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【発明の名称】 圧延エンボス加工方法、およびエンボス加工金属板
【発明者】 【氏名】木田 雄一郎

【氏名】吉江 邦将

【氏名】小幡 一敏

【氏名】渡辺 純夫

【氏名】農澤 英夫

【要約】 【課題】表面に傷が付きにくく、傷が付いても目立ちにくく、汚れを除去し易く、摩耗に対する耐久性の高い、ステンレス製キッチンカウンターのようなエンボス加工金属板を製造することのできる圧延エンボス加工方法。

【構成】回転する一対のロール(1,2)の間に金属板(10)を挿入し、該金属板に圧縮力を加えてエンボス加工を施す圧延エンボス加工方法。凹凸状の表面部を有する第1ロール(1)と平坦な表面部を有する第2ロール(2)との間に、金属板の一方の面にプラスチック系フィルム(11)を重ね合わせた状態で金属板を挿入する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する一対のロールの間に金属板を挿入し、該金属板に圧縮力を加えてエンボス加工を施す圧延エンボス加工方法において、
凹凸状の表面部を有する第1ロールと平坦な表面部を有する第2ロールとの間に、前記金属板の一方の面にプラスチック系フィルムを重ね合わせた状態で前記金属板を挿入することを特徴とする圧延エンボス加工方法。
【請求項2】
前記プラスチック系フィルムとして、オレフィン系フィルム、塩化ビニール系フィルム、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムを用いることを特徴とする請求項1に記載の圧延エンボス加工方法。
【請求項3】
所定の粘着剤を用いて、前記金属板の前記一方の面に、前記プラスチック系フィルムを粘着することを特徴とする請求項1または2に記載の圧延エンボス加工方法。
【請求項4】
前記所定の粘着剤として、アクリル系の粘着剤、ゴム系の溶剤型の粘着剤、またはゴム系のエマルジョン型の粘着剤を用いることを特徴とする請求項3に記載の圧延エンボス加工方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧延エンボス加工方法によりエンボス加工されたことを特徴とするエンボス加工金属板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延エンボス加工方法、およびエンボス加工金属板に関し、特にステンレス製のキッチンカウンターにエンボス模様を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステンレス製キッチンカウンターには、表面に傷が付きにくいように、また付いた傷が目立ちにくいように、意匠性を考慮したエンボス模様が形成されている。従来、ステンレス製キッチンカウンターにエンボス模様を形成する方法として、凹凸状の表面を有する金属製彫刻ロールと平坦な表面を有する金属製ワークロールとの間にステンレス鋼板を挿入し、このステンレス鋼板に圧縮力を加えてエンボス加工を施す圧延エンボス加工方法が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の圧延エンボス加工では、形成されるエンボス模様の突起部の頂上部分が平面状になり、調理具や食器等の接触面積が大きくなるため、表面に傷が付き易く、また付いた傷が目立ち易い。また、突起部の裾野部分が角張った形状になるため、裾野部分に付着した汚れを布巾などの清掃具で除去しにくく、裾野部分に汚れが溜まり易い。さらに、突起部の高さが比較的低いため、摩耗により突起部が実質的に消失し易く、摩耗に対する耐久性が低い。
【0004】
なお、ステンレス製キッチンカウンターに適用されることはないが、凹凸状の表面を有する一対の金属製ロールを用いて比較的大きな産業用金属板にエンボス加工を施す圧延エンボス加工方法が知られている。ただし、この圧延エンボス加工では、凹凸状の表面が互いに整合するように一対のロールを位置合わせすることが困難である。また、突起部の頂上部分が平面状になるため表面に傷が付き易く且つ傷が目立ち易く、突起部の裾野部分が角張った形状になるため裾野部分の汚れを除去しにくく且つ汚れが溜まり易い。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、表面に傷が付きにくく、傷が付いても目立ちにくく、汚れを除去し易く、摩耗に対する耐久性の高い、ステンレス製キッチンカウンターのようなエンボス加工金属板を製造することのできる圧延エンボス加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、回転する一対のロールの間に金属板を挿入し、該金属板に圧縮力を加えてエンボス加工を施す圧延エンボス加工方法において、
凹凸状の表面部を有する第1ロールと平坦な表面部を有する第2ロールとの間に、前記金属板の一方の面にプラスチック系フィルムを重ね合わせた状態で前記金属板を挿入することを特徴とする圧延エンボス加工方法を提供する。
【0007】
第1形態の好ましい態様によれば、前記プラスチック系フィルムとして、オレフィン系フィルム、塩化ビニール系フィルム、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムを用いる。また、所定の粘着剤を用いて、前記金属板の前記一方の面に、前記プラスチック系フィルムを粘着することが好ましい。この場合、前記所定の粘着剤として、アクリル系の粘着剤、ゴム系の溶剤型の粘着剤、またはゴム系のエマルジョン型の粘着剤を用いることが好ましい。
【0008】
本発明の第2形態では、第1形態の圧延エンボス加工方法によりエンボス加工されたことを特徴とするエンボス加工金属板を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の圧延エンボス加工方法では、例えばステンレス鋼板のような金属板の一方の面にプラスチック系フィルムを重ね合わせた状態で、凹凸状の表面部を有する第1ロールと平坦な表面部を有する第2ロールとの間に挿入する。そして、この回転する一対のロールの間でステンレス鋼板に圧縮力を加えてエンボス加工を施すことにより、例えばステンレス製キッチンカウンターのようなエンボス加工金属板を製造する。
【0010】
この場合、後述するように、プラスチック系フィルムの局部的な半球状の弾性変形により、ステンレス鋼板のような金属板にはエンボス模様としての半球状の突起部が形成される。すなわち、エンボス模様の突起部の頂上部分が球面状になり、調理具や食器等の接触面積が小さくほぼ点接触になるため、表面に傷が付きにくく、また傷が付いても目立ちにくい。また、突起部の裾野部分が比較的なだらかな形状になるため、裾野部分に付着した汚れを布巾などの清掃具で除去し易く、裾野部分に汚れが溜まりにくい。
【0011】
さらに、突起部の高さが比較的高いため、摩耗により突起部が実質的に消失しにくく、摩耗に対する耐久性が向上する。こうして、本発明の圧延エンボス加工方法では、表面に傷が付きにくく、傷が付いても目立ちにくく、汚れを除去し易く、摩耗に対する耐久性の高い、ステンレス製キッチンカウンターのようなエンボス加工金属板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる圧延エンボス加工方法を実施するための装置の要部構成を概略的に示す図である。図1に示す装置は、彫刻ロール(エンボスロール)1と、彫刻ロール1に対向するように配置されたワークロール2と、彫刻ロール1に当接するように配置されたバックアップロール3と、ワークロール2に当接するように配置されたバックアップロール4とを備えている。
【0013】
彫刻ロール1は、凹凸状の表面部を有し、軸線1a廻りに回転するように構成されている。ワークロール2は、平坦な表面部を有し、軸線2a廻りに回転するように構成されている。彫刻ロール1およびワークロール2は、凹凸状の表面部と平坦な表面部との間に所定の間隔が形成されるように配置されている。バックアップロール3,4は、軸線3a,4a廻りにそれぞれ回転するように構成されている。彫刻ロール1、ワークロール2、およびバックアップロール3,4は、例えば鋼鉄のような金属により形成されている。各ロール1〜4の回転軸線1a〜4aは、例えば鉛直方向に延びる1つの直線に沿って配置されている。
【0014】
本実施形態の圧延エンボス加工方法では、例えば0.6mm〜1.0mmの厚さを有するステンレス鋼板10のような金属板の裏面(図1中下側の面)にプラスチック系フィルム11が粘着された状態で、すなわちステンレス鋼板10とプラスチック系フィルム11とは互いに重ね合わされた状態で、矢印F11で示す方向(図中水平方向)に沿って、回転する彫刻ロール1とワークロール2との間に挿入される。このとき、ステンレス鋼板10とプラスチック系フィルム11とに所要の圧縮力が作用するように、バックアップロール3には矢印F12で示す方向に圧下力が加えられる。
【0015】
こうして、回転する彫刻ロール1とワークロール2との間でステンレス鋼板10とプラスチック系フィルム11とに所要の圧縮力を加えてエンボス加工を施すことにより、ステンレス製キッチンカウンターのようなエンボス加工金属板が得られる。なお、プラスチック系フィルム11として、例えばオレフィン系フィルム、塩化ビニール系フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムなどを用いることができる。プラスチック系フィルム11は、単層形態または複層形態で、例えば120μm〜360μmの厚さを有する。
【0016】
また、ステンレス鋼板10のような金属板の裏面にプラスチック系フィルム11を粘着するための粘着剤として、例えばアクリル系の粘着剤、ゴム系の溶剤型の粘着剤、ゴム系のエマルジョン型の粘着剤などを用いることができる。ここで、ステンレス鋼板10の裏面とは、最終的に製造されるステンレス製キッチンカウンターの裏面(調理具や食器等が載置される表面とは反対側の面)に対応する面である。ステンレス鋼板10とプラスチック系フィルム11とは、プラスチック系フィルム11がワークロール2の平坦な表面部に接するような姿勢で、彫刻ロール1とワークロール2との間に挿入される。
【0017】
以下、本実施形態の作用の具体的な説明に先立って、従来の圧延エンボス加工の不都合について図2を参照して説明する。従来の圧延エンボス加工では、図2(a)に模式的に示すように、凹凸状の表面部21aを有する彫刻ロール21と平坦な表面部22aを有するワークロール22との間に、ステンレス鋼板20のような金属板が単体で挿入される。彫刻ロール21の表面部21aには、ステンレス鋼板20に形成すべきエンボス模様の位置に対応して、複数の凹部21bが二次元的に形成されている(図2(a)では1つだけを示している)。
【0018】
この場合、矢印F21で示す方向に沿って彫刻ロール21に圧下力が加わると、彫刻ロール21とワークロール22との間でステンレス鋼板20に圧縮力が加わり、ステンレス鋼板20のステンレス材料(一般には金属材料)が矢印F22で示す方向に沿って彫刻ロール21の凹部21bに流れ込む。その結果、彫刻ロール21の凹部21bに対応するステンレス鋼板20の位置には、図2(b)に模式的に示すように、エンボス模様としての突起部20aが形成される。ここで、図2(b)の上側面は、最終的に製造されるステンレス製キッチンカウンターの表面に対応している。
【0019】
従来の圧延エンボス加工では、形成されるエンボス模様の突起部20aの頂上部分20aaが平面状になり、調理具や食器等の接触面積が大きくなるため、表面に傷が付き易く、また付いた傷が目立ち易い。また、突起部20aの裾野部分20abが角張った形状になるため、裾野部分20abに付着した汚れを布巾などの清掃具で除去しにくく、裾野部分20abに汚れが溜まり易い。さらに、突起部20aの高さH1が比較的低い(例えば50μm以下)ため、摩耗により突起部20aが実質的に消失し易く、摩耗に対する耐久性が低い。
【0020】
図3は、本実施形態の作用を具体的に説明する図である。本実施形態の圧延エンボス加工方法では、図3(a)に模式的に示すように、ステンレス鋼板10とプラスチック系フィルム11とが互いに重ね合わされた状態で、凹凸状の表面部1bを有する彫刻ロール1と平坦な表面部2bを有するワークロール2との間に挿入される。こうして、ステンレス鋼板10は彫刻ロール1の凹凸状の表面部1bに接し、プラスチック系フィルム11はワークロール2の平坦な表面部2bに接する。彫刻ロール1の表面部1bには、ステンレス鋼板10に形成すべきエンボス模様の位置に対応して、複数の凹部1cが二次元的に形成されている(図3(a)では1つだけを示している)。
【0021】
この場合、矢印F31で示す方向に沿って彫刻ロール1に圧下力が加わると、プラスチック系フィルム11に矢印F32で示す方向に沿って圧縮応力がかかり、プラスチック系フィルム11では矢印F33で示す方向に沿って彫刻ロール1の凹部1cに応力が逃げる。このとき、矢印F33で示す方向に沿って作用する応力は彫刻ロール1の凹部1cの中心に集中するため、プラスチック系フィルム11が半球凸状に弾性変形を起こす。その結果、彫刻ロール1の凹部1cに対応するステンレス鋼板10の位置には、図3(b)に模式的に示すように、プラスチック系フィルム11の半球凸状の弾性変形により、エンボス模様としての半球状の突起部10aが形成される。ここで、図3(b)の上側面は、最終的に製造されるステンレス製キッチンカウンターの表面に対応している。
【0022】
本実施形態の圧延エンボス加工方法では、形成されるエンボス模様の突起部10aの頂上部分10aaが球面状になり、調理具や食器等の接触面積が小さくほぼ点接触になるため、表面に傷が付きにくく、また傷が付いても目立ちにくい。また、突起部10aの裾野部分10abが比較的なだらかな形状になるため、裾野部分10abに付着した汚れを布巾などの清掃具で除去し易く、裾野部分10abに汚れが溜まりにくい。さらに、突起部10aの高さH2が比較的高い(例えば70μm〜100μm)ため、摩耗により突起部10aが実質的に消失しにくく、摩耗に対する耐久性が向上する。
【0023】
こうして、本実施形態の圧延エンボス加工方法では、表面に傷が付きにくく、傷が付いても目立ちにくく、汚れを除去し易く、摩耗に対する耐久性の高い、ステンレス製キッチンカウンターのようなエンボス加工金属板を製造することができる。換言すると、本実施形態の圧延エンボス加工方法では、例えばステンレス製キッチンカウンターの耐傷性、清掃性および耐久性の向上を図ることができる。
【0024】
なお、上述の実施形態では、ステンレス鋼板10のような金属板にプラスチック系フィルム11を粘着している。しかしながら、これに限定されることなく、粘着以外の適当な手法を用いて、ステンレス鋼板のような金属板とプラスチック系フィルムとを互いに重ね合わせて、彫刻ロールとワークロールとの間に挿入しても良い。
【0025】
また、上述の実施形態では、ステンレス鋼板10を用いてキッチンカウンターを製造する例を示している。しかしながら、これに限定されることなく、ステンレス鋼板を用いてキッチンカウンター以外のエンボス加工金属製品を製造することもできるし、例えばアルミニウムや銅などからなる金属板を用いてキッチンカウンターを含む様々なエンボス加工金属製品を製造することもできる。
【0026】
具体的に、キッチンカウンター以外の厨房機器関連や、バス、バスフロア、扉、取手等の浴室関連や、エスカレーター、手摺り、ドアノブ等の建材関連や、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機等の家電製品関連や、自動車関連などのエンボス加工金属製品に対して本発明を適用することができる。また、圧延エンボス加工に先立って、あるいは圧延エンボス加工の後に、エンボス加工面(キッチンカウンターの表面に対応する面)に撥水性または親水性の易洗浄コーティングを施すことにより、清掃性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態にかかる圧延エンボス加工方法を実施するための装置の要部構成を概略的に示す図である。
【図2】従来の圧延エンボス加工の不都合について説明する図である。
【図3】本実施形態の作用を具体的に説明する図である。
【符号の説明】
【0028】
1 彫刻ロール(エンボスロール)
1b 凹凸状の表面部
1c 凹部
2 ワークロール
2b 平坦な表面部
3,4 バックアップロール
10 ステンレス鋼板(金属板)
11 プラスチック系フィルム
【出願人】 【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
【識別番号】591186718
【氏名又は名称】高砂鐵工株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100095256
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 孝雄


【公開番号】 特開2008−785(P2008−785A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172100(P2006−172100)