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【発明の名称】 耐熱アルミ合金製の形材の製造方法、耐熱アルミ合金製の形材及び耐熱アルミ合金製の形材の成形装置
【発明者】 【氏名】栄 輝

【氏名】畠 英雄

【要約】 【課題】表面割れが生じるのを抑制して熱間押出しにより良好な形状の耐熱アルミ合金製の形材を形成する。

【構成】この耐熱アルミ合金製の形材の製造方法は、耐熱アルミ合金からなるビレット1を熱間押出しすることにより形材2を形成する耐熱アルミ合金製の形材の製造方法であって、押出し直後の形材2の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱アルミ合金からなる素材を熱間押出しすることにより形材を形成する耐熱アルミ合金製の形材の製造方法であって、
押出し直後の前記形材の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行う、耐熱アルミ合金製の形材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の耐熱アルミ合金製の形材の製造方法によって製造される耐熱アルミ合金製の形材。
【請求項3】
前記素材を熱間押出しするのに、複数の入側ポートと、前記複数の入側ポートと繋がる単一の合流部と、前記合流部に繋がる成形空間とを有するダイスを備えた成形装置を使用し、前記成形装置は、前記ダイス内に圧入される前記素材を前記複数の入側ポートに分流させるとともに、これらの各入側ポートを通過した素材を前記合流部で合流させて溶着させ、その後、前記成形空間から中空断面状に前記形材を押し出すものであり、
前記形材の押出し方向に垂直な断面の面積に対する前記ダイス内に圧入される前の前記素材の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上となるように設定されている、請求項1に記載の耐熱アルミ合金製の形材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の耐熱アルミ合金製の形材の製造方法によって製造される耐熱アルミ合金製の形材であって、
前記形材は、前記各入側ポートを通過した素材同士の溶着部と、その溶着部以外の非溶着部とを含み、
前記溶着部は前記非溶着部の強度の90%以上の強度を有する、耐熱アルミ合金製の形材。
【請求項5】
請求項3に記載の耐熱アルミ合金製の形材の製造方法に用いる耐熱アルミ合金製の形材の成形装置であって、
前記熱間押出しする前の前記素材が装填される内孔を有するコンテナと、
前記内孔に繋がる複数の入側ポートと、前記複数の入側ポートと繋がる単一の合流部と、前記合流部に繋がる成形空間とを有するダイスと、
前記内孔内の前記素材を押し出して前記ダイス内に圧入するステムとを備え、
前記成形空間の押出し方向に垂直な断面の面積に対する前記コンテナの内孔の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上となるように設定されている、耐熱アルミ合金製の形材の成形装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱アルミ合金製の形材の製造方法、耐熱アルミ合金製の形材及び耐熱アルミ合金製の形材の成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高温強靭性、耐摩耗性及び高温疲労特性に優れた材料である耐熱アルミ合金材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、上記の耐熱アルミ合金材料が自動車の部品やエンジン部品等のような耐熱強度と軽量性とを要求される機械部品に好適に用いられることが開示されており、そのような機械部品は耐熱アルミ合金材料から熱間押出し加工の工程を経て形成されることが示されている。
【特許文献1】特開2006−104561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された耐熱アルミ合金材料を実際に熱間押出し加工してみると、加工条件によっては素材に表面割れが生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は表面割れが生じるのを抑制して熱間押出しにより良好な形状の耐熱アルミ合金製の形材を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、押出し直後の形材の温度が所定の温度範囲内となるように熱間押出しすれば表面割れが生じるのを抑制可能であることを見出した。すなわち、本発明による耐熱アルミ合金製の形材の製造方法は、耐熱アルミ合金からなる素材を熱間押出しすることにより形材を形成する耐熱アルミ合金製の形材の製造方法であって、押出し直後の前記形材の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行う。
【0007】
このように、押出し直後の形材の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行うことにより、表面割れが生じるのを抑制して熱間押出し成形により良好な形状の耐熱アルミ合金製の形材を形成することが可能となる。
【0008】
本発明による耐熱アルミ合金製の形材は、上記耐熱アルミ合金製の形材の製造方法によって製造される耐熱アルミ合金製の形材である。この耐熱アルミ合金製の形材では、その製造時に表面割れが生じるのを抑制することができるとともに、高温強靭性や優れた耐摩耗性及び優れた高温疲労特性を得ることができる。
【0009】
上記耐熱アルミ合金製の形材の製造方法において、前記素材を熱間押出しするのに、複数の入側ポートと、前記複数の入側ポートと繋がる単一の合流部と、前記合流部に繋がる成形空間とを有するダイスを備えた成形装置を使用し、前記成形装置は、前記ダイス内に圧入される前記素材を前記複数の入側ポートに分流させるとともに、これらの各入側ポートを通過した素材を前記合流部で合流させて溶着させ、その後、前記成形空間から中空断面状に前記形材を押し出すものであり、前記形材の押出し方向に垂直な断面の面積に対する前記ダイス内に圧入される前の前記素材の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上となるように設定されていることが好ましい。
【0010】
本願発明者は、鋭意検討した結果、上記のようにダイス内に圧入される素材を複数の入側ポートで分流させるとともに、これらの各入側ポートを通過した素材を合流部で合流させて溶着させ、その後、成形空間から中空断面状に形材を押し出す場合には、形材の押出し方向に垂直な断面の面積に対するダイス内に圧入される前の素材の押出し方向に垂直な断面の面積の比を11以上となるように設定することによって、各入側ポートを通過した素材同士の溶着部にその溶着部以外の非溶着部の強度の90%以上の強度を持たせることができることを見出した。この溶着部が非溶着部の強度の90%以上の強度を有するというレベルは、溶着部及び非溶着部それぞれでの強度のばらつきを考慮して溶着部と非溶着部との間でその強度に有意差がないと見なしてよいレベルである。すなわち、溶着部と非溶着部とがほぼ同等の強度を有していると見なせるので、中空状の形材全体の強度を均一に近づけることができる。このため、溶着部の強度が非溶着部の強度に比べて低くなる場合と異なり、形材に負荷がかかったときに溶着部が先に破損するのを抑制することができる。
【0011】
本発明による耐熱アルミ合金製の形材は、上記形材の押出し方向に垂直な断面の面積に対するダイス内に圧入される前の素材の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上となるように設定されている製造方法によって製造される中空状の耐熱アルミ合金製の形材であって、前記形材は、前記各入側ポートを通過した素材同士の溶着部と、その溶着部以外の非溶着部とを含み、前記溶着部は前記非溶着部の強度の90%以上の強度を有する。
【0012】
この耐熱アルミ合金製の形材では、形材内の溶着部が非溶着部の強度の90%以上の強度を有しており、この溶着部が非溶着部の強度の90%以上の強度を有するというレベルは、溶着部及び非溶着部それぞれでの強度のばらつきを考慮して溶着部と非溶着部との間でその強度に有意差がないと見なしてよいレベルである。すなわち、溶着部と非溶着部とがほぼ同等の強度を有していると見なせるので、中空状の形材全体の強度を均一に近づけることができる。これにより、溶着部の強度が非溶着部の強度に比べて低い場合と異なり、形材に負荷がかかったときに溶着部が先に破損するのを抑制することができる。
【0013】
本発明による耐熱アルミ合金製の形材の成形装置は、上記形材の押出し方向に垂直な断面の面積に対するダイス内に圧入される前の素材の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上となるように設定されている形材の製造方法に用いる成形装置であることを前提として、前記熱間押出しする前の前記素材が装填される内孔を有するコンテナと、前記内孔に繋がる複数の入側ポートと、前記複数の入側ポートと繋がる単一の合流部と、前記合流部に繋がる成形空間とを有するダイスと、前記内孔内の前記素材を押し出して前記ダイス内に圧入するステムとを備えている。そして、前記成形空間の押出し方向に垂直な断面の面積に対する前記コンテナの内孔の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上となるように設定されている。
【0014】
この耐熱アルミ合金製の形材の成形装置では、成形空間の押出し方向に垂直な断面の面積に対するコンテナの内孔の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上となるように設定されているので、形材の押出し方向に垂直な断面の面積に対するダイス内に圧入される前の素材の押出し方向に垂直な断面の面積の比を11以上となるように設定することができる。このため、上記と同様、形材内の溶着部に非溶着部の強度の90%以上の強度を持たせることができるので、中空状の形材全体の強度を均一に近づけることができる。その結果、溶着部の強度が非溶着部の強度に比べて低くなる場合と異なり、形材に負荷がかかったときに溶着部が先に破損するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、表面割れが生じるのを抑制して熱間押出しにより良好な形状の耐熱アルミ合金製の形材を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態による耐熱アルミ合金製の形材の製造プロセスが示されている。この製造プロセスで用いる耐熱アルミ合金は、300℃近傍の高温において高温強靭性、優れた耐摩耗性及び優れた疲労特性を有する材料である。そして、耐熱アルミ合金は、体積分率で約50%〜約90%の金属間化合物相と、残部が金属アルミニウムマトリックスとで構成されたアルミニウム基合金組織を含んでいる。さらに、耐熱アルミ合金は、上記金属間化合物相を形成する元素としてCr、Fe、Ti、Mn、V、Siから選択される元素を3種含んでおり、これら3種の元素を総和で約15質量%〜約50質量%含む組成を有している。
【0018】
なお、上記金属間化合物相の組成がCr:約5質量%〜約30質量%、Fe:約1質量%〜約20質量%、Ti:約1質量%〜約15質量%からなるとともに、上記金属間化合物相がAl−Cr系、Al−Fe系またはAl−Ti系であることがより好ましい。この構成によれば、耐熱アルミ合金の高温疲労特性をより向上させることが可能である。
【0019】
第1実施形態による製造プロセスでは、上記のような耐熱アルミ合金からなるビレット1(素材)を熱間押出しすることにより形材2を形成する。この際用いるビレット1は、いわゆるスプレーフォーミング法によって形成される。スプレーフォーミング法では、上記組成の耐熱アルミ合金を1250℃〜1600℃まで加熱して溶融させた後、100℃/h以上の冷却速度で冷却し、900℃〜1200℃まで冷却された時点で溶融状態の耐熱アルミ合金のスプレーを開始する。そして、スプレーした耐熱アルミ合金の粒子を堆積させることによってプリフォームを作成する。そして、密閉された真空容器中でこのプリフォームにHIP(Hot Isostatic Pressing)処理を行うことによってビレット1が作成される。このHIP処理は、高温下でプリフォームに高圧ガスの圧力を作用させてプリフォーム中の欠陥除去を行う処理である。なお、このようにして作成されるビレット1は円柱状に形成される。
【0020】
そして、第1実施形態による製造プロセスでは、ビレット1を成形装置10内に装填して熱間押出しを行う。熱間押出しに用いる成形装置10は、コンテナ12とステム14とダイス16とを備えている。
【0021】
コンテナ12には、ビレット1が装填される内孔12aが形成されており、この内孔12aはビレット1の押出し方向に沿って延びている。また、内孔12aは、押出し方向に垂直な断面が円形となるように形成されている。そして、内孔12aには図略の駆動機構によって駆動されるステム14が上記押出し方向に沿って進退移動可能に設けられている。ダイス16は、内孔12aの上記押出し方向(図1で右方向)の端部に設置されている。このダイス16には、内孔12aから押出されたビレット1が流入する成形孔16aが形成されている。そして、内孔12a内のビレット1をステム14で押出すことによりダイス16の成形孔16aの形状に対応する中実の形材2が押出されるようになっている。なお、この第1実施形態による製造方法では、図1に示すように平板状の形材2や角柱状の形材2等の種々の形状を有する中実の形材2を形成することができる。
【0022】
そして、第1実施形態における熱間押出しでは、成形装置10から押出された直後の形材2の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行う。従来の製造プロセスでは、耐熱アルミ合金素材を実際に熱間押出ししてみると、押出された形材の表面に割れが生じている場合があった。本願発明者は、このような表面割れの問題点を解消するために熱間押出し時の素材の温度に着目し、形材2に生じる表面割れと熱間押出し直後の形材2の温度との相関を調べる実験を行った。
【0023】
この実験では、熱間押出しにおいて形材2の押出し方向に垂直な断面の面積に対する上記内孔12a内におけるビレット1の押出し方向に垂直な断面の面積の比(以下、押出し比という)を14.5〜65.5の間で変化させて複数の形材2を形成した。そして、成形装置10から押出された直後の各形材2の温度を測定するとともにその形材2の表面に割れが生じているか否かを観察した。この実験の結果が図2に示されている。
【0024】
図2から判るように、押出された直後の形材2の温度が550℃に達する熱間押出しでは、各形材2で表面割れが生じ、良好な形状の形材を形成することができなかった。その一方、押出された直後の形材2の温度が550℃未満になるように熱間押出しを行った場合には、表面割れが生じることなく良好な形状の形材2を形成することができた。また、押出し直後の形材2の温度が350℃を下回るような熱間押出しでは、ビレット1の変形能が低くなり過ぎるため成形装置10からの形材2の押出しが困難となる。従って、押出し直後の形材2の温度が350℃以上550℃未満になるように熱間押出しを行うことにより、表面割れが生じるのを抑制して良好な形状の耐熱アルミ合金製の形材2を押出し成形できることが判明した。
【0025】
押出し直後の形材2の温度は、コンテナ12の内孔12aに装填する前のビレット1の温度、ビレット1からの熱の放散量、コンテナ12の温度及び押出し成形時に生じる加工発熱等の要因によって変化するが、コンテナ12の内孔12aに装填する前のビレット1の加熱温度を調節することによって押出し直後の形材2の温度を所定の温度に調節することができる。具体的には、一度実際に熱間押出しを行って押出し直後の形材2の温度を測定し、その形材2の温度が550℃よりも高い場合には上記ビレット1の加熱温度を低下させる。このように、温度条件を設定するための押出しを行ってそのときの押出し直後の形材の温度に基づいて上記ビレット1の加熱温度を調節することにより、押出し直後の形材2の温度を上記350℃以上550℃未満の範囲内に入るように容易に調節することが可能である。
【0026】
以上説明したように、第1実施形態では、押出し直後の形材2の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行うことにより、表面割れが生じるのを抑制して押出し成形により良好な形状の耐熱アルミ合金製の形材2を形成することができる。
【0027】
また、第1実施形態の製造方法によって製造される耐熱アルミ合金製の形材2では、高温強靭性や優れた耐摩耗性及び優れた高温疲労特性を得ることができる。
【0028】
(第2実施形態)
この第2実施形態による耐熱アルミ合金製の形材の製造方法は、上記第1実施形態による製造方法と異なり、図3に示すように中空断面状の形材22(以下、中空形材22という)が連続的に押し出される製造方法である。なお、図3には、本発明の第2実施形態による製造プロセスが示されている。この第2実施形態による製造方法では、後述するダイス36の成形空間Sの形状によって角筒形状の中空形材22a、角筒内の空間が長手方向に沿った2つの空間に隔壁で仕切られた形状を有する中空形材22c等の種々の形状の中空形材22を形成可能である。この第2実施形態の以下の説明では、角筒形状の中空形材22aを形成する場合について説明する。
【0029】
第2実施形態では上記第1実施形態と同様、スプレーフォーミング法により形成した耐熱アルミ合金からなるビレット1を成形装置30に装填し、熱間押出しすることにより中空形材22aを形成する。成形装置30は、コンテナ32と、ステム34と、ダイス36と、ダイホルダ38とを備えている。コンテナ32及びステム34の構成は、上記第1実施形態によるコンテナ12及びステム14の構成と同様であり、コンテナ32の内孔32a内に図略の駆動機構によって駆動されるステム34がビレット1の押出し方向に沿って進退移動可能に設けられている。
【0030】
ダイホルダ38は、コンテナ32に対してビレット1の押出し方向の端部に配設されており、ダイホルダ38はこの位置で固定されている。ダイホルダ38には、ビレット1の押出し方向に貫通する保持孔38aが形成されており、この保持孔38aにダイス36が嵌合されている。
【0031】
ダイス36は、雄型40と雌型41とによって構成されている。雄型40と雌型41とは、ビレット1の押出し方向にこの順番で設けられており、雌型41に対して雄型40が嵌め合わされている。雄型40には、図4に示すように、押出し方向に貫通する複数のエントリーポート40a(入側ポート)が形成されており、この複数のエントリーポート40aはコンテナ32の内孔32aと繋がっている。そして、ステム34によりコンテナ32の内孔32aから押出されたビレット1が各エントリーポート40aで素材1a(図5参照)に分流されて圧入されるようになっている。また、雄型40は、ビレット1の押出し方向に突設された突出部40bを有している。この突出部40bの雌型41側の端部は、その押出し方向に垂直な断面が中空形材22aの内部空間に対応する矩形状になるように形成されている。
【0032】
雌型41には、雄型40の複数のエントリーポート40aと繋がる単一の合流部41aと、その合流部41aに繋がる成形孔41bとが形成されている。雌型41の合流部41aは、上記各エントリーポート40aと成形孔41bとを連通させるものである。成形孔41bは、押出し方向に垂直な断面が中空形材22aの外周形状に対応する矩形状になるように形成されており、この成形孔41b内に雄型40の突出部40bが成形孔41bの内壁面との間に隙間を有した状態で挿入されている。これにより、雄型40の突出部40bと雌型41の成形孔41bの内壁面とによって中空形材22aの角筒形状に対応する角形の環状の成形空間S(図3参照)が構成されている。この成形空間Sは、上記合流部41aと繋がっている。
【0033】
そして、ステム34によりコンテナ32の内孔32aからビレット1が圧入されるとともに各エントリーポート40aで素材1a(図5参照)に分流され、その状態で素材1aが各エントリーポート40aから流れ出る。そして、各エントリーポート40aを通過した素材1aは、合流部41aで合流されるとともに互いに溶着して一体の素材1b(図5参照)となる。この素材1bが成形空間S(図3参照)を通って押出されることにより角筒形状の中空形材22aが形成される。なお、この第2実施形態による製造方法でも上記第1実施形態による製造方法と同様、コンテナ32の内孔32aに装填する前のビレット1の加熱温度を調節することにより、押出し直後の中空形材22の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行う。
【0034】
そして、第2実施形態における熱間押出しでは、押出し比が11以上となるように設定する。すなわち、中空形材22aの押出し方向に垂直な断面の面積に対するダイス36内に圧入される前のビレット1(コンテナ32の内孔32a内でのビレット1)の押出し方向に垂直な断面の面積の比が11以上になるように設定する。中空形材22aの押出し方向に垂直な断面の面積は、上記成形空間Sの押出し方向に垂直な断面の面積に相当する一方、ダイス36内に圧入される前のビレット1の押出し方向に垂直な断面の面積は、上記内孔32aの押出し方向に垂直な断面の面積に相当する。従って、ダイス36の設計時に雄型40の突出部40bの外径と雌型41の成形孔41bの内径とを調節して成形空間Sの上記断面積を調節するとともに、コンテナ32の設計時に内孔32aの径を調節して内孔32aの上記断面積を調節することにより、上記押出し比が11以上となるように設定する。
【0035】
中空形材22a中には、各エントリーポート40aを通過した素材1a同士の溶着部22d(図5参照)と、溶着部22d以外の部分である非溶着部22eとが含まれる。溶着部22dは、中空形材22aの各角部に配設されているとともに、中空形材22aの押出し方向の全体に亘って形成されている。そして、溶着部22dは非溶着部22eに比べて強度が劣る場合が多い。溶着部22dの強度が非溶着部22eの強度よりもあまりに低くなると、中空形材22aの使用時に負荷が掛かったときに溶着部22dが先に破損する虞がある。そこで、本願発明者は、溶着部22dの強度低下を抑制するために熱間押出し時の上記押出し比に着目し、溶着部22dの強度と押出し比との相関関係を調べる実験を行った。
【0036】
この実験では、図6に示すように溶着部22dが幅方向の中央部に位置する試験用の中空形材22aを形成した。この際、押出し直後の中空形材22aの温度が530℃となるように上記製造プロセスと同様の熱間押出しを行うとともに、上記押出し比を変化させて複数の中空形材22aを形成した。そして、図6に示すように、形成した各中空形材22aから溶着部22dを含む試験片50を切り出し、引張り強度試験に供した。引張り強度試験では、溶着部22dを挟んで両側に位置する試験片50の端部を試験片50が破断するまでそれぞれ反対側に引張り、その際の最大強度を測定した。また、この引張り強度試験は、試験片50を300℃に加熱した状態で行った。そして、各押出し比の条件毎に3つの試験片50について引張り強度試験を行い、それらの平均値を算出した。この実験の結果が図7に示されている。なお、図7において溶着部22dの引張り強度は非溶着部22eの引張り強度に対する割合(%)で示されている。
【0037】
図7から、上記押出し比を11以上に設定して作成した中空形材22aでは、溶着部22dが非溶着部22eの引張り強度の90%以上の引張り強度を有することが判る。この溶着部22dが非溶着部22eの引張り強度の90%以上の引張り強度を有するというレベルは、溶着部22d及び非溶着部22eそれぞれでの強度のばらつきを考慮して溶着部22dと非溶着部22eとの間でその強度に有意差がないと見なしても良いレベルである。一方、図7から、上記押出し比を7に設定して作成した中空形材22aでは、溶着部22dの強度が非溶着部22eの引張り強度の約50%しかなく、この押出し比では、溶着部22dの強度が非溶着部22eの強度に比べてかなり低下することが判る。従って、この実験から上記押出し比を11以上に設定することによって中空形材22a中の溶着部22dの強度を非溶着部22eの強度とほぼ同等にすることが可能であることが判明した。
【0038】
以上説明したように、第2実施形態においても押出し直後の中空形材22の温度が350℃以上550℃未満となるように熱間押出しを行うので、表面割れが生じるのを抑制して熱間押出しにより良好な形状の耐熱アルミ合金製の中空形材22を形成することができるという上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、第2実施形態では、中空形材22aの押出し方向に垂直な断面の面積に対するダイスに圧入される前のビレット1の押出し方向に垂直な断面の面積の比(押出し比)を11以上に設定することによって、中空形材22a中の溶着部22dに非溶着部22eの強度の90%以上の強度、すなわち非溶着部22eとほぼ同等の強度を持たせることができる。これにより、中空形材22a全体の強度を均一に近づけることができるので、溶着部22dの強度が非溶着部22eの強度に比べて低くなる場合と異なり、中空形材22aに負荷がかかったときに溶着部22dが先に破損するのを抑制することができる。
【0040】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0041】
例えば、上記第2実施形態では、雄型40と雌型41とが別体に構成されたダイス36を用いたが、これに限らず、雄型40と雌型41とが一体化されたダイスを用いてもよい。
【0042】
また、上記第2実施形態では、中空断面状の中空形材22を形成したが、これに限らず、上記中空形材22の一部が押出し方向に沿って開口された形状を有する形材や、一部の領域のみに中空断面状の部分を含む形材等を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態による耐熱アルミ合金製の形材の製造プロセスを説明するための図である。
【図2】第1実施形態による製造プロセスにおいて熱間押出し直後の形材の温度と形材の表面割れとの相関関係を示した相関図である。
【図3】本発明の第2実施形態による耐熱アルミ合金製の中空形材の製造プロセスを説明するための図である。
【図4】図3に示した製造プロセスに用いる成形装置で中空形材を押出す状態を示した図である。
【図5】第2実施形態による成形装置内での素材の形状を表した斜視図である。
【図6】中空形材から引張り強度試験に供する試験片の採取方法を説明するための図である。
【図7】中空形材中の溶着部の引張り強度と押出し比との相関関係を示した相関図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ビレット(素材)
2 形材
10、30 成形装置
22、22a、22c 中空形材
36 ダイス
40a エントリーポート(入側ポート)
41a 合流部
22d 溶着部
22e 非溶着部
S 成形空間
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司

【識別番号】100096150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝夫

【識別番号】100099955
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 次郎

【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久


【公開番号】 特開2008−23532(P2008−23532A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195724(P2006−195724)