トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 耐力検出方法及びそれを用いた引張曲げ加工方法
【発明者】 【氏名】木村 剛

【氏名】川野 征士郎

【氏名】和田 博之

【氏名】椎原 弘貴

【要約】 【課題】耐力の検出精度を向上し、引張曲げ加工による製品バラツキを抑制する。

【構成】形材100に引張荷重を負荷しながら、該引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、形材100の微小時間での伸び変化量ΔLとを逐次計測し、ΔF/ΔLの値がその初期最大値Maxに対して材料に応じて予め決められた割合αの値に達した時点における引張荷重Max・αを形材100の耐力であると判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を把持装置で把持して引張荷重を負荷しながら、該引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、該金属材料の微小時間での伸び変化量ΔLとを逐次計測し、
ΔF/ΔLの値がその初期最大値に対して材料に応じて決められた割合の値に達した時点における引張荷重を、前記金属材料の耐力であると判定することを特徴とする耐力検出方法。
【請求項2】
金属材料を把持装置で把持して引張荷重を負荷しながら、該引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、該金属材料の微小時間での伸び変化量ΔLとを逐次計測し、
ΔF/ΔLの値が材料に応じて予め決められた設定値に達した時点における引張荷重を、前記金属材料の耐力であると判定することを特徴とする耐力検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により検出された耐力に対して、前記金属材料の形状及び曲げの曲率半径に応じて決定される所定の係数を乗じた値を算出し、該算出された値を引張荷重として維持した状態で前記金属材料の曲げ加工を行うことを特徴とする引張曲げ加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料に永久ひずみが生じるときの応力である耐力を検出する方法及びそれを用いた引張曲げ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料からなる形材を曲げ加工する際には、曲げの内周側における座屈の発生や除荷後のスプリングバックの発生により、所定の製品形状が得られない場合がある。そこで、形材に耐力付近の引張荷重を与えながら曲げ加工を行えば、曲げ中立軸が内周側に移動して座屈が抑制されると共に、スプリングバックも抑制されることが従来の研究により分かっている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された引張曲げ加工方法では、まず量産前に、形材の引張曲げ加工において目的の形状が得られるときの張力t2’と、その形材が耐力に達したときの張力t1’とを予め求めておく。次いで、量産中に、形材の両端を各クランプ(チャック)で把持して引張荷重を与え、クランプ間距離を測定して0.2%の塑性ひずみが発生する耐力時の張力t1を検出し、引張曲げ加工中に加える張力t2を以下の式1で求める。
【0004】
t2/t1=t2’/t1’ ・・・(式1)
そして、この張力t2で形材に引張荷重を与えた状態で曲げ加工を行うことにより、引張曲げ加工後に除荷した際にスプリングバックが発生しても、ある程度安定して目的の形状が得られるようになっている。
【特許文献1】特開平11−290962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、形材が耐力に達したときの張力t1がクランプ間距離に基づいて検出されている。そうすると、各クランプの形材を掴む箇所に誤差が生じたり、クランプにガタが存在したり、クランプが形材に食い込んだりした場合に、耐力時の張力t1に誤差が含まれることとなり、引張曲げ加工中に加える張力t2が変動してしまう。よって、量産時には、同一形材であるにも関わらず製品毎にスプリングバック量が変動し、製品バラツキが生じるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、耐力の検出精度を向上し、引張曲げ加工による製品バラツキを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る耐力検出方法は、金属材料を把持装置で把持して引張荷重を負荷しながら、該引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、該金属材料の微小時間での伸び変化量ΔLとを逐次計測し、ΔF/ΔLの値がその初期最大値に対して材料に応じて決められた割合の値に達した時点における引張荷重を、前記金属材料の耐力であると判定することを特徴とする。
【0008】
このようにすると、引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、金属材料の微小時間での伸び変化量ΔLとの比であるΔF/ΔLが耐力判定の判断基準に用いられており、把持装置間距離は耐力判定に用いられていないので、各把持装置が金属材料を掴む箇所等に誤差が生じても、ΔF/ΔLの値にその誤差が影響することはない。したがって、個々の金属材料で検出される耐力のバラツキを抑制することができる。
【0009】
また、後述するように、引張時のΔF/ΔLの値は、初期最大値を示した後で時間経過とともに徐々に減少していく特性があり、かつ、同種の金属材料では同一の特性を示す。よって、0.2%の塑性ひずみが生じる耐力時におけるΔF/ΔLの値の初期最大値に対する割合を予め調べておけば、ΔF/ΔLの値が該割合の値に達した時点における引張荷重がその金属材料の耐力であると判定でき、耐力の検出精度が向上する。
【0010】
本発明に係る別の耐力検出方法は、金属材料を把持装置で把持して引張荷重を負荷しながら、該引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、該金属材料の微小時間での伸び変化量ΔLとを逐次計測し、ΔF/ΔLの値が材料に応じて予め決められた設定値に達した時点における引張荷重を、前記金属材料の耐力であると判定することを特徴とする。
【0011】
このようにすると、上記同様に、引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、金属材料の微小時間での伸び変化量ΔLとの比であるΔF/ΔLが耐力判定の判断基準に用いられており、把持装置間距離は耐力判定に用いられていないので、各把持装置が金属材料を掴む箇所に誤差が生じても、ΔF/ΔLの値にその誤差が影響することはない。したがって、個々の金属材料で検出される耐力のバラツキを抑制することができる。
【0012】
また、後述するように、引張時のΔF/ΔLの値は、時間経過とともに一旦増加して初期最大値を示した後で徐々に減少していく特性があり、かつ、同種の金属材料では同一の特性を示す。よって、0.2%の塑性ひずみが生じる耐力時におけるΔF/ΔLの値を予め調べてそれを設定値とすれば、ΔF/ΔLの値が該設定値に達した時点における引張荷重がその金属材料の耐力であると判定でき、耐力の検出精度が向上する。
【0013】
本発明の引張曲げ加工方法は、前記方法により検出された耐力に対して、前記金属材料の形状及び曲げの曲率半径に応じて決定される所定の係数を乗じた値を算出し、該算出された値を引張荷重として維持した状態で前記金属材料の曲げ加工を行うことを特徴とする。
【0014】
このようにすると、上述した耐力検出方法によれば量産中の個々の金属材料ごとの耐力を元に引張加重が決められるので、常に安定したスプリングバック量が得られることとなる。したがって、金属材料を引張曲げ加工した際の製品バラツキを抑制することが可能となる。また、スプリングバック量は金属材料の形状や曲げの曲率半径にも依存するので、それに応じて決定される所定の係数を耐力に乗じた値を引張荷重として設定すれば、スプリングバック量を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、個々の金属材料で検出される耐力のバラツキを抑制することができ、金属材料を引張曲げ加工した際の製品バラツキも抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る引張曲げ加工装置1を示すブロック図である。図1に示すように、引張曲げ加工装置1は、金属材料からなる形材100の両端部を把持する一対のチャック2(把持装置)と、各チャック2を離反方向に移動させる一対の引張用シリンダ3とを備えている。各引張用シリンダ3には一対のアーム5の一端部が回転軸4で回転自在に枢支されている。各アーム5は下方中央に固定されたベース7に向けて延在されており、各アーム5の他端部が回転軸6で回転自在にベース7に枢支されている。各アーム5とベース7との間には一対の曲げ用シリンダ8が回転軸9,10を介して接続されており、曲げ用シリンダ8の伸縮により各アーム5が傾動可能となっている。形材100の下方には、形材100との当接面が円弧状となっている金型11がベース7に固定されている。
【0018】
引張用シリンダ3には、内部のピストン(図示せず)を往復動作させる作動油を供給する油圧ポンプ13が接続されており、その油圧ポンプ13には駆動用のモータ14が接続されている。引張用シリンダ3と油圧ポンプ13との間の油圧経路には圧力センサからなる荷重センサ15が設けられている。即ち、引張用シリンダ3内の圧力が検出されることで、引張用シリンダ3の負荷する荷重が算出可能な構成となっている。
【0019】
引張用シリンダ3には、内部のピストン(図示せず)の移動量を検出することでチャック2の変位量を検出する変位センサ12が設けられている。曲げ用シリンダ8には、内部のピストン(図示せず)を往復動作させる作動油を供給する油圧ポンプ16が接続されており、その油圧ポンプ16には駆動用のモータ17が接続されている。また、変位センサ12、荷重センサ15及びモータ14,17にはコントローラ18が接続されており、該コントローラ18は変位センサ12及び荷重センサ15から受信する情報に基づいてモータ14,17を駆動制御する構成となっている。
【0020】
詳しくは、コントローラ18は、チャック2で把持された形材100に対して引張用シリンダ3により引張荷重を負荷させながら、荷重センサ15から引張荷重の信号を受信すると共に変位センサ12から変位量(形材100の伸び量)の信号を受信する構成となっている。また、コントローラ18は、当該引張時に、受信した引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、形材100の微小時間での伸び変化量ΔLとを逐次計測する構成となっている。
【0021】
図2はΔF/ΔLと経過時間との関係を表したグラフである。(図2中の曲線が0点から出発していないのは初期値を省いて記載しているためである。)図2に示すように、形材に引張荷重を負荷した際には、ΔF/ΔLの値は時間経過と共にいったん増加して初期最大値Maxを示した後、徐々に減少する特性を示し、かつ、同種の形材では同一の特性を示す。これによれば、後述する実験例で説明するように、ΔF/ΔLの値がその初期最大値Maxに対して予め決められた割合αの値に達した時点における引張荷重が、形材に0.2%歪みが生じる耐力であるとみなすことができる。なお、割合αは、後述する実験例で説明するように、形材の材質毎に実験的に検証して予め定まる値(0<α<1)である。
【0022】
次に、引張曲げ加工装置1を用いた引張曲げ加工作業について説明する。図3は引張曲げ加工の手順を説明するフローチャートである。図4は耐力検出中の引張動作を説明する図面である。図5は引張曲げ加工を説明する図面である。図1及び3に示すように、まず作業者は、耐力判定基準となるΔF/ΔLの初期最大値Maxに対する割合αをコントローラ18に初期設定する(ステップS1)。また、作業者は、検出された耐力に対して乗じる所定の係数であって、形材100の形状及び曲げの曲率半径に応じて実験的に予め決定される係数βをコントローラ18に初期設定する(ステップS2)。なお、係数βは、形材の形状及び曲げの曲率半径に応じて0.8<β<1.2の範囲で設定される。
【0023】
次いで、作業者は、形材100をチャック2に把持させて引張曲げ加工装置1にセットする(ステップS3)。この状態から作業者がコントローラ18をスタートさせると、コントローラ18は、図4に示すようにモータ14に指令して油圧ポンプ13を駆動させて引張用シリンダ3を伸長させることにより、チャック2を離反させて形材100に引張荷重を負荷する。その際、コントローラ18は、荷重センサ15から引張荷重の信号を受信すると共に変位センサ12から変位量の信号を受信しており、引張荷重の微小時間での荷重変化量ΔFと、形材100の微小時間での伸び変化量ΔLとを逐次計測する(ステップS4)。そして、コントローラ18は、今回算出されたΔF/ΔLの値がそれまでに算出された値よりも大きい場合には、今回のΔF/ΔLの値を初期最大値Maxとしてメモリに記憶する(ステップS5)。一方、今回算出されたΔF/ΔLの値がそれまでに算出された値よりも小さい場合には、前回までの最大値をそのまま初期最大値Maxとしてメモリに保持しておく。
【0024】
次いで、コントローラ18は、今回算出されたΔF/ΔLの値が、初期最大値Maxに対して予め決められた割合αの値Max・α以下であるか否かを判定する(ステップS6)。今回算出されたΔF/ΔLの値がMax・α以下でないときは、コントローラ18は再びステップS4に戻って処理を繰り返す。一方、今回算出されたΔF/ΔLの値がMax・α以下であるときは、コントローラ18はその時点の引張荷重を形材100の耐力であると判定し、引張用シリンダ3に引張荷重の増加を停止させて耐力荷重を維持させる(ステップS7)。
【0025】
次いで、コントローラ18は、検出された耐力に対して、形材100の形状及び曲げの曲率半径に応じて初期設定された係数βを乗じた値を算出する(ステップS8)。そして、図5に示すように、コントローラ18は、耐力に係数βを乗じた値を引張荷重として維持させた状態で、モータ17に指令して油圧ポンプ16を駆動させて曲げ用シリンダ8を伸長させることにより、アーム5を傾動させて形材100に金型11の円弧面に沿った曲げ荷重を負荷し、引張曲げ加工を行う(ステップS9)。
【0026】
以上の構成によれば、耐力判定の判断基準には各チャック2間の距離を用いず、ΔF/ΔLの値が用いられており、各チャック2が形材100を掴む箇所に誤差が生じても、ΔF/ΔLの値にその誤差が影響することはない。そうすると、量産時において個々の形材100で検出される耐力のバラツキが抑制され、常に安定したスプリングバック量が得られることとなる。したがって、形材100を引張曲げ加工した際の製品バラツキを抑制することが可能となる。
【0027】
また、ΔF/ΔLの値は同種の形材100では同一の特性を示すので、0.2%の塑性ひずみが生じる耐力時におけるΔF/ΔLの値の初期最大値Maxに対する割合αを予め調べておけば、ΔF/ΔLの値がMax・αの値に達した時点における引張荷重がその形材100の耐力であると判定でき、チャック2の掴み箇所に関わらず耐力の検出精度が向上する。さらに、スプリングバック量は形材100の形状や曲げの曲率半径にも依存するので、それに応じて決定される所定の係数βを耐力に乗じた値を引張荷重として設定することで、スプリングバック量を低減することもできる。
【0028】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の引張曲げ加工の手順を説明するフローチャートである。図6に示すように、本実施形態は、ステップS2〜S4及びS7〜S9については第1実施形態と同様であり、ステップS10及びステップS11が第1実施形態と相違する。なお、本実施形態の引張曲げ加工装置の構成は、コントローラ18の制御動作以外は図1と同様である。
【0029】
図2に示したように、形材に引張荷重を負荷した際には、ΔF/ΔLの値は時間経過と共にいったん増加して初期最大値Maxを示した後、徐々に減少する特性があり、かつ、同種の形材では同一の特性を示す。よって、0.2%の塑性ひずみが生じる耐力時におけるΔF/ΔLの値を予め実験的に調べてそれを設定値Tとすれば、ΔF/ΔLの値が設定値Tに達した時点における引張荷重がその形材の耐力であるとみなすことができる。
【0030】
次に、第2実施形態の引張曲げ加工作業について説明する。図6に示すように、まず作業者は、耐力時のΔF/ΔLの値である設定値Tをコントローラ18に初期設定する(ステップS10)。そして、ステップS2〜S4は上述した通りであるため説明を省略する。次いで、コントローラ18は、今回算出されたΔF/ΔLの値が、予め入力された設定値T以下であるか否かを判定する(ステップS11)。今回算出されたΔF/ΔLの値が設定値T以下でないときは、コントローラ18は再びステップS4に戻って処理を繰り返す。一方、今回算出されたΔF/ΔLの値が設定値T以下であるときは、ステップS7に移行する。そして、ステップS7〜S9は上述した通りであるため説明を省略する。
【0031】
以上の構成によれば、耐力判定の判断基準には各チャック2間の距離を用いず、ΔF/ΔLの値が用いられており、各チャック2が形材100を掴む箇所に誤差が生じても、ΔF/ΔLの値にその誤差が影響することはない。そうすると、量産時において個々の形材100の耐力に元に引張荷重が決められて、常に安定したスプリングバック量が得られることとなる。したがって、形材100を引張曲げ加工した際の製品バラツキを抑制することが可能となる。
【0032】
また、ΔF/ΔLの値は同種の形材100では同一の特性を示すので、0.2%の塑性ひずみが生じる耐力時におけるΔF/ΔLの設定値Tを予め調べておけば、ΔF/ΔLが設定値Tに達した時点における引張荷重がその形材100の耐力であると判定でき、チャック2の掴み箇所に関わらず耐力の検出精度が向上する。
【0033】
(実験例)
以下、耐力判定について検証した実験例について説明する。
【0034】
図1の装置1を用いて形材に引張荷重を負荷して耐力判定の検証を行った。使用した形材100の材質はSUS304で、形材100の断面形状は図7に示すようなオフセット形状を呈している。形材100の各辺長さMはそれぞれ同一の40mmであり、板厚は2mmである。
【0035】
図8は実験例の引張荷重とテンションシリンダ3の変位量との関係を表したグラフである。(図8中、変位が0の時点で引張荷重が発生しているのは、チャック2の把持時に荷重が負荷されてしまうためである。)図8に示すように、変位の増加に伴って引張荷重が増加し、その曲線の傾きは徐々に減少している。
【0036】
図9は図8のデータに基づいたΔF/ΔLと経過時間との関係を表したグラフである。なお、図9は測定誤差を吸収するために移動平均処理(10回平均)を施している。(図9中の曲線が0点から出発していないのは初期値を省いて記載しているためである。)図9は、ΔF/ΔLの値が時間経過と共にいったん増加して初期最大値を示した後、徐々に減少する傾向を示している。
【0037】
ここで、第1実施形態で述べた耐力判定に用いる割合αを0.1とすると、ΔF/ΔLの値がその初期最大値Maxに対して割合αを乗じた値Max・αとなるのは、経過時間43sの時点である。この時点を、図10に示す同一形材100の引張試験による応力−ひずみ線図上に記すと、0.2%耐力の時点であることが分かった。(なお、図10中、ひずみが0の時点で応力が発生しているのは、チャック把持時に荷重が負荷されてしまうためである。)よって、43sの時点におけるΔF/ΔLの値の初期最大値Maxに対する割合をαとして使用してよいことが分かる。また、43sの時のΔF/ΔLの値を第2実施形態で述べた設定値Tに使用してもよいことも分かる。43sの時点のΔF/ΔLの値を第2実施形態で述べた設定値Tに使用してもよいことも分かる。即ち、図9と図10は一対一の関係にあるため、ΔF/ΔLの値により耐力の推定が可能であることが確認できた。
【0038】
また逆に言えば、応力に形材の初期断面積を乗じると引張荷重となり、ひずみに形材の初期長さを乗じると伸びとなるので、ΔF/ΔLとdσ/dε(微小時間における応力/ひずみ)とは同じ傾向が得られ、耐力判定に用いるΔF/ΔLの初期最大値に対する割合αまたは設定値Tは、応力−ひずみ線図から取得可能であると言うこともできる。
【0039】
アルミや鋼などの金属材料の応力−ひずみ線図は、引張り初期の弾性域においてはdσ/dεがヤング率Eとなる一方、塑性域においてはdσ/dεが以下の式2の曲線とほぼ一致することが分かっている。
【0040】
σ=Cε ・・・・(式2)
この式1を微分することで、ΔF/ΔLと同義となるdσ/dε(応力変化/ひずみ変化)は、次の式3で表される
dσ/dε=Cnε(n−1) ・・・・(式3)
よって、この式3に対して、表1に示すように、予想されるC値、n値及びε=0.002を入力することで、0.2%耐力時のdσ/dε、即ち、0.2%耐力時のΔF/ΔLを推定することができる。
【0041】
よって、0.2%の塑性ひずみ時のdσ/dεは、ε=0.002とすることで、n値及びC値と式3とから求められる。表1に示すように、軟鋼、ステンレス、アルミのE、n値、C値は一般に知られており、上述した耐力時の設定値T(=dσ/dε)及び割合α(=(dσ/dε)/E)の大まかな値を材質毎に予測することができる。
【0042】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明に係る耐力検出方法及びそれを用いた引張曲げ加工方法は、個々の金属材料で検出される耐力のバラツキが抑制され、引張曲げ加工時の製品バラツキの抑制及びスプリングバック量の低減が図られる優れた効果を有し、形材の引張曲げ加工に適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係る引張曲げ加工装置を示すブロック図である。
【図2】ΔF/ΔLと経過時間との関係を表したグラフである。
【図3】引張曲げ加工の手順を説明するフローチャートである。
【図4】耐力検出中の引張動作を説明する図面である。
【図5】引張曲げ加工を説明する図面である。
【図6】第2実施形態の引張曲げ加工の手順を説明するフローチャートである。
【図7】実験例の形材の断面図である。
【図8】実験例の引張荷重とテンションシリンダの変位量との関係を表したグラフである。
【図9】実験例のΔF/ΔLと経過時間との関係を表したグラフである。
【図10】実験例の応力−ひずみ線図である。
【符号の説明】
【0045】
1 引張曲げ加工装置
2 チャック(把持装置)
3 引張用シリンダ
8 曲げ用シリンダ
11 金型
12 変位センサ
15 荷重センサ
18 コントローラ
100 形材(金属材料)
【出願人】 【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100065868
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 嘉宏

【識別番号】100106242
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 安航

【識別番号】100110951
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 俊男

【識別番号】100114834
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 慶司

【識別番号】100127982
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 優


【公開番号】 特開2008−6475(P2008−6475A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180230(P2006−180230)