トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 金属箔の製造方法
【発明者】 【氏名】川内 祐治

【要約】 【課題】箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔の製造方法において、例えば20μm以下の薄い金属箔を製造する際に生じ易い、剥離等の欠陥を抑制できる金属箔の製造方法を提供する。

【解決手段】箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔の製造方法であって、真空槽内において、第1の金属帯の一方の表面と第2の金属帯の一方の表面に、第1の金属帯及び第2の金属帯とはエッチング特性が異なり、第1の金属帯及び第2の金属帯より再結晶温度が低い乾式成膜金属層を付着形成した後、該乾式成膜金属層が第1の金属帯と、第2の金属帯との中間層となるようにロール圧着して第1の金属帯/中間層/第2の金属帯の構造を有する積層帯を得、該積層帯の中間層の乾式成膜金属層同士の接合層を拡散接合する拡散接合熱処理を行った後、積層帯の第1の金属帯と第2の金属帯とをエッチングにより除去し、箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔を得る金属箔の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔の製造方法であって、真空槽内において、第1の金属帯の一方の表面と、第2の金属帯と一方の表面に、第1の金属帯及び第2の金属帯とはエッチング特性が異なり、第1の金属帯及び第2の金属帯より再結晶温度が低い乾式成膜金属層を付着形成した後、該乾式成膜金属層が第1の金属帯と、第2の金属帯との中間層となるようにロールにより圧着して第1の金属帯/中間層/第2の金属帯の構造を有する積層帯を得、該積層帯の中間層の乾式成膜金属層同士の接合層を拡散接合する拡散接合熱処理を行った後、積層帯の第1の金属帯と第2の金属帯とをエッチングにより除去し、箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔を得ることを特徴とする金属箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
厚さの薄い金属箔を製造する方法として、圧延によって薄い金属を得る方法や、メッキ法、電解法などが知られている。中でも、例えば、本出願人も特開2002−224740号公報(特許文献1)として、真空槽内において、樹脂テープと、樹脂テープとの被接合表面の少なくとも一方の面側に乾式成膜金属層を付着形成した後、前記樹脂テープ同士を圧着接合して、樹脂テープの中間層に金属乾式成膜層が形成された積層帯とし、その後、前記金属乾式成膜層を挟み込む樹脂テープを剥離して金属箔を得る金属箔の製造方法を提案した。
【特許文献1】特開2002−224740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示した方法は、樹脂テープ/中間層(乾式成膜金属層同士の接合層)/樹脂テープといった積層帯を得た後、中間層のみを金属箔として用いることが可能というものである。この方法は、例えば電子機器の周辺材料として、20μm以下の非常に薄い金属箔を工業的に製造する方法として、従来にない画期的な製造方法である。
しかしながら、特許文献1の製造方法で金属箔を製造しようとすると、乾式成膜層が樹脂テープ表面を溶かし、樹脂テープ内に所謂アンカー効果を奏する形状で乾式成膜層が形成されてしまい樹脂テープから金属箔がうまく剥離できないという問題が生じる場合があった。また、樹脂テープは剛性が低いうえ、付着する高温の乾式成膜層により、樹脂テープの張力調整が難しく、乾式成膜金属層同士の圧着接合個所に斑が生じて接合不良が生じ、乾式成膜金属層の一部が剥離する場合もあり、更なる検討が必要となった。
本発明の目的は、箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔の製造方法において、例えば20μm以下の薄い金属箔を製造する際に生じ易い、変形、亀裂などの欠陥を抑制できる金属箔の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものである。
即ち本発明は、箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔の製造方法であって、真空槽内において、第1の金属帯の一方の表面と、第2の金属帯の一方の表面に、第1の金属帯及び第2の金属帯とはエッチング特性が異なり、第1の金属帯及び第2の金属帯より再結晶温度が低い乾式成膜金属層を付着形成した後、該乾式成膜金属層が第1の金属帯と、第2の金属帯との中間層となるようにロールにより圧着して第1の金属帯/中間層(乾式成膜金属層同士の接合層)/第2の金属帯の構造を有する積層帯を得、該積層帯の中間層の乾式成膜金属層同士の接合層を拡散接合する拡散接合熱処理を行った後、積層帯の第1の金属帯と第2の金属帯とをエッチングにより除去し、箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔を得る金属箔の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、金属箔に生じる変形、亀裂等の欠陥を抑制できる金属箔を提供することができる。特に20μm以下の非常に薄い金属箔においても欠陥を抑制した金属箔とすることが可能なため、電子機器の材料或いは、電子機器を製造する際の部品用の材料に用いることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔の製造方法について、図を用いて説明する。図1は本発明の金属箔の製造方法に用いる装置の一例を示す模式図である。
真空槽(1)内に備えられた金属帯巻出しリール(4)から第1の金属帯(2)と第2の金属帯(3)を巻出し、乾式成膜装置(5)を用いて巻出した第1の金属帯の一方の表面と、第2の金属帯の一方の表面の少なくとも一つの表面に乾式成膜金属層として付着形成する。
そして、圧着ロール(6)にて圧着して第1の金属帯/中間層(乾式成膜金属層同士の接合層)/第2の金属帯の構造を有する積層帯(8)を得る。
なお、圧着ロール(6)で圧着する直前の乾式成膜金属層は活性であり、第1,第2の金属帯にそれぞれ付着形成した乾式成膜金属層の活性面同士を圧着させることで、乾式成膜金属層同士の接合力を向上させた中間層(10)とし、更に中間層(10)の厚みのバラツキが抑えられ均一な厚さとし、更に、ロール圧下することにより乾式成膜金属層内や乾式成膜金属層同士の接合界面に残存するピンホールや空隙を押し潰すことができる。
なお、本発明においては、最終的に中間層(10)を金属箔とする。
【0007】
ところで、本発明では中間層となる乾式成膜金属層を金属材料の帯材表面に付着形成するため、中間層の材質を限定する必要がある。
本発明では、第1の金属帯及び第2の金属帯は最終的にエッチングにより除去するため、中間層の材質は第1の金属帯及び第2の金属帯とはエッチング特性が異なった材質とする必要がある。仮に第1の金属帯の材質と第2の金属帯の材質の何れかが中間層と同質であるならば、中間層をエッチングで得ることができなくなる。そのため、本発明では中間層の材質を第1の金属帯及び第2の金属帯とはエッチング特性が異なった材質とする。
なお、本発明で言うエッチング特性が異なるとは、第1の金属帯及び第2の金属帯を選択的にエッチングすることが可能なことを言う。例えば、第1,第2の金属帯をエッチングした時、中間層でエッチングがストップするか、或いは、第1,第2の金属帯のエッチング速度に対して、著しく遅くなれば、本発明で言うエッチング特性が異なるの範疇となる。
【0008】
そして更に、中間層の材質は、第1の金属帯及び第2の金属帯より再結晶温度が低い材質でなくてはならない。
本発明では、中間層の接合力をより一層向上させるために、積層帯の中間層を構成する乾式成膜金属層同士を拡散接合する拡散接合熱処理を必須とする。仮に、第1,第2の金属帯の材質の拡散温度が中間層の材質よりも低温であった場合、中間層内(乾式成膜金属層同士の接合界面での)の拡散よりも中間層と第1,第2の金属帯との拡散が進んで合金化してしまい、選択エッチによって中間層のみを得ることが困難となる。そのため、中間層を構成する乾式成膜金属層同士を拡散接合可能な拡散温度は、第1,第2の金属帯の材質の拡散温度よりも低くなくてはならない。
この拡散温度は実際に測定することは難しい。そこで、再結晶温度が低い金属材料は拡散温度も低いという本発明者の経験から、本発明では再結晶温度を規定した。なお、再結晶温度の測定は実測可能である。
【0009】
中間層を構成する乾式成膜金属層同士の接合は、ロール圧着しただけでは、第1の金属帯と中間層の間でも、第2の金属帯と中間層との間でも、更には中間層内の乾式成膜金層層同士の間でも接合力が弱いため、剥離等の不良を生じる場合がある。この対策として積層帯とした後、乾式成膜金属層同士の相互拡散を図り、乾式成膜金属層同士の接合力の向上を図る必要がある。
そこで本発明では圧着ロール(6)にて圧着して第1の金属帯/中間層/第2の金属帯の構造を有する積層帯(8)に対して、中間層を構成する乾式成膜金属層同士を拡散接合する拡散接合熱処理を行う。
図1の模式図では、拡散接合熱処理する加熱装置(7)を真空槽内(1)に設けているが、積層帯巻取りリール(9)で巻取った後に、別に設けたバッチ炉を利用するか、もしくは連続熱処理炉内を通板して拡散接合熱処理を行っても差し支えない。むしろ、別に設けた連続熱処理炉内で行うことで例えば不活性ガス中での均一な雰囲気熱処理も可能となることから、別に設けた連続熱処理炉内を通板して乾式成膜金属層同士を拡散接合する拡散接合熱処理することが好ましい。
なお、拡散接合熱処理の温度は、中間層の材質の再結晶温度+30℃〜第1,第2の帯材の再結晶温度−50℃の範囲であれば良い。
【0010】
そして、本発明では、拡散接合熱処理後の積層帯の第1の金属帯と第2の金属帯とをエッチングにより除去することで、中間層を箔全体が乾式成膜された金属でなる金属箔とすることができる。
本発明の第1の金属帯/中間層/第2の金属帯の材質の組合わせとしては、例えばFe−Cr合金/Ti/Fe−Cr合金、Fe−Cr−Ni合金/Ti/Fe−Cr−Ni合金、Fe−Ni−Co合金/Ti/Fe−Ni−Co合金等で、中間層をTi以外には例えばZr、V等とすることも可能である。中でも、従来法で最も製造が困難な、難加工性材料のTiの金属箔を得ることができるFe−Ni合金/Ti/Fe−Ni合金の組合わせは本発明の効果を最大限発揮できる。
なお、本発明の製造方法によれば、金属箔となる中間層の表裏面に第1,第2の金属帯が配されていることから、この第1,第2の金属帯をエッチングにより除去する際、第1,第2の金属帯の一部を残存させることも可能である。
【実施例】
【0011】
図1に示した積層帯製造装置を用いて、積層帯(8)を製造した。なお、今回は第1,第2の金属帯(2)(3)として、電子部品に良く使用される36mass%Ni−Fe合金を2コイル用意した。第1,第2の金属帯が過度に厚ければエッチングで除去するのに時間を要する。一方、板厚が薄すぎると金属帯材の圧延形状及び表面形状の調整が難しくなる。特に中間層の表面形状は、金属帯材の表面形状が転写されることから、表面形状の調整が可能で、且つエッチング除去時間を短時間とするに好ましい20〜100μm程度の厚さの金属帯を用意するのが好ましく、本実施例においては50μmの厚さのものを用いた。再結晶温度は650℃であった。
中間層(10)にはメッキでは形成が難しく、蒸着法(乾式成膜法)で実績のあるTiを用意した。なお、Tiは、第1の金属帯及び第2の金属帯の36mass%Ni−Fe合金のエッチング液(塩化第二鉄溶液)に対して、エッチングをストップさせることが可能なエッチング特性が異なる材質である。そして、再結晶温度は約400℃であり、第1の金属帯及び第2の金属帯より再結晶温度が低い金属材料である。
【0012】
真空度を5×10−3Pa以下に保持した真空槽(1)内に備えられた金属帯巻出しリール(4)に36mass%Ni−Fe合金の第1の金属帯(2)と第2の金属帯(3)をセットし、金属帯巻出しリール(4)から第1,第2の金属帯を巻出し、圧着ロール(6)上を通板する際に乾式成膜装置(5)を用いて電子線加熱によりTiを蒸着させ、巻出した第1の金属帯の一方の表面と、第2の金属帯の一方の表面の被接合面表面に乾式成膜金属層を付着形成して、圧着ロール(6)にて圧着して第1の金属帯(2)/中間層(乾式成膜金属層同士の接合層)(12)/第2の金属帯(3)の構造を有する積層帯(8)として、積層帯巻取りリール(9)によって巻取った。なお、中間層(10)のTiの厚みは3μmとした。
次に、上記の積層帯の中間層を構成する乾式成膜金属層同士を拡散接合する拡散接合熱処理を行った。なお、拡散接合熱処理は、図1に示した積層帯製造装置とは別の熱処理炉にて実施し、熱処理温度は450℃とし、Tiの水素吸収を防止するため、炉の雰囲気は不活性ガス雰囲気中とした。出来上がった第1の金属帯/中間層/第2の金属帯の三層構造の積層帯(8)の断面顕微鏡写真とその模式図を図2に示す。
更に、この三層構造の積層帯の第1,第2の金属帯を塩化第二鉄溶液でエッチング除去し、箔全体が乾式成膜された金属でなるTi金属箔を得た。この時、剥離等の欠陥は見られなかった。Ti金属箔の光学顕微鏡写真と拡大した電子顕微鏡写真を図3に示す。第1,第2の金属帯をエッチング除去した表面はTiのみが露出していることが分かる。
【0013】
次に比較例として、第1,第2の金属帯の代わりに、特許文献1に記される樹脂テープを用いて第1の樹脂テープ/中間層(乾式成膜金属層同士の接合層)/第2の樹脂テープの構造を有する積層帯を製造した。製造条件、中間層の材質等は上記の実施例と同じとした。
比較例積層帯から中間層を得るために樹脂テープの剥離を試みたが、張力調整が難しく、樹脂テープと中間層の接合力の強い個所や、中間層内で接合力の強い個所や弱い個所が存在していると考えられる、金属箔の一部が剥離する不良が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によると、従来方法では製造が困難であった難加工材の金属箔を20μm以下という薄い箔として製造できるため、例えば電子機器の周辺材料への適用が期待できる。
また、金属箔となる中間層の表裏面に第1,第2の金属帯が配されていることから、この第1,第2の金属帯をエッチングにより除去する際、第1,第2の金属帯の一部を残存させ、各種部品、治具として用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の金属箔の素材となる積層材を製造する装置の一例を示す模式図である。
【図2】第1の金属帯/中間層(乾式成膜金属層)/第2の金属帯の三層構造の積層帯の断面顕微鏡写真である。
【図3】Ti金属箔の表面顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0016】
1.真空槽、
2.第1の金属帯、
3.第2の金属帯、
4.金属帯巻出しリール、
5.乾式成膜装置、
6.圧着ロール、
7.加熱装置、
8.積層帯、
9.積層帯巻取りリール、
10.中間層(乾式成膜金属層同士の接合層)
【出願人】 【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
【出願日】 平成18年10月10日(2006.10.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−93677(P2008−93677A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−276603(P2006−276603)