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【発明の名称】 溶接部特性の良好な電縫管製造方法
【発明者】 【氏名】剣持 一仁

【氏名】横山 泰康

【氏名】岡部 能知

【氏名】鈴木 雅仁

【氏名】坂下 重人

【要約】 【課題】溶接部特性(特に低温靭性)を確実かつ充分に向上させうる、溶接部特性の良好な電縫管製造方法を提供する。

【解決手段】帯材110を成形して端部を突き合わせ、該端部を電縫溶接して管とする過程の中で、電縫溶接前の前記端部に孔型ロール14での圧延にてテーパ形状を付与しておき、電縫溶接の加熱を受けつつある前記端部に非酸化性ガスを吹き付ける。好ましくは、当該端部の周囲を非酸化性ガス雰囲気に保つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯材を成形して端部を突き合わせ、該端部を電縫溶接して管とする過程の中で、電縫溶接前の前記端部に、孔型ロール圧延によりテーパ形状を付与しておき、電縫溶接の加熱を受けつつある前記端部に非酸化性ガスを吹き付けることを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
【請求項2】
帯材を成形して端部を突き合わせ、該端部を電縫溶接して管とする過程の中で、電縫溶接前の前記端部に、孔型ロール圧延によりテーパ形状を付与しておき、電縫溶接中の加熱を受けつつある前記端部の周囲を非酸化性ガス雰囲気に保つことを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
【請求項3】
前記非酸化性ガスとして、還元性ガスを含むガスを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
【請求項4】
前記テーパ形状を、テーパ面の帯材幅方向端面に対する角度が25〜50度、テーパ面の帯材厚み方向長さが帯材厚みの20〜40%であるテーパ形状とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部特性の良好な電縫管の製造方法に関し、特に、油井ラインパイプ向けなどの溶接部の靭性が要求される管あるいは油井のケーシングパイプなどの溶接部強度が要求される管の製造に好ましく用いうる、溶接部特性の良好な電縫管製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、電縫鋼管を例とするように、帯材の幅を丸めて端部を突き合わせて溶接して製造し、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔しマンドレルミル等で圧延して製造する。溶接管の場合、一般に溶接部の特性は母材より劣ると言われ、管の適用に当たって、用途ごとに溶接部の靭性や強度の保証が常に議論されて問題となってきた。
【0003】
例えば、原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプでは、管を寒冷地に敷設することが多いため低温靭性が重要であり、また、原油採掘の油井では採掘管を保護するためのケーシングパイプが必要とされ、管の強度が重要視される。
また、通常、管の母材となる熱延板は、管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われて、母材の靭性や強度等の特性が確保される。
【0004】
しかし、溶接部の特性は、母材の成分設計や熱処理等以上に、電縫溶接方法によって大きく左右されるため、溶接技術の開発が重要であった。
電縫溶接の不良原因としては、溶接板材の端面に生成するペネトレータと呼ばれる酸化物が、電縫溶接時に溶鋼とともに端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータを原因として靭性が低下したり強度不足になる例が多かった。
【0005】
そこで、従来技術として電縫溶接不良の主原因であるペネトレータを溶接部から除くため、溶接部の板端面から積極的に溶鋼を排出する技術が鋭意検討されてきた。例えば、特許文献1〜4などに、板端面の形状について検討した例が記載されている。
また、特許文献5には、電縫管の溶接時における板条材の両側縁部の突き合わせ圧力の調整を容易にし、溶接信頼性を高める目的で、板幅端部を種々の形状に面取り加工する旨記載されている。
【特許文献1】特開昭57-31485号公報
【特許文献2】特開昭63-317212号公報
【特許文献3】特開2001-170779号公報
【特許文献4】特開2003-164909号公報
【特許文献5】特開2001-259733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4は、いずれも帯材端部にテーパを付与して、溶鋼とともにペネトレータを排出することを意図している。テーパを付与する理由は、帯材端部に形状を与えやすいためと考えられる。しかし、単に、直線あるいは平面状のテーパを与えるのでは、溶接部特性(特に低温靭性)の改善効果が充分でない場合があり、さらに詳細な検討が必要であった。
【0007】
また、特許文献5には、突き合わせ圧力の調整を容易にする種々の面取り形状が開示されているものの、溶鋼とともにペネトレータを排出する点、およびそれにより溶接部特性(特に低温靭性)を改善する点については、一切記載がないから、そこに開示されている多種多様な面取り形状のうち、いずれの形状が溶接部特性(特に低温靭性)を改善しうるものなのか、全く不明である。
【0008】
そこで、本発明は、溶接部特性(特に低温靭性)を確実かつ充分に向上させうる、溶接部特性の良好な電縫管製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討し、以下の要旨構成になる本発明に想到した。
1. 帯材を成形して端部を突き合わせ、該端部を電縫溶接して管とする過程の中で、電縫溶接前の前記端部に、孔型ロール圧延によりテーパ形状を付与しておき、電縫溶接の加熱を受けつつある前記端部に非酸化性ガスを吹き付けることを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
【0010】
2. 帯材を成形して端部を突き合わせ、該端部を電縫溶接して管とする過程の中で、電縫溶接前の前記端部に、孔型ロール圧延によりテーパ形状を付与しておき、電縫溶接中の加熱を受けつつある前記端部の周囲を非酸化性ガス雰囲気に保つことを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
3. 前記非酸化性ガスとして、還元性ガスを含むガスを用いることを特徴とする前項1または2のいずれかに記載の溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
【0011】
4. 前記テーパ形状を、テーパ面の帯材幅方向端面に対する角度が25〜50度、テーパ面の帯材厚み方向長さが帯材厚みの20〜40%であるテーパ形状とすることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の溶接部特性の良好な電縫管製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電縫管の溶接部特性(特に低温靭性)を確実に従来レベルよりも向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
従来、電縫溶接部の靭性または強度を向上させるため、ロール成形前に帯材の端部にテーパを付与していたが、より具体的に明示されていなかったため、これらの方法だけでは充分な効果が得られにくい場合が多々生じていた。
そこで、所望のテーパ形状を得るために、発明者らは、孔型ロールを用いた圧延(すなわち孔型ロール圧延)による方法を検討した。孔型ロールを用いると、帯材端部の形状がその孔型に従って精度良く得られやすいことによる。特に、テーパを精度良く付与するには稼動中に帯材を拘束する必要があるのに対して、ロール成形前またはロール成形前段では帯材端部のばたつきが大きくて、テーパを付与することが難しかった。しかし、孔型ロールを活用することによって、帯材端部を拘束しつつ効率良くテーパを付与可能である。また、設備が比較的小型で良いことから、電縫溶接前において、ロール成形の前やロール成形の途中に設置することが容易である。
【0014】
もっとも、前記孔型ロール圧延によるテーパ形状付与のみでは、電縫溶接後の溶接部の靭性または強度を十分に向上させるのが難しい場合があった。
この原因を詳細に調査すると、電縫溶接時の圧接(アプセット)前に帯材端部が加熱されていく段階で、溶接欠陥であるペネトレータの原因となる酸化物が帯材端面に形成される。この酸化物は、帯材端部が溶融する段階で該溶融した溶鋼表面に浮き、圧接の段階で、一部は溶鋼とともに排出される。この際に、帯材端面にテーパ形状が付与されていると、溶鋼が容易に排出されて、同時にペネトレータも有効に排出できるわけである。
【0015】
しかし、ペネトレータの元になる帯材端面の酸化物は、電縫溶接の加熱とともに順次生成してくるため、溶接条件によっては、帯材端部のテーパ形状のみでは、溶接後の靭性または強度を充分に向上できない場合が生じた。
そこで、本発明者らは電縫溶接現象を詳細に観察し直した結果、ペネトレータの原因となる酸化物の生成に着目した。すなわち、帯材端部のテーパ形状によるペネトレータの排出だけでなく、ペネトレータの原因となる酸化物の生成を防止する方法を検討した。
【0016】
その結果、電縫溶接の加熱(すなわち圧接前に被圧接端部を溶融させるための加熱)を受けつつある帯材端部に向かって、非酸化性ガスを吹き付けると、酸化物の生成を抑制できることを把握した。ここで、非酸化性ガスとは、不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、キセノンガス等、もしくはこれらの2種以上を混合してなる混合ガス)、還元性ガス(水素ガス、一酸化炭素ガス、メタンガス、プロパンガス等、もしくはこれらの2種以上を混合してなる混合ガス)、またはこれらを混合してなる混合ガスを意味する。
【0017】
つまり、本発明では、電縫溶接前の帯材端部にテーパ形状を付与しておくことで、ペネトレータの排出を促進し、それとともに、電縫溶接中の加熱を受けつつある板端部に非酸化性ガスを吹き付けることで、ペネトレータの原因となる酸化物の生成を抑制する。これにより、溶接部の靭性または強度を確実に従来レベルよりも向上させることができる。
もっとも、非酸化性ガスを吹き付けるだけでは、周辺の空気を巻き込むために、板端部での酸化物生成を抑制する効果が多かれ少なかれ弱められる。そこで、周辺の空気の巻き込みをなくすことが好ましく、それには、電縫溶接の加熱を受けつつある板端部を囲ってその囲いの内部を非酸化性ガス雰囲気に保つのがよい。
【0018】
また、非酸化性ガスのうちでも、還元性ガスを含むガスを用いる方が、ペネトレータの原因となる酸化物の生成を抑制する効果がより強くなり、溶接部の靭性または強度を、より大きく向上させることができる。
また、入手容易性および廉価性の点からは、非酸化性ガスとして、次のガスを用いることが好ましい。
・不活性ガス単独使用の場合:(A)窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスのいずれかもしくはこれらの2種以上の混合ガス
・還元性ガス単独使用の場合:(B)水素ガス、一酸化炭素ガスのいずれかもしくはこれら2種の混合ガス
・不活性ガスと還元性ガスの混合ガス使用の場合:前記(A)と(B)の混合ガス
なお、特に、水素ガスおよび/または一酸化炭素ガスを含むガスを使用する場合、遺漏なき安全対策をとるべきことはいうまでもない。
【0019】
また、テーパ形状について最適化を図った結果、帯材の幅方向にほぼ垂直な(幅方向と90度±0.4度以内の角度をなす)端面の平均的な面に対する傾斜面の角度(テーパ角度という)αおよび傾斜面の帯材厚み方向長さ(テーパ深さという)βに適正範囲が存在すること、すなわちテーパ角度αを25〜50度の範囲とし、テーパ深さβを帯材厚みの20〜40%の範囲とすると良いことを把握した。なお、図2に、帯材110端部の管外径側にテーパ形状を付与する場合の傾斜面12のテーパ角度αとテーパ深さβを示した。管内径側または管内外両径側にテーパ形状を付与する場合のテーパ角度αとテーパ深さβの図示は省略する。
【0020】
テーパ角度を25度未満とすると帯材厚み中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留して、電縫溶接後の靭性や強度が低下しやすく、一方、テーパ角度を50度超えとすると、電縫溶接後にそのテーパ形状が製品管の疵として残留しやすい。また、テーパ深さを帯材厚みの20%未満とすると、帯材厚み中央部の溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、一方、テーパ深さを帯材厚みの40%超とすると、電縫溶接後にそのテーパ形状が製品管の疵として残留しやすくなる。
【実施例】
【0021】
実施例では、板幅1920mm×板厚19.1mmの鋼帯からなる帯材を、図1に示すような造管機すなわちアンコイラー1、レベラー2、ロール成形機4(複数スタンドのフィンパス成形(フィンパスロールスタンド)3を含む)、電縫溶接機(コンタクトチップ5、スクイズロール7を含む)、ビード部切削手段8、サイザー9、管切断機10からなる造管機において孔型ロール14をブレークダウン第1ロール4A出側直近に設置したものに通して、外径600mmの鋼管を製造するにあたり、製造条件を以下の4通りに違えて製造した。
【0022】
(No.1:本発明例) 前記孔型ロール14による圧延にて帯材端部の管内外両径側にそれぞれほぼ直線状のテーパ形状を付与(テーパ角度α、テーパ深さβは表1に示す値に設定)し、図3に示す実施形態で、電縫溶接加熱(コンタクトチップ5からの通電加熱)を受けつつある帯材110端部に、ガス供給ノズル6から窒素ガスを吹き付けた。なお、図3において、20は帯材110(溶接後は管11になる)の通材方向であり、スクイズロールの図示は省略した。
【0023】
(No.2:本発明例) 前記孔型ロール14をブレークダウン第1ロール4A出側直近からレベラー2出側直近へ設置変更したもの(図示省略)による圧延にて帯材端部の管内外両径側にそれぞれほぼ直線状のテーパ形状を付与(テーパ角度α、テーパ深さβは表1に示す値に設定)し、図4に示す実施形態で、通材方向20に送られながら電縫溶接加熱(コンタクトチップ5からの通電加熱)を受けつつある帯材110端部を、ガス雰囲気ボックス13で囲い、該ボックス内を、3%水素ガス+残部アルゴンガスの雰囲気に保った。なお、図4において、20は帯材110(溶接後は管11になる)の通材方向であり、スクイズロールの図示は省略した。
【0024】
(No.3:比較例) No.2と同じ設置箇所の孔型ロール14による圧延にて帯材端部の管内外両径側にそれぞれほぼ直線状のテーパ形状を付与(テーパ角度α、テーパ深さβは表1に示す値に設定)し、電縫溶接の加熱を受けつつある帯材端部は大気中にさらしたままとした。
(No.4:従来例) 帯材端部形状はほぼ矩形状(長方形の長さ端部形状)のままとし、電縫溶接加熱を受けつつある帯材端部は大気中にさらしたままとした。
【0025】
上記4通りの条件で製造した鋼管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片として、管長手方向の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向にとり、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置にとって採取した、JIS 5号の2mmVノッチ衝撃試験片を用いて、試験片温度−46℃で衝撃試験を行い、吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギー:125J以上、脆性破面率:35%以下を性能許容範囲とした。その結果を表1に示す。
【0026】
表1より、本発明例では、溶接部の衝撃強度(吸収エネルギー)が著しく高く脆性破面率が小さくて、靭性が良好であって製品の信頼性が高いが、これに比べて、比較例および従来例では、溶接部の衝撃強度(吸収エネルギー)が低く脆性破面率が大きくて、靭性が低下しており、製品の信頼性に乏しかった。
【0027】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施に用いられる造管機の1例を示す模式図である。
【図2】本発明に従いフィンパス成形により帯材端部にテーパ形状を付与する実施形態の1例を示す模式図である。
【図3】本発明に従い電縫溶接加熱を受けつつある帯材端部に非酸化性ガスを吹き付ける実施形態の1例を示す模式図である。
【図4】本発明に従い電縫溶接加熱を受けつつある帯材端部の周囲を非酸化性ガス雰囲気に保つ実施形態の1例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 アンコイラー
2 レベラー
3 フィンパス成形(フィンパスロールスタンド)
4 ロール成形機
4A ブレークダウン第1スタンド
5 コンタクトチップ
6 ガス供給ノズル
7 スクイズロール
8 ビード部切削手段
9 サイザー
10 管切断機
11 管
12 傾斜面
13 ガス雰囲気ボックス
14 孔型ロール(テーパ付与用)
20 通材方向
110 帯材
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年10月2日(2006.10.2)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一


【公開番号】 特開2008−87022(P2008−87022A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−270272(P2006−270272)