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【発明の名称】 加熱炉装入順決定方法及びその決定装置
【発明者】 【氏名】吉成 有介

【氏名】北條 成人

【氏名】奥野 昭博

【氏名】茂森 弘靖

【要約】 【課題】複数種類のスラブに対して、スラブの在炉時間を満たしつつ無駄な加熱炉での滞留時間を削減し、さらに、圧延の高能率化を可能とする。

【解決手段】圧延対象のスラブに関する属性データおよび圧延制約データを読み込み、その属性データに基づいてスラブのグルーピングを行い、属性データおよび圧延制約データに基づき小圧延グループを作成し、圧延制約データを考慮して圧延順データを作成し、各スラブの加熱炉への装入順を作成するステップS1と、ステップS1により作成された圧延順データから、スラブの移動もしくは入れ替えを順次行い、圧延順と加熱炉装入順を作成し、目的関数の算出を行い、その数値の改善を繰り返すことで、総圧延時間のより短い圧延順および加熱炉抽出待ち時間のより少ない加熱炉装入順を決定するステップS2とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延対象の複数種類のスラブに関するスラブサイズ、スラブの仕上げ幅及び仕上げ厚に応じて分類されたロールチャンス区分、スラブの圧延方法に対応付けて分類された圧延種別を含む属性データ、および、ロールチャンス区分毎に設定されたスラブの圧延位置の範囲を記述した圧延制約データを読み込み、
読み込んだ前記属性データに基づいてスラブのグルーピングを行い、
該グルーピングされたスラブについて、前記属性データおよび圧延制約データに基づき組み合わせ可能なスラブによる小圧延グループを作成し、
該作成された小圧延グループを、前記圧延制約データを考慮して、圧延する順番に並べて圧延順データを作成し、
該作成された圧延順データに基づいて、各スラブの加熱炉への装入順を作成する初期装入順作成ステップと、
該初期装入順作成ステップにより作成された圧延順データから、任意のスラブの位置を移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えて、圧延順と加熱炉装入順を作成し、総圧延時間および加熱炉抽出待ち時間の評価を含んだ目的関数の算出を行い、該算出された目的関数の数値が改善されている場合には、前記移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えを行った圧延順と加熱炉装入順に変更し、さらに、他のスラブに対して同様の移動もしくは他の任意のスラブとの入れ替えを行い、前記目的関数の改善を繰り返すことで、総圧延時間のより短い圧延順および加熱炉抽出待ち時間のより少ない加熱炉装入順を決定する装入順改善ステップと
を有することを特徴とする加熱炉装入順決定方法。
【請求項2】
装入順・圧延順改善ステップにおける目的関数が、下式(1)により算出されることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉装入順決定方法。
目的関数=A×総圧延時間 + B×スラブ抽出待ち時間和 + C×加熱炉間の終了時刻差 + ボーナス関数 + ペナルティ関数 ・・・(1)
ここで、前記A,B,Cは重み係数を表す。
【請求項3】
圧延対象の複数種類のスラブに関するスラブサイズ、スラブの仕上げ幅及び仕上げ厚に応じて分類されたロールチャンス区分、スラブの圧延方法に対応付けて分類された圧延種別を含む属性データ、および、ロールチャンス区分毎に設定されたスラブの圧延位置の範囲を記述した圧延制約データを読み込み、
読み込んだ前記属性データに基づいてスラブのグルーピングを行い、
該グルーピングされたスラブについて、前記属性データおよび圧延制約データに基づき組み合わせ可能なスラブによる小圧延グループを作成し、
該作成された小圧延グループを、前記圧延制約データを考慮して、圧延する順番に並べて圧延順データを作成し、
該作成された圧延順データに基づいて、各スラブの加熱炉への装入順を作成する初期装入順作成手段と、
該初期装入順作成手段により作成された圧延順データから、任意のスラブの位置を移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えて、圧延順と加熱炉装入順を作成し、総圧延時間および加熱炉抽出待ち時間の評価を含んだ目的関数の算出を行い、該算出された目的関数の数値が改善されている場合には、前記移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えを行った圧延順と加熱炉装入順に変更し、さらに、他のスラブに対して同様の移動もしくは他の任意のスラブとの入れ替えを行い、前記目的関数の改善を繰り返すことで、総圧延時間のより短い圧延順および加熱炉抽出待ち時間のより少ない加熱炉装入順を決定する装入順改善手段とを有することを特徴とする加熱炉装入順決定装置。
【請求項4】
装入順改善手段における目的関数が、下式(1)により算出されることを特徴とする請求項3に記載の加熱炉装入順決定装置。
目的関数=A×総圧延時間 + B×スラブ抽出待ち時間和 + C×加熱炉間の終了時刻差 + ボーナス関数 + ペナルティ関数 ・・・(1)
ここで、前記A,B,Cは重み係数を表す。
【請求項5】
請求項1または2に記載の加熱炉装入順決定方法を用いて、決定された装入順に基づいて鋼板を加熱炉に装入する鋼板の加熱炉への装入方法。
【請求項6】
請求項5に記載の加熱炉への装入方法を用いて鋼板を製造する鋼板製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の素材について、特に、厚板圧延における、複数種類のスラブを圧延する際の圧延の高能率化を可能とするための加熱炉装入順決定方法及びその決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
厚板の熱間圧延工程においては、製鋼工程で製造された圧延材(以下、「スラブ」と記す)に対して、加熱炉での加熱と圧延機での圧延を施すことにより、複数種類の厚板圧延製品が製造される。複数種類の圧延製品を製造する場合、各スラブの加熱炉への装入順序と、加熱されたスラブの圧延機による圧延順序の計画立案が、生産効率や生産コストに大きく影響を与えるため重要となる。ここで、加熱および圧延に関しては、各スラブの材質、幅、厚さ等に応じて多くの制約条件が存在するため、その計画立案は極めて複雑となる。
【0003】
一般に厚板工場での圧延機はロールが正転及び逆転可能に構成されており、この圧延機に搬送されてきたスラブは、ロールを複数回にわたって往復して通過されて圧延が行われる、いわゆる、リバース圧延が行われる。このリバース圧延により、素材は所定の寸法に造り込まれる。また、圧延機の前面(上流)及び後面(下流)にはスラブを待機させることができる待機スペースがあり、これにより、圧延中の1つのスラブを待機スペースに待機させて、次のスラブを圧延機で圧延することができるようにしている。このようにして圧延機で圧延されたスラブは、圧延機の上下流にある水冷装置で必要に応じて冷却される。また、圧延ライン上を他のスラブが追い越せるような高さに持ち上げて待機状態に保持する設備、いわゆる追い越し圧延設備が設けられている場合もあり、圧延途中に長時間の冷却が必要なスラブに対しても、冷却中に他のスラブを追い越させて圧延することが出来るようにしている。
【0004】
このような厚板工場では、圧延機でスラブをリバース圧延して所定の寸法の製品を製造している。このようにして、様々な製品が作られるが、スラブ毎に圧延機でのパス回数、圧延時間は異なっている。ここで、圧延過程は、成形/幅出し過程及び厚み出し過程の2つの過程に分けることができる。なお、スラブによっては、成形/幅出し過程を要しないものもある。
【0005】
また、厚み出し過程では、製品の材質を造り込むために温度調整を行う場合がある。この温度調整は、最終パス付近で圧延機前後面もしくは追い越し圧延設備上でスラブを待機させて、所定の温度範囲にしてから圧延を行うものであり、制御圧延ともいわれている。また、温度調整は複数回行われる場合もあり、スラブによりその温度調整の回数も異なっている。温度調整の回数は、例えば0〜4回である。また、温度調整は、空冷で実施する場合と、水冷装置を使用して実施する場合等がある。
【0006】
以上のような圧延や温度調整等といった過程がスラブに応じて組み合わされて、素材が所定の製品として造り出される。これは、いわゆる圧延スケジュール或いはパススケジュールといわれている。そして、スラブにより圧延や温度調整等の内容が異なることから、パススケジュールもスラブの種類によって異なるものになる。
【0007】
圧延能率を最大化するためには、スラブのパススケジュールに応じて、圧延機の前面、後面の待機スペースや追い越し圧延設備等をうまく活用して、圧延機の空き時間を最小にすることが求められる。
【0008】
一方、圧延されるスラブは圧延前に加熱炉で加熱される。スラブには複数種類あり、加熱炉抽出時の目標温度に加熱するために、それぞれ加熱炉で加熱される必要な時間(以下、「在炉時間」と記す)が決まっている。加熱炉での滞留時間が在炉時間を満たすようになるまで加熱炉からのスラブの抽出が出来ないので、圧延機の空き時間が発生する。また、在炉時間より長く加熱炉内にスラブが滞留することは、加熱炉においてエネルギーをロスすることになる。
【0009】
このように厚板工場において効率的な操業を行うためには、圧延機での圧延及び加熱炉での加熱の両方の視点からの最適化が求められる。
【0010】
圧延機及び加熱炉を考慮したスケジューリング方法としては、従来から種々の方法が知られている。
【0011】
例えば、特許文献1には、以下のような方法が記載されている。先ず、加熱グループ形成工程18で、同一の加熱炉に装入可能な加熱グループ(a)〜(e)を形成し、この加熱グループを基本として、圧延グループ形成工程20で、同時に圧延機に供給可能な圧延グループを形成する。そして、この圧延グループを単位として圧延順序と加熱炉の割り付けを行う。この特許文献1の方法によれば、加熱条件を考慮したグループ分けを基本として圧延順序や加熱炉の割り付けが選定されることから、例えば、品質上の問題等から同じ加熱炉に同一加熱条件のスラブのみを装入して加熱することが要求される場合等においても、そのような加熱条件を優先的に満足させつつ、優れた圧延効率が得られるように、スラブの加熱炉への装入順序と圧延機による圧延順序を、最適に決定することが可能となる。
【0012】
また、特許文献2には、以下のような方法が記載されている。まず、スケジューリング対象となる全スラブをグループ分けし、加熱速度と圧延速度の速度差が小さいほど高い評価点を与えるという同期化ルールと、前後グループの加熱条件の相違が少ないほど高い評価点を与えるという前後関係ルールとに従って全グループの並び順の一次案を決定する。次に、この一次案に基づいて加熱ロス時間及び圧延ロス時間の評価と、総電力コストの評価とを行い、圧延ロス時間の増加が許容範囲を越えない範囲で総電力コストが最小となる並び順を再度演算し、全グループの並び順を決定する。
【0013】
また、特許文献3には、以下のような方法が記載されている。まず、ステップS1〜ステップS3において、圧延される各素材のパススケジュールをもとに、圧延を実施する際の圧延機の占有時間等を含む情報を求める。次に、ステップS4において、その求めた情報に基づいて、加熱炉を経て圧延される全ての素材についての圧延が完了するまでの圧延完了時間を目標とし、圧延機において同時に重複して実施できない等といった制約条件を、最適化問題に定式化する。次に、ステップS5において、定式化した最適化問題を、混合整数計画問題に変換して、圧延完了時間が最小になるように、加熱炉からの素材の抽出順序及び圧延機での圧延の実施順序を決定する。
【特許文献1】特開2000−167610号公報
【特許文献2】特開2004−209495号公報
【特許文献3】特開2003−305508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記特許文献1及び2に記載の方法では、圧延順と加熱炉装入順の最適化を行っているが、厚板圧延のような詳細なパススケジュールに基づいた、圧延順を考慮していない。
【0015】
また、上記特許文献3の方法では、圧延パススケジュールに基づき、圧延スケジュールを作成しているが、加熱炉に関しては考慮されていない。
【0016】
そこで、本発明は、厚板圧延における詳細なパススケジュールに基づき、複数種類のスラブに対して、スラブの在炉時間を満たしつつ無駄な加熱炉での滞留時間を削減し、さらに、圧延の高能率化を可能とする加熱炉装入順決定方法及びその決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有する。
[1]圧延対象の複数種類のスラブに関するスラブサイズ、スラブの仕上げ幅及び仕上げ厚に応じて分類されたロールチャンス区分、スラブの圧延方法に対応付けて分類された圧延種別を含む属性データ、および、ロールチャンス区分毎に設定されたスラブの圧延位置の範囲を記述した圧延制約データを読み込み、
読み込んだ前記属性データに基づいてスラブのグルーピングを行い、
該グルーピングされたスラブについて、前記属性データおよび圧延制約データに基づき組み合わせ可能なスラブによる小圧延グループを作成し、
該作成された小圧延グループを、前記圧延制約データを考慮して、圧延する順番に並べて圧延順データを作成し、
該作成された圧延順データに基づいて、各スラブの加熱炉への装入順を作成する初期装入順作成ステップと、
該初期装入順作成ステップにより作成された圧延順データから、任意のスラブの位置を移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えて、圧延順と加熱炉装入順を作成し、総圧延時間および加熱炉抽出待ち時間の評価を含んだ目的関数の算出を行い、該算出された目的関数の数値が改善されている場合には、前記移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えを行った圧延順と加熱炉装入順に変更し、さらに、他のスラブに対して同様の移動もしくは他の任意のスラブとの入れ替えを行い、前記目的関数の改善を繰り返すことで、総圧延時間のより短い圧延順および加熱炉抽出待ち時間のより少ない加熱炉装入順を決定する装入順改善ステップと
を有することを特徴とする加熱炉装入順決定方法。
[2]上記[1]において、装入順・圧延順改善ステップにおける目的関数が、下式(1)により算出されることを特徴とする加熱炉装入順決定方法。
目的関数=A×総圧延時間 + B×スラブ抽出待ち時間和 + C×加熱炉間の終了時刻差 + ボーナス関数 + ペナルティ関数 ・・・(1)
ここで、前記A,B,Cは重み係数を表す。
[3]圧延対象の複数種類のスラブに関するスラブサイズ、スラブの仕上げ幅及び仕上げ厚に応じて分類されたロールチャンス区分、スラブの圧延方法に対応付けて分類された圧延種別を含む属性データ、および、ロールチャンス区分毎に設定されたスラブの圧延位置の範囲を記述した圧延制約データを読み込み、
読み込んだ前記属性データに基づいてスラブのグルーピングを行い、
該グルーピングされたスラブについて、前記属性データおよび圧延制約データに基づき組み合わせ可能なスラブによる小圧延グループを作成し、
該作成された小圧延グループを、前記圧延制約データを考慮して、圧延する順番に並べて圧延順データを作成し、
該作成された圧延順データに基づいて、各スラブの加熱炉への装入順を作成する初期装入順作成手段と、
該初期装入順作成手段により作成された圧延順データから、任意のスラブの位置を移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えて、圧延順と加熱炉装入順を作成し、総圧延時間および加熱炉抽出待ち時間の評価を含んだ目的関数の算出を行い、該算出された目的関数の数値が改善されている場合には、前記移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えを行った圧延順と加熱炉装入順に変更し、さらに、他のスラブに対して同様の移動もしくは他の任意のスラブとの入れ替えを行い、前記目的関数の改善を繰り返すことで、総圧延時間のより短い圧延順および加熱炉抽出待ち時間のより少ない加熱炉装入順を決定する装入順改善手段とを有することを特徴とする加熱炉装入順決定装置。
[4]上記[3]において、装入順改善手段における目的関数が、下式(1)により算出されることを特徴とする加熱炉装入順決定装置。
目的関数=A×総圧延時間 + B×スラブ抽出待ち時間和 + C×加熱炉間の終了時刻差 + ボーナス関数 + ペナルティ関数 ・・・(1)
ここで、前記A,B,Cは重み係数を表す。
[5]上記[1]または[2]に記載の加熱炉装入順決定方法を用いて、決定された装入順に基づいて鋼板を加熱炉に装入する鋼板の加熱炉への装入方法。
[6]上記[5]に記載の加熱炉への装入方法を用いて鋼板を製造する鋼板製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、厚板圧延における詳細なパススケジュールに基づき、複数種類のスラブに対して、スラブの加熱時間を満たしつつ無駄な加熱時間を削減し、さらに、圧延の高能率化を可能とする加熱炉装入順決定方法及びその決定装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
【0020】
図1に、本発明に係る加熱炉装入順決定方法及び加熱炉装入順決定装置が適用される製鋼工場及び厚板工場における物流フローの一例を示す。図1において、製鋼工場における連続鋳造機1で鋳造されたスラブ2は、トレーラ3で厚板工場のスラブヤード4に搬送される。ここで、スラブヤード4では、搬送されてきたスラブ2は、ロールチャンス区分(以下、「RC区分」とも記す。)単位で山積みされる。前記RC区分は、熱延後のスラブの仕上げ幅及び仕上げ厚に応じて分類される区分であり、例えば図2に示す様に分類されている。なお、RC区分の分類方法は、設備仕様、操業条件等により適宜設定し得るものであり、図2の場合に限られるものではない。
【0021】
スラブヤード4に山積みされたスラブ2は、加熱炉5に装入される。図1は、加熱炉が2基設置されている場合を示しているが、1基或いは3基以上設置されている場合でも本発明を適用することができる。加熱炉5に装入されるスラブ2は、スラブの厚さによって複数種類のサイズに分類する。図3に、スラブのサイズによって3種類に分類した場合の一例を示す。炉での滞留時間が在炉時間を満たすようになるまで加熱炉から抽出できないので、次工程の圧延機に搬送できず空きが生じてしまい圧延能率を落とす。また、滞留時間が長過ぎると加熱炉においてエネルギーをロスすることになる。そこで、スラブの厚さ、装入時のスラブ温度に応じた在炉時間を予め細かく設定しておくことにより、スラブの在炉時間を満たしつつ無駄な滞留時間を削減することが可能となる。
【0022】
加熱炉5での加熱が完了し抽出されたスラブ2は、圧延機6により圧延される。圧延機6で使用する圧延ロール61には、圧延ロール61の種類に応じて、圧延出来るスラブ本数の上限値が決まっており、上限値に達した時点で圧延ロール61を交換する。圧延されるスラブは、圧延ロール61の交換直後から圧延できるスラブ本数の上限値の間で、RC区分毎に圧延可能な位置(順序)の基準が決められている。図4にRC区分毎の圧延可能位置を図示した例を示す。図4において縦軸はRC区分、横軸は圧延位置(ロール交換後からの圧延されるスラブの本数)であり、横軸の0はロール交換直後のタイミングを表している。図4において、例えばRC区分0の場合、圧延位置はp3本目からp6本目の範囲で圧延を行い、この間で最大n0本まで圧延可能である。また、図4に示すように圧延位置の範囲がラップしている部分では、異なるRC区分のスラブを混在させても構わない。
【0023】
図5に、本発明に係る加熱炉装入順決定方法の処理フローの一例を示す。また、図6に本発明に係る加熱炉装入順決定装置10の機能ブロック図の一例を示す。
【0024】
ここで、前記加熱炉装入順決定装置10としてはコンピュータ等を用いることができ、図5における初期装入順作成ステップ(S1)、装入順改善ステップ(S2)は、それぞれ図6における初期装入順作成手段11、装入順改善手段12で行われる。また、図5における初期装入順作成ステップ(S1)は、グルーピングステップ(S11)、小圧延グループ作成ステップ(S12)、圧延順作成ステップ(S13)、装入順作成ステップ(S14)の各ステップからなり、それぞれ図6における初期装入順作成手段11のグルーピング手段(111)、小圧延グループ作成手段(112)、圧延順作成手段(113)、装入順作成手段(114)で行われる。
【0025】
本発明は、圧延(圧延機)の視点及び加熱(加熱炉)の視点の両方の視点から、それぞれの高能率化を果たす装入順を作成することで圧延能率を最大にする加熱炉装入順を作成するものである。ここで、圧延(圧延機)の視点からは、・総圧延時間が最小、つまり、ダブル圧延(圧延機の前面および後面に設けられた待機スペースにスラブを待機させて、別のスラブを圧延するもの)や追い越し圧延が多い、・同種のRC区分のスラブがそろって並んでいる、等が求められる。また、加熱(加熱炉)の視点からは、・スラブの抽出待ち時間が最小、同サイズスラブはなるべく同炉で加熱される、・複数加熱炉間の抽出終了タイミングがほぼ一緒、等が求められる。
【0026】
以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0027】
[初期装入順作成ステップ(S1)]
本ステップ(S1)では 装入順改善ステップ(S2)(装入順改善手段12)で効率的な改善を行えるような、初期装入順を作成する。本ステップ(S1)は、図5に示すように、圧延対象の複数種類のスラブに関して読み込んだ属性データに基づいてスラブのグルーピングを行うグルーピングステップ(S11)と、グルーピングステップ(S11)でグルーピングされたスラブについて、属性データおよび圧延制約データに基づき組み合わせ可能なスラブによる小圧延グループを作成する小圧延グループ作成ステップ(S12)と、小圧延グループ作成ステップ(S12)により作成された小圧延グループを、圧延制約データを考慮して、圧延する順番に並べて圧延順データを作成する圧延順作成ステップ(S13)と、圧延順作成ステップ(S13)により作成された圧延順データに基づいて、各スラブの加熱炉への装入順を作成する装入順作成ステップ(S14)とを有する。なお、前記グルーピングステップ(S11)は図6におけるグルーピング手段111で、前記小圧延グループ作成ステップ(S12)は図6における小圧延グループ作成手段112で、前記圧延順作成ステップ(S13)は図6における圧延順作成手段113で、前記装入順作成ステップ(S14)は図6における装入順作成手段114で行われる。
【0028】
〔グルーピングステップ(S11)〕
本S11では、まず、操業実績データや生産計画データなどの入出力を行って、生産管理を行う上位のコンピュータ9から計画用材源データとなるスラブデータである圧延対象の複数種類のスラブに関するスラブサイズ、スラブの仕上げ幅及び仕上げ厚に応じて分類されたロールチャンス区分、スラブの圧延方法に対応付けて分類された圧延種別を含む属性データと、ロールチャンス区分毎に設定されたスラブの圧延位置の範囲を記述した圧延制約データとを読み込み、データベース等の記憶手段に記憶する。
【0029】
前記スラブデータは、スラブ1枚毎の属性データで、例えば図7に示す項目とデータを持ち、立案する計画のスラブ本数分読み込まれる。以下、図7に示す各項目についてその内容を記載する。
【0030】
・スラブ番号
個々のスラブを識別するための番号。
【0031】
・スラブサイズ
加熱炉での在炉時間はスラブ厚に依存するため、この例では、スラブ厚をスラブサイズとして扱う。
【0032】
・RC区分(ロールチャンス区分)
熱延後のスラブの仕上げ幅及び仕上げ厚に応じて分類される区分であり、例えば図2に示す様に分類されている。
【0033】
・山番号
スラブヤードに山積みされたスラブの山番号。
【0034】
・圧延厚
スラブの圧延終了時の板厚。
【0035】
・圧延幅
スラブの圧延終了時の板幅。
【0036】
・圧延種別
圧延途中に冷却が必要なスラブ(長時間待機するスラブ)、つまり追い越し圧延の際に、例えば、昇降装置で搬送テーブルから後続のスラブが通過可能な高さに持ち上げられて後続のスラブを先行させることが可能なスラブ(以下、「リフト材」という。)であるか、圧延途中に冷却の必要がなく、先行するスラブを追い越すことが可能なスラブ(以下、「追い越し材」という。)であるか、圧延途中に冷却は必要であるがリフト材程長時間の冷却は必要でなく、圧延機の前面および後面に設けられた待機スペースを使うことで、いわゆるダブル圧延が可能なスラブ(以下、「ダブル圧延材」という。)であるかどうか等のデータを指す。この例では、図8に示すように、各圧延種別に応じたコードとして扱う。なお、図8においては、冷却時間の長短に応じて追い越し材の本数が変わるため、リフト材の区分を3つとしている。
【0037】
・スラブ温度
加熱炉に装入するスラブの温度で在炉時間の計算に用いる。
【0038】
以下の項目は、前述の背景技術で記載したパススケジュールに関するデータである。スラブに応じた各過程の圧延時間、温度調整時間を上位のシステムで計算したものを用いる。圧延過程には成形/幅出し、厚み出し過程があるが、成形/幅出し過程を要しないものもあるため、この例ではデータ項目は圧延過程1,2,3、温度調整時間1,2とした。
・圧延過程時間1
・温度調整時間1
・圧延過程時間2
・温度調整時間2
・圧延過程時間3
圧延制約データは、前述した図4に示されるロールチャンス区分毎に設定されたスラブの圧延位置の範囲を記述したデータで、例えば図9に示すようなデータと項目を持つものである。このデータは、上位コンピュータ9において圧延済、加熱炉内の仕掛以降のスラブの情報を抽出し、そのRC区分に基づいて作成され、上位システムから読み込む。
【0039】
立案する加熱炉装入計画は、圧延制約データによって与えられたRC区分毎の圧延可能な範囲内で圧延出来るように作成する。
【0040】
以下、図9に示す各項目についてその内容を記載する。
【0041】
・RC区分
ロールチャンス区分を示すデータ。
【0042】
・開始位置
該当するロールチャンス区分の圧延可能開始位置。
【0043】
・終了位置
該当するロールチャンス区分の圧延可能終了位置。
【0044】
次に、前記読み込んだスラブデータをグルーピングする。スラブデータをグルーピングすることにより、効率的に初期装入順の作成を行うことが出来る。グルーピングの一例を図10に示す。図10に示す例は、スラブを、まず、スラブサイズで3種類にグルーピングし、それぞれを、さらにRC区分毎にグルーピングし、さらに圧延種別でグルーピングを行った場合である。グルーピングの結果、図11に示すデータが作成される。グループ区分コード内には、各グループに対応したコードが記されている。この例では、図12に示すように、スラブサイズ、RC区分、圧延種別の組み合わせに応じたコードを作成し、各グループに対応したコードとした。
【0045】
〔小圧延グループ作成ステップ(S12)〕
本S12では、上記S11でグルーピングされたスラブデータ(図11参照)を組み合わせて小圧延グループを作成する。この段階で、ある程度圧延効率を考慮できるため、装入順改善ステップ(S2)(装入順改善手段12)で効率的な改善を行えるような、初期装入順が作成できる。
【0046】
組み合わせは、例えば、以下に示すロジックで決定することができる。
(1)同じスラブサイズのスラブを組み合わせる。
(2)同じRC区分のスラブを組み合わせる。同じRC区分のスラブの組み合わせが不可能であれば、混在可能なRC区分のスラブを組み合わせる。
(3)リフト材1,2,3にはそれぞれ図8に示した追い越し材の本数に応じた、追い越し材を組み合わせる。
(4)ダブル圧延材はダブル圧延材同士を組み合わせる。
(5)組み合わせるべきスラブがなくなってしまった場合は、それぞれのスラブ1枚を小圧延グループとみなす。
【0047】
以上のロジックに基づいて、小圧延グループを作成した一例を図13に示す。図中のスラブを示す四角において、色の濃い部分は圧延過程、白い部分は冷却過程を示し、横方向の長さはそれぞれの時間を図示している(以下同様)。
【0048】
図13(a)は、スラブサイズAのRC区分0のグループに関して、圧延種別毎にグループ化が完了した状態を示している。
【0049】
図13(b)は、上記ロジックの(3)に基づいて圧延種別グループaからスラブを1本取り出し、圧延種別グループeからスラブを5本取り出した状態を示している。次に、取り出した(イ)から(ヘ)のスラブの圧延順を作成する。
【0050】
図13(c)は、スラブ(イ)の圧延開始時刻を0として、スラブ(イ)から(ヘ)までの圧延順を作成した例である。この例では、スラブ(イ)の冷却過程の時間内にスラブ(ロ)から(ヘ)のスラブが追い越す圧延順であるが、図13(d)に示すように、スラブ(イ)から(ヘ)のスラブを単純に並べたものであっても構わない。以上のように作成した、圧延順の集合を図13(e)に示すように、小圧延グループするとする。図中点線内が小圧延グループである。
【0051】
図14(a)には、ダブル圧延材の小圧延グループの一例、図14(b)にはリフト材が無い場合の追い越し材の小圧延グループの一例を示す。
【0052】
図15には、スラブサイズAのRC区分0のグループにおいて、小圧延グループの作成が完了した状態を図示している。
【0053】
図16には、小圧延グループの作成完了後のデータ出力例を示す。図7のスラブデータに以下の項目が追加されている。
【0054】
・小圧延グループ番号
小圧延グループの識別番号である。
【0055】
・小圧延グループ内圧延開始順
小圧延グループ内での圧延開始順である。
【0056】
〔圧延順作成ステップ(S13)〕
本S13では、上記S12で作成された小圧延グループに対し、S11で読み込まれた、RC区分毎に圧延可能な位置の範囲を記述した圧延制約データ(図9参照)に従い、小圧延グループを並べることで圧延順を作成する。図17に圧延順に並べた一例を示す。図17において、AはRC区分別の圧延可能範囲を図示したもので、BはAの圧延可能範囲に基づいて並べられた小圧延グループを示している。また、点線で囲まれたものが個々の小圧延グループを示しており、小圧延グループ内のスラブは圧延開始順に並んでいる。図18に、圧延順作成完了後のデータ出力例を示す。図7のスラブデータに以下の項目が追加されている。
【0057】
・圧延開始順
圧延開始順の番号である。
【0058】
〔装入順作成ステップ(S14)〕
本S14では、上記S13で作成した圧延順に基づいて、スラブの加熱炉への装入順を作成する。以下、図19を用いて、加熱炉が1号炉、2号炉の2基の場合について、それぞれの加熱炉へのスラブの割り振り方法の一例について説明する。なお、それぞれの炉は、スラブを2列で装入できるように構成されている。
(1)まず、図19(a)に示すように、上記S13で作成した圧延順に基づきスラブを圧延順に並べる。図10(a)においてAで示したものはスラブで、中の番号は圧延順を示している。
(2)次に、上記(1)で並べたスラブについて、圧延順の先頭から、1つスラブを選択し、その選択したスラブの在炉時間と、その選択したスラブより圧延順が遅いスラブの在炉時間とを比較して、圧延順が遅いスラブの中で最も在炉時間が近いスラブを抽出してペアとする。ここで、前記加熱炉での在炉時間は、上述の図3に示す時間(抽出時の目標温度になるまでに必要な加熱時間)を用いることができる。図19(b)において、Aは作成されたペアを図示したもので、Bは作成されたペアの順序を示している。
(3)次に、上記(2)で作成された、スラブのペアを1号加熱炉(以下、1号炉)、2号加熱炉(以下、2号炉)への割り振りを行う。図19(c)は、スラブのペアを割り振る直前の、それぞれの加熱炉の状態を示したものである。図19(c)のAは、既に装入済み、割り振り済みであることを示し、図19(c)のBは今回、スラブの割り振りが決められる位置を示している。
【0059】
1号炉、2号炉への割り振りは、上記(2)で作成されたスラブのペアについて、作成された順番の先頭から行う。割り振りは、1号炉、2号炉についてそれぞれ、図19(c)のAの部分におけるスラブの在炉時間の合計を計算し、合計値の小さい方に割り振る。合計値が同じ場合は、和が同じ場合は1号炉に割り振る。
【0060】
上記(1)〜(3)により、それぞれの加熱炉にスラブが割り振られる。なお、加熱炉が1基の場合には上記(2)で作成したペアをその順番に加熱炉に割り振ればよく、加熱炉が3基以上の場合には、上記(3)において、全ての加熱炉に関して在炉時間の和を比較して、同様に割り振ればよい。図20に、作成された初期装入順データの一例を示す。初期装入順データは、図18の圧延順データに、以下の項目が付加されたものである。
【0061】
・加熱炉番号
スラブが装入される加熱炉の番号である。
【0062】
・加熱炉装入順
スラブが加熱炉に装入される順序番号である。
【0063】
上記初期装入順作成ステップ(S1)により作成された圧延順及び加熱炉への装入順を初期解(初期装入順)として以下のステップを実施する。
【0064】
[装入順改善ステップ(S2)]
本ステップ(S2)では、上記初期装入順作成ステップ(S1)により作成された圧延順データに対し、任意のスラブの位置を移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えて、圧延順と加熱炉装入順を作成し、総圧延時間および加熱炉抽出待ち時間(加熱炉の滞留時間)の評価を含んだ目的関数の算出を行い、該算出された目的関数の数値が改善されている場合には、前記移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えを行った圧延順と加熱炉装入順に変更し、さらに、他のスラブに対して同様の移動もしくは他の任意のスラブとの入れ替えを行い、前記目的関数の改善を繰り返すことで、総圧延時間のより短い圧延順および加熱炉抽出待ち時間(加熱炉の滞留時間)のより少ない加熱炉装入順を決定する。
【0065】
ここで、本ステップ(S2)において、前記目的関数は、下式(1)により算出することができる。
目的関数=A×総圧延時間 + B×スラブ抽出待ち時間和 + C×加熱炉間の終了時刻差 + ボーナス関数 + ペナルティ関数 ・・・(1)
この目的関数は式(1)に示すように、総圧延時間、スラブ抽出待ち時間の和、加熱炉間の終了時刻差の最小化を目指すものとして構成している。さらに、ボーナス関数は、例えば、追い越し圧延の実現、同種RC区分のスラブを集める事により目的関数が向上する方向に向かうような重み関数であり、ペナルティ関数は制約条件の満足度を定量的に評価し目的関数に加算するものである。最終的にはペナルティ関数がゼロとなる解を採用する。
【0066】
ここで、前記A,B,Cは重み係数を表す。なお、A,B,Cの数値をいくつにするかは、どの項目を優先して評価するかにより適宜設定すればよい。なお、通常は総圧延時間を優先して評価することが好ましく、前記A,B,Cの重み係数の一例としては、A=0.7、B=0.2、C=0.1程度とすることが好ましい。
【0067】
式(1)の総圧延時間は、前記小圧延グループ毎の圧延時間の和で表される値であり、具体的には、前記初期装入順作成ステップ(S1)での圧延順作成ステップ(S13)で作成された圧延順において、最初の小圧延グループが圧延を開始した時点から、最後の小圧延グループが圧延を終了した時点までの所要時間を指す。
【0068】
式(1)のスラブ抽出待ち時間和は、同炉同列単位での抽出待ち時間の和で表される値である。
【0069】
式(1)の加熱炉間の終了時刻差は、加熱炉が2基の場合は、以下の式(2)で表される値となる。
加熱炉間の終了時刻差=|1号炉抽出終了時刻−2号炉抽出終了時刻| ・・・(2)
なお、加熱炉が3基の場合は、以下の式(2−1)で表される値となる。
Δ1=|1号炉抽出終了時刻 − 2号炉抽出終了時刻|
Δ2=|1号炉抽出終了時刻 − 3号炉抽出終了時刻|
Δ3=|2号炉抽出終了時刻 − 3号炉抽出終了時刻|
加熱炉間の終了時刻差=Δ1+Δ2+Δ3 ・・・(2−1)
なお、4基以上の場合も、全ての加熱炉の組み合わせについての差の和をとることで同様に行うことが可能である。
【0070】
また、式(1)のボーナス関数は、次式(3)で表すことができる。
ボーナス関数= −a×追い越し圧延実現ボーナス + b×RC区分集約ボーナス + c×スラブサイズ集約ボーナス + d×圧延幅平準化ボーナス + f×在炉時間平準化ボーナス + g×同山集約ボーナス + h×加熱炉装入時刻遵守ボーナス ・・・(3)
ここで、a,b,c,d,e,f,g,hは重み係数を表す。
【0071】
式(3)の追い越し圧延実現ボーナスは、小圧延グループ内で追い越し圧延を実行できたら、追い越し本数に応じて加点する。このボーナスは値が大きいほうが良い評価となる。
【0072】
式(3)のRC区分集約ボーナスの計算例を図21に示す。図21はスラブを圧延順に並べた様子を示している。図中のAはスラブを表し、Bは該当スラブのRC区分を、Cは圧延順を示した番号である。RC区分集約ボーナス値は隣接するスラブとRC区分の比較を行い、異なるRC区分の場合は異なり具合に応じて評価値を算出する。番号1のスラブはRC区分0で、番号1に隣接する番号2のスラブのRC区分は2であるため、図22に示したボーナス値の例より、その値は20となる。以降、同様な計算を行い、それぞれを合計した値を式(3)におけるRC区分集約ボーナスの値とする。このRC区分集約ボーナスは、値が小さいほうが良い評価となる。
【0073】
式(3)のスラブサイズ集約ボーナスの計算例を図23に示す。図23は装入時のスラブのペアを加熱炉からの抽出順に並べた様子を示している。図中のaはスラブのペアを示し、bはそれぞれのスラブのスラブサイズを示し、cは抽出順を示した番号である。スラブサイズ集約ボーナス値は、ペア同士のスラブサイズの比較を行い、異なるスラブサイズの場合は、異なり具合に応じてボーナス値を算出する。抽出順1のペアのスラブは、スラブサイズがAとCであるため、図24に示したボーナス値の例より、その値は20となる。以降、同様な計算を行い、それぞれを合計した値を式(3)におけるスラブサイズ集約ボーナスの値とする。このスラブサイズ集約ボーナスは、値が小さいほうが良い評価となる。
【0074】
式(3)の圧延幅平準化ボーナスの計算例を図25に示す。図25はスラブを圧延順に並べた様子を示している。図中のAはスラブを表し、Bは該当スラブの圧延幅を、Cは圧延順を示した番号である。圧延幅平準化ボーナス値は隣接するスラブとの圧延幅の差の絶対値を計算し、その値に応じた評価値を算出する。圧延順1のスラブは圧延幅3000で、圧延順1のスラブに隣接する圧延順2のスラブの圧延幅は2000であるため、その差の絶対値は1000となる。図26に示したボーナス値の例より、圧延幅平準化ボーナス値は100となる。以降、同様な計算を行い、それぞれを合計した値を式(3)における圧延幅平準化ボーナス値の値とする。この圧延幅平準化ボーナスは、値が小さいほうが良い評価となる。
【0075】
式(3)の在炉時間平準化ボーナスの計算例を図27に示す。図27は装入時のスラブのペアを加熱炉からの抽出順に並べた様子を示している。図中のAはスラブのペアを示し、Bはそれぞれのスラブの在炉時間(例えば、単位は分)を示し、Cはスラブのペアの在炉時間の合計を示し、Dは抽出順を示した番号である。在炉時間平準化ボーナス値は前後のスラブのペアの在炉時間の差の絶対値を計算し、その値に応じてボーナス値を算出する。抽出順1のペアの在炉時間の合計は200で、抽出順2のペアの在炉時間の合計は250であるため、その差の絶対値は50となる。図28に示したボーナス値の例より、在炉時間平準化ボーナス値は10となる。以降、同様な計算を行い、それぞれを合計した値を式(3)における在炉時間平準化ボーナス値とする。この在炉時間平準化ボーナスは、値が小さいほうが良い評価となる。
【0076】
式(3)の同山集約ボーナスの計算例を図29に示す。図29はスラブを加熱炉への装入順に並べた様子を示している。図中のAはスラブを表し、Bはそれぞれのスラブが積まれている山番号を示し、Cは加熱炉への装入順を示した番号である。隣接するスラブのスラブヤードでの山番号の比較を行い、山番号が異なっている場合は評価値、例えば10を加算する。装入順1の山番号はC11で装入順2の山番号はC12のため、同山集約ボーナス値は10となる。以降、同様な計算を行い、それぞれを合計した値を式(3)における同山集約ボーナス値とする。この同山集約ボーナスは値が小さいほうが良い評価となる。
【0077】
式(3)の加熱炉装入時刻遵守ボーナスは、スラブ毎に加熱炉装入予定時刻と実際の加熱炉装入時刻との差を計算し、その和を評価値とする。このボーナスは値が小さいほうが良い評価となる。
【0078】
なお、以上のボーナス関数は、評価が高い場合に減点する点数を少なくする方式で評価してもよく、また、評価が高い場合に加点する点数を多くする方式で評価してもよい。
【0079】
また、式(1)のペナルティ関数は、図30にその一例を示すように、RC区分の組み込み基準位置を超えた場合に、その度合いに応じてペナルティを加えることで行われる。図30の場合では、RC区分の組み込み範囲がP〜Pの場合に、その範囲外のP(ここで、P<P)の位置にずれた場合に、下記(4)式で与えられる値をペナルティ値として付加する。
ペナルティ値=D×(P−P ・・・(4)
本ステップ(S2)においては、上式(1)で表される目的関数により、圧延効率の改善の評価を行う。
【0080】
まず、本ステップ(S2)においては、上記初期装入順作成ステップ(S1)により作成された圧延順データに対し、任意のスラブの位置を移動もしくは他の任意のスラブと入れ替えて、圧延順と加熱炉装入順を作成し、総圧延時間および加熱炉抽出待ち時間の評価を含んだ目的関数(式(1))の算出を行う。
【0081】
以下に、前記スラブの入れ替え方法の一例を、図31のフロー図、及び、図32,図33を参照しつつ説明する。ここで、前記入れ替え方法は、以下で説明する手順に限られるものではなく、反復局所探索法(一般的には近傍探索を繰り返す方法)として知られている方法を用いることができる。
【0082】
[S201]
まず、図31のフロー図に示す本S201において、小圧延グループとスラブのランダムな組み合わせを作成する。ここでは、図32に示すように、全てのスラブについて、そのスラブの属していない小圧延グループ全てとの組み合わせを作成し、その組み合わせをランダムな順番に並べる。
【0083】
[S202]
次に、本S202において、スラブの移動、圧延順、加熱炉装入順の再計算を行う。ここでは、図33に示すように、上記S201で作成した組み合わせの順番に基づき、該当するスラブを、組み合わされた小圧延グループに移動する。そして、移動先での小圧延グループ及び移動元での小圧延グループの圧延順変更に伴い、小圧延グループ内での圧延順及び全体の加熱炉装入順の再計算を行う。
【0084】
[S203]
次に、本S203において、上記S202における移動が上述の制約条件を満たしているか否かの判定を行う。ここでは、移動したことで、上述の制約条件を満たさなくなった場合(No)には、S204に進み、移動させたスラブを元に戻して、上記S202に戻り、次の組み合わせで同様の移動操作を試行する。また、スラブの移動が上述の制約条件を満たしている(Yes)と判定された場合には、S205に進む。
【0085】
[S205]
上記S203において、スラブの移動が上述の制約条件を満たしていると判定された場合には、本S205において、目的関数の計算を行う。ここでは、上式(1)で表される目的関数の値を、スラブの移動前と移動後とで算出する。
【0086】
[S206]
次に、本S206において、上記S205において算出されたスラブの移動前と移動後との目的関数の値から、移動後に目的関数が改善されているか否かの判定を行う。移動後に目的関数の値が改善されている、つまり、移動により、より良い値の解が得られた場合(Yes)は、この移動が成功したものとして、次のS207に進む。移動後に目的関数が改善されていない場合(No)は、S208に進む。
【0087】
[S207]
本S207においては、上記S206で、移動により、より良い値の解が得られたと判定された移動に対して、この改善された解を最善解として残し、上記S202に戻り、次の組み合わせで同様の移動操作を試行する。
【0088】
[S208]
本S208においては、上記S206で移動後に目的関数が改善されていないと判定された移動に関して、移動したスラブ以外のスラブを移動する処理を2回行ったか否かの判定を行う。まだ2回行っていない場合(No)には、以下のS209に進む。既に2回行っている場合(Yes)には、S210に進む。
【0089】
[S209]
本S209においては、上記S208で、移動したスラブ以外のスラブの移動をまだ2回行っていないと判定されたものに対して、移動したスラブ以外のスラブを移動させる。ここでの移動は、図34に示すように、移動先の小圧延グループにおいて移動してきたスラブ以外のスラブをランダムに選択して1本ずつ移動元の小圧延グループに移動させることで行う。この移動後の圧延順に関しては、上記S205に戻り、それに続く各ステップを繰り返す。
【0090】
[S210]
本S210においては、上記S208で、移動したスラブ以外のスラブの移動を既に2回行っていると判定されたものに対して、全ての組み合わせについて改善なしか否かの判定を行う。まだ、全ての組み合わせについて評価を行っていない場合(No)には、S204に進み、移動させたスラブを元に戻して、上記S202に戻り、次の組み合わせで同様の移動操作を試行する。全ての組み合わせについて評価を行った場合(Yes)には、S211に進む。
【0091】
「S211]
本S211においては、上記S210において、全ての組み合わせについて評価を行ったと判定された場合に、最善解、つまり、最適加熱炉装入順の出力を行う。ここで、前記最適加熱炉装入順は、上式(1)で表される目的関数において、ペナルティ値がゼロで、最も良い評価のものをいう。
【0092】
なお、全ての“ランダムな順番”で、全て移動処理が不成功となった場合には、上記初期装入順作成ステップ(S1)により作成された初期解がそれ以上改善できる解がない、つまり、最適加熱炉装入順であるとして出力を行う。出力結果の例を図35に示す。初期装入順の出力例(図20参照)に、加熱炉装入予定時刻、加熱炉抽出予定時刻が付加されたものとなる。
【0093】
上記最適加熱炉装入順の出力は、本発明に係る加熱炉装入順決定装置の表示手段等に表示するようにしてもよく、生産管理を行う上位のコンピュータに出力するようにしてもよい。
【0094】
なお、上記S201〜S211の処理においては、スラブの移動の度に小圧延グループ内の圧延順の再計算を行う必要がある。本発明においては、小圧延グループ内の圧延順の再計算が頻発するため、以下に示す方法により、圧延順再計算の高速化を図ることもできる。
【0095】
圧延順再計算の高速化方法の一例を図36により説明する。ここでは、図36(a)に示すように、小圧延グループ(n)にスラブAが移動されてきた場合を考える。
【0096】
まず、図36(b)に示すように、小圧延グループ(n)内でのスラブAの挿入位置を決定する。この決定に際しては、小圧延グループ内のスラブの数に対応する数字の乱数を発生させ、その発生させた数字に対応するスラブの圧延開始後にスラブAを装入するようにする。
【0097】
次に、図36(c)に示すように、決定された装入位置に基づき、小圧延グループ(n)内での圧延位置の再計算を行う。
【0098】
以上により、圧延順の再計算の高速化が可能となる。
【0099】
以上のように、本発明においては、圧延順及び加熱炉装入順の最適化を行うことで、厚板圧延における詳細なパススケジュールに基づき、複数種類のスラブに対して、スラブの在炉時間を満たしつつ無駄な滞留時間を削減し、さらに、圧延の高能率化を可能とすることができる。
【実施例1】
【0100】
本発明に係る加熱炉装入順決定方法を用いて、実操業における実績データに適用してシミュレーションを行なった。なお、本シミュレーションは以下の前提で行なった。
(a)加熱炉内には既に炉内に炉長分のデータが存在しており、その続きからの装入順を作成する。
(b)実績の温調時間はオペレータの手動介入要素(水冷、空冷の選択)があるため、温調時間計算プログラムを用いて計算した空冷温調時間を利用した。
(c)バッチ炉材はシミュレーションデータから除き、連続炉に装入されたデータのみを利用した。
【0101】
表1に、Case1、Case2の2通りの場合について、上記シミュレーションの結果を示す。なお、表1においては、実績を100%として、シミュレーションにより何%となったかの値を示している。
【0102】
【表1】


【0103】
表1に示すように、本発明を用いることにより、圧延時間の短縮を図ることが可能となり、圧延の高能率化が可能となることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る加熱炉装入順決定方法及び加熱炉装入順決定装置が適用される製鋼工場及び厚板工場における物流フローの一例を示す図である。
【図2】本発明に係るロールチャンス区分の分類の一例を示す図である。
【図3】本発明に係るスラブのサイズによって3種類に分類した場合の加熱炉への装入時のスラブ温度と抽出時目標温度にするまでの加熱時間の関係を示す図である。
【図4】本発明に係るロールチャンス区分毎の圧延可能位置の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る加熱炉装入順決定方法の処理フローの一例を示す図である。
【図6】本発明に係る加熱炉装入順決定装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
【図7】本発明に係るスラブ1枚毎の属性データの項目とデータの一例を示す図である。
【図8】本発明に係る圧延種別のデータ構造の一例を示す図である。
【図9】本発明に係るロールチャンス区分毎に設定されたスラブの圧延位置の範囲を記述したデータの一例を示す図である。
【図10】本発明に係る初期装入順作成ステップにおけるグルーピングの一例を示す図である。
【図11】本発明に係る初期装入順作成ステップにおけるグルーピングにより作成されたデータの一例を示す図である。
【図12】本発明に係るスラブサイズ、RC区分、圧延種別の組み合わせに応じたグループ区分コードの対応を示した図である。
【図13】本発明に係る初期装入順作成ステップにおける小圧延グループ作成の一例を示す図である。
【図14】本発明に係る初期装入順作成ステップにおける小圧延グループ作成の他の一例を示す図である。
【図15】本発明に係る初期装入順作成ステップにおける小圧延グループ作成の他の一例を示す図である。
【図16】本発明に係る小圧延グループの作成完了後のデータ出力の一例を示す図である。
【図17】本発明に係る小圧延グループ作成ステップで作成された小圧延グループを圧延制約データに基づいて圧延順を作成する場合の一例を示す図である。
【図18】本発明に係る圧延順作成完了後のデータ出力の一例を示す図である。
【図19】本発明に係る加熱炉が1号炉、2号炉の2基の場合について、それぞれの加熱炉へのスラブの割り振り方法の一例を説明するための説明図である。
【図20】本発明に係る装入順作成ステップで作成された初期装入順データの一例を示す図である。
【図21】本発明に係るロールチャンス区分集約ボーナスの算出方法の一例を説明するための説明図である。
【図22】本発明に係るロールチャンス区分集約ボーナスのボーナス値の一例を示す図である。
【図23】本発明に係るスラブサイズ集約ボーナスの算出方法の一例を説明するための説明図である。
【図24】本発明に係るスラブサイズ集約ボーナスのボーナス値の一例を示す図である。
【図25】本発明に係る圧延幅平準化ボーナスの算出方法の一例を説明するための説明図である。
【図26】本発明に係る圧延幅平準化ボーナスのボーナス値の一例を示す図である。
【図27】本発明に係る在炉時間平準化ボーナスの算出方法の一例を説明するための説明図である。
【図28】本発明に係る在炉時間平準化ボーナスのボーナス値の一例を示す図である。
【図29】本発明に係る同山集約ボーナスの算出方法の一例を説明するための説明図である。
【図30】本発明に係るペナルティ関数の算出方法の一例を説明するための説明図である。
【図31】本発明に係る装入順改善ステップにおけるスラブの入れ替え方法の一例を説明するためのフロー図である。
【図32】本発明に係る装入順改善ステップにおけるスラブの入れ替え方法の一例を説明するための説明図である。
【図33】本発明に係る装入順改善ステップにおけるスラブの入れ替え方法の一例を説明するための説明図である。
【図34】本発明に係る装入順改善ステップにおける移動後の目的関数の値が移動前に比べて改善されていない場合のスラブの入れ替え方法の一例を説明するための説明図である。
【図35】本発明に係る装入順改善ステップで作成された最適加熱炉装入順出力結果の一例を示す図である。
【図36】本発明に係る圧延順再計算の高速化方法の一例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0105】
1 連続鋳造機
2 スラブ
3 トレーラ
4 スラブヤード
5 加熱炉
6 圧延機
61 圧延ロール
9 上位コンピュータ
10 加熱炉装入順決定装置
11 初期装入順作成手段
12 装入順改善手段
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成19年4月27日(2007.4.27)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎

【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘


【公開番号】 特開2008−80395(P2008−80395A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2007−118572(P2007−118572)