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【発明の名称】 溶接部特性の良好な電縫管の製造方法
【発明者】 【氏名】剣持 一仁

【氏名】岡部 能知

【氏名】横山 泰康

【氏名】井上 智弘

【氏名】岩崎 謙一

【氏名】城澤 広幸

【氏名】西田 保夫

【要約】 【課題】電縫管を製造するに際して、電縫溶接前の板(帯材)の端部にテーパ形状を適切に付与することによって、溶接品質を良好に保持することができる溶接部特性の良好な電縫管の製造方法を提供する。

【構成】フィンパス成形により板端部にテーパ形状を付与した後に、電縫溶接直前の板端面同士がなすVシュープ角度を2°〜8°にして電縫溶接する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板を成形して端部を突き合わせて電縫溶接して管とする電縫管の製造方法において、フィンパス成形により板端部にテーパ形状を付与した後に、Vシェープ角度を2°〜8°として電縫溶接することを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【請求項2】
板を成形して端部を突き合わせて電縫溶接して管とする電縫管の製造方法において、孔型ロールの圧延により板端部にテーパ形状を付与した後に、Vシェープ角度を2°〜8°として電縫溶接することを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【請求項3】
板端部に付与するテーパ形状は、テーパの板厚方向に対する角度を25°〜50°とし、テーパの板厚方向の長さを板厚の20%〜40%とすることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、油井のラインパイプ向けなど溶接部の靭性が要求される管あるいは油井のケーシングパイプなどの溶接部強度が要求される管における製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、電縫鋼管を例とするように、板をロール成形等によって丸めて端部を突き合わせて溶接して製造し、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔しマンドレルミル等で圧延して製造する。溶接管の場合、一般に溶接部の特性は母材より劣ると言われ、管の適用に当たって、用途ごとに溶接部の靭性や強度の保証が常に議論されて問題となってきた。
【0003】
例えば、原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプでは、管を寒冷地に敷設することが多いため低温靭性が重要であり、また、原油採掘の油井では採掘管を保護するためのケーシングパイプが必要とされ、管の強度が重要視される。
【0004】
通常、管の母材となる熱延板(帯材)は、管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われて、母材の靭性や強度等の特性が確保される。
【0005】
しかし、溶接部の特性は、母材の成分設計や熱処理等以上に、電縫溶接方法によって大きく左右されるため、溶接技術の開発が重要であった。
【0006】
電縫溶接の不良原因としては、ペネトレータと呼ばれる溶接板材の端面に生成する酸化物が、電縫溶接時に溶鋼とともに端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータを原因として靭性が低下し強度不足になる例が多かった。
【0007】
そこで、従来、電縫溶接不良の主原因であるペネトレータを溶接部から除くため、溶接部の板端面から積極的に溶鋼を排出する技術が鋭意検討されてきた。例えば、特許文献1〜5などに、板端面の形状について検討した例が記載されている。すなわち、通常、板の端面はスリットや端面研削によってほぼ矩形を呈しているが、これをロール成形の前においてテーパ加工して、加工した端部形状によって溶接時の溶鋼排出を良好にすることを目的としている。
【特許文献1】特開昭57−31485号公報
【特許文献2】特開昭63−317212号公報
【特許文献3】特開2001−170779号公報
【特許文献4】特開2001−259733号公報
【特許文献5】特開2003−1649095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1〜5では、単にテーパ加工手段を羅列して紹介したのみであるため、それだけでは実際に電縫管製造工程に適用しても効果が充分でない場合があり、さらに詳細な検討が必要であった。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、電縫管を製造するに際して、電縫溶接前の板(帯材)の端部にテーパ形状を適切に付与することによって、溶接品質を良好に保持することができる溶接部特性の良好な電縫管の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0011】
[1]板を成形して端部を突き合わせて電縫溶接して管とする電縫管の製造方法において、フィンパス成形により板端部にテーパ形状を付与した後に、Vシェープ角度を2°〜8°として電縫溶接することを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【0012】
[2]板を成形して端部を突き合わせて電縫溶接して管とする電縫管の製造方法において、孔型ロールの圧延により板端部にテーパ形状を付与した後に、Vシェープ角度を2°〜8°として電縫溶接することを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【0013】
[3]板端部に付与するテーパ形状は、テーパの板厚方向に対する角度を25°〜50°とし、テーパの板厚方向の長さを板厚の20%〜40%とすることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は著しく良好な靭性および溶接強度を備えた電縫管を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
前述したように、特許文献1〜5では、単にテーパ加工手段を羅列して紹介したのみであるため、それだけでは実際に電縫管製造工程に適用しても効果が充分でない場合があり、さらに詳細な検討が必要であった。
【0016】
そこで、本発明者らは、電縫溶接前の板端部に所望のテーパ形状を適切に付与する方法について鋭意検討し、その結果、電縫溶接前の板の端部に所望のテーパ形状を適切に付与するために、フィンパス成形を活用することにした。フィンパス成形では、フィンパスロールに板の円周方向全周が充満しなくとも、板がロールに装入される際に、板端部がフィンに強圧されて、板端部がフィンに充分に密着することを把握したからである。すなわち、板がフィンパスロールに装入される場合、フィンに接触した板端部およびそのほぼ180°反対側に位置する板底の部分(板中央部)とが梁撓みの状態となって、断面を円弧形状に曲げようとする板の反力が大きく作用し、たとえ帯材がフィンパスロールに充満しなくとも板端部には円周方向に大きな圧縮力が作用し、その結果、板端部はフィンに強圧されてフィンの形状がそのまま板端部に転写されることを把握した。
【0017】
そして、本発明者らは板端部がフィンに強圧されることに着目して、この現象を積極的に活用する手段を検討し、その結果、フィンに2段階以上のテーパを付与することにした。こうしておけば、フィンパス成形でのアプセット量が小さくとも板端部にはテーパ形状を適切に付与できて、板端部に所望とするテーパ形状を充分付与できるわけである。
【0018】
その際、管の内面側になる側の板端部か管の外面側になる側の板端部のいずれか片側にテーパ形状を付与する場合は、フィン形状を2段階とすればよい。
【0019】
また、管の内面側になる側の板端部と管の外面側になる側の板端部の両方に同時にテーパ形状を付与する場合は、3段階の角度を有するフィン形状とすればよい。ただし、これらのフィンのいずれかの角度がフィンパスロールの垂直方向より大きな角度になると、板端部がフィンにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあり、フィンパス成形時に傷を発生させるとともに、電縫溶接のスパークの原因となるので、フィンの角度は垂直方向以下にしておくとよい。
【0020】
なお、可能であれば、フィンパス成形の最終スタンドで、上記の板端部の片側もしくは両側にテーパ形状を付与すると、その直後に電縫溶接が行われるため、良好なテーパ形状を保持したまま電縫溶接が可能である。ただし、フィンパス成形の開始スタンドや途中スタンドでテーパ形状を付与した場合でも、一旦テーパ形状が付与された板端面は強圧によって著しく加工硬化するため、その後のフィンパス成形ではテーパ形状は比較的潰れにくくなっており、フィンパス成形後もテーパ形状を付与した状態が保持できる。
【0021】
また、2スタンド以上のフィンパス成形が可能である場合は、1つのスタンドのフィンに2段階のテーパを付与して一方の板端部(例えば、管の外面側)にテーパ形状を付与し、別のスタンドのフィンに前記と異なる形状の2段階のテーパを付与して他方の板端部(例えば、管の外面側)にテーパ形状を付与するとよい。1つのスタンドで板端部の一方の側にテーパ形状を付与すると、その部分は強圧によって著しく加工硬化するため、さらに別のスタンドで他方の板端部にテーパ形状を付与しても、前段スタンドで付与したテーパ形状は比較的潰れにくく、フィンパス成形後の板端部には管内面側および管外面側とも所望のテーパ形状を付与することができる。
【0022】
ただし、上記のようにして電縫溶接前の板端部にテーパ形状を付与した場合でも、電縫溶接後の溶接部の靭性または強度を充分に向上することが難しい場合があった。
【0023】
この原因を詳細に調査すると、以下のようなことが分かった。
【0024】
すなわち、電縫溶接前の板端部が加熱される過程において、溶接欠陥であるペネトレータの原因となる酸化物が板端面に形成される。その後、板端面の酸化物は電縫溶接時の溶鋼表面に浮いて、一部は溶鋼とともに排出される。この際に、板端面にテーパ形状が付与されていると、溶鋼が容易に排出されて、同時にペネトレータも有効に排出できるわけである。しかし、ペネトレータの元になる板端面の酸化物は、電縫溶接の加熱とともに順次生成してくるため、溶接条件によっては、板端部にテーパ形状を付与するのみでは、溶接後の靭性または強度を充分に向上できない場合が生じていた。
【0025】
そこで、上記の問題に対応するために、本発明者らは電縫溶接現象を詳細に観察し直した結果、電縫溶接直前において板の幅方向両端面同士が長手方向になすV字形状の頂角(Vシェープ角度)に着目した。すなわち、溶鋼とともにペネトレータを有効に排出するためには、板端部のテーパ形状だけではなく、Vシェープ角度も大きく影響することを見出した。
【0026】
電縫溶接において、板端面のVシェープ角度が変わると、溶鋼の生成・排出状態が異なってくる。すなわち、Vシェープ角度が小さくなると、板端面は溶接部から遠方において加熱が開始されて、溶接部に近づくにつれて徐々に温度が上昇し、また、板端面の板厚上部および下部から板厚中央部に加熱が広がっていく。これらの現象とともに、溶鋼が徐々に発生するが、板端面の板厚上部(管外面側)および板厚下部(管内面側)から発生した溶鋼が溶接部に到達する前に固化が始まって、板厚中央部の溶鋼が外部に排出されにくくなる。その結果、溶鋼とともに生成するペネトレータも板内部に留まりやすくて、電縫溶接部の靭性または強度を大幅に低下させてしまうわけである。
【0027】
そこで、Vシェープ角度について鋭意検討した結果、Vシェープ角度が2°以上であれば、溶鋼の排出が良好となって溶接部の靭性または強度が向上することを把握した。
【0028】
ただし、Vシェープ角度が大きくなりすぎると、溶接部の加熱が不足して板端面の温度が上昇しにくくなり、溶鋼が発生せずに、冷接と称する端面全体が酸化膜に覆われた状態となって、溶接部の靭性または強度が著しく低下する。これに対しては、Vシェープ角度が8°以下であれば、冷接を防止できることを把握した。
【0029】
なお、その際に、板端部にテーパ形状を付与しておくと、その体積減少分だけ先に溶融する一方の端部の溶融量が減少し、かつ、テーパ形状に沿って溶融して、さらに溶鋼が減少して、溶鋼による溶接部前の固化が起こりにくくなるため、Vシェープ角度とテーパ形状の双方の効果で、電縫溶接部のペネトレータを充分排出することができて、靭性および強度が著しく向上するわけである。
【0030】
また、板端部に付与するテーパ形状について、その形状の最適化を図った結果、垂線からの角度(テーパの板厚方向に対する角度)を25°〜50°とし、テーパ開始位置から終了位置までの垂線の長さ(テーパの板厚方向の長さ)を板厚の20%〜40%とすると良いことを把握した。
【0031】
すなわち、垂線からの角度(テーパ角度)を25°未満とすると、板厚中央部からの溶鋼排出が不充分となってペネトレータが残留して不良となり、電縫溶接後の靭性や強度が低下し、垂線からの角度(テーパ角度)が50°を超えると、電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の傷として残留し問題である。さらに、テーパ開始位置から終了位置までの垂線の長さ(テーパ高さ)について、板厚の20%未満であると板厚中央部の溶鋼排出が不充分となってペネトレータが残留しやすくなり、板厚の40%を超えると電縫溶接後にもそのテーパ形状が製品の管の傷として残留し問題である。
【0032】
上記のような本発明の第1の実施形態を以下に述べる。
【0033】
図1は、本発明の第1の実施形態において用いる電縫管製造ラインを示す図である。この電縫管製造ラインは、板(帯材)10を、アンコイラ1から払い出し、レベラー2で平坦に矯正し、ロール成形機4で帯材10を徐々に丸めていき、丸めて管状になった帯材20の左右両幅端部を、誘導加熱部5とスクイズロール(電縫溶接部)6からなる電縫溶接機で電縫溶接して管30となし、管30の溶接ビード部をビード部切削機7で切削し、切削後の管30をサイザー8にて外径調整した後、管切断機9で所定長さに切断するという基本構成を有している。
【0034】
そして、この実施形態においては、ロール成形機4は最後段に複数スタンド(例えば、3スタンド)からなるフィンパス成形スタンド3を備えており、前述したように、各スタンドのフィンを適切な形状とすることによって、板端部の上面側(管の内面側)または/および板端部の下面側(管の外面側)に所定のテーパ形状を付与できるようになっている。
【0035】
例えば、図2(a)に断面図を示し、図2(b)にその部分詳細図を示すように、フィンパス成形スタンド3の任意のスタンドが、所定の2段テーパ(2段目のテーパ傾斜角度α、2段目の傾斜部垂直長さβ)となったフィン形状を備えている。そのフィン形状を帯材10の幅端部に転写することによって、帯材10の下面側(管の外面側)の左右両端部に、テーパ角度がαでテーパ高さがβのテーパ形状を付与する。
【0036】
そして、上記のようにして、外面側にテーパ角度αでテーパ高さβのテーパ形状が付与され、内面側にテーパ角度γでテーパ高さδのテーパ形状が付与された管状の帯材20を、図3に示すように、Vシェープ角度ψが2°〜8°となるようにして、電縫溶接を行なうようになっている。
【0037】
これによって、電縫溶接部のペネトレータを充分排出することができ、著しく良好な靭性および溶接強度を備えた電縫管を得ることができる。
【0038】
さらに、本発明者らは、電縫溶接前の板端部に所望のテーパ形状を適切に付与するための他の方法も検討し、その結果、孔型ロールを用いることを考え付いた。
【0039】
孔型ロールを用いると、板端部の形状がその孔型に従って精度よく得られやすいからである。すなわち、テーパ形状を精度良く付与するには移動中の板を拘束する必要があるが、特にロール成形前またはロール成形前段では板端部のばたつきが大きくて、そのままではテーパ形状を付与することが難しい。しかし、孔型ロールを用いることによって、孔型ロール自身で板端部を拘束しつつ精度良くテーパ形状を付与することが可能である。また、孔型ロールは設備が比較的小型でよいことから、電縫溶接前において、ロール成形の前やロール成形の途中に設置することが容易である。
【0040】
なお、孔型ロールを用いて電縫溶接前の板端部に所望のテーパ形状を付与した場合でも、前述したように、Vシェープ角度ψが2°〜8°となるようにして、電縫溶接を行なうことが必要である。
【0041】
また、板端部に付与するテーパ形状についても、前述したように、垂線からの角度(テーパの板厚方向に対する角度)を25°〜50°とし、テーパ開始位置から終了位置までの垂線の長さ(テーパの板厚方向の長さ)を板厚の20%〜40%とすると良い。
【0042】
上記に基づいた本発明の第2の実施形態を以下に述べる。
【0043】
図5は、本発明の第2の実施形態において用いる電縫管製造ラインを示す図である。この電縫管製造ラインは、板(帯材)10を、アンコイラ1から払い出し、レベラー2で平坦に矯正し、ロール成形機4で帯材10を徐々に丸めていき、丸めて管状になった帯材20の左右両幅端部を、誘導加熱部5とスクイズロール(電縫溶接部)6からなる電縫溶接機で電縫溶接して管30となし、管30の溶接ビード部をビード部切削機7で切削し、切削後の管30をサイザー8にて外径調整した後、管切断機9で所定長さに切断するという基本構成を有している。
【0044】
そして、この実施形態においては、ロール成形機4のブレークダウン第1スタンド41の後に孔型ロール42を備えており、この孔型ロール42での圧延によって板端部の上面側(管の内面側)または/および板端部の下面側(管の外面側)に所定のテーパ形状を付与できるようになっている。
【0045】
そして、前述の図3に示したものと同様に、例えば、外面側にテーパ角度αでテーパ高さβのテーパ形状が付与され、内面側にテーパ角度γでテーパ高さδのテーパ形状が付与された管状の帯材20を、Vシェープ角度ψが2°〜8°となるようにして、電縫溶接を行なうようになっている。
【0046】
これによって、電縫溶接部のペネトレータを充分排出することができ、著しく良好な靭性および溶接強度を備えた電縫管を得ることができる。
【0047】
なお、孔型ロール42は、板(帯材)10が比較的平坦な位置に設置するのが好ましい。上記のブレークダウン第1スタンド41の後以外では、例えば、ロール成形機4の前に設置すればよい。
【実施例1】
【0048】
以下、実施例1に基づいて説明する。
【0049】
ここでは、板幅1920mm×19.1tmmの帯材(鋼帯)を用いて、φ600の電縫管を製造した。
【0050】
そして、製造した電縫管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片は、管長手方向の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取し、JIS5号の2mmVノッチ衝撃試験片として、−46℃での衝撃試験を行い、吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギーは125J以上、脆性破面率が35%以下を性能許容範囲とした。
【0051】
(本発明例1)本発明例1として、前述の第1の実施形態に基づいて上記の電縫管を製造した。その際、3スタンドからなるフィンパス成形スタンドの第3スタンドにおいて、帯材10の下面側(管20の外面側)に、テーパ角度αが25°でテーパ高さβが4mm(板厚の21%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが2.5°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0052】
(本発明例2)本発明例2として、2スタンドからなるフィンパス成形スタンドの第1スタンドにおいて、帯材10の上面側(管20の内面側)に、テーパ角度γが45°でテーパ高さδが7mm(板厚の37%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、フィンパス成形スタンドの第2スタンドにおいて、帯材10の下面側(管20の外面側)に、テーパ角度αが45°でテーパ高さβが7mm(板厚の37%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが7.5°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0053】
(比較例1)比較例1として、3スタンドからなるフィンパス成形の第1スタンドにおいて、帯材10の下面側(管20の外面側)に、テーパ角度αが20°でテーパ高さβが3mm(板厚の16%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、帯材10の上面側(管20の内面側)に、テーパ角度γが20°でテーパ高さδが3mm(板厚の16%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが1.5°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0054】
(従来例1)従来例1として、板端面をほぼ矩形として、図4に示す電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが1.8°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0055】
これらにより製造した電縫管の溶接部におけるシャルピー衝撃値と脆性破面率を測定した結果を表1に示す。
【0056】
【表1】


【0057】
表1より、本発明例1、2による電縫管は、溶接部の衝撃強度が高く脆性破面率が小さくて、靭性が良好であって、製品の信頼性が高い。これに対して、比較例1および従来例1による電縫管は、溶接部の衝撃強度が低く脆性破面率が大きくて、靭性が低下しており、製品の信頼性に乏しい。
【0058】
これにより、本発明によって溶接部特性の良好な電縫管を製造できることが確認された。
【実施例2】
【0059】
以下、実施例2に基づいて説明する。
【0060】
ここでも、板幅1920mm×19.1tmmの帯材(鋼帯)を用いて、φ600の電縫管を製造した。
【0061】
そして、製造した電縫管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片は、管長手方向の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取し、JIS5号の2mmVノッチ衝撃試験片として、−46℃での衝撃試験を行い、吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギーは125J以上、脆性破面率が35%以下を性能許容範囲とした。
【0062】
(本発明例3)本発明例3として、前述の第2の実施形態に基づいて上記の電縫管を製造した。その際、孔型ロール42によって、帯材10の下面側(管20の外面側)に、テーパ角度αが25°でテーパ高さβが4mm(板厚の21%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、帯材10の上面側(管20の内面側)に、テーパ角度γが25°でテーパ高さδが4mm(板厚の21%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが2.5°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0063】
(本発明例4)本発明例4として、前述の第2の実施形態において、孔型ロール42をロール成形機4の前に移動して上記の電縫管を製造した。その際、孔型ロール42によって、帯材10の下面側(管20の外面側)に、テーパ角度αが45°でテーパ高さβが7mm(板厚の37%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、帯材10の上面側(管20の内面側)に、テーパ角度γが45°でテーパ高さδが7mm(板厚の37%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが2.5°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0064】
(比較例2)比較例2として、ロール成形機4の前に切削バイトを配置し、その切削バイトによって、帯材10の下面側(管20の外面側)に、テーパ角度αが20°でテーパ高さβが3mm(板厚の16%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、帯材10の上面側(管20の内面側)に、テーパ角度γが20°でテーパ高さδが3mm(板厚の16%)のほぼ直線上のテーパ形状を付与し、電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが1.5°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0065】
(従来例2)前述の従来例1と同様に、従来例2として、板端面をほぼ矩形として、図4に示す電縫溶接直前の板端面同士のなすVシェープ角度ψが1.8°となるようにロール成形を調整して、電縫溶接を行なった。
【0066】
これらにより製造した電縫管の溶接部におけるシャルピー衝撃値と脆性破面率を測定した結果を表2に示す。
【0067】
【表2】


【0068】
表2より、本発明例3、4による電縫管は、溶接部の衝撃強度が高く脆性破面率が小さくて、靭性が良好であって、製品の信頼性が高い。これに対して、比較例2および従来例2による電縫管は、溶接部の衝撃強度が低く脆性破面率が大きくて、靭性が低下しており、製品の信頼性に乏しい。
【0069】
これにより、本発明によって溶接部特性の良好な電縫管を製造できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施形態における電縫管製造ラインを示す図である。
【図2】2段テーパを備えたフィン形状のフィンパス圧延スタンドを示す図である。
【図3】テーパ形状を付与した板の電縫溶接直前のVシェープ角度を示す図である。
【図4】従来の矩形端面の板の電縫溶接直前のVシェープ角度を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における電縫管製造ラインを示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 アンコイラ
2 レベラー
3 フィンパス成形スタンド
4 ロール成形機
5 誘導加熱装置(コンタクトチップ)
6 スクイズロール(電縫溶接部)
7 ビード部切削機
8 サイザー
9 管切断機
10 帯材(板)
20 管状に成形された板
30 管
41 ブレ−クダウン第1スタンド
42 孔型ロール
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年9月29日(2006.9.29)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎

【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘


【公開番号】 特開2008−30114(P2008−30114A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−266224(P2006−266224)