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【発明の名称】 連続式鋼板処理設備の制御方法
【発明者】 【氏名】鷲北 芳郎

【要約】 【課題】酸洗槽よりも上流側や下流側に複数のルーパを有する連続式鋼板処理設備における酸洗槽以外の他の設備を計画的に停止しても、鋼板が酸洗停止することを防止する。

【構成】酸洗設備3と複数の設備2、4〜6とを備える設備群を複数のセクション23〜26に分割して、各セクション23〜26間にルーパ11〜13を備えることにより、各セクション23〜26毎に異なる速度で鋼板の通板を可能とする連続式鋼板処理設備0において、所定の時間周期毎に、一定時間までの各ルーパ11〜13の鋼板蓄積長を予測し、予測した各ルーパ11〜13の鋼板蓄積長が所定の制約条件を満足するように各セクション23〜26の通板速度の上限値を、複数のセクションのうち、酸洗設備3を含むセクション24より上流側に配置されたルーパ11の鋼板蓄積長の総和が所定値以上となるように、あるいはこのセクション24より下流側に配置された各ルーパ12、13の鋼板蓄積長の総和が所定値以下となるように設定して、連続式鋼板処理設備0を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸洗設備と該酸洗設備とは異なる複数の設備とを備える設備群を複数のセクションに分割して、各セクション間にルーパを備えることにより、各セクション毎に異なる速度で鋼板の通板を可能とする連続式鋼板処理設備において、所定の時間周期毎に、一定時間までの前記各ルーパの鋼板蓄積長を予測し、予測した各ルーパの鋼板蓄積長が所定の制約条件を満足するように各セクションの通板速度の上限値を設定することを特徴とする連続式鋼板処理設備の制御方法。
【請求項2】
前記各セクションの通板速度の上限値は、上記複数のセクションのうち、上記酸洗設備を含むセクションより上流側に配置された各ルーパの鋼板蓄積長の総和が所定値以上となるように、あるいは上記酸洗設備を含むセクションより下流側に配置された各ルーパの鋼板蓄積長の総和が所定値以下となるように、設定されることを特徴とする請求項1に記載の連続式鋼板処理設備の制御方法。
【請求項3】
前記複数のセクションは、少なくとも、溶接機を含むセクションと、酸洗装置を含むセクションと、冷間圧延機を含むセクションとから構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連続式鋼板処理設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、連続式鋼板処理設備の制御方法に関するものであり、具体的には、鋼板の表面に発生する過酸洗部を冷間圧延することに起因して発生する鋼板の破断や板厚変動を抑制し、さらに冷間圧延機の停止によって停止前後に生じるオフゲージを抑制することができる連続式鋼板処理設備の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板に冷間圧延を行って冷延鋼板を製造する際には、鋼板の先端の通板や後端の抜け等の非定常作業により能率や歩留まりが低下する。これを防止するため、先行する鋼板の後端とこれに後続する鋼板の先端とを溶接機により溶接し、この鋼板に対して連続的に圧延することが行われる。このような冷間圧延では、冷間圧延に先立って、鋼板の平坦度を矯正するレベラー、鋼板の表面に生成するスケールを除去する酸洗、さらには、鋼板の幅方向の端部を切断して板幅を揃えるトリミング等の処理も併せて行われる。このため、鋼板の冷間圧延は、先行する鋼板と後続する鋼板とを溶接するための溶接機と、上述した各種処理を行う複数の装置とを備える連続式鋼板処理設備を用いて、行われる。
【0003】
この連続式鋼板処理設備において鋼板を通板させる場合、先行する鋼板と後続する鋼板との溶接点が上述した各種処理を行う複数の装置を通過する際には、複数の装置それぞれ毎に後続する鋼板に応じた設定替えを行うので、鋼板を一旦減速する必要がある。しかし、その減速のタイミングは、各装置それぞれ毎に相違し、同じタイミングではない。このため、連続式鋼板処理設備を、例えば、先行する鋼板と後続する鋼板とを溶接するための溶接機を含む溶接セクション、鋼板を通板させながら酸洗する酸洗槽を含む酸洗セクション、及び鋼板に冷間圧延を行う冷間圧延機を含む圧延セクションといったような複数のセクションに分割するとともに各セクションの間に鋼板にたわみを与えることができるルーパを配置することにより、各セクション毎に異なる通板速度で鋼板を通板できるようにしている。
【0004】
ところで、この連続式鋼板処理設備における酸洗槽以外の他の設備を点検や整備のために計画的に停止する場合、これに伴って酸洗セクションにおける鋼板が酸洗槽に収容される酸洗液に浸漬されたまま停止してしまうと(以下、本明細書ではこのような停止を「酸洗停止」という。)、鋼板の表面が変色する過酸洗部が発生する。この過酸洗部を冷間圧延すると破断あるいは板厚変動を生じ、歩留まりや生産性が低下する。したがって、酸洗槽以外の他の設備を計画的に停止する場合や、酸洗槽以外の他の設備にトラブルが生じて、その設備が減速あるいは停止した場合に、酸洗停止しないことが、実際の操業では重要である。
【0005】
また、冷間圧延機への鋼板の供給が滞ると、冷間圧延機を停止せざるを得なくなり、停止の前後に大きな板厚変動を生じてオフゲージとなる。このため、冷間圧延機への鋼板の供給不足を生じないようにすることも重要となる。
【0006】
これまでにも、酸洗停止しないための発明が例えば特許文献1、2に開示されている。
特許文献1には、冷間圧延機の計画停止の前に冷間圧延機の上流側に配置されたルーパにおける鋼板の蓄積長を最低の状態まで減少させておき、冷間圧延機の停止中は停止予測時間と鋼板の蓄積長とに基づいて酸洗速度(酸洗槽の通板速度)を決定することによって、冷間圧延機の計画停止時における酸洗停止を防止する発明が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、酸洗槽と冷間圧延機との間に二つのルーパを有する連続式鋼板処理設備を用いて、上流側のルーパの短端側と、下流側のルーパの長端側とに同期点を設定しておき、各ルーパにおける鋼板の蓄積長が同期点を外れた場合には、酸洗槽を含むセクション以外の各セクションにおける通板速度を調節してこのルーパにおける鋼板の蓄積長を速やかに同期点に復帰させる発明が開示されている。
【特許文献1】特開平6−170430号公報
【特許文献2】特開平8−132121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1には、酸洗槽と冷間圧延機との間に複数のルーパが存在する場合は記載されていない。このため、特許文献1により開示された発明に基づいても、この場合に酸洗停止を防止できるか否か不明である。また、この発明では冷間圧延機の上流側に配置されたルーパにおける鋼板の蓄積長を最低の状態まで減少させるので、必要以上に酸洗速度を低下して生産性を著しく低下するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2により開示された発明は、ルーパにおける鋼板の現在の蓄積長のみに基づいて通板速度を決定するので、酸洗槽以外の設備が比較的長時間にわたって計画停止する場合には、停止中に酸洗槽の上流側に配置されるルーパの蓄積長が不足したり、あるいは酸洗槽の下流側に配置されるルーパの蓄積長が限界(上限)に達し、最終的に酸洗停止に至るおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、酸洗設備とこの酸洗設備とは異なる複数の設備とを備える設備群を複数のセクションに分割して、各セクション間にルーパを備えることにより、各セクション毎に異なる速度で鋼板の通板を可能とする連続式鋼板処理設備において、所定の時間周期毎に、一定時間までの各ルーパの鋼板蓄積長を予測し、予測した各ルーパの鋼板蓄積長が所定の制約条件を満足するように各セクションの通板速度の上限値を設定することを特徴とする連続式鋼板処理設備の制御方法である。
【0011】
この本発明に係る連続式鋼板処理設備の制御方法において、各セクションの通板速度の上限値が、複数のセクションのうち、酸洗設備を含むセクションより上流側に配置された各ルーパの鋼板蓄積長の総和が所定値以上となるように、あるいは上記酸洗設備を含むセクションより下流側に配置された各ルーパの鋼板蓄積長の総和が所定値以下となるように、設定されることが望ましい。
【0012】
これらの本発明に係る連続式鋼板処理設備の制御方法では、複数のセクションが、少なくとも、溶接機を含むセクションと、酸洗装置を含むセクションと、冷間圧延機を含むセクションとから構成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、酸洗槽よりも上流側や下流側に複数のルーパを有する連続式鋼板処理設備における酸洗槽以外の他の設備を計画的に停止しても、各セクションにおける鋼板の通板速度が酸洗停止を生じる速度になることを防止できるので、必要以上に生産性を阻害することなく、酸洗停止を生じずに鋼板を製造することができるようになる。
【0014】
このため、鋼板の表面に発生する過酸洗部を冷間圧延することに起因して発生する鋼板の破断や板厚変動を抑制することができ、これにより、鋼板の歩留まりや生産性を向上できる。
【0015】
また、冷間圧延機への鋼板の供給が滞ることに起因して発生する冷間圧延機の停止前後の大きな板厚変動によるオフゲージを抑制することができ、これにより、鋼板の歩留まりを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る連続式鋼板処理設備の制御方法を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態で用いる連続式鋼板処理設備0の構成を概略的に示す説明図である。この連続式鋼板処理設備0は、鋼板連続処理設備10と制御装置80とを備えるので、これらについて説明する。
[鋼板連続処理設備10]
図1に示すように、鋼板連続処理設備10は、巻戻機1及び溶接機2を含む入側セクション23と、酸洗槽3を含む酸洗セクション24と、トリマ4を含むトリマセクション25と、冷間圧延機5及び巻取機6を含む圧延セクション26と、入側セクション23及び酸洗セクション24の間に配置される入側ルーパ11と、酸洗セクション24及びトリマセクション25の間に配置される中央ルーパ12と、トリマセクション25及び圧延セクション26の間に配置される出側ルーパ13とを備える。
【0017】
巻戻機1は、コイル状に巻かれた第2の鋼板22を巻き戻しつつ払い出す。払い出された第2の鋼板22の先端が、溶接機2によって先行する第1の鋼板21の後端と溶接され、鋼板20とされる。溶接機2よりも下流に配置される各種の設備11、3、12、4、13、5及び6には、鋼板20が連続的に供給される。
【0018】
鋼板20は、酸洗槽3へ導かれて酸洗され、その後にトリマ4によって幅方向の端部をトリミングされて所定の板幅とされてから、冷間圧延機5によって圧延されて所定の板厚まで厚みを低減される。さらに、巻取機6によりコイル状に巻き取られることによって、製品である冷延鋼板が製造される。
【0019】
溶接機2と酸洗槽3との間、すなわち入側セクション23と酸洗セクション24との間には、入側ルーパ11が設置される。これにより、入側ルーパ11の上流側の入側セクション23における鋼板20の通板速度と、入側ルーパ11の下流側の酸洗セクション24における鋼板20の通板速度とを、異なる速度に設定して鋼板20の通板を行うことができる。
【0020】
また、酸洗槽3とトリマ4との間、すなわち酸洗セクション24とトリマセクション25との間には、中央ルーパ12が設置される。これにより、中央ルーパ12の上流側の酸洗セクション24における鋼板20の通板速度と、中央ルーパ12の下流側のトリマセクション25における鋼板20の通板速度とを、異なる速度に設定して鋼板20の通板を行うことができる。
【0021】
さらに、トリマ4と冷間圧延機5との間、すなわちトリマセクション25と圧延セクション26との間には、出側ルーパ13が設置される。これにより、出側ルーパ13の上流側のトリマセクション25における鋼板20の通板速度と、出側ルーパ13の下流側の圧延セクション26における鋼板20の通板速度とを、異なる速度に設定して鋼板20の通板を行うことができる。
【0022】
なお、溶接機2により第1の鋼板21及び第2の鋼板22を溶接する間は、入側ルーパ11の入口速度と巻戻機1から払い出される速度とは異なる。このため、以降の説明では、「入側セクション速度」とは、入側ルーパ11の入口速度を意味することとする。一方、冷間圧延機5で鋼板20が圧延されると鋼板20の通板速度は増加する。このため、以降の説明では、「圧延セクション速度」とは、出側ルーパ13の出口速度、すなわち冷間圧延機5の入口速度を意味することとする。
【0023】
本実施の形態における鋼板連続処理設備10は、以上のように構成される。次に、制御装置80を説明する。
[制御装置80]
図1に示すように、制御装置80は、実績収集装置30と、セクション速度演算機40と、ルーパ蓄積長制御装置50と、計算機60と、速度制御装置70とを備える。
【0024】
実績収集装置30は、第1の鋼板21及び第2の鋼板22の溶接点の位置、各セクション23〜26における鋼板20の通板速度、さらには各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長といった各種の実績値をリアルタイムで収集し、溶接点の位置情報Iをセクション速度演算機40に出力する。
【0025】
セクション速度演算機40は、溶接点が各設備2〜6を通過する際の減速、溶接機2で第1の鋼板21及び第2の鋼板22を溶接する際の入側セクション23の減速、停止等といった、他のセクションには関係なく単独で決定される各セクション23〜26における通板速度を求め、速度制御装置70に出力する。
【0026】
また、実績収集装置30は、収集した各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の実績Iを、ルーパ蓄積長制御装置50に出力する。ルーパ蓄積長制御装置50は、各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の実績に基づいて各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長を制御するための各セクション23〜26における通板速度を求め、速度制御装置70に出力する。
【0027】
さらに、実績収集装置30は、収集した各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の実績Iを、計算機60に出力する。計算機60は、所定の時間周期毎に、一定時間後までの各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の変化を予測し、予測した期間において、各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長が所定の条件を満たすように各セクション23〜26における通板速度を求め、速度制御装置70へ出力する。
【0028】
速度制御装置70は、セクション速度演算機40、ルーパ蓄積長制御装置50及び計算機60からそれぞれ出力される通板速度に基づいて最終的な速度指令を計算し、この速度指令を各セクション23〜26に出力することによって各セクション23〜26における通板速度を制御する。
【0029】
ここで、制御装置80を構成する、セクション速度演算機40、ルーパ蓄積長制御装置50、計算機60及び速度制御装置70によって、各セクション23〜26における鋼板20の通板速度を、このように制御する理由を説明する。
【0030】
図1に示す連続式鋼板処理設備0において酸洗槽3以外の他の設備(例えば、溶接機2、トリマ4、冷間圧延機5等)にトラブルが生じて、その設備が減速あるいは停止した場合にも酸洗停止に至らないようにするためには、トラブルが生じた他の設備と酸洗槽3との間に位置するルーパ(入側ルーパ11、中央ルーパ12又は出側ルーパ13)における鋼板20の蓄積長の総和が、例えば溶接機2のように停止する他の設備が酸洗槽3よりも上流側に位置する場合には長いほどよく、逆に、例えばトリマ4や冷間圧延機5等のように停止する他の設備が酸洗槽3よりも下流側に位置する場合には短いほどよい。
【0031】
例えば溶接機2における溶接時間が予定より超過した場合は、入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長が長い分だけ、酸洗槽3を停止せずに操業を継続することができるので、酸洗停止に至らないようにすることができる。
【0032】
これに対し、例えばトリマ4において鋼板20の蛇行等のためにトリマ4を停止する場合には、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長が短ければ短いほど、トリマ4の停止後に中央ルーパ12に鋼板20を蓄積することができる長さが増加するので、酸洗槽3を停止せずに操業を継続することができ、酸洗停止に至らないようにすることができる。また、例えば冷間圧延機5において鋼板20の平坦度不良等のために圧延機5を加速できない場合には、中央ルーパ12及び出側ルーパ13それぞれにおける鋼板20の蓄積長の総和が短ければ短いほど、冷間圧延機5の停止後に中央ルーパ12及び出側ルーパ13に蓄積することができる長さが増加するので、酸洗槽3を停止せずに操業を続けることができ、酸洗停止に至らないようにすることができる。
【0033】
しかし、上記のようなトラブルの発生を予測することは不可能なので、実際には、現在時刻からトラブル無く計画的に操業を続けている状態を想定して、ルーパ11〜13の鋼板蓄積長を予測し、トラブルが生じた場合に酸洗停止に至るような範囲にルーパ11〜13の鋼板蓄積長が入らないように各セクションの通板速度を調整する。
【0034】
具体的には、第1の鋼板21と第2の鋼板22とを接合された鋼板20を通板させながら酸洗する酸洗設備3、及び、第1の鋼板21、第2の鋼板22又は鋼板20を通板させながら酸洗以外の他の処理を行う複数の設備2、4、5のうちの少なくとも一の設備を含む複数のセクション23〜26と、隣り合う二つのセクション23〜24、24〜25、25〜26の間に配置されて通板される鋼板20にたわみを与え、蓄積することができるルーパ11〜13とを備える鋼板連続処理設備10を用いて鋼板20を連続的に処理して、冷延鋼板を製造する際に、酸洗槽3以外の他の設備2、4又は5にトラブルが生じて、その設備が減速あるいは停止した場合にも酸洗停止に至ることを回避するには、これら設備2、4、5と酸洗槽3の間に位置するルーパ11〜13における、予測した一定時間までの鋼板20の蓄積長の総和が所定の範囲となるように、すなわち、酸洗槽3よりも上流側に位置するルーパ11の蓄積長が所定値以上になるようにするとともに酸洗槽3よりも下流側に位置するルーパ12とルーパ13の蓄積長の総和が所定値以下になるように、複数のセクション23〜26それぞれにおける鋼板20の通板速度の上限値を設定して各セクション23〜26における通板速度を調整する。
【0035】
この場合に、各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の総和と比較する所定値は、過酸洗を防止するために必要な酸洗の最低速度と、トラブルによる酸洗以外の設備停止に備える時間を考慮して、例えば次のように決めておく。
【0036】
溶接機2のトラブルに備えるため、入側ルーパ11の鋼板蓄積長が満たすべき下限規制値は、酸洗の最低速度と想定される溶接機2のトラブル時間の積とする。
トリマ4のトラブルに備えるため、中央ルーパ12の鋼板蓄積長が満たすべき上限規制値は、中央ルーパ12の物理的な鋼板蓄積長上限値から、酸洗の最低速度と想定されるトリマ4のトラブル時間の積を減じた値とする。
【0037】
冷間圧延機5のトラブルに備えるため、中央ルーパ12と出側ルーパ13の鋼板蓄積長の総和が満たすべき上限規制値は、中央ルーパ12と出側ルーパ13の物理的な鋼板蓄積長上限値の総和から、酸洗の最低速度と想定される冷間圧延機5のトラブル時間の積を減じた値とする。
【0038】
また、トリマ4にトラブルが生じて冷間圧延機5への鋼板20の供給が滞っても冷間圧延機5の停止に至らないようにするためには、出側ルーパ13の鋼板蓄積長が所定値以上になるようにすればよい。この下限規制値は、例えば、大きな板厚変動を生じない冷間圧延機5の最低速度と想定されるトリマ4のトラブル時間の積とする。
【0039】
次に、セクション速度演算機40、ルーパ蓄積長制御装置50、計算機60及び速度制御装置70の動作をさらに具体的に説明する。
図1に示すセクション速度演算機40は、実績収集装置30により与えられる溶接点の実績(溶接点の位置情報I)に基づいて、他のセクションとは無関係に単独で決定される入側セクション速度上限値VE、1、酸洗セクション速度上限値VP、1、トリマセクション速度上限値VT、1及び圧延セクション速度上限値VR、1を求める。
【0040】
これらの上限値は、鋼板20の溶接部を低速で通過させたり、溶接機3で第1の鋼板21及び第2の鋼板22を溶接するための減速や停止を行うための通板速度の上限値であって、周知慣用の方法により求めることができる。
【0041】
例えば、入側セクション速度上限値VE、1は、第1の鋼板21の後端が巻戻機1から抜けて、後端が溶接機2へ移動するまでは後端抜け速度、溶接中は0、その他の場合は巻戻機1の最高速度として求められる。
【0042】
酸洗セクション速度上限値VP、1は溶接部が酸洗漕3を通過する間は溶接部の酸洗通板速度、その他の場合は酸洗セクション24の最高速度として求められる。
トリマセクション速度上限値VT、1は溶接部がトリマ4を通過する前後では溶接部のトリマ通板速度、その他の場合はトリマセクション25の最高速度として求められる。
【0043】
さらに、圧延セクション速度上限値VR、1は、溶接部が冷間圧延機5を通過している場合は溶接部の冷間圧延機通板速度として、その他の場合は冷間圧延機5のモータの回転数上限や出力上限から定まる最高圧延速度として、求められる。
【0044】
図2は、ルーパ蓄積長制御装置50に実績収集装置30から与えられるルーパの鋼板蓄積長実績値(各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の実績I)に基づいて、各ルーパ11〜13における蓄積長を制御するための入側セクション速度上限値VE、2、酸洗セクション速度上限値VP、2、トリマセクション速度上限値VT、2、圧延セクション速度上限値VR、2を求める手順を示すフローチャートである。
【0045】
ルーパ蓄積長制御装置50には、各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長が設備上の限界を突破して各ルーパ11〜13を破壊しないようにする機能が備えられる。具体的には、蓄積長の上限を突破しないようにルーパ11〜13の上流セクション23〜25における鋼板20の通板速度を抑制し、また、蓄積長の下限を突破しないようにルーパ11〜13の下流セクション24〜26における鋼板20の通板速度を規制する。
【0046】
図2におけるステップ(以下「S」と略記する)1において、入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長が下限を突破しないようにするために酸洗セクション速度上限値VP、ENTを設定する。そして、S2に移行する。
【0047】
S2において、入側ルーパ11の蓄積長が上限を突破しないようにするために入側セクション速度上限値VE、ENTを設定する。そして、S3に移行する。
S3において、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長が下限を突破しないようにするためにトリマセクション速度上限値VT、MDLを設定する。そして、S4に移行する。
【0048】
S4において、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長が上限を突破しないようにするために酸洗セクション速度上限値VP、MDLを設定する。そして、S5に移行する。
S5において、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が下限を突破しないようにするために圧延セクション速度上限値VR、DELを設定する。そして、S6に移行する。
【0049】
S6において、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が上限を突破しないようにするためにトリマセクション速度上限値VT、DELを設定する。
S7において、S1〜S6で求められた各セクション23〜26における通板速度上限値の中の最小値を、ルーパ蓄積長制御装置50による入側セクション速度上限値VE、2、酸洗セクション速度上限値VP、2、トリマセクション速度上限値VT、2、圧延セクション速度上限値VR、2として設定する。
【0050】
これらは、公知の方法で求めることができ、略述すると、例えば、入側ルーパ11の鋼板蓄積長が下限を突破しないための酸洗セクション速度上限VP、ENTは、酸洗セクション24における鋼板20が減速率aで減速を開始してから停止するまでに入側ルーパ11から引き出す鋼板20の長さが入側ルーパ11の鋼板蓄積長実績値LENTと入側ルーパ11の物理的な鋼板蓄積長下限値LMIN、ENTの差より多くならないようにV、ENT={2a(LENT−LMIN、ENT)}1/2として求められる。
【0051】
入側ルーパ11の鋼板蓄積長が上限を突破しないための入側セクション速度上限VE、ENTは、入側セクション23における鋼板20が減速率aで減速を開始してから停止するまでに入側ルーパ11に流入する鋼板20の長さが、入側ルーパ11の空き長さ(入側ルーパ11の物理的な鋼板蓄積長上限LMAX、ENTと入側ルーパ11の鋼板蓄積長実績値LENTの差)より多くならないようにVE、ENT={2a(LMAX、EN−LENT)}1/2として求める。
【0052】
中央ルーパ12の鋼板蓄積長が下限を突破しないためのトリマセクション速度上限はVT、MDL={2a(LMDL−LMIN、MDL)}1/2として求められる。
中央ルーパ12の鋼板蓄積長が上限を突破しないための酸洗セクション速度上限はV、MDL={2a(LMAX、MDL−LMDL)}1/2として求められる。
【0053】
出側ルーパ13の鋼板蓄積長が下限を突破しないための圧延セクション速度上限はV、DEL={2a(LDEL−LMIN、DEL)}1/2として求められる。
さらに、出側ルーパ13の鋼板蓄積長が上限を突破しないためのトリマセクション速度上限はVT、DEL={2a(LMAX、DEL−LDEL)}1/2として求められる。
【0054】
ここで、符号aはトリマセクション25の減速率であり、符号aは圧延セクション26の減速率であり、符号LMDLは中央ルーパ12の鋼板蓄積長実績値であり、符号LMIN、MDLは中央ルーパ12の物理的な鋼板蓄積長下限値であり、符号LMAX、MDLは中央ルーパ12の物理的な鋼板蓄積長上限値であり、符号LDELは出側ルーパ13の鋼板蓄積長実績値であり、符号LMIN、DELは出側ルーパ13の物理的な鋼板蓄積長下限値であり、さらに、符号LMAX、DELは出側ルーパ13の物理的な鋼板蓄積長上限値である。
【0055】
次に、計算機60は所定の時間周期毎に、一定期間内のルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の変化を予測する。
この予測は、一定時間までの複数のセクション23〜26それぞれにおける鋼板20の通板速度の差に基づいて算出することにより、予測される。そして、算出した鋼板20の蓄積長の変化と、この予測の時点における鋼板20の蓄積長の実績値とを加算することにより、一定期間までのルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の変化が予測される。
【0056】
そして、予測した期間において、ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長が所定の制約条件、すなわち「酸洗槽3を含むセクション24よりも上流に存在するセクション23との間に位置するルーパ11における鋼板20の蓄積長の総和が所定値以上となるとともに、酸洗槽3を含むセクション24よりも下流に存在するセクション25、26との間に位置するルーパ12、13における鋼板20の蓄積長の総和が所定値以下となること」を満足するように、入側セクション速度上限値VE、3、酸洗セクション速度上限値V、3、トリマセクション速度上限値VT、3、圧延セクション速度上限値VR、3が、図3に示すフローチャートに基づいて求められる。
【0057】
図3におけるS1において、まず、初期値として全セクション23〜26ともに鋼板20を減速する必要がないと仮定し、速度上限値を無限大とする。そして、S2に移行する。
【0058】
S2において、後述するように、速度制御装置70によって、各セクション23〜26における鋼板20の通板速度が設定されたとして、一定期間までの各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長を予測する。そして、S3に移行する。
【0059】
S3において、S2により予測された一定期間において、入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長が予め定めた入側ルーパ11の規制値以下になる場合、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長が予め定めた中央ルーパ12の規制値以上になる場合、又は、中央ルーパ12及び出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長の和が予め定めた中央ルーパ12及び出側ルーパ13の規制値以上になる場合であって、酸洗セクション速度上限値V、3が酸洗セクション最低速度に達していないために酸洗セクション速度を減速する余地があるときには、酸洗セクション速度上限値VP、3を減速修正してS2に戻り、S2の演算を行うことを、入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長が入側ルーパ11の規制値超になり、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長が中央ルーパ12の規制値未満となり、かつ、中央ルーパ12及び出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長の和が中央ルーパ12及び出側ルーパ13の規制値未満となるまで、繰り返す。そして、演算を終了する。
【0060】
これら以外の場合には、S4に移行する。
S4において、S2により予測された一定期間において、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が予め定めた出側ルーパ13の規制値以下になる場合は、圧延セクション速度上限値VR、3を減速修正してS2に戻り、S2の演算を行うことを、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が出側ルーパ13の規制値超となるまで、繰り返す。そして、演算を終了する。
【0061】
このようにして、予測した一定期間においてルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長が所定の制約条件を満足する入側セクション速度上限値VE、3、酸洗セクション速度上限値VP、3、トリマセクション速度上限値VT、3及び圧延セクション速度上限値VR、3が求められる。
【0062】
速度制御装置70は、セクション速度演算機40から与えられる速度VE、1、VP、、VT、1、VR、1、ルーパ蓄積長制御装置50から与えられる速度VE、2、V、2、VT、2、VR、2、及び、計算機60から与えられる速度VE、3、VP、3、VT、3、VR、3に基づいて、入側セクション23に対する速度指令V、酸洗セクション24に対する速度指令V、中央セクション25の速度指令V、及び圧延セクション26に対する速度指令Vを、セクション速度演算機40から与えられる速度VE、1、VP、1、VT、1、VR、1、ルーパ蓄積長制御装置50から与えられる速度VE、、VP、2、VT、2、VR、2、及び、計算機60から与えられる速度のうちの最小値として、次のように設定する。
=min(VE、1、VE、2、VE、3
=min(VP、1、VP、2、VP、3
=min(VT、1、VT、2、VT、3
=min(VR、1、VR、2、VR、3
速度制御装置70は、各セクション23〜26それぞれにおける鋼板20の通板速度をこのように設定し、各セクション23〜26の鋼板搬送装置の駆動部へ出力する。
【0063】
本実施の形態における制御装置80は、以上のように構成される。
本実施の形態では、鋼板連続処理設備10と制御装置80とを備える連続式鋼板処理設備0を用いて鋼板20を通板するので、鋼板連続処理設備10における酸洗槽3以外の他の設備2、4、5、6を計画的に停止しても、各セクション23〜26における鋼板20の通板速度が酸洗停止に至る速度になることを防止できるので、必要以上に生産性を阻害することなく、酸洗停止に至らずに冷延鋼板を製造することができるようになる。
【0064】
このため、本実施の形態によれば、鋼板20の表面に発生する過酸洗部を冷間圧延することに起因して発生する鋼板20の破断や板厚変動を抑制することができ、これにより、鋼板の歩留まりや生産性の低下を防止できる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、冷間圧延機5への鋼板20の供給が滞ることに起因して発生するオフゲージを抑制することができ、これにより、鋼板20の歩留まりを向上できる。
【実施例】
【0066】
さらに、本発明を、表1に示すシミュレーション条件のもとで行うシミュレーションの結果を参照しながら、より具体的に説明する。以降の説明では、鋼板に存在する複数の溶接点のうち冷間圧延機に最も近い溶接点を溶接点aといい、以下上流側に向かって、溶接点b、溶接点c・・・ということとする。
【0067】
【表1】


【0068】
<シミュレーション1>
図1に示す連続式鋼板処理設備0において、冷間圧延機5のロール替えを想定し、冷間圧延機5を計画的に11分間停止するシミュレーションを行う。
【0069】
本例では、表1に示すように、入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長(入側ループ鋼板蓄積長)の物理的な上限は630m、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長(中央ループ鋼板蓄積長)の物理的な上限は210m、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長(出側ループ鋼板蓄積長)の物理的な上限は630mとし、それぞれの物理的な下限値は0mとする。
【0070】
さらに、入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長(入側ループ鋼板蓄積長)の下限の規制値は、溶接機2の溶接時間が5分間延長されても酸洗セクション24の最低速度0.5m/sで酸洗を続けられるようにとの理由により150mと定め、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長(中央ループ鋼板蓄積長)の上限の規制値は、トリマ4がトラブルで3分間停止しても酸洗セクション24の最低速度0.5m/sで酸洗を続けられるように物理的な上限値210mから90mの余裕を残しておくとの理由により120mと定め、中央ルーパ12及び出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長(中央ループ鋼板蓄積長+出側ループ鋼板蓄積長)の上限の規制値は、冷間圧延機5がトラブルで5分間停止しても酸洗セクション24の最低速度0.5m/sで運転を続けられるように物理的な上限値840m(中央ルーパ12の物理的な上限値210mと出側ルーパ13の物理的な上限値630mの和)から150mの余裕を残しておくとの理由により690mと定め、さらに、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長(出側ループ鋼板蓄積長)の下限の規制値は、トリマ4がトラブルで3分間停止しても冷間圧延機5がオフゲージを生じないような圧延セクション速度0.56m/sで圧延を続けられるようにとの理由により100mと定める。
【0071】
また、表1に示すように、本発明により各セクション23〜25それぞれにおける鋼板20の通板速度の上限値を設定し、この上限値を超えない通板速度で鋼板20を通板させるための速度指令を出力する制御を行う結果を、図4にグラフにまとめて示す。
【0072】
本例では、入側セクション速度上限値VE、1は、第1の鋼板21の後端が巻戻機1から抜けて、後端が溶接機2へ移動するまでは1m/s、溶接中は0m/s、その他の場合は巻戻機1の最高速度9.17m/sとして求め、酸洗セクション速度上限値VP、1は、溶接部が酸洗漕3を通過する間は溶接部の酸洗通板速度2m/s、その他の場合は酸洗セクション24の最高速度2.5m/sとして求め、トリマセクション速度上限値VT、は、溶接部がトリマ4を通過する前後5mでは溶接部のトリマ通板速度0.67m/s、その他の場合はトリマセクション25の最高速度5.83m/sとして求め、さらに圧延セクション速度上限値VR、1は、溶接部が冷間圧延機5を通過している場合は溶接部の冷間圧延機通板速度0.825m/s、その他の場合は冷間圧延機5のモータの回転数上限や出力上限から定まる最高圧延速度である2.67m/sとし、上述した手順に基づいて入側セクション速度V、酸洗セクション速度V、トリマセクション速度V、圧延セクション速度Vを求める。
【0073】
図4のグラフにおける時刻Bを例に説明すると、入側セクション速度上限値VE、1は溶接中であるので0m/sとして求め、酸洗セクション速度上限値VP、1は溶接部が酸洗槽3を通過中ではないので酸洗セクションの最高速度である2.5m/sとして求め、トリマセクション速度上限値VT、1は溶接部がトリマ4の前後5mに位置しないのでトリマセクション25の最高速度である5.83m/sとして求め、さらに圧延セクション速度上限値VR、1はロール替えのため0m/sとして求める。
【0074】
また、図2に示すフローチャートに基づいて、入側ルーパ11の鋼板蓄積長が下限を突破しないための酸洗セクション速度上限はVP、ENT=36.6m/sと求め、入側ルーパ11の鋼板蓄積長が上限を突破しないための入側セクション速度上限はVE、ENT=19.5m/sと求め、中央ルーパ12の鋼板蓄積長が下限を突破しないためのトリマセクション速度上限はVT、MDL=0.5m/sと求め、中央ルーパ12の鋼板蓄積長が上限を突破しないための酸洗セクション速度上限はVP、MDL=8.7m/sと求め、出側ルーパ13の鋼板蓄積長が下限を突破しないための圧延セクション速度上限はV、DEL=16.1m/sと求め、出側ルーパ13の鋼板蓄積長が上限を突破しないためのトリマセクション速度上限はVT、DEL=13.9m/sと求め、入側セクション速度上限値はVE、2=VE、ENT=19.5m/sと求め、酸洗セクション速度上限値はVP、2=min(VP、ENT,VP、MDL)=8.7m/sと求め、トリマセクション速度上限値はVT、2=min(VT、MDL,VT、DEL)=0.5m/sと求め、さらに、圧延セクション速度上限値はVR、2=VR、DEL=16.1m/sと求める。
【0075】
さらに、図3に示すフローチャートに基づいて、入側セクション速度上限値VE、3、酸洗セクション速度上限値VP、3、トリマセクション速度上限値VT、3、圧延セクション速度上限値VR、3を求める。
【0076】
そして、VE、1=0m/s、VE、2=19.5m/s、VE、3=∞となるので、V=min(VE、1、VE、2、VE、3)=0m/sと設定する。また、VP、1=2.5m/s、VP、2=8.7m/s、VP、3=0.5m/sとなるので、V=min(VP、1、VP、2、VP、3)=0.5m/sと設定する。また、VT、1=5.83m/s、VT、2=0.5m/s、VT、3=∞となるので、V=min(VT、1、VT、2、VT、3)=0.5m/sと設定する。さらに、VR、1=0m/s、VR、2=16.1m/s、VR、3=1.1m/sとなるので、V=min(V、1、VR、2、VR、3)=0m/sと設定する。
【0077】
なお、図4のグラフは、上から順に、入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長(入側ループ鋼板蓄積長)、中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長(中央ループ鋼板蓄積長)、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長(出側ループ鋼板蓄積長)、中央ルーパ12及び出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長(中央ループ鋼板蓄積長+出側ループ鋼板蓄積長)、入側セクション23における鋼板20の通板速度(入側セクション速度)、酸洗セクション24における鋼板20の通板速度(酸洗セクション速度)、トリマセクション25における鋼板20の通板速度(トリマセクション速度)又は圧延セクション26における鋼板20の通板速度(圧延セクション速度)それぞれの経時的な変化を示す。後述する図5〜9も同様である。
【0078】
図4におけるA〜Cの時間帯は、通常の酸洗セクション24の通板速度で操業すると、冷間圧延機5の停止中に中央ルーパ12及び出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長の総和が、中央ルーパ12及び出側ルーパ13の規制値である690m以上となることが予測されるので、酸洗セクション24の通板速度を低減する。これによって、冷間圧延機5の停止中(図4におけるB〜Cの時間帯)においても酸洗槽3による酸洗を停止することなく操業可能である。
【0079】
また、中央ルーパ12及び出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長の総和が690m以内に抑えられるため、冷間圧延機5の運転再開直後に突発的に冷間圧延機5が停止することとなってもこの総和が840mに達するまでの間は、直ちに酸洗停止に至ることも防止される。
【0080】
一方、従来法により鋼板20の制御を行う結果を図5にグラフで示す。この従来法は、図5におけるA〜Bの時間帯では、冷間圧延機5の停止直前である時刻Bに、冷間圧延機5の上流である出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が最小になるように酸洗セクション24の通板速度を減速し、冷間圧延機5の停止中であるB〜Cの時間帯では、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が上限を越えないように酸洗セクション24の通板速度を決定するものである。
【0081】
この従来法によっても、冷間圧延機5の停止中(図5におけるB〜Cの時間帯)も酸洗を停止することなく操業可能である。
しかしながら、冷間圧延機5の運転再開直後における時刻Cの入側セクション23の状態を比較すると、図4にグラフで示す本発明では溶接点fの溶接が既に完了しているのに対し、図5にグラフで示す従来方法では溶接点fの溶接はまだ開始すらされておらず、鋼板20の処理の進行程度に大きな差異がある。これは、従来法では必要以上に酸洗セクション24の通板速度を低下することとなるからである。このことから、各ルーパ11〜13における鋼板20の蓄積長の変化を予測することにより各ルーパ11〜13における鋼板20の通板速度を決定する本発明の効果が明らかである。
<シミュレーション2>
本シミュレーションは、上述したシミュレーション1よりも冷間圧延機5の停止時間が短い場合である。なお、以降の各シミュレーション2〜4の説明は、上述したシミュレーション1と相違する部分について行い、共通する部分についての重複する説明は適宜省略する。
【0082】
冷間圧延機5の点検を想定し、冷間圧延機5を計画的に1分間停止するシミュレーションを行う。本発明により制御する結果を図6にグラフで示す。
図6のグラフにおけるB〜Dの時間帯は、通常の酸洗セクション24の通板速度で操業すると、冷間圧延機5の停止中に中央ルーパ12及び出側ルーパ13の鋼板20の蓄積長の総和が中央ルーパ12及び出側ルーパ13の規制値である690m以上となることが予測されるため、酸洗セクション24の通板速度を低下する。これにより、冷間圧延機5の停止中であるA〜Cの時間帯においても、酸洗を停止することなく操業することができる。
【0083】
一方、従来法により鋼板20の制御を行う結果を図7にグラフで示す。この従来法は、A〜Bの時間帯では、冷間圧延機5の停止直前である時刻Bに冷間圧延機5の上流である出側ルーパ13の鋼板20の蓄積長が最小になるように酸洗セクション24の通板速度を低下し、冷間圧延機5の停止中であるB〜Cの時間帯では、出側ルーパ13の鋼板20の蓄積長が上限を越えないように酸洗セクション24の通板速度を決定するものである。
【0084】
この従来法によっても、冷間圧延機5の停止中であるB〜Cの時間帯においても、酸洗を停止することなく操業することができる。
しかし、冷間圧延機5の運転再開直後である時刻Cにおける入側セクション23の状態を比較すると、本発明例では溶接点eの溶接が既に完了しているのに対し、従来方法では溶接点eの溶接がまだ開始されていない。
【0085】
また、本発明によれば、圧延セクション26の速度は規制されていないが、従来法では図7におけるC〜Dの時間帯では低速運転を行っており、鋼板20の処理の進行程度に大きな差異がある。これは、従来法では、必要以上に酸洗セクション24の通板速度を低下してしまったために冷間圧延機5の運転再開直後である時刻Cにおける出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が少なく、圧延セクション26の通板速度を規制しないと、出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が出側ルーパ13の規制値である100m以下になってしまうからである。
<シミュレーション3>
溶接機2の清掃整備を想定し、入側セクション23を計画的に13分間停止するシミュレーションを行う。本発明により制御する結果を図8にグラフで示す。
【0086】
図8のグラフにおけるA〜Dの時間帯は、通常の酸洗セクション24の通板速度で操業すると、入側セクション23の停止中に入側ルーパ11における鋼板20の蓄積長が入側ルーパ11の規制値である150m以下となることが予測されるため、酸洗セクション24の通板速度を低下する。これによって、入側セクション23の停止中であるC〜Dの時間帯においても、酸洗を停止することなく操業することができる。
【0087】
また、図8のグラフにおけるB〜Dの時間帯は、通常の圧延セクション26の通板速度で操業すると、入側セクション23の停止中に出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が出側ルーパ13の規制値である100m以下となることが予測されるため、圧延セクション26の通板速度を低下する。これによって、圧延セクション26を停止することなく操業することができる。
<シミュレーション4>
トリマ4の刃の交換を想定し、トリマ4を計画的に5分30秒間停止するシミュレーションを行う。本発明により制御する結果を図9にグラフで示す。
【0088】
図9のグラフにおけるA〜Fの時間帯は、通常の酸洗セクション24の速度で操業すると、トリマ4の停止中に中央ルーパ12における鋼板20の蓄積長が中央ルーパ12の規制値である120m以上となることが予測されるため、酸洗セクション24の通板速度を最低速度まで低下する。これによって、トリマ4の停止中であるB〜Dの時間帯においても酸洗を停止することなく操業することができる。
【0089】
また、図9のグラフにおけるC〜Eの時間帯は、通常の圧延セクション26の通板速度で操業すると、トリマ4の停止中に出側ルーパ13における鋼板20の蓄積長が出側ルーパ13における規制値である100m以下となることが予測されるため、圧延セクション26の通板速度を低下する。これによって、圧延セクション26を停止することなく操業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施の形態の連続式鋼板処理設備の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】ルーパ蓄積長制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】計算機の動作を示すフローチャートである。
【図4】入側ループ鋼板蓄積長、中央ループ鋼板蓄積長、出側ループ鋼板蓄積長、中央ループ鋼板蓄積長+出側ループ鋼板蓄積長、入側セクション速度、酸洗セクション速度、トリマセクション速度又は圧延セクション速度それぞれの経時的な変化を示すグラフである。
【図5】従来法により鋼板の制御を行う結果を示すグラフである。
【図6】本発明により制御する結果を示すグラフである。
【図7】従来法により鋼板の制御を行う結果を示すグラフである。
【図8】本発明により制御する結果を示すグラフである。
【図9】本発明により制御する結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0091】
0 連続式鋼板処理設備
1 巻戻機
2 溶接機
3 酸洗槽
4 トリマ
5 冷間圧延機
6 巻取機
10 鋼板連続処理設備
11 入側ルーパ
12 中央ルーパ
13 出側ルーパ
20 鋼板
21 第1の鋼板
22 第2の鋼板
23 入側セクション
24 酸洗セクション
25 トリマセクション
26 圧延セクション
30 実績収集装置
40 セクション速度演算機
50 ルーパ蓄積長制御装置
60 計算機
70 速度制御装置
80 制御装置
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一


【公開番号】 特開2008−794(P2008−794A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172929(P2006−172929)