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【発明の名称】 靭性に優れた溶接部を有する低降伏比厚肉電縫鋼管の製造方法
【発明者】 【氏名】横山 泰康

【氏名】岡部 能知

【氏名】中田 博士

【氏名】上 力

【氏名】剣持 一仁

【要約】 【課題】溶接部の靭性を向上するとともに、熱処理を行なうことなく降伏比を低下させた厚肉電縫鋼管の製造方法を提供する。

【解決手段】C:0.02〜0.12質量%,Si:0.01〜0.5質量%,Mn:0.4〜2.0質量%,P:0.01質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:1.5質量%以下,Al:0.1質量%以下を含有し残部が実質的にFeからなる組成を有し、かつミクロ組織にて残留オーステナイトとマルテンサイトとの混合組織が面積分率で1〜10%となる組織を有する帯鋼を用い、造管成形工程にてオープンパイプの円周方向端部の外面面取り角度θ1を10〜50°,外面面取り厚t1を帯鋼の厚さt0(mm)に対して0.15t0〜0.49t0,内面面取り角度θ2を10〜50°,内面面取り厚t2を0.15t0〜0.49t0となるように加工する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯鋼を連続的に成形して略円筒状のオープンパイプを製造する造管成形工程と、前記オープンパイプの円周方向端部同士を溶接する溶接工程とを有する厚肉電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼としてC:0.02〜0.12質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.4〜2.0質量%、P:0.01質量%以下、S:0.01質量%以下、Cr:1.5質量%以下、Al:0.1質量%以下を含有し残部が実質的にFeからなる組成を有し、かつミクロ組織にて残留オーステナイトとマルテンサイトとの混合組織が面積分率で1〜10%となる組織を有する帯鋼を用い、前記造管成形工程にて前記オープンパイプの円周方向端部の外面面取り角度θ1を10〜50°、外面面取り厚t1を前記帯鋼の厚さt0(mm)に対して0.15t0〜0.49t0、内面面取り角度θ2を10〜50°、内面面取り厚t2を0.15t0〜0.49t0となるように加工することを特徴とする厚肉電縫鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記帯鋼が、前記組成に加えてCu:0.5質量%以下、Ni:0.5質量%以下およびMo:2.0質量%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の厚肉電縫鋼管の製造方法。
【請求項3】
前記帯鋼が、前記組成に加えてNb:0.1質量%以下、V:0.1質量%以下およびTi:0.1質量%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の厚肉電縫鋼管の製造方法。
【請求項4】
前記帯鋼が、前記組成に加えてCa:0.005質量%以下を含有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の厚肉電縫鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫鋼管の製造方法に関するものであり、特にラインパイプとして使用するのに好適な溶接部の靭性に優れかつ降伏比の低い厚肉電縫鋼管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油を遠隔地へ輸送するために敷設されるラインパイプは、電縫鋼管を使用する。電縫鋼管は、帯鋼を連続的に成形して略円筒状のオープンパイプを製造する造管成形工程と、オープンパイプの円周方向端部同士を溶接する溶接工程とを経て製造されるので、必ず溶接部が存在する。
ラインパイプは、油井から精製設備や港湾へ石油を輸送するものであるから、地形に応じて湾曲して敷設される。しかも敷設工事の際にはラインパイプに曲げおよび曲げ戻しが付加される。また、特に砂漠地域に敷設されたラインパイプは大幅な温度変化に曝され、寒冷地域に敷設されたラインパイプは極端な低温に曝される。したがって、電縫鋼管をラインパイプとして安定して使用するためには、電縫鋼管の素材である鋼帯のみならず、電縫鋼管の製造工程で必然的に発生する溶接部の特性改善が求められる。
【0003】
従来から鋼管の素材として好適な鋼材の成分は種々検討されており、たとえば特許文献1には靭性を高めた電縫鋼管の成分が開示されている。この成分は電縫鋼管の素材である鋼帯の成分を指すが、鋼帯に含有される合金元素は溶接部の特性にも影響を及ぼすので、好適な成分の鋼帯であっても、溶接部の特性改善には十分な効果が得られなかった。しかもラインパイプは肉の厚い電縫鋼管(以下、厚肉電縫鋼管という)を使用するので、溶接部の組織制御が難しく、溶接部の靭性が低下する傾向がある。
【0004】
つまり厚肉電縫鋼管をラインパイプとして使用するためには、溶接部の靭性を向上させることが極めて重要である。
そこで靭性に優れた溶接部を有する厚肉電縫鋼管を製造するにあたって、オープンパイプの円周方向端部同士を溶接する際の端部の形状を規定して溶接部の靭性を向上する技術が検討されている。たとえば特許文献1には、端部をV字形(いわゆるVシェイプ)に加工してラインパイプ用の電縫鋼管を製造する技術が開示されている。
【0005】
オープンパイプの円周方向端部をV字形に加工するにあたって開き角度を小さく(2〜3°程度)すると、相対的に入熱を上げることは可能である。開き角度の小さいV字形の端部を溶接して電縫鋼管を製造する際には、鋼帯の成形技術,端部の加工技術,オープンパイプの溶接技術が多大な影響を及ぼす。現状では鋼帯の成形,端部の加工,オープンパイプの溶接は、作業員が経験によって調整しているので、個人差が生じるのは避けられず、安定した効果は得られていない。
【0006】
オープンパイプの円周方向端部の形状は、造管成形工程にて端部を圧延または切削することによって加工される。ラインパイプは厚肉電縫鋼管を使用するので、オープンパイプの円周方向端部の形状を変更するための設備改造は高額な費用を要する。したがって、端部の形状を変更することによって厚肉電縫鋼管の溶接部の靭性向上を達成する技術に関して、十分な検討はなされていない。
【0007】
また近年、厚肉電縫鋼管に関して、敷設工事の際に曲げおよび曲げ戻しが付加されることを考慮して、長手方向の引張特性の改善が求められており、とりわけ降伏比の低下の要求が高まっている。なお降伏比は、降伏強さを引張強さで除して100倍した値であり、単位は%で表わされる。
しかしラインパイプとして使用する厚肉電縫鋼管は、石油に含まれる硫黄による腐食の防止(いわゆる耐サワー性)のために、素材の鋼帯を低C系の成分設計とする必要がある。低C系の鋼帯の降伏比は著しく高い。しかも厚肉電縫鋼管は、その造管成形工程にて長手方向に引張歪みが発生するので、長手方向の降伏比は上昇する傾向がある。
【0008】
これに対して、厚肉電縫鋼管を製造した後で熱処理を施すことによって、厚肉電縫鋼管の降伏比を低下することは可能である。しかし熱処理によって厚肉電縫鋼管の製造コストが上昇するので、経済的に不利である。
【特許文献1】特開平3-211255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、溶接部の靭性を向上するとともに、熱処理を行なうことなく降伏比を低下させた厚肉電縫鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、厚肉電縫鋼管の素材となる鋼帯について検討し、熱処理を行なうことなく降伏比を低下させる組成と組織を見出した。さらにオープンパイプの円周方向端部の形状について検討し、溶接部の靭性を向上する上で好適な形状を見出した。
すなわち本発明は、帯鋼を連続的に成形して略円筒状のオープンパイプを製造する造管成形工程と、オープンパイプの円周方向端部同士を溶接する溶接工程とを有する厚肉電縫鋼管の製造方法において、帯鋼としてC:0.02〜0.12質量%,Si:0.01〜0.5質量%,Mn:0.4〜2.0質量%,P:0.01質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:1.5質量%以下,Al:0.1質量%以下を含有し残部が実質的にFeからなる組成を有し、かつミクロ組織にて残留オーステナイトとマルテンサイトとの混合組織が面積分率で1〜10%となる組織を有する帯鋼を用い、造管成形工程にてオープンパイプの円周方向端部の外面面取り角度θ1を10〜50°,外面面取り厚t1を帯鋼の厚さt0(mm)に対して0.15t0〜0.49t0,内面面取り角度θ2を10〜50°,内面面取り厚t2を0.15t0〜0.49t0となるように加工する厚肉電縫鋼管の製造方法である。
【0011】
本発明の厚肉電縫鋼管の製造方法においては、帯鋼が、前記した組成に加えてCu:0.5質量%以下,Ni:0.5質量%以下およびMo:2.0質量%以下のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。また、前記した組成に加えてNb:0.1質量%以下,V:0.1質量%以下およびTi:0.1質量%以下のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。さらに、前記した組成に加えてCa:0.005質量%以下を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラインパイプとして使用するのに好適な溶接部の靭性に優れかつ降伏比の低い厚肉電縫鋼管を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明はラインパイプとして使用する厚肉電縫鋼管を製造する方法に関するものである。その厚肉電縫鋼管の厚さについて具体的な数値は記載しないが、ラインパイプとしての用途から各種規格によって規定される厚さを対象とすることは言うまでもない。
まず、厚肉電縫鋼管の素材となる鋼帯の組成について説明する。
C:0.02〜0.12質量%
Cは、炭化物となって析出強化に寄与する元素である。C含有量が0.02質量%未満では、ラインパイプとして求められる強度が得られない。一方、0.12質量%を超えると、鋼帯中の第2相(たとえばパーライト,ベイナイト,マルテンサイト等)の組織が増加し、十分な靭性が得られない。したがって、Cは0.02〜0.12質量%の範囲内とする。好ましくは0.02〜0.08質量%である。
【0014】
Si:0.01〜0.5質量%
Siは、溶接の際に溶融メタルの脱酸を行なうために添加する。Si含有量が0.01質量%未満では、脱酸の効果が十分に得られない。一方、0.5質量%を超えると、溶接部の靭性が低下する。したがって、Siは0.01〜0.5質量%の範囲内とする。
Mn:0.4〜2.0質量%
Mnは、鋼帯の強度と靭性を確保するために添加する。Mn含有量が0.4質量%未満では、ラインパイプとして求められる強度,靭性が得られない。一方、2.0質量%を超えると、硬化第2相(たとえばパーライト,ベイナイト,マルテンサイト等)の組織が増加し、十分な靭性が得られない。したがって、Mnは0.4〜2.0質量%の範囲内とする。
【0015】
P:0.01質量%以下
Pは、溶鋼から鋼帯を製造する工程で不可避的に混入する不純物であり、可能な限り低減する必要がある。ただしP含有量が0.01質量%を超えると、溶接部の靭性が著しく劣化する。したがって、Pは0.01質量%以下とする。
S:0.01質量%以下
Sは、Mnと結合して硫化物(すなわちMnS)を形成し、鋼帯に生じる水素誘起割れの起点となる。そのためSは可能な限り低減する必要がある。ただしS含有量が0.01質量%以下であれば、MnSを起点とする水素誘起割れの発生は認められない。したがって、Pは0.01質量%以下とする。
【0016】
Cr:1.5質量%以下
Crは、残留オーステナイトとマルテンサイトとの混合組織の生成に寄与する元素である。ただしCr含有量が1.5質量%を超えると、鋼帯の靭性が著しく低下する。したがって、Crは1.5質量%以下とする。一方、Cr含有量が0.1質量%未満では、混合組織が生成し難くなる。そのため、Crは0.1〜1.5質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0017】
Al:0.1質量%以下
Alは、鋼帯の製造に供する鋼材を溶製する段階で脱酸剤として添加する。Al含有量が0.1質量%未満では、鋼帯の清浄度が低下し、靭性の低下を招く。したがって、Alは0.1質量%以下とする。
なお本発明で用いる鋼帯は、さらに下記の元素を含有しても良い。
【0018】
Cu:0.5質量%以下,Ni:0.5質量%以下およびMo:2.0質量%以下のうちの1種または2種以上
Cuは、鋼帯の靭性と強度を向上する作用を有する元素である。ただしCu含有量が0.5質量%を超えると、溶接部の靭性が著しく低下する。したがって、Cuは0.5質量%以下が好ましい。
【0019】
Niは、鋼帯の靭性と強度を向上する作用を有する元素である。ただしNi含有量が0.5質量%を超えると、硬化第2相が増加し、鋼帯の靭性が低下する。したがって、Niは0.5質量%以下が好ましい。
Moは、鋼帯の強度を向上する作用を有する元素である。ただしMo含有量が2.0質量%を超えると、鋼帯の靭性が低下する。したがって、Moは2.0質量%以下が好ましい。
【0020】
Nb:0.1質量%以下,V:0.1質量%以下およびTi:0.1質量%以下のうちの1種または2種以上
Nbは、微細な炭窒化物となって析出し、組織を微細化して強度と靭性の向上に寄与する元素である。ただしNb含有量が0.1質量%を超えると、硬化第2相が増加し、鋼帯の靭性が低下する。したがって、Nbは0.1質量%以下が好ましい。
【0021】
Vは、微細な炭窒化物となって析出し、組織を微細化して強度と靭性の向上に寄与する元素である。ただしV含有量が0.1質量%を超えると、硬化第2相が増加し、鋼帯の靭性が低下する。したがって、Vは0.1質量%以下が好ましい。
Tiは、微細な炭窒化物となって析出し、組織を微細化して強度と靭性の向上に寄与する元素である。ただしTi含有量が0.1質量%を超えると、硬化第2相が増加し、鋼帯の靭性が低下する。したがって、Tiは0.1質量%以下が好ましい。
【0022】
Ca:0.005質量%以下
Caは、MnSの生成を抑制する作用を有する元素である。ただしCa含有量が0.005質量%を超えると、Caの酸化物や硫化物が生成し、鋼帯の靭性低下を招く。したがって、Caは0.005質量%以下とする。
上記した以外の残部は実質的にFeである。残部が実質的にFeであるということは、本発明の作用効果を損なわない範囲で不可避的不純物をはじめ、他の微量元素を含有する鋼帯が本発明の範囲に含まれることを意味する。
【0023】
次に、厚肉電縫鋼管の素材となる鋼帯の組織について説明する。
鋼帯のミクロ組織は、残留オーステナイトとマルテンサイトの混合組織を有する。その混合組織における面積分率が1%未満では、地のフェライトと残留オーステナイト/マルテンサイトの境界が少なく、十分に可動転位が発達しないので、低い降伏比が得られない。一方、10%を超えると可動転位の発達が飽和に達し、降伏比が低下しなくなるだけでなく、残留オーステナイト/マルテンサイトの面積分率が高いために靭性が低下し、ラインパイプとして要求される靭性を満たさない。なお面積分率とは、鋼帯から試料を採取して任意の断面のミクロ組織を観察し、残留オーステナイトとマルテンサイトとの混合組織がその視野に占める面積の比率を指す。
【0024】
次に、造管成形工程にて加工するオープンパイプの円周方向端部の形状について説明する。
図1は、オープンパイプの円周方向端部の形状を模式的に示す断面図である。造管成形工程にて鋼帯が略円筒状のオープンパイプに成形され、かつその円周方向端部が図1に示すような形状に加工される。オープンパイプの円周方向端部の加工は、コイルエッジャーによる切削加工,カリバーロールによる圧延加工等、如何なる手段を用いても良い。
【0025】
外面側の面取り面3と端面2とのなす角度θ1(以下、外面面取り角度という)が10°未満では、端面2の外面側のコーナー部が過熱(いわゆるコーナー効果)され、端面2の中央部の温度が相対的に低下する。その結果、端面2からの溶融メタルの生成と排出が遅延して端面2の中央部に酸化物が残存するので、溶接部の靭性が低下する。一方、50°を超えると、面取り面3の温度が十分に上昇せず、その結果、面取り面3からの溶融メタルの生成と排出が遅延して面取り面3に酸化物が残存するので、溶接部の靭性が低下する。したがって、外面面取り角度θ1は10〜50°の範囲内とする。
【0026】
外面側の面取り部の厚さt1(以下、外面面取り厚という)が、オープンパイプ1(すなわち鋼帯)の厚さt0(mm)に対して0.15t0未満では、面取り面3が小さくなるので、コーナー効果を抑制できず、端面2の中央部の温度が相対的に低下する。その結果、溶融メタルの生成と排出が遅延して端面2の中央部に酸化物が残存するので、溶接部の靭性が低下する。一方、0.49t0を超えると、面取り面3が大きくなり十分な温度上昇が得られず、面取り面3からの溶融メタルの生成と排出が遅延する。その結果、端面2が著しく過熱され、接合部に欠陥が生じ易くなる。したがって、外面面取り厚t1は0.15t0〜0.49t0の範囲内とする。
【0027】
内面側の面取り面4と端面2とのなす角度θ2(以下、内面面取り角度という)が10°未満では、端面2の内面側のコーナー部が過熱(いわゆるコーナー効果)され、端面2の中央部の温度が相対的に低下する。その結果、端面2からの溶融メタルの生成と排出が遅延して端面2の中央部に酸化物が残存するので、溶接部の靭性が低下する。一方、50°を超えると、面取り面4の温度が十分に上昇せず、その結果、面取り面4からの溶融メタルの生成と排出が遅延して面取り面4に酸化物が残存するので、溶接部の靭性が低下する。したがって、内面面取り角度θ2は10〜50°の範囲内とする。
【0028】
内面側の面取り部の厚さt2(以下、内面面取り厚という)が、オープンパイプ1(すなわち鋼帯)の厚さt0(mm)に対して0.15t0未満では、面取り面4が小さくなるので、コーナー効果を抑制できず、端面2の中央部の温度が相対的に低下する。その結果、溶融メタルの生成と排出が遅延して端面2の中央部に酸化物が残存するので、溶接部の靭性が低下する。一方、0.49t0を超えると、面取り面4が大きくなり十分な温度上昇が得られず、面取り面4からの溶融メタルの生成と排出が遅延する。その結果、端面2が著しく過熱され、接合部に欠陥が生じ易くなる。したがって、内面面取り厚t2は0.15t0〜0.49t0の範囲内とする。
【実施例】
【0029】
表1に示す成分の鋼帯A〜Jを、厚肉電縫鋼管の造管成形工程に供給してオープンパイプを製造した。その際、コイルエッジャーで鋼帯のエッジ部をトリミングした後、端面成形機でオープンパイプの円周方向端部を図1に示すように加工した。外面面取り角度θ1,外面面取り厚t1,内面面取り角度θ2,内面面取り厚t2の組み合わせは表2に示す通りである。なお端面成形機は、カリバーロールによって圧延加工を施すものを使用した。さらに、これらのオープンパイプを溶接工程に供給して厚肉電縫鋼管を製造した。
【0030】
各鋼帯の、厚さt0,残留オーステナイトとマルテンサイトとの混合組織のミクロ組織における面積分率を表1に併せて示す。
【0031】
【表1】


【0032】
【表2】


【0033】
得られた厚肉電縫鋼管1〜41の溶接部から試験片(JIS規格5号の2mmVノッチシャルピー衝撃試験片)を10本ずつ採取し、−46℃でシャルピー衝撃試験を行なった。その結果は表3,4に示す通りである。吸収エネルギーの評価は、125J以上を良好(○),125J未満を不良(×)とした。脆性破面率は、35%以下を良好(○),35%超えを不良(×)とした。
【0034】
また、厚肉電縫鋼管1〜41の母材から試験片(API規格に準拠した全厚引張試験片)を1本ずつ採取し、API規格に定められた全伸び法で引張試験を行ない、0.5%耐力と引張強度を測定して降伏比を計算した。その結果を表3,4に併せて示す。降伏比の評価は、88%以下を良好(○),88%超えを不良(×)とした。
【0035】
【表3】


【0036】
【表4】


【0037】
C含有量が本発明の範囲を外れる鋼帯Aを用いた厚肉電縫鋼管1〜5は、ミクロ組織がパーライトであり、降伏比は良好であった。しかし、吸収エネルギーと脆性破面率は不良であった。
Mn,Cr,Nbの含有量が本発明の範囲を外れる鋼帯B,C,Dを用いた厚肉電縫鋼管6〜20は、吸収エネルギー,脆性破面率,降伏比が全て不良であった。
【0038】
成分が本発明の範囲を満足する鋼帯E〜Jを用いた厚肉電縫鋼管21〜41は、いずれも降伏比が良好であった。ただし、厚肉電縫鋼管21,24,25,27,32,34は、オープンパイプの円周方向端部の形状a,b,c,d,fが本発明を満足しないので、吸収エネルギーと脆性破面率が不良であった。オープンパイプの円周方向端部の形状が本発明を満足する厚肉電縫鋼管22,23,26,28〜31,33,35〜41は、吸収エネルギーと脆性破面率が良好であった
以上に説明した通り、本発明によれば、溶接部の靭性を向上するとともに、熱処理を行なうことなく降伏比を低下させた厚肉電縫鋼管22,23,26,28〜31,33,35〜41(すなわち発明例)を製造できた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】オープンパイプの円周方向端部の形状を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 オープンパイプ
2 端面
3 外面側の面取り面
4 内面側の面取り面
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年10月23日(2006.10.23)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一


【公開番号】 特開2008−100277(P2008−100277A)
【公開日】 平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願番号】 特願2006−287069(P2006−287069)