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【発明の名称】 熱延鋼帯の冷却方法
【発明者】 【氏名】上岡 悟史

【氏名】黒木 高志

【氏名】西浦 伸夫

【要約】 【課題】少ない設備・処理コストで実施可能あり、冷却後の鋼帯の温度ムラが少なく、特に500℃以下の温度域での冷却終了温度を高精度に制御することが可能な熱延鋼帯の冷却方法を提供する。

【解決手段】熱間圧延後の熱延鋼帯を冷却水と接触させて冷却する方法において、第一の冷却工程とこれに続く第二の冷却工程とを有し、前記第一の冷却工程では、遷移沸騰開始温度よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、核沸騰となる水量密度の冷却水により冷却する。遷移沸騰温度領域の通過を回避できるため、遷移沸騰による冷却不安定を確実に回避でき、冷却後の鋼帯の温度ムラが少なく且つ冷却終了温度を高精度に制御することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延後の熱延鋼帯を冷却水と接触させて冷却する方法において、
第一の冷却工程とこれに続く第二の冷却工程とを有し、
前記第一の冷却工程では、遷移沸騰開始温度よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、核沸騰となる水量密度の冷却水により冷却することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項2】
第一の冷却工程では、350〜1200L/min.mの水量密度の冷却水により冷却するとともに、500℃よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、少なくとも鋼帯上面に対して2000L/min.m以上の水量密度の冷却水を注水し、500℃以下の鋼帯温度まで冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項3】
第一の冷却工程の前段では、1200L/min.mを超える水量密度の冷却水により冷却し、続く同工程の後段では、350〜1200L/min.mの水量密度の冷却水により冷却するとともに、500℃よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、少なくとも鋼帯上面に対して2000L/min.m以上の水量密度の冷却水を注水し、500℃以下の鋼帯温度まで冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項4】
第一の冷却工程では、550〜600℃の鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、少なくとも鋼帯上面に対して2500L/min.m以上の水量密度の冷却水を注水することを特徴とする請求項2又は3に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項5】
第二の冷却工程において、少なくとも鋼帯上面をラミナー冷却又はジェット冷却で冷却するとともに、該ラミナー冷却又はジェット冷却における冷却水供給ノズルからの冷却水の噴射速度を7m/秒以上とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項6】
第二の冷却工程において、鋼帯上面に注水された冷却水を水切り手段により鋼帯両側の外方に排出させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項7】
水切り手段が、鋼帯上面の幅方向に配置されるロールであることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項8】
水切り手段が、鋼帯上面の冷却水に吹き付けられる高圧流体であることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項9】
2つの冷却水供給ノズル又は2つの冷却水供給ノズル群から噴射された冷却水が、鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で斜め上方から鋼帯上面に各々衝突した後、両冷却水流が鋼帯面上で衝突するように、冷却水供給ノズルから鋼帯上面に注水を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延後の熱延鋼帯を冷却水と接触させて冷却する方法、特に、500℃以下まで冷却する際の冷却終了温度を高精度に制御することが可能な熱延鋼帯の冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱延鋼帯を製造するための熱間圧延工程では、高温加熱したスラブを目的とするサイズ、材質となるように圧延した後、ランナウトテーブル上で水冷却する。ここで行う水冷却の目的は、主に鋼帯の析出物や変態組織を制御することにより、目的とする強度、延性などの材質を調整することにある。特に、冷却終了温度を精度よく制御することは、目的とする材質をバラツキを生じることなく確保する上で非常に重要である。
熱間圧延後の冷却工程では、冷却媒体としてコストが安い水を使うことが多いが、このような水冷却では、冷却終了温度が低くなると温度ムラが発生したり、狙いどおりの温度に精度よく停止できなくなるなどの問題がある。このような問題を生じる主たる原因は、以下のような点にある。
【0003】
まず、第一の原因として、水の沸騰形態が挙げられる。すなわち、冷却水は鋼帯に被水した時点で沸騰するが、ある温度を境に沸騰形態が変わって伝熱能力の変化がおこり、この温度よりも低い温度まで冷却した場合、冷却終了温度を精度よく制御できないことがある。
ここで、鋼帯を水冷却した場合の沸騰形態について説明すると、被水する鋼帯の表面温度が高温域の場合には膜沸騰、低温域の場合には核沸騰、高温域と低温域の間の中間温度域の場合には遷移沸騰となる。高温域で生じる膜沸騰では、鋼帯表面と冷却水との間に蒸気膜が発生し、この蒸気膜内の熱伝導により伝熱がなされるため、冷却能力は低い。一方、低温域で生じる核沸騰では、鋼帯表面と冷却水は直接接触し、且つ鋼帯表面から冷却水の一部が蒸発してできた蒸気泡が発生し、直ぐに周りの冷却水によって凝縮されて消滅するといった複雑な現象が起こり、蒸気泡の生成・消滅に伴う冷却水の撹拌が発生することから、極めて高い冷却能力を有する。また、中間温度域では膜沸騰と核沸騰が混在した状態である遷移沸騰状態となる。この遷移沸騰では、核沸騰や膜沸騰とは異なり、鋼帯温度が低くなるにつれ熱流束が大きくなる現象が起こる。材質制御の観点からは温度によって冷却速度が変化することは好ましくなく、且つ膜沸騰状態から遷移沸騰状態に遷移する温度域で冷却を終了(停止)させようとすると、遷移沸騰領域では加速度的に冷却速度が高くなることから、わずかに冷却制御時間が長くなっただけで鋼帯温度は狙いより大幅に低くなってしまう問題がある。
【0004】
また、冷却前の鋼帯に熱間圧延などの影響で局所的に温度の低い領域があった場合、冷却の際に、この温度の低い領域が早いタイミングで遷移沸騰に移行するため、温度偏差は増大する。一般的なランナウトテーブルで行われる冷却工程では、そのような遷移沸騰開始温度はおおよそ500℃程度である。
次に、第二の原因として、鋼帯上に冷却水が滞留することが挙げられる。すなわち、通常のランナウトテーブルにおいて鋼帯上面側を冷却する場合、円管ノズルやスリットノズルを用いたラミナー冷却が行われるが、鋼帯上面に衝突した冷却水は、鋼帯上に乗ったまま鋼帯進行方向に流出していく。通常、鋼帯上面の冷却水は水切りパージなどで排除されるが、従来の水切りパージは冷却水を鋼帯に注水した地点から離れたところで実施するため、そこまで到達する間に、鋼帯面上に冷却水が滞留している部分だけが過冷却されてしまう。特に、500℃以下の低温域の場合、この滞留水が膜沸騰状態から遷移沸騰状態に変化するため冷却能力が高くなり、滞留水がある部位とない部位とで大きな温度偏差が生じる。
以上の理由から、遷移沸騰開始温度である500℃以下で熱延鋼帯の冷却を終了させようとすると、コイル内の温度のバラツキが大きくなる。
【0005】
このため従来から、上記のような現象に対応するために様々な検討がなされてきた。
例えば、特許文献1には、冷却水が膜沸騰となる高温域では熱延鋼帯の上下両面に冷却水を注水し、遷移沸騰温度領域では鋼帯下面のみに冷却水を注水する方法が開示されている。この冷却方法は、遷移沸騰温度域を下面冷却することによって、鋼帯上面に形成される水膜とそれに伴う冷却能の不安定性を排除し、安定冷却を実現しようとするものである。
特許文献2には、まず低温の冷却水で冷却しておき、遷移沸騰温度域からは80℃以上の高温の冷却水で冷却する方法が開示されている。この冷却方法は、冷却水として温水を使用することによって遷移沸騰開始温度を低温側にずらし、これにより膜沸騰持続時間を長くして安定冷却を実現しようとするものである。
【0006】
特許文献3には、冷却装置として水冷却装置とガス冷却装置を併設し、高温域では水冷却装置を用いた水冷却を行い、遷移沸騰開始温度以下の温度領域ではガス冷却装置を用いたガス冷却を行う方法が開示されている。この冷却方法は、低温域で沸騰現象がなく安定した冷却が可能なガス冷却を使用することにより、低温域での温度安定性を実現しようとするものである。
特許文献4には、ランナウトテーブル前半では80〜100℃の温水で400℃程度まで冷却し、しかる後、ランナウトテーブル前半の冷却水温よりも低い水温の冷却水で冷却する方法が開示されている。この冷却方法は、ランナウトテーブル前半の冷却水を温水とすることで遷移沸騰開始温度を低温側にずらし、且つ低温側を核沸騰で冷却ができる水温の冷却水で冷却することにより、
低温域での温度安定性を実現しようとするものである。
【0007】
特許文献5には、熱間仕上圧延後の鋼帯を連続的に注水冷却する冷却ゾーンを前半ゾーンと後半ゾーンとに区分し、前半ゾーンに高冷却能力(水量密度:1.0〜5.0m/m・min)の冷却設備を配設するとともに、後半ゾーンに低冷却能力(水量密度:0.05m/m・min〜0.3m/m・min未満)の冷却設備を配設し、さらに、冷却ゾーンの全長にわたって中冷却能力(水量密度:0.3m/m・min〜1.0m/m・min未満)の冷却設備を配設した冷却設備が開示されている。このような冷却設備による熱延鋼帯の冷却では、低温度域で冷却水量を少なくして遷移沸騰開始温度を低温側にずらすことにより、膜沸騰持続時間を長くして安定冷却を実現しようとするものである。
【0008】
【特許文献1】特公平6−248号公報
【特許文献2】特開平6−71339号公報
【特許文献3】特開2000−313920号公報
【特許文献4】特開昭58−71339号公報
【特許文献5】特開2003−25009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の従来技術には以下のような実用上の問題がある。
特許文献1の方法では、鋼帯上面の滞留水による温度ムラなどは低減できるものの、鋼帯下面に冷却水を注水しただけでは、冷却不安定が発生する遷移沸騰温度領域を通過することが避けられないため、それに伴って冷却終了温度の精度低下は避けられない。
特許文献2の方法では、温水を使用することにより遷移沸騰開始温度を低温側にずらす効果は得られるものの、その効果には限界があり、さらなる低い冷却終了温度に制御しようとすると、冷却不安定が発生する遷移沸騰温度領域を通過することが避けられないため、それに伴って冷却終了温度の精度低下は避けられない。また、鋼帯上の滞留水の影響については考慮しておらず、温度偏差の発生が避けられない。
特許文献3の方法は、ガス冷却を実施することから、沸騰現象がないため冷却不安定が発生せず、このため冷却終了温度の精度向上は可能である。しかし、ガス冷却は、水冷却に較べて冷却能力のオーダーが一桁から二桁小さいため、冷却速度が極めて遅くなり、このため所望の材質が得られないという問題がある。また、ガス冷却は冷却速度が低いために、熱延鋼帯のランナウト冷却では非常に長大な冷却設備が必要となり、その実現は極めて難しい。
【0010】
特許文献4の方法は、冷却前半(ランナウトテーブル前半)の冷却水の水温を80℃以上と高めに設定するとともに、冷却後半は冷却水温を低くするものであり、これは、冷却前半は膜沸騰で冷却し、冷却後半は核沸騰で冷却するということである。この方法は、冷却が不安定となる遷移沸騰を回避する方法として非常に有効である。しかし一方において、冷却前半では非常に大量の温水が必要となる。すなわち、一般にランナウトテーブルで用いる単位面積当たりの冷却水量は0.7〜1.2m/min.m程度の場合が多く、鋼帯に噴射する水量は100m/min程度と非常に量が多い。このため特許文献4の方法では、大量の水を加熱して温水化するための極めて大規模な設備が必要になる上に、加熱のためのエネルギーも莫大なものとなるため、現実的な方法とは言い難い。また、低温側で核沸騰にするため冷却水温を低くするとあるが、水温の調整だけで安定した核沸騰にするのは非常に難しく、この方法で安定的に冷却することは実際上困難である。また、鋼帯上の滞留水の影響については考慮しておらず、温度偏差の発生が避けられない。
【0011】
特許文献5で行われる冷却は、鋼帯温度が低くなった領域で冷却水の水量を少なくするものであり、これにより物理的に得られる効果は、遷移沸騰開始温度を低温側にずらす効果である。しかし、冷却水の低水量化により遷移沸騰開始温度は低温側にずれるものの、その効果には限界があり、さらなる低い冷却終了温度に制御しようとすると、冷却不安定が発生する遷移沸騰温度領域を通過することが避けられないため、それに伴って冷却終了温度の精度低下は避けられない。また、鋼帯上の滞留水の影響については考慮しておらず、温度偏差の発生が避けられない。
【0012】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、少ない設備・処理コストで実施可能な冷却方法であって、冷却後の鋼帯の温度ムラが少なく、且つ冷却終了温度を高精度に制御することでき、特に、500℃以下の温度域での冷却終了温度を高精度に制御することが可能な熱延鋼帯の冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、熱延鋼帯に注水する冷却水の水量密度が高いほど、遷移沸騰開始温度及び核沸騰開始温度が高温側にシフトするという事実に着目し、高温側の冷却工程(冷却前期)では遷移沸騰開始温度よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く低温側の冷却工程(冷却後期)では核沸騰となる冷却水量密度で冷却することにより、遷移沸騰温度領域の通過を完全に回避し、遷移沸騰による冷却不安定を確実に回避できることを見出した。
【0014】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]熱間圧延後の熱延鋼帯を冷却水と接触させて冷却する方法において、
第一の冷却工程とこれに続く第二の冷却工程とを有し、
前記第一の冷却工程では、遷移沸騰開始温度よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、核沸騰となる水量密度の冷却水により冷却することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
[2]上記[1]の冷却方法において、第一の冷却工程では、350〜1200L/min.mの水量密度の冷却水により冷却するとともに、500℃よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、少なくとも鋼帯上面に対して2000L/min.m以上の水量密度の冷却水を注水し、500℃以下の鋼帯温度まで冷却することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【0015】
[3]上記[1]の冷却方法において、第一の冷却工程の前段では、1200L/min.mを超える水量密度の冷却水により冷却し、続く同工程の後段では、350〜1200L/min.mの水量密度の冷却水により冷却するとともに、500℃よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、少なくとも鋼帯上面に対して2000L/min.m以上の水量密度の冷却水を注水し、500℃以下の鋼帯温度まで冷却することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
[4]上記[2]又は[3]の冷却方法において、第一の冷却工程では、550〜600℃の鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では、少なくとも鋼帯上面に対して2500L/min.m以上の水量密度の冷却水を注水することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【0016】
[5]上記[2]〜[4]のいずれかの冷却方法において、第二の冷却工程において、少なくとも鋼帯上面をラミナー冷却又はジェット冷却で冷却するとともに、該ラミナー冷却又はジェット冷却における冷却水供給ノズルからの冷却水の噴射速度を7m/秒以上とすることを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの冷却方法において、第二の冷却工程において、鋼帯上面に注水された冷却水を水切り手段により鋼帯両側の外方に排出させることを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
[7]上記[6]の冷却方法において、水切り手段が、鋼帯上面の幅方向に配置されるロールであることを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
[8]上記[6]の冷却方法において、水切り手段が、鋼帯上面の冷却水に吹き付けられる高圧流体であることを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
[9]上記[1]〜[5]のいずれかの冷却方法において、2つの冷却水供給ノズル又は2つの冷却水供給ノズル群から噴射された冷却水が、鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で斜め上方から鋼帯上面に各々衝突した後、両冷却水流が鋼帯面上で衝突するように、冷却水供給ノズルから鋼帯上面に注水を行うことを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷却方法によれば、遷移沸騰温度領域の通過を回避できるため、遷移沸騰による冷却不安定を確実に回避でき、このため冷却後の鋼帯の温度ムラが少なく、且つ冷却終了温度を高精度に制御することができる。特に、従来技術では難しかった500℃以下の温度域での冷却終了を高精度に制御することができる。このため、従来技術では強度や延性などの材質のバラツキが大きかった500℃以下で巻取りを行う熱延鋼帯についても、材質のバラツキを低減し、狭レンジの材質制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の冷却方法は、熱間圧延後の熱延鋼帯を冷却水と接触させて冷却する方法において、第一の冷却工程とこれに続く第二の冷却工程とを有し、前記第一の冷却工程では、遷移沸騰開始温度よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く前記第二の冷却工程では、核沸騰となる水量密度の冷却水により冷却を行う。
なお、本発明において、鋼帯温度とは鋼帯表面温度のことである。
【0019】
図1は、冷却水を注水して鋼帯を冷却した際の鋼帯表面温度と熱流束(鋼帯から奪われる熱量)との関係を模式的に示すものであり、図1(a)はランナウト冷却における通常の冷却水量密度での熱流束と沸騰形態を示し、図1(b)はそのような通常のランナウト冷却条件に対して冷却水量密度を高めた場合の熱流束と沸騰形態の変化を示している。これによれば、鋼帯表面温度が高い領域では膜沸騰となり、熱流束は低い。また、伝熱特性としては、冷却水量密度が大きいほど遷移沸騰開始温度及び核沸騰開始温度が高温側にシフトする。したがって、ランナウト冷却工程を、高温側の冷却工程(第一の冷却工程)と、これに続く低温側の冷却工程(第二の冷却工程)とに分け、高温側の冷却工程では遷移沸騰開始温度よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く低温側の冷却工程では冷却水流密度を高め、核沸騰となる冷却水量密度で冷却すれば、遷移沸騰温度領域の通過を完全に回避することができる。
【0020】
図1に示すように、通常のランナウト冷却では、約500℃を境に遷移沸騰が開始し、鋼帯温度の低下とともに熱流束が大きくなる。よって、高温側の冷却工程(第一の冷却工程)を約500℃までとし、この約500℃までは通常のランナウト冷却を実施し、それ以降の低温側の冷却工程では冷却水量密度を大きくしてすべて核沸騰温度領域で冷却すれば、ランナウト冷却において遷移沸騰は発生せず、このため冷却終了温度を高精度に制御することが可能となる。
【0021】
ここで、具体的な冷却水量密度と遷移沸騰開始温度及び核沸騰開始温度との関係を実験室的に調査した結果について説明する。実験室において、鋼帯幅方向及び長手方向に複数配列した円管ノズルを用いたジェット冷却を行い、その際に冷却水量密度(単位面積当たりに注水する冷却水量)を変化させて、その冷却温度履歴から遷移沸騰開始温度及び核沸騰開始温度を調べた。その結果を図2に示す。これによれば、冷却水量密度が大きくなるほど遷移沸騰開始温度及び核沸騰開始温度は高くなること、また、核沸騰開始温度を500℃以上とするには冷却水量密度を2000L/min.m以上にすればよいことが判る。また、一般的なランナウト冷却の冷却水量密度である1200L/min.m以下(350〜1200L/min.m)の領域では、遷移沸騰開始温度が約500℃以下であることが判る。
【0022】
以上の結果から、第一の冷却工程(高温側の冷却工程)は、一般的なランナウト冷却条件である350〜1200L/min.mの冷却水量密度で冷却して500℃よりも高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程(低温側の冷却工程)では、ほぼ確実に核沸騰となる2000L/min.m以上の冷却水量密度で500℃以下の鋼帯温度まで冷却することにより、遷移沸騰温度領域を回避した冷却が可能となり、冷却ムラが発生せず且つ冷却終了温度の安定化と高精度の制御が可能となる。
【0023】
さらに、熱延鋼帯の一般的なランナウト冷却条件では500℃前後で遷移沸騰が開始するが、鋼帯表面の性状により遷移沸騰開始温度は多少のバラツキがあるため、より確実に遷移沸騰温度領域を回避するためには、第一の冷却工程では500℃よりもある程度高い鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では2000L/min.mより多目の冷却水量密度で冷却することが好ましく、具体的には、第一の冷却工程では、550〜600℃の鋼帯温度で冷却を停止し、続く第二の冷却工程では2500L/min.m以上の冷却水量密度で冷却を行うことが特に好ましい。
【0024】
ここで、上述した第二の冷却工程における2000L/min.m以上、好ましくは2500L/min.m以上の水量密度の冷却水は、少なくとも鋼帯上面に対して供給されることが好ましい。これに対して鋼帯下面については、鋼帯上面のように滞留水が原因となる温度ムラは発生しないため、必ずしも鋼帯上面と同様に2000L/min.m以上の冷却水量密度でなくてもよい。但し、鋼帯に局所的に温度の低い領域がある場合には温度ムラを増大させかねないので、鋼帯下面に注水する冷却水も鋼帯上面と同様に2000L/min.m以上、好ましくは2500L/min.m以上の水量密度とするのがよい。
【0025】
本発明において第一の冷却工程に求められる条件は、遷移沸騰開始温度よりも高い鋼帯温度で冷却を停止するということであり、したがって、同冷却工程内において冷却水流密度の大きさを適宜変えることは妨げない。例えば、材質の調整や冷却時間の短縮化などの目的で、冷却水流密度の大きさを工程前段>工程後段としてもよい。具体的には、第一の冷却工程の前段では、一般的なランナウト冷却条件よりも高い1200L/min.m超の冷却水量密度で冷却し、続く同工程の後段では、一般的なランナウト冷却条件である350〜1200L/min.mの冷却水量密度で冷却し、500℃よりも高い鋼帯温度(好ましくは550〜600℃)で冷却を停止し、続いて上述したような条件で第二の冷却工程を行うようにすることができる。
なお、図2によれば、特許文献5に記載の方法のように、後段ランナウトテーブルにおいて水量密度0.05〜0.3m/min.m(50〜300L/min.m)の冷却水で冷却した場合では、遷移沸騰開始温度を400℃程度まで下げられるため、400℃まで安定冷却が可能であるが、これ以下の温度ではやはり遷移沸騰温度領域で冷却がなされるため、冷却後の温度ムラや冷却終了温度の精度低下が避けられない。これに対して本発明の好ましい実施形態では、低温側を完全に核沸騰温度域で冷却することができるため、冷却終了温度をいくら低くしても、冷却後の温度ムラや冷却終了温度の精度低下は生じない。
【0026】
図3は、本発明の実施に供される熱延鋼帯製造ラインの一例と、この製造ラインにおける本発明の実施状況を示している。この熱延鋼帯製造ラインにおいて、仕上圧延機群1により最終製品板厚まで圧延された鋼帯S(熱延鋼帯)は、ランナウトテーブル2で所定の温度まで冷却された後、コイラー3で巻き取られる。ランナウトテーブル2上を搬送される鋼帯Sの上下面には、ランナウトテーブル2の上方に設置された冷却水供給手段4aとテーブルローラ間に設置された冷却水供給手段4bからそれぞれ冷却水が注水される。この冷却水供給手段4a,4bとしては、通常は冷却水供給ノズル(例えば、ラミナー冷却又はジェット冷却用の円管ノズルやスリットノズル、スプレー冷却用のスプレーノズルなど)が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
前記ランナウトテーブル2は、上流側のランナウトテーブル部分20(以下、便宜上「前段ランナウトテーブル20」という)と、下流側のランナウトテーブル部分21(以下、便宜上「後段ランナウトテーブル21」という)とからなり、前段ランナウトテーブル20において第一の冷却工程(高温側の冷却工程)が行われ、引き続き後段ランナウトテーブル21において第二の冷却工程(低温側の冷却工程)が行われる。なお、図3において、10は、仕上圧延機群1と前段ランナウトテーブル20の間、前段ランナウトテーブル20と後段ランナウトテーブル21の間、及びランナウトテーブル2とコイラー3の間にそれぞれ設置される鋼帯温度測定用の放射温度計である。
【0028】
鋼帯に冷却水を接触させて冷却する方式には、ラミナー冷却、スプレー冷却、ジェット冷却、ミスト冷却などがある。ここで、ラミナー冷却とは、円管又はスリット形状のノズルから連続性のある層流状態の液体を噴射する冷却方式である。スプレー冷却とは、液体を加圧して噴射することにより、液体を液滴群として噴射する冷却方式である。ジェット冷却とは、円管又はスリット形状のノズルから連続性のある乱流状態の液体を噴射する冷却方式である。ミスト冷却とは、液体を噴霧するのに、加圧した気体と液体を混合させて液滴群にした冷却方式である。
【0029】
本発明では、使用する冷却方式は特に問わないが、鋼帯上面の冷却方式としては、冷却水の直進性に優れ、連続性のあるラミナー冷却又はジェット冷却が好ましい。
さきに述べたような本発明の好ましい実施形態では、第二の冷却工程において鋼帯に注水する冷却水量密度を2000L/min.m以上、望ましくは2500L/min.m以上とする必要があるが、これだけの水量を鋼帯に噴射した場合、鋼帯上面では冷却水は鋼帯両側方向にしか排水されないため、鋼帯上に厚い液膜ができてしまう。そして、冷却水は、この液膜を貫通して鋼帯に直接打力を発生させるように注水されなければ、大流量投入しても膜沸騰が発生する危険性がある。図4は、板幅2mの鋼帯上面に冷却水を注水する実験において、冷却水の水量密度と鋼帯上面の液膜厚みとの関係を調べた結果を示しており、2000L/min.m以上の水量密度の場合には50mm近い液膜厚みとなることが判る。そして、このような液膜を貫通するには、冷却水の直進性が高く、連続性のあるラミナー冷却又はジェット冷却とすることが好ましい。スプレー冷却やミスト冷却では、ノズルから噴射された冷却水は液滴状に分断されるが、このような液滴状態の注水では空気抵抗が大きくなり減速しやすいため、液膜を貫通するには不向きである。
ラミナー冷却やジェット冷却で使用する冷却水供給ノズルとしては、一般に円管ノズルやスリットノズルなどがあるが、どちらを採用しても問題はない。
【0030】
ラミナー冷却又はジェット冷却により、鋼帯上面を2000L/min.m以上、望ましくは2500L/min.m以上の水量密度の冷却水で冷却する場合、円管ノズルやスリットノズルからの冷却水の噴射速度(ノズル噴射口での冷却水流速)は、7m/秒以上とするのが好ましい。先に述べたような鋼帯上面の液膜をラミナー冷却又はジェット冷却で安定的に突き破るための運動量を得るためには、7m/秒以上の流速が必要である。
一方、鋼帯下面については、注水された冷却水は重力により鋼帯面からすぐに離れ、鋼帯面に液膜ができないため、スプレー冷却などの冷却方式を用いてもよいし、ラミナー冷却やジェット冷却を使用した場合でも、冷却水の噴射速度は7m/秒未満でもよい。
【0031】
なお、円管ノズルは大きさが小さいため、1本当たりの水量は少なくなるが、鋼帯幅方向及び長手方向に複数個のノズルを配置し、所定の水量密度を得るようにすればよい。また、円管ノズルの穴径やスリットノズルのギャップは3〜25mm程度が好ましい。ノズルの穴径やギャップが3mm未満では、異物による詰まりが発生しやすく、一方、25mm超では、上記のような噴射速度(7m/秒以上)を確保しようとすると、流量が多すぎて不経済となる。
【0032】
また、鋼帯上面に冷却水の滞留があると、この滞留水による局所的な過冷却が発生し、冷却ムラの原因となってしまうので、鋼帯上面に注水された冷却水は速やかに除去されることが好ましい。このため、(i)冷却水が鋼帯上面に滞留しないような注水形態を採る、(ii)鋼帯上面に注水された冷却水を水切り手段により鋼帯両側の外方に強制的に排出させる、のうちの少なくとも一方を行うことが好ましい。
【0033】
まず、上記(i)の方法では、ラミナー冷却やジェット冷却などにおいて、2つの冷却水供給ノズル又は2つの冷却水供給ノズル群から噴射された冷却水が、鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で斜め上方から鋼帯上面に各々衝突した後、両冷却水流が鋼帯面上で衝突するように、冷却水供給ノズルから鋼帯上面に注水を行う。このような注水形態では、両冷却水流が鋼帯面上で衝突することにより水が鋼帯幅方向に押し出され、鋼帯両側の外方に速やかに排出される。したがって、鋼帯上面に注水された冷却水は、滞留することなく鋼帯上面から速やかに除去される。
【0034】
図5は、その一実施形態を示しており、鋼帯通板ライン方向に沿ってラミナー冷却又はジェット冷却用の2つのノズル群A1,A2が配置され、各ノズル群A1,A2は、鋼帯通板ライン方向に沿って間隔をおいて配置された3つの冷却水供給ノズル5a〜5c、冷却水供給ノズル5d〜5f(例えば、円管ノズル、スリットノズルなど)からなっている。そして、これら2つのノズル群A1,A2からの冷却水の噴射水流6が、鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で斜め上方から鋼帯Sの上面に各々衝突した後、両冷却水流が鋼帯面上で衝突し、その結果、冷却水が鋼帯幅方向に押し出され、鋼帯両側の外方に速やかに排出される。なお、図5の実施形態では2つのノズル群A1,A2から噴射された冷却水流が鋼帯面上で衝突するよう注水しているが、2つの冷却水供給ノズル5から噴射された冷却水流が鋼帯面上で衝突するように注水してもよい。
【0035】
ここで、鋼帯Sの上面に対して斜め上方から衝突する噴射水流6の鋼帯面となす角度θは、小さいほど水切り性が良好となり、鋼帯上の滞留水を減らすことができる。角度θが60°を超えると、鋼帯に到達後の冷却水(滞留水)は鋼帯面に沿って流れるものの、その流れ方向の速度成分が小さくなり、逆方向の流れが発生する。その結果、例えば、鋼帯進行方向の上流側から下流側に噴射する冷却水供給ノズル5の場合、噴射水流6の到達位置(衝突位置)よりも上流側に滞留水の一部が流出してしまって、冷却領域が安定しなくなる危険性がある。例えば、図5に示すようなノズル群A1,A2を用いる場合では、ノズル群A1の最上流側の冷却水供給ノズル5aの噴射水流6の到達位置(衝突位置)よりも上流側に滞留水の一部が流出してしまう恐れがある。したがって、鋼帯上面に各々衝突した2つ(又は2群)の水流が互い方向に確実に流れ、両水流を鋼帯面上で衝突させるようにするには、角度θを60°以下、望ましくは50°以下とすることが好ましい。但し、角度θを45°未満、特に30°未満とした場合には、鋼帯Sに対する冷却水供給ノズル5の高さ位置を確保しようとすると、冷却水供給ノズル5と鋼帯Sとの距離が長くなり過ぎて噴射水流6が分散してしまい、冷却特性が低下する恐れがあるので、角度θは30°以上、望ましくは45°以上とすることが好ましい。
【0036】
次に、上記(ii)の方法では、鋼帯上面に注水された冷却水を速やかに(すなわち、注水位置になるべく近くで)鋼帯両側の外方に強制的に排出させることができる水切り手段を用いることが好ましく、そのような水切り手段として、例えば、鋼帯上面の幅方向に沿って配置される水切り用のロールを用いることができる。すなわち、鋼帯上面に接するロールにより鋼帯上面に注水された冷却水を堰き止め、冷却水が鋼帯幅方向に流れるようにすることにより、鋼帯両側から外方に強制的に排出するものである。
【0037】
図6は、水切り手段としてロールを用いる場合の一実施形態を示すものであり、ラミナー冷却又はジェット冷却用の複数の冷却水供給ノズル5からなるノズル群A3の注水位置に対して、その鋼帯通板ライン上流側と下流側に各々水切り用ロール7a,7bを配置したものである。ノズル群A3から注水された冷却水(この例では、垂直状に注水された冷却水)は、水切り用ロール7a,7b間で堰き止められることで鋼帯Sの幅方向に流れ、鋼帯両側から外方に強制的に排出される。
【0038】
図7は、水切り手段としてロールを用いる場合の他の実施形態を示すものであり、ラミナー冷却又はジェット冷却用の複数の冷却水供給ノズル5からなるノズル群A4の注水位置に対して、その鋼帯通板ライン下流側に水切り用ロール7を配置し、ノズル群A4から冷却水を鋼帯通板ライン下流側に向けて斜めに注水するようにしたものである。ノズル群A4から注水された冷却水は、水切り用ロール7で堰き止められることで鋼帯Sの幅方向に流れ、鋼帯両側から外方に強制的に排出される。
【0039】
また、水切り手段としては、パージ用の高圧流体(高圧気体、高圧水など)を用いることもできる。すなわち、鋼帯上面に注水されて鋼帯面に沿って流れる冷却水に対して、鋼帯通板ライン方向の斜め上方から高圧流体を吹き付けることで冷却水を堰き止め、冷却水が鋼帯幅方向に流れるようにすることにより、鋼帯両側から外方に強制的に排出するものである。高圧流体としては、通常、空気などの気体や高圧水などが用いられる。
【0040】
図8は、その一実施形態を示すもので、ラミナー冷却又はジェット冷却用の複数の冷却水供給ノズル5からなるノズル群A5の注水位置に対して、その鋼帯通板ライン上流側と下流側に各々高圧流体の噴射ノズル8a,8bを設け、ノズル群A5から噴射されて鋼帯Sの上面に達した冷却水に対して、噴射ノズル8a,8bにより鋼帯通板ライン方向の斜め上方から高圧流体9を吹き付ける。これにより冷却水は、高圧流体9で堰き止められることで鋼帯幅方向に流れ、鋼帯両側から外方に強制的に排出される。
なお、水切り手段としては、上述した水切り用ロールと高圧流体を併用してもよい。
【実施例】
【0041】
図3に示す熱延鋼帯製造ラインにおいて、以下のような条件で熱延鋼帯を製造した。厚さ240mmのスラブを加熱炉で1200℃に加熱した後、粗圧延機により厚さ35mmまで圧延し、さらに、仕上圧延機群1により板厚3.2mmまで圧延した。圧延後の鋼帯を前段ランナウトテーブル20及び後段ランナウトテーブル21上において860℃から300℃(目標冷却終了温度)まで冷却した後、コイラー3で巻き取った。ここで、材質の観点から、冷却終了温度の目標許容差は鋼帯全長に亘って60℃以内、好ましくは40℃以内とした。
【0042】
前段ランナウトテーブル20に配置した冷却水供給ノズル5は、鋼帯上面側を円管ラミナーノズル、鋼帯下面側をスプレーノズルとし、発明例12を除きそれぞれ1000L/min.mの水量密度で冷却水を注水し、また、鋼帯上面側での冷却水の噴射速度は4m/秒とした。また、特許文献4を実施できるようにするため、冷却水温を常温から90℃まで調整できる機構を設けた。
一方、後段ランナウトテーブル21は、前段ランナウトテーブル20と同じ形式のノズルのほかに、種々の形式のノズルを設置可能とするとともに、冷却水の流量調整も可能とし、さらに、従来技術(特許文献1,2,4,5)の方法を実施できる構成と機能を備えさせた。
【0043】
なお、後段ランナウトテーブル21では、図5、図7のようにノズルを傾斜させて冷却水を斜めに噴射する形式を採用する場合はジェット流、図6、図8のようにノズルを垂直にして冷却水を垂直状に噴射する形式を採用する場合はラミナー流となるように、ノズル径を調整した。その理由は、以下による。一般に、円管ノズルの場合、ノズル径×液体流速が大きいと乱流すなわちジェット流となり、小さいと層流すなわちラミナー流となる。したがって、同じ流速であってもノズル径を変更することにより、ジェット流とラミナー流を任意に選択できる。一方、ノズルを傾斜させて冷却水を噴射する場合、鋼帯上面の液膜を斜めに貫通させなければならず、鋼帯上面の液膜が同じ厚さであっても、垂直方向から噴射した場合と比較して液膜表面に衝突して鋼帯に達するまでの距離が長くなる。そのため、ノズルを傾斜させて冷却水を噴射する場合には、貫通力を持たせるためにノズル径を比較的大きくしてジェット流とし、垂直方向からの冷却水を衝突させる場合には、ノズル径を比較的小さくしてラミナー流とした。
【0044】
冷却水供給ノズル5は、ランナウトテーブル2の長手方向に複数設置し、それぞれ個別にON−OFF制御できるようにした。また、仕上圧延機群1と前段ランナウトテーブル20の間、前段ランナウトテーブル20と後段ランナウトテーブル21の間、ランナウトテーブル2とコイラー3の間には、それぞれ放射温度計10を設置し、これらの放射温度計10により鋼帯長手方向の温度が測定できるようした。また、前段ランナウトテーブル20及び後段ランナウトテーブル21の各出側での鋼帯温度を調整するために、放射温度計10の出力と目標温度との誤差を計算し、1つの鋼帯内でランナウトテーブル2に設置されている冷却水供給ノズル5の使用本数を調整した。
【0045】
なお、事前調整により、前段ランナウトテーブル20において30℃の冷却水で鋼帯を冷却した場合、水量密度1000L/min.mでは約500℃で、水量密度2000L/min.mでは約600℃で、それぞれ遷移沸騰が開始されることを確認した。
本実施例では、冷却終了後の鋼帯の長手方向平均温度及び1つの鋼帯(コイル)内の温度の(最大値−最小値)で定義される温度偏差を調べた。その結果を、冷却条件とともに表1及び表2に示す。
【0046】
[発明例1]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を4m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は302℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も50℃と目標値以内となった。なお、後段ランナウトテーブル21出側での鋼帯長手方向の温度チャートを図9に示す。
【0047】
[発明例2]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに3000L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を4m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は303℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も40℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。発明例1に較べて鋼帯長手方向温度偏差が小さくなったが、これは発明例1よりも後段ランナウトテーブ21での冷却水量密度を大きくしたためであると考えられる。
【0048】
[発明例3]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を7m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は297℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も38℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。発明例1に較べて鋼帯長手方向温度偏差が小さくなったが、これは発明例1よりも後段ランナウトテーブル21での冷却水の噴射速度を大きくしたことにより、鋼帯上面での冷却水の液膜を貫通する作用が高まり、安定した核沸騰が得られたためであると考えられる。
【0049】
[発明例4]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により510℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2000L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を7m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は298℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も40℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。
【0050】
[発明例5]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により600℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2800L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を7m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は301℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も36℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。
【0051】
[発明例6]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに3000L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を7m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は297℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も25℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。発明例1に較べて鋼帯長手方向温度偏差が小さくなったが、これは発明例1よりも後段ランナウトテーブル21での冷却水量密度を大きくし、且つ冷却水の噴射速度を大きくしたことにより、上述したような理由によって安定した核沸騰が得られたためであると考えられる。
【0052】
[発明例7]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図8に示すように噴射ノズル8a,8bから噴射される高圧流体9による水切りパージを行いつつ、円管ラミナーノズル群5Aから冷却水を注水してラミナー冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を4m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は294℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も47℃と目標値以内となった。
【0053】
[発明例8]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図8に示すように噴射ノズル8a,8bから噴射される高圧流体9による水切りパージを行いつつ、円管ラミナーノズル群5Aから冷却水を垂直状に注水してラミナー冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を7m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は308℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も38℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。発明例7に較べて鋼帯長手方向温度偏差が小さくなったが、これは発明例7よりも後段ランナウトテーブル21での冷却水の噴射速度を大きくしたことにより、鋼帯上面での冷却水の液膜を貫通する作用が高まり、安定した核沸騰が得られたためであると考えられる。
【0054】
[発明例9]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図6に示すように注水位置の鋼帯通板ライン上流側・下流側に水切り用ロール7a,7bを配置して水切りを行いつつ、円管ラミナーノズル群A3から冷却水を垂直状に注水してラミナー冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を7m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は306℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も36℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。
【0055】
[発明例10]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図7に示すように注水位置の鋼帯通板ライン下流側に水切り用ロール7を配置して水切りを行いつつ、円管ジェットノズル群A4から冷却水を鋼帯通板ライン下流側に向けて斜め(鋼帯面とのなす角度α:45°)に注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を7m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は302℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も37℃と目標値以内であって且つ好ましい温度範囲となった。
【0056】
[発明例11]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つのスリットジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を4m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は307℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も43℃と目標値以内となった。
【0057】
[発明例12]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水を使用し、その前半では水量密度2000L/min.mで650℃まで冷却し、その後半では水量密度1000L/min.mで550℃まで冷却した。引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を4m/秒とした。
本発明例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は303℃であり、ほぼ目標どおりとなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も45℃と目標値以内となった。
【0058】
[比較例1]
圧延後の熱延鋼帯を、30℃の冷却水を用いて、前段ランナウトテーブル20で550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21で冷却した。ランナウトテーブル全体を通じて、鋼帯上面側はラミナー冷却、鋼帯下面側はスプレー冷却とし、鋼帯上面側は冷却水の水量密度を1000L/min.m、噴射速度を4m/秒、鋼帯下面側は冷却水の水量密度を1000/min.mとした。
本比較例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は280℃であり、目標温度よりも20℃低くなった。また、鋼帯長手方向温度偏差も80℃と目標よりも大きくなってしまった。なお、後段ランナウトテーブル21出側での鋼帯長手方向の温度チャートを図10に示す。
【0059】
[比較例2]
特許文献1の方法に従い熱延鋼帯の冷却を行った。圧延後の熱延鋼帯を、30℃の冷却水を用いて、前段ランナウトテーブル20で550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では鋼帯下面だけに冷却水で注水して冷却した。後段ランナウトテーブル21ではスプレー冷却とし、スプレーノズルから水量密度1000L/min.mの冷却水を鋼帯下面に噴射した。
本比較例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は290℃であり、目標温度よりも若干低い程度であったが、鋼帯長手方向温度偏差は120℃と目標よりも大きくなってしまった。冷却が不安定になる500℃以下の温度域を鋼帯下面のみで冷却しても、遷移沸騰領域の通過が避けられないことから、鋼帯長手位置によって温度が急激に低くなったとものと考えられる。
【0060】
[比較例3]
特許文献2の方法に従い熱延鋼帯の冷却を行った。前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では90℃の冷却水により冷却した。ランナウトテーブル全体を通じて、鋼帯上面側はラミナー冷却、鋼帯下面側はスプレー冷却とし、後段ランナウトテーブル21では、冷却水の水量密度を1000L/min.m、鋼帯上面側の噴射速度を4m/sとした。
本比較例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は290℃であり、目標温度よりも若干低い程度であったが、鋼帯長手方向温度偏差は70℃と目標よりも大きくなってしまった。後段ランナウトテーブル21で温水を用いることにより遷移沸騰開始温度が低くなったが、やはり膜沸騰から遷移沸騰への変化を避けることができなかったため、鋼帯長手方向温度がばらついたものと考えられる。
【0061】
[比較例4]
特許文献4の方法に従い熱延鋼帯の冷却を行った。圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では80℃の冷却水により400℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では30℃の冷却水により冷却した。ランナウトテーブル全体を通じて、鋼帯上面側はラミナー冷却、鋼帯下面側はスプレー冷却とし、後段ランナウトテーブル21では、冷却水の水量密度を1000L/min.m、鋼帯上面側の噴射速度を4m/sとした。
本比較例では、前段ランナウトテーブル出側温度で400℃を目標としたが、鋼帯長手方向温度がハンチングしたため、この時点で鋼帯長手方向温度偏差が80℃となってしまった。このように前段ランナウトテーブル20出側温度がばらついた結果、後段ランナウトテーブル21の出側でも連動して鋼帯長手方向温度がばらつてしまい、結局、後段ランナウトテーブル出側温度の平均温度は295℃とほぼ目標どおりにはなったものの、鋼帯長手方向温度偏差は95℃と目標よりも大きくなってしまった。前段ランナウトテーブル20で温水を使用したことにより遷移沸騰開始温度が低くなったと思われるが、前段ランナウトテーブル20で400℃まで冷却するには遷移沸騰開始温度があまり下がらず、前段ランナウトテーブル20内で遷移沸騰領域を跨いでしまい、温度のばらつきが大きくなったものと考えられる。
【0062】
[比較例5]
特許文献5の方法に従い熱延鋼帯の冷却を行った。前段ランナウトテーブル20では、30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、30℃で水量密度が200L/min.mの冷却水により鋼帯上面側・下面側ともスプレー冷却で冷却した。
本比較例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は309℃となりほぼ目標温度となったものの、鋼帯長手方向温度偏差が70℃と目標よりも大きくなってしまった。前段ランナウトテーブル20において冷却水量密度を少なくすることにより、遷移沸騰開始温度は低くなったものの、膜沸騰から遷移沸騰への冷却形態の変化を避けることができなかったため、冷却終了後の温度がばらついたものと考えられる。
【0063】
[比較例6]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により550℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側1500L/min.m、鋼帯下面側1800L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を4m/秒とした。
本比較例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は308℃であり、ほぼ目標どおりとなったが、鋼帯長手方向温度偏差が65℃と目標温度よりも大きくなってしまった。これは、後段ランナウトテーブル21での冷却水量密度が小さいために、安定した核沸騰が得られなかったためであると考えられる。
【0064】
[比較例7]
圧延後の熱延鋼帯を、前段ランナウトテーブル20では30℃の冷却水により450℃まで冷却し、引き続き、後段ランナウトテーブル21では、鋼帯上面側については図5に示すように2つの円管ジェットノズル群A1,A2から鋼帯通板ライン方向で斜めに対向した状態で冷却水を注水してジェット冷却し、鋼帯下面側についてはスプレー冷却した。後段ランナウトテーブ21で使用した冷却水は、水温30℃、水量密度を鋼帯上面側・下面側ともに2500L/min.m、鋼帯上面側での噴射速度を4m/秒とした。
本比較例では、冷却終了後の鋼帯長手方向の平均温度は280℃であり、ほぼ目標どおりとなったが、鋼帯長手方向温度偏差は70℃と目標温度よりも大きくなってしまった。前段ランナウトテーブル20での鋼帯長手方向温度偏差をみると60℃であり、すでにこの時点で温度偏差が発生していた。これは、前段ランナウトテーブル20において500℃以下まで冷却したため、前段ランナウトテーブル20で膜沸騰から遷移沸騰への冷却形態の変化が生じたためであると考えられる。このため、後段ランナウトテーブル21で安定した核沸騰で冷却しても、もともと温度偏差が発生していたため、目標の温度偏差にすることができなかったものと考えられる。
【0065】
【表1】


【0066】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】冷却水による熱延鋼帯の冷却において、鋼帯表面温度と熱流束との関係を模式的に示した説明図
【図2】冷却水による熱延鋼帯の冷却において、冷却水量密度と遷移沸騰開始温度及び核沸騰開始温度との関係を示すグラフ
【図3】本発明の実施に供される熱延鋼帯製造ラインの一例と、この製造ラインにおける本発明の実施状況を示す説明図
【図4】冷却水による熱延鋼帯の冷却において、冷却水量密度と鋼帯上面に生じる液膜厚みとの関係を示すグラフ
【図5】本発明法における冷却水の注水形態の一実施形態を示す説明図
【図6】本発明法における冷却水の水切り手段の一実施形態を示す説明図
【図7】本発明法における冷却水の水切り手段の他の実施形態を示す説明図
【図8】本発明法における冷却水の水切り手段の他の実施形態を示す説明図
【図9】実施例の発明例1における後段ランナウトテーブル出側での鋼帯長手方向の温度チャート図
【図10】実施例の比較例1における後段ランナウトテーブル出側での鋼帯長手方向の温度チャート図
【符号の説明】
【0068】
1 仕上圧延機群
2 ランナウトテーブル
3 コイラー
4a,4b 冷却水供給手段
5,5a〜5c 冷却水供給ノズル
6 噴射水流
7,7a,7b 水切り用ロール
8a,8b 噴射ノズル
9 高圧流体
10 放射温度計
20 前段ランナウトテーブル
21 後段ランナウトテーブル
A1〜A5 ノズル群
S 鋼帯
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年10月30日(2006.10.30)
【代理人】 【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏


【公開番号】 特開2008−110353(P2008−110353A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−293527(P2006−293527)