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【発明の名称】 ダイスの設計方法、ダイス、中空パネルの製造方法及び中空パネル
【発明者】 【氏名】栄 輝

【要約】 【課題】良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを形成する。

【構成】本発明によるダイス24の設計方法では、中空パネル1において溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの平均値に対する溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まるように、各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材を分流させる複数の入側ポートと、この各入側ポートを通過した素材を合流及び溶着させる合流空間と、この合流空間で合流及び溶着した素材を中空断面状に成形しつつ中空パネルを押し出す成形空間とを有するダイスの設計方法であって、
前記ダイスから押し出された前記中空パネルには、前記各入側ポートを通過した素材同士の溶着部が複数形成され、
前記中空パネルにおいて前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±10%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定する、ダイスの設計方法。
【請求項2】
前記中空パネルにおいて前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±6%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定する、請求項1に記載のダイスの設計方法。
【請求項3】
前記中空パネルにおいて前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±3%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定する、請求項2に記載のダイスの設計方法。
【請求項4】
前記中空パネルにおける前記溶着部間の各領域の体積配分比と、前記各入側ポートにおける素材の通過流量比とが一致し、かつ前記中空パネルにおいて前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±10%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定する、請求項1に記載のダイスの設計方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイスの設計方法を利用して作製されたダイス。
【請求項6】
請求項5に記載のダイスを用いて中空パネルを押出し成形する、中空パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の中空パネルの製造方法によって製造される中空パネル。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイスの設計方法、ダイス、中空パネルの製造方法及び中空パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、素材を中空断面状に押し出して中空形材を形成するためのダイス及びその設計方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されたダイスは、素材を分流させるための複数の入側ポート(エントリーポート)と、これら各入側ポートを通過した素材を合流及び溶着させる合流空間(チャンバ)と、合流空間で溶着された素材を中空断面状に成形して押し出すための成形空間とを有している。そして、このダイスから押し出された中空形材には、各入側ポートを通過した素材同士の溶着部が複数形成される。そして、上記特許文献1に開示されたダイスの設計方法では、中空形材における溶着部間の各領域の体積配分比と、各入側ポートにおける素材の通過流量比とが一致するように各入側ポートの重心位置や開口面積等の仕様を設定している。そして、この設計方法に基づいて作製されたダイスを用いた押出し成形では、素材に無理なねじれを伴うことなく成形空間から均等に素材を押し出すことが可能となり、その結果、高い寸法精度及び直線性を有する中空形材を形成できるようになっている。
【特許文献1】特許第3645453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたダイスを用いて、薄肉で幅広の中空パネルを形成した場合には、凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じ、良好な形状の中空パネルを作成することができなかった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のように、溶着部間の各領域の体積配分比と各入側ポートにおける素材の通過流量比とが一致するように各入側ポートの仕様を設定したとしても薄肉で幅広の中空パネルを押し出した場合に意図しない変形が生じる。そこで、その原因について鋭意検討した結果、本願発明者は中空パネル内の各部における歪みのバランスが影響することを見出した。すなわち、上記目的を達成するために、本発明によるダイスの設計方法は、素材を分流させる複数の入側ポートと、この各入側ポートを通過した素材を合流及び溶着させる合流空間と、この合流空間で合流及び溶着した素材を中空断面状に成形しつつ中空パネルを押し出す成形空間とを有するダイスの設計方法であって、前記ダイスから押し出された前記中空パネルには、前記各入側ポートを通過した素材同士の溶着部が複数形成され、前記中空パネルにおいて前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±10%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定する。
【0007】
このダイスの設計方法では、中空パネルにおいて溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±10%の範囲内に収まるように、各入側ポートの設計特徴値と、合流空間の設計特徴値とを設定するので、この設計方法を利用して作製されたダイスを用いて押し出した中空パネルでは、溶着部間の各領域ごとの歪みの差が小さくなる。これにより、溶着部間の各領域に対する歪みバランスを取ることができるので、ダイスを用いて薄肉で広幅の中空パネルのように各部の剛性が低いものを押し出す場合でも、押し出した中空パネルに凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。その結果、良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを形成することができる。
【0008】
上記ダイスの設計方法において、前記中空パネルにおける前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±6%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定するのが好ましい。この設計方法を利用して作製されたダイスを用いて押し出した中空パネルでは、溶着部間の各領域ごとの歪みの差をより小さくすることができるので、薄肉で幅広の中空パネルのうち厚肉部を有するとともに幅方向中央部に開口部を有するようなより変形を生じやすいものを押し出す場合でも、押し出した中空パネルに凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。
【0009】
この場合において、前記中空パネルにおける前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±3%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定するのが好ましい。この設計方法を利用して作製されたダイスを用いて押し出した中空パネルでは、溶着部間の各領域ごとの歪みの差をさらに小さくすることができるので、薄肉で幅広の中空パネルのうち厚肉部を有するとともに幅方向中央部からずれた位置に開口部を有するような剛性の偏りがあって、さらに変形を生じやすいものを押し出す場合でも、押し出した中空パネルに凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。
【0010】
上記ダイスの設計方法において、前記中空パネルにおける前記溶着部間の各領域の体積配分比と、前記各入側ポートにおける素材の通過流量比とが一致し、かつ前記中空パネルにおいて前記溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する前記溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±10%の範囲内に収まるように、前記各入側ポートの設計特徴値と、前記合流空間の設計特徴値とを設定するのが好ましい。この設計方法を利用して作製されたダイスでは、押し出す中空パネルにおける溶着部間の各領域の体積配分比と各入側ポートにおける素材の通過流量比とが一致することによって、素材に無理なねじれを伴うことなく成形空間から均等に素材を押し出すことが可能となり、その結果、高い寸法精度及び直線性を有する中空パネルを形成することができる。さらに、この設計方法を利用して作製されたダイスから押し出した中空パネルでは、溶着部間の各領域の歪みの平均値に対する溶着部間の各領域の歪みの相対誤差が±10%の範囲内に収まるので、上記と同様、良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを形成することができる。従って、このダイスの設計方法を利用して作製されたダイスでは、高い寸法精度及び直線性を有するとともに良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを形成することができる。
【0011】
本発明によるダイスは、上記いずれかのダイスの設計方法を利用して作製されたダイスである。このダイスでは、凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制しながら中空パネルを押し出すことができるので、良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを押し出すことができる。
【0012】
本発明による中空パネルの製造方法は、上記のダイスを用いて中空パネルを押出し成形する製造方法である。この中空パネルの製造方法では、上記のダイスを用いて凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制しながら中空パネルを押し出すことができるので、良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを押し出すことができる。
【0013】
本発明による中空パネルは、上記の中空パネルの製造方法によって製造される中空パネルである。この中空パネルでは、凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じず、良好な形状を有する薄肉で広幅の構造を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネルを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1及び図2には、本発明の第1実施形態による後述のダイス24を用いて押出し成形する中空パネル1の構造が示されている。この中空パネル1は、それぞれ平板状に形成された一対の板状体2,2を有している。板状体2,2は、厚み方向に互いに離間した状態で平行に配置されており、両板状体2,2間に設けられた多数のリブ4によって互いに接合されている。これら板状体2及びリブ4は、全て同等の肉厚を有している。そして、板状体2と中空パネル1の幅方向に隣接するリブ4,4との間に、中空パネル1の押出し方向(長手方向)に延びる内部空間6が形成されている。
【0017】
この中空パネル1の製造には、図3に示す成形装置10を使用する。この成形装置10は、コンテナ12と、このコンテナ12から離間して配置されるプラテン14と、これらの間に配置される成形部16とを備えている。
【0018】
コンテナ12には、アルミ合金からなるビレット18(素材)の押出し方向に延びる内孔12aが形成されており、この内孔12aには、図略の駆動機構によって駆動されるステム19がビレット18の押出し方向に沿って進退移動可能に設けられている。プラテン14は、コンテナ12に対してビレット18の押出し方向における下流側(図3の右側)に配設されているとともに、この状態で位置固定されている。
【0019】
成形部16は、ダイスライド20と、ダイリング22と、ダイス24と、バッカー26と、ボルスター28とを備えている。ダイスライド20は、ビレット18の押出し方向に対して垂直な方向に移動可能に構成されており、コンテナ12及びプラテン14間に配置されるセット位置と、このセット位置からビレット18の押出し方向に対して垂直な方向に水平移動した退避位置との間で移動可能となっている。
【0020】
ダイリング22は、ダイスライド20に保持されている。そして、このダイリング22とボルスター28とは、図3の左右方向に並んで配設され、この状態でコンテナ12とプラテン14とに挟持されている。また、ダイリング22は、円環状に形成されるものであり、その内側にダイス24とバッカー26とが配設されている。ダイス24とバッカー26とは、押出し方向にこの順に並べられている。
【0021】
ダイス24は、雄型30と雌型31とによって構成されており、図4にダイス24の具体的な構造を表す一部破断斜視図が示されている。雄型30と雌型31とは、ビレット18の押出し方向にこの順番で設けられており、雌型31に対して雄型30が嵌め合わされている。雄型30には、ビレット18の押出し方向に貫通する複数のエントリーポート30aが形成されており、この複数のエントリーポート30aはコンテナ12の内孔12a(図3参照)と繋がっている。また、雄型30は、ビレット18の押出し方向に突設された突出部30bを有している。この突出部30bの雌型31側の端部は、中空パネル1の内部空間6に対応する形状に形成されている。
【0022】
雌型31には、雄型30のエントリーポート30aと繋がる合流空間31aと、その合流空間31aに繋がる成形孔31bとが形成されている。合流空間31aは、上記各エントリーポート30aと成形孔31bとを連通させるものである。成形孔31bは、押出し方向に垂直な断面が中空パネル1の外周形状に対応する形状に形成されている。この成形孔31b内には、雄型30の突出部30bが成形孔31bの内壁面との間に隙間を有した状態で挿入されている。これにより、雄型30の突出部30bと雌型31の成形孔31bの内壁面とによって中空パネル1の形状に対応する成形空間Sが構成されている。この成形空間Sは、上記合流空間31aと繋がっている。
【0023】
図5には、成形装置10においてビレット18がダイス24を通じて中空パネル1として押し出される一連の過程での素材の形状が示されている。中空パネル1の形成時には、ステム19によりコンテナ12の内孔12aからビレット18が押し出されてダイス24に圧入されるとともに各エントリーポート30aで素材18aに分流され、その状態で素材18aが各エントリーポート30aから流れ出る。そして、各エントリーポート30aを通過した素材18aは、合流空間31aで合流及び溶着され、一体の素材18bとなる。この素材18bが成形空間Sを通って中空断面形状に成形されつつ押し出されることにより中空パネル1が形成される。このように押し出された中空パネル1には、ダイス24の各エントリーポート30aを通過した素材18a同士の溶着部1aが押出し方向に直線的に延びるように形成される。換言すると、各エントリーポート30aを通過した素材18aによって、それぞれの位置に対応する中空パネル1の溶着部1a間の各領域1b(非溶着部)が形成される。
【0024】
このような押出し工程では、素材18a(18b)が各エントリーポート30a内から合流空間31aを経て成形空間Sへ流動するが、エントリーポート30a内及び合流空間31a内の全ての領域で素材18a(18b)が流動するわけではない。例えば、図4に示すエントリーポート30a内及び合流空間31a内において、仮想線Aの内側の領域では素材18a(18b)が成形空間S側へ流動する一方、仮想線Aの外側の領域では素材18a(18b)は滞留する。このように素材18a(18b)の押出し時に流動する部分と滞留する部分とが存在することに起因して素材18a(18b)内に歪みが生じ、この歪みは素材18bが成形空間Sから中空パネル1として押し出された後も残存する。すなわち、各エントリーポート30aを通過した素材18aから形成される中空パネル1の溶着部1a間の各領域1bには、上記のようにして生じた歪みがそれぞれ内在することとなる。
【0025】
本願発明者は、鋭意検討した結果、中空パネル1のように薄肉で幅広の形材を押し出す場合に図6に示すような凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じる場合があるのは、上記の溶着部1a間の各領域1bそれぞれに内在する歪みに差があることに起因することを見出し、その結果、溶着部1a間の各領域1bの歪みの差を低減させることによって中空パネル1の意図しない変形を抑制するという技術思想に想到した。
【0026】
この技術思想に基づき、本発明の第1実施形態では、ダイス24の設計時に、中空パネル1における溶着部1a間の各領域1bの体積配分比Viと各エントリーポート30aにおける素材18aの通過流量比Xiとが一致し、かつ中空パネル1において溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの平均値に対する溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まるように、各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定する。
【0027】
なお、体積配分比Viとは、中空パネル1の押出し単位長さ当たりの全体積に対する溶着部1a間の領域1bの個別体積の比のことであり、通過流量比Xiとは、全エントリーポート30aを通過する素材18aの全流量に対する各エントリーポート30aを通過する素材18aの個別流量の比のことである。また、エントリーポート30aの設計特徴値としては、エントリーポート30aの押出し方向に垂直な方向の断面積Sei、周長Lei、深さHei(図4参照)及び中心位置reiがあり、合流空間31aの設計特徴値としては、合流空間31aの深さHc(図4参照)がある。なお、エントリーポート30aの深さHeiとは、雄型30に形成されたエントリーポート30aの押出し方向に沿った長さのことであり、合流空間31aの深さHcとは、雌型31の雄型30側の端面から上記エントリーポート30aの押出し方向における合流空間31aの底面までの距離のことである。また、iは、各エントリーポート30aを特定するための変数であり、i=1〜n(n:エントリーポート30aの数)となる。
【0028】
ダイス24の具体的な設計手順としては、まず、中空パネル1における各溶着部1aの位置を仮設定する。そして、中空パネル1の押出し単位長さ当たりの全体積を算出するとともに、溶着部1a間の各領域1bの個別体積をそれぞれ算出し、全体積に対する各個別体積の比を算出することによって溶着部1a間の各領域1bの体積配分比Viを求める。
【0029】
そして、各エントリーポート30aの上記設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiを用いて位置流速比関数f(rei)と、形状流速比関数g(Sei、Lei、Hei)と、寸法流速比関数h(Sei、Hei)とを導出するとともにそれらを組み合わせることによって、各エントリーポート30aの通過流量比Xiを表す下記の関係式(1)とする。
【0030】
Xi=f(rei)・g(Sei、Lei、Hei)・h(Sei、Hei)・・・(1)
この後、上記式(1)に任意の設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiを代入して通過流量比Xiを求め、この通過流量比Xiと上記体積配分比Viとを比較する。通過流量比Xiと体積配分比Viとが一致していなければ、特定のまたは全ての設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiを修正し、新たな通過流量比Xiを求めて体積配分比Viと再比較する。そして、このような設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiの修正処理及び比較処理を繰り返し行うことによって、体積配分比Viと通過流量比Xiとが一致するような設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiを求める。
【0031】
次に、中空パネル1における溶着部1a間の各領域1bごとの歪みεiを算出する。この歪みεiは、各エントリーポート30aにおける押出し方向に垂直な方向の断面積をSeiとし、中空パネル1における対応領域1bの押出し方向に垂直な方向の断面積をSoiとすると、以下の式(2)により求められる。
【0032】
εi=log(Sei/Soi)・・・(2)
そして、上記式(2)により求められた歪みεiを用いて、下記の式(3)により、溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの平均値Σεi/nに対する溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの相対誤差Δεを求める。
【0033】
Δε=(1−εi/(Σεi/n))×100・・・(3)
この後、上記式(3)により求めた相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まっているか否かを判別し、相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まっていない場合には、上記のように設定した各エントリーポート30aの設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiを修正するとともに、合流空間31aの設計特徴値Hcを修正する。そして、上記式(3)により相対誤差Δεを再度算出するとともに、その相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まっているか否かを再度判別する。そして、このような相対誤差Δεの判別処理とエントリーポート30aの設計特徴値Sei、Lei、Hei、rei及び合流空間31aの設計特徴値Hcの修正処理とを繰り返し行うことによって、上記相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まるような各エントリーポート30aの設計特徴値Sei、Lei、Hei、rei及び合流空間31aの設計特徴値Hcを求める。
【0034】
そして、この後、上記式(1)を用いて上記体積配分比Viと通過流量比Xiとが一致しているかを再確認し、かつ、上記相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まっているかを再確認するために上記の各ステップを繰り返し行う。以上のようにして、第1実施形態によるダイス24の設計が行われる。
【0035】
そして、上記のように求めた設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiに基づいて各エントリーポート30aを形成するとともに、設計特徴値Hcに基づいて合流空間31aを形成することにより、ダイス24を作製する。
【0036】
そして、作製したダイス24を成形装置10に装着して押出し成形を行うことにより、中空パネル1における溶着部1a間の各領域1bの体積配分比Viとダイス24の各エントリーポート30aにおける素材18aの通過流量比Xiとが一致するとともに、溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの平均値に対する溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まる中空パネル1を形成することができる。
【0037】
以上説明したように、この第1実施形態では、押し出す中空パネル1における溶着部1a間の各領域1bの体積配分比Viとダイス24の各エントリーポート30aにおける素材18aの通過流量比Xiとを一致させることができるので、素材18a(18b)に無理なねじれを伴うことなくダイス24の成形空間Sから均等に押し出すことが可能となり、その結果、高い寸法精度及び直線性を有する中空パネル1を形成することができる。
【0038】
さらに、この第1実施形態では、溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの平均値に対する溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まるようにダイス24から中空パネル1を押し出すことができるので、溶着部1a間の各領域1bごとの歪みεiの差を低減することができる。これにより、溶着部1a間の各領域1bにおける歪みεiのバランスを取ることができるので、ダイス24を用いて薄肉で広幅の中空パネル1のように各部の剛性が低いものを押し出す場合でも、押し出した中空パネル1に凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。その結果、良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネル1を形成することができる。従って、この第1実施形態では、高い寸法精度及び直線性を有するとともに良好な形状を有する薄肉で広幅の中空パネル1を形成することができる。
【0039】
(第2実施形態)
図7には、本発明の第2実施形態による中空パネル41の構造が示されている。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、幅方向の両端部に厚肉部43をそれぞれ有するとともに幅方向の中央部に開口部45を有する中空パネル41を押出し成形する場合について説明する。
【0040】
この第2実施形態による中空パネル41は、幅方向の両端部に板状体2及びリブ4よりも厚肉に形成された厚肉部43をそれぞれ有している。この両端部の厚肉部43,43において、中空パネル41の幅方向の端縁が閉じられている。そして、図7において上側の板状体2の幅方向の中央部に開口部45が形成されている。この開口部45は、中空パネル41の長手方向(押出し方向)に沿って延びるように形成されている。
【0041】
そして、図7において上側の板状体2の開口部45近傍の領域2aと、図7において下側の板状体2の開口部45下近傍の領域2bとが板状体2のこれら以外の領域に比べて厚肉に形成されている。また、板状体2の上記領域2a及び2b間を繋ぐリブ4a,4aが設けられており、これらのリブ4a,4aは他のリブ4に比べて厚肉に形成されている。このように中空パネル41では、開口部45の周囲の領域が厚肉に形成されることにより、この開口部45近傍の領域が補強されている。
【0042】
このような形状の中空パネル41では、各部の肉厚が不均一であること及び開口部45により剛性のバランスを取りにくいことに起因して、上記第1実施形態による中空パネル1(図2参照)を押出し成形する場合よりも凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じやすい。
【0043】
そこで、この第2実施形態では、ダイス24(図4参照)の設計時に、中空パネル41において溶着部41a間の各領域41bの歪みεiの平均値に対する溶着部41a間の各領域41bの歪みεiの相対誤差Δεが±6%の範囲内に収まるように、各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定する。具体的には、上記第1実施形態の式(2)及び(3)を用いて、上記相対誤差Δεが±6%の範囲内に収まるように、各エントリーポート30aの設計特徴値であるエントリーポート30aの押出し方向に垂直な方向の断面積Sei、周長Lei、深さHei、中心位置reiと、合流空間31aの設計特徴値である深さHcとを設定する。
【0044】
なお、この第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様、上記式(1)を用いて体積配分比Viと通過流量比Xiとが一致するように各エントリーポート30aの設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiを求める。さらに、上記第1実施形態と同様、上記体積配分比Viと通過流量比Xiとが一致し、かつ、上記相対誤差Δεが±6%の範囲内に収まっていることを再確認するために上記の各ステップを繰り返し行う。
【0045】
上記のようなダイス24の設計方法により、中空パネル41における溶着部41a間の各領域41bごとの歪みεiの差が上記第1実施形態の場合よりも低減されるので、第2実施形態における中空パネル41のようにより意図しない変形を生じやすいものをダイス24を用いて押し出す場合に、そのような意図しない変形が中空パネル41に生じるのが抑制される。この第2実施形態の上記以外の構成は、上記第1実施形態による構成と同様である。
【0046】
以上説明したように、第2実施形態では、中空パネル41における溶着部41a間の各領域41bの歪みεiの平均値に対する溶着部41a間の各領域41bの歪みεiの相対誤差Δεが±6%の範囲内に収まるように、ダイス24の各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定するので、このダイス24を用いて押し出した中空パネル41では、溶着部41a間の各領域41bごとの歪みεiの差をより低減することができる。これにより、厚肉部43を有するとともに幅方向中央部に開口部45を有するようなより変形を生じやすい中空パネル41を押し出す場合でも、押し出した中空パネル41に凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。
【0047】
(第3実施形態)
図8には、本発明の第3実施形態による中空パネル51の構造が示されている。この第3実施形態では、上記第2実施形態の中空パネル41(図7参照)と同様の構成において幅方向の中央部からずれた位置に開口部55を有する中空パネル51を押出し成形する場合について説明する。
【0048】
この第3実施形態による中空パネル51では、図8において上側の板状体2の幅方向の中央部から右側にずれた位置に開口部55が形成されている。この開口部55は、中空パネル51の長手方向(押出し方向)に沿って延びるように形成されている。
【0049】
このような形状の中空パネル51では、開口部55が幅方向の中央部からずれた位置に形成されていることに起因して、上記第2実施形態による中空パネル41(図7参照)よりもさらに剛性のバランスを取りにくい。このため、上記第2実施形態による中空パネル41(図7参照)を押出し成形する場合よりも、さらに意図しない変形が生じやすい。
【0050】
そこで、この第3実施形態では、ダイス24(図4参照)の設計時に、中空パネル51において溶着部51a間の各領域51bの歪みεiの平均値に対する溶着部51a間の各領域51bの歪みεiの相対誤差Δεが±3%の範囲内に収まるように、各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定する。具体的には、上記第1実施形態の式(2)及び(3)を用いて、上記相対誤差Δεが±3%の範囲内に収まるように、各エントリーポート30aの設計特徴値であるエントリーポート30aの押出し方向に垂直な方向の断面積Sei、周長Lei、深さHei、中心位置reiと、合流空間31aの設計特徴値である深さHcとを設定する。
【0051】
なお、この第3実施形態でも、上記第1実施形態と同様、上記式(1)を用いて体積配分比Viと通過流量比Xiとが一致するように各エントリーポート30aの設計特徴値Sei、Lei、Hei、reiを求める。さらに、上記第1実施形態と同様、上記体積配分比Viと通過流量比Xiとが一致し、かつ、上記相対誤差Δεが±3%の範囲内に収まっていることを再確認するために上記の各ステップを繰り返し行う。
【0052】
上記のようなダイス24の設計方法により、中空パネル51における溶着部51a間の各領域51bごとの歪みεiの差が上記第2実施形態の場合よりもさらに低減されるので、第3実施形態における中空パネル51のようにさらに意図しない変形を生じやすいものをダイス24を用いて押し出す場合に、そのような意図しない変形が中空パネル51に生じるのが抑制される。この第3実施形態の上記以外の構成は、上記第1実施形態による構成と同様である。
【0053】
以上説明したように、第3実施形態では、中空パネル51における溶着部51a間の各領域51bの歪みεiの平均値に対する溶着部51a間の各領域51bの歪みεiの相対誤差Δεが±3%の範囲内に収まるように、ダイス24の各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定するので、このダイス24を用いて押し出した中空パネル51では、溶着部51a間の各領域51bごとの歪みεiの差をさらに小さくすることができる。これにより、厚肉部43を有するとともに幅方向中央部からずれた位置に開口部55を有するような剛性の偏りがあって、さらに変形を生じやすい中空パネル51を押し出す場合でも、押し出した中空パネル51に凹凸状のうねり等の意図しない変形が生じるのを抑制することができる。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0055】
例えば、上記第1〜第3実施形態のダイス24の設計方法において、中空パネル1(41,51)における溶着部1a(41a,51a)間の各領域1b(41b,51b)の体積配分比Viと各エントリーポート30aにおける素材18aの通過流量比Xiとが必ずしも一致せず、わずかにずれていてもよい。すなわち、上記第1実施形態の中空パネル1において溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの平均値に対する溶着部1a間の各領域1bの歪みεiの相対誤差Δεが±10%の範囲内に収まることのみを満たすように、各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定してもよい。同様に、上記第2実施形態において上記相対誤差Δεが±6%の範囲内に収まることのみを満たすように、各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定してもよく、上記第3実施形態において上記相対誤差Δεが±3%の範囲内に収まることのみを満たすように、各エントリーポート30aの設計特徴値と、合流空間31aの設計特徴値とを設定してもよい。特に、長さの短い中空パネルを形成する場合には、体積配分比Viと通過流量比Xiとがわずかにずれていても寸法精度及び直線性を確保しながら中空パネルを押し出すことが可能であるので、上記体積配分比Viと上記通過流量比Xiとが一致していないことに起因する不都合を抑制しながら、良好な形状の中空パネルを形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態によるダイスを用いて押出し形成される中空パネルの構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した中空パネルを押出し方向に見た側面図である。
【図3】図1に示した中空パネルを押出し形成するための成形装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるダイスの一部破断斜視図である。
【図5】第1実施形態による成形装置においてビレットがダイスを通じて中空パネルとして押し出される一連の過程での素材の形状を示した斜視図である。
【図6】中空パネルに生じる変形について説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態による中空パネルを押出し方向に見た側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態による中空パネルを押出し方向に見た側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1、41、51 中空パネル
1a、41a、51a 溶着部
1b、41b、51b 領域
18 ビレット(素材)
18a 素材
18b 素材
24 ダイス
30a エントリーポート(入側ポート)
31a 合流空間
S 成形空間
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年8月3日(2006.8.3)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司

【識別番号】100096150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝夫

【識別番号】100099955
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 次郎

【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久


【公開番号】 特開2008−36662(P2008−36662A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−211962(P2006−211962)