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【発明の名称】 溶接部特性の良好な電縫管の製造装置
【発明者】 【氏名】剣持 一仁

【氏名】岡部 能知

【氏名】横山 泰康

【氏名】杉本 祐二

【氏名】井上 智弘

【要約】 【課題】電縫溶接直前の幅端部形状を適切な形状とすることができ、それによって、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれ、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる電縫管の製造装置を提供する。

【解決手段】ロール成形機4が、少なくとも2段以上のテーパ形状を有するフィンを組み込んでなるフィンパス成形スタンド3を有しており、そのフィンパス成形スタンド3によって、帯板の幅端部にテーパ形状を付与する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、帯板を供給する装置と、供給された帯板の形状を矯正する装置と、矯正された帯板のロール成形を行う装置と、ロール成形された帯板幅端部を誘導加熱する装置と、誘導加熱された帯板幅端部を圧接する装置とを備えた電縫管の製造装置において、前記ロール成形を行う装置が、少なくとも2段以上のテーパ形状を有するフィンを組み込んでなるフィンパス成形装置を有しており、該フィンパス成形装置によって、帯板の幅端部にテーパ形状を付与するようになっていることを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管製造装置。
【請求項2】
前記フィンパス成形装置は、フィンパス成形の前段で、管の内径側となる帯板幅端部にテーパ形状を付与し、フィンパス成形の後段で、管の外径側となる帯板幅端部にテーパ形状を付与することを特徴とする請求項1に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造装置。
【請求項3】
帯板の幅端部に付与するテーパ形状は、板厚方向垂直端面からの角度を25°〜50°として、テーパ開始位置から終了位置までの板厚方向の長さを板厚の20%〜40%とすることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、油井のラインパイプ向けなどの溶接部靭性が要求される管あるいは油井のケーシングパイプなどの溶接部強度が要求される管の製造装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、電縫鋼管を例とするように、板をロール成形等によって丸めて幅端部を突き合わせて溶接して製造し、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔しマンドレルミル等で圧延して製造する。溶接管の場合、一般に溶接部の特性は母材より劣ると言われ、管の適用に当たって、用途ごとに溶接部の靭性や強度の保証が常に議論されて問題となってきた。
【0003】
例えば、原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプでは、管を寒冷地に敷設されることが多いため低温靭性が重要であり、また、原油採掘の油井では採掘管を保護するためのケーシングパイプが必要とされ、管の強度が重要視される。
【0004】
溶接管の中でも電縫管は、溶接金属を用いずに溶接するため、その製造装置の構成は、少なくとも、帯板を供給する装置、供給された帯板の形状を矯正する装置、矯正された帯板のロール成形を行う装置、ロール成形された帯板幅端部を誘導加熱する装置、誘導加熱された帯板幅端部を圧接する装置からなっている。さらに、溶接された管の溶接部を熱処理する装置、管の外径形状を整える装置を具備する場合が多い。
【0005】
なお、帯板のロール成形を行う装置は、帯板を弓なりに曲げるブレークダウンロールスタンド、弓なりに曲げられた帯板を管状に丸めるケージロールスタンド、丸められた後の管の形を整えるフィンパス成形スタンドからなっている。
【0006】
そのような従来用いられている電縫管の製造装置の一例を図5に示す。帯板20を供給するアンコイラ1と、帯板20を平坦に矯正するレベラー2と、矯正された帯板20を徐々に丸めていくロール成形機4と、丸めた帯板20の左右両幅端部を誘導加熱する誘導加熱装置5と、誘導加熱された帯板幅端部を圧接して管21となすスクイズロール(電縫溶接部)6と、管21の溶接ビード部を切削するビード部切削機7と、切削後の管21の外径を調整するサイザー8と、外径を調整された管21を所定長さに切断する管切断機9とで構成されている。なお、ロール成形機4は最後段に所定台数(ここでは2台)のフィンパス成形スタンド10を備えている。そのフィン形状は1段のテーパ形状からなっている。
【0007】
そして、通常、管の母材となる熱延板は、管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われて、母材の靭性や強度等の特性は確保される。
【0008】
しかし、溶接部の特性は、母材の成分設計や熱処理等以上に、溶接方法によって大きく左右されるため、特に、電縫溶接の場合は溶接技術の開発が重要であった。
【0009】
電縫溶接の不良原因としては、ペネトレータと呼ばれる被溶接帯板の幅端部に生成する酸化物が、電縫溶接時に溶鋼とともに端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータを原因として靭性が低下し強度不足になる例が多かった。
【0010】
そこで、従来、ペネトレータを溶接部から除くため、溶接部の被溶接帯板の幅端面から積極的に溶鋼を排出する技術が鋭意検討されてきた。例えば、特許文献1や特許文献2などに、帯板の幅端面の形状について検討した例が記載されている。通常、帯板の幅端面はスリットや端面研削によってほぼ矩形を呈しているが、この幅端面を電縫溶接までに加工して、加工した幅端部形状によって溶接時の溶鋼排出を良好にすることを目的としている。
【特許文献1】特開昭57−031485号公報
【特許文献2】特開昭63−317212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、本発明者らが特許文献1に記載の方法を検討したところ、フィンパス成形におけるアプセット量を大幅に変更しても、帯板20の幅端部の一部分のみをフィンパス孔型ロールのフィンに接触させることは著しく困難なことが判明した。これは、それまでの成形過程で帯板20の幅端部はわずかしか加工硬化していないために、帯板の幅端部全体がフィンに沿って変形してフィン部に完全充満し易く、帯板の幅端部にフィンの形状が転写されてしまうためである。その結果、電縫溶接直前には帯板20の幅端部が所望の形状になっていない。
【0012】
また、本発明者らが特許文献2に記載の方法を検討したところ、ロール成形途中(フィンパス成形スタンドの上流側)でエッジャロール11を用いて帯板20の幅端部全体にテーパ形状を付与するには、この特許文献2に記載されるとおり、管外面側から管内面側にかけて直径が徐々に大きくなるエッジャロールを用いて成形する必要があるため、管内面側となる幅端部がエッジャロールにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあって問題である。さらに、ロール成形される帯板20の横断面方向には管状の帯板20を外側に開く大きな反力が作用するため、エッジャロール11と帯板20の幅端部との圧力は必然的に小さくなる。その結果、前記特許文献1と同様に、エッジャロールでの幅端部の圧下では加工硬化しにくくなり、その後のフィンパス成形でアプセット量を軽減したとしても、帯板がフィン部にほぼ充満して、帯板20の幅端部に特許文献2に記載のような形状を付与することは困難なことが確認された。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、電縫溶接直前の幅端部形状を適切な形状とすることができ、それによって、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれ、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる電縫管の製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述のように、特許文献1、2に記載の従来技術においては、帯板の幅端面にテーパ形状を付与するために、フィンパス孔型ロールのフィンに帯板の幅端部の一部分を押し当ててテーパ形状を付与するようにしているが、本発明者らの検討によれば、フィンパス孔型ロールに帯板の円周方向全周が充満しなくとも、帯板がフィンパス孔型ロールに装入される際に、幅端部がフィンに強圧されて、幅端部がフィン部に完全充満することを把握した。すなわち、帯板がフィンパス孔型ロールに装入される場合、フィンに接触した帯料の幅端部およびそのほぼ180度反対側に位置する帯板の幅中央部(管状の底の部分)とが梁撓みの状態となって、横断面を円弧形状に曲げようとする帯板の反力が大きく作用して、たとえ帯料がフィンパス孔型ロールに充満しなくとも、帯板の幅端部には円周方向に大きな圧縮力が作用し、その結果、帯板の幅端部はフィンに強圧されてフィンの形状がそのまま帯板の幅端部に転写されることを把握した。
【0015】
そこで、本発明者らは、フィンパス成形において帯板の幅端部がフィンに強圧されることに着目して、この現象を積極的に活用することで、帯板の幅端部に所定のテーパ形状を付与する方法を着想した。すなわち、フィンに2段階以上のテーパを付与しておけば、フィンパス成形でのアプセット量が小さくとも、帯板の幅端部に所望のテーパ形状を付与でき、それによって電縫溶接直前の帯板の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができることを見出した。
【0016】
本発明は、上記のような考えに基づいており、以下の特徴を有している。
【0017】
[1]少なくとも、帯板を供給する装置と、供給された帯板の形状を矯正する装置と、矯正された帯板のロール成形を行う装置と、ロール成形された帯板幅端部を誘導加熱する装置と、誘導加熱された帯板幅端部を圧接する装置とを備えた電縫管の製造装置において、前記ロール成形を行う装置が、少なくとも2段以上のテーパ形状を有するフィンを組み込んでなるフィンパス成形装置を有しており、該フィンパス成形装置によって、帯板の幅端部にテーパ形状を付与するようになっていることを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管製造装置。
【0018】
[2]前記フィンパス成形装置は、フィンパス成形の前段で、管の内径側となる帯板幅端部にテーパ形状を付与し、フィンパス成形の後段で、管の外径側となる帯板幅端部にテーパ形状を付与することを特徴とする前記[1]に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造装置。
【0019】
[3]帯板の幅端部に付与するテーパ形状は、板厚方向垂直端面からの角度を25°〜50°として、テーパ開始位置から終了位置までの板厚方向の長さを板厚の20%〜40%とすることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、著しく良好な靭性および溶接強度を有する電縫管を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を以下に述べる。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電縫管製造装置の基本構成を図1に示す。この電縫管製造装置の基本構成は、帯板20を供給するアンコイラ1と、帯板20を平坦に矯正するレベラー2と、矯正された帯板20を徐々に丸めていくロール成形機4と、丸めた帯板20の左右両幅端部を誘導加熱する誘導加熱装置5と、誘導加熱された帯板幅端部を圧接して管21となすスクイズロール(電縫溶接部)6と、管21の溶接ビード部を切削するビード部切削機7と、切削後の管21の外径を調整するサイザー8と、外径を調整された管21を所定長さに切断する管切断機9とからなっている。なお、ロール成形機4は最後段に所定台数(ここでは2台)のフィンパス成形スタンド4を備えている。
【0023】
そして、この実施形態に係る電縫管製造装置は、フィンパス成形第1スタンド3aのフィンは通常の1段階のテーパ形状になっているが、図2(a)に横断面図、図2(b)にその部分詳細図を示すように、第2スタンド3bのフィンが2段階のテーパ形状(2段目のテーパ傾斜角度α、2段目の傾斜部垂直長さβ)を備えており、その形状を帯板20の左右両幅端部に転写することによって、図2(c)に示すように、管外面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度α、幅端面における開始位置の管外面となる表面からの板厚方向距離β)を付与するようになっている。
【0024】
そして、帯板20の左右両幅端部に付与するテーパ形状については、板厚方向垂直端面からの角度(帯板20の幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度)αが25°〜50°であり、テーパ開始位置から終了位置までの板厚方向の長さ(幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面との帯板板厚方向の距離)βが帯板板厚の20%〜40%となるようにしている。
【0025】
なぜなら、傾斜角度αが25°未満であると、帯板板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、傾斜角度αが50度を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。また、テーパ開始距離βが板厚に対して20%未満であると、板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、テーパ開始距離βが板厚に対して40%を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。
【0026】
上記のようにして、この実施形態においては、フィンパス成形最終スタンド3bのフィン形状を2段階の角度を有する形状とし、そのフィン形状を帯板20の左右両幅端部に転写するようにしているので、電縫溶接直前の帯板20の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができる。その結果、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれるので、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる。
【0027】
なお、上記において、2段階のテーパ形状を変更することによって、管内面側となる左右両幅端部に所定のテーパ形状を付与することもできる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る電縫管製造装置の基本構成も、前述の図1に示したものである。
【0029】
そして、この第2の実施形態に係る電縫管製造装置は、フィンパス成形第1スタンド3aのフィンは通常の1段階のテーパ形状になっているが、図3(a)に横断面図、図3(b)にその部分詳細図を示すように、第2スタンド3bのフィンが3段階のテーパ形状(1段目の傾斜部垂直長さδ、2段目のテーパ傾斜角度γ、3段目のテーパ傾斜角度α、3段目の傾斜部垂直長さβ)を備えており、その形状を帯板20の左右両幅端部に転写することによって、図3(c)に示すように、管外面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度α、幅端面における開始位置の管外面となる表面からの板厚方向距離β)を付与するとともに、管内面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管内面となる表面に向けての傾斜角度γ、幅端面における開始位置の管内面となる表面からの板厚方向距離ψ)を付与するようになっている。ただし、3段階としたフィンのいずれかの角度がフィンパスロールの垂直方向より大きな角度になると、帯板の幅端部がフィンにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあり、フィンパス成形時に疵を発生させたり、電縫溶接のスパークの原因となったりするので、フィンの角度は垂直方向以下にしておくとよい。
【0030】
そして、帯板20の左右両幅端部に付与するテーパ形状については、帯板20の幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度αおよび管内面となる表面に向けての傾斜角度γがそれぞれ25°〜50°であり、幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面との帯板板厚方向の距離βおよび管内面となる表面との帯板板厚方向の距離ψがそれぞれ帯板板厚の20%〜40%となるようにしている。
【0031】
なぜなら、傾斜角度α、γが25°未満であると、帯板板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、傾斜角度α、γが50度を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。また、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して20%未満であると、板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して40%を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。
【0032】
上記のようにして、この実施形態においては、フィンパス成形最終スタンド3bのフィン形状を3段階の角度を有する形状とし、そのフィン形状を帯板20の左右両幅端部に転写するようにしているので、電縫溶接直前の帯板20の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができる。その結果、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれるので、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる。
【0033】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る電縫管製造装置の基本構成も、前述の図1に示したものである。
【0034】
そして、この第3の実施形態に係る電縫管製造装置は、図4(a)に横断面図、図4(b)にその部分詳細図を示すように、前段のフィンパス成形第1スタンド3aのフィンが2段階のテーパ形状(1段目の傾斜部垂直長さδ、2段目のテーパ傾斜角度γ)を備えており、その形状を帯板20の左右両幅端部に転写することによって、図4(c)に示すように、管内面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管内面となる表面に向けての傾斜角度γ、幅端面における開始位置の管内面となる表面からの板厚方向距離ψ)を付与するとともに、図4(d)に横断面図、図4(e)にその部分詳細図を示すように、後段の第2スタンド3bのフィンが2段階のテーパ形状(2段目のテーパ傾斜角度α、2段目の傾斜部垂直長さβ)を備えており、その形状を帯板20の左右両幅端部に転写することによって、図4(f)に示すように、管外面となる側の左右両幅端部に所定のテーパ形状(幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度α、幅端面における開始位置の管外面となる表面からの板厚方向距離β)を付与するようになっている。
【0035】
ちなみに、フィンパス成形第1スタンド3aで管内面となる幅端部にテーパ形状を付与した場合、その部分は強圧によって著しく加工硬化するため、さらにフィンパス成形第2スタンド3bでテーパ形状を付与しても、第1スタンド3aで付与したテーパ形状は比較的潰れにくい。したがって、フィンパス成形終了後の帯板の幅端部には管内面側および管外面側とも所定のテーパ形状が付与できるわけである。
【0036】
そして、帯板20の左右両幅端部に付与するテーパ形状については、帯板20の幅端面から管外面となる表面に向けての傾斜角度αおよび管内面となる表面に向けての傾斜角度γがそれぞれ25°〜50°であり、幅端面におけるテーパ開始位置と管外面となる表面との帯板板厚方向の距離βおよび管内面となる表面との帯板板厚方向の距離ψがそれぞれ帯板板厚の20%〜40%となるようにしている。
【0037】
なぜなら、傾斜角度α、γが25°未満であると、帯板板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、傾斜角度α、γが50度を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。また、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して20%未満であると、板厚中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、テーパ開始距離β、ψが板厚に対して40%を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の疵として残留し問題である。
【0038】
上記のようにして、この実施形態においては、フィンパス圧において、前段の第1スタンド3aのフィン形状および後段の第2スタンド3bのフィン形状をそれぞれ2段階の角度を有する形状とし、それらのフィン形状を帯板20の左右両幅端部に転写するようにしているので、電縫溶接直前の帯板20の幅端部形状を適切なテーパ形状とすることができる。その結果、電縫溶接時に十分な溶鋼排出がなされて、ペネトレータが確実に取り除かれるので、溶接部特性の良好な電縫管を得ることができる。
【0039】
なお、上述の第1〜第3の実施形態においては、フィンパス成形最終スタンド(ここでは、第2スタンド3b)で帯板の管外面側あるいは管外面側の幅端部にテーパ形状を付与するようにしているのは、その直後に電縫溶接が行われるため、良好なテーパ形状を保持したまま電縫溶接が可能であるからである。しかし、フィンパス成形開始スタンドや中間スタンドにおいて帯板の幅端部にテーパ形状を付与し、フィンパス成形最終スタンドではテーパ形状を付与しないようにしてもよい。いったん帯板の幅端部にテーパ形状を付与すれば、その幅端面は強圧によって著しく加工硬化するため、その後にフィンパス成形を行ってもテーパ形状は比較的潰れにくく、フィンパス成形終了後もそのテーパ形状を付与した状態が保持できる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて説明する。
【0041】
ここでは、板幅1920mm×19.1tmmの帯板(鋼帯)を用いて、φ600の電縫管を製造した。そして、製造した電縫管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片は、管長手方向の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取し、JIS5号の2mmVノッチ衝撃試験片として、−46℃での衝撃試験を行い、吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギーは125J以上、脆性破面率が35%以下を性能許容範囲とした。
【0042】
(本発明例)本発明例として、前述の第2の実施形態に係る電縫管製造装置を用いて上記の電縫管を製造した。なお、管外面となる側の傾斜角度αおよび管内面となる側の傾斜角度γはともに25°とした。
【0043】
(従来例) 従来例として、図5に示した従来の電縫管製造装置を用いて上記の電縫管を製造した。
【0044】
これらにより製造した電縫管の溶接部におけるシャルピー衝撃値と脆性破面率を測定した結果を表1に示す。また。電縫溶接直前の帯板幅端部を切り出して採取し、その幅端部における形状を観察した結果も付記した。
【0045】
【表1】


【0046】
表1より、本発明例では、溶接部の衝撃強度が高く脆性破面率が小さくて、靭性が良好であって、製品の信頼性が高い。これに比較して、従来例では、溶接部の衝撃強度が低く脆性破面率が大きくて、靭性が低下しており、製品の信頼性に乏しかった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る電縫管製造装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電縫管製造装置の説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る電縫管製造装置の説明図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る電縫管製造装置の説明図である。
【図5】従来の電縫管製造装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
1 アンコイラ
2 レベラ−
3 フィンパス成形スタンド
3a フィンパス成形第1スタンド
3b フィンパス成形第2スタンド
4 ロール成形機
5 誘導加熱装置
6 スクイズロール(電縫溶接部)
7 ビード切削バイト
8 サイザー
9 管切断機
10 フィンパス成形スタンド
20 帯板
21 管
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年10月12日(2006.10.12)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎

【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘


【公開番号】 特開2008−93703(P2008−93703A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−278602(P2006−278602)