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【発明の名称】 鋼帯巻き取り機
【発明者】 【氏名】降旗 勤

【氏名】野尻 良一

【要約】 【課題】塗油ノズルと押えロールとを用いて鋼帯の表面に油を塗油するに当たり、押えロールが巻き取り用リールの凹凸部を乗り越えた際にも、押えロールを始めとして構成機器全体の振動を抑制することができる鋼帯巻き取り機を提供する。

【構成】上記課題を解決するための鋼帯巻き取り機は、鋼帯2をコイル状に巻き取る巻き取り用リール4と、鋼帯表面に向けて油を噴射するための複数の塗油ノズル9と、巻き取られるコイル状鋼帯3の外周部に押し付けられ、前記塗油ノズルから鋼帯表面に向けて噴射された油を鋼帯表面で均一化するための押えロール5と、を備えた鋼帯巻き取り機1であって、前記押えロールは、コイル状鋼帯の巻き太り及び巻き取り用リールの段差に追従して退避できるように、押えロールの押し付け方向に緩衝機能を有しており、且つ、前記塗油ノズルは、前記押えロールを保持するためのフレーム6に設置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯をコイル状に巻き取るための巻き取り用リールと、前記鋼帯表面に向けて油を噴射するための複数の塗油ノズルと、前記巻き取り用リールで巻き取られるコイル状鋼帯の外周部に押し付けられ、前記塗油ノズルから鋼帯表面に向けて噴射された油を鋼帯表面で均一化するための押えロールと、を備えた鋼帯巻き取り機であって、前記押えロールは、コイル状鋼帯の巻き太り及び巻き取り用リールの段差に追従して退避できるように、押えロールの押し付け方向に緩衝機能を有しており、且つ、前記塗油ノズルは、前記押えロールを保持するためのフレームに設置されていることを特徴とする鋼帯巻き取り機。
【請求項2】
前記押えロールは油圧シリンダーにより作動し、該油圧シリンダーの油圧回路には、前記緩衝機能としてのリリーフ弁が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の鋼帯巻き取り機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、酸洗処理やメッキ処理などが施された鋼帯に防錆油などの油を塗油しながら鋼帯を巻き取るための鋼帯巻き取り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル状に巻かれた鋼帯の酸洗処理などにおいては、コイル状の鋼帯は一旦巻き戻されて連続的に酸洗槽などの処理槽に供給され、処理槽にて所定の処理が施された鋼帯は鋼帯巻き取り機によって再度コイル状に巻き取られ、かくして鋼帯に所定の処理が行われている。この場合、鋼帯の防食などのために、再度コイル状に巻き取る際に鋼帯表面に防錆油などの油が塗油される場合がある。
【0003】
鋼帯に油を塗油する手段としては、(1):巻き取り機の前工程に塗油ノズルなどを備えた塗油手段を設置し、鋼帯に均一な油膜を形成した後に巻き取り機で巻き取る方法(例えば、特許文献1参照)、及び、(2):鋼帯を巻き取り機で巻き取る際に巻き取られる鋼帯の表面に、或いは、巻き取られる鋼帯の外周部に押し付けられた押えロールの表面に塗油ノズルから油を吹き付け、この油を前記押えロールによって分散・均一化する方法(例えば特許文献2参照)が採用されている。尚、塗油された油を鋼帯表面で均一に分布させることを「油のならし」という。
【0004】
上記(1)の方法と上記(2)の方法とを比較すると、巻き取り機で巻き取る際に塗油する(2)の方法は、塗油装置全体を小さくすることができるという利点と、塗油装置と塗油材である鋼帯との接触範囲を狭い空間に抑えることができ、その結果、ラインへの油付着を最小範囲に抑えることができるという利点とを備えており、広く採用されている。
【0005】
しかしながら、塗油ノズルと押えロールとを用いて塗油する従来の方法では、押えロールが緩衝機能を備えておらず、この緩衝機能を持たない押えロールを巻き取られる鋼帯のコイル外周に押し付けるので、押えロールが巻き取り用リールのセグメント間隙或いはグリップ部などの凹凸部を乗り越えるときに、押えロールが振動するのみならず、鋼帯巻き取り機を構成する機器全体が大きく振動する。この振動により、設備の破損或いは塗油面の不均一が発生する。また、この振動により、巻き取り速度を10m/分以上に上げることができず、低能率の操業を余儀なくされていた。
【特許文献1】特開平11−267746号公報
【特許文献2】実開平1−151869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、塗油ノズルと押えロールとを用いて、鋼帯巻き取り機で巻き取られる鋼帯の表面に防錆油などの油を塗油するに当たり、押えロールが巻き取り用リールのセグメント間隙或いはグリップ部などの凹凸部を乗り越えた際にも、押えロールを始めとして鋼帯巻き取り機を構成する機器全体の振動を抑制することができ、その結果、設備の破損或いは塗油面の不均一を防止するとともに、巻き取り速度を従来に比べて増速することのできる鋼帯巻き取り機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明に係る鋼帯巻き取り機は、鋼帯をコイル状に巻き取るための巻き取り用リールと、前記鋼帯表面に向けて油を噴射するための複数の塗油ノズルと、前記巻き取り用リールで巻き取られるコイル状鋼帯の外周部に押し付けられ、前記塗油ノズルから鋼帯表面に向けて噴射された油を鋼帯表面で均一化するための押えロールと、を備えた鋼帯巻き取り機であって、前記押えロールは、コイル状鋼帯の巻き太り及び巻き取り用リールの段差に追従して退避できるように、押えロールの押し付け方向に緩衝機能を有しており、且つ、前記塗油ノズルは、前記押えロールを保持するためのフレームに設置されていることを特徴とするものである。
【0008】
第2の発明に係る鋼帯巻き取り機は、第1の発明において、前記押えロールは油圧シリンダーにより作動し、該油圧シリンダーの油圧回路には、前記緩衝機能としてのリリーフ弁が設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押えロールが押えロールの押し付け方向に緩衝機能を有しているので、押えロールが巻き取り用リールのセグメント間隙或いはグリップ部などの凹凸部を乗り越えた際にも、押えロールを始めとして鋼帯巻き取り機を構成する機器全体の振動を抑制することができ、その結果、設備の破損或いは塗油面の不均一を防止するとともに、巻き取り速度を従来に比べて増速することが可能となる。また、押えロールを保持するフレームに複数の塗油ノズルが配置されているので、塗油作業と油のならし作業とを近接させて行うことができ、これによりラインへの油飛散を最小範囲に抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明に係る鋼帯巻き取り機の概略図である。
【0011】
本発明に係る鋼帯巻き取り機1は、酸洗処理やメッキ処理などの施された鋼帯2を巻き取ると同時に、巻き取られる鋼帯2の表面に防錆油などの油を塗油するための装置であり、図1に示すように、鋼帯2をコイル状鋼帯3として巻き取るための巻き取り用リール4と、鋼帯2の表面に向けて油を噴射するための複数個の塗油ノズル9と、巻き取られる鋼帯2の表面に押し付けられ、塗油ノズル9から噴射された油を鋼帯2の表面で分散・均一化するための押えロール5とを備えている。
【0012】
巻き取り用リール4は、電動機(図示せず)と連結されていて、電動機によって回転するように構成されている。巻き取り用リール4は、図2に、巻き取り用リール4を拡大して示すように、複数のリールセグメント13で構成され、隣り合うリールセグメント13のセグメント間隙13Aは凹部となっている。また、巻き取り用リール4には、鋼帯2の端部を挟んで固定するためのグリッパー14が設置されている。
【0013】
押えロール5は、フレーム6の一方の端部に設置されていて、押えロール5のロール軸7を介して回転可能にフレーム6に保持されている。このフレーム6の長さ方向中央部よりも押えロール5を配置した側とは反対側の端部寄りの位置には軸受10が設けられ、軸受10は基礎架台(図示せず)に設けられた固定軸10Aと回転可能に嵌合している。また、フレーム6の押えロール5を設置した側とは反対側の端部には連結部11が設けられ、この連結部11には、油圧シリンダー8のシリンダーロッド8Aが回転可能に嵌合している。この油圧シリンダー8は、固定点12を介して基礎架台に回転可能に保持されている。つまり、フレーム6は、油圧シリンダー8の作動によって、固定軸10Aを回転軸として回転可能に構成されている。図1に示す構成では、シリンダーロッド8Aを伸張するように油圧シリンダー8を作動させることで、フレーム6の他方の端部に配置した押えロール5が巻き取り用リール4の側に向かって移動するように構成されている。
【0014】
油圧シリンダー8の油圧回路には、押えロール5に、押えロール5の押し付け方向の緩衝機能を持たせるために、つまり、コイル状鋼帯3の巻き太り及び巻き取り用リール4の段差に追従して押えロール5を退避させるために、リリーフ弁15が設置されている。リリーフ弁15は、図1に示すように、油圧シリンダー8のヘッド側の油圧配管回路に設置されており、巻き取り用リール4で鋼帯2を巻き取る際に、コイル状鋼帯3の表面の凹凸状態に応じて油圧作動油をリリーフ弁15から逃がし、コイル状鋼帯3の巻き太り及び段差乗り越え時の緩衝を担っている。
【0015】
つまり、通常、図1に示すa方向に油圧作動油が作動し、押えロール5は油圧作動油の圧力に応じた押し付け力でコイル状鋼帯3に接触しているが、コイル状鋼帯3の表面の凸部を乗り越える際には、この凸部により押えロール5が、コイル状鋼帯3の中心方向とは逆向きの方向に押し出され、これにより油圧シリンダー8のヘッド側の圧力が上昇し、上昇した圧力がリリーフ弁15のリリーフ圧に達した段階で油圧作動油が、図1に示すb方向へ流れてタンク16に戻る。これにより、押えロール5がコイル状鋼帯3から退避するので、凸部乗越え時の衝撃を緩衝することができる。コイル状鋼帯3の巻き太りの場合も、同様に、押えロール5がコイル状鋼帯3の中心方向とは逆向きの方向に押し出され、油圧シリンダー8のヘッド側の圧力が上昇し、圧力がリリーフ弁15のリリーフ圧に達した段階で、油圧作動油が図1に示すb方向へ流れてタンク16に戻り、コイル状鋼帯3の巻き太りの緩衝をしている。図1中の符号17は電磁切替弁、18は油圧ポンプである。
【0016】
この場合、退避方向に対するフレーム6の剛性を大きくしておくことが好ましい。退避方向に対するフレーム6の剛性を大きくしておくことで、退避を容易に行える利点があるからである。
【0017】
フレーム6の押えロール5を設置した端部側には、巻き取られる鋼帯2に対して押えロール5よりも上流側の位置に、複数個の塗油ノズル9が鋼帯2の幅方向に並んで配置されている。各々の塗油ノズル9は油配管(図示せず)に接続し、油配管オイルはポンプ(図示せず)に連通している。
【0018】
図1に示す押えロール5には、押えロール5を駆動するための駆動装置は設置されておらず、押えロール5はコイル状鋼帯3に押し当てられ、巻き取られるコイル状鋼帯3と接触することで回転するように構成されている。このように、図1に示す押えロール5は非駆動方式であるが、駆動方式としても構わない。図1では、設備の簡素化を目的として非駆動方式としている。但し、非駆動方式の場合、高速域での巻き取り時に鋼帯2と押えロール5との間でスリップの発生が懸念される。つまり、油のならし作業が安定しない恐れがある。このような場合には、塗油ノズル9に油を供給するためのポンプとして精密ギアポンプなどを採用し、塗油面積当たりの塗油量を一定に制御したり、押えロール5の表層部にクレープ加工を行うなどしてスリップを防止したりすることが好ましい。
【0019】
このようにして本発明に係る鋼帯巻き取り機1が構成されている。この構成の本発明に係る鋼帯巻き取り機1を用いて鋼帯2を巻き取るに際し、先ず、鋼帯2の端部を巻き取り用リール4に設置されたグリッパー14で挟み、且つ、油圧シリンダー8を作動させることによって押えロール5を巻き取り用リール4の外周に接触させ、次いで、巻き取り用リール4を図1に示す矢印方向に回転させて、鋼帯2の巻き取りを開始する。鋼帯2の巻き取り開始に伴って塗油ノズル9から鋼帯2に向けて油を噴射する。
【0020】
この巻き取り時における押えロール5の動きを以下に説明する。
【0021】
図2は、巻き取り開始時の状態を示す図であって、押えロール5が、リールセグメント13に接触した状態を表す概略図である。この場合には、押えロール5とリールセグメント13との接触部には凹凸がないので、押えロール5は位置を保持しており、作動油の流れはない。
【0022】
図3は、押えロール5が、グリッパー14に挟まれた鋼帯2の突出部に接触した状態を表す概略図である。押えロール5がグリッパー14に挟まれた鋼帯2の突出部に乗り上げると、突出部によって押えロール5が巻き取り用リール4の中心方向とは逆向きの方向に押し出されるので、油圧シリンダー8のヘッド側圧力が上昇し、この圧力がリリーフ弁15のリリーフ圧に達した段階で、油圧作動油が図1に示すb方向へ流れてタンク16に戻る。これにより、押えロール5が巻き取り用リール4から退避し、凸部乗越え時の衝撃が緩衝される。そのために、押えロール5及び巻き取り用リール4には振動が発生しない。
【0023】
図4は、押えロール5が、グリッパー14に挟まれた鋼帯2の突出部と、巻き取り用リール4のセグメント間隙13Aとの中間地点である、平滑な鋼帯に接触した状態を表す概略図である。この場合には、押えロール5と鋼帯2との接触面には凹凸がないので、油圧作動油の流れはなく、押えロール5は巻き取り用リール4の方向に向けて一定圧力で押し付けられている。
【0024】
図5は、押えロール5が、巻き取り用リール4のセグメント間隙13Aの凹部に接触した状態を表す概略図である。巻き取り用リール4のセグメント間隙13Aは凹部であり、押えロール5がセグメント間隙13Aの凹部に差しかかった時点で油圧作動油が図1に示すa方向に流れて、押えロール5を巻き取り用リール4の側に押し込み、鋼帯2と押えロール5との接触が維持される。セグメント間隙13Aからリールセグメント13へと移る際には、前述した図3の場合と同様に、図1に示すb方向に油圧作動油が流れて、押えロール5が退避する。そのために、押えロール5及び巻き取り用リール4には振動は発生しない。
【0025】
また、コイル状鋼帯3が巻き太る際には、押えロール5がコイル状鋼帯3の中心方向とは逆向きの方向に押し出されるので、油圧シリンダー8のヘッド側圧力が上昇し、この圧力がリリーフ弁15のリリーフ圧に達した段階で、油圧作動油が図1に示すb方向へ流れてタンク16に戻る。つまり、コイル状鋼帯3が巻き太る過程においても、押えロール5及び巻き取り用リール4には振動は発生しない。
【0026】
コイル状鋼帯3が巻き太り、所定のサイズとなり巻き取りを完了するまで、これらの動作を繰り返し実施する。
【0027】
このように、本発明によれば、押えロール5が押えロールの押し付け方向に緩衝機能を有しているので、押えロール5が巻き取り用リール4のセグメント間隙13A或いはグリッパー14などの凹凸部を乗り越えた際にも、押えロール5を始めとして鋼帯巻き取り機1の全体の振動を抑制することができ、その結果、設備の破損或いは塗油面の不均一を防止するとともに、巻き取り速度を従来に比べて大幅に増速することが可能となる。具体的には50m/分程度まで巻き取り速度を増速することが可能となる。
【0028】
また、押えロール5を保持するフレーム6に全ての塗油ノズル9が配置されているので、塗油作業と油のならし作業とを近接させて行うことができ、これによりラインへの油飛散を最小範囲に抑えることが可能となる。
【0029】
尚、本発明は上記説明の範囲に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記説明では油圧シリンダー8がフレーム6の鉛直方向下方に配置されているが、鉛直方向上方に配置するように、全体の配置を変更しても構わない。また、油圧シリンダー8の動作の方向を、固定軸10Aを配置することによって変換しているが、固定軸10Aを設置せずに、油圧シリンダー8の作動方向を押えロール5の押し付け方向としても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る鋼帯巻き取り機の概略図である。
【図2】本発明に係る鋼帯巻き取り機において、押えロールが、リールセグメントに接触した状態を表す概略図である。
【図3】本発明に係る鋼帯巻き取り機において、押えロールが、グリッパーに挟まれた鋼帯の突出部に接触した状態を表す概略図である。
【図4】本発明に係る鋼帯巻き取り機において、押えロールが、平滑な鋼帯に接触した状態を表す概略図である。
【図5】本発明に係る鋼帯巻き取り機において、押えロールが、セグメント間隙の凹部に接触した状態を表す概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1 鋼帯巻き取り機
2 鋼帯
3 コイル状鋼帯
4 巻き取り用リール
5 押えロール
6 フレーム
7 ロール軸
8 油圧シリンダー
8A シリンダーロッド
9 塗油ノズル
10 軸受
10A 固定軸
11 連結部
12 固定点
13 リールセグメント
14 グリッパー
15 リリーフ弁
16 タンク
17 電磁切替弁
18 油圧ポンプ
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年8月21日(2006.8.21)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎

【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘


【公開番号】 特開2008−43995(P2008−43995A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−223983(P2006−223983)