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【発明の名称】 熱延鋼帯の製造方法及び製造設備
【発明者】 【氏名】青江 信一郎

【氏名】小林 正樹

【氏名】林 宏優

【氏名】湯浅 大二郎

【氏名】富山 政治

【要約】 【課題】ランナウトテーブル上で熱延鋼帯を安定走行させ、パスライン上方への過剰な変位やこれに起因した先端折れ、尾端折れなどの発生を防止する。

【解決手段】ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯の上方に、流体噴流をパスライン(但し、ランナウトテーブルの鋼帯搬送面)上を通板する熱延鋼帯面と接することなく熱延鋼帯の上方を通過するように噴射し、前記パスラインから所定レベルを超えて上方に変位した鋼帯部分を前記流体噴流に衝突させ、この鋼帯部分の変位を矯正する。流体噴流は正常に通板している熱延鋼帯に接触することなく、その上方を完全に通過するため、流体噴射そのものによるの鋼帯部分の変位も適切に防止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延機で圧延して得られた熱延鋼帯をランナウトテーブルで搬送した後、コイラーに巻き取る熱延鋼帯の製造方法において、
前記ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯の上方に、流体噴流をパスライン(但し、ランナウトテーブルの鋼帯搬送面)上を通板する熱延鋼帯面と接することなく熱延鋼帯の上方を通過するように噴射し、前記パスラインから所定レベルを超えて上方に変位した鋼帯部分を前記流体噴流に衝突させ、当該鋼帯部分の変位を矯正することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【請求項2】
熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の中心線のパスラインからの高さを50〜450mmとすることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項3】
熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の中心線のパスラインからの高さを50mm以上、200mm未満とすることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項4】
熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の下記(1)式で定義されるライン方向推進力Fが10〜50kgfであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
=[ρA(vcos(π×α/180)−u)]/9.8 …(1)
但し ρ:流体噴流を構成する流体の密度(kg/m
A:流体噴射ノズルのノズル口断面積(m
v:流体噴流の速度(m/sec)
u:熱延鋼帯の通板速度(m/sec)
α:流体噴流の噴射方向の鋼帯通板方向に対する角度(°)
【請求項5】
流体噴流を、鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項6】
熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流のパスライン長手方向速度成分を、熱延鋼帯の通板速度よりも大きくすることを特徴とする請求項5に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項7】
熱延鋼帯の先端側部分の上方を通過中の流体噴流のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯の通板速度よりも大きくし、熱延鋼帯の尾端側部分の上方を通過中の流体噴流のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯の通板速度よりも小さくすることを特徴とする請求項5に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項8】
流体噴流を、反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項9】
熱延鋼帯の先端側部分に対しては、流体噴流を鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射し、熱延鋼帯の尾端側部分に対しては、流体噴流を反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項10】
ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいた複数箇所で流体噴流の噴射を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項11】
ランナウトテーブル長手方向における流体噴流の噴射位置の間隔が5〜15mであることを特徴とする請求項10に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項12】
流体噴流の噴射方向の鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向に対する角度αを0°<α<90°とすることにより、流体噴流を熱延鋼帯全幅の上方を通過させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項13】
ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいた複数箇所で流体噴流の噴射を行うとともに、熱延鋼帯全幅の上方を通過する流体噴流の軌跡を熱延鋼帯面上に平面投影した仮想の噴流通過線xのうち、パスライン長手方向で隣接する噴流通過線x,xの端部どうしを、パスライン長手方向位置で一致させるか若しくは重複させることを特徴とする請求項12に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項14】
ランナウトテーブル幅方向両側から流体噴流の噴射を行うとともに、ランナウトテーブルを挟んで対向した位置(但し、ランナウトテーブルを中心として非対称の位置を含む)から噴射され、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の下記(2)式で定義される幅方向推進力Fが略等しくなるよう、流体噴流の噴射を行うことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
=[ρA(vsin(π×α/180))]/9.8 …(2)
但し ρ:流体噴流を構成する流体の密度(kg/m
A:流体噴射ノズルのノズル口断面積(m
v:流体噴流の速度(m/sec)
α:流体噴流の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度(°)
【請求項15】
流体噴流を、熱延鋼帯の上方をパスライン長手方向に沿って通過させるとともに、該流体噴流の噴射方向前方の熱延鋼帯上方位置で流体噴流を回収することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項16】
流体噴流の噴射方向が水平面に対して上方側又は下方側に傾きを有し、該流体噴流の噴射方向の水平面に対する傾き角βが10°以下であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項17】
ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯に対して上方から冷却水を供給して熱延鋼帯の冷却を行う熱延鋼帯の製造方法であって、
前記冷却水から流体噴流を遮蔽するための遮蔽体を、前記流体噴流の上方に配することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項18】
遮蔽体が、流体噴流の上方に配置される遮蔽部材であることを特徴とする請求項17に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項19】
遮蔽体が、流体噴流の上方を該流体噴流と略平行に流れる遮蔽用流体噴流であることを特徴とする請求項17に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項20】
熱間圧延機群と、該熱間圧延機群の出側に設けられる熱延鋼帯搬送用のランナウトテーブルと、該ランナウトテーブルで搬送された熱延鋼帯を巻き取るコイラーとを備えた熱延鋼帯の製造設備において、
流体噴流を、前記ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯の上方に、パスライン(但し、ランナウトテーブルの鋼帯搬送面)上を通板する熱延鋼帯面と接することなく熱延鋼帯の上方を通過するように噴射することができる流体噴射ノズルを、ランナウトテーブルの側方又は上方に備え、且つ該流体噴射ノズルのノズル口中心のパスラインからの高さを50〜450mmとしたことを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
【請求項21】
流体噴射ノズルのノズル口中心のパスラインからの高さを50mm以上、200mm未満としたことを特徴とする請求項20に記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項22】
流体噴射ノズルの流体噴射方向の鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°であることを特徴とする請求項20又は21に記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項23】
流体噴射ノズルの流体噴射方向の反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°であることを特徴とする請求項20又は21に記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項24】
流体噴射方向の鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°である流体噴射ノズルと、流体噴射方向の反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°である流体噴射ノズルを備えること特徴とする請求項20又は21に記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項25】
ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズルを設けることを特徴とする請求項20〜24のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項26】
ランナウトテーブル長手方向における流体噴射ノズルの設置間隔が5〜15mであることを特徴とする請求項25に記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項27】
流体噴射ノズルの流体噴射方向の鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向に対する角度αが0°<α<90°であり、流体噴射ノズルから噴射される流体噴流が熱延鋼帯全幅の上方を通過するようにしたことを特徴とする請求項20〜26のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項28】
ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴流ノズルを設けるとともに、該複数の流体噴流ノズルの間隔と流体噴射方向を、各流体噴流ノズルから噴射されて熱延鋼帯全幅の上方を通過する流体噴流の軌跡を熱延鋼帯面上に平面投影した仮想の噴流通過線xのうち、パスライン長手方向で隣接する噴流通過線x,xの端部どうしが、パスライン長手方向位置で一致するか若しくは重複するよう、設定することを特徴とする請求項27に記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項29】
流体噴射ノズルを、噴射された流体噴流が熱延鋼帯の上方をパスライン長手方向に沿って通過するよう、パスラインの上方に設けるとともに、前記流体噴流の噴射方向前方のパスライン上方位置に、流体噴流を回収するための回収手段を設けたことを特徴とする請求項20〜26のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項30】
流体噴流ノズルの流体噴射方向が水平面に対して上方側又は下方側に傾きを有し、該流体噴射方向の水平面に対する傾き角βが10°以下であることを特徴とする請求項20〜29のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項31】
ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯に対して上方から冷却水を供給する冷却装置を有する熱延鋼帯の製造設備であって、
流体噴射ノズルから噴射された流体噴流を前記冷却水から遮蔽するための遮蔽部材を、ランナウトテーブル上方に設けたことを特徴とする請求項20〜30のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造設備。
【請求項32】
ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯に対して上方から冷却水を供給する冷却装置を有する熱延鋼帯の製造設備であって、
流体噴射ノズルから噴射された流体噴流を前記冷却水から遮蔽するための遮蔽用流体噴流を、前記流体噴流の上方に略平行に噴射するための遮蔽用流体噴射ノズルを有することを特徴とする請求項20〜30のいずれかに記載の熱延鋼帯の製造設備。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延ラインにおける熱延鋼帯の製造方法及び製造設備に関するもので、その製造方法は、熱間圧延機で圧延して得られた熱延鋼帯をランナウトテーブルで搬送した後、コイラーに巻き取る工程を有する。
【背景技術】
【0002】
熱延鋼帯を製造するための一般的な熱間圧延ラインでは、素材鋼を粗圧延機及び仕上圧延機からなる熱間圧延機群で圧延して熱延鋼帯とし、この熱延鋼帯を複数のテーブルロールにより構成されるランナウトテーブル上を通板させつつ冷却水で冷却した後、コイラーで巻き取ることにより熱延鋼帯コイルが得られる。
【0003】
この熱間圧延ラインでは、熱延鋼帯の先端が熱間圧延機群を抜けてコイラーに巻き付くまでの間、熱延鋼帯は無張力の不安定な状態でランナウトテーブル上を通板するので、図32の(i)に示すように鋼帯先端部がランナウトテーブル50(パスライン)上から浮き上がる所謂バウンド51aが発生しやすく、このバウンド51aが過度に大きくなると、図32の(ii)に示すように鋼帯先端部が反鋼帯通板方向に折れ曲がる現象、所謂先端折れ52aが発生してしまう。
【0004】
また、同じく熱延鋼帯の先端部側が無張力でランナウトテーブル50上を通板する際、何らかの原因(例えば、上方から供給される冷却水による影響)で下流側の鋼帯通板速度が上流側の鋼帯通板速度よりも遅くなったような場合、図33の(i)に示すような熱延鋼帯が波打つ所謂ループ53aが発生し、このループ53aが大きく成長してしまうと、図33の(ii)に示すようにその部分が反鋼帯通板方向に折れ曲がる現象、所謂腰折れ54aが発生してしまう。
【0005】
また、熱延鋼帯の先端部がコイラーに巻き付いた後、熱延鋼帯の尾端部が熱間圧延機群を抜けるまでの間は、熱延鋼帯は張力が付与された状態でランナウトテーブル上を通板するため、上記ループのような非定常的な変位を生じる恐れはない。しかし、熱延鋼帯の尾端部が熱間圧延機群を抜けると、熱延鋼帯は再び無張力の不安定な状態でランナウトテーブル上を通板することになり、図34の(i)に示すように鋼帯尾端部が波打つように上下動するバウンド51bが発生し、このバウンド51bが過度に大きくなると、図34の(ii)に示すような鋼帯尾端部が鋼帯通板方向に折れ曲がる現象、所謂尾端折れ52bが発生してしまう。さらに、先に述べた鋼帯先端部側で発生するループと同様に、何らかの原因で下流側の鋼帯通板速度が上流側の鋼帯通板速度よりも遅くなると、鋼帯尾端側においても図35の(i)に示すようなループ53bが形成され、このループ53bが大きく成長すると図35の(ii)に示すような腰折れ54bが発生してしまう。
【0006】
近年、熱延鋼帯はユーザ側からの要求などもあって益々薄板化する傾向にあり、また、生産性を確保するためライン速度は高速化する傾向にあるが、上述したようなランナウトテーブル上でのバウンドやループなどの熱延鋼帯の非定常的な変位(不安定現象)は、熱延鋼帯の板厚が薄いほど、また、ライン速度が大きいほど生じやすい。
熱延鋼帯の先端部側において上記のようなバウンド51aや先端折れ52aが発生すると、熱延鋼帯先端部がコイラー手前のピンチロール間に進入できず、コイラーによる熱延鋼帯の巻取りが不可能になるだけでなく、バウンド51aや先端折れ52aを生じた鋼帯部分が衝突した際の衝撃により、ピンチロール及びコイラーを含む周辺の機器類が破損するおそれもある。また、仮にコイラーによる熱延鋼帯の巻取りが行えたとしても、次工程において巻取りに不備を生じた鋼帯部分、すなわち先端折れ52aやきず欠陥部分等を切断除去する必要があるため、製品の歩留りが著しく低下する。
【0007】
また、熱延鋼帯の尾端部側においてバウンド51bや尾端折れ52bが発生すると、その影響でコイラーにおいて尾端部をきれいに巻き取ることが困難になる。また、そのバウンド51bや尾端折れ52bの程度(板のバタツキの程度)によっては、ランナウトテーブルの構成設備が損傷を受けるおそれもあり、さらにそのような場合に発生した熱延鋼帯の破片等が熱延鋼帯上に落下することにより、きず欠陥を発生させる原因となる場合もある。その場合、コイラーによる熱延鋼帯の巻取りが行えたとしても、次工程において巻取りに不備を生じた鋼帯部分、すなわち尾端折れ52bやきず欠陥部分等を切断除去する必要があるため、製品の歩留りが低下することになる。
【0008】
また、熱延鋼帯の先端側部分や尾端側部分にループ53a、53bや腰折れ54a、54bが発生した場合も、上記バウンド51a、51bや先端折れ52a、尾端折れ52bが生じた場合と同じく鋼帯の巻き取りに支障をきたしたり、機器類の損傷を招くおそれがあるとともに、ランナウトテーブル上での冷却水による冷却が熱延鋼帯長手方向で一様でなくなるため、熱延鋼帯の材質にムラが生じる。その結果、腰折れ54a、54bの部分や品質ムラを生じた鋼帯部分等を切断除去する必要があるため、製品の歩留りが著しく低下する。
【0009】
以上のように、熱延鋼帯の製造においては、ランナウトテーブル上を通板中の熱延鋼帯の非定常的な変位(通板上の不安定現象)を抑えて鋼帯を安定な状態で通板させることが、熱延鋼帯の生産性と品質を確保する面で非常に重要な課題であると言える。
ここで、上記のような鋼帯の非定常的な変位(通板上の不安定現象)はライン速度を小さくすることによりある程度抑えることができるが、ライン速度を低下させることは、熱延鋼帯の生産性の低下を招くとともに、仕上温度を確保できなくなるなど鋼帯の品質確保の面でも支障が生じるため、採用しがたい。
従来、熱延鋼帯のランナウトテーブル上での通板安定性を確保するために、以下のような提案がなされている。
【0010】
(1)ランナウトテーブル上を通板する熱延鋼帯の先端部に、ノズルから気体や液体などの水平流または斜向流を吹き付け、この流体の吹き付けにより熱延鋼帯先端部のバウンド(浮き上がり)を抑え付ける方法(特許文献1)
(2)ランナウトテーブルの上流側において、ランナウトテーブル上を通板する熱延鋼帯面に対して、斜め上方からスプレー装置により水を直接噴射し、且つその噴射水の鋼帯通板方向の速度成分を熱延鋼帯の通板速度以上にして熱延鋼帯に推進力を作用させることにより、熱延鋼帯先端部のバウンド(浮き上がり)やループの発生を抑える方法(特許文献2)
【0011】
(3)ランナウトテーブル上を熱延鋼帯の先端部が通過する際に、ランナウトテーブルサイドの噴射装置から鋼帯通板方向に対して5〜30°程度の傾きをもった方向に向けて水を水平に噴射し、熱延鋼帯先端部の先端折れを生じるようなバウンド(浮き上がり)を抑える方法(特許文献3)
(4)ランナウトテーブル上を熱延鋼帯の尾端部が通板する際に、鋼帯通板方向と逆方向に向けて高圧水を鋼帯面に直接噴射することにより、尾端部でのループの発生を抑える方法(特許文献4,5)
【特許文献1】特公昭52−30137号公報
【特許文献2】特開平10−118709号公報
【特許文献3】特開2001−340911号公報
【特許文献4】特開平11−267732号公報
【特許文献5】特開2002−192214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、本発明者らが検討したところによれば、上記従来技術の方法には以下のような問題があることが判った。
(イ)上記従来技術のうち特許文献2,4,5の方法は、ランナウトテーブルのパスライン上を通板する熱延鋼帯面に対して斜め上方から直接水などの流体を吹き付けるものであり、また、特許文献1において鋼帯面に斜向流を吹き付ける場合も同様である。しかし、これら従来技術のように斜め上方からパスライン上の鋼帯面に対して直接流体を吹き付けた場合、流体は鉛直方向の速度成分を有しているため、ランナウトテーブルのパスライン上を正常に通板している熱延鋼帯に対して鉛直方向への衝突力を与えてしまう。この衝突力は図36の(i)に示すように、ランナウトテーブル50の隣接するテーブルロール間に鋼帯を押し込むように作用し、この結果、図36の(ii)に示すような鋼帯先端部の跳ね上がり55(バウンド)が発生し、最終的には図32の(ii)と同様の先端折れ52aに至ることが判った。また、このような跳ね上がり55(バウンド)は鋼帯尾端部においても同様に生じ、最終的には図34の(ii)と同様の尾端折れ52bに至ることが判った。さらには、流体の鉛直方向の速度成分によって鋼帯がテーブルロール間に押し込まれる作用は、鋼帯先端側部分や尾端側部分においてループを生じさせる原因となり、最終的に図33の(ii)や図35の(ii)と同様の腰折れ54a、54bに至る場合があることも判った。
【0013】
さらに、図32の(i)に示すような鋼帯先端部のバウンド51aの抑制作用についても、例えば、図37の(i)に示すように、比較的小さいバウンド51aに対して流体が当たった場合にはこれを解消できる可能性はあるものの、図37の(ii)に示すように既に大きく成長しているバウンド51aに対して流体が当たった場合には、バウンド51aを抑制しきれず、そのまま先端折れ52aに至る可能性が高いことが判った。また、図34の(i)に示すような鋼帯尾端部のバウンド51bや、図33の(i)及び図35の(i)に示すような鋼帯先端側部分や尾端側部分において生じるループ53a、53bに対して流体が当たった場合も同様の問題があり、後端折れ52aや腰折れ54a、54bに至る可能性が高いことが判った。
【0014】
(ロ)上記従来技術のうち特許文献3は鋼帯先端部に水平に流体を吹き付ける方法であり、また、特許文献1において水平流を吹き付ける場合も同様である。当初、本発明者らにおいても、これらの方法によれば上記(イ)で述べたような流体を斜め上方から鋼帯面に直接吹き付けることによる問題は生じないものと考えられた。しかし、その後の検討により、これらの従来技術においても、上記(イ)で述べたような問題と実質的に同じような問題を生じることが判明した。
【0015】
すなわち、これら従来技術の方法は、バウンドを生じた鋼帯先端部に対して水平に流体を吹き付けることによりバウンドを押さえ付けることを狙いとしているが、実際にはバウンドを生じた鋼帯先端部が通板する時だけその部分を狙って流体の噴射を行うということは不可能であり、当然のことながら、鋼帯がパスライン上を正常に通板している間も流体の噴射が行われることになるが、この場合、噴射された後、速度が減衰した流体の一部または全部がパスライン上を正常に通板している鋼帯面に落下してしまう。そして、このような鋼帯面に落下した流体は、当然にして熱延鋼帯に鉛直方向への衝突力を与えることになるため、実質的に上記(イ)で述べたと同様の問題を生じることが判明した。ここで、特許文献3には、流体が水平に噴射されるため鋼帯面に当たることがなく、このため鋼帯先端部がテーブルロール間にもぐり込む恐れがないと記載され、特許文献2のように斜め上方から流体を鋼帯面に直接噴射する方法との作用効果の違いが述べられているが、このように流体を鋼帯面に直接噴射しない特許文献3の方法においても、上記のような問題が生じることが判明したものである。
【0016】
本発明者らは、このような問題を回避するためにはビーム状の流体噴流が熱延鋼帯上方を完全に通過し切るように流体噴射を行うことが不可欠であることを見出し(この知見事実については後に詳述する)、本発明を完成させたものであるが、上記従来技術にはそのような知見事実や方法を示唆するような記載はない。すなわち、特許文献1に記載された技術は、上記(イ)で述べたような鋼帯面に斜め上方から直接流体を吹き付ける方法を含んでおり、また、同文献に記載されている流体吹き付けによる作用効果は、流体吹き付けによって鋼帯通板方向で気流を生じさせ、この気流によって鋼帯先端部の浮上がり(バウンド)を防止するというものにすぎない。したがって、この特許文献1には、ビーム状の流体噴流が熱延鋼帯上方を完全に通過するように流体噴射を行うという技術思想は全くない。また、特許文献3に記載された技術は、上述したような流体を水平に噴射することによる作用効果が記載されているが、その図1においてコーンスプレーによる水の噴射が行われている事実が示すとおり、この特許文献3にもビーム状の流体噴流が熱延鋼帯上方を完全に通過するように流体噴射を行うという技術思想は全くない。
【0017】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、ランナウトテーブル上を通板する熱延鋼帯のパスライン上方への過剰な変位(バウンド、ループなど)を流体噴射を利用して効果的に抑制し、これらを原因とする熱延鋼帯の先端折れ、尾端折れ、腰折れの発生を確実に防止するとともに、流体噴射そのものによるパスライン上方への鋼帯部分の変位も適切に防止し、これらによりランナウトテーブル上での熱延鋼帯の安定通板を確実に実現することができる熱延鋼帯の製造方法及び製造設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、先に述べたような従来技術の問題に鑑み、ランナウトテーブル上を通板する熱延鋼帯のパスライン上方への過剰な変位を流体噴射を利用して効果的に抑制する方法について検討を行い、その結果、以下のような知見を得た。
(A)流体噴射を利用してランナウトテーブル上で熱延鋼帯を安定通板させるためには、ビーム状の流体噴流を、パスライン上を正常に通板する熱延鋼帯面と接触させることなく熱延鋼帯の上方を完全に通過するように噴射することが不可欠であり、これにより熱延鋼帯のパスライン上方への過剰な変位(バウンド、ループなど)を効果的に抑制できるとともに、流体噴射そのものによるパスライン上方への鋼帯部分の変位も適切に防止することができる。
【0019】
(B)鋼帯のパスライン上方への過剰な変位(バウンド、ループなど)を特に効果的に抑制するという観点からは、上記(A)のビーム状の流体噴流が鋼帯上方を通過する際のパスラインからの高さを最適化する必要がある。すなわち、鋼帯上方を通過する流体噴流のパスラインからの高さが高すぎると、パスライン上方に変位した鋼帯部分が流体噴流と実質的に衝突できないため、流体噴流の作用が鋼帯の変位に対してほとんど無効となる。また、流体噴流のパスラインからの高さが、変位した鋼帯部分が衝突できる程度の高さである場合でも、その変位した鋼帯部分が流体噴流の下面に張り付いてしまう現象が起きることがあり、このような現象が生じると、通板の安定性が損なわれるとともに、先端折れ、尾端折れ、腰折れなどの原因となる場合がある。一方、鋼帯上方を通過する流体噴流のパスラインからの高さが低すぎると、正常に通板している鋼帯(矯正の必要がない小さい変位を生じている鋼帯を含む)に流体噴流の衝突力が及ぼされ、却って安定通板が阻害されてしまう。
【0020】
(C)上記(B)の点と同様に、鋼帯のパスライン上方への過剰な変位(バウンド、ループなど)を特に効果的に抑制するという観点からは、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流のパスライン長手方向での推進力(衝突力)を最適化する必要がある。すなわち、この推進力が大きすぎると、流体噴流との衝突による反動によって鋼帯に大きなバタツキが生じ、鋼帯部分の変位が却って助長されてしまう。一方、この推進力が小さ過ぎると鋼帯の変位の矯正が十分でなくなる。
【0021】
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1]熱間圧延機で圧延して得られた熱延鋼帯をランナウトテーブルで搬送した後、コイラーに巻き取る熱延鋼帯の製造方法において、
前記ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯の上方に、流体噴流をパスライン(但し、ランナウトテーブルの鋼帯搬送面)上を通板する熱延鋼帯面と接することなく熱延鋼帯の上方を通過するように噴射し、前記パスラインから所定レベルを超えて上方に変位した鋼帯部分を前記流体噴流に衝突させ、当該鋼帯部分の変位を矯正することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【0022】
[2]上記[1]の製造方法において、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の中心線のパスラインからの高さを50〜450mmとすることを特徴とする鋼帯の製造方法。
[3]上記[1]の製造方法において、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の中心線のパスラインからの高さを50mm以上、200mm未満とすることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の下記(1)式で定義されるライン方向推進力Fが10〜50kgfであることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
=[ρA(vcos(π×α/180)−u)]/9.8 …(1)
但し ρ:流体噴流を構成する流体の密度(kg/m
A:流体噴射ノズルのノズル口断面積(m
v:流体噴流の速度(m/sec)
u:熱延鋼帯の通板速度(m/sec)
α:流体噴流の噴射方向の鋼帯通板方向に対する角度(°)
【0023】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法において、流体噴流を、鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[6]上記[5]の製造方法において、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流のパスライン長手方向速度成分を、熱延鋼帯の通板速度よりも大きくすることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[7]上記[5]の製造方法において、熱延鋼帯の先端側部分の上方を通過中の流体噴流のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯の通板速度よりも大きくし、熱延鋼帯の尾端側部分の上方を通過中の流体噴流のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯の通板速度よりも小さくすることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[8]上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法において、流体噴流を、反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【0024】
[9]上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法において、熱延鋼帯の先端側部分に対しては、流体噴流を鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射し、熱延鋼帯の尾端側部分に対しては、流体噴流を反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかの製造方法において、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいた複数箇所で流体噴流の噴射を行うことを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[11]上記[10]の製造方法において、ランナウトテーブル長手方向における流体噴流の噴射位置の間隔が5〜15mであることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[12]上記[1]〜[11]のいずれかの製造方法において、流体噴流の噴射方向の鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向に対する角度αを0°<α<90°とすることにより、流体噴流を熱延鋼帯全幅の上方を通過させることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【0025】
[13]上記[12]の製造方法において、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいた複数箇所で流体噴流の噴射を行うとともに、熱延鋼帯全幅の上方を通過する流体噴流の軌跡を熱延鋼帯面上に平面投影した仮想の噴流通過線xのうち、パスライン長手方向で隣接する噴流通過線x,xの端部どうしを、パスライン長手方向位置で一致させるか若しくは重複させることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[14]上記[1]〜[13]のいずれかの製造方法において、ランナウトテーブル幅方向両側から流体噴流の噴射を行うとともに、ランナウトテーブルを挟んで対向した位置(但し、ランナウトテーブルを中心として非対称の位置を含む)から噴射され、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の下記(2)式で定義される幅方向推進力Fが略等しくなるよう、流体噴流の噴射を行うことを特徴とする記載の熱延鋼帯の製造方法。
=[ρA(vsin(π×α/180))]/9.8 …(2)
但し ρ:流体噴流を構成する流体の密度(kg/m
A:流体噴射ノズルのノズル口断面積(m
v:流体噴流の速度(m/sec)
α:流体噴流の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度(°)
【0026】
[15]上記[1]〜[11]のいずれかの製造方法において、流体噴流を、熱延鋼帯の上方をパスライン長手方向に沿って通過させるとともに、該流体噴流の噴射方向前方の熱延鋼帯上方位置で流体噴流を回収することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[16]上記[1]〜[15]のいずれかの製造方法において、流体噴流の噴射方向が水平面に対して上方側又は下方側に傾きを有し、該流体噴流の噴射方向の水平面に対する傾き角βが10°以下であることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[17]上記[1]〜[16]のいずれかの製造方法において、ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯に対して上方から冷却水を供給して熱延鋼帯の冷却を行う熱延鋼帯の製造方法であって、前記冷却水から流体噴流を遮蔽するための遮蔽体を、前記流体噴流の上方に配することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[18]上記[17]の製造方法において、遮蔽体が、流体噴流の上方に配置される遮蔽部材であることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
[19]上記[17]の製造方法において、遮蔽体が、流体噴流の上方を該流体噴流と略平行に流れる遮蔽用流体噴流であることを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【0027】
[20]熱間圧延機群と、該熱間圧延機群の出側に設けられる熱延鋼帯搬送用のランナウトテーブルと、該ランナウトテーブルで搬送された熱延鋼帯を巻き取るコイラーとを備えた熱延鋼帯の製造設備において、
流体噴流を、前記ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯の上方に、パスライン(但し、ランナウトテーブルの鋼帯搬送面)上を通板する熱延鋼帯面と接することなく熱延鋼帯の上方を通過するように噴射することができる流体噴射ノズルを、ランナウトテーブルの側方又は上方に備え、且つ該流体噴射ノズルのノズル口中心のパスラインからの高さを50〜450mmとしたことを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[21]上記[20]の製造装置において、流体噴射ノズルのノズル口中心のパスラインからの高さを50mm以上、200mm未満としたことを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
【0028】
[22]上記[20]又は[21]の製造装置において、流体噴射ノズルの流体噴射方向の鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°であることを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[23]上記[20]又は[21]の製造装置において、流体噴射ノズルの流体噴射方向の反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°であることを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[24]上記[20]又は[21]の製造装置において、流体噴射方向の鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°である流体噴射ノズルと、流体噴射方向の反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°である流体噴射ノズルを備えること特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
【0029】
[25]上記[20]〜[24]のいずれかの製造装置において、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズルを設けることを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[26]上記[25]の製造装置において、ランナウトテーブル長手方向における流体噴射ノズルの設置間隔が5〜15mであることを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[27]上記[20]〜[26]のいずれかの製造装置において、流体噴射ノズルの流体噴射方向の鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向に対する角度αが0°<α<90°であり、流体噴射ノズルから噴射される流体噴流が熱延鋼帯全幅の上方を通過するようにしたことを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
【0030】
[28]上記[27]の製造装置において、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴流ノズルを設けるとともに、該複数の流体噴流ノズルの間隔と流体噴射方向を、各流体噴流ノズルから噴射されて熱延鋼帯全幅の上方を通過する流体噴流の軌跡を熱延鋼帯面上に平面投影した仮想の噴流通過線xのうち、パスライン長手方向で隣接する噴流通過線x,xの端部どうしが、パスライン長手方向位置で一致するか若しくは重複するよう、設定することを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[29]上記[20]〜[26]のいずれかの製造装置において、流体噴射ノズルを、噴射された流体噴流が熱延鋼帯の上方をパスライン長手方向に沿って通過するよう、パスラインの上方に設けるとともに、前記流体噴流の噴射方向前方のパスライン上方位置に、流体噴流を回収するための回収手段を設けたことを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[30]上記[20]〜[29]のいずれかの製造装置において、流体噴流ノズルの流体噴射方向が水平面に対して上方側又は下方側に傾きを有し、該流体噴射方向の水平面に対する傾き角βが10°以下であることを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
【0031】
[31]上記[20]〜[30]のいずれかの製造装置において、ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯に対して上方から冷却水を供給する冷却装置を有する熱延鋼帯の製造設備であって、流体噴射ノズルから噴射された流体噴流を前記冷却水から遮蔽するための遮蔽部材を、ランナウトテーブル上方に設けたことを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
[32]上記[20]〜[30]のいずれかの製造装置において、ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯に対して上方から冷却水を供給する冷却装置を有する熱延鋼帯の製造設備であって、流体噴射ノズルから噴射された流体噴流を前記冷却水から遮蔽するための遮蔽用流体噴流を、前記流体噴流の上方に略平行に噴射するための遮蔽用流体噴射ノズルを有することを特徴とする熱延鋼帯の製造設備。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ランナウトテーブル上を通板する熱延鋼帯のパスライン上方への過剰な変位(バウンド、ループなど)を流体噴射を利用して効果的に抑制し、これらを原因とする熱延鋼帯の先端折れ、尾端折れ、腰折れの発生を確実に防止できるとともに、流体噴流は正常に通板している熱延鋼帯と接触することなく、その上方を完全に通過するため、流体噴射そのものによるパスライン上方への鋼帯部分の変位も適切に防止でき、これらによりランナウトテーブル上での熱延鋼帯の安定通板を確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、熱間圧延機で圧延して得られた熱延鋼帯をランナウトテーブルで搬送した後、コイラーに巻き取る熱延鋼帯の製造方法であって、ランナウトテーブル上を通板する熱延鋼帯のパスライン上方への変位(鋼帯先端側部分又は尾端側部分のバウンド、ループなど。以下、同様)を流体噴射により矯正(抑制・解消)するに当たり、流体噴流の噴射形態に特徴を有するものである。
図1〜図3は、本発明の製造方法におけるランナウトテーブル上での流体噴流5の噴射形態の一例を示すもので、図1はランナウトテーブル及びこれに搬送される熱延鋼帯先端部を示す側面図、図2は同じく平面図、図3は同じく正面図である。
【0034】
本発明では、ランナウトテーブル3により搬送される熱延鋼帯1の上方(上方空間領域)に、ビーム状の流体噴流5をパスライン(ランナウトテーブルの鋼帯搬送面)上を通板する熱延鋼帯面と接することなく熱延鋼帯1の上方を通過するように噴射し、前記パスラインから所定レベルを超えて上方に変位した鋼帯部分100(本実施形態では鋼帯先端部のバウンド)を流体噴流5に衝突させ、鋼帯部分100の変位を矯正する(パスライン方向に押し戻す)ものである。ここで、所定レベルを超えて上方に変位した鋼帯部分100とは、本実施形態のような鋼帯先端部のバウンド(図32の(i)参照)、鋼帯尾端部のバウンド(図34の(i)参照)、鋼帯先端側部分や尾端側部分に生じるループ(図33の(i)及び図35の(i)参照)などである。
【0035】
本発明によれば、上記のようにパスライン上方に変位している鋼帯部分100が流体噴流5との衝突よってパスライン側に押し戻されることにより、鋼帯の変位が矯正されるが、流体噴流5は所定レベルを超えて上方に変位していない鋼帯部分においては、鋼帯面に接することなく鋼帯上方を完全に通過するだけであるため、パスライン上を正常に通板している鋼帯(所定レベル以下の範囲で上方に変位している鋼帯部分を含む)には流体噴流5の衝撃力が及ぶことはなく、従来技術のように流体噴流そのものの衝突によって鋼帯に変位が生じるようなことはない。
【0036】
本発明で用いる流体噴流5の流体としては、気体、液体、気体と液体の混合体のいずれでもよいが、通常は水が用いられる。
本発明における流体噴流5の水平面上での噴射方向は、鋼帯幅方向(鋼帯通板方向に対して直交する方向)を除けば基本的には任意であり、鋼帯通板方向側に向けて流体噴流5を噴射してもよいし、反鋼帯通板方向(鋼帯通板方向と逆方向)側に向けて流体噴流5を噴射してもよい。前者の場合には、流体噴流5を鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することになり、また、後者の場合には流体噴流5を反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することになる。
【0037】
但し、鋼帯の変位をより効果的且つ確実に解消するには、鋼帯先端側部分の鋼帯の変位に対しては、鋼帯通板方向側に向けて流体噴流5を噴射すること(すなわち、流体噴流5を鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射すること)が好ましく、また、鋼帯尾端側部分の鋼帯の変位に対しては、反鋼帯通板方向側に向けて流体噴流5を噴射すること(すなわち、流体噴流5を反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射すること)が好ましい。したがって、1つのランナウトテーブルにおいて、熱延鋼帯1の先端側部分に対しては、流体噴流5を鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射し、熱延鋼帯1の後端側部分に対しては、流体噴流5を反鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射することが特に好ましい。
【0038】
図4(a)及び(b)は、流体噴流5をランナウトテーブル3の側方(ランナウトテーブルの側端部近傍位置を含む。以下同様)から熱延鋼帯全幅の上方を通過するように噴射する場合について、流体噴流5の水平面上での噴射方向を示している。図4(a)は鋼帯通板方向側に向けて流体噴流5を噴射する場合であり、この場合には流体噴流5を鋼帯通板方向に対する角度αが0°<α<90°となるように噴射することになる。また、図4(b)は反鋼帯通板方向側に向けて流体噴流5を噴射する場合であり、この場合には流体噴流5を反鋼帯通板方向に対する角度αが0°<α<90°となるように噴射することになる。
【0039】
流体噴流5の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度αは、パスライン上方に変位した鋼帯部分に流体噴流5の衝突力(パスライン長手方向での推進力)を効果的に及ぼすという観点からはなるべく小さい方が好ましい。一方、流体噴流5を熱延鋼帯全幅の上方を横切るように通過させる形態の場合には、上記角度αが小さくなるにしたがって熱延鋼帯1の上方を通過する流体噴流5の長さが長くなるため、流体噴流5の流速を高めることが必要になる。以上の観点から、図4のように流体噴流5を熱延鋼帯全幅の上方を通過するように噴射する形態の場合には、流体噴流5の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度αは5°〜45°、好ましくは5°〜15°程度にすることが合理的である。
【0040】
図1〜図4では、流体噴流5をランナウトテーブル3の側方から噴射する形態を示したが、流体噴流5をランナウトテーブル3上のパスラインの上方位置から噴射することもできる。図5及び図6はその一実施形態を示すもので、図5は平面図、図6は側面図である。この場合、流体噴流5の噴射方向にパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度αを付けて、流体噴流5をランナウトテーブル3の側方に導くようにしてもよいが、他の形態としては、流体噴流5の噴射方向前方の熱延鋼帯上方位置に流体噴流5を回収するための回収手段15を設け、この回収手段15によって流体噴流5を回収することで、流体噴流5が熱延鋼帯面に落下しないようにすることもできる。前記回収手段15は、例えば、図示するような流体噴流5が進入できる開口150を有するダクトなどにより構成すればよい。
【0041】
流体噴流5の噴射方向は、水平面に対して上方側又は下方側に傾きを有していてもよい。図7は、流体噴流5の噴射方向が水平面に対して傾きを有する場合の一実施形態を示す正面図である。このような流体噴流5の噴射方向の傾きは、図1〜図4、図5及び図6のいずれの形態においても付与することができる。但し、パスライン上方に変位した鋼帯部分に流体噴流の衝突力を効果的に及ぼすという観点からは、流体噴流5はなるべく水平に近い方が望ましく、このため流体噴流5の噴射方向の水平面に対する傾き角βは±10°以下であることが望ましい。
流体噴流5の噴射には流体噴射ノズルが用いられるが、以上述べたような流体噴流5の噴射位置や噴射方向に応じて、流体噴射ノズルの配置やノズル噴射方向が設定されることになる。
【0042】
図8及び図9は、本発明の熱延鋼帯の製造方法の実施に供される設備の一実施形態を示すものであり、図8は熱間圧延機の最終スタンド及びその出側設備を示す側面図、図9は同じく平面図である。
図において、2は熱間圧延機群を構成する仕上圧延機の最終スタンド、3は熱間圧延機群の出側に設置される熱延鋼帯搬送用のランナウトテーブル、4はこのランナウトテーブル3で搬送された熱延鋼帯1を巻き取るコイラー4である。
前記ランナウトテーブル3は多数のテーブルロールから構成されている。また、このランナウトテーブル3の上方及び下方には、搬送される熱延鋼帯に冷却水などの冷却用流体を供給するための冷却装置(図示せず)が設けられている。前記コイラー4の入側には、ランナウトテーブル3上を搬送されてきた熱延鋼帯1をピンチしてコイラー4に導くためのピンチロール16が設けられている。
【0043】
このような基本的な設備形態において、ランナウトテーブル3の両側にランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6が設けられ、流体噴流5をランナウトテーブル3上を通板する熱延鋼帯1の上方に噴射できるようにしている。なお、流体噴射ノズル6の配置に関する種々の実施形態については後に詳述する。
各流体噴射ノズル6は流体供給系7に接続され、この流体供給系7を制御する制御装置8により各流体噴射ノズル6から噴射される流体噴流5の流量や噴射タイミング等が制御される。前記流体供給系7は、流体圧送用のポンプ11と、このポンプ11から吐出される流体の流量を調整する流量調整弁12と、開放時に流体噴射ノズル6に流体を供給する開閉弁13と、流体噴射ノズル6の角度を調整するアクチュエータなどからなる角度調整機構14等によって構成されている。
このような熱延鋼帯の製造設備では、熱間仕上圧延機の最終スタンド2から出た熱延鋼帯1はランナウトテーブル3上に導かれ、ランナウトテーブル3で搬送されつつ所定温度まで冷却され、その後コイラー4によりコイル状に巻き取られるが、ランナウトテーブル3を通板する熱延鋼帯1の上方に、流体噴射ノズル6から図1〜図3に示すような形態で流体噴流5が噴射される。
【0044】
ここで、本発明法において流体噴流5により熱延鋼帯の変位が解消される過程を図10〜図13に基づいて説明する。
図10は、流体噴流5により鋼帯先端部のバウンドが解消される過程を示している。ここでは、バウンド101aが大きく成長する前に本発明条件に従い流体噴射ノズル6から流体噴流5が鋼帯通板方向側(流体噴流5の鋼帯通板方向に対する角度α:0°≦α<90°)に噴射されている。この状態でバウンド101aが成長すると流体噴流5と衝突し(図10の(i)参照)、流体噴流5によりバウンド101aの頂点近くの衝突点31aに略水平方向の衝突力が作用する。この衝突力は、パスライン長手方向成分(バウンド101aを鋼帯通板方向に押す成分)と、鉛直方向成分(バウンド101aをパスライン側に押す成分)として作用する。その結果、図10の(ii)に示すように、バウンド101aは鋼帯通板方向に押し出されるとともに、パスライン側(鉛直方向)に押し戻され、これにより図10の(iii)に示すようにバウンド101aが解消されて安定通板状態に至る。ここで、流体噴流5は熱延鋼帯5の上方を所定の高さで完全に通過するように流れているため、それよりも下方を通板している鋼帯部分には接することがなく、正常に通板している鋼帯部分をランナウトテーブル3のテーブルロール間に押し込むこともない。このため確実且つ効果的にバウンドを抑制・解消することが可能となる。
【0045】
図11は、流体噴流5により鋼帯先端側部分のループが解消される過程を示している。ここでは、ループ103aが大きく成長する前に本発明条件に従い流体噴射ノズル6から流体噴流5が鋼帯通板方向側(流体噴流5の鋼帯通板方向に対する角度α:0°≦α<90°)に噴射されている。この状態でループ103aが成長すると流体噴流5と衝突し(図11の(i)参照)、流体噴流5によりループ103aの頂点近くの衝突点31aに略水平方向の衝突力が作用する。この衝突力は、パスライン長手方向成分(ループ103aを鋼帯通板方向に押す成分)と、鉛直方向成分(ループ103aをパスライン側に押す成分)として作用する。その結果、図11の(ii)に示すように、ループ103aは鋼帯通板方向に押し出されるとともに、パスライン側(鉛直方向)に押し戻され、これにより図11の(iii)に示すようにループ103aが解消されて安定通板状態に至る。ここでも、流体噴流5は熱延鋼帯1の上方を所定の高さで完全に通過するように流れているため、それよりも下方を通板している鋼帯部分には接することがなく、正常に通板している鋼帯部分をランナウトテーブル3のテーブルロール間に押し込むこともない。このため確実且つ効果的にループを抑制・解消することが可能となる。
【0046】
図12は、流体噴流5により鋼帯尾端部のバウンドが解消される過程を示している。ここでは、バウンド101bが大きく成長する前に本発明条件に従い流体噴射ノズル6から流体噴流5が反鋼帯通板方向側(流体噴流5の反鋼帯通板方向に対する角度α:0°≦α<90°)に噴射されている。この状態でバウンド101bが成長すると流体噴流5と衝突し(図12の(i)参照)、流体噴流5によりバウンド101bの頂点近くの衝突点31bに略水平方向の衝突力が作用する。この衝突力は、パスライン長手方向成分(バウンド101bを反鋼帯通板方向に押す成分)と、鉛直方向成分(バウンド101bをパスライン側に押す成分)として作用する。その結果、図12の(ii)に示すように、バウンド101bは反鋼帯通板方向に押し出されるとともに、パスライン側(鉛直方向)に押し戻され、これにより図12の(iii)に示すようにバウンド101bが解消されて安定通板状態に至る。ここでも、流体噴流5は熱延鋼帯1の上方を所定の高さで完全に通過するように流れているため、それよりも下方を通板している鋼帯部分には接することがなく、正常に通板している鋼帯部分をランナウトテーブル3のテーブルロール間に押し込むこともない。このため確実且つ効果的にバウンドを抑制・解消することが可能となる。
【0047】
図13は、流体噴流5により鋼帯尾端側部分のループが解消される過程を示している。ここでは、ループ103bが大きく成長する前に本発明条件に従い流体噴射ノズル6から流体噴流5が反鋼帯通板方向側(流体噴流5の反鋼帯通板方向に対する角度α:0°≦α<90°)噴射されている。この状態でループ103bが成長すると流体噴流5と衝突し(図13の(i)参照)、流体噴流5によりループ103bの頂点近くの衝突点31bに略水平方向の衝突力が作用する。この衝突力は、パスライン長手方向成分(ループ103bを反鋼帯通板方向に押す成分)と、鉛直方向成分(ループ103bをパスライン側に押す成分)として作用する。その結果、図13の(ii)に示すように、ループ103bは反鋼帯通板方向に押し出されるとともに、パスライン側(鉛直方向)に押し戻され、これにより図13の(iii)に示すようにループ103bが解消されて安定通板状態に至る。ここでも、流体噴流5は熱延鋼帯1の上方を所定の高さで完全に通過するように流れているため、それよりも下方を通板している鋼帯部分には接することがなく、正常に通板している鋼帯部分をランナウトテーブル3のテーブルロール間に押し込むこともない。このため確実且つ効果的にループを抑制・解消することが可能となる。
【0048】
以下、本発明の特に好ましい実施形態について説明する。
本発明において、鋼帯の変位を特に効果的に矯正するには、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流5の中心線のパスラインからの高さ(図1、図3、図7に示す高さh)を50〜450mm、好ましくは50mm以上200mm未満とすることが望ましい。
また、同様の観点から、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流5の下記(1)式で定義されるライン方向推進力Fを10〜50kgfとすることが好ましい。
=[ρA(vcos(π×α/180)−u)]/9.8 …(1)
但し ρ:流体噴流を構成する流体の密度(kg/m
A:流体噴射ノズルのノズル口断面積(m
v:流体噴流の速度(m/sec)
u:熱延鋼帯の通板速度(m/sec)
α:流体噴流の噴射方向の鋼帯通板方向に対する角度(°)
なお、このライン方向推進力Fは、鋼帯通板方向側(0°≦α<90°)に向けて噴射された流体噴流5がパスライン上方に変位した鋼帯部分に衝突した際に、流体噴流5によってその鋼帯部分に付与されるパスライン長手方向の推進力(衝突力)であり、この推進力に起因する鉛直方向の力によってパスラインの上方に変位した鋼帯部分が鉛直方向(パスライン側)に押し戻されることになる。
【0049】
上述したような本発明の好ましい条件は、本発明者らが行ったシミュレーション試験により明らかとなったものであり、以下、この試験結果について説明する。
本発明者らは、マルチボディダイナミクス(Multibody−Dynamics:多体系の動力学)を用いて、熱延鋼帯のランナウトテーブル上での通板状況のシミュレーション試験を行った。このシミュレーションでは、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流の中心線のパスラインからの高さ(以下、「流体噴流高さh」という)と、上記ライン方向推進力Fを種々変化させ、鋼帯の通板状況(鋼帯の変位の状況)を再現した。
【0050】
シミュレーション条件は以下のとおりとした。
・ランナウトテーブルの設備仕様:
テーブルロールピッチ:420mm
テーブルロール径:375nm
・流体噴流の噴射形態:図21(a)に示すように、流体噴流が鋼帯上方を通過している領域が鋼帯長手方向で連続するように流体噴流を噴射
・鋼帯通板速度(仕上圧延機最終スタンドの圧延速度):690m/分
・熱延鋼帯板幅:650mm
・熱延鋼帯板厚:1.2mm
・熱延鋼帯長:1000mm(先端1mの通板解析を想定)
・シミュレーション区間:最終スタンド通過後35mまで
【0051】
まず、流体噴流高さh:50mm〜500mmの範囲において50mm毎の各々の流体噴流高さhについて、ライン方向推進力Fを10kgf〜100kgfの範囲で10kgfピッチで変えた条件にてシミュレーションを行った。その結果、流体噴流高さhがあるレベル以上高くなると、流体噴流の作用が鋼帯先端部のバウンドに対してほとんど無効になること、また、流体噴流によるバウンドの抑制作用が得られるような流体噴流高さhであっても、バウンドした鋼帯部分が流体噴流の下面に張り付いてしまう現象(張り付き現象)が生じやすい流体噴流高さhの範囲があることが判った。このような張り付き現象は、熱延鋼帯の先端折れなどのトラブルの原因になりやすく、また先端折れなどに至らないような場合でも、鋼帯先端部などの張り付きがコイラーの入側まで持ち越されると、鋼帯先端がコイラー入側のピンチロールにうまく噛み込まれないなどのトラブルの原因となる。
【0052】
図14はその結果を示すもので、シミュレーションの結果を上記張り付き現象の頻度で整理して示したものである。なお、この張り付き頻度は、各シミュレーション区間において一度でも張り付き現象が生じた場合は、“張り付き有り”とカウントし、各流体噴流高さhにおける全シミュレーション数に対する“張り付き有り”のシミュレーション数の割合(%)である。
図14によれば、まず、流体噴流高さhが500mmでは張り付きは全く生じていないが、これは鋼帯のバウンドは500mm以上の高さには成長しないため、流体噴流高さhを500mm以上に設定してもその流体噴流にバウンドが衝突することはなく、したがって、流体噴流5はバウンドの抑制には無効であることを示している。
【0053】
一方、流体噴流高さhが450mm以下では流体噴流にバウンドが衝突するようになるが、200〜450mmの範囲では張り付き現象が生じており、特に300〜450mmの範囲での頻度が高い。これに対して、流体噴流高さhが200mm未満(50mm以上)の範囲では張り付き現象は全く生じていない。これは、流体噴流高さhが200mm以上になると、バウンドがある程度成長した段階で流体噴流5と衝突し、バウンドに生じる揚力と推進力が釣り合った状態になるため張り付きが生じ易いのに対し、流体噴流高さが200mm未満の場合には、バウンドがあまり成長しない段階、すなわち、バウンドに生じる揚力が小さい段階で流体噴流5と衝突するためであると考えられる。
【0054】
以上の結果から、変位した鋼帯部分を流体噴流に確実に衝突させるためには、流体噴流高さhは450mm以下とすることが適当であること、また、鋼帯の流体噴流下面への張り付き現象を抑えるためには、流体噴流高さhは250mm以下、好ましくは200mm未満とすることが適当であることが判った。なお、流体噴流高さhがあまり低すぎると、流体噴流がランナウトテーブル上を安定的に通板している鋼帯部分(所定レベル以下で上方に変位している鋼帯部分を含む)に衝突したり、熱延鋼帯上に落下したりする危険性がある。この観点から流体噴流高さhは50mm以上とすることが適当である。
以上の理由から、パスライン上方への鋼帯の変位を適切に抑制して鋼帯を安定通板させるには、流体噴流高さhは50〜450mm、好ましくは50mm以上200mm未満とすることが適当である。また、流体噴射ノズル6から流体噴流5を略水平に噴射する場合には、流体噴射ノズル6のノズル口中心のパスラインからの高さを50〜450mm、好ましくは50mm以上200mm未満とすることが適当である。
【0055】
次に、流体噴流高さhを一定とした条件で、ライン方向推進力Fが鋼帯の通板状況に及ぼす影響をシミュレーション試験により調べた。この試験では、図14の結果に基づき、流体噴流高さh:100mmにおいて、ライン方向推進力Fを10〜90kgfの範囲で変化させ、鋼帯先端のバタツキの程度(先端高さ方向速度)を調べた。その結果を図15に、また、ライン方向推進力Fが30kgf、50kgf、70kgfの各場合の鋼帯先端の高さ方向速度変化のシミュレーション結果を図16〜18に示す。なお、図15に示される「先端高さ方向速度の分散」は下式で定義され、n=2401(但し、図16〜18ではその一部のみを示している)、各データの時間間隔は0.0125秒である。
【0056】
【数1】


【0057】
図15によれば、ライン方向推進力Fが50kg以下では鋼帯先端高さ方向速度の分散値は極めて低く、鋼帯先端にあまり大きなバタツキが生じていないことが判る(図16及び図17参照)。これに対してライン方向推進力Fが50kgfを超えると鋼帯先端高さ方向の分散値は急激に高まっており、鋼帯先端に非常に大きなバタツキが生じていることが判る(図18参照)。これは、ライン方向推進力が50kgfを超えるような大きさになると、これに衝突した鋼帯先端部に大きな反動が生じ、これにより大きなバタツキを生じるためであると考えられる。このような大きなバタツキは先に述べた張り付きと同様、鋼帯の先端折れの原因となり易く、また先端折れに至らない場合でもコイラーへの適切な巻取りに支障をきたす原因となり易い。以上の結果から、ライン方向推進力Fは50kg以下の範囲が適当であることが判った。なお、ライン方向推進力Fが10kgf未満では変位した鋼帯部分を押え付ける作用が十分得られない。
したがって、パスライン上方への鋼帯の変位を適切に抑制して鋼帯を安定通板させるには、ライン方向推進力Fは10〜50kgとすることが適当である。
そして、ライン方向推進力Fをこのような範囲とし、且つ流体噴流高さhを上述した範囲とすることにより、鋼帯の変位を最も効果的に抑制し、熱延鋼帯の最適な安定通板状態を実現することができる。
【0058】
本発明において、流体噴流5の噴射位置の形態、すなわち流体噴射ノズル6の配置形態は任意であり、鋼帯の変位が生じる可能性がある位置に、必要な数の流体噴射ノズルを設置し、流体噴流5の噴射を行えばよい。
したがって、例えば、熱延鋼帯1にバウンドやループの発生しやすい位置が明確である場合には、流体噴射ノズル6は1箇所だけ設けることもできる。
流体噴射ノズル6を複数箇所に配置する場合には、例えば、以下のような配置形態を採ることができる。
(イ)ランナウトテーブル3の幅方向両側(ランナウトテーブル3の側端部近傍を含む両側位置)に、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を設けるとともに、ランナウトテーブル両側の流体噴射ノズル6をランナウトテーブル3を中心に対称に配置する。
【0059】
(ロ)ランナウトテーブル3の幅方向両側(ランナウトテーブルの側端部近傍を含む両側位置)に、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を設けるとともに、ランナウトテーブル両側の流体噴射ノズル6の配置間隔を互いに1/2ピッチずらせ、ランナウトテーブル3を中心に非対称に配置する。
(ハ)ランナウトテーブル3幅方向片側(ランナウトテーブルの側端部近傍を含む片側の位置)のみに、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を設ける。
(ニ)ランナウトテーブル3上の鋼帯パスラインの上方位置に、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を設ける。
言うまでもなく、1つのランナウトテーブル3において、上記(イ)〜(ニ)の配置形態を組み合わせてもよい。
【0060】
図19(a)〜(d)は、上記(イ)〜(ニ)の各形態を示す平面図である。
図19(a)は上記(イ)の形態を示すもので、ランナウトテーブル3(図示せず。以下同様)の幅方向両側に、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を設けるとともに、ランナウトテーブル両側の流体噴射ノズル6をランナウトテーブルを中心に対称に配置してある。そして、流体噴流5が熱延鋼帯1の全幅の上方を通過するよう、流体噴流5の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度αが設定される。流体噴射ノズル6を設けるランナウトテーブル幅方向両側位置は、ランナウトテーブル3の側端部近傍を含む側方であって、ランナウトテーブル面よりも高い位置であれば、いずれでもよい。
なお、このようにランナウトテーブル幅方向両側の流体噴射ノズル6をランナウトテーブル3を中心に対称に配置する場合には、両流体噴射ノズル6から噴射される流体噴流が交差して互いに干渉(衝突)しないようにする必要があり、このため両流体噴射ノズル6から噴射される流体噴流の高さや水平面に対する角度βに差を設けるなどの調整を行う。
【0061】
図19(b)は上記(ロ)の形態を示すもので、ランナウトテーブル3の幅方向両側に、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を設けるとともに、ランナウトテーブル両側の流体噴射ノズル6の配置間隔を互いに1/2ピッチずらせて、ランナウトテーブル3を中心に非対称に配置してある。そして、流体噴流5が熱延鋼帯1の全幅の上方を通過するよう、流体噴流5の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度αが設定される。流体噴射ノズル6を設けるランナウトテーブル幅方向の両側位置は、ランナウトテーブル3の側端部近傍を含む側方であって、ランナウトテーブル面よりも高い位置であれば、いずれでもよい。
この形態では、ランナウトテーブル単位長あたりの流体噴射ノズル6の設置個数を上記(イ)の形態と同じにした場合には、流体噴射ノズル6のランナウトテーブル長手方向での配置間隔を1/2とすることができるので、熱延鋼帯1の上方を通過する流体噴流5の存在密度を高めることができる。
【0062】
図19(c)は上記(ハ)の形態を示すもので、ランナウトテーブル3の幅方向の片側のみに、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を配置してある。そして、流体噴流5が熱延鋼帯1の全幅の上方を通過するよう、流体噴流5の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度αが設定される。流体噴射ノズル6を設けるランナウトテーブル幅方向の片側位置は、ランナウトテーブル3の側端部近傍を含む側方であって、ランナウトテーブル面よりも高い位置であれば、いずれでもよい。
【0063】
図19(d)は上記(ニ)の形態を示すもので、ランナウトテーブル3上のパスライン上方位置に、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて複数の流体噴射ノズル6を配置し、流体噴流5の噴射方向を略パスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)としたものである。この場合には、図5及び図6に示したように、流体噴流5の噴射方向にパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度αを付けて流体噴流5をランナウトテーブル3の側方に導くようにしてもよいし、各流体噴流5の噴射方向前方の熱延鋼帯上方位置に流体噴流5を回収するための回収手段15を設け、この回収手段15によって流体噴流5を回収するようにしてもよい。
また、ランナウトテーブル幅方向両側にランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて多数の流体噴射ノズル6を設け、それらを制御装置8によって適宜使い分けることにより、上記(イ)〜(ニ)の形態を選択的に実施してもよい。
【0064】
上記(イ)〜(ニ)の形態において、流体噴流5の噴射方向がパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対して角度αを有する場合、流体噴流5がパスライン上方に変位した鋼帯部分に衝突すると熱延鋼帯1には幅方向への推進力が作用し、この推進力は熱延鋼帯1に蛇行等の不安定な走行現象を生じさせる可能性がある。したがって、このような不安定な走行現象を生じさせないようにするには、ランナウトテーブル幅方向の片側からのみ流体噴流5を噴射する上記(ハ)の形態よりも、ランナウトテーブル幅方向両側から流体噴流5を噴射する上記(イ)、(ロ)の形態や、パスラインの上方位置で略パスライン長手方向に沿って流体噴流5を噴射する上記(ニ)の形態の方が好ましい形態であると言える。
【0065】
また、ランナウトテーブル幅方向両側から流体噴流5を噴射する上記(イ)、(ロ)の形態において、流体噴流5の衝突により熱延鋼帯1に及ぼされる鋼帯幅方向への推進力による不安定な走行現象をより確実に抑制するには、図20に示すように、ランナウトテーブルを挟んで対向した位置(但し、ランナウトテーブルを中心として非対称の位置を含む)から噴射され、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流5の下記(2)式で定義される幅方向推進力Fが略等しくなるよう、流体噴流の噴射を行うことが好ましい。
=[ρA(vsin(π×α/180))]/9.8 …(2)
但し ρ:流体噴流を構成する流体の密度(kg/m
A:流体噴射ノズルのノズル口断面積(m
v:流体噴流の速度(m/sec)
α:流体噴流の噴射方向のパスライン長手方向(鋼帯通板方向又は反鋼帯通板方向)に対する角度(°)
【0066】
これにより、ランナウトテーブル幅方向両側から噴射された流体噴流5がパスライン上方に変位した鋼帯部分に衝突した際に、この衝突によって鋼帯幅方向に作用する推進力が均衡するため、熱延鋼帯1の不安定走行をより確実に防止することができる。
なお、図20は上記(イ)の形態(図19(a)の形態)を例に説明したが、上記(ロ)の形態(図19の(b)の形態)のようにランナウトテーブルを中心として非対称に対向した位置から噴射される流体噴流5どうしについても同様である。
【0067】
ランナウトテーブル上のパスラインから鋼帯部分が上方に変位する現象(バウンド、ループなど)は、ランナウトテーブル長手方向のどの箇所で発生するか不確実であり、このためいずれの箇所で鋼帯部分の変位が生じてもこれに対応できるようにするため、流体噴流5が鋼帯上方を通過している領域が鋼帯長手方向で連続していることが好ましい。すなわち、図21(a)に示すように、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいた複数箇所で流体噴流5の噴射を行うとともに(例えば図19(a)〜(d)参照)、熱延鋼帯1の全幅の上方を通過する流体噴流5の軌跡を熱延鋼帯面上に平面投影した仮想の噴流通過線xのうち、パスライン長手方向で隣接する噴流通過線x,xの端部どうし(すなわち、xとxの端部どうし、xとxの端部どうし・・・)を、パスライン長手方向位置で一致させるか(すなわち、端部どうしが重なる)若しくは重複させるようにすることが好ましい。この実施形態では噴流通過線x,xの端部どうしが、yで示す長さ分だけ重複している。設備的には、ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいて配置された複数の流体噴流ノズル6の配置間隔と流体噴射方向を、上記が実現できるように設定する。上記のように流体噴流5を熱延鋼帯1の上方に噴射することにより、ランナウトテーブル長手方向のどの箇所で鋼帯部分の変位が生じても、この変位した鋼帯部分に流体噴流5が確実に衝突することができる。なお、図21(a)は上記(ハ)の形態を例に説明したが、(イ)、(ロ)、(ニ)などの他の形態の場合も同様である。
【0068】
ランナウトテーブル長手方向に沿って適宜間隔をおいた複数箇所で流体噴流の噴射を行う場合、流体噴射の噴射位置の間隔(流体噴射ノズルの設置間隔)は特に制限はないが、上記図21(a)に示すような形態を満足するためには、通常5〜15m、好ましくは5〜12m程度とすることが適当である。
また、図21(b)は、熱延鋼帯1の全幅の上方を通過する流体噴流5の軌跡を熱延鋼帯面上に平面投影した仮想の噴流通過線xのうち、パスライン長手方向で隣接する噴流通過線x,xの端部どうし(すなわち、xとxの端部どうし、xとxの端部どうし・・・)をパスライン長手方向位置で一致若しくは重複させないようにした実施形態であるが、この場合には、噴流通過線x,xの端部どうしの間隔zを5m以下とすることが好ましい。これは、一般に、バウンドなどの鋼帯部分の変位は、流体噴流5との衝突により一旦矯正(解消)された後、5m以上通板した後に再び発生することが多いためである。
【0069】
本発明において、鋼帯通板方向側に向けて流体噴流5を噴射する場合、すなわち、流体噴流5を鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射する場合には、熱延鋼帯上方を通過中の流体噴流5のパスライン長手方向速度成分を、熱延鋼帯1の通板速度よりも大きくすることが好ましく、特に、熱延鋼帯1の先端側部分の上方を通過中の流体噴流5のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯1の通板速度よりも大きくすることが有効である。すなわち、図22に示すように、熱延鋼帯1の通板速度をVSF(ベクトル)、流体噴流5の流速をVFF(ベクトル)とすると、流体噴流5の流速VFFのパスライン長手方向(鋼帯通板方向)成分VFFlの絶対値が、熱延鋼帯1の通板速度VSFの絶対値より大きくなるようにする。これによって、図23に示すようにパスラインから上方に変位した鋼帯部分100(鋼帯先端部のバウンド)が流体噴流5に衝突(図中、31aが衝突点)した際に、鋼帯部分100には鋼帯通板方向への推進力FFH(ベクトル)と、鉛直下方への押付け力FFV(ベクトル)が作用する。また、鋼帯部分100がループの場合も同様である。そして、鋼帯部分100にこのような作用力が加わることにより、先に図10及び図11で説明したような過程でバウンドやループが解消される。
【0070】
一方、本発明において、鋼帯通板方向側に向けて流体噴流5を噴射する場合、すなわち、流体噴流5を鋼帯通板方向に対する角度αが0°≦α<90°となるように噴射する場合であって、熱延鋼帯1の尾端側部分の上方に流体噴流5を噴射する場合には、熱延鋼帯1の尾端側部分の上方を通過中の流体噴流5のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯1の通板速度よりも小さくすることが好ましい。すなわち、図24に示すように、鋼帯尾端部がランナウトテーブル上を通過している時の熱延鋼帯1の通板速度をVSR(ベクトル)、流体噴流5の流速をVFR(ベクトル)とすると、流体噴流5の流速VFRのパスライン長手方向(鋼帯通板方向)成分VFRlの絶対値が、熱延鋼帯1の通板速度VSRの絶対値より小さくなるようにする。これによって、図25に示すようにパスラインから上方に変位した鋼帯部分100(鋼帯尾端部のバウンド)が流体噴流5に衝突(図中、31bが衝突点)した際に、鋼帯部分100には鋼帯通板方向とは逆方向の抵抗力FRH(ベクトル)と、鉛直下方への押付け力FRV(ベクトル)が作用することになる。また、鋼帯部分がループの場合も同様である。
【0071】
図26は、上記のような流体噴流5により鋼帯尾端部のバウンドが解消される過程を示している。ここでは、バウンド101bが大きく成長する前に本発明条件に従い流体噴射ノズル6から流体噴流5が鋼帯通板方向側(流体噴流5の鋼板通板方向に対する角度α:0°≦α<90°)に噴射されている。この状態でバウンド101bが大きく成長すると流体噴流5と衝突し(図26の(i)参照)、流体噴流5によりバウンド101bの頂点近くの衝突点31bに略水平方向の衝突力が作用する。この衝突力は、パスライン長手方向成分(バウンド101bを反鋼帯通板方向に押す成分)と、鉛直方向成分(バウンド101bをパスライン側に押す成分)として作用する。その結果、図26の(ii)に示すように、バウンド101bは熱延鋼帯通板方向に移動しつつ、反鋼帯通板方向に押し出され、その先端ピーク位置は下降する。これによりバウンド101bの成長は抑制され、最終的には図26の(iii)に示すように解消し、安定通板状態に至る。ここで、流体噴流5は熱延鋼帯1の上方を所定の高さで完全に通過するように流れているため、それよりも下方を通板している鋼帯部分には接することがなく、正常に通板している鋼帯部分をランナウトテーブル3のテーブルロール間に押し込むこともない。このため確実且つ効果的にバウンドを抑制・解消することが可能となる。
【0072】
図27は、上記のような流体噴流5により鋼帯尾端側部分のループが解消される過程を示している。ここでは、ループ103bが大きく成長する前に本発明条件に従い流体噴射ノズル6から流体噴流5が鋼帯通板方向側(流体噴流5の鋼帯通板方向に対する角度α:0°≦α<90°)に噴射されている。この状態でループ103bが成長すると流体噴流5と衝突し(図27の(i)参照)、流体噴流5によりループ103bの頂点近くの衝突点31bに略水平方向の衝突力が作用する。この衝突力は、パスライン長手方向成分(ループ103bを反鋼帯通板方向に押す成分)と、鉛直方向成分(ループ103bをパスライン側に押す成分)として作用する。その結果、図27の(ii)に示すように、ループ103bは鋼帯通板方向に移動しつつ、反鋼帯通板方向に押し出され、そのループ頂点は下降する。これによりループ103bの成長は抑制され、最終的には図27の(iii)に示すように解消し、安定通板状態に至る。ここで、流体噴流5は熱延鋼帯1の上方を所定の高さで完全に通過するように流れているため、それよりも下方を通板している鋼帯部分には接することがなく、正常に通板している鋼帯部分をランナウトテーブル3のテーブルロール間に押し込むこともない。このため確実且つ効果的にループを抑制・解消することが可能となる。
【0073】
以上述べた点からして、本発明法を実施するに当たっては、熱延鋼帯1の先端側部分の上方を通過中の流体噴流5のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯1の通板速度よりも大きくし、熱延鋼帯1の尾端側部分の上方を通過中の流体噴流5のパスライン長手方向速度成分を熱延鋼帯1の通板速度よりも小さくすることが好ましい。
上記のような流体噴流5のパスライン方向速度成分VFFl及びVFRlの調整は、例えば、図8に示す流量調整弁12の開度を変更して噴流速度VFF及びVFRを調整することによって行うことができる。また、角度調整機構14で流体噴流5の噴射角度αを変更することによっても調整可能である。
本発明法により流体噴流5を熱延鋼帯1の上方に噴射するタイミングや期間に特別な制限はないが、先に述べたように熱延鋼帯1が無張力の状態でランナウトテーブル上を通板している期間は、常にバウンドやループなどの非定常的な鋼帯の変位が生じるおそれがある。したがって、熱延鋼帯1が無張力でランナウトテーブル上を通板している期間、換言すれば、熱延鋼帯の先端部と尾端部がランアウトテーブル上を通過している期間は流体噴流5の噴射を行うことが好ましい。
【0074】
また、流体噴流5の噴射のタイミングは、熱延鋼帯1の先端部又は尾端部の通過に合わせて、仕上圧延機最終スタンド2に一番近い噴射位置(流体噴射ノズル6)から順次流体噴流5の噴射を行ってもよいが、流体供給量に問題なければ、全ての噴射位置からを同時に流体噴流5を噴射するのが最も簡便で、且つ効果の面からも確実である。
一方、流体供給量に制限がある場合や、例えばバウンドの抑制・解消のみを目的とする場合には、熱延鋼帯1の先端部又は尾端部の通過に合わせて仕上圧延機最終スタンド2に一番近い噴射位置から順次流体噴流5の噴射を行い、且つその通過直後に流体噴流5の噴射を順次停止させるようにしてもよい。
流体噴流5はできるだけ遠距離まで拡散せずに同一の断面形状のまま到達することが望ましく、この点から流体噴流5のノズル先端の流速は30m/sec以上とすることが好ましい。ここで、一般的な熱延ラインにおける鋼帯通板速度は10m/sec程度であるので、この流体噴流5の流速は、鋼帯通板速度の約3倍以上ということになる。
【0075】
ランナウトテーブルにより搬送される熱延鋼帯には冷却水が供給され、熱延鋼帯1の冷却が行われるが、上方から供給される冷却水により、流体噴流5の流速が弱められる可能性がある。これを防止するために、前記冷却水から流体噴流を遮蔽するための遮蔽体を流体噴流5の上方に配することが好ましい。
この遮蔽体としては、例えば、(a)流体噴流5の上方に配置される遮蔽部材、(b)流体噴流5の上方を流体噴流5と略平行に流れる遮蔽用流体噴流、により構成することができる。後者の場合、遮蔽用流体噴流を流体噴流5の上方に略平行に噴射するための遮蔽用流体噴射ノズルが用いられる。
図28および図29は、上記(b)の場合の一実施形態を示すもので、図28は側面図、図29は平面図である。
図において、20はランナウトテーブル3の上方から通板中の熱延鋼帯1に冷却水21を供給するラミナヘッドである。流体噴射ノズル6の上方には、流体噴流5をラミナヘッド20から供給される冷却水21から遮蔽するために、流体噴流5の直上に遮蔽用流体噴流18を略平行に噴射するための第2の流体噴射ノズル17が設けられている。
【0076】
流体噴射ノズル6から噴射される流体噴流5の直上に、前記第2の流体噴射ノズル17から遮蔽用流体噴流18を噴射することによって、ラミナヘッド20から噴射される冷却水21は遮蔽用流体噴流18に遮られるため、直接的に流体噴流5に衝突することはない。したがって、流体噴流5の流速が減衰することが防止される。
なお、遮蔽用流体噴流18は、流体噴流5の上方で複数本を多段に噴射したり、或いは流体噴流5の噴流幅に合わせて複数本を並列的に噴射してもよい。
また、流体噴流5とその直上の遮蔽用流体噴流18は噴流としては略同じものであるから、遮蔽用流体噴流11を本発明条件に従って噴射することにより、流体噴流5と同様に通板安定化にも寄与させることができる。
【0077】
図30および図31は、上記(a)の場合の一実施形態を示すもので、図30は側面図、図31は平面図である。
図において、流体噴射ノズル6から噴射される流体噴流5をラミナヘッド20から供給される冷却水21から遮蔽するために、流体噴流5の直上に遮蔽板19が設置されている。このような遮蔽板19を設置することによって、ラミナヘッド20から噴射される冷却水21は遮蔽板19に遮られるため、直接的に流体噴流5に衝突することはない。このため流体噴流5の流速が減衰することが防止される。
また、遮蔽板19を水平方向に可動式とし、流体噴流5を使用しない板厚が比較的厚い熱延鋼帯を製造する場合には、遮蔽板19をランナウトテーブル3の上側から移動させるようにしてもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、ランナウトテーブル上で鋼帯にバウンドやループなど非定常的な変位が生じるのは、特に板厚2.0mm以下の薄物の熱延鋼帯において顕著であり、したがって、本発明はそのような薄物の熱延鋼帯の製造に特に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の製造方法における流体噴流の噴射形態の一例を示す側面図
【図2】図1の噴射形態例の平面図
【図3】図1の噴射形態例の正面図
【図4】本発明法において、流体噴流をランナウトテーブル側方から熱延鋼帯全幅の上方を通過するように噴射する場合について、流体噴流の水平面上での噴射方向を示す説明図
【図5】本発明法において、流体噴流をランナウトテーブル上のパスラインの上方位置から噴射する場合の一実施形態を示す平面図
【図6】図5の実施形態の側面図
【図7】本発明法において、流体噴流の噴射方向が水平面に対して傾きを有する場合の一実施形態を示す正面図
【図8】本発明法の実施に供される設備の一実施形態を示す側面図
【図9】図8の実施形態の平面図
【図10】本発明法において流体噴流により鋼帯先端部のバウンドが解消される過程を示す説明図
【図11】本発明法において流体噴流により鋼帯先端側部分のループが解消される過程を示す説明図
【図12】本発明法において流体噴流により鋼帯尾端部のバウンドが解消される過程を示す説明図
【図13】本発明法において流体噴流により鋼帯尾端側部分のループが解消される過程を示す説明図
【図14】本発明法における流体噴流高さhの好ましい範囲を調査するために行ったシミュレーションの結果を、鋼帯の張り付き現象の頻度で整理して示したグラフ
【図15】本発明法における流体噴流のライン方向推進力Fの好ましい範囲を調査するために行ったシミュレーションの結果を、鋼帯先端高さ方向速度の分散値で整理して示したグラフ
【図16】図15で用いたシミュレーションの一例を示すもので、鋼帯先端の高さ方向速度変化を示す説明図
【図17】図15で用いたシミュレーションの他の例を示すもので、鋼帯先端の高さ方向速度変化を示す説明図
【図18】図15で用いたシミュレーションの他の例を示すもので、鋼帯先端の高さ方向速度変化を示す説明図
【図19】本発明法における流体噴流の噴射位置の形態例を示す説明図
【図20】本発明法において、ランナウトテーブル幅方向両側から噴射された流体噴流により鋼帯に作用する幅方向推進力Fを示す説明図
【図21】本発明法において、流体噴流の軌跡を熱延鋼帯面上に平面投影した仮想の噴流通過線xを示す説明図
【図22】鋼帯通板方向側に向けて噴射された流体噴流の流速と鋼帯先端部の通板速度との関係を示す説明図
【図23】鋼帯通板方向側に向けて噴射された流体噴流が、パスライン上方に変位した鋼帯先端部に衝突する際に作用する力を示す説明図
【図24】鋼帯通板方向側に向けて噴射された流体噴流の流速と鋼帯尾端部の通板速度との関係を示す説明図
【図25】鋼帯通板方向側に向けて噴射された流体噴流が、パスライン上方に変位した鋼帯尾端部に衝突する際に作用する力を示す説明図
【図26】図25に示す流体噴流の作用により鋼帯尾端部のバウンドが解消される過程を示す説明図
【図27】図25に示す流体噴流の作用により鋼帯尾端側部分のループが解消される過程を示す説明図
【図28】本発明法において流体噴流の上方に遮蔽用流体噴流を配する場合の一実施形態を示す側面図
【図29】図28の実施形態の平面図
【図30】本発明法において流体噴流の上方に遮蔽板を配する場合の一実施形態を示す側面図
【図31】図30の実施形態の平面図
【図32】鋼帯先端部におけるバウンド及び先端折れの発生状況を示す説明図
【図33】鋼帯先端側部分におけるループ及び腰折れの発生状況を示す説明図
【図34】鋼帯尾端部におけるバウンド及び尾端折れの発生状況を示す説明図
【図35】鋼帯尾端側部分におけるループ及び腰折れの発生状況を示す説明図
【図36】従来技術を実施した場合において、流体の衝突によって正常に通板している鋼帯先端部に生じるバウント現象を示す説明図
【図37】従来技術を実施した場合において、バウンドを生じている鋼帯先端部に流体が衝突した際の現象を示す説明図
【符号の説明】
【0079】
1…熱延鋼帯
2…仕上圧延機最終スタンド
3…ランナウトテーブル
4…コイラー
5…流体噴流
6…流体噴射ノズル
7…流体供給系
8…制御装置
11…ポンプ
12…流量調整弁
13…開閉弁
14…角度調整機構
15…回収手段
16…ピンチロール
17…第2の流体噴射ノズル
18…遮蔽用流体噴流
19…遮蔽板
20…ラミナヘッド
21…冷却水
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成19年12月8日(2007.12.8)
【代理人】 【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏


【公開番号】 特開2008−73772(P2008−73772A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2007−317783(P2007−317783)