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【発明の名称】 熱間圧延における被圧延材の温度制御方法、及び、それを用いた熱間圧延方法
【発明者】 【氏名】武藤 清吾

【要約】 【課題】頻繁な再計算に伴うプロセスコンピュータの負荷の増大を抑制しつつ、粗圧延中の被圧延材の搬送が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻に対し、早まったり、遅れたり撹乱されるのを極力回避しつつ行えるようにすると共に、後続の各被圧延材温度許容範囲外れや、それに伴う品質不良の発生を抑制できるようにする。

【解決手段】被圧延材1を加熱炉10から抽出する前の実績温度と、目標とする抽出温度とを比較し、前者の方が高い場合には、該被圧延材1の粗圧延の一部の速度を減速させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延において、
被圧延材を加熱炉から抽出する前の実績温度と、目標とする抽出温度とを比較し、
該被圧延材を加熱炉から抽出する前の実績温度の方が高い場合に、
該被圧延材の粗圧延の一部の速度を減速させることを特徴とする熱間圧延における被圧延材の温度制御方法。
【請求項2】
速度を減速させることに決めた被圧延材に対し、
該減速をさせるよりも上流側の主要な設備の入側、あるいは、それら各主要な設備そのものに該被圧延材が到達した実績時刻が、加熱炉から抽出する前に予測した、到達予定時刻に比べ、遅くなった場合、
該被圧延材の粗圧延の一部の速度の減速分を低減することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延における被圧延材の温度制御方法。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2の温度制御方法を用いた熱間圧延方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延における被圧延材の温度制御方法、及び、それを用いた熱間圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延とは、一般的に、連続鋳造または造塊・分塊によって製造されたスラブ状の金属材料を加熱炉にて数百〜千数百℃に加熱した後、熱間圧延ライン上に抽出し、一対または複数対のロールで挟圧しつつそのロールを回転させることで、薄く延ばし、コイル状に巻き取る一連のプロセスである。
【0003】
図1は、従来から多くある熱間圧延ライン100の一例を示す。加熱炉10により数百〜千数百℃に加熱された厚み150〜300mmの金属材料(以下、被圧延材)1は、粗圧延機12、仕上圧延機18により厚み0.8〜25mmまで圧延されて金属板状に薄く延ばされる。
【0004】
粗圧延機12は、図1に示す熱間圧延ライン100の場合、R1、R2、R3の3基であるが、必ずしも基数はこれに限らない。1基だけのものや2基のもののほか、最も一般的なものは4基のものであり、基数の多いものだと6基のものまである。最も一般的な4基のものの場合、4基のうち1機を往復圧延するものとし、残る圧延機が一方向圧延を行う3/4連続(スリークォータ)と呼ばれるタイプのものが多い。しかし、4機中3機が一方向のタイプに限らず、例えば図1のように3機中1機が一方向のタイプも含め、3/4連続という。粗圧延機12のすぐ上流に幅プレス9を設置したものもある。
【0005】
仕上圧延機18を構成する各圧延機(スタンド)の数は、図1に示す熱間圧延ライン100の場合、F1〜F7の7基であるが、6基のものもある。
【0006】
これら各種基数の違いはあるが、粗圧延機12は、往復圧延あるいは一方向圧延あるいは両者により、一般的に合計で6回あるいは7回の粗圧延を行なって、粗圧延後の被圧延材1を、それに続く仕上圧延機18に向け供給する。粗圧延におけるそれら各回の圧延を、各圧延パスともいい、6回あるいは7回というように複数回圧延することを、6パスで圧延するとか7パスで圧延するともいう。
【0007】
仕上圧延機18は、数百〜千数百℃の高温の被圧延材1を複数の圧延機で同時に圧延するタンデム圧延機の形式をとるが、仕上タンデム圧延機ではなく、略して単に「仕上圧延機」と称されることが多い。図において、2はロール、13、FIEはエッジャーロール、15は仕上入側温度計、21は仕上出側温度計、22は仕上出側板厚計、23はランナウトテーブル、24はコイラー、25はコイラー入側温度計、50は制御装置、70はプロセスコンピュータ、90はビジネスコンピュータである。
【0008】
図1に示したごとく、仕上圧延機18で被圧延材を一本圧延し、しばらく時間的な間隔をおいて、次の被圧延材を圧延し、という一連の動作を繰り返し行う熱間圧延方法のことを、バッチ圧延という。これに対し、今日では、被圧延材同士を接合して仕上圧延する場合もあり、連続熱間圧延とかエンドレス圧延といわれているが、バッチ圧延の方が一般的である。
【0009】
ところで、熱間圧延ライン100には、仕上圧延機18の各スタンド間を除いて、その他の圧延機(スタンド)間には、図示しない多数(百以上)のテーブルローラが設置されており、被圧延材1を搬送する。
【0010】
ところで、先述のように数百〜千数百℃に加熱された高温の被圧延材1には、加熱炉10から抽出されたとき、その表裏面に酸化物の層(以下、スケール)が生成している。この他、圧延され薄く延ばされるとともに放熱により降温していく過程でも、被圧延材1は高温の状態で大気に曝されるため、新たなスケールが被圧延材1の表裏面に生成する。このため、粗圧延機12の中の各圧延機の入側には、ポンプからの供給圧にして10〜30MPa内外の高圧水を被圧延材1の表裏面に吹き付けてスケールを除去するデスケーリング装置16が設置され、スケールを除去している。
【0011】
また、図示していないが、各ロール2は、高温の被圧延材と接触するので、冷却水にて冷却されている。
【0012】
図1において、14はクロップシャーであり、仕上圧延前に被圧延材1の先尾端のクロップ(被圧延材1の先尾端の、いびつな形状の部分)を切断除去し、仕上圧延機18に円滑に噛み込みやすい略矩形の平面形状に整形する。
【0013】
一般に、熱間圧延においては、圧延後の金属板製品に対する様々な顧客要求仕様に応じて、機械的性質確保、表面品質不良防止、等の観点から、各被圧延材ごとに、仕上出側温度の許容範囲が定められている。
【0014】
金属学的には、仕上圧延機の複数ある圧延機の中のどれかの圧延機で圧延中の被圧延材の温度を許容範囲に収めるよう制御を行なうのが最適であるが、正にロールで圧延中の被圧延材の温度を測定したりするのは非常に困難であることから、これに替え、代表して、仕上圧延機の出側における被圧延材の温度、即ち、仕上出側温度の許容範囲を定め、その範囲に収めるよう各種の温度制御を行うようにしたものである。
【0015】
このように、仕上出側温度を許容範囲に収めるためには、仕上圧延開始前の被圧延材の温度に、制御上の上限、下限を定めるようにするのが、最も考えやすく、また、一般的に行われている方法でもある。
【0016】
仕上出側温度を許容範囲に収める制御を行うため、図1に示す熱間圧延ライン100には、仕上出側温度計21が設置されており、また、仕上圧延開始前の被圧延材の温度を制御上の上限、下限の範囲内に収める制御を行うため、仕上入側温度計15が設置されている。
【0017】
更に、仕上圧延開始前の被圧延材の温度を制御する方法としては、被圧延材を加熱炉から抽出する前の目標とする抽出温度を、下限として定めておき、その下限を超えたら、抽出する、という方法が多くとられる。
【0018】
抽出温度の上限は、被圧延材1の材質により定められる場合もあるが、そうでない場合、スケールロス増による歩留まり低下の抑制や、加熱炉設備の耐久性等の別の観点から、1350℃以下と定められているのが通常である。
【0019】
以上説明した仕上出側温度や仕上入側温度や抽出温度の上限、下限は、被圧延材の材質や寸法等の区分ごとに予め定めておく。
【0020】
ところで、図1に示した熱間圧延ライン100の場合もそうであるが、一般的に、熱間圧延ラインは、加熱炉から仕上圧延機入側までが300メートル内外あり、一方、被圧延材の長さは、加熱炉内では高々十数メートル、粗圧延後においても高々100メートル内外であり、熱間圧延ライン上には同時に複数の被圧延材が存在できる。
【0021】
そこで、生産性の向上を図るために、粗圧延においては、ある被圧延材が複数ある粗圧延機12のうちの最終圧延機(図1の熱間圧延ライン100の場合の例でいえばR3)における圧延を完了してから次の被圧延材を加熱炉10から抽出するのではなく、最終圧延機(図1の熱間圧延ライン100の場合の例でいえばR3)における圧延の完了を待たずに、次々と被圧延材1を抽出し、複数の被圧延材を流れ作業的に圧延する方法が一般的にとられる。
【0022】
その際、加熱炉10から被圧延材1を抽出する時間的な間隔を、被圧延材同士が熱間圧延ライン上のどこでも衝突せず、しかも、ある被圧延材を圧延後に次の被圧延材を圧延開始するまでの各種の設定替が、熱間圧延ライン上の各設備(幅プレス9、粗圧延機12、仕上圧延機18、ランナウトテーブル23、コイラー24、その他)において行えるだけの時間的な間隔を確保しうる、最短の時間的な間隔に調整するための方法として、例えば、特許文献1に示されるような、ミルペーシング制御方法がとられることが多い。
【0023】
このミルペーシング制御方法は、熱間圧延ライン上の各設備(幅プレス9、粗圧延機12、仕上圧延機18、ランナウトテーブル23、コイラー24、その他)と、その間にあるテーブルローラと、による被圧延材の搬送速度が、予め定めてある予定通りの搬送速度パターンに従って処理されると仮定し、例えば、ある被圧延材1を仕上圧延機18の第1圧延機であるF1で圧延終了後、次の被圧延材を同F1で圧延開始するまでの、仕上圧延機各圧延機の設定替に必要な時間的な間隔を確保しうる、最短の時間的な間隔に、実際の、そのある被圧延材を仕上圧延機18の第1圧延機であるF1で圧延終了後、次の被圧延材を同F1で圧延開始するまでの所要時間を、調整すべく、前記した次の被圧延材を加熱炉10から抽出する時刻を、予めプロセスコンピュータ70内にて、各被圧延材ごとに計算により決定しておき、その時刻がきたら、実際に前記した次の被圧延材を加熱炉から抽出するように制御する(予め定めてある搬送速度パターンについては後出図3を参照)。
【0024】
ここで、上述の例のように、仕上圧延機各圧延機の設定替に必要な時間的な間隔を確保しうる、最短の時間的な間隔に、実際の、そのある被圧延材を仕上圧延機18の第1圧延機であるF1で圧延終了後、次の被圧延材を同F1で圧延開始するまでの所要時間を調整すべく、次の被圧延材を加熱炉10から抽出する時刻を決定するのは、あくまで一例であり、これに替えて、幅プレス9の設定替のほか、粗圧延機12のうちのどれかの圧延機の設定替、ランナウトテーブル23の設定替、コイラー24の設定替、等に必要な時間的な間隔を確保しうる、最短の時間的な間隔に、実際の、そのある設備を被圧延材が通過終了後、次の被圧延材がそのある設備に到達するまでの所要時間を調整すべく、次の被圧延材を加熱炉10から抽出する時刻を決定する場合もある。
【0025】
その関係で、熱間圧延ラインの操業中においては、プロセスコンピュータ70の中で、前述のミルペーシング制御にともない、幅プレス9のほか、粗圧延機12のうちの各圧延機、仕上圧延機18、ランナウトテーブル23、コイラー24といった、主要な設備の入側と出側、あるいは、それら主要な設備そのものへの、各被圧延材の到達時刻と、主要な設備の入側と出側の、あるいは、それら主要な設備そのものの、各被圧延材の通過終了時刻が、時々刻々に計算により求められる処理が繰り返される。
【0026】
さて、先に述べた、仕上出側温度を許容範囲に収めるため、更に、仕上圧延開始前の被圧延材の温度を制御し、しかも、仕上圧延開始前の被圧延材の温度を制御するため、被圧延材を加熱炉10から抽出する前の目標とする抽出温度を定めておき、それに達したら、抽出する、という熱間圧延における被圧延材の温度制御方法と、その次に述べた、熱間圧延における、生産性を向上するための、ミルペーシング制御方法と、は互いに影響を及ぼしあう。
【0027】
即ち、仕上入側温度計15で実測した被圧延材1の温度が、仕上圧延開始前の被圧延材の温度の上限を超えていれば、上限以下になるまで、図2に示すごとく、一時その被圧延材を仕上圧延機18の入側でオシレーションなどにより待機させることがあるが、そうすると、以降の各主要な設備の入側と出側への、各被圧延材1A、1Bの到達時刻と、各主要な設備の入側と出側の、各被圧延材1A、1Bの通過終了時刻が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻よりも遅れていくことになる。
【0028】
先述の特許文献1では、上記のような予測温度と実績温度との差異によるスケジュール計算の誤差だけでなく、ミルペーシング制御側の搬送予測モデルの誤差等の累積によっても、以降の各主要な設備の入側と出側への、各被圧延材の到達時刻と、各主要な設備の入側と出側の、各被圧延材の通過終了時刻が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻よりも遅れていく場合があることを指摘しているが、結果的には、被圧延材の温度が、仕上圧延開始前の被圧延材の温度の上限を超えていた場合と同様に、次に述べるような問題が起こる。
【0029】
その問題とは、即ち、上記のような状況になった場合、次に加熱炉から抽出しようとする被圧延材の抽出時刻を、その遅れた分だけ遅くするようにミルペーシング制御では再計算せざるを得なくなるが、それを加熱炉10での被圧延材の加熱温度制御に反映しないと、被圧延材が過加熱になって、やがて、その過加熱になった被圧延材が、加熱炉10から抽出され、粗圧延を経て仕上入側温度計15に達すると、それがまた仕上圧延開始前の被圧延材の温度の上限を超えていて、再びオシレ−ション待機し、次に加熱炉10から抽出される被圧延材の抽出が遅れ、再び過加熱になり、という悪循環が繰り返される、ということである。
【0030】
そこで、仕上圧延開始を遅延させることなく、被圧延材の温度を制御する方法として、様々な方法が提案されている。
【0031】
例えば、特許文献2には、粗圧延中、被圧延材からロールへの熱伝達による単位時間当りの被圧延材の温度降下は、被圧延材の板厚の薄くなる粗圧延後半のほうが、同板厚の厚い粗圧延前半よりも大きいことを利用して、図3(a)に示すごとく、被圧延材の速度を、粗圧延後半では遅らせて所要時間を延長したり、あるいは更に、図3(b)に示す如く、被圧延材の速度を、粗圧延前半では速めて所要時間を短縮し、後半では遅らせて所要時間を延長することにより、仕上圧延開始時刻は一定に保ちながら、粗圧延での温度降下を大きくする方法を提案している。
【0032】
もっとも、特許文献2においては、複数ある粗圧延機12のうち最終圧延機R3の入側で、実際に被圧延材の温度を測定し、その結果に応じて、当該被圧延材のその後の圧延速度や搬送速度を調整する方法を例として挙げている。
【0033】
しかしながら、加熱炉10から抽出後に、実際に被圧延材1の温度を測定し、その結果に応じて、当該被圧延材の圧延速度や搬送速度を変化させると、以降の各主要な設備の入側と出側への、各被圧延材の到達時刻と、各主要な設備の入側と出側の、各被圧延材の通過終了時刻が、頻繁に、ミルペーシング制御にて予定していた時刻に対し、早まったり、遅れたり撹乱されて、そのたびに、次に加熱炉10から抽出しようとする被圧延材の抽出予定時刻を、再計算せねばならなくなり、プロセスコンピュータ70の負荷が増大する。
【0034】
しかも、粗圧延中の被圧延材の本数は、先述のように複数あるから、先行する被圧延材がR3に、後続の被圧延材がR2に、更に次の被圧延材がR1に、それぞれ到達するたびに再計算が行われると、いよいよプロセスコンピュータ70の負荷は増大する。
【0035】
特許文献3には、ある被圧延材の速度を変化させた結果、以降の各主要な設備の入側と出側への、あるいは、それら主要な設備そのものへの、そのある被圧延材の到達時刻と、各主要な設備の入側と出側の、あるいは、それら主要な設備そのものの、そのある被圧延材の通過終了時刻が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻よりも遅れた場合には、その上流にある各被圧延材を、次に通過する予定の圧延機等の各主要な設備の入側で強制的に待機させる方法を提案している。
【0036】
しかしながら、この方法でも、再計算に伴うプロセスコンピュータ70の負荷の増大の問題は、そのまま残り、また、それとは別に、ある被圧延材の上流にある、後続の各被圧延材の温度が適正であった場合でも、強制的に待機させられるため、結果的に、仕上圧延開始前の被圧延材の温度の下限を下回る場合が出てくるという問題も新たに生じてくる。すると、仕上圧延機入側に被圧延材を加熱する手段が全く無いか、または、あったとしても、その加熱能力が十分でない場合には、温度許容範囲外れが生じ、それに伴い、その被圧延材は、品質不良となり、製品歩留まりの低下をまねくことにつながる。
【0037】
また、特許文献4にも、各スタンドの速度を減速することにより、圧延後の温度を一定に保つことが提案されている。
【0038】
【特許文献1】特開昭62−289308号公報
【特許文献2】特開平11−277126号公報
【特許文献3】特開平06−299321号公報
【特許文献4】特開昭59−130602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
しかしながら、以上のように、粗圧延中の被圧延材の搬送や圧延速度全体を遅らせることは、プロセスコンピュータの負荷の増大や、品質不良にともなう製品歩留まりの低下等、操業上様々な問題を生じる。
【0040】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、頻繁な再計算に伴うプロセスコンピュータの負荷の増大を抑制しつつ、粗圧延中の被圧延材の搬送が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻に対し、早まったり、遅れたり撹乱されるのを極力回避しつつ行えるようにするとともに、後続の各被圧延材温度許容範囲外れや、それに伴う品質不良の発生を抑制できる、熱間圧延における被圧延材の温度制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、前記課題を解決するために、熱間圧延において、図4の前半に示す如く、被圧延材を加熱炉から抽出する前の実績温度と、目標とする抽出温度とを比較し、該被圧延材を加熱炉から抽出する前の実績温度の方が高い場合には、該被圧延材の粗圧延の一部の速度を減速させるようにしたものである。
【0042】
本発明は、更に、図4の後半に示す如く、速度を減速させることに決めた被圧延材に対し、該減速をさせるよりも上流側の主要な設備の入側、あるいは、それら各主要な設備そのものに該被圧延材が到達した実績時刻が、加熱炉から抽出する前に予測した、到達予定時刻に比べ、遅くなった場合、該被圧延材の粗圧延の一部の速度の減速分を低減するようにしたものである。
【0043】
本発明は、又、それらを用いた熱間圧延方法である。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、頻繁な再計算に伴うプロセスコンピュータの負荷の増大を抑制しつつ、粗圧延中の被圧延材の搬送が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻に対し、早まったり、遅れたり撹乱されるのを極力回避しつつ行えるようにするとともに、後続の各被圧延材の温度許容範囲はずれや、それに伴う品質不良の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に述べる第一の実施の形態、第二の実施の形態とも、図4を適宜参照しつつ理解されたい。
【0046】
(第一の実施の形態)
本発明では、ある被圧延材1を加熱炉10から抽出する前の実績温度と、目標とする抽出温度とを比較し、被圧延材を加熱炉から抽出する前の実績温度の方が高い場合に、該被圧延材の粗圧延パスの一部の速度を減速させる。
【0047】
ここで、減速させる、とは、加熱炉10からその被圧延材1を抽出する前に、当初プロセスコンピュータ70内で予定していた、それら、粗圧延の一部の速度よりも、低い速度に、その予定していた、それら、粗圧延の一部の速度を変更するように、プロセスコンピュータ70内で予定し直す、ということである。
【0048】
それには、先述の図3(a)に示した、被圧延材の速度を、粗圧延後半では遅らせて所要時間を延長する方法や、図3(b)に示した、被圧延材の速度を、粗圧延前半では速めて所要時間を短縮し、後半では遅らせて所要時間を延長する方法を踏襲してもよいし、あるいは、別の方法によってもよい。
【0049】
この際、重要なことは、ミルペーシングの方も、変更後の速度に基づいて各主要な設備そのもの、あるいはその入側や出側への到達予定時刻を計算するようにするということである。こうすれば、ミルペーシングは最初から予定した搬送パターンに沿った計算をするだけでよく、ミルペーシング制御側の搬送予測モデルの誤差や、あるいは、例えば図示しないサイドガイドへの引掛かりなど、通板への支障に伴う予定した搬送パターンからの遅延などがない限り、頻繁な再計算に伴うプロセスコンピュータの負荷増大を相当程度抑制できるということである。
【0050】
また、このようにすれば、ある粗圧延機12において被圧延材1を圧延する際のロール2の周速などの圧延速度、あるいは、それ以外の際(加熱炉10〜幅プレス9間、幅プレス9〜R1間、R1〜R2間、R2〜R3間等)の被圧延材の搬送速度を、当初予定していたそれらよりも減速させる、という予定のし直しを、加熱炉10からその被圧延材を抽出する前に行ない、粗圧延中の被圧延材の搬送が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻に対し、早まったり、遅れたり撹乱されるのを極力回避しつつ行うことができることに伴い、後続の各被圧延材温度許容範囲外れや、それに伴う品質不良の発生も抑制できるようになる、ということも重要である。
【0051】
目標とする抽出温度は、スラブ状の段階での被圧延材の寸法の実績と、目標とする製品寸法から決まる、粗圧延スケジュール(各粗圧延パスでの被圧延材の厚さとロール周速)に従って圧延した際に、該被圧延材の仕上入側温度が、目標とする仕上入側温度に概ね一致するように定められていることが通常である。
【0052】
従って、ある被圧延材を加熱炉10から抽出する前の実績温度が、目標とする抽出温度より高い場合、仕上入側温度実績も、目標とする仕上入側温度よりも高いことが想定される。
【0053】
そこで、そのような場合に、該被圧延材の粗圧延パスの一部の速度を減速させる。ここで、被圧延材の粗圧延パスの一部の速度には、正確には、実際にロールで被圧延材が圧延されているときの速度だけでなく、搬送されているときの速度も含まれる。
【0054】
そうすると、相対的に低温のロールと、相対的に高温の被圧延材との接触時間が長くなることから、ロールと被圧延材との間の熱伝達により、被圧延材の温度は、当初予定していた速度で圧延した場合に比べ、低下する。
【0055】
このほか、粗圧延速度を減速させた圧延パス等で被圧延材に向け噴射されるデスケーリング水により被圧延材が冷却される作用も、速度が低下した分、助長される、という寄与もある。
【0056】
ロールと被圧延材との間の熱伝達による温度降下率(単位時間あたりの温度降下)は、被圧延材の自然空冷による温度降下率よりも大きいため、被圧延材の粗圧延パスの一部の速度を減速させることは、仕上圧延機18の入側で被圧延材を待機させるのに比べて、圧延能率の低下が少なくてすむ。
【0057】
(第二の実施の形態)
また、被圧延材の粗圧延パスの一部の速度を、当初プロセスコンピュータ70内で予定していた速度よりも、低い速度に、予定し直した被圧延材に対しては、併せて、幅プレス9の他、R1、R2、・・・などの各粗圧延機12のような、各主要な設備の入側、あるいは、それら各主要な設備そのものへの到達予定時刻の再計算を行い、実際に、それら各主要な設備の入側、あるいは、それら各主要な設備そのものに、その被圧延材1が到達したときに、その実績時刻が、何らかの理由で、加熱炉10から抽出する前に予測した、その到達予定時刻(前記再計算後の予定時刻)よりも遅く到達した場合は、好ましくは、その遅れた時間分の空冷温度降下分に相当するだけ、該被圧延材1の粗圧延パスの一部の速度の減速分を低減する(その遅れた時間分だけでなくても、少しでも減速分を低減すれば効果はある)。
【0058】
これにより、粗圧延途中の被圧延材の搬送が、図示しない粗圧延機サイドガイドの制定未完やテーブルロールと被圧延材のスリップのほか、ミルペーシング制御側の要因、即ち、予測温度と実績温度との差異によるスケジュール計算の誤差、搬送予測モデルの誤差等により遅れたような場合にも、遅れた時間分の空冷温度降下分に相当するだけ、該被圧延材の粗圧延パスの一部の速度の減速分を低減するので、後続の各被圧延材の温度許容範囲外れや、それに伴う品質不良の発生を抑制できる。
【0059】
なお、以上述べた二つの実施の形態では、ミルペーシング制御の再計算を全否定するわけではないが、仕上圧延機入側温度計15や仕上圧延機18のうちの第1圧延機F1に被圧延材1の先端が到達した場合にだけ行うなど、とにかくその頻度を抑制することにより発明の目的は達することができる。
【実施例】
【0060】
本発明を、図1に示した熱間圧延ライン100に適用した場合を例に、以下、本発明の実施例について、適宜図を参照しつつ説明する。
【0061】
熱間圧延ライン100には、図1に示すように、加熱炉10、粗圧延機12(R1〜R3)、仕上圧延機18、コイラー24等が、被圧延材1の搬送方向Aに従って、順に設置されており、各設備は、それぞれ制御装置50からの指令により制御されていることは、先にも述べた通りである。
【0062】
プロセスコンピュータ70は、1本の被圧延材1が加熱炉10から抽出される度に、複数ある加熱炉10内の一部あるいは全部の被圧延材1について、スラブ状の段階での該各被圧延材の寸法の実績や目標とする製品寸法等から、粗圧延機12、仕上圧延機18の圧延荷重上限やロールを駆動する図示しない電動機の負荷トルク等、設備能力上の制約等の範囲に収まることも考慮しつつ、各粗圧延機12の各パスでの、圧延後予定板厚、ロール間隙(圧下位置)、ロール周速等や、仕上圧延機18の各パスでの、圧延後予定板厚、ロール間隙(圧下位置)、ロール周速等を、テーブル値索引、モデル計算のいずれかにより決定する。決定された値が、指令値として、制御装置50に送られる。
【0063】
また、プロセスコンピュータ70は、各粗圧延機12の各パスでの、圧延後予定板厚、ロール間隙(圧下位置)、ロール周速等や、仕上圧延機18の各パスでの、圧延後予定板厚、ロール間隙(圧下位置)、ロール周速等から各被圧延材1の加熱炉10からの抽出以降、主要な各設備の入側と出側への到達時刻を予測計算する。この予測計算の結果を、以下、搬送線と称する。
【0064】
更に、プロセスコンピュータ70は、加熱炉10内にある各被圧延材1について、加熱炉10への装入時に、図示しない加熱炉入側温度計にて測定した装入温度実績ならびに、ある周期で測定した、図示しない加熱炉内温度計にて測定した、加熱炉10内の各帯の、炉内雰囲気温度実績に基づき、図5にその概要を示す差分モデル等の方法により、その温度を計算する。
【0065】
そして、プロセスコンピュータ70は、加熱炉10から、次に抽出予定、あるいは、次の次に抽出予定等の、抽出前の被圧延材1について、被圧延材1を加熱炉10から抽出する前の実績温度T_実と、目標とする抽出温度T_目とを、下式(1)のごとく比較し、抽出温度差ΔT_Fを計算する。
【0066】
ΔT_F = T_実 − T_目 ・・・(1)
【0067】
ここで、目標とする抽出温度T_目は、被圧延材1が目標とする抽出温度で加熱炉10から抽出された場合に、前述のようにして計算された各粗圧延機12の各パスでの、圧延後予定板厚、ロール間隙(圧下位置)、ロール周速等、それに、搬送線に従って圧延されたときに、その仕上入側温度が、概ね、目標とする仕上入側温度となるように定めておく。具体的には、抽出温度と、予め定めた粗圧延スケジュール(各粗圧延パスでの被圧延材の厚さとロール周速)と、を入力すると、公知の差分法やニュートン法等、被圧延材の圧延時の温度降下モデルや、圧延時や搬送時の自然空冷温度降下モデルを解くことによって、仕上入側温度を求められる関数を用意し、該関数に、目標とする仕上入側温度を決めたときに決まる抽出温度として求めることができる。
【0068】
また、ΔT_Fを算出するタイミングであるが、抽出温度差ΔT_Fを、できるだけ抽出時点に近いタイミングで求めたいので、スラブ状の被圧延材1が加熱炉10内の最も抽出側に設けられた均熱帯(スラブ状の被圧延材1内の温度むらを均すための区域)に到達し、もはやスラブ状の被圧延材1の温度がそれほど変化しなくなるようなタイミング、例えば、次の次に抽出されることになったタイミングにて計算するようにするのが好ましい。
【0069】
次に、プロセスコンピュータ70は、先に求めた抽出温度差ΔT_Fが0より大きい場合に、減速対象とする粗圧延パスを決め、その減速率α(0<α<1、1で減速しない)を計算する。正確には、実際にロール2で被圧延材1が圧延されているときの速度だけでなく、搬送されているときの速度も減速の対象とすることができる。
【0070】
ここで、減速率αは、抽出温度差ΔT_Fと、減速対象の粗圧延パスの速度設定 V_設 と、該粗圧延パスでの温度降下率Rから、次式(2)によって求めることができる。
【0071】
α = k1 k2 R / (k1 k2 R + V_設 ΔT_F) ・・・(2)
【0072】
なお、式(2)中のk1は、係数であり、圧延スケジュール(各粗圧延パスでの被圧延材の厚さとロール周速)とロール半径とから容易に導出することができる。また、k2は、係数であり、抽出温度の差が粗圧延機出側、あるいは仕上入側で、何度の差に相当するかを表す。このk2は、同一圧延スケジュールで抽出温度を変化させ、被圧延材の圧延時の温度降下モデルや、圧延時や搬送時の自然空冷温度降下モデルを計算することで、抽出温度の変化に対する粗圧延機出側、あるいは仕上入側での被圧延材温度の変化の割合として求めることができる他、圧延スケジュールごとに層別し、実験的にテーブル値として求めること等もできる。
【0073】
また、減速対象とする粗圧延パス等を決める方法としては、例えば、各圧延パスについて上式(2)にて減速率αを求め、式(3)によって延長時間Δteを求め、Δteが最も小さくなるような圧延パスを減速の対象とすればよいが、これに限るものではない。
【0074】
Δte = (1−α)/ α × L / V_設 ・・・(3)
【0075】
式(3)において、Lは、各圧延パス後の被圧延材の材長である。
【0076】
更に、プロセスコンピュータ70は、減速率αに基づき、搬送線の再計算を行なう。この結果から、被圧延材1の加熱炉10からの、目標とする抽出時刻を再計算する。
【0077】
さて、ここで、話は、実際に被圧延材1が加熱炉10から抽出された後のことに変わるが、速度を減速させることに決めた被圧延材に対し、該減速をさせるよりも上流側の主要な設備の入側、あるいは、それら各主要な設備そのものに該被圧延材が到達した実績時刻が、加熱炉10から抽出する前に予測した、到達予定時刻に比べ、遅くなった場合、該被圧延材の粗圧延の一部の速度の減速分を低減するようにすれば、その分だけ、余分な減速分を削減でき、無用な圧延能率の低下を回避することができる。
【0078】
その具体的な例を、以下に示す。プロセスコンピュータ70によって減速させることに決めた被圧延材1が、加熱炉10より抽出される。その後、被圧延材1が減速対象の粗圧延機の入側に設置された、図示しない検知装置に到達したら、プロセスコンピュータ70に被圧延材1の到達を信号として伝達する。ここで、プロセスコンピュータ70は、被圧延材1の加熱炉10からの抽出時に計算した、同検知装置への到達予定時刻と、実績の到着時刻とを比較し、その差Δtを計算する。プロセスコンピュータ70は、実績の方が遅れている場合、即ち、Δt>0の場合には、抽出前に計算により求めた減速率αの補正率α’(1 < α’ < 1/α)を、次式(4)にて計算する。
【0079】
α’ = min(1, k3Δt / (α k2ΔT_F) ) ・・・(4)
【0080】
そして、プロセスコンピュータ70は、減速対象とした粗圧延パスの速度V_設補を、次式(5)により求め、これによって速度制御を行なう。
【0081】
V_設補 = V_設 × α × α’ ・・・(5)
【0082】
以上説明したように、被圧延材を加熱炉から抽出する前の実績温度と、目標とする抽出温度とを比較し、該被圧延材を加熱炉10から抽出する前の実績温度の方が高い場合に、該被圧延材の粗圧延の一部の速度を減速するようにし、あるいは更に、抽出後の被圧延材が減速対象の粗圧延パス等を開始する時刻が、加熱炉10から抽出する前に時点での予測した、到達予定時刻に比べ、遅くなった場合、その減速分を低減することによって、粗圧延中の被圧延材の搬送が、ミルペーシング制御にて予定していた時刻に対し、早まったり、遅れたり撹乱されるのを極力回避しつつ行えるようにできるとともに、後続の各被圧延材温度許容範囲外れや、それに伴う品質不良の発生を抑制できる、良好な被圧延材の温度制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
なお、以上の実施例では、粗圧延機が3台である場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、粗圧延機の台数が何台であっても適用可能である。また、バッチ圧延の場合のみならず、図6に示した熱間エンドレス圧延ライン200のような熱間圧延ラインにて行う、連続熱間圧延(エンドレス圧延)にも適用可能である。図6において、11はコイルボックス、101はメジャーリングロール、141は接合用クロップシャー、151は接合装置、17はシートバーヒータ、171はエッジヒータ、102、103はその前後に設けられた温度計、26は高速通板装置、27は切断装置である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明を適用する熱間圧延ラインの一例を示す線図
【図2】従来技術の問題点について説明するための線図
【図3】従来技術について説明するための線図
【図4】本発明の基本的な手順を示す流れ図
【図5】本発明の実施の形態に係る被圧延材の温度の計算の仕方を説明するための線図
【図6】本発明を適用する別の熱間圧延ラインの一例を示す線図
【符号の説明】
【0085】
1、1A、1B…被圧延材
2…ロール
9…幅プレス
10…加熱炉
11…コイルボックス
101…メジャーリングロール
102、103…温度計
12、R1、R2、R3…粗圧延機
14…クロップシャー
141…クロップシャー(接合用)
15…仕上入側温度計
151…接合装置
16…デスケーリング装置
17…シートバーヒータ
171…エッジヒータ
18、F1、F2・・・F7…仕上圧延機
21…仕上出側温度計
23…ランナウトテーブル
24…コイラー
25…コイラー入側温度計
26…高速通板装置
27…切断装置
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年10月31日(2006.10.31)
【代理人】 【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭

【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑

【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博


【公開番号】 特開2008−114230(P2008−114230A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−296816(P2006−296816)