トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 金属板の伸び率計測方法及び装置
【発明者】 【氏名】空尾 謙嗣

【氏名】羽田野 裕朗

【氏名】藤平 幸一

【要約】 【課題】測長ロールの測定誤差に起因する伸び率測定誤差を可及的に小さく、時間応答性が高く伸び率を測定する技術を提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を被圧延材とする圧延加工機の入側及び出側それぞれに入側測長ロール及び出側測長ロールを備えた、被圧延材の伸び率を求める伸び率計測装置において、
前記入側測長ロールに接続されて該ロールの回転角度を検出する入側パルス発生手段と、
前記出側測長ロールに接続されて該ロールの回転角度を検出する出側パルス発生手段と、
前記入側パルス発生手段からの出力信号を基に入側測長ロールの回転速度を演算する入側ロール回転速度演算手段と、
前記出側パルス発生手段からの出力信号を基に出側測長ロールの回転速度を演算する出側ロール回転速度演算手段と、
前記入側および出側測長ロール回転速度演算手段から出力される回転速度信号を用いて瞬時的な伸び率を演算する瞬時伸び率演算手段と、
前記入側および出側パルス発生手段からのパルス出力を用いて圧延加工機への一定の送り込み長さ毎の伸び率を定長伸び率測定値として演算する定長伸び率演算手段と、
定長伸び率が演算された際の瞬時伸び率をロックオンし、その値からの瞬時伸び率の変化を定長伸び率演算周期間の伸び率変動値として演算する伸び率変化値演算手段と、
該伸び率変動値を前記定長伸び率測定値に加える補整演算手段と、を有することを特徴とする金属板の伸び率計測装置。
【請求項2】
金属板を被圧延材とする圧延加工機の入側及び出側それぞれに備えた入側測長ロール及び出側測長ロールを用いて、被圧延材の伸び率を求める伸び率計測方法において、
前記入側測長ロールの回転角度を検出する入側パルス発生工程と、
前記出側測長ロールの回転角度を検出する出側パルス発生工程と、
前記入側パルス発生工程の出力信号を基に入側測長ロールの回転速度を演算する入側ロール回転速度演算工程と、
前記出側パルス発生工程の出力信号を基に出側測長ロールの回転速度を演算する出側ロール回転速度演算工程と、
前記入側および出側ロール測長回転速度演算工程で出力される回転速度信号を用いて瞬時的な伸び率を演算する瞬時伸び率演算工程と、
前記入側および出側パルス発生工程のパルス出力を用いて圧延加工機への一定の送り込み長さ毎の伸び率を定長伸び率測定値として演算する定長伸び率演算工程と、
定長伸び率が演算された際の瞬時伸び率をロックオンし、その値からの瞬時伸び率の変化を定長伸び率演算周期間の伸び率変動値として演算する伸び率変化値演算工程と、
該伸び率変動値を前記定長伸び率測定値に加える補整演算工程と、を有することを特徴とする金属板の伸び率計測方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を被圧延材とする圧延機やテンションレベラー等の圧延加工機の入側および出側の測長ロールによって、金属板の伸び率を測定する場合における伸び率演算方法及び装置に関し、特に時間応答性が高く、高精度な伸び率計測方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、金属加工の一つである、鋼板を圧延する際に、圧延機前後での鋼板の伸び率を計測方法としては、圧延機やテンションレベラー等の鋼板圧延加工機の入側及び出側に、鋼板と密着して回転する入側測長ロールおよび出側測長ロールを設置し、各測長ロールに接続されたパルス発生器から一定の回転角度ごとに出力されるパルス信号を用いて測定されることが多い。すなわち、入側において鋼板が入側測長ロールから一定距離送り出される毎に、その送出期間中に出側測長ロールを通過する鋼板長さを検出し、それら値に基づいて次式にて伸び率εを算出している。

ε=(l−l)/l×100 [%] ・・・ (1)

ここで、εは鋼板の伸び率、lは上記入側測長ロールに取付けられたパルス発生器により、あらかじめ設定された距離分入側鋼板が走行したことを検出した際の長さ計測値、lはlを測定した際に出側測長ロールに取付けられたパルス発生器により測定された出側鋼板の走行距離である。
また、(1)式を用いる方法においては、誤差として1パルス分に対応する誤差を避けることができないため、lを大きくすることで伸び率測定誤差を小さくする必要がある。しかしながら、それに伴って計測に必要な送り出し距離が長く、即ち伸び率計測周期が長くなり、測定系の時間応答性が悪くなるという問題点があった。
【0003】
このような問題を解決する従来の方法としては、下記特許文献1に開示されていように、圧延速度に応じて伸び率測定周期が長くなる通板速度が低い際に、上記のような定距離カウント方式から、定時間カウント方式に切り替える技術が知られている。しかしながら、この定時間カウント方式は通板速度が低い場合、定時間にカウントされるパルス数が減少するので、1パルスあたりの測定誤差の重みが増加してしまうため、測定誤差が大きくなる可能性が高いという問題があった。
また、 下記特許文献2、特許文献3および特許文献4に開示されているように、伸び率制御における伸び率偏差や、実績伸び率、ライン速度等の状況に応じて伸び率測定距離を短くする技術が知られているが、これら方法では、特許文献1の技術と同様、伸び率測定距離を短くした場合に測定誤差が大きくなる可能性が高いという問題があった。
【特許文献1】特開昭60−148612号公報
【特許文献2】特開平7−16634号公報
【特許文献3】特開平6−11339号公報
【特許文献4】特開昭60−180615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような従来技術の問題点に鑑みて、本発明は、圧延機やテンションレベラー等の圧延加工機の入側および出側の測長ロールによって圧延金属板の伸び率を測定する場合における伸び率計測方法及び装置において、測長ロールの測定誤差に起因する伸び率測定誤差を可及的に小さく、時間応答性が高く伸び率を測定する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の金属板の伸び率計測装置は、金属板を被圧延材とする圧延加工機の入側及び出側それぞれに入側測長ロール及び出側測長ロールを備えた、被圧延材の伸び率を求める伸び率計測装置において、前記入側測長ロールに接続されて該ロールの回転角度を検出する入側パルス発生手段と、前記出側測長ロールに接続されて該ロールの回転角度を検出する出側パルス発生手段と、前記入側パルス発生手段からの出力信号を基に入側測長ロールの回転速度を演算する入側ロール回転速度演算手段と、前記出側パルス発生手段からの出力信号を基に出側測長ロールの回転速度を演算する出側ロール回転速度演算手段と前記入側および出側測長ロール回転速度演算手段から出力される回転速度信号を用いて瞬時的な伸び率を演算する瞬時伸び率演算手段と、前記入側および出側パルス発生手段からのパルス出力を用いて圧延加工機への一定の送り込み長さ毎の伸び率を定長伸び率測定値として演算する定長伸び率演算手段と、定長伸び率が演算された際の瞬時伸び率をロックオンし、その値からの瞬時伸び率の変化を定長伸び率演算周期間の伸び率変動値として演算する伸び率変化値演算手段と、該伸び率変動値を前記定長伸び率測定値に加える補整演算手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の金属板の伸び率計測方法は、金属板を被圧延材とする圧延加工機の、入側及び出側それぞれに備えた回転自在の入側測長ロール及び出側測長ロールを用いて、被圧延材の伸び率を求める伸び率計測方法において、前記入側測長ロールの回転角度を検出する入側パルス発生工程と、前記出側測長ロールの回転角度を検出する出側パルス発生工程と、
前記入側パルス発生工程の出力信号を基に入側ロールの回転速度を演算する入側ロール回転速度演算工程と、前記出側パルス発生工程の出力信号を基に出側ロールの回転速度を演算する出側ロール回転速度演算工程と、前記入側および出側ロール回転速度演算工程で出力される回転速度信号を用いて瞬時的な伸び率を演算する瞬時伸び率演算工程と、
前記入側および出側パルス発生工程のパルス出力を用いて圧延加工機への一定の送り込み長さ毎の伸び率を定長伸び率測定値として演算する定長伸び率演算工程と、定長伸び率が演算された際の瞬時伸び率をロックオンし、その値からの瞬時伸び率の変化を定長伸び率演算周期間の伸び率変動値として演算する伸び率変化値演算工程と、該伸び率変動値を前記定長伸び率測定値に加える補整演算工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の伸び率計測装置によれば、瞬時伸び率に含まれる測定誤差を、定長伸び率演算毎にキャンセルできることから、測定精度と応答性を両立した伸び率を演算することができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の金属板の伸び率計測方法および装置の原理を鋼板の圧延機を圧延加工機の例として、図1を用いて説明する。鋼板1(被圧延材)は圧延機2にて所定の伸び率となるように圧延される場合を例に説明する。圧延機の入側測長ロール3と出側測長ロール4にはそれぞれのロールの回転角度を検出するパルス発生装置が設けられている。入側パルス発生器5は、入側測長ロールが回転することにより設定された回転角度ごとに入側パルスを発生して、定長伸び率演算手段9および、入側測長ロール回転速度演算手段7に入力する。また、出側パルス発生器6は、出側測長ロールが回転することにより設定された回転角度ごとに出側パルスを発生して、定長伸び率演算手段9および、出側測長ロール回転速度演算手段8に入力する。入側測長ロール回転速度演算手段7は、上記の入側パルス発生器5からのパルスを基に、予め設定した短時間の演算周期、例えばコンピュータプログラムにて当該処理を実施する場合は、プログラムの実行周期にて入側測長ロールの回転速度を演算して出力し、また出側測長ロール回転速度演算手段8は、上記の出側パルス発生器6からのパルスを基に、入側測長ロール回転速度の演算周期と同周期にて出側測長ロールの回転速度を演算して出力する。
【0009】
定長伸び率演算手段9は、(1)式に示した従来の伸び率演算方法と同様、入側鋼板が入側測長ロールから一定距離送り出される毎に、同一期間中に出側測長ロールを通過する板長さを検出し、それら値に基づいて次式にて伸び率を算出する。
【0010】

ε=(l−l)/l×100 [%] ・・・ (2)

ここで、εは鋼板の伸び率、lは、上記入側パルス発生器5により、あらかじめ設定された距離分入側鋼板が走行したことを検出した際の長さ計測値であり、lはlを測定した際に、出側パルス発生器6により測定された出側鋼板の走行距離である。
【0011】
瞬時伸び率演算手段10は、入側測長ロール回転速度演算手段7により出力される入側測長ロール回転速度Vと、出側測長ロール回転速度演算手段8により出力される出側測長ロール回転速度Vを用いて、これら回転速度演算周期と同様の短期間の演算周期、例えばコンピュータプログラムにて当該処理を実施する場合は、プログラムの実行周期にて(3)式にて瞬時伸び率εを演算する。
【0012】

ε=(V-V)/V×100 [%] ・・・ (3)

伸び率変化値演算手段11は、定長伸び率演算手段9にて伸び率εが演算される毎に瞬時伸び率εをεlock-onとしてロックオンし、(4)式にて瞬時伸び率の変化量Δεを演算して出力する。ここで、定長伸び率演算手段9にて伸び率εが演算される周期、すなわち、εlock-onが更新される周期は、瞬時伸び率εが演算される周期と比較して非常に長く、従って、(4)式のΔεは、定長伸び率εLが更新されない期間中の伸び率の変化を表すことになる。
【0013】

Δε− εlock-on ・・・ (4)

最終的な伸び率εは、定長周期にて演算されたεと短時間一定周期にて演算されたΔεを用いて、(5)式にて演算される。
【0014】

ε=ε + Δε ・・・ (5)

このように、定長伸び率εが演算されたタイミングで瞬時伸び率εをロックオン処理し、その値との差分を演算することで、定長伸び率εが演算されるタイミング毎に測定誤差がキャンセルされるため、瞬時伸び率測定値における、測定誤差が大きくなるという問題点を解決でき、また、この差分を定長伸び率εに補正値として加えることで、特にライン速度が遅い場合などに伸び率の演算周期が長くなり応答性が悪くなるという、定長伸び率の問題点が解決できるため、測定精度と応答性を両立した伸び率を演算することができる。
【0015】
上記の入側測長ロール回転速度演算手段7、出側測長ロール回転速度演算手段8、定長伸び率演算手段9、瞬時伸び率演算手段10、及び伸び率変化値演算手段11は、パーソナルコンピュータやシーケンサを用いて、これらの各手段での演算をコンピュータプログラムで実行させることによって構成することができる。これらのパーソナルコンピュータやシーケンサに上記の演算周期と比べて十分高速動作するA/D変換器を具備し、上記の入側パルス発生器5や出側パルス発生器6のカウントを取り込んで各演算処理を実行させる。また、時々刻々算出される最終的な伸び率εや中間演算結果を圧延機の制御系へフィードバックさせても良く、また、コンピュータディスプレー上に時間的推移をグラフ化して表示させてもよい。
【0016】
図3には、本発明の金属板の伸び率計測方法の実施の形態の概略フローを示す。
まず、S101にて入側測長ロール及び出側測長ロールの回転速度を演算し、次にS102にて当該回転速度を用いて、前述の(3)式より瞬時伸び率εを演算する。ここで、当該処理タイミングが定長伸び率εLの演算タイミングであるか否かをS103にて判定し、定長伸び率の演算タイミングである場合、S105にて上記瞬時伸び率εをεock-onとしてロックオンしたうえで、S106にて瞬時伸び率の変化量Δεを演算し、S107にて上記(5)式より最終的な伸び率εを演算する。また、S103における判定が、定長伸び率εLの演算タイミングでない場合は、前回ロックオンされたεlock-onを用いてS106にて瞬時伸び率の変化量Δεを演算する。
本フローにて示す工程は、本発明による伸び率計測を一回実行する際の手順である。実際の金属板の圧延の際には、伸び率演算開始から終了まで、コンピュータプログラムの実行周期毎に一回実行させる。
図2に、本発明の方法と、定距離カウント方式のみを用いた従来の方法について、実際に鋼板を圧延した際における伸び率演算結果の比較の一例を示す。本実施例においては、調質圧延ラインにて帯状薄板鋼板を圧延する際に、ライン速度および圧延機の入側・出側の張力を一定に保ちつつ、圧延荷重を徐々に増加させた。図2の細線は本発明を用いた場合であり、各ロールの回転速度および瞬時伸び率の演算周期は約40ms、定長伸び率の定長距離は、1000mmである。また、図2の太線は定距離カウント方式のみを用いた従来手法による伸び率演算値であり、伸び率演算における定長距離は、同じく1000mmとした。図2より、従来手法では定長距離毎にしか伸び率が演算されないため、測定値の更新周期が長く、応答性が悪いが、本手法を用いることで、ある程度の精度を確保しながら、より短周期で伸び率を得ることが可能となることが判明し、本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の金属板の伸び率計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の金属板の伸び率演算手法と、定距離カウント方式のみを用いた従来の手法での伸び率演算結果を比較した一例を示すグラフである。
【図3】本発明の属板の伸び率計測方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 鋼板(被圧延材)
2 圧延機
3 入側測長ロール
4 出側測長ロール
5 入側パルス発生器
6 出側パルス発生器
7 入側測長ロール回転速度演算手段
8 出側測長ロール回転速度演算手段
9 定長伸び率演算手段
10 瞬時伸び率演算手段
11 伸び率変化値演算手段
ε 鋼板の伸び率
ε 瞬時伸び率
ε 伸び率演算値
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年10月31日(2006.10.31)
【代理人】 【識別番号】100097995
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悦一

【識別番号】100074790
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊


【公開番号】 特開2008−110377(P2008−110377A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−295102(P2006−295102)