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【発明の名称】 ボルトの製造方法、ボルト、ボルト用の形材、ボルト用の形材の成形装置及びボルト用の形材の成形方法
【発明者】 【氏名】栄 輝

【要約】 【課題】製造工程において素材に割れが生じるのを抑制して耐熱アルミ合金製のボルトを形成可能とする。

【構成】このボルト1の製造方法は、耐熱アルミ合金を用いて、熱間押出し成形により形材7を形成する押出し工程と、形材7から形成される素材8を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルト1を形成する切削工程とを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱アルミ合金を用いて、熱間押出し成形により形材を形成する押出し工程と、
前記形材を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルトを形成する切削工程とを有する、ボルトの製造方法。
【請求項2】
前記押出し工程において、前記形材を円柱状または正多角柱状に形成する、請求項1に記載のボルトの製造方法。
【請求項3】
前記形材を所定長さ毎に切断して複数の素材を形成する切断工程をさらに備え、
前記切削工程において、前記各素材を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルトを形成する、請求項1または2に記載のボルトの製造方法。
【請求項4】
前記押出し工程において、前記形材を正多角柱状の第1部分と、押出し方向に垂直な断面内における一方向の幅が前記第1部分の幅よりも小さい第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分間を連結するとともに前記一方向の幅が前記第1部分側から前記第2部分側へ行くに従って減少する第3部分とが押出し方向に沿って繰り返し配置される形状に形成し、
前記切断工程において、前記形材を前記第1部分及び前記第2部分で切断することにより、前記第1部分に対応する正多角柱状の部分とそれに連続する前記第3部分及び前記第2部分とを含む前記複数の素材を形成し、
前記切削工程において、前記正多角柱状の部分をボルト頭とするとともに前記各素材の第2部分及び第3部分を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルトを形成する、請求項3に記載のボルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のボルトの製造方法によって製造される耐熱アルミ合金製のボルト。
【請求項6】
請求項4に記載のボルトの製造方法に用いる形材であって、
耐熱アルミ合金を用いて熱間押出し成形により形成され、前記第1部分と前記第2部分と前記第3部分とが押出し方向に沿って繰り返し設けられた、ボルト用の形材。
【請求項7】
請求項6に記載のボルト用の形材の成形装置であって、
押出し方向に対して傾斜した方向に延びる複数のガイド溝を有する成形孔が設けられた固定ダイスと、
前記各ガイド溝に沿って移動可能に前記成形孔内に配設されるとともに前記形材を両側から挟むように配置される一対の可動ダイスとを備え、
前記一対の可動ダイスは、前記各ガイド溝に沿った移動に伴って互いの間隔が変化するとともに、前記成形孔内の押出し方向に沿った所定位置で前記第1部分に対応する正多角柱を形成する、ボルト用の形材の成形装置。
【請求項8】
請求項6に記載のボルト用の形材の成形方法であって、
押出し方向に対して傾斜した方向に延びる複数のガイド溝を有する成形孔が設けられた固定ダイスと、前記各ガイド溝に沿って移動可能に前記成形孔内に配設されるとともに前記形材を両側から挟むように配置される一対の可動ダイスとを備え、前記一対の可動ダイスは、前記各ガイド溝に沿った移動に伴って互いの間隔が変化するとともに、前記成形孔内の押出し方向に沿った所定位置で前記第1部分に対応する正多角柱を形成する成形装置を使用し、
前記一対の可動ダイスを所定位置で停止させた状態で前記第1部分を押出した後、その一対の可動ダイスを前記ガイド溝に沿って互いの間隔が狭まる方向へ移動させながら前記第3部分を押出し、さらにその後、前記一対の可動ダイスを停止させて前記第2部分を押出す、ボルト用の形材の成形方法。
【請求項9】
前記一対の可動ダイスの移動速度を変えることによって前記第3部分の幅の変化率を異ならせる、請求項8に記載のボルト用の形材の成形方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱アルミ合金を材料として用いたボルトの製造方法、ボルト、ボルト用の形材、ボルト用の形材の成形装置及びボルト用の形材の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼製ボルトの製造方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された鋼製ボルトの製造方法では、鋼塊を圧延して線材を形成する圧延工程と、上記線材を焼鈍して軟化させる焼鈍工程と、焼鈍後の線材表面に潤滑皮膜を形成する潤滑皮膜処理工程と、線材を型を通して引き抜き加工することにより伸線処理を行う伸線工程と、転造によって線材にねじ部の成形を行うボルト成形工程とを経て鋼製ボルトが形成されることが開示されている。また、上記特許文献2には、ボルト成形工程においてパンチとダイスとを用いて線材を圧造することにより所定の形状のボルト頭を形成することが開示されている。
【特許文献1】特開平7−11412号公報
【特許文献2】特開平1−99740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び特許文献2に開示された製造方法により形成される鋼製ボルトは、比強度(重量に対する強度の比)があまり高くないため、所定の強度を得るためにはボルトの重量が増大し、軽量化を図るのが困難になるという問題点がある。
【0005】
ところで、特開2006−104561号公報には、耐熱アルミ合金材料が開示されている。このような耐熱アルミ合金材料は高い比強度を有しているので、この材料をボルト用の材料として用いれば、高強度で比較的軽量なボルトを得られる可能性があり、上記特許文献1及び特許文献2に開示された鋼製ボルトにおける問題点を解消することが可能である。しかしながら、耐熱アルミ合金材料を用いて上記鋼製ボルトの製造方法と同様の工程によりボルトを形成しようとすると、一般的に冷間で引き抜き加工を行う伸線工程において、素材に割れが生じ、ボルトを形成するのが困難になる。さらに、伸線工程において割れを発生させることなくボルトの素材を形成できたとしても、塑性変形に伴う大きな力が素材に付加されるボルト頭の圧造時及びねじ部の転造時において素材に割れが生じ、ボルトを形成するのが困難になる。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は製造工程において素材に割れが生じるのを抑制して耐熱アルミ合金製のボルトを形成可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明によるボルトの製造方法は、耐熱アルミ合金を用いて、熱間押出し成形により形材を形成する押出し工程と、前記形材を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルトを形成する切削工程とを有している。
【0008】
このボルトの製造方法では、熱間押出し成形により形材を形成するので、冷間の引き抜き加工により形材を形成する場合と異なり、加熱されて柔軟性が増した耐熱アルミ合金から形材を形成することができる。このため、形材の形成時に割れが生じるのを抑制することができる。さらに、このボルトの製造方法では、形材を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルトを形成するので、ボルト頭を圧造により形成するとともにねじ部を転造により形成する場合と異なり、塑性変形のための大きな力が素材にかかるのを抑制することができる。これにより、そのような大きな力が素材にかかることに起因して素材に割れが生じるのを抑制することができる。従って、このボルトの製造方法では、製造工程において素材に割れが生じるのを抑制して耐熱アルミ合金製のボルトを形成可能とすることができる。
【0009】
前記ボルトの製造方法において、前記押出し工程では、前記形材を円柱状または正多角柱状に形成してもよい。押出し工程において形材を正多角柱状に形成する場合には、その正多角柱状を流用してボルト頭を形成することができる。これにより、ボルトの形成時にボルト頭を切削加工する工程を削減することができるとともに、その切削加工により生じる材料の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0010】
前記ボルトの製造方法において、前記形材を所定長さ毎に切断して複数の素材を形成する切断工程をさらに備え、前記切削工程において、前記各素材を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルトを形成するのが好ましい。このように構成すれば、長さの大きい形材から切断工程において多数の素材を形成することができるので、押出し工程においてボルトに対応する長さの素材を1つずつ押出して形成する場合に比べて素材の生産性を向上させることができる。その結果、ボルトの生産性を向上させることができる。
【0011】
前記ボルトの製造方法において、前記押出し工程では、前記形材を正多角柱状の第1部分と、押出し方向に垂直な断面内における一方向の幅が前記第1部分の幅よりも小さい第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分間を連結するとともに前記一方向の幅が前記第1部分側から前記第2部分側へ行くに従って減少する第3部分とが押出し方向に沿って繰り返し配置される形状に形成し、前記切断工程において、前記形材を前記第1部分及び前記第2部分で切断することにより、前記第1部分に対応する正多角柱状の部分とそれに連続する前記第3部分及び前記第2部分とを含む前記複数の素材を形成し、前記切削工程において、前記正多角柱状の部分をボルト頭とするとともに前記各素材の第2部分及び第3部分を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルトを形成するのが好ましい。このように構成すれば、押出し成形により形成した正多角柱状の第1部分をボルト頭として流用することができるので、ボルト頭を切削加工する工程を削減することができるとともに、その切削加工により生じる材料の歩留まりの低下を抑制することができる。さらに、ボルト頭として用いられる第1部分よりも押出し方向に垂直な断面内における一方向の幅が小さい第2部分及び第3部分を切削加工することによりボルトを形成することができるので、その一方向の幅が押出し方向に沿って第1部分と等しく一定である素材を切削加工することによりボルトを形成する場合に比べて切削量を少なくすることができる。これにより、材料の歩留まりの低下をより抑制することができる。
【0012】
本発明によるボルトは、上記いずれかのボルトの製造方法によって形成される耐熱アルミ合金製のボルトである。このボルトでは、その製造時に割れが生じるのを抑制することができるとともに、高い比強度を得ることができる。これにより、ボルトにおいて所定の強度を確保しながら軽量化を図ることができる。
【0013】
本発明によるボルト用の形材は、上記第1部分、第2部分及び第3部分を含む形材からボルトを形成する製造方法に用いる形材であることを前提として、耐熱アルミ合金を用いて熱間押出し成形により形成され、前記第1部分と前記第2部分と前記第3部分とが押出し方向に沿って繰り返し設けられている。
【0014】
このボルト用の形材では、正多角柱状の第1部分が設けられているので、各第1部分で切断してボルト用の複数の素材を形成することにより、第1部分をボルト頭として流用することができる。これにより、ボルトの形成時にボルト頭を切削加工する工程を削減することができるとともに、その切削加工により生じる材料の歩留まりの低下を抑制することができる。さらに、ボルト頭として用いる第1部分よりも押出し方向に垂直な断面内における一方向の幅が小さい第2部分及び第3部分を切削加工してボルトを形成すれば、その一方向の幅が押出し方向に沿って第1部分と等しく一定である素材を切削加工してボルトを形成する場合に比べて切削量を少なくすることができるので、材料の歩留まりの低下をより抑制することができる。
【0015】
本発明によるボルト用の形材の成形装置は、前記ボルト用の形材を成形するための成形装置であることを前提として、押出し方向に対して傾斜した方向に延びる複数のガイド溝を有する成形孔が設けられた固定ダイスと、前記各ガイド溝に沿って移動可能に前記成形孔内に配設されるとともに前記形材を両側から挟むように配置される一対の可動ダイスとを備えている。そして、前記一対の可動ダイスは、前記各ガイド溝に沿った移動に伴って互いの間隔が変化するとともに、前記成形孔内の押出し方向に沿った所定位置で前記第1部分に対応する正多角柱を形成する。
【0016】
このボルト用の形材の成形装置では、形材を両側から挟むように配置される一対の可動ダイスが各ガイド溝に沿った移動に伴って互いの間隔が変化するとともに、成形孔内の押出し方向に沿った所定位置で形材の第1部分に対応する正多角形を形成するので、その所定位置で一対の可動ダイスにより第1部分を形成した後、一対の可動ダイスをガイド溝に沿って互いの間隔が狭まる方向に移動させながら押出し成形を行うことにより第1部分から上記一方向における幅が減少する第3部分を形成することができるとともに、その後、可動ダイスを停止させて押出し成形を行うことにより第2部分を形成することができる。また、これとは逆の工程で第2部分から第3部分及び第1部分を連続して押出し成形することもできる。従って、このボルト用の形材の成形装置では、これらの形成工程を繰り返し行うことにより押出し方向に沿って第1部分と第3部分と第2部分とが繰り返し設けられた形材を容易に形成することができる。
【0017】
本発明によるボルト用の形材の成形方法は、前記ボルト用の形材を成形するための成形方法であることを前提として、押出し方向に対して傾斜した方向に延びる複数のガイド溝を有する成形孔が設けられた固定ダイスと、前記各ガイド溝に沿って移動可能に前記成形孔内に配設されるとともに前記形材を両側から挟むように配置される一対の可動ダイスとを備え、前記一対の可動ダイスは、前記各ガイド溝に沿った移動に伴って互いの間隔が変化するとともに、前記成形孔内の押出し方向に沿った所定位置で前記第1部分に対応する正多角柱を形成する成形装置を使用し、前記一対の可動ダイスを所定位置で停止させた状態で前記第1部分を押出した後、その一対の可動ダイスを前記ガイド溝に沿って互いの間隔が狭まる方向へ移動させながら前記第3部分を押出し、さらにその後、前記一対の可動ダイスを停止させて前記第2部分を押出す。
【0018】
このボルト用の形材の成形方法では、固定ダイスの成形孔内の押出し方向に沿った所定位置で一対の可動ダイスを停止させた状態で第1部分を押出した後、その一対の可動ダイスをガイド溝に沿って互いの間隔が狭まる方向へ移動させながら第3部分を押出し、さらにその後、一対の可動ダイスを停止させて第2部分を押出すので、第1部分と、その第1部分から上記一方向における幅が減少する第3部分と、その第3部分に繋がる第2部分とを連続して容易に形成することができる。従って、このような形成工程を繰り返し行うことにより押出し方向に沿って第1部分と第3部分と第2部分とが繰り返し設けられた形材を容易に形成することができる。
【0019】
前記ボルト用の形材の成形方法において、前記一対の可動ダイスの移動速度を変えることによって前記第3部分の幅の変化率を異ならせるようにしてもよい。このように構成すれば、第3部分において上記一方向における幅の変化率が異なる形材を押出し成形することが可能となるので、形材の設計の自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、製造工程において素材に割れが生じるのを抑制して耐熱アルミ合金製のボルトを形成可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態によるボルトの製造方法によって形成するボルト1の全体構造が示されている。このボルト1は、耐熱アルミ合金製であり、略円柱状の軸部2と、その軸部2の軸方向の一方端側に繋がる正六角柱状のボルト頭3とを有している。そして、軸部2の軸方向の他方端から一方端側に掛けての所定の範囲にねじ部4が形成されている。
【0023】
ボルト1の材料として用いられる耐熱アルミ合金は、300℃近傍の高温においても高強靭性、良好な耐摩耗性及び良好な疲労特性を有する材料である。また、耐熱アルミ合金は、鋼に比べて約1.6倍〜約3.0倍の高い比強度を有している。そして、耐熱アルミ合金は、体積分率で約50%〜約90%の金属間化合物相と、残部が金属アルミニウムマトリックスとで構成されたアルミニウム基合金組織を含んでいる。そして、耐熱アルミ合金は、上記金属間化合物相を形成する元素としてCr、Fe、Ti、Mn、V、Siから選択される元素を3種含んでおり、これら3種の元素を総和で約15質量%〜約50質量%含む組成を有している。
【0024】
なお、上記金属間化合物相の組成がCr:約5質量%〜約30質量%、Fe:約1質量%〜約20質量%、Ti:約1質量%〜約15質量%からなるとともに、上記金属間化合物相がAl−Cr系、Al−Fe系またはAl−Ti系であることがより好ましい。この構成によれば、耐熱アルミ合金の高温疲労特性をより向上させることが可能である。
【0025】
図2には、上記のような耐熱アルミ合金製のボルト1を形成するための第1実施形態による製造プロセスが示されている。この製造プロセスでは、押出し工程と、切断工程と、切削工程とを順番に行うことによってボルト1を形成する。
【0026】
まず、押出し工程では、上記耐熱アルミ合金からなるビレット6を成形装置10内に装填するとともに熱間押出し成形により正六角柱状または円柱状の形材7を形成する。この熱間押出し成形では、ビレット6を約350℃〜約500℃に加熱した後、成形装置10内に充填する。これにより、成形装置10から押し出された形材7の温度が約350℃〜約550℃となるようにする。また、成形装置10は、コンテナ12とステム14と正六角形または円形の開口部16aを有するダイス16とを備えている。そして、ビレット6はコンテナ12内に装填され、このコンテナ12内のビレット6をステム14で押出すことによりダイス16の開口部16aの形状に対応する正六角柱状または円柱状の形材7が形成されるようになっている。
【0027】
次に、切断工程において、形材7を作成したいボルト1の全長に対応する所定長さ毎に切断することにより正六角柱状または円柱状の複数の素材8を形成する。
【0028】
その後、切削工程において、各素材8をバイト18(切削工具)によって切削加工することによりボルト1を形成する。この際、正六角柱状の素材8を用いてボルト1を形成する場合には、素材8の軸方向における一方の端部近傍をそのままボルト頭3として流用可能である。一方、円柱状の素材8を用いてボルト1を形成する場合には、素材8の軸方向における一方の端部近傍を切削加工することにより正六角柱状のボルト頭3を形成する。そして、素材8のボルト1の軸部2に対応する領域を切削することにより軸部2の外径に対応する円柱状の部分を形成した後、その円柱状の部分の周面にねじ山を切削加工により形成することによってねじ部4を形成する。このようにして、ボルト1が形成される。
【0029】
以上説明したように、第1実施形態では、押出し工程において熱間押出し成形により形材7を形成するので、冷間の引き抜き加工により形材7を形成する場合と異なり、加熱されて柔軟性が増した耐熱アルミ合金製のビレット6から形材7を形成することができる。このため、形材7の形成時に割れが生じるのを抑制することができる。さらに、第1実施形態では、素材8を切削加工することにより耐熱アルミ合金製のボルト1を形成するので、ボルト頭3を圧造により形成するとともにねじ部4を転造により形成する場合と異なり、塑性変形のための大きな力が素材8にかかるのを抑制することができる。これにより、そのような大きな力が素材8にかかることに起因して素材8に割れが生じるのを抑制することができる。従って、このボルト1の製造方法では、製造工程において形材7及び素材8に割れが生じるのを抑制して耐熱アルミ合金製のボルト1を形成可能とすることができる。そして、このように形成された耐熱アルミ合金製のボルト1では、高い比強度を得ることができるので、ボルト1において所定の強度を確保しながら軽量化を図ることができる。
【0030】
また、第1実施形態では、押出し工程において形材7を正多角柱状に形成する場合には、その正多角柱状を流用してボルト頭3を形成することができる。これにより、ボルト1の形成時にボルト頭3を切削加工する工程を削減することができるとともに、その切削加工により生じる材料の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0031】
また、第1実施形態では、切断工程において形材7を所定長さ毎に切断して複数の素材8を形成するとともに、切削工程において各素材8を切削加工することによりボルト1を形成する。これにより、長さの大きい形材7から切断工程において多数の素材8を形成することができるので、押出し工程においてボルト1に対応する長さの素材8を1つずつ押出して形成する場合に比べて素材8の生産性を向上させることができる。その結果、ボルト1の生産性を向上させることができる。
【0032】
(第2実施形態)
この第2実施形態の製造方法では、上記第1実施形態の製造方法によって形成されるボルト1(図1参照)と同様の構成を有するボルト1が形成される。また、この第2実施形態によるボルト1の製造プロセスは、図2に示した上記第1実施形態によるボルトの製造プロセスと同様、押出し工程、切断工程及び切削工程からなる。ただし、この第2実施形態では、押出し工程において形成される形材27の形状及びその押出し方法が上記第1実施形態とは異なる。
【0033】
図3には、第2実施形態の押出し工程において形成される形材27の構成の一部が示されている。この形材27は押出し工程において熱間押出し成形により形成されるものであり、図3中のA方向が押出し方向となっている。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、押出し工程において形材27を押出し方向に垂直な断面内における図3のB方向の幅が一定でない形状に形成する。
【0034】
具体的には、形材27は、正六角柱状の第1部分27aと、押出し方向に垂直な断面内における図3のB方向の幅が第1部分27aの幅よりも小さい第2部分27bと、第1部分27a及び第2部分27b間を連結するとともに上記B方向の幅が第1部分27a側から第2部分27b側へ行くに従って減少する第3部分27c,27dとが押出し方向(A方向)に沿って繰り返し配置された形状を有している。なお、第2部分27bは、第1部分27aに対応する正六角柱が図3のB方向において縮小された六角柱状に形成されている。
【0035】
図4には、本発明の第2実施形態によるボルトの製造方法において上記形材27を成形する成形装置30の構造が概略的に示されている。この成形装置30は、コンテナ32とステム34と固定ダイス36と一対の可動ダイス38,38とを備えている。コンテナ32にはビレット(図示省略)が装填され、このコンテナ32内のビレットをステム34で押出すようになっている。
【0036】
固定ダイス36は、コンテナ32の押出し側端部に固定されるものであり、押出し方向に貫通する成形孔40が設けられている。この成形孔40は、押出し方向に垂直な断面が略矩形状に形成されており、この断面内における一方向(図4のY方向)の幅が押出し方向に沿って一定に形成されている。すなわち、Y方向に対向する一対の内面は平行な平面となっている。一方、前記断面内におけるY方向に直交する方向(図4のX方向)の幅が押出し方向に沿って次第に広くなる傾斜状の平面として形成されている。
【0037】
成形孔40には、可動ダイス38,38を案内するためのガイド溝42,42が設けられている。このガイド溝42,42は、成形孔40のY方向端部に設けられるものであり、各可動ダイス38,38に対応するように2つ形成されている。そして、両ガイド溝42,42は、押出し方向に沿って両者の間隔が広がるように押出し方向に対して傾斜する配置となっている。また、両ガイド溝42,42は、押出し方向に対してそれぞれ同じ傾斜角度となっている。
【0038】
一対の可動ダイス38,38は、図5に示すように、互いに対称な形状に形成されている。各可動ダイス38は、平板状に形成されており、摺接面48と成形面50とを有する。そして、各可動ダイス38は、押出し方向に直交する姿勢で固定ダイス36の成形孔40内にそれぞれ配設されており、固定ダイス36のガイド溝42にはめ込まれているとともに、図4のX方向に対向するように配置されている。この状態で、可動ダイス38は、摺接面48が成形孔40のガイド面52上を摺動するようになっており、可動ダイス38はガイド溝42に沿って移動することによって押出し方向に対して傾斜した方向に移動可能となっている。
【0039】
摺接面48は押出し方向に対するガイド面52の傾斜角と同じ角度で成形面50に対して傾斜している。両可動ダイス38,38の成形面50,50は互いに対向していて、この両成形面50,50間をビレットが通過して上記形材27が押出されるようになっている。また、両可動ダイス38,38の成形面50,50は、その長手方向の中間部において120°の角度で屈曲しており、形材27の上記第1〜第3部分27a〜27dの図3のB方向に位置する両角部に対応した形状となっている。
【0040】
可動ダイス38,38は、図示省略した駆動機構により押出し方向に沿ってガイド溝42,42にガイドされながら図4の上下に駆動されるようになっている。この駆動機構は、両可動ダイス38,38が押出し方向に直交する方向に対向した状態を維持させながら、両可動ダイス38,38を同時に移動させるように構成されている。このため形材27を真っ直ぐに押出すことができるようになっている。そして、可動ダイス38,38がガイド溝42,42に沿って図4の上下に駆動されることにより可動ダイス38,38間の間隔が変化するように構成されている。具体的には、可動ダイス38,38が押出し方向の上流側へ駆動されるに従って可動ダイス38,38間の間隔が狭まる一方、可動ダイス38,38が押出し方向の下流側へ駆動されるに従って可動ダイス38,38間の間隔が広がるように構成されている。
【0041】
この成形装置30によって形材27を成形する押出し工程では、約350℃〜約500℃の温度に加熱した耐熱アルミ合金からなるビレットをコンテナ32内に装填し、ビレットをステム34によって成形孔40内に押出す。このときビレットは図4における上側から成形孔40内に供給され、下方に押出される。
【0042】
押出し時において図6のように両可動ダイス38,38がガイド溝42,42の上流側の所定位置で固定されていれば、形材27は一定の幅で押出される。このときは幅の狭い六角柱状の第2部分27bが押出されることになる。そして、図7に示すように、押出し中に両可動ダイス38,38を駆動機構によって下流側へ移動させると、可動ダイス38,38間の間隔が次第に広くなるため、それに伴って押出される形材27の幅が次第に広がる。このようにして、第3部分27cが成形されることになる。
【0043】
その後、図8に示すように、可動ダイス38,38がガイド溝42,42における下流側の所定位置に固定されると、形材27が一定の幅で押出される。このとき、幅の広い正六角柱状の第1部分27aが押出されることになる。そして、図9に示すように、両可動ダイス38,38を今度は上流側へ移動させると、可動ダイス38,38間の間隔が次第に狭くなる。これにより、押出される形材27の幅が次第に狭くなり、第3部分27dが形成される。その後、可動ダイス38,38がガイド溝42,42における上流側の所定位置に固定されると、図10に示すように再び第2部分27bが押出されることになる。これらを繰り返すことによって図3に示す形材27を押出し成形することができる。
【0044】
押出し成形時には、ステム34が一定速度に維持されて移動する。このため、第1部分27a及び第2部分27bの押出し時のように両可動ダイス38,38間の間隔が一定の場合には、図11に符号Cで示すように形材27の押出し速度が一定となり、押出し時間から形材27の押出し長さを演算することができる。したがって、押出し時間に基づいて可動ダイス38,38の移動を開始するタイミングを制御することができる。この場合として、図11には例えば第2部分27bの押出し長さをLa、Leとして示し、また第1部分27aの押出し長さをLcとして示している。
【0045】
一方、第3部分27c,27dの押出し時のように可動ダイス38,38を徐々に移動させる場合には、その移動量に応じて押出し量が変化することになる(図11の符号D参照)。したがって可動ダイス38,38の移動量に基づいて押出し長さを演算することになるので、可動ダイス38,38の移動量に応じた経過時間Δtごとの押出し長さΔLを積分することにより、第3部分27c,27dの押出し長さを得ることができる。これにより、可動ダイス38,38を停止させるタイミングを制御して必要な押出し長さを得ることができる。図11には、例えば第3部分27c,27dの押出し長さをLb,Ldとして示している。第3部分27cの押出し時には、形材27の押出し速度が徐々に小さくなるのに対し、第3部分27dの押出し時には、押出し速度が徐々に大きくなる。
【0046】
そして、第2実施形態では、上記のように形成した形材27を切断工程において各第1部分27aの軸方向の中間位置及び各第2部分27bの軸方向の中間位置においてそれぞれ切断することにより、図12に示すような素材28を複数形成する。この各素材28は、形成すべきボルト1の長さに対応する所定の長さに形成される。また、各素材28は、上記第1部分27aに対応する正六角柱状の部分とそれに連続する第3部分27c(27d)及び第2部分27bとを含む。
【0047】
そして、切削工程において、各素材28の第1部分27aに対応する正六角柱状の部分を活かしてボルト頭3(図1参照)とするとともに、第2部分27b及び第3部分27c(27d)を切削加工する。この際、第2部分27b及び第3部分27c(27d)を切削することにより、ボルト1の軸部2(図1参照)の外径に対応する円柱状の部分を形成した後、その円柱状の部分の周面にねじ山を切削加工により形成することによってねじ部4(図1参照)を形成する。このようにして、ボルト1が形成される。
【0048】
以上説明したように、第2実施形態では、切削工程において第1部分27aに対応する各素材の正六角柱状の部分を活かしてボルト頭3とするので、押出し成形により形成した正六角柱状の第1部分27aをボルト頭3として流用することができる。これにより、ボルト頭3を切削加工する工程を削減することができるとともに、その切削加工により生じる材料の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0049】
また、第2実施形態では、ボルト頭3として用いられる第1部分27aよりも幅が小さい第2部分27b及び第3部分27c(27d)を切削加工することによりボルト1を形成するので、幅が押出し方向に沿って第1部分27aと等しく一定である素材を切削加工することによりボルト1を形成する場合に比べて切削量を少なくすることができる。これにより、材料の歩留まりの低下をより抑制することができる。
【0050】
また、第2実施形態による形材27の成形装置30及び成形方法では、成形孔40内の押出し方向に沿った下流側の所定位置で可動ダイス38,38により正六角柱状の第1部分27aを形成した後、可動ダイス38,38をガイド溝42,42に沿って互いの間隔が狭まる方向(上流側)に移動させながら押出し成形を行うので、第1部分27aから幅が徐々に減少する第3部分27dを形成することができるとともに、その後、可動ダイス38,38を停止させて押出し成形を行うことにより第2部分27bを形成することができる。また、これとは逆の工程で第2部分27bから第3部分27c及び第1部分27aを連続して押出し成形することができる。従って、この第2実施形態による成形装置30及び成形方法では、上記の成形工程を繰り返し行うことにより押出し方向に沿って第1部分27aと第3部分27c(27d)と第2部分27bとが繰り返し設けられた形材27を容易に形成することができる。
【0051】
また、第2実施形態では、可動ダイス38,38の移動速度を変えることによって幅の変化率を変えることができるので、形材27の設計の自由度を向上することができる。
【0052】
第2実施形態による上記以外の効果は、上記第1実施形態による効果と同様である。
【0053】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
例えば、上記実施形態では、押出し工程により形成した形材7(27)を切断工程において複数の素材8(28)に切断し、切削工程において各素材8(28)からボルト1を形成したが、これに限らず、押出し工程においてボルト1の長さと同等の長さを有する形材を押出すとともに、その形材を切削加工することによりボルト1を形成してもよい。すなわち、切断工程を省いて、押出し工程により形成された形材をそのまま用いてボルト1を切削加工してもよい。
【0055】
また、上記第1実施形態では形材7を正六角柱状に形成するとともに、上記第2実施形態では形材27の第1部分27aを正六角柱状に形成したが、これに限らず、形材7全体または形材27の第1部分27aを正六角柱状以外の正多角柱状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態によるボルトの全体構造を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるボルトの製造プロセスを説明するための図である。
【図3】本発明の第2実施形態によるボルトの製造方法に用いる形材を示した斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態による形材の成形装置の要部を概略的に示す一部破断斜視図である。
【図5】図4に示した成形装置に設けられている可動ダイスの斜視図である。
【図6】図3に示した形材の第2部分の押出し時の様子を示した図である。
【図7】図6に示した第2部分に続く第3部分の押出し時の様子を示した図である。
【図8】図7に示した第3部分に続く第1部分の押出し時の様子を示した図である。
【図9】図8に示した第1部分に続く第3部分の押出し時の様子を示した図である。
【図10】図9に示した第3部分に続く第2部分の押出し時の様子を示した図である。
【図11】図3に示した形材を押出すときの押出し時間経過と押出し長さとの関係を示した相関図である。
【図12】本発明の第2実施形態によるボルトの製造方法に用いる素材を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ボルト
3 ボルト頭
7、27 形材
10、30 成形装置
8、28 素材
27a 第1部分
27b 第2部分
27c 第3部分
36 固定ダイス
38 可動ダイス
40 成形孔
42 ガイド溝
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司

【識別番号】100096150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝夫

【識別番号】100099955
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 次郎

【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久


【公開番号】 特開2008−23531(P2008−23531A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195648(P2006−195648)