トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 連続式加熱炉の加熱制御方法
【発明者】 【氏名】喜多 由忠

【要約】 【課題】熱間圧延ラインに設置された連続式加熱炉の加熱制御方法として、求められる操業形態に応じて適切に加熱パターンを設定することができる連続式加熱炉の加熱制御方法を提供する。

【解決手段】予め、生産能率優先の操業形態と熱原単位優先の操業形態との操業形態別になった均熱帯昇温量テーブルを作成しておき、熱間圧延ラインの生産負荷により、生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態かが決定されたら、前記均熱帯昇温量テーブルから対応する均熱帯昇温量を選出し、その均熱帯昇温量に基づいて加熱パターンを設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延ラインに設置され、加熱帯と均熱帯を備えた連続式加熱炉の加熱制御方法であって、予め、生産能率優先の操業形態と熱原単位優先の操業形態との操業形態別に均熱帯の昇温量を定めておき、生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態かの選択に従って、前記操業形態別に定められている均熱帯昇温量から前記選択の操業形態に対応した均熱帯昇温量を選出し、選出された均熱帯昇温量に基づいて加熱パターンを設定することを特徴とする連続式加熱炉の加熱制御方法。
【請求項2】
前記操業形態別に定められている均熱帯昇温量は、加熱する鋼片の鋼種と装入温度と抽出温度とに基づいて定められていることを特徴とする請求項1に記載の連続式加熱炉の加熱制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼片を熱間圧延して熱延鋼板(鋼帯)を製造する熱間圧延ラインに設置された連続式加熱炉の加熱制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延ラインに設置された連続式加熱炉を操炉する上で、鋼片の加熱パターンを操作することは非常に重要である。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるように、鋼片の加熱パターンとして、急速加熱帯で急速加熱し、均熱帯にて1100℃以下の低温で均熱を行うという前段高負荷型の加熱パターンにすることにより、スキッドマークの低減とスケールオフ量の確保を図りながら、生産性向上と加熱原単位の改善を実現しようとする技術がある。
【特許文献1】特開平11−256235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、連続式加熱炉は熱間圧延ラインの目標生産量(生産負荷)に応じて、高い生産能率が求められる場合(生産能率優先の操業形態)と、熱原単位の低減が求められる場合(熱原単位優先の操業形態)がある。また、高い生産能率を達成するためには、加熱炉での在炉時間を短くすることだけはなく、引き続き行われる熱間圧延工程での生産性まで考慮する必要がある。特許文献1に記載されているような加熱パターンでは、低温加熱とすることにより在炉時間を短くし、加熱炉での生産性を向上させることはできるが、低温加熱に起因して熱間圧延工程で変形抵抗増大による粗圧延パス回数増加等の問題が生じ、結果的に熱間圧延ラインの生産能率向上にはつながらない場合がある。また、加熱過程で固溶強化、析出強化が必要な材料特性等の理由で1100℃以下の低温加熱を実施できない場合があり、そのような場合には、急速加熱帯で一気に抽出目標温度まで加熱した後、高温で保持する時間が長くなることから、熱原単位はかえって悪化する。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、熱間圧延ラインに設置された連続式加熱炉の加熱制御方法として、求められる操業形態に応じて適切に加熱パターンを設定することができる連続式加熱炉の加熱制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行い、その結果、連続式加熱炉における均熱帯の昇温量を適切に設定すればよいことを知見した。
【0007】
すなわち、まず生産能率優先の操業形態の場合には、圧延能率を向上させる必要があり、そのためには、加熱炉で発生するスキッドマーク量が小さくなるように加熱することが重要である。なぜなら、スキッドマーク量が大きいと、スキッドマーク部と非スキッドマーク部の変形抵抗に大きな差ができるため、仕上圧延時の荷重が大きく変動し、仕上圧延機での通板が非常に困難となる。その結果、仕上通板トラブルを回避するために材料間の圧延インターバルを大きく取る必要が生じ、圧延能率が悪化するからである。そして、本発明者らは、スキッドマーク量を小さくするためには、加熱帯で急速加熱して均熱帯の昇温量を小さくすることが有利であること、また、その最適な昇温量は、鋼種、装入温度、抽出温度によって変化することを見出した。
【0008】
一方、熱原単位優先の操業形態の場合には、急速な加熱を避けて、均熱帯昇温量をできるだけ大きく取って、抽出温度での保持時間を極力短くするような加熱パターンとすることがよいことを見出した。
【0009】
上記の知見に基づいて、本発明は以下の特徴を有している。
【0010】
[1]熱間圧延ラインに設置され、加熱帯と均熱帯を備えた連続式加熱炉の加熱制御方法であって、予め、生産能率優先の操業形態と熱原単位優先の操業形態との操業形態別に均熱帯の昇温量を定めておき、生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態かの選択に従って、前記操業形態別に定められている均熱帯昇温量から前記選択の操業形態に対応した均熱帯昇温量を選出し、選出された均熱帯昇温量に基づいて加熱パターンを設定することを特徴とする連続式加熱炉の加熱制御方法。
【0011】
[2]前記操業形態別に定められている均熱帯昇温量は、加熱する鋼片の鋼種と装入温度と抽出温度とに基づいて定められていることを特徴とする前記[1]に記載の連続式加熱炉の加熱制御方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、熱間圧延ラインの生産負荷等によって選択した操業形態(生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態か)に応じて適切に加熱パターンを設定することができる。その結果、熱間圧延ラインの生産負荷等に応じて、生産能率の向上と熱原単位の低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態について述べる。なお、この実施形態における連続式加熱炉は、熱間圧延ラインに設置され、第1加熱帯、第2加熱帯、均熱帯を備えた連続式加熱炉とする。
【0014】
そして、この連続式加熱炉は、図1に示すように、熱間圧延ラインの生産負荷に応じて操業形態(加熱パターン)を変更するようにしている。すなわち、熱間圧延ラインの生産負荷が大きい場合は、生産能率優先の操業形態をとり、スキッドマーク量が小さくなるように、図1中の実線で示す加熱パターンのごとく、第1加熱帯、第2加熱帯で急速加熱して均熱帯の昇温量を小さくする前段高負荷型で操業する。一方、熱間圧延ラインの生産負荷が小さい場合は、熱原単位優先の操業形態をとり、図1中の破線で示す加熱パターンのごとく、加熱帯での急速な加熱を避けて均熱帯昇温量をできるだけ大きく取るような加熱パターンとしている。
【0015】
そして、そのために、予め、生産能率優先の操業形態と熱原単位優先の操業形態との操業形態別になった均熱帯昇温量テーブルを作成しておき、熱間圧延ラインの生産負荷により、生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態かを選択・決定したら、前記均熱帯昇温量テーブルから対応する均熱帯昇温量を選出し、その均熱帯昇温量に基づいて加熱パターンを設定するようになっている。
【0016】
その際に、均熱帯昇温量テーブルは、鋼片のスキッドマーク量が均熱帯昇温量以外に、鋼種、加熱炉への装入温度、加熱炉からの抽出温度によって影響を受けることから、操業形態に加えて、鋼種と抽出温度と装入温度とに基づいて均熱帯昇温量が定まるようにしている。例えば、図2は均熱帯の昇温量とスキッドマーク量との関係を、装入する鋼片の熱片(300℃以上)と冷片(300℃未満)別に示したものである。図2から明らかなように、スキッドマーク量を小さくするためには、均熱帯昇温量を小さくする必要がある。特に、均熱帯昇温量が40℃を超えるとスキッドマーク量が大きくなることから、生産能率優先の操業形態の場合には、他の制約がなければ、均熱帯昇温量を40℃以下とすることが好ましい。また、鋼片の装入温度が低い(冷片)ほどスキッドマーク量は大きくなることから、冷片の場合には熱片の場合よりも均熱帯昇温量を小さくすべきである。同様に、S45C鋼などSiを含有し赤スケールが問題となる鋼種は表面温度の高温化が問題となるため、操業形態に関わらず表面温度上昇を抑制する必要があり、したがって均熱帯昇温量を大きく設定する。また抽出温度が高いほど昇熱量が大きくなり、必然的に均熱帯昇温量が大きくなるため、スキッドマーク量は大きくなることから、特に生産能率優先の操業形態の場合には、均熱帯昇温量は小さくなるように設定される。
【0017】
そのような均熱帯昇温量テーブルの一例を表1に示す。表1においては、操業形態の区分が生産能率優先と熱原単位優先、鋼種の区分がA(S45C鋼のような品質上、ある温度以上の均熱帯昇温量の確保が必要であるもの)とB(品質上の制約がないもの)、抽出温度の区分が低温(1100℃未満)と中温(1100℃以上1200℃未満)と高温(1200℃以上)、装入温度の区分が冷片(300℃未満)と熱片(300℃以上)となっており、それらの区分に基づいて、均熱帯昇温量が選出できるようになっている。
【0018】
【表1】


【0019】
そして、この連続式加熱炉の加熱パターンは以下の手順によって設定される。
【0020】
(S1)熱間圧延ラインの生産負荷から、生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態かを決定し、その操業形態と、鋼種と抽出温度と装入温度に基づいて、均熱帯昇温量テーブルから均熱帯昇温量を選出する。
【0021】
(S2)次に、均熱帯昇温量と均熱帯在炉時間から均熱帯炉温を決定する。
【0022】
(S3)次に、抽出温度と均熱帯昇温量と装入温度から均熱帯までの昇温量(すなわち、第1加熱帯と第2加熱帯の合計昇温量)を決定する。
【0023】
(S4)第1加熱帯と第2加熱帯の加熱能力から、第1加熱帯と第2加熱帯の昇温量比率を決定し、その昇温量比率によって前記の合計昇温量を按分して、第1加熱帯と第2加熱帯のそれぞれの昇温量を決定する。
【0024】
(S5)第1加熱帯と第2加熱帯の昇温量から第1加熱帯と第2加熱帯の炉温を決定する。
【0025】
以上のようにして、この実施形態においては、熱間圧延ラインの生産負荷によって決定した操業形態(生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態か)に応じて適切に加熱パターンを設定することができる。その結果、熱間圧延ラインの生産負荷に応じて、生産能率の向上と熱原単位の低減を図ることが可能となっている。
【実施例1】
【0026】
熱間圧延ラインに設置された複数の連続式加熱炉のうち、ある連続式加熱炉を生産能率優先の操業形態(均熱帯昇温量を小さくした加熱パターン)とし、他の連続式加熱炉を熱原単位優先の操業形態(均熱帯昇温量を大きくした加熱パターン)として実験を実施した。具体的には、表1に示した均熱帯昇温量テーブルに基づいて、連続式加熱炉の加熱パターンを設定した。
【0027】
その結果、生産能率優先の操業形態で操業した連続式加熱炉では3t/hrの生産能率改善効果があり、熱原単位優先の操業形態で操業した連続式加熱炉では2Mcal/tの熱原単位改善効果があった。
【0028】
これによって、熱間圧延ラインの生産負荷によって決定した操業形態(生産能率優先の操業形態か熱原単位優先の操業形態か)に応じて適切に加熱パターンを設定することにより、熱間圧延ラインの生産負荷に応じて、生産能率の向上と熱原単位の低減を図ることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】生産能率優先の操業形態での加熱パターンと、熱原単位優先の操業形態での加熱パターンを比較した図である。
【図2】均熱帯における昇温量とスキッドマーク量との関係を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年11月6日(2006.11.6)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎

【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘


【公開番号】 特開2008−114266(P2008−114266A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−300283(P2006−300283)