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【発明の名称】 薄板鋼板等に対する孔開け方法
【発明者】 【氏名】高山 崇

【要約】 【課題】薄板鋼板等からなるダクト等の部材の工場生産時における抜きカスを完全に切り離す孔開けと、部材の取付け現場における抜きカスを残す孔開けの双方の異なる孔開け態様に対応する薄板鋼板等に対する孔開け方法。

【構成】動力工具本体から打ち出し可能に設けられたドライバ2の先端の周縁に複数の剪断刃7を突出形成し、上記ドライバを薄板鋼板等の対象部材10に対して垂直又は斜めに打ち出して上記対象部材に孔開けすることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力工具本体から打ち出し可能に設けられたドライバの先端の周縁に複数の剪断刃を突出形成し、上記ドライバを薄板鋼板等の対象部材に対して垂直又は斜めに打ち出して上記対象部材に孔開けすることを特徴とする薄板鋼板等に対する孔開け方法。
【請求項2】
互いに対向する2つの前記剪断刃の内面のなす角度が約100度〜140度であることを特徴とする、請求項1に記載の薄板鋼板等に対する孔開け方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトやデッキ等の薄い鋼板等からなる部材に孔を開ける孔開け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダクト等の薄い鋼板からなる部材に孔を開けるための孔開け機(工具)として、その先端に軸線に対して傾斜した剪断部(刃部)を備えた火薬の爆発ガス圧力または流体圧力で駆動されるドライバ(ピストンヘッド)を用いて行うものが知られており(例えば、特許文献1参照)、また、ドライバ先端の剪断部の形状をV字型溝とした孔開け機(工具)を用いて上述の孔開けを行うものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特公平8−4852号公報
【特許文献2】実開昭58−47500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ダクト等の薄板鋼板からなる部材の取付け現場における孔開け作業においては、孔開けによる抜け屑の落下や飛散は作業員の安全性の確保等の視点から避けたいところであり、このため孔開け時に抜け屑が切り離されずに残るようにすることが行われている。その反面、昨今の薄板鋼板部材の工場生産化に伴う傾向として、上述の孔開け作業は抜きカスを完全に切り離して残さないで行うことが要求されている。例えば、ダクトの板の穴にボルトを通し、穴の内外からナットを板に締め付けて固定するような場合、抜きカスがナット締めの邪魔になる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の孔開け機(工具)によるダクト等薄板鋼板からなる部材におけるドライバによる孔開けにおいては、ドライバの軸線に対して傾斜した剪断部で行うことで、孔開けによる抜きカスを積極的に切り離すことなく残すようにして、抜きカスの落下や飛散を防ぐようになっているので、抜きカスを完全に切り離した孔開けができない。
【0005】
一方、特許文献2に記載のV字型溝の剪断部を持つドライバを備える孔開け機(工具)による孔開け技術では、抜きカスを切り離して残すことなく行う孔開けを前提としており、抜きカスを切り離さずに鋼板に繋げた状態で残すという孔開けはできない。
【0006】
本発明は、両方の孔開け作業に兼用できるドライバを備える孔開け機の開発が望まれていることに鑑み、薄板鋼板等からなるダクト等の部材の工場生産時における抜きカスを完全に切り離す孔開けと、該部材の取付け現場における抜きカスを残す孔開けの双方の異なる孔開け態様に対応することができる孔開け方法の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、動力工具本体から打ち出し可能に設けられたドライバの先端の周縁に複数の剪断刃を突出形成し、上記ドライバを薄板鋼板等の対象部材に対して垂直又は斜めに打ち出して上記対象部材に孔開けすることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、互いに対向する2つの前記剪断刃の内面のなす角度が約100度〜140度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、前記孔開け機において、前記ドライバによる前記金属製部材の孔開けは該ドライバ先端の複数の剪断刃で行われ、ドライバを対象部材の板面に垂直に打ち込むことにより抜きカスを分離して打ち抜くことができる。これに対し、ドライバを対象部材の板面に対して斜めに打ち込むと、対象部材はドライバの複数の剪断刃のうち先に当たった方の剪断刃によって切り込まれる。そして、切断された部分は順に円形状に切り込まれると同時に打ち込み方向と同じ側にめくれていくので、最後の剪断刃が当たったとき、めくれた部分に対する剪断力が小さくなり、そのまま残ってしまう。したがって、孔の一部に抜きカスが残った状態となる。
【0010】
したがって、工場生産における部材の孔開け作業のように、抜きカスを完全に切り離してしまう孔開けを行う必要がある場合と、対象部材の取付け現場における孔開け作業においては抜きカスの落下や飛散が他の作業者の安全を脅かすおそれがあって、抜きカスを切り離すことなく行うようにする場合とに応じて、選択的な孔開けが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、互いに対向する2つの前記剪断刃の内面のなす角度が約100度〜140度に形成されているから、ドライバを対象部材に斜めに当てて打ち込んだときに、切り込み部分から適度なめくれ現象が生じて抜きカスを形成することができ、ドライバを対象部材に垂直に当てて打ち込んだときに十分な剪断力によって抜きカスが生じることなく確実に開孔することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において符号Aは本発明の孔開け機を示す。この孔開け機Aは、薄い鋼板等からなる部材、例えば、0.8mm〜1.2mm程度の厚さのダクト等の鋼板面に該ダクト補強用のボルトを取付けるための孔(例えば、孔径11mm程度)を開けるための動力工具であり、通常の釘打機と基本的に同じ構造で、工具本体1内に設けられた打撃機構によって駆動されるドライバ2の先端を工具先端に設けられたノーズ部3から出没可能に設けたもので、打撃機構は、図示しないが、シリンダ内に上記ドライバ2と一体に結合されたピストンを摺動自在に設け、空気圧、燃焼ガス圧等により駆動してピストンをドライバ2とともに駆動してノーズ部3から突出させるように構成されている。
【0013】
なお、4は安全装置を構成するコンタクトアームの先端部で、ノーズ部3の先端から突出しており、ノーズ部3を薄板鋼板等の対象部材に押し付けることによりコンタクトアームが図の上方に押し込まれたことを条件としてトリガ5が有効に作動してノーズ部3の先端からドライバ2が打ち出されるように構成されている。
【0014】
図2および図3(a)(b)を参照してドライバ2の構造について説明する。ドライバ2はピストンと一体に結合されて工具本体1内を上下動するもので、剛性の高い鋼材等の加工材からなる所定径で所定長さの円柱棒状体であり、基部にはピストンと結合するためのネジ部8が形成され、また先端6は孔開けに供される剪断部として加工されている。
【0015】
ドライバ2の先端の周縁には2枚の剪断刃7が互いに反対側に突出形成されている。この剪断刃7はドライバ2の先端を緩やかなV字状に切欠き形成することにより、上記先端の相対する側に形成されている。互いに対向配置された2つの前記剪断刃7の内面のなす角度は約120度とするのが好ましいが、その±20度でもよい。
【0016】
上記構成のドライバ2を使用した孔開け機により薄板鋼板を対象部材として孔開けをするときは、用途に応じて対象部材に対してドライバ2を垂直に当てて打ち出すか、あるいはドライバ2を斜めに当てて打ち出す。
【0017】
ドライバ2を垂直に当てて打ち出すと、図4(a)のように、まずドライバ2の先端の互いに反対側に高く形成されている剪断刃7が対象部材10に打ち込まれ、この部分が剪断力によって切り込まれる。切り込まれた部分はさらに剪断刃7が進むにしたがって円形状に切り込まれていく。しかし、互いに反対側から切り込まれるので、めくれることがない。このため、最後に最も低い谷の部分が通過して打ち抜いたときは、抜きカス11が対象部材10から完全に分離されて抜き落とされてしまう。
【0018】
これに対し、同図(b)のように、ドライバ2を斜めに当てて打ち込むと、対象部材10はドライバ2の2枚の剪断刃7のうち先に当たった方の剪断刃7によって切り込まれる。そして、切断された部分は順に円形状に切り込まれるが、同時に打ち込み方向と同じ側にめくれていくので、他方の剪断刃7は斜めに当たることになり、めくれた部分に対する剪断力は小さくなり、そのままドライバ2に押し込まれて曲がった状態で残ってしまう。したがって、開孔の一部に抜きカス11が残った状態となる。
【0019】
このように、ドライバ2には2個の剪断刃7が形成されているので、対象部材10に対してドライバ2を垂直に打ち出したときは、相対する側に設けられた剪断刃7が同時に対象部材10に切り込まれるから、切り込まれた部分のめくれ現象が生じない。また、ドライバ2を斜めに打ち出したときは、必ずどちらかの剪断刃7が最初に対象部材10に当たって切り込まれる。したがって、めくれ現象が生じて抜きカス11ができてしまう。
【0020】
したがって、工場内で対象部材10に孔を開けてボルトを通し、穴の前後でナットを締めてボルトを固定するような場合のように、孔に抜きカス11が残らないような加工を施すときは、ドライバ2を対象部材10に対して垂直に当てて開孔作業を行えばよい。
【0021】
これに対し、対象部材10の取付け現場における孔開け作業などのように、抜きカス11の落下や飛散が作業現場が汚れたり、作業者の安全を脅かす可能性があるような場合のように、抜きカス11を切り離さないような加工を施すときは、ドライバ2を対象部材10に対して斜めに当てて打ち込めばよい。このように、抜きカス11を完全に切り離す孔開けと、該部材の取付け現場における抜きカス11を残す孔開けの双方の異なる孔開け態様に対応することができる。
【0022】
なお、互いに対向配置された2つの前記剪断刃7の内面のなす角度は約120±20度としたのは、それ以下であると、ドライバ2を斜めに当てても切り込み部分が十分にめくれないうちに反対側の剪断刃7が対象部材10を切り込むので、反対側も切り落とされてしまいやすい。また、それ以上であると、ドライバ2を斜めに当てたときに十分な剪断力が得られず、抜き不良が生じてしまうからである。
【0023】
次に、図5(a)〜(c)及び図6はドライバ2の先端部の形状の他の例である。ドライバ2の剪断部6の周縁には等間隔に4枚の剪断刃7が互いに反対側に突出形成されている。9は削り込みによる加工面である。そして、互いに対向配置された2つの剪断刃7の加工面の内面のなす角度は約120度(±20度でもよい)に設定されている。
【0024】
この場合も、図4(a)(b)の場合と同様、ドライバ2を垂直に当てて打ち出すと、まずドライバ2の先端の互いに反対側に高く形成されている剪断刃7は同時に対象部材10の表面に当たるので、めくれが生じることなく切り込まれるので、切り残しのない孔を形成することができる。
【0025】
これに対し、ドライバ2を斜めに当てて打ち込むと、対象部材10はドライバ2の4枚の剪断刃7のうち先に当たった方の剪断刃7によって切り込まれる。そして、切断された部分からめくれていくので、最後の剪断刃7が当たったとき、めくれた部分に対する剪断力は小さくなり、そのまま残ってしまう。したがって、開孔の一部に抜きカス11が残った状態となる。
【0026】
したがって、工場生産における部材の孔開け作業のように、抜きカス11を完全に切り離してしまう孔開けを行う必要がある場合と、対象部材10の取付け現場における孔開け作業においては抜きカス11の落下や飛散が他の作業者の安全を脅かすおそれがあって、抜きカス11を切り離すことなく行うようにする場合とに応じて、選択的な孔開けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の孔開け機の一部を断面で示した外観側面図
【図2】本発明の孔開けに供されるドライバの側面図
【図3】(a)(b)はそれぞれ上記ドライバの剪断部の斜視図及び側面図
【図4】(a)は上記ドライバを対象部材に対して垂直に、(b)は斜めに打ち込んだときの孔開け状況説明図
【図5】(a)(b)(c)はそれぞれ、本発明の孔開けに供される別の実施形態のドライバの剪断部の側面図、底面図および(b)のX−X線上の断面図
【図6】上記ドライバの剪断部の斜視図
【符号の説明】
【0028】
A 孔開け機
2 ドライバ
6 剪断部
7 剪断刃
【出願人】 【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫


【公開番号】 特開2008−12569(P2008−12569A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186969(P2006−186969)