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【発明の名称】 絞り加工装置及びその制御方法
【発明者】 【氏名】大見 忍

【氏名】木村 真也

【要約】 【課題】円筒状のワークの外径にバラツキがあっても、加工後の製品の寸法精度を高く維持することができる絞り加工装置及びその制御方法を提供すること。

【構成】円筒状のワークWを保持する保持機構3と、該保持機構3に取り付けたワークWに対して相対的に回転する絞り用工具Rとからなる絞り加工装置において、保持機構3に、該保持機構3の中心軸Mと直角方向に移動する複数のクランプ爪31と、クランプ爪31の移動距離を計測するための計測装置37とを配設する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のワークを保持する保持機構と、該保持機構に取り付けたワークに対して相対的に回転する絞り用工具とからなる絞り加工装置において、保持機構に、該保持機構の中心軸と直角方向に移動する複数のクランプ爪と、クランプ爪の移動距離を計測するための計測装置とを配設したことを特徴とする絞り加工装置。
【請求項2】
保持機構を、中空の本体と、該本体内を保持機構の中心軸と平行方向に摺動可能に配設した中空のピストン軸と、該ピストン軸の内面の傾斜部分に摺接する傾斜部分を形成したクランプ爪とから構成したことを特徴とする請求項1記載の絞り加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の絞り加工装置を用いて計測したクランプ爪の移動距離によって、ワークの直径を導出し、これに基づいて制御機構の加工用プログラムを選択又は補正することを特徴とする絞り加工装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のワーク先端を縮管する絞り加工に使用される絞り加工装置及びその制御方法に関し、特に、円筒状のワークの外径にバラツキがあっても、加工後の製品の寸法精度を高く維持することができる絞り加工装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の絞り加工装置として、例えば、図6に示す、発明者等が先に提案した絞り加工装置がある(特許文献1参照)。
この絞り加工装置50は、架体4上に主軸台5と保持台6とを配設し、主軸台5上に主軸機構2を固定するとともに、保持台6の走行レール6a上に主軸20の軸芯方向に移動可能に配設したスライダー6bを介して、主軸20と対向する位置に円筒状のワークWを保持する保持機構7を配設するようにしている。
保持機構7は、円筒状のワークWを把持固定する把持部材71と、この把持部材71を押圧するL字状の昇降枠73に取り付けたシリンダ72とを備え、昇降枠73を主軸20の軸芯方向と直角に移動可能となるように、スライダー6b上に立設した支持台74に配設したレール74aに取り付けるようにしている。
そして、絞り用工具Rを、主軸機構2の主軸20の先端に取り付けた工具取付台21に支持部材22を介して半径方向に摺動可能に取り付ける。工具取付台21の絞り用工具Rの半径方向への移行手段としては、工具取付台21の内部に工具を半径方向に移行させるカム板を配備し、該カム板を主軸20の内部に挿入するカム軸の先端に取り付けるとともに、主軸20から差動歯車機構を介してカム軸に回転を伝動する構造が採用されている。
しかして、絞り加工に際しては、円筒状のワークWを保持機構7の把持部材71によって保持し、ワークWの軸芯M’と主軸20の軸芯Nとを昇降枠73の移行によって一致させてから、スライダー6bを主軸20の軸芯方向で工具取付台21に向かって移動させることによってワークWと主軸20を軸芯方向に相対的に移動させつつ、絞り用工具Rを差動歯車機構によって主軸20の軸芯に対して直角方向に移動させ、円筒状のワークWの先端を縮管するようにしている。
【0003】
ところで、この絞り加工装置50は、保持機構7による円筒状のワークWの保持方法として、シリンダ72等を利用した押圧手段によって固定する方法を採用しているが、通常、加工に使用する円筒状のワークWの外径にはバラツキがあるが、絞り加工における絞りローラの絞り量を決めるプログラムは一定のため、プログラムに外径の違いによる修正を行わない限り、円筒状のワークWの外径のバラツキによって加工後の製品の寸法精度が低下するという問題があった。
この問題点を解消するために、取付前又は取付後に円筒状のワークWの外径をノギス等の計測器具を用いて人手によって計測することも行われているが、計測の誤りや誤差が発生し、さらには、作業効率が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2004−9093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の絞り加工装置の有する問題点に鑑み、円筒状のワークの外径にバラツキがあっても、加工後の製品の寸法精度を高く維持することができる絞り加工装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の絞り加工装置は、円筒状のワークを保持する保持機構と、該保持機構に取り付けたワークに対して相対的に回転する絞り用工具とからなる絞り加工装置において、保持機構に、該保持機構の中心軸と直角方向に移動する複数のクランプ爪と、クランプ爪の移動距離を計測するための計測装置とを配設したことを特徴とする。
【0006】
この場合において、保持機構を、中空の本体と、該本体内を保持機構の中心軸と平行方向に摺動可能に配設した中空のピストン軸と、該ピストン軸の内面の傾斜部分に摺接する傾斜部分を形成したクランプ爪とから構成することができる。
【0007】
また、本発明の絞り加工装置の制御方法は、上記絞り加工装置を用いて計測したクランプ爪の移動距離によって、ワークの直径を導出し、これに基づいて制御機構の加工用プログラムを選択又は補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の絞り加工装置によれば、保持機構に、該保持機構の中心軸と直角方向に移動する複数のクランプ爪と、クランプ爪の移動距離を計測するための計測装置とを配設することにより、クランプ爪の移動距離から円筒状のワークの外径を導出することができる。
【0009】
また、保持機構を、中空の本体と、該本体内を保持機構の中心軸と平行方向に摺動可能に配設した中空のピストン軸と、該ピストン軸の内面の傾斜部分に摺接する傾斜部分を形成したクランプ爪とから構成することにより、簡便にクランプ爪の移動距離を演算し、円筒状のワークの外径を導出することができる。
【0010】
また、本発明の絞り加工装置の制御方法によれば、計測したクランプ爪の移動距離によってワークの直径を導出し、これに基づいて制御機構の加工用プログラムを選択又は補正することにより、適正な加工用プログラムによって円筒状のワークの外径のバラツキに応じた加工を行うことによって、加工後の製品の寸法精度を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の絞り加工装置及びその制御方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図5に、本発明の絞り加工装置の一実施例を示す。
この絞り加工装置1は、架体4上に主軸台5と保持台6とを配設し、主軸台5上に主軸機構2を固定するとともに、保持台6の走行レール6a上に主軸20の軸芯方向に移動可能に配設したスライダー6bを介して、主軸20と対向する位置に円筒状のワークWを保持する保持機構3を配設するようにしている。
なお、従来例と同様、絞り用工具Rを配備した工具取付台21を、回転する主軸20の先端側に配設し、保持機構3を工具取付台21に対向して配備する、所謂ワーク固定型の絞り加工装置のほか、保持機構を主軸先端側に配設し、これに対向して絞り用工具を配設したターレット台を配設する、所謂ワーク回転型の絞り加工装置にも適用することができる。
【0013】
そして、この保持機構3は、円筒状のワークWを把持する複数のクランプ爪31を、保持機構3の中心軸Mと直角方向に移動可能に配設するもので、図2〜図4に示すように、中空の本体35と、該本体35内を保持機構3の中心軸Mと平行方向に摺動可能に配設する中空のピストン軸32と、該ピストン軸32の内面の傾斜部分32bに摺接する傾斜部分31bを形成するクランプ爪31とを主要構成要素としている。
【0014】
ピストン軸32は、中空部分の内周面上に複数箇所(特に限定されるものではないが、本実施例においては、8箇所)にクランプ爪31の傾斜部分31bとその側面が摺接するT溝32cを形成し、クランプ爪31の保持(脱落防止)と、引き勝手の際に、クランプ爪31の把持部分31aがワークWから離間するようにしている。
そして、ピストン軸32は、前部カバー36a及び後部カバー36bによって区画されたシリンダ室C1、C2に、本体35に形成された油路35a、35bを介して導入される圧油の油圧力によって、本体35内を保持機構3の中心軸Mと平行方向に移動するように構成している。
【0015】
また、保持機構3には、クランプ爪31が保持機構3の中心軸Mと直角方向に動く移動量を計測するための手段、特に限定されるものではないが、本実施例においては、電子スケールと、この電子スケールを読み取るためのスケールヘッド等からなる計測装置37を配設するようにしている。
そして、この計測装置37によって計測した移動量から、後述する円筒状のワークWの外径を導出するようにしている。
【0016】
この計測装置37の配設位置は、本実施例においては、図1及び図3に示すように、ピストン軸32の保持機構3の中心軸Mと平行方向への移動距離を計測することができる位置、具体的には、後部カバー36bの側面に配設するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、図3に2点鎖線で示す計測装置37Aのように、前部カバー36aに取り付けてクランプ爪31の半径方向の移動距離を直接計測するようにすることもできる。
ここで、図1及び図3に示すように、ピストン軸32の後部は保持機構3の本体35よりも突出する構成としているため、計測装置37をクランプ爪31の移動量を直接計測することができる位置に配設する場合と比べてその取付が容易であり、特に、ワーク回転型の絞り加工装置の場合には、その構成上、ピストン軸32の移動距離を計測することができる位置に配設することが好ましい。
【0017】
そして、ピストン軸32を嵌入した本体35には、ピストン軸32の外周に形成したピストンPの両側をシリンダ室C1、C2に区画する前部カバー36aと後部カバー36bをボルト等の固定手段で取り付ける。
【0018】
クランプ爪31は、保持機構3の中心軸Mに対して半径方向の移動可能、より具体的には、周囲より接近、離間可能となるように、クランプ爪31の前部に取り付けたストッパプレート34が前部カバー36aに対して摺接するように、より具体的には、ストッパプレート34をリング状のカバー33と前部カバー36aとで挟み込むように構成している。
【0019】
クランプ爪31は、その傾斜部分31bがピストン軸32の内面の傾斜部分32bと摺接するようにしており、ピストン軸32の保持機構3の中心軸Mと平行方向への移動によって、保持機構3の中心軸Mに対して直角方向に移動する。
クランプ爪31が、保持機構3の中心軸Mに対し、周囲より接近していくことによってワークWを保持するという、所謂ウェッジクランプ方式を採用しているため、保持後のワークWの軸芯は保持機構3の中心軸Mと一致し、主軸20の軸芯Nとの位置合わせは不要となる。
【0020】
次に、クランプ爪31の保持機構3の中心軸Mに対する直角方向への移動距離を計測することによって導出するワークWの外径計測の方法について説明する。
図5に示すように、保持機構3の初期位置におけるクランプ爪31の把持部分31aが形成する円周の半径が、Dm/2(一定)で、半径がDn/2(Dn<Dm)のワークWを取り付けるとき、クランプ爪31の移動距離sは、s=(Dm−Dn)/2となる。
また、クランプ爪31の移動距離sは、クランプ爪31、ピストン軸32の傾斜部分31b、32bの傾斜角度がα(一定)であって、ピストン軸32の保持機構3の中心軸Mと平行方向への移動距離がLの場合、
s=L・tanα
で表される。
したがって、ワークWの外径Dnは、
Dn=Dm−2・L・tanα
となる。
【0021】
このようにして、上記絞り加工装置1のピストン軸32の保持機構3の中心軸Mと平行方向への移動距離Lを、計測装置37によって計測し、計測した移動距離Lの値からワークWの外径Dnを演算し、ワークWの外径Dnの値に応じて、絞り用工具Rの主軸20の軸芯N方向への移動と主軸20の軸芯Nに対する直角方向への移動とを制御する制御機構(図示省略)の加工用プログラムを選択又は補正するようにしている。
この制御機構による制御は、例えば、ワークWの外径が標準寸法よりも小さかった場合、絞り用工具Rの主軸20の軸芯方向への移動を大きくなるようにプラグラムを補正するほか、計測したワーク外径に応じた加工用プログラムを予め多数記憶させておき、その中から最適な加工用プログラムを選択して実行するようにすることもできる。
これによって、素材である円筒状のワークWの外径にバラツキがあった場合でも、加工後の製品の寸法精度を高く維持することができる。
【0022】
以上、本発明の絞り加工装置及びその制御方法について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の絞り加工装置及びその制御方法は、円筒状のワークの外径にバラツキがあっても、加工後の製品の寸法精度を高く維持することができるという特性を有することから、製品の寸法精度を高く維持する必要のある製品の絞り加工を行う装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の絞り加工装置の一実施例を示す一部切り欠きの側面図である。
【図2】同絞り加工装置に使用する保持機構の正面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】保持機構のクランプ爪とピストン軸の関係を示す背面図である。
【図5】保持機構によるワーク外径の計測方法を説明する一部断面の側面図で、(a)はワークの保持前を、(b)はワーク保持後を示す。
【図6】従来の絞り加工装置を示す一部切り欠きの側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 絞り加工装置
2 主軸機構
20 主軸
21 工具取付台
3 保持機構
31 クランプ爪
32 ピストン軸
35 本体
35a 油路
35b 油路
36a 前部カバー
36b 後部カバー
37 計測装置
37A 計測装置
C1 シリンダ室
C2 シリンダ室
P ピストン
R 絞り用工具
W ワーク
【出願人】 【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治


【公開番号】 特開2008−6490(P2008−6490A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−181594(P2006−181594)