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【発明の名称】 条鋼製造方法
【発明者】 【氏名】西村 信己

【氏名】桑名 隆

【氏名】尾内 浩明

【氏名】中崎 盛彦

【要約】 【課題】ミスロールがなく、異種材料の混入がなく、生産性及び材料歩留まりに優れた条鋼製造方法の提供。

【解決手段】ビレット6は、主部8と先進部10とを備えている。先進部10は、主部8の前側に位置している。先進部10は、先細り形状を呈している。このビレット6に、粗列圧延を含む多段の圧延が施される。この粗列圧延において先進部10は、フィッシュテールの抑制に寄与する。ビレット6の先端径Bの、粗列圧延後の仕上がり径Cに対する比(B/C)は、0.70以上0.90以下である。ビレット6の先進部の長さLは、下記数式(1)によって得られるYの値以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主部とこの主部の前側に位置しており先細り形状である先進部とを備えたビレットが得られる準備工程と、
このビレットに粗列圧延を含む多段の圧延が施され、母材が得られる圧延工程と
を含む条鋼製造方法。
【請求項2】
上記準備工程で得られるビレットの先端径Bの、粗列圧延後の仕上がり径Cに対する比(B/C)が、0.70以上0.90以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記準備工程で得られるビレットの先進部の長さLが、下記数式(1)によって得られるYの値以上である請求項1又は2に記載の製造方法。
Y=(A/C)×25 (1)
(この数式において、Aは準備工程で得られるビレットの主部の径を表し、Cは粗列圧延後の仕上がり径を表す。)
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、丸棒鋼等の条鋼の製造方法に関する。詳細には、本発明は、圧延に供されるビレットの形状の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
丸棒鋼の製造方法として、圧延による方法が広く知られている。この製造方法では、まず精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、ビレットが得られる。このビレットは、加熱炉によって加熱される。次に、このビレットに熱間圧延が施される。通常は、タンデムに並べられた粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による多段圧延が施される。この熱間圧延によってビレットは徐々に細径化し且つ長尺化して、丸棒鋼が得られる。
【0003】
鋼種が快削ステンレス鋼、工具鋼等の難圧延材であるビレットに圧延が施されると、圧延工程の途中でビレットの進行方向先端近傍に裂け目が生じることがある。この現象は、「フィッシュテール」と称されている。フィッシュテールが生じるとこの部分が外向きにはらみ出し、次段の圧延機の入口でビレットが詰まってしまうことがある。この現象は、「ミスロール」と称されている。ミスロールは、圧延の中断を引き起こし、生産効率の低下や材料歩留まりの悪化を招来する。ミスロールは、特に粗列圧延機において生じやすい。
【0004】
この問題を解決する目的で、ビレットにダミー部が接合されることがある。図8に示されるように、ダミー部2はビレット4の先端に接合される。接合は、通常は溶接によって行われる。ダミー部2の直径は、ビレット4の直径とほぼ同一である。ダミー部2には、裂け目が生じにくい材質(すなわち、ビレット4とは異なる材質)が選択される。圧延工程では、ダミー部2と一体とされてビレット4が圧延機に送られる。裂け目が生じにくいダミー部2の存在により、フィッシュテールが抑制され、ミスロールが防止される。ダミー部2を用いた圧延方法が、特開2002−178002公報に開示されている。
【特許文献1】特開2002−178002公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダミー部2の材質は棒鋼の本来の材質(すなわちビレット4の材質)とは異なるので、ダミー部2の材質が最終製品である棒鋼に混入することは、棒鋼の品質の観点から避けられなければならない。圧延後の母材からは、その先端近傍が切断され、除去される。この除去により、混入が防止される。この除去には、手間とコストとがかかる。
【0006】
ダミー部2とビレット4との境界近傍では、溶接時の拡散等に起因して、両者の材質が混在している。しかも、この混在領域は、圧延によって長さ方向に引き伸ばされている。さらに、両材質の混在は条鋼母材の内部にまで渡っている。切断すべき位置の正確な判定は、目視では困難である。
【0007】
混入が確実に防止されるには、圧延前のダミー部2の長さから圧延後のダミー部の長さが推測され、これに十分な安全率が勘案された寸法が加算されて、切断位置が決定される必要がある。しかしながら、あまりに高い安全率が採用されると、健全領域(母材のうち本来除去される必要がない領域)まで多量に除去されてしまう。高い安全率は、材料歩留まりの観点からは不利である。同様の問題は、棒鋼のみならず、線材や形鋼の製造方法においても見られる。
【0008】
本発明の目的は、ミスロールがなく、異種材料の混入がなく、生産性及び材料歩留まりに優れた条鋼製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る条鋼製造方法は、
(1) 主部とこの主部の前側に位置しており先細り形状である先進部とを備えたビレットが得られる準備工程
及び
(2)このビレットに粗列圧延を含む多段の圧延が施され、母材が得られる圧延工程
を含む。
【0010】
好ましくは、準備工程で得られるビレットの先端径Bの、粗列圧延後の仕上がり径Cに対する比(B/C)は、0.70以上0.90以下である。
【0011】
好ましくは、準備工程で得られるビレットの先進部の長さLは、下記数式(1)によって得られるYの値以上である。
Y=(A/C)×25 (1)
この数式において、Aは準備工程で得られるビレットの主部の径を表し、Cは粗列圧延後の仕上がり径を表す。
【発明の効果】
【0012】
この条鋼製造方法では、フィッシュテールが発生しないか、発生する場合でもその程度は小さい。この製造方法では、ミスロールが防止される。この製造方法では、ビレットにダミー部が接合される必要がないので、異種材料の混入は生じない。圧延後のダミー部の除去の必要がないので、この製造方法は生産性及び歩留まりに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1(a)は本発明の一実施形態に係る条鋼製造方法に用いられるビレット6が示された斜視図であり、図1(b)はその一部が示された拡大断面図である。この図1において右方向が、圧延時のビレット6の進行方向である。このビレット6の材質は、鋼である。
【0015】
このビレット6は、主部8と先進部10とを備えている。先進部10は、主部8の前側に位置している。主部8は、円柱状である。先進部10は、円錐台状である。先進部10は、先細り形状を呈している。先進部10の底面の直径は、主部8の底面の直径と同一である。主部8と先進部10とは、一体である。先進部10は、ビレット6の先端が切削されることで形成されている。切削には、旋盤、フライス盤等の工作機械が用いられる。切削以外の方法で先進部10が形成されてもよい。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係る条鋼製造方法に用いられる製造装置12の一部が示された概念図である。この図2において、左側が上流であり、右側が下流である。この製造装置12は、加熱炉14、粗列圧延機16及びフライングシャー18を備えている。図示されていないが、この製造設備は、フライングシャー18の下流に中間列圧延機、仕上列圧延機、冷却床、コールドシャー等を備えている。
【0017】
粗列圧延機16は、タンデムに並べられた第一スタンドS1、第二スタンドS2、第三スタンドS3、第四スタンドS4、第五スタンドS5、第六スタンドS6、第七スタンドS7及び第八スタンドS8を備えている。各スタンド(S1−S8)は、一対のロール20を供えている。このロール20は、カリバー22を供えている。第一スタンドS1、第三スタンドS3、第五スタンドS5及び第七スタンドS7では、ロール20の回転軸は水平に延在している。第一スタンドS1、第三スタンドS3、第五スタンドS5及び第七スタンドS7では、カリバー22の形状はオーバルである。第二スタンドS2、第四スタンドS4、第六スタンドS6及び第八スタンドS8では、ロール20の回転軸は鉛直方向に延在している。第二スタンドS2、第四スタンドS4、第六スタンドS6及び第八スタンドS8では、カリバー22の形状はラウンドである。
【0018】
図3は、図2の装置12が用いられた製造方法の一例が示されたフローチャートである。この条鋼製造方法では、まず、精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、ビレット6が形成される(STEP1)。ビレット6は、一般的には円柱状である。次に、ビレット6の先端が切削される。この切削により、図1に示される先進部10が形成される(STEP2)。このビレット6は、主部8と先進部10とからなる。
【0019】
次にビレット6は、装入機(図示されず)を通じて加熱炉14へと搬送される。加熱炉14は、ビレット6の熱間圧延に適した温度に設定されている。ビレット6は、加熱炉14の中で所定時間保持され、加熱される(STEP3)。
【0020】
次にビレット6は、粗列圧延機16へと搬送され、粗列圧延に供される(STEP4)。ビレット6はまず、第一スタンドS1のロール20のカリバー22に通される。これにより、鋼はロール20によって鉛直方向に圧下され、塑性変形を起こす。この鋼は、第二スタンドS2へと送られる。第二スタンドS2では、鋼は、水平方向に圧下され、塑性変形を起こす。以降同様に、第三スタンドS3から第八スタンドS8において、鉛直方向の圧下と水平方向の圧下とが繰り返される。これにより鋼は、段階的に細径化し、かつ段階的に長尺化する。
【0021】
次に、鋼はフライングシャー18を通される。このフライングシャー18により、鋼の先端近傍が切断され、除去される(STEP5)。
【0022】
次に鋼は、中間列圧延機に送られて中間列圧延に供される(STEP6)。さらに鋼は、仕上列圧延機に送られて仕上列圧に供される(STEP7)。中間列圧延及び仕上列圧延によっても、鋼は段階的に細径化し、かつ段階的に長尺化する。こうして、母材が得られる。
【0023】
次に母材は、冷却床に搬送される。冷却床には多数の開口が設けられており、この開口から吹き出す空気によって母材が所定温度(例えば200℃程度)まで冷却される(STEP8)。さらに母材は、コールドシャーへと送られ、このコールドシャーにて所定寸法に切断される(STEP9)。こうして、丸棒鋼が得られる。
【0024】
粗列圧延では、ビレット6の先端近傍において、外周面が中心よりも優先的に引き延ばされる。このことは、フィッシュテールが発生する原因の1つである。図1に示されたビレット6では、先進部10の中心が主部8の外周面よりも先行してロール20に送られる。従って、外周面が優先的に引き延ばされても、相殺によってフィッシュテールが生じにくい。先細り形状の先進部10は、ミスロールの防止に寄与する。
【0025】
図4は、図3の粗列圧延(STEP4)の様子が示された断面図である。この図4には、第一スタンドS1のロール20が、ビレット6と共に示されている。ビレット6は、図4における右方向に進行しつつ、圧延される。図4では、二点鎖線によって、従来のビレット(すなわち円柱状のビレット)が圧延された場合の鋼の様子も示されている。
【0026】
本発明者が得た知見によれば、従来のビレットの場合、ロール出口24よりも下流において鋼に圧下方向の引張応力が発生する。ビレットの直径がAとされたとき、ロール出口24よりも下流方向に0.4Aの地点から0.6Aの地点において、引張応力のピークが見られる。この引張応力により、ビレットの先端が裂けることがある。この引張応力は、フィッシュテールが発生する原因の1つである。図4に示されるように、先細りの先進部10を備えたビレット6では、ロール出口24の下流において、ビレット6とロール20とがほとんど接触しない。このビレット6が用いられることにより、引張応力が抑制され、フィッシュテールが防止される。先細り形状の先進部10は、ミスロールの防止に寄与する。図4には第一スタンドS1のロール20が示されているが、第二スタンドS2から第八スタンドS8においても引張応力が抑制されるように、先進部10の形状が決定されることが好ましい。
【0027】
図1において両矢印Bで示されているのは、ビレット6の先端径である。粗列圧延後の仕上がり径Cに対する先端径Bの比(B/C)は、0.70以上0.90以下が好ましい。この比(B/C)が0.90以下に設定されることにより、粗列圧延(STEP4)の全般にわたってフィッシュテールが抑制され、ミスロールが防止される。この観点から、比(B/C)は0.85以下がより好ましい。この比(B/C)が0.70以上に設定されることにより、粗列圧延中の鋼の温度低下が抑制される。温度低下の抑制は、鋼の裂けの抑制に寄与する。
【0028】
図1において、両矢印Lで示されているのは先進部10の長さであり、両矢印Aで示されているのは主部8の径である。長さLが下記数式(1)によって得られるYの値以上であることが好ましい。
Y=(A/C)×25 (1)
この数式(1)において、Cは粗列圧延後の仕上がり径を表す。長さLが上記範囲に設定されることにより、粗列圧延(STEP4)の全般にわたってフィッシュテールが抑制され、ミスロールが防止される。
【0029】
ミスロール防止の観点から、長さLが下記数式(2)によって得られるY’の値以上であることがより好ましい。
Y’=(A/C)×27 (2)
先進部10の形成が容易であるとの観点、及び先進部10の形成のために除去される鋼が抑制されて材料歩留まりが向上するとの観点から、長さLが下記数式(3)によって得られるY''の値以下であることが好ましい。
Y''=(A/C)×32 (3)
【0030】
この製造方法では、ダミー部2(図8参照)の接合は不要である。従って、ダミー部2の混入は生じず、しかも圧延後のダミー部2の除去作業を要しない。ダミー部2の除去に伴う健全部の廃棄も生じないので、この製造方法の材料歩留まりは高い。
【0031】
本発明に係る製造方法は、難圧延材からなる条鋼に適している。この製造方法は、快削ステンレス鋼、工具鋼等に特に適している。
【0032】
本発明に係る製造方法は、断面が非円形(例えば四角形)であるビレットにも適用されうる。断面が非円形なビレットの場合、その主部の断面積と同一面積を有する円が想定され、この円の直径が主部の径Aとされる。断面が非円形なビレットの場合、その先端の面積と同一面積を有する円が想定され、この円の直径が先端径Bとされる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0034】
[実施例1]
円柱状のビレットを用意し、先端を切削して先進部を形成した。このビレットの鋼種は、SKD11である。このビレットでは、主部の径Aは167mmであり、先端径Bは80mmであり、先進部の長さLは100mmである。このビレットを1050℃に加熱し、図2に示された粗列圧延機によって粗列圧延を施した。粗列圧延後の仕上がり径Cは、55mmであった。
【0035】
[実施例2から8及び比較例]
先進部の形状を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、粗列圧延を行った。なお、比較例のビレットは、先進部を備えていない。
【0036】
[外観観察]
粗列圧延後の鋼の外観を、目視により観察した。そして、先端の裂けの程度を、「1」から「5」の5段階に格付けした。裂けが最も激しいものを「1」とし、裂けが最も少ないものを「5」とした。この結果が、下記の表1に示されている。
【0037】
[シミュレーション]
ソフトウエア「DEFORM 3D」によるシミュレーションにより、第一スタンドから第八スタンドにおいて鋼に発生する引張応力を算出した。この結果が、図5から図7に示されている。また、引張応力の最大値が、下記の表1に示されている。
【0038】
【表1】


【0039】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて引張応力の最大値が小さい。また、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて、粗列圧延後の裂けが少ない。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る製造方法により、棒鋼のみならず、鋼線、形鋼等の種々の条鋼が製造されうる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態に係る条鋼製造方法に用いられるビレットが示された斜視図であり、図1(b)はその一部が示された拡大断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る条鋼製造方法に用いられる製造装置の一部が示された概念図である。
【図3】図3は、図2の装置が用いられた製造方法の一例が示されたフローチャートである。
【図4】図4は、図3の粗列圧延の様子が示された断面図である。
【図5】図5は、引張応力のシミュレーションの結果が示されたグラフである。
【図6】図6は、引張応力のシミュレーションの結果が示されたグラフである。
【図7】図7は、引張応力のシミュレーションの結果が示されたグラフである。
【図8】図8は、従来のビレットが示された斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
6・・・ビレット
8・・・主部
10・・・先進部
12・・・製造装置
14・・・加熱炉
16・・・粗列圧延機
18・・・フライングシャー
20・・・ロール
22・・・カリバー
24・・・ロール出口
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【出願日】 平成18年10月30日(2006.10.30)
【代理人】 【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾

【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎


【公開番号】 特開2008−110362(P2008−110362A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−293983(P2006−293983)