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溶接部特性の良好な電縫管の製造方法 - 特開2008−12581 | j-tokkyo
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【発明の名称】 溶接部特性の良好な電縫管の製造方法
【発明者】 【氏名】剣持 一仁

【氏名】岡部 能知

【氏名】横山 泰康

【氏名】鈴木 雅仁

【氏名】坂下 重人

【要約】 【課題】溶鋼排出に伴う酸化物等の欠陥排出を十分促進できる、溶接部特性の良好な電縫管の製造方法を提供する。

【構成】帯材100を払出しつつ、ロール成形により帯材の幅を丸め、丸めた幅の両端部を電縫溶接して管となす電縫管の製造方法において、帯材を払出してから電縫溶接する直前までの間に、例えばフィンパス成形ロール6を用いて、帯材の幅方向両端部の厚み方向の一端側のみに、半径が帯材厚みの20〜70%になるR加工を施す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯材を払出しつつ、ロール成形により帯材の幅を丸め、丸めた幅の両端部を電縫溶接して管となす電縫管の製造方法において、帯材を払出してから電縫溶接する直前までの間に、帯材の幅方向両端部の厚み方向の一端側のみに、半径が帯材厚みの20〜70%になるR加工を施すことを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
【請求項2】
前記R加工を施す側を、管外径側になる帯材下面側とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R加工は、切削または砥石研磨により施すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記R加工は、フィンパス成形により施すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部特性の良好な電縫管の製造方法に関する。ここで、溶接部特性は、油井のラインパイプ向け電縫管に要求される溶接部靭性、および、油井のケーシングパイプ向け電縫管に要求される溶接部強度を含む。
【背景技術】
【0002】
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、電縫鋼管を例とするように、帯材(板)を丸めて端部を突き合わせて溶接して製造し、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔し、マンドレルミル等で圧延して製造する。溶接管の場合、一般に溶接部の靭性は母材より劣るといわれ、管の適用に当たって、用途ごとに溶接部の靭性や強度の保証が常に議論されて問題とされてきた。
【0003】
例えば、原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプでは、管を寒冷地に敷設することが多いため低温靭性が重要であり、また、原油採掘の油井では採掘管を保護するためのケーシングパイプが必要とされ、管の強度が重要視される。
通常、溶接管の母材となる熱延板は、溶接管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われて、母材の靭性や強度等の特性が確保される。
【0004】
しかし、溶接部の特性は、母材の成分設計や熱処理等以上に、電縫溶接方法によって大きく左右されるため、溶接技術の開発が重要であった。
電縫溶接の不良原因としては、溶接される板端面に生成するペネトレータと呼ばれる酸化物が、電縫溶接時に溶鋼と共に端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータが原因となって靭性が低下し強度不足になる例が多かった。
【0005】
そこで、従来、電縫溶接不良の主原因であるペネトレータを溶接部から除くため、板端面から積極的に溶鋼を排出する技術が鋭意検討されてきた。例えば特許文献1〜4などに、板端面の形状について検討した例が記載されている。
また、特許文献5には、電縫管の溶接時における板条材の両側縁部の突き合わせ圧力の調整を容易にし、溶接信頼性を高める目的で、板幅端部を種々の形状に面取り加工する旨記載されている。
【特許文献1】特開昭57−31485号公報
【特許文献2】特開昭63−317212号公報
【特許文献3】特開2001−170779号公報
【特許文献4】特開2001−259733号公報
【特許文献5】特開2003−164909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4は、いずれも板端面にテーパを付与して、溶鋼とともにペネトレータを排出することを意図している。テーパを付与する理由は、板端面に容易に形状を与えやすいためと考えられる。しかし、直線あるいは平面状のテーパを与えると、溶鋼排出に伴う酸化物等の欠陥排出には十分でない場合が生じる問題があった。
また、特許文献5には、突き合わせ圧力の調整を容易にする種々の面取り形状が開示されているものの、溶鋼とともにペネトレータを排出する点、およびそれにより溶接部特性(特に低温靭性)を改善する点については、一切記載がないから、そこに開示されている多種多様な面取り形状のうち、いずれの形状が溶接部特性(特に低温靭性)を改善しうるものなのか、全く不明である。
【0007】
本発明は上述の問題を解決し、溶鋼排出に伴う酸化物等の欠陥排出を十分促進できる、溶接部特性の良好な電縫管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、前記問題を解決するために鋭意検討し、その結果、次の知見を得た。すなわち、テーパを付与した板端部(帯材の幅方向端部)で、溶接開始時に発生する溶鋼は、接触面積が小さいため少なく、電縫溶接のアプセット(圧接)によって溶接した部分の面積が増加し、これに伴って溶鋼の量は増加してくる。しかし、従来のテーパ形状では、溶鋼の排出角度(排出量)が一定になるため、板厚中央付近の溶鋼排出は十分であっても、板厚端部付近の排出は不十分となる場合があって、溶鋼が溢れて板表面で固化して蓋となり、後から溶接面から出ようとする溶鋼を妨害する場合があることを見出した。
【0009】
そこで、発明者らは溶接の時間経過に伴って、溶鋼が常に良好に排出される方法を鋭意検討した。その結果、板厚中央付近の溶接時には溶鋼が少なくて、板厚端部付近の溶接時には溶鋼が増加することから、常にほぼ一定の溶鋼を排出する端面形状が必要なことを把握した。そして、種々の形状について検討したところ、板端面に特定形状のR加工を施すことによって、溶鋼排出を常に良好となしうることを見出した。
【0010】
本発明は、この知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
1. 帯材を払出しつつ、ロール成形により帯材の幅を丸め、丸めた幅の両端部を電縫溶接して管となす電縫管の製造方法において、帯材を払出してから電縫溶接する直前までの間に、帯材の幅方向両端部の厚み方向の一端側のみに、半径が帯材厚みの20〜70%になるR加工を施すことを特徴とする溶接部特性の良好な電縫管の製造方法。
2. 前記R加工を施す側を、管外径側になる帯材下面側とすることを特徴とする前項1に記載の方法。
【0011】
3. 前記R加工は、切削または砥石研磨により施すことを特徴とする前項1または2に記載の方法。
なお、切削は、切削バイト等の切削手段を用いて切削すること、砥石研磨は、砥石を用いて研磨することである。
4. 前記R加工は、フィンパス成形により施すことを特徴とする前項1または2に記載の方法。
【0012】
なお、フィンパス成形は、ロール成形過程の最終段階でフィンパス成形ロールを用いて仕上成形することである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に則ったR加工を施すと、板厚中央付近の溶接時には時間の経過とともに接触面積が急激に増加するため、溶鋼の排出量が増加し、板厚端部付近の溶接時には時間が経過しても接触面積が緩やかに増加するため、溶鋼の排出量は減少する。これらの作用によって、溶鋼排出を安定して行うことができて、溶接面から先に出た溶鋼が固化して蓋となって後から出ようとする溶鋼を妨害するということがなくなるわけである。
【0014】
これらにより、板端部からの溶鋼排出が十分行われてペネトレータを十分除去できる結果、溶接部の靭性や強度などの特性を良好に保持することが可能なわけである。
よって、本発明によれば、溶鋼排出に伴う酸化物等の欠陥排出を十分促進でき、油井のラインパイプ向け電縫管に要求される溶接部靭性、および、油井のケーシングパイプ向け電縫管に要求される溶接部強度を十分満足する電縫管を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、R加工にあたり、片側のみの加工で済めば設備投資を節減でき、加工も容易である点を重視する立場から、帯材の幅方向両端部の厚み方向の一端側のみにR加工を施すものとした。かかる片側のみのR加工において最適な加工形状を鋭意検討した結果、R加工の半径を板厚(帯材厚み)の20〜70%の範囲とすると、電縫溶接後の溶接部靭性が著しく良好となり、溶接部強度も向上することを把握した。
【0016】
すなわち、R加工の半径を板厚の20%未満とすると、電縫溶接部の溶鋼排出が不充分となり、ペネトレータが十分排出できずに溶接部の靭性または強度が著しく低下する。また、R加工の半径を板厚の70%超とすると、電縫溶接時のアプセットを行った後に、R加工部の一部が溝状の疵となって残留し、製品とならない。
また、電縫溶接部の靭性または強度を板厚方向に調査すると、管外径側ほど低下して問題であることを把握した。そこで、R加工を施す側としては、管外径側になる帯材下面側とするとよいわけである。
【0017】
もっとも、R加工をエッジャーロール等の孔型ロールで行うと、中途半端な塑性加工を板端部が受けるため、所望する形状を得ることが難しいが、切削または砥石研磨により行うことにより、所望する形状をそのまま得ることが可能である。
図2は、砥石研磨によるR加工の実施形態の1例を示す模式図である。図2の例では、所望のR加工形状を側面に付与した砥石3を用いた回転式砥石研磨により、帯材100の幅方向端部の上面側(管内径側になる)にR加工を施している。
【0018】
また、切削または砥石研磨でR加工を施す代りに、フィンパス成形でR加工を施してもよい。フィンパス成形では、ロール成形の仕上段階として、フィンパス成形ロールを用いて、それまで徐々に幅を丸められてきた帯材を、最終的に幅方向断面が円形形状となるように仕上成形するため、板端部はフィンパス成形ロールのフィンに強圧される。従って、所望するR加工形状を予めフィンに与えておくことによって、フィンに与えた形状が板端部に十分な精度で転写され、所望する形状に十分近いR加工形状を得ることが可能となるわけである。
【0019】
図1は、フィンパス成形によるR加工の実施形態の1例を示す模式図である。この例では、所望するR加工形状を予めフィン6Aに与えておいたフィンパス成形ロール6を用いたフィンパス成形により帯材100の幅方向断面を円形形状となしつつ、幅方向端部の下面側(管外径側になる)にR加工を施している。
【実施例】
【0020】
以下、実施例に基づいて説明する。帯材として板幅1920mm×板厚19.1mmの鋼帯を用いた。この鋼帯から外径600mmの鋼管を製造した。製造には、図3に示す造管設備を用いた。
図3において、1は帯材100を払出すアンコイラー、2は帯材100の平坦化矯正を行うレベラー、3は帯材100の幅方向端部を研磨する砥石、4は帯材100の幅の初期曲げを行うブレークダウン第1スタンド、6は帯材100の幅を丸めていく最終段階で断面を円形形状に仕上成形するフィンパス成形ロールである。ブレークダウン第1スタンド6の上流側の複数の案内ロールの第1段目からフィンパス成形ロール6の最終段目にかけてのロールスタンド群でロール成形機5が構成されている。7は帯材100の幅方向両端部を誘導加熱する誘導加熱手段、8は誘導加熱された帯材100の幅方向両端部をアプセット(圧接)するスクイズロールであり、誘導加熱手段7とスクイズロール8とで電縫溶接機が構成されている。帯材100は電縫溶接後は管100になる。9は管100の溶接部に生じているビードを切削除去するビード部切削手段、10は管100を定径圧延するサイザー、11は管100を所定の長さに切断する管切断機である。
【0021】
製造条件は次のNo.1〜7の各条件とした。
(No.1:本発明例)
帯材幅方向両端部の上面側(管内径側)のみに半径10mm(板厚の52%)のR加工を施す。このR加工は、側面形状を工夫した砥石3を用いた砥石研磨により行う。
(No.2:本発明例)
帯材幅方向両端部の下面側(管外径側)のみに半径4mm(板厚の21%)のR加工を施す。このR加工は、フィン6Aの形状を工夫したフィンパス成形ロール6(最終段目)を用いたフィンパス成形により行う。
【0022】
(No.3:本発明例)
帯材幅方向両端部の下面側(管外径側)のみに半径13mm(板厚の68%)のR加工を施す。このR加工は、側面形状を工夫した砥石3を用いた研磨により行う。
(No.4:比較例)
帯材幅方向両端部の下面側(管外径側)のみに半径3mm(板厚の16%)のR加工を施す。このR加工は、フィン6Aの形状を工夫したフィンパス成形ロール6(最終段目)を用いたフィンパス成形により行う。
【0023】
(No.5:比較例)
帯材幅方向両端部の下面側(管外径側)のみに半径14mm(板厚の73%)のR加工を施す。このR加工は、側面形状を工夫した砥石3を用いた研磨により行う。
(No.6:比較例)
帯材幅方向両端部の上面側(管内径側)のみにテーパ角度15度、テーパ深さ3mmのテーパ加工を施す(テーパ角度およびテーパ深さの定義については図4参照)。このテーパ加工は、レベラー2の出側に設置した孔型ロール(図示省略)を用いた孔型圧延により行う。
【0024】
(No.7:従来例)
帯材幅方向両端部は、造管設備内での加工は行わず、受け入れままの状態すなわち帯材幅方向にほぼ垂直な切断面のままとする。
上記No.1〜7の各条件で製造した鋼管の溶接部から試験片を切り出し、シャルピー試験を行って性能を評価した。シャルピー試験片は、JIS 5号の2mmVノッチ衝撃試験片に該当するものを、管長手方向位置が相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取した。この試験片に対し−46℃での衝撃試験を行ない、吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。接部強度(衝撃強度)に関して吸収エネルギー125J以上、溶接部靭性に関して脆性破面率35%以下を性能許容範囲とした。また、溶接部の疵の有無を目視により調べた。
【0025】
これら調査の結果を表1に示す。表1より、本発明例では、溶接部の吸収エネルギーが著しく高く脆性破面率が小さくて、溶接部強度、靭性とも十分良好であって製品の信頼性が高い。これに対し、比較例(No.4,6)および従来例(No.7)では、溶接部の吸収エネルギーが低く脆性破面率が大きくて、溶接部強度、靭性とも不十分であり、製品の信頼性に乏しかった。また、比較例(No.5)では、溶接部強度、靭性は良好であったものの、溶接部に溝が残留して疵となり製品にならなかった。
【0026】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】フィンパス成形によるR加工の実施形態の1例を示す模式図である。
【図2】砥石研磨によるR加工の実施形態の1例を示す模式図である。
【図3】実施例に用いた造管設備を示す模式図である。
【図4】テーパ角度およびテーパ深さの定義説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 アンコイラー
2 レベラー
3 砥石
4 ブレークダウン第1スタンド
5 ロール成形機
6 フィンパス成形ロール
6A フィン
7 誘導加熱手段
8 スクイズロール
9 ビード部切削手段
10 サイザー
11 管切断機
100 帯材(板あるいは鋼帯、溶接後は管)
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一


【公開番号】 特開2008−12581(P2008−12581A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188567(P2006−188567)