技術では大きな曲率の部位はヘミング加工が困難であり、特許文献2の技術では大きな曲率の部位のヘミング加工が可能であるもののヘミング装置が高価になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、大きな曲率の部位のヘミング加工が可能であって且つ安価なローラヘミング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、下面に案内溝を備えた金型とこの金型に対して独立して移動する押圧ローラとこの押圧ローラに向かって進退するガイド部材とを準備し、縁に起立フランジを備えた板材を前記金型の上面に載せ、前記ガイド部材を前記案内溝に嵌め、この状態で前記押圧ローラを前記起立フランジに作用させることで、起立フランジを折り曲げるローラヘミング装置において、前記ガイド部材は、前記案内溝に沿って転がる球体を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ガイド部材は、案内溝に沿って転がる球体を備えている。この球体は曲率が大きな案内溝から離脱することはない。よって、大きな曲率の部位のヘミング加工が可能であって且つ安価なローラヘミング装置を提供することができる。
【0014】
加えて、ローラヘミング装置は、案内溝を備える金型と、押圧ローラと、ガイド部材とで構成する単純な装置であるため、ローラヘミング装置の低コスト化を容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るローラヘミング装置の金型の正面図であり、ローラヘミング装置10は、ロボットアームに取付けるアタッチメント(詳細後述)と、このアタッチメントに着脱自在に取付ける金型20とからなる。
【0016】
金型20は、図表方向の面に、第1案内溝21(詳細後述)、第2案内溝22(詳細後述)及び支持板23を介してチャック部24を備え、左下端及び右上端に各々クランプ機構30A、30Bを備える。
【0017】
図2は図1の2−2線断面図であり、クランプ機構30Aは、金型20の側面(図表方向)に支持板31を介して固定するクランプブロック32と、このクランプブロック32にピン33で揺動自在に止めるクランプアーム34と、このクランプアーム34を揺動させるためにクランプブロック32に取付けるシリンダユニット35とからなる。
36、36は補強板である。
【0018】
図1に示すクランプ機構30Bも30Aと同様の構成物であるから、符号を流用して説明を省略する。
【0019】
図3は図1の3−3線断面図であり、金型20は、前述の構成に加えて金型20の図右面に設ける半円断面形状の第1案内溝21又は第2案内溝22と、金型20の図左面に加工対象の板材を受けるために設ける受け面25とを備える。
【0020】
図4は図1の4−4線断面図であり、チャック部24はポケット部26を有する。想像線で示す部材は、ロボットアーム27の先端に取付けたアタッチメント40であり、このアタッチメント40にはアクチュエータ41が内蔵され、このアクチュエータ41の先端にはチャック板42が取付けられる。
アタッチメント40の詳細構造は後述する。
【0021】
アクチュエータ41は、チャック板42を矢印の方向に移動させることができる。また、チャック板42は、一点鎖線で示す矢印のようにロボットアーム27を動作させることでポケット部26へ挿入することができる。よって、ポケット部26へチャック板42を挿入した状態で、チャック板42を図右へ移動させることによって、金型20とアタッチメント40は結合することができる。
【0022】
図5は本発明に係るアタッチメントの斜視図であり、アタッチメント40は、ロボットアーム27の先端に設けた基板43と、この基板43の両端に設けた2枚の側板44、45と、側板44と側板45との間に設けたローラ機構50(詳細構造は次図で説明する。)とからなる。
【0023】
図6は図5の6−6線断面図であり、ローラ機構50は、基板43の上に2枚の支持板51、51を介して設ける第1レール52と、この第1レール52に移動可能に取付ける第1スライダ53と、この第1スライダ53から第1レール52の直交方向に延長する支柱54及び第2レール55と、この第2レール55に移動可能に取付ける第2スライダ56及び第3スライダ57と、第2スライダ56に軸58を介して回転自在に取付ける押圧ローラ59と、第3スライダ57に支持板61を介して取付けるガイド部材としてのフリーベアリング62と、第2スライダ56に第3スライダ57を連結してスライダ相互の間隔及び押圧ローラ59の押圧力を調節する油圧シリンダ63と、第1スライダ53に第3スライダ57を弾性的に支持する弾性体64、65と、支持板51、51の上に取付けた支持台66に第1スライダ53を弾性的に支持する弾性体67とからなる。
【0024】
フリーベアリング62は、ハウジング68に小さな複数のボールベアリングを介して例えば大径の鋼製球体69が嵌め込まれている部材である。
71は押圧ローラ59に備える傾斜面、72は押圧ローラ59に備えるローラ面である。
また、弾性体64、65、67はスプリングが好適であるが、クッションラバーや同等品であってもよい。
【0025】
よって、ローラヘミング装置10のフリーベアリング62は、第1案内溝(図3符号21)及び第2案内溝(図3符号22)に沿って転がる鋼製球体69を備えていることを特徴とする。
以上の構成からなるローラヘミング装置の作用を次に説明する。
【0026】
図7は本発明に係る金型取付の説明図であり、(a)において、上下を逆転したドア81の隅部に備えた起立フランジ82に向けて、ロボットアーム27で金型20を前進させる。
(b)において、金型20はアウタパネル83の表面に接触した状態となる。この状態でシリンダユニット35、35によりクランプアーム34、34をドアフランジ部84側に揺動させ、クランプブロック32、32とクランプアーム34、34とで、ドアフランジ部84を挟む。これでドアフランジ部84にクランプ機構30A、30Bを介して金型20を支持させたことになる。
【0027】
図8は本発明に係る予備ヘミング処理の説明図である。
この時点では、上端に起立フランジ82を有するアウタパネル83にインナパネル85を重ね、アウタパネル83の外面には金型20が接触している。
(a)において、フリーベアリング62に備えた鋼製球体69を第1案内溝21に嵌め、押圧ローラ59を鋼製球体69に向けて接近させる。この作用は油圧シリンダ(図6符号63)で実施する。
【0028】
(b)において、押圧ローラ59及び鋼製球体69を図表裏方向に移動させる。押圧ローラ59に設けた傾斜面71で起立フランジ82を約45°曲げることができる。この45°程度の曲げ処理を予備ヘミング処理という。予備ヘミング処理が終了したら、押圧ローラ59を鋼製球体69から離して、押圧ローラ59と鋼製球体69とを一定距離移動させる。
【0029】
図9は本発明に係る本ヘミング処理の説明図である。
(a)において、鋼製球体69を第2案内溝22に嵌め、押圧ローラ59を鋼製球体69に再び接近させる。この時点では、傾斜面71ではなく、ローラ面72が起立フランジ82に臨む。
【0030】
(b)において、押圧ローラ59及び鋼製球体69を図表裏方向に移動させる。押圧ローラ59に備えたローラ面72で起立フランジ82を完全に曲げることができる。この曲げ処理を本ヘミング処理という。本ヘミング処理が終了したら、押圧ローラ59を鋼製球体69から離せばよい。
【0031】
図10はローラヘミング装置の案内溝における比較説明図であり、(c)で比較例を説明し、(d)で実施例を説明する。
(a)はガイドローラ301が案内溝302を走行している状態を示す断面図である。D1はガイドローラ301の直径、L1はガイドローラ301の外周円と案内溝302の上部縁線303とが2点P1、P2で重なったときのP1とP2の間の距離を示す。
【0032】
(b)は(a)のb−b線断面図であり、上部縁線303のレベルで切断した矩形断面部分(図で斜線を施した、幅がW1で長さがL1である矩形断面部分)は、案内溝302が十分に緩い(曲率が小さい)曲線で構成されていれば、矢印のごとく、移動可能となり、ガイドローラ301が案内溝302から離脱する心配はない。
【0033】
しかし、(c)に示すように、案内溝304の曲率が大きくなると、図中の点P3でガイドローラ301は案内溝304に接触する。この結果、ガイドローラ301の走行は円滑さを欠き、場合によっては案内溝304から離脱する。
【0034】
この点、(d)に示すように、鋼製球体69であれば、曲率が大きな第1案内溝21に対しても、離脱することなく、円滑に走行することができる。
【0035】
よって、図9において、ローラヘミング装置のガイド部材としてのフリーベアリング62は、第1案内溝21又は第2案内溝22に沿って転がる鋼製球体69を備えている。この鋼製球体69は曲率が大きな第1案内溝21又は第2案内溝22から離脱することはない。よって、大きな曲率の部位のヘミング加工が可能であって且つ安価なローラヘミング装置を提供することができる。
【0036】
加えて、ローラヘミング装置は、第1案内溝21又は第2案内溝22を備える金型20と、押圧ローラ59と、ガイド部材としてのフリーベアリング62とで構成する単純な装置であり、ローラヘミング装置の低コスト化を容易に達成することができる。
【0037】
尚、本発明のガイド部材に用いる球体の材質は、実施例で述べた鋼製以外に、非鉄金属製、セラミック製のいずれかを適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のローラヘミング装置は、車両の車体製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るローラヘミング装置の金型の正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係るアタッチメントの斜視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る金型取付の説明図である。
【図8】本発明に係る予備ヘミング処理の説明図である。
【図9】本発明に係る本ヘミング処理の説明図である。
【図10】ローラヘミング装置の案内溝における比較説明図である。
【図11】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【図12】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
10…ローラヘミング装置、20…金型、21…第1案内溝、22…第2案内溝、59…押圧ローラ、62…フリーベアリング(ガイド部材)、69…鋼製球体(球体)、82…起立フランジ、84…ドアフランジ部(板材)。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎

【識別番号】100094020
【弁理士】
【氏名又は名称】田宮 寛祉


【公開番号】 特開2008−12572(P2008−12572A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187582(P2006−187582)