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【発明の名称】 非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法
【発明者】 【氏名】尾崎 茂克

【氏名】今井 武

【要約】 【課題】本発明は、表面に磁性を帯びた複数の巻取ロールを備えたカローゼル方式の巻取装置を用い、非晶質薄帯を巻取るに際し、簡便かつ安価で、しかも薄帯の破断なく確実に巻取ロールを切り替えることができる非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法を提供する。

【解決手段】冷却ロールを用いて鋳造した磁性を有する非晶質薄帯を、表面に磁性を帯びた2台以上の巻取ロールを用いて巻取る方法において、巻取ロールを切り替える際に、次の巻取ロールに前記非晶質薄帯を接触させ、かつ次の巻取ロールを冷却ロールに近接させた状態で巻取中の非晶質薄帯を切断し、次の巻取ロールで非晶質薄帯を巻き取ることを特徴とする非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ロールを用いて鋳造した磁性を有する非晶質薄帯を、表面に磁性を帯びた2台以上の巻取ロールを用いて巻取る方法において、巻取ロールを切り替える際に、次の巻取ロールに前記非晶質薄帯を接触させ、かつ次の巻取ロールを冷却ロールに近接させた状態で巻取中の非晶質薄帯を切断し、次の巻取ロールで非晶質薄帯を巻き取ることを特徴とする非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ロールを用いて鋳造した非晶質薄帯を2台以上の複数の巻取ロールからなる巻取装置を用いてオンラインで巻取る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非晶質薄帯を製造するための急冷凝固法には単ロール法および双ロール法等があるが、最も一般的な方法は単ロール法である。この単ロール法は溶融金属を高速回転している冷却ロール表面に噴出させ、この冷却ロール上で急冷凝固させて連続的に非晶質薄帯を得る方法である。工業的規模で製造する際には、通常この急冷凝固された非晶質薄帯を巻取る等して回収することが必要となる。これまで非晶質薄帯を鋳造直後にオンラインで巻き取る巻取方法には種々の方法ならびに装置が提案されているが、一般的には巻取ロールを用いて巻取ロールの回転により巻取る方法および装置が採用されている。例えば、特許文献1には、磁性を有する非晶質薄帯を表面に磁性を帯びた巻取ロールを用いて非晶質薄帯先端捕捉時の巻取ロール表面速度の範囲を冷却ロール表面速度の90%以上100%未満とする巻取方法が提案されている。しかし、1個の巻取ロールのみを用いて巻取ることは設備上その巻取重量に制約があること、また鋳造速度、巻取速度、張力等の巻取条件をバランスさせる必要があるため、通常は複数の巻取ロールを用いて巻取が行なわれる。
また、複数の巻取ロールを用いる巻取装置としては表面に磁性を帯びた2台以上の巻取ロールからなるカローゼル方式の巻取装置等がある。
【0003】
複数の巻取ロールで連続して鋳造薄帯を巻取る場合には、巻取ロールの切り替えが必要となるが、表面に磁性を帯びた巻取ロールで瞬時に別の巻取ロールに切り替えて非晶質薄帯を安定して巻取ることは困難とされていた。そこで、特許文献2では、巻取中の薄帯パスラインに、高速回転する次の巻取ロールを下方より進入させて薄帯に巻取ロールを接触させ、2つの巻取ロール間の限定した位置で切断し、次の巻取ロールに巻き付ける方法が提案されている。この提案は、切断位置と次の巻取ロールとの距離L1と、次の巻取ロールと冷却ロールとの距離L2との関係を、L1≧L2/20、とし、更に薄帯速度と巻取ロール速度差を±2m/秒以内として切り替える方法である。
【0004】
しかしながら、上記特許文献2で開示された方法では、切断後の非晶質薄帯の先端が次の巻取ロールに捕捉されるが、切り替え直後に非晶質薄帯が破断する等、依然として巻取が継続できない場合が発生しており、確実に巻取ロールを切り替えられないでいた。
【0005】
【特許文献1】特開平8−318352号公報
【特許文献2】特開平11−28552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面に磁性を帯びた複数の巻取ロールを備えたカローゼル方式の巻取装置を用い、非晶質薄帯を巻取るに際し、簡便かつ安価で、しかも薄帯の破断なく確実に巻取ロールを切り替えることができる非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その要旨は、冷却ロールを用いて鋳造した磁性を有する非晶質薄帯を、表面に磁性を帯びた2台以上の巻取ロールを用いて巻取る方法において、巻取ロールを切り替える際に、次の巻取ロールに前記非晶質薄帯を接触させ、かつ次の巻取ロールを冷却ロールに近接させた状態で巻取中の非晶質薄帯を切断し、次の巻取ロールで非晶質薄帯を巻き取ることを特徴とする非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、表面に磁性を帯びた2台以上の巻取ロールからなる巻取装置において、巻取ロールを切り替える際に、次の巻取ロールに前記非晶質薄帯を接触させ、かつ次の巻取ロールを冷却ロールに近接させた状態で巻取中の非晶質薄帯を切断することで、切り替え直後に発生していた非晶質薄帯の破断を防止し、確実に切り替えを可能とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を図1(a)〜(g)および図2(a)〜(f)に基づいて説明する。図1(a)〜(g)は、2台の巻取ロールを備えたカローゼル方式の巻取装置を採用した場合の本発明による非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法における一つの態様の概略を示す図である。図2(a)〜(f)は前期カローゼル方式の巻取装置を採用した場合の本発明による非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法の別の態様の概略を示す図である。
【0010】
図1(a)では、タンディッシュ1内の溶融金属2を、ノズル3を介して高速回転している冷却ロール4の表面に噴射、急冷凝固して非晶質薄帯8とし、冷却ロール4に近接させたカローゼル方式の巻取装置5で巻取を開始している。巻取開始時の冷却ロール4と巻取ロール6との間隙は非晶質薄帯の先端捕捉を確実に行なうために衝突しない程度で出来るだけ近接させた方がよく、好ましい範囲は100mm以下、更に好ましくは10mm以下である。このカローゼル方式の巻取装置5は対向する位置にそれぞれ設けた巻取ロール6、7で交互に巻き取る構造を有しており、一方の巻取ロール6で或る一定量巻き取った後、対向する別の巻取ロール7に巻取を切り替えて巻取作業を行うものである。これら巻取ロール6、7は、永久磁石を各ロール表面に埋め込み(巻取ロール表面での磁力は1000G以上が好ましい)、この磁石の力で非晶質薄帯8の先端を捕捉し、その後は巻取ロールの回転により巻取る機能を有している。この巻取装置5の上方には別に設けた駆動機構(図示せず)と連結する切断装置9を配設する。
【0011】
図1(a)において、巻取装置5は巻取ロール6にて非晶質薄帯8の先端を補足した後、巻取ロール6の巻き太りによる冷却ロール4との接触および巻取装置5の回転時に巻取ロール6と冷却ロール4との干渉を回避するため矢印Aの方向へ移動し、次いで矢印Bの方向へ回転し、図1(b)の状態で定常的に巻取を継続する。このとき巻取ロール6は対向する次の巻取ロール7が、冷却ロール4の表面と巻取ロール6で作るパスラインP中の非晶質薄帯8の表面と接する手前で待機した状態で非晶質薄帯8を巻き取っている。ここで次の巻取ロール7はパスラインP(非晶質薄帯8)の移動速度のほぼ等しい表面速度でパスラインPの移動方向に回転している。巻取ロール6の巻取が所定の量となったところで、巻取ロールの巻き替えを行なうが、巻き替えに際しては、次の巻取ロール7に非晶質薄帯8を接触させるために矢印Dの方向に巻取装置5を回転させ、図1(c)の位置で停止させる。このとき次の巻取ロール7の停止位置は巻取ロール7に非晶質薄帯8が接触していれば良いが、巻取ロールの磁力の関係上少なくとも50mm以上は接触させる必要がある。その後、巻取装置5を矢印E方向に移動し、図1(d)に示すように冷却ロール4に近接させた位置にて停止させる。このとき巻取装置5の次の巻取ロール7と冷却ロール4との間隙Sは衝突しない程度で出来るだけ近接させた方がよく、1mm以上200mm以下であれば良いが、好ましくは1mm以上100mm以下である。巻取ロール7が冷却ロール4に近接した位置で、図1(e)に示すように巻取装置5の上方に設けた切断装置9が矢印Fの方向に移動し、巻取ロール6および巻取ロール7の間で非晶質薄帯8を切断する。このとき捕捉した非晶質薄帯先端部分Tは図1(f)に示すように空気抵抗により膨らむが、巻取ロール7と冷却ロール4が近接しているため非晶質薄帯先端部分Tは巻取ロール7と冷却ロール4の間隙Sを通過する際に折り返され、巻取ロール7に密着した状態で巻き込まれ、図1(g)に示すように非晶質薄帯が破断することなく切り替わる。なお、切断装置9は設備に干渉しないよう切断後直ちにHの方向に移動し、巻取装置5の情報に待機させる。
本発明者らは非晶質帯切断および先端捕捉を安定して実現したにも拘らず、非晶質薄帯が破断し巻き替えを失敗する原因を探求していたが、高速ビデオを設置して切り替え時の状態を解析した結果、この非晶質薄帯先端部分Tの形状が大きく膨らむ場合に、巻き込まれる際に非晶質薄帯が破断することが判明した。さらに実験によりこの非晶質薄帯先端部分Tを巻取ロール7に押し付ければ破断を回避できることを見出した。そこで巻取ロール7と冷却ロール4を近接させることでその間隙Sに非晶質薄帯先端Tを通過する際に、薄帯先端部分を安定的に巻取ロールに押し付ける方法を見出した。この方法は、既存の冷却ロール4を活用して非晶質薄帯先端部分Tを巻取ロール7に押し付けるため、押し付けのための付帯設備を導入が不要であり安価に安定した巻き替えが可能となる。
非晶質薄帯を巻き取った巻取ロール6は巻取ロール交換装置(図示せず)によって抜き取り、新たな巻取ロールを装着する。非晶質薄帯を巻き取った巻取ロール6は搬送装置(図示せず)により搬送し、次の工程に送る。新たな巻取ロール装着後、この巻取ロール7の位置は回転して図1(b)の巻取ロール6の位置で定常的に巻き取る。これら一連の工程を繰り返し所定の個数の巻取を行なう。
【0012】
図2(a)〜(f)の本発明の別の様態では、図2(a)で巻取装置5は巻取ロール6で非晶質薄帯8の先端を補足した後、矢印Aの方向へ移動し、次いで矢印Bの方向へ回転するが、図2(b)に示すように次の巻取ロール7に非晶質薄帯8が接触する位置にて停止し、次いで矢印E方向に移動し、図2(c)に示すように冷却ロール4に近接させた位置にて停止させる。この図2(c)の状態で定常的に巻取を継続する。巻取ロール6の巻取が所定の量となったところで、巻取ロールの巻き替えを行なうが、図2(d)に示すように巻取装置5の上方に設けた切断装置9により、巻取ロール6および巻取ロール7の間で非晶質薄帯8を切断する。非晶質薄帯先端部分Tは図2(e)に示すように巻取ロール7と冷却ロール4の間隙Sを通過する際に折り返され、巻取ロール7に密着した状態で巻き込まれ、図2(f)に示すように非晶質薄帯が破断することなく切り替わる。
非晶質薄帯を巻き取った巻取ロール6は巻取ロール交換装置(図示せず)によって抜き取り、新たな巻取ロールを装着する。非晶質薄帯を巻き取った巻取ロール6は搬送装置(図示せず)により搬送し、次の工程に送る。新たな巻取ロール装着後、巻取装置5は移動、回転し図2(b)を経て図2(c)の状態で定常的に巻取を継続する。これら一連の工程を繰り返し所定の個数の巻取を行なう。
図1(a)〜(g)、図2(a)〜(f)を用いて本発明を説明したが、定常的な巻取位置を図2(b)とする、巻取後の巻取ロール交換の位置は図1(a)で矢印Aの移動後に行なう等が考えられるが、巻取ロール7に非晶質薄帯を接触させ、巻取ロール7と冷却ロール4を近接した後、非晶質薄帯8を切断させる方法であれば全て本発明とする。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例として原子%でFe:80.5%、B:15.0%、Si:3.0%、C1.0%、残部が不可避的不純物からなる非晶質薄帯を鋳造し、図1に示す装置にて鋳造速度および板厚を変更して巻取ロールの切り替えを行なった。鋳造に用いたノズルの開口形状は170mm×0.85mmとし、銅合金からなる内部水冷方式の冷却ロールの表面に噴出させて非晶質薄帯とした。なお、冷却ロールは直径φ1198mm、幅250mm、肉厚19mmとした。
また、巻取ロールは直径φ600mm、幅375mm、表面での磁力が2000Gとした。切り替え時の巻取ロールの位置は設備・制御の簡素化の観点から、次の巻取ロール7の位置が、巻取開始時の巻取ロール6と同じ位置になるように設定した。この場合の非晶質薄帯と巻取ロールとの接触長さは30cmとなった。
比較例として、特許文献2に示される方法でL1=30cm、L2=5mとし、その他を本発明例と同じ鋳造条件にて前記非晶質薄帯を製造し、巻取および巻取ロールの切り替えを試みた。本発明例および比較例とも巻取ロールへの巻取厚みは約200mmとし、鋳造速度および板厚を変化させて切り替えを行なった。結果を表1に示す。
【表1】


本発明例のNo.1〜10においては鋳造速度および板厚が変動しても巻取ロールの切り替えは問題なく可能であるが、比較例のNo.11〜20では鋳造速度が遅い場合には板厚にかかわらず切り替えは可能であるが、鋳造速度が速くなり、また板厚が厚くなると非晶質薄帯の切断及び先端補足は良好であるが、非晶質薄帯巻き込み時に破断が発生し巻取ロールの切り替えが不可となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1(a)】(a)は本発明による非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法の巻取開始状態を示す図。
【図1(b)】(b)は定常な状態での巻取状態を示す図。
【図1(c)】(c)は切り替えのために巻取装置が回転し、巻取ロールに非晶質薄帯が接触した態を示す図。
【図1(d)】(d)は巻取装置が移動し冷却ロールに近接した状態を示す図。
【図1(e)】(e)は非晶質薄帯を切断した状態を示す図。
【図1(f)】(f)は非晶質薄帯先端部分を巻き込む状態を示す図。
【図1(g)】(g)は次の巻取ロールに切り替わった状態を示す図である。
【図2(a)】(a)は本発明による非晶質薄帯の巻取ロール切り替え方法の巻取開始状態を示す図。
【図2(b)】(b)は巻取装置が回転し、巻取ロールに非晶質薄帯が接触した態を示す図。
【図2(c)】(c)は定常な状態での巻取状態を示す図。
【図2(d)】(d)は非晶質薄帯を切断した状態を示す図。
【図2(e)】(e)は非晶質薄帯先端部分を巻き込む状態を示す図。
【図2(f)】(f)は次の巻取ロールに切り替わった状態を示す図。
【符号の説明】
【0015】
1 タンディッシュ
2 溶融金属
3 ノズル
4 冷却ロール
5 カローゼル式巻取装置
6 巻取ロール
7 巻取ロール
8 非晶質薄帯
9 切断装置
A 設備移動方向
B 設備移動方向
D 設備移動方向
E 設備移動方向
F 設備移動方向
H 設備移動方向
P パスライン
S 巻取ロールと冷却ロールとの間隙
T 非晶質薄帯先端部分
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年10月10日(2006.10.10)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次

【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏

【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康


【公開番号】 特開2008−93680(P2008−93680A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−276620(P2006−276620)