トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 ベンディング装置用金型およびベンディング装置用金型を用いた板材の加工方法
【発明者】 【氏名】西澤 照男

【要約】 【課題】プレスブレーキ等のベンディング装置に適用でき、上型取り付けクランプの締結力が堅固でない場合であっても、大形で長い板材の鋭角曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力で行なうことができるベンディング装置用金型を提供する。

【構成】本発明に係る金型は、上型と下型とから構成され、上型はしごき雄型と潰し型と上カムとを備え、下型はしごき型と潰し下型と下カムとイジェクターとを備え、しごき雄型は90度未満の鋭角の先端部を有し、上カムと下カムとは、垂直方向に作用する押圧力を水平方向に作用する力に変換する一対のカム機構に構成され、しごき型は下カムと一体の構造もしくは結合した構造を備え、水平方向に移動可能に下型に取り付けられ、イジェクターは、潰し下型に隣接する位置に、イジェクターの側面が潰し下型の上面端部に当接しながら垂直方向に移動可能に下型に取り付けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンディング装置に取り付けられ、上型と下型とから構成され、前記上型と前記下型とが接近する動作によって板材の曲げ加工および潰し加工を行なう、ベンディング装置用金型において、
前記上型は、しごき雄型と潰し型と上カムとを備え、
前記下型は、しごき型と潰し下型と下カムとイジェクターとを備え、
前記しごき雄型は角度90度未満の鋭角の先端部を有し、
前記上カムと前記下カムとは、垂直方向に作用する押圧力を水平方向に作用する力に変換する一対のカム機構に構成され、
前記しごき型は下カムと一体の構造もしくは結合した構造を備え、水平方向に移動可能に前記下型に取り付けられ、
前記イジェクターは、前記潰し下型に隣接する位置に、側面が前記潰し下型の上面端部に当接しながら垂直方向に移動可能に前記下型に取り付けられること
を特徴とするベンディング装置用金型。
【請求項2】
前記しごき雄型の前記先端部が、前記ベンディング装置の板材挿入口からみて、前記ベンディング装置における押圧力の作用中心よりも奥側に設けられていること
を特徴とする請求項1記載のベンディング装置用金型。
【請求項3】
前記上型の構成を下型に設け、前記下型の構成を上型に設けること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載のベンディング装置用金型。
【請求項4】
ベンディング装置に、上型と下型とから構成されるベンディング装置用金型を取り付けて、前記上型と前記下型とが接近するように押圧力を印加して板材の曲げ加工および潰し加工を行なう板材の加工方法において、
前記ベンディング装置用金型に請求項1〜3のいずれか一項記載のベンディング装置用金型を用いて、
前記曲げ加工と前記潰し加工とを同一の押圧力により行なうこと
を特徴とする板材の加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンディング装置に取り付けられて板材の曲げ加工および潰し加工を行なうベンディング装置用金型に関し、さらに詳細には、ベンディング装置に取り付けられ、上型と下型とから構成され、前記上型と前記下型とが接近する動作によって板材の曲げ加工および潰し加工を行なう、プレスブレーキあるいはベンダーといったベンディング装置用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の板材に関しては、製品を製造する過程において、切断された状態の縁(先端部)に曲げ加工および潰し加工が施される工程が多く存在する。特に、板材の先端部は鋭利であって非常に危険であるため、鋭角に曲げ加工をした後に、その部分に潰し加工を施す「ヘミング加工」が行なわれる場合が非常に多い。このような板材のヘミング加工を行なう装置としては、板材の長さが短い場合には、タレットパンチプレスに代表されるパンチプレス装置を使用することもできるが、板材が長い場合にはプレスブレーキ(図6)に代表されるベンディング装置でなければ加工をすることができない。
【0003】
従来のベンディング装置用金型としては、図7に示す上型203bと下型202bとからなる金型がある。この金型をプレスブレーキに取り付けて、平板状の板材207の端部のヘミング成形を行うことはできるが、次のような問題点がある。すなわち、板材207が小形な部材の場合は特に問題はないが、大形な部材の場合にはフランジ221bが加工される部分以外の板材207が上方にはね上り、作業者側に近接するため極めて危険である。また、板材207を上方に持ち上げながら加工を行なわなければならないことから、作業性が悪いため作業者の負担が大きく、また取り扱い性が難しいため熟練を要するものであった。加えて、加工中に板材207のずれが生じ、品質の安定化が難しい。さらに、
図7に示したフランジ221bの加工が終了した板材207を別の所にあるプレス装置に搬送するか、又は下型、上型の型交換を行って、フランジ221bのヘミング成形を行わねばならないため、多くの手間と時間を必要とする極めて効率の悪い加工工程であった。
【0004】
ここで、上記の問題点を解決する技術として、特許文献1に記載されたものであって、図8に示すベンディング装置用金型が提案されている。
この従来例は、プレスブレーキのテーブル125上に載置された下型102とスライドの中間板126に固定された上型103との協働によりヘミング成形が行われる。まず、下型102の曲げ加工用ダイ部113と上型103の上型押圧部材108の曲げ加工面111と屈曲部112との係合により板材107の端縁にほぼ直角にフランジ121が形成され、フランジ121を形成した板材107は下型102のプリヘムダイ部114のフラット面118とパット105の傾斜面120によりフランジ121が折り曲げられ、更に、折り曲げられたフランジ121をパット105のフラット面119との上型押圧部材108のフラット面110で挟持することによりヘミング成形が行われる。
【0005】
しかし、この従来例によれば、押圧動作を三回繰り返さなければ、板材のヘミング加工が完了しないため、加工に多くの工程・手間・時間を必要とする点で改善すべき要素があった。特に、一回の押圧動作で、板材を鋭角にまで曲げ加工を行なうことが可能な金型が産業界において求められていた。
【0006】
一方、短い板材を、ベンディング装置ではなく、パンチプレス装置により、ヘミング加工するためのパンチプレス装置用金型としては、特許文献2に記載されたものであって、図9に示す金型が提案されている。
この方法によれば、一回目の押圧動作で、板材を鋭角に曲げることができ、二回目の押圧動作で、鋭角に曲げた板材の潰し加工ができるため、二回の押圧動作によってヘミング加工を完了させることができる、しかし、このヘミング加工用金型は板材が短い場合で、かつ、加工装置がパンチプレスの場合にしか使用できないものであった。その理由としては、この金型の技術的思想をプレスブレーキに転用するには、加工対象の板材が長い点と、加工装置の機構が根本的に異なる点とから、技術的な困難性があったためである。その困難性とは、具体的に、長い板材を下型によってしごいて鋭角曲げを行なおうとすると、上型のブレ(変位)や板材の喰い込みが起こってしまう等の理由で、所望の曲げ加工ができないという問題と、潰し加工においては、上型のブレが生じてしまうとともに、潰しゲージとして一般的に設けられるピンゲージによって、板材が長い場合には、加工時に材料に傷がついてしまうという問題である。
まして、NC制御でないプレスブレーキやベンダーといったベンディング装置に取り付けて加工を行なう場合にも使用可能であって、鋭角曲げと潰し加工とを金型交換することなく、しかも、同一の押圧力で加工可能であって、上型取り付けクランプの締結力が堅固でない装置にも適用が可能であるベンディング装置用金型となると、一層の技術的困難性が生じることとなる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−277655号公報
【特許文献2】特開2004−50186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、NC制御でないプレスブレーキやベンダーといった既設の普通のベンディング装置に適用できて設備コストの低減が図れると共に、金型の段取り替えや別のプレス装置を併用する必要がなく、鋭角曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力で行なうことができ、上型取り付けクランプの締結力が堅固でない場合であっても、上型およびしごき雄型の変位や材料の食い込み等の問題を生じることなく、大形で長い板材の鋭角曲げ加工と潰し加工とを行なうことができ、取り扱い性もよく、安全で高品質のヘミング成形ができるベンディング装置用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係るベンディング装置用金型は、ベンディング装置に取り付けられ、上型と下型とから構成され、上型と下型とが接近する動作によって板材の曲げ加工および潰し加工を行なう、ベンディング装置用金型において、上型は、しごき雄型と潰し型と上カムとを備え、下型は、しごき型と潰し下型と下カムとイジェクターとを備え、しごき雄型は角度90度未満の鋭角の先端部を有し、上カムと下カムとは、垂直方向に作用する押圧力を水平方向に作用する力に変換する一対のカム機構に構成され、しごき型は下カムと一体の構造もしくは結合した構造を備え、水平方向に移動可能に下型に取り付けられ、イジェクターは、潰し下型に隣接する位置に、イジェクターの側面が潰し下型の上面端部に当接しながら垂直方向に移動可能に下型に取り付けられることを特徴とする。
【0011】
また、しごき雄型の先端部が、ベンディング装置の板材挿入口からみて、ベンディング装置における押圧力の作用中心よりも奥側に設けられていることを特徴とする。
【0012】
なお、前記上型の構成を下型に設け、前記下型の構成を上型に設けることとしてもよい。
【0013】
本発明に係る板材の加工方法は、ベンディング装置に、上型と下型とから構成されるベンディング装置用金型を取り付けて、上型と下型とが接近するように押圧力を印加して板材の曲げ加工および潰し加工を行なう板材の加工方法において、ベンディング装置用金型として上記のいずれかの特徴を有するベンディング装置用金型を用いて、曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力により行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1によれば、上型と下型とから構成されるベンディング装置用金型は、上型がしごき雄型と潰し型とを備え、下型がしごき型と潰し下型とを備えるため、その上型と下型とが接近する動作を行なうことにより、押圧力が生じ、板材のしごき曲げ加工と潰し加工の双方が可能となる。
板材の曲げ加工においては、上カムと下カムとから構成される一対のカム機構によって、ベンディング装置の垂直方向に作用する押圧力を水平方向に作用する力に変換してしごき型に伝達することができ、また、しごき雄型の先端部も角度90度未満の鋭角に設定されていることから、板材を角度90度未満の鋭角となるまでしごき曲げ加工を行なうことが可能となる。
さらに、板材の潰し加工においては、イジェクターの側面を潰しゲージとして利用することができ、板材に傷をつけやすいピンゲージを省略することが可能となる。
【0015】
請求項2によれば、NC制御でないプレスブレーキやベンダーといったベンディング装置に取り付けて加工を行なう場合であって、かつ、鋭角曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力で行なわなければならない場合であって、さらに、上型取り付けクランプの締結力が堅固でない場合であっても、しごき雄型の変位や材料の喰い込みを起こすことなく、板材の鋭角曲げ加工を行なうことが可能となる。
【0016】
請求項3によれば、上型の構成と下型の構成とを逆にして、ベンディング装置用金型を構成しても、前記同様の板材のしごき曲げ加工と潰し加工の双方が可能となる。
【0017】
請求項4によれば、請求項1〜3のいずれか一項記載のベンディング装置用金型を用いることによって、板材のしごき曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力により行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態に係るベンディング装置用金型1の一例を示す斜視図および概略図である。図3は、そのベンディング装置用金型1の上型2に係る拡大図である。図4は、そのベンディング装置用金型1の下型3に係る拡大図である。図5は、そのベンディング装置用金型1の動作を説明する説明図である。
【0019】
図1および図2に示すように、本発明に係るベンディング装置用金型1は、一対の上型2と下型3とから構成される。上型2は、上型取付部17を上型取り付けクランプ51で固定することによって、ベンディング装置上部に取り付けられる。下型3はベンディング装置の下部に取り付けられる。
上型2は上方から垂直下向きに下降する。通常は、直線的に動作する。また、下型3は固定されており上昇はしない。この上型2と下型3とが接近する動作によって押圧力が生じ、上型2と下型3との間に挿入された加工対象の板材4の曲げ加工および潰し加工が行なわれる。
なお、上型2が固定されて、下型3が上昇するベンディング装置にも、本発明に係るベンディング装置用金型1を用いることができることはもちろんである。
【0020】
図2〜図4に示すように、上型2は、しごき雄型10と潰し型11と上カム12とを備える。下型3は、しごき型20と潰し下型21と下カム22とイジェクター23とを備える。
【0021】
しごき雄型10としごき型20とは協働して板材4をしごき曲げ加工ができるように、対向して、それぞれ上型2と下型3とに配設される。より詳細には、上型2については、板材挿入口5に近い方から、潰し型11、しごき雄型10、上カム12の順に配設される。ここで、しごき雄型10の先端部13が、板材挿入口5とは反対方向に向くように構成される。また、しごき雄型10と上カム12との間に、しごき型20の逃げ空間18を設けるように構成される。併せて、しごき型20のしごき部28が、板材挿入口5の方向に向くように構成される。そのような構成により、板材挿入口5から挿入される板材4の挿入先端部分のしごき曲げを行なうことが可能となる。
【0022】
また、潰し型11と潰し下型21とは協働して板材4を潰し加工ができるように、対向して、それぞれ上型2と下型3とに配設される。より詳細には、下型3については、板材挿入口5に近い方から、潰し下型21、イジェクター23、しごき型20、下カム22の順に配設される。そのような構成により、潰し加工の際に、イジェクター23の側面26を潰しゲージとして利用することが可能となる。また、下型3の全体をコンパクト化することが可能となる。なお、相互に当接する潰し型11の下面14と潰し下型21の上面27は、所望の潰し加工に適した角度・形状とすればよい。本実施例では、下面14と上面27は共に水平であってフラットな形状を採用している。
【0023】
なお、本実施例では、しごき雄型10と潰し型11とは一体構造としているが、別体に設ける構造であってもよい。また、本実施例では、しごき型20は、下カム22と一体構造としているが、しごき型20は、下カム22と一体構造でなく、結合した構造であってもよい。
【0024】
しごき雄型10が板材4に当接する下面16は、板材4を挟むため、および、板材4の鋭角曲げの際に板材4を持ち上げる必要がないため、下面16は水平な面として設けられる。
【0025】
図5により板材4の曲げ加工の工程を説明する。
(1)板材セット工程(図5(a))
板材4を板材挿入口5から挿入して、イジェクター23の上面25に水平にセットする。板材4のセットは手動、自動のいずれであっても構わない。なお、図2に示すように鋭角曲げゲージ38を設けて、板材4が鋭角曲げゲージ38に突き当たる位置で曲げ長さを調整する。
【0026】
(2)板材挟み工程(図5(b))
上型2を下型3に向けて、垂直に下降させる。板材4は、上型2に備えられたしごき雄型10の下面16と、下型3に備えられたイジェクター23の上面25との間で、押圧力により挟まれて固定される。
【0027】
(3)直角曲げ工程(図5(c))
さらに上型2を垂直に下降させる。板材4が上型2に備えられたしごき雄型10の下面16と、下型3に備えられたイジェクター23の上面25との間で挟まれたままの状態で、しごき雄型10がイジェクター23を垂直下向きに押圧することにより、しごき雄型10、板材4、イジェクター23が垂直下向きに下降する。このとき、しごき型20のしごき部28におけるしごき上辺29が、下降する板材4を上向きにしごくため、板材4は上方向に直角に曲げられる。なお、スプリング44の強度は、板材4を挟持しつつ下降可能なように、適当に設定する必要がある。
下降するしごき雄型10の先端部13と、しごき型20のしごき部28とが接触しないようにしごき雄型10としごき型20とが配設される。さらに、曲げ加工する板材4の厚さを考慮に入れて、適切なクリアランス31が設けられる。すなわち、クリアランス31は、しごき雄型10の先端部13の最先端としごき型20のしごき部28の最先端とを同一水平面上に投影させた場合の両先端間の距離である。
板材4における、しごき雄型10の先端部13よりも突出する部分が曲げ加工されるため、その長さ分を勘案して工程(1)で適切な位置に板材4をセットしておく必要がある。
【0028】
(4)鋭角曲げ工程(図5(d))
さらに上型2を垂直に下降させると、上カム12の傾斜面15と下カム22の傾斜面24とが接触する。なお、このときイジェクター23はしごき雄型10との間で板材4を挟んだまま下降をする。
垂直に下降する上カム12の下向きの力は、カム機構の作用として、すなわち上カム12の傾斜面15から下カム22の傾斜面24に伝達されることによって、水平方向の力に変換される。この水平方向に作用する力を受けて、下カム22は矢印A方向に水平に移動する。下カム22の移動に伴い、下カム22と一体構造であるしごき型20も矢印A方向に水平に移動する。
これにより、板材4はしごき型20のしごき下辺30によって、直角曲げの状態からさらにしごき曲げをされることとなり、鋭角曲げの状態となる。
従来例の金型を用いる場合と相違して、鋭角曲げ加工の際に板材4を持ち上げることなく、板材4が長いものであっても、一回の押圧動作により鋭角に曲げることが可能となる。このとき、板材4は、曲げ加工されている先端部分を除き、イジェクター23の上面25と、しごき雄型10の下面16との間で挟持されたまま水平に保持される。
【0029】
(5)曲げ完了工程(図5(e))
上型2の垂直下降を停止させると、しごき型20の水平移動が停止され、鋭角曲げが完了する。
鋭角曲げの最終角度は、しごき雄型10の垂直方向下降長さと、しごき型20の水平方向移動長さとを調整することで、調整が可能である。
また、しごき雄型10の先端部13の形状は、少なくとも板材4の最終曲げ角度と同一角度またはそれ以下の鋭角でなければならない。
なお、曲げ加工が完了した後、上型2を上昇させると、一体構造のしごき型20および下カム22はスプリング43が伸長する作用により、矢印Aと反対方向に移動して所定位置に戻る。イジェクター23はスプリング44が伸長する作用により、垂直に上昇して所定位置に戻る
【0030】
以上のように、一回の押圧動作で、板材4を鋭角にまで曲げ加工を行なうことが可能となっている。
【0031】
続いて、図5により板材4の潰し加工の工程を説明する。
当該潰し加工は、前記曲げ加工を行なった後の二次加工として行なうことによって、板材4のヘミング形成を可能とするものである。なお、ベンディング装置用金型1は必ずしも曲げ加工と潰し加工とをセットで行なわなければならないものではなく、それぞれの加工のみを行なうことができることはもちろんである。
【0032】
(6)板材セット工程(図5(f))
曲げ工程を経て先端が鋭角に曲げられた状態の板材4を、板材挿入口5から挿入して、潰し下型21の上面27に水平にセットする。通常、鋭角に曲げられた部分が上方を向くようにセットするが、逆に、下方を向くようにセットしても構わない。なお、「水平」とは、鋭角に曲げられた板材4の先端部分以外の部分の面を基準として、その面が水平になっている状態をいい、厳密に角度0度でなければならないものではない。また、従来例の金型を使用する場合のように、加工の際に板材4を持ち上げる必要性はない。
ここで、イジェクター23の側面26が潰しゲージとしての機能を果たすため、板材4がイジェクター23の側面26に突き当たる位置でセットする。
【0033】
(7)板材潰し工程(図5(g))
上型2を下型3に向けて、垂直に下降させる。まず、上型2に備えられたしごき雄型10の下面16がイジェクター23の上面25に当接し、しごき雄型10がイジェクター23を垂直下向きに押圧することにより、イジェクター23が垂直下向きに下降する。イジェクター23は側面26が潰し下型21の上面端部32に当接しながら下降する。すなわち側面26が下降しつつも潰しゲージとしての機能を果たす。
さらに、上型2の下降によって、板材4は、上型2に備えられた潰し型11の下面14と下型3に備えられた潰し下型21の上面27との両面に接触する。さらに上型2が下降することによって、板材4には垂直方向の押圧力が作用するため、潰し加工が進行する。
【0034】
(8)潰し完了工程(図5(h))
上型2の垂直下降を停止させると、潰し型11の垂直下降が停止され、板材4の潰し加工が完了する。
潰し加工する板材4の厚さを考慮に入れて、上型2すなわち潰し型11の垂直方向下降長さを設定する。その長さにより、潰し加工後の厚み量を調整することが可能となる。
なお、潰し加工が完了した後、上型2を上昇させると、上型2に取り付けられている潰し型11は上昇する。また、イジェクター23はスプリング44が伸長する作用により、垂直に上昇して所定位置に戻る
【0035】
従来のベンディング装置においては、板材の曲げ加工を90度までの角度で行なうことは可能であった。そのようなベンディング装置では、しごき雄型10の先端部13を配設する位置は、ベンディング装置における押圧力の作用中心50上もしくはほぼ当該作用中心の近傍であることが一般的となっている。
しかしながら、仮に、本発明に係るベンディング装置用金型1を用いて、しごき雄型10の先端部13を、ベンディング装置における押圧力の作用中心50上もしくはほぼ当該作用中心の近傍に設けたとしても、板材4をしごいて鋭角曲げを行なうことは不可能である。
その理由として、本金型は、NC制御でないプレスブレーキやベンダーといったベンディング装置に取り付けて加工を行なう場合にも使用可能であることを念頭においたものであるため、鋭角曲げ加工と潰し加工の双方を金型交換することなく、しかも、同一の押圧力で実現しなければならない場合があり、さらに、上型取り付けクランプ51の締結力が堅固でない場合もあるが、そのような悪条件下で、長さの長い板材4に対して、前記「(4)鋭角曲げ工程」を行なうと、通常の作用中心50上もしくはほぼ当該作用中心の近傍に先端部13が来る構成では、しごき型20によるしごき鋭角曲げが行なわれると、上型2は図2中の矢印B方向の力を受けて、しごき雄型10の変位や材料の喰い込み等が起こってしまうため、所望の曲げ加工ができないからである。
【0036】
しかしながら、本願の発明者は、幾度にわたる思考・検討を重ねた結果、押圧力の作用中心50としごき雄型10の先端部13との位置関係により解決を図る手段を見出すに至った。すなわち、しごき雄型10の先端部13を、通常の配設位置とは異なり、ベンディング装置の板材挿入口5からみて、ベンディング装置における押圧力の作用中心50よりも奥側に設ける構成を採用することによって、しごき雄型10の変位や材料の食い込み等の問題を解決できることを見出したのである。その結果、NC制御でないプレスブレーキやベンダーといったベンディング装置に取り付けて加工を行なう場合であっても、また、鋭角曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力で行なわなければならない場合であっても、また、上型取り付けクランプ51の締結力が堅固でない場合すなわち既設の普通のベンディング装置で使用されている上型取り付けクランプ51による締結の構造およびその締結力によって上型2が締結される場合であっても、本発明に係るベンディング装置用金型1によって、長い板材4の鋭角曲げ加工を行なうことが可能となった。なお、先端部13を、押圧力の作用中心50から、どの程度の長さで奥側に設けるかについては、板材4の材質、厚さ、曲げの角度等によって適切に設定される。
【0037】
また、板材4の潰し加工を行なうことが可能な、通常のベンディング装置においては、イジェクター23を設けない構成や、イジェクター23の上面25を潰し下型として利用する構成等が一般的である。しかしながら、そのような構成のベンディング装置によって、一次加工された鋭角曲げの先端部を有する長い板材の潰し加工を行なうことには大きな課題があった。
具体的には、一次加工された鋭角曲げの先端部を有する長い板材4に対して、前記「(7)板材潰し工程」を行なうと、上型2は図2中の矢印C方向の力を受けて、上型2のブレが生じてしまうとともに、潰しゲージとして一般的に設けられるピンによって、板材4が長い場合には、板材4に傷がついてしまうという問題である。
加えて、潰し加工用に押圧力を設定すると、鋭角曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力で行なう場合で、上型取り付けクランプ51の締結力が堅固でない場合には、その押圧力では、曲げ加工用には強すぎることとなり、当該曲げ加工時にしごき雄型10の変位や材料の喰い込み等が起こってしまうという問題が生じる。
【0038】
しかしながら、本発明に係るベンディング装置用金型1では、前記問題を解消した。すなわち、潰しゲージとしてピンを使用しない構成を実現するため、ピンの代わりにイジェクター23の側面26を潰しゲージとして用いることによって、上型2および潰し型11の変位や、ピンが潰しゲージとして使用されていた場合に生じていた板材の傷つき等の問題を解決し、一次加工された鋭角曲げの先端部を有する長い板材4の潰し加工を行なうことを可能とした。
加えて、NC制御でないプレスブレーキやベンダーといったベンディング装置に取り付けて加工を行なう場合であって、鋭角曲げ加工と潰し加工とを同一の押圧力で行なわなければならない場合であって、上型取り付けクランプ51の締結力が堅固でない場合であっても、本発明に係るベンディング装置用金型1によって、鋭角曲げ加工と潰し加工の双方を可能としたのである。
【0039】
本発明に係るベンディング装置用金型1の他の実施の例として、前記第一の実施の例に係るベンディング装置用金型1の上型2の構成を備えた下型Xを設け、前記第一の実施の例に係るベンディング装置用金型1の下型3の構成を備えた上型Yを設け、当該下型Xと上型Yとから構成されるベンディング装置用金型Zが考えられる。ベンディング装置用金型Zはベンディング装置用金型1と同様の加工を可能とする。
【0040】
以上、説明したように、本発明に係るベンディング装置用金型1を用いることによって、NC制御でないプレスブレーキやベンダーといったベンディング装置に取り付けて加工を行なう場合であって、上型取り付けクランプの締結力が堅固でない場合であっても、長い板材に対して、一次加工である鋭角曲げ加工と、二次加工である潰し加工とを、同一の押圧力によって行なうことが可能となる。特に、鋭角曲げ加工に関しては、一回の押圧動作で、鋭角にまで加工を行なうことが可能となる。また、パンチプレス装置ではヘミング加工ができない長い板材の加工において格別の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係るベンディング装置用金型の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るベンディング装置用金型の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るベンディング装置用金型の上型に係る拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るベンディング装置用金型の下型に係る拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るベンディング装置用金型の動作を説明する説明図である。
【図6】一般的なベンディング装置(プレスブレーキ)の概観図である。
【図7】従来の実施の形態に係るベンディング装置用金型の一例を示す概略図である。
【図8】従来の実施の形態に係るベンディング装置用金型の動作を説明する説明図である。
【図9】従来の実施の形態に係るパンチプレス装置用金型の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ベンディング装置用金型
2 上型
3 下型
4 板材
5 板材挿入口
10 しごき雄型
11 潰し型
12 上カム
13 しごき雄型の先端部
14 潰し型の下面
15 上カムの傾斜面
16 しごき雄型の下面
17 上型取付部
18 しごき型の逃げ空間
20 しごき型
21 潰し下型
22 下カム
23 イジェクター
24 下カムの傾斜面
25 イジェクターの上面
26 イジェクターの側面
27 潰し下型の上面
28 しごき型のしごき部
29 しごき型のしごき上辺
30 しごき型のしごき下辺
31 クリアランス
32 潰し下型の上面端部
37 バックプレート
38 鋭角曲げゲージ
39 長孔
41 しごき型・下カム固定ボルト
42 スプリング用ボルト
43 スプリング
44 スプリング
45 ダイ
46 スプリング用ボルト
50 押圧力の作用中心
51 上型取り付けクランプ
52 押圧力作用部
【出願人】 【識別番号】396014278
【氏名又は名称】株式会社西澤工業
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100077621
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 隆夫

【識別番号】100092819
【弁理士】
【氏名又は名称】堀米 和春


【公開番号】 特開2008−6470(P2008−6470A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179693(P2006−179693)