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鋼板の冷却方法 - 特開2008−73695 | j-tokkyo
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【発明の名称】 鋼板の冷却方法
【発明者】 【氏名】芹澤 良洋

【氏名】山本 龍司

【氏名】小川 茂

【要約】 【課題】本発明は、拘束ロール対間で拘束搬送中の鋼板を、拘束ロール対間の上下面ノズル群からの冷媒噴流により両面冷却する方法において、拘束ロール対間の鋼板冷却領域での冷却開始から冷却終了までの冷却制御精度を安定確保して、鋼板上下面を均一冷却して鋼材品質を安定確保しながら目標温度まで精度よく冷却できる鋼板の冷却方法を提供する。

【解決手段】上下面ノズル群を配置する各拘束ロール対間の鋼板冷却領域を、鋼板搬送方向または鋼板搬送方向と幅方向で、少なくとも噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域とを分割し、予め各分割領域ごとの熱伝達率を予測し、この予測値に基づき鋼板の予測温度履歴を演算して、上下面ノズル群の噴流衝突部領域の冷媒噴射量を設定制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延された鋼板を拘束して通板する上ロールと下ロールからなる複数対の拘束ロールと、通板方向の前後で隣り合う各拘束ロール対間を通過する鋼板の上・下面に冷却媒体を噴射する鋼板幅方向に一列または複数列に並んだノズルとを有する上・下面ノズル群を備えた鋼板の冷却装置を用いて鋼板を制御冷却する方法において、各拘束ロール対間の上・下面ノズル群による鋼板冷却領域を、鋼板搬送方向で、少なくとも噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域に分割し、予め予測した各分割領域の熱伝達率に基づいて鋼板の予測温度履歴を演算し、各拘束ロール対間における噴流衝突部領域の上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を制御することを特徴とする鋼板の冷却方法。
【請求項2】
各拘束ロール対間の上下面ノズル群の鋼板冷却領域の噴流衝突部領域を、鋼板搬送方向で2分割以上に分割した場合において、上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を各分割領域単位で制御することを特徴とする請求項1に記載の鋼板の冷却方法。
【請求項3】
各拘束ロール対間の鋼板冷却領域の鋼板幅方向で、少なくとも噴流衝突部領域を両側端部領域と、この両側端部領域の内側領域とに分割し、予め設定した各分割領域の熱伝達率に基づいて鋼板幅方向の予測温度履歴を演算し、各拘束ロール対間における鋼板幅方向の噴流衝突部領域の上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板の冷却方法。
【請求項4】
拘束ロール対間の上下面ノズル群の鋼板冷却領域の噴流衝突部領域を、鋼板幅方向で2分割以上に分割した場合において、上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を各分割領域単位で制御することを特徴とする請求項3に記載の鋼板の冷却方法。
【請求項5】
各拘束ロール対間の入側と出側での鋼板温度実測値から、通過した拘束ロール対間での熱伝達率実績を演算により求め、この実績値と鋼板温度実測値に基づいて後続の拘束ロール対間通過時の熱伝達率を補正して鋼板の予測温度履歴を修正し、各拘束ロール対間における鋼板幅方向、鋼板搬送方向の噴流衝突部領域の上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の冷却方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の熱間圧延工程や熱処理工程で複数対の拘束ロール対間で、拘束して通板中の温度が数百度以上の鋼板(主に厚鋼板で、以下「鋼板」と称する。)の上下面に冷媒(水または水と空気の混合体からなる冷却媒体で、以下「冷却水」、「冷媒」、「水」と称する。)を噴射して冷却する場合において、上下均一な冷却を可能にし、形状特性および材質特性が均一で高品質の鋼板を得るために適用する鋼板の冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、熱間圧延直後の高温の鋼板を冷却水により急冷(加速冷却)して、焼き入れ効果を得て鋼板に高強度の特性を付与する制御冷却と称される工程を備えた鋼板製造設備が実用化されている。
ここで用いられる制御冷却装置としては、特許文献1の図1などにおいて、熱間仕上圧延機で圧延後の鋼板の上・下面側に、それぞれ複数のノズルを備えたヘッダー機構を配置して、上下のノズル群から、冷却水を噴射して強制冷却する技術が開示されている。
しかしながら、このような制御冷却装置を備えた従来の鋼板製造設備においては、制御冷却装置で加速冷却する際の鋼板上下面の冷却アンバランスなどに起因して、従来の空冷による場合よりも反りによる形状不良が発生しやすいという問題がある。
この形状不良は、鋼板の上面側と下面側から噴射された冷却水挙動の相違による冷却速度の差、あるいは板幅方向の冷却水流の挙動差が主因になって発生し、板厚方向、板幅方向の非対称な内部応力が生じ、製品の形状を劣化させ、著しい場合には、この形状不良に加え、鋼材強度・伸びなどの機械的性質が低下する等の問題を生じることがある。
また、同一規格の製品を多数製造する際に、各製品間で品質のばらつきが発生しやすいという問題もある。これは、主に冷却停止温度の変動による鋼材組織の変態ばらつきによって発生するものである。
【0003】
近年、鋼板の機械的性質の均一性、同一規格製品を製造する際の製造ロット内でのばらつきに対する制限も厳格になってきている。
現状では、冷却時のばらつきを許容して製品を一定の品質以上に保持すべく、鋼材成分、圧延パターンなどの制御、製造後の再熱処理などにより、冷却停止温度のばらつきを補完している。冷却停止温度のばらつきが低減されれば、鋼材成分、圧延パターンなどの製造条件を緩和でき、さらに製造後の熱処理を省略できるなど、享受できる経済的効果は非常に大きい。
また、鋼板上下面を冷却時に、冷却停止温度のばらつきを防止して、形状不良の発生防止、機械的性質の安定確保を実現する技術として、従来、水冷時の鋼板上下面温度を測定し、温度差より変形量を予測し、変形を抑止するように鋼板上下面への注水量を制御する技術がある。
【0004】
例えば、特許文献2の請求項に記載されるように、材質上、予め定められる冷却終了温度を確保し、かつ、水冷時における熱鋼板の反り量が規定値内に収まるように、上下面から噴射する冷却水量を制御する機能を持った熱間圧延鋼板の冷却制御装置が開示されている。
この特許文献2に開示される技術は、予め与えられている熱鋼板の諸物性値に基づいて上面と下面単位で、冷却水量と熱伝達率との関係を求め、この関係から、板厚方向温度分布の冷却過程での温度履歴を予測し、この温度分布履歴より熱鋼板の反り量を予測し、この反り量が規定範囲に収まるように、上下面から噴射する冷却水量を制御するものである。
この技術では、搬送方向に複数の拘束ロール対間を一つの制御単位とした冷却ゾーンを構成しており、この冷却ゾーン内では各拘束ロール対間の上面ノズル群、下面ノズル群の冷却水量はゾーン内ではそれぞれ同じ量に制御されるようになっている。この冷却ゾーンを複数配置して、板厚、板長等の諸条件や冷却開始温度、冷却停止温度等の要因によって使用冷却ゾーンの調整(使い分け)ができるようになっている。そして、鋼板の冷却制御に関しては、注水量と通板速度の変更により行われることが開示されている。また、熱鋼板の幅方向では、端部のマスク部と中央部とで相違する冷却速度の補正を行うことが開示されている。この際、温度履歴計算に用いられる冷却時の熱伝達率の予測値としては、注水量と鋼板温度を因子として変化する熱伝達率が、上記のそれぞれの冷却ゾーンで設定される。
【0005】
しかし、この特許文献2の技術は、例えば図10に示すように、各拘束ロール対2、2間で拘束搬送中の鋼板1を、複数のノズル3を有する上・下面ノズル群6a、6bを備えた冷却装置6の鋼板冷却領域(距離L:通常の場合は0.7m〜1.5m程度)で冷却する場合において、冷却制御精度を安定確保することが難しく、上記の各要請に十分に応えることは難しい。
本発明者らの知見によれば、鋼板の温度履歴を精度よく予測して、予測に応じた噴射冷媒量の制御を高精度で行うためには、各拘束ロール対間の鋼板冷却領域において鋼板搬送方向や鋼板幅方向で変化する熱伝達率の推移が十分に考慮される必要がある。
しかし、特許文献2の技術では、このことが十分に考慮されていないことから、熱伝達率の予測精度が不十分になる。このことは、特に鋼板搬送方向において通板速度を変化させる場合に顕著である。
したがって、特許文献2の技術では、鋼板上下面の温度履歴差を更に小さくし、形状特性、機械的特性を安定確保して、近年の品質厳格化の要請に十分に応えられる鋼板を確保するために、更に冷却制御条件の補強が望まれる。
【特許文献1】特開昭61−1420号公報
【特許文献2】特開平2−179819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば図1に示すように、熱間圧延された鋼板1を、鋼板搬送方向に配置された各拘束ロール対間(例えば2−2間)で拘束搬送中に上・下面ノズル群6a、6bのノズル3からの冷媒噴射により両面冷却する場合で、各拘束ロール対間の上・下面ノズル群6a、6bによる鋼板冷却領域(L領域)に、熱伝達率が明らかに異なる領域、例えば噴流衝突部領域A並びに噴流非衝突部領域B及びCがある上下面ノズル群6、6・・6によって制御冷却する場合において適用するものである。
ここでいう「噴流衝突部領域」とは、ノズルが密に配置され、冷媒噴流が鋼板表面に直接衝突する冷媒噴流の衝突面積率が大きい主冷却部領域と定義する。
また、「噴流非衝突部領域」とは、冷媒噴流の流れがあるが、冷媒噴流が鋼板表面に直接衝突しない領域と定義する。
本発明では、鋼板冷却領域の各領域で変化する熱伝達率の推移を十分に考慮することによって、例えば上記特許文献2の技術を改善し冷却制御精度をさらに強化して、鋼板上下面の温度履歴差を十分に小さくし、形状特性、機械的特性を安定確保して、近年の品質厳格化の要請に十分に応えられる鋼板の冷却方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼板の冷却方法は、上記の課題を有利に解決するために、以下の(1)〜(5)を要旨とするものである。
(1) 熱間圧延された鋼板を拘束して通板する上ロールと下ロールからなる複数対の拘束ロールと、通板方向の前後で隣り合う各拘束ロール対間を通過する鋼板の上・下面に冷却媒体を噴射する鋼板幅方向に一列または複数列に並んだノズルとを有する上・下面ノズル群を備えた鋼板の冷却装置を用いて鋼板を制御冷却する方法において、各拘束ロール対間の上・下面ノズル群による鋼板冷却領域を、鋼板搬送方向で、少なくとも噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域に分割し、予め設定した各分割領域の熱伝達率に基づいて鋼板の予測温度履歴を演算し、各拘束ロール対間における噴流衝突部領域の上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を制御することを特徴とする鋼板の冷却方法。
(2) (1)において、各拘束ロール対間の上下面ノズル群の鋼板冷却領域の噴流衝突部領域を、鋼板搬送方向で2分割以上に分割した場合において、上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を各分割領域単位で制御することを特徴とする鋼板の冷却方法。
【0008】
(3) (1)または(2)において、各拘束ロール対間の鋼板冷却領域の鋼板幅方向で、少なくとも噴流衝突部領域を両側端部領域と、この両側端部領域の内側領域とに分割し、予め設定した各分割領域の熱伝達率に基づいて鋼板幅方向の予測温度履歴を演算し、各拘束ロール対間における鋼板幅方向の噴流衝突部領域の上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を制御することを特徴とする鋼板の冷却方法。
(4) (3)において、拘束ロール対間の上下面ノズル群の鋼板冷却領域の噴流衝突部領域を、鋼板幅方向で2分割以上に分割した場合において、上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を各分割領域単位で制御することを特徴とする鋼板の冷却方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかにおいて、各拘束ロール対間の入側と出側での鋼板温度実測値から、通過した拘束ロール対間での熱伝達率実績を演算により求め、この実績値と鋼板温度実測値に基づいて後続の拘束ロール対間通過時の熱伝達率を補正して鋼板の予測温度履歴を修正し、各拘束ロール対間における鋼板幅方向、鋼板搬送方向の噴流衝突部領域の上・下面ノズル群の噴射冷却媒体量を制御することを特徴とする鋼板の冷却方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、鋼板の温度履歴を計算予測するに際して、各拘束ロール対間の上下面ノズル群による鋼板冷却領域を、熱伝達率の異なる領域ごとに分割するという物理的に妥当な方法をとることにより、MHF点前後の熱伝達率の変化が大きい温度域での高精度な温度予測が可能になる。
これにより、同じ鋼板内で先端部と尾端部の冷却開始温度の差(尾端部の方が遅く冷却設備に入るので温度が低い)を、通板速度を尾端部の方を先端部に比較して連続的に速くするなどして鋼板全体の温度を均一にするような場合にも、容易に温度推定が可能になる。
本発明では、より具体的には、各拘束ロール対間の上下面ノズル群による鋼板冷却領域を、熱伝達率が近似の領域別に複数分割(例えば噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域とを分割)し、予め各分割領域での熱伝達率を予測して冷却制御するので、温度や通板速度を変化させる場合も考慮して、熱伝達率の予測精度と、この熱伝達率の予測値に基づく鋼板の予測温度履歴の予測精度を改善することができる。これにより、冷却の制御精度を安定的に確保して、鋼板の表面温度分布幅を20℃程度にできる。
また、鋼板上下の各分割領域ごとの熱伝達率分布を考慮して冷却制御することにより、鋼板上下の温度差を10℃程度まで小さくして、目標温度まで精度よく冷却でき、安定した形状特性、機械的性質を有する鋼板を、各鋼板ごとの機械的性質の差が小さい鋼板群として安定確保することができる。なお、MHF点については後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、例えば図1に示すように、各拘束ロー対間の鋼板冷却領域に、噴流衝突部領域Aと噴流非衝突領域B、Cがある上下面ノズル群6(ここでは6で代表説明)により鋼板1を制御冷却する場合について、各種の実験を通じて以下の知見を得た。
(1)鋼板1に対する熱伝達率は、鋼板搬送方向、鋼板幅方向とも、噴射冷媒の噴流衝突部領域と噴流非衝突領域では大きく異なる。すなわち、鋼板1の或る領域で噴射冷媒の噴流衝突面が占める面積(鋼板表面に対して噴射冷媒の噴流が衝突する面の面積を意味し、以下「噴流衝突面積」という。)の割合により熱伝達率が変化する。
したがって、例えば図1での上面側のノズル群6aの場合でいうと、熱伝達率は噴射冷媒の噴流衝突部領域Aと噴流非衝突領域B、Cで明らかに異なり、当該領域に溜まる冷媒の深さ、冷媒の噴射流速や流れ方によっても変化する。
(2)冷媒の噴射流速は、冷媒溜まりの深さがある深さに達すると、冷媒が冷媒溜を通過することによって、その鋼板に衝突するときに減少し、熱伝達率は低下する。
(3)鋼板1の表面温度によって熱伝達率が変化するため、鋼板搬送方向では温度降下があるので、このことを考慮した熱伝達率の予測が必要である。
(4)水を含んだ冷媒を用いる際には、沸騰現象において観察される極小熱流束点(MHF点)が噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域で明らかに異なる。
(5)通板速度変化によって、鋼板品質の安定に影響を与える上記冷却による鋼板の温度履歴が変化する。
上記の知見から、鋼板の温度履歴を精度よく予測して、予測に応じた噴射冷媒量の制御を高精度で行うためには、各拘束ロール対間の鋼板冷却領域において鋼板搬送方向や鋼板幅方向で変化する熱伝達率の推移が十分に考慮される必要がある。
【0011】
本発明では、上記の知見から、基本的には、拘束ロール対間の上下面ノズル群の鋼板冷却領域を、複数分割(少なくとも熱伝達率が明らかに異なる噴流衝突部領域と噴流非衝突領域とを分割)し、鋼板搬送方向、幅方向で変化する熱伝達率の推移を考慮した冷却制御をする。すなわち、予め、各分割領域ごとの熱伝達率を予測し、この伝達率の予測値に基づく鋼板の予測温度履歴の予測精度を改善する。このことによって、温度や通板速度を変化させる場合も、冷却の制御精度を安定的に確保でき、安定した形状特性、機械的性質を有する鋼板を、各鋼板ごとの機械的性質の差が小さい鋼板群として安定確保するものである。
【0012】
本発明での各分割領域の熱伝達率は、冷却設備条件(ノズル配置で決る噴流衝突面積、冷媒深さ、噴射流速、流れ方、極小熱流束点)、鋼板条件(鋼種や板厚などサイズ)、冷却操業条件(温度、冷却速度、冷却目標温度、通板速度)などを考慮して演算予測する。
また、この各分割領域ごとの熱伝達率の予測値に基づく予測温度履歴、この予測温度履歴に基づく噴射冷媒量は、実験や数値計算に基づき演算して得られるものである。
【0013】
以下に本発明について具体的に説明する。
まず、図1に示すような各拘束ロール対間の上下面ノズル群6による鋼板の冷却方法で、段落[0012]の演算に基づいて得られた、冷却領域別の熱伝達率と鋼板表面温度、熱伝達率と表面温度と噴射冷媒密度(水量密度)と冷却特性の関係について、図6、図7、図8により説明する。
図6は、各拘束ロール対間の鋼板冷却領域(ここでは上面側の例)での噴流衝突部(領域)、噴流非衝突部(領域)と、従来の拘束ロール対間平均値の3区分での鋼板表面温度と熱伝達率の関係を概念的に示したものである。この図において、鋼板を高温から冷却する際に熱伝達率が急に大きくなる温度は、MHF(極小熱流束;Minimum Heat Flux)点と呼ばれる。この図6は、噴流衝突部領域のMHF点が噴流非衝突部領域のMHF点より高い温度になっているとともに熱伝達率が高くなっていることを示している。
【0014】
また、図7は、各拘束ロール対間の鋼板冷却領域(ここでは上・下面側共通)での噴流衝突部(領域)の鋼板表面温度と熱伝達率の関係を示したものである。図7では、噴流衝突部領域では噴射冷媒量の増加に伴い、MHF点温度が高くなっており、また、各温度域での熱伝達率も高くなることが示されている。
図8は、各拘束ロール対間の鋼板冷却領域(ここでは上面側の例)での鋼板表面温度と熱伝達率の関係を概念的に示したものである。図8では、噴流非衝突部領域では噴射冷媒量が増加すると各温度域での熱伝達率は増加するが、MHF点温度の変化は顕著ではないことが示されている。
【0015】
従来の噴射冷媒量の設定制御では、一般には、図6に破線で示すように、各拘束ロール対間の上下面ノズル群を複数集めて制御単位とした冷却ゾーンで一括(平均)して予測した熱伝達率に基づいて予測設定している。しかし、上述したように冷媒として水を使用した場合の冷却特性は、鋼板の表面温度だけでなく冷却水のかかり方に依存し、かなり大きく変動する。
このため、各冷却装置単位で一括して、冷却水の噴射条件を予測設定した場合には、各部位に細分化して予測設定した場合とは冷却制御の精度が大きく異なることになる。
【0016】
さらに、鋼板の通板速度が変化した場合、冷却水のかかり方も変わるので、噴流衝突部領域と、噴流非衝突部領域のそれぞれの領域での鋼板熱伝達率の総和が変化し、従来のように一括に扱った場合と比較して乖離が生じる場合が多くなる。このことは、従来のように一括に扱った場合には、設定誤差が大きくなる場合が多くなることを意味する。
すなわち、図6の場合で通板速度が変化した場合の熱伝達率の変化を示した図9に示すように、通板速度が速い場合は、噴流衝突部領域での1回の滞在時間が短く、平均的な熱伝達率は破線のようになるが、通板速度が遅い場合には噴流衝突部領域の1回の滞在時間が長く、MHF点に到達しやすいために平均的な熱伝達率は一点鎖線のようになる。この変化は、噴射冷媒量が多い場合に顕著である。このことから、通板速度ごとに平均した冷却特性を定めれば良いとも考えられるが、板厚が増加した場合には鋼板が冷えにくくなるなど鋼板の材質制御に必要な冷却条件を適正に設定するには、冷却特性のパラメータを板厚、冷却停止温度などの冷却条件ごとに増加させる必要があり、設定が複雑になる。
【0017】
本発明は、上記の本発明者らによる知見および実験結果を十分に考慮してなされたものである。基本的には、例えば熱間圧延された鋼板を拘束して通板する上ロールと下ロールからなる複数対の拘束ロールと、通板方向の前後で隣り合う各拘束ロール対間を通過する鋼板の上・下面に冷媒を噴射する鋼板幅方向に一列または複数列に並んだノズルを有する上・下面ノズル群を備えた鋼板の冷却設備を用いて鋼板を制御冷却するものに関する。
本発明では、複数対の各拘束ロール対間の鋼板冷却領域で、鋼板搬送方向、幅方向において鋼板に対する熱伝達率が明らかに異なる部位(例えば噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域)があることを考慮して、例えばこれら各部位(領域)ごとに分割してそれぞれの熱伝達率の予測精度を高め鋼板の温度履歴の予測精度を高める最適冷却制御条件を設定する。これによって、通板速度を変化させる場合にも、冷却開始から冷却終了までの冷却制御精度を安定確保して、鋼板を目標温度まで精度よく均一に冷却するものである。これにより、本発明では、鋼板品質を安定確保できる鋼板の冷却方法を実現する。
【0018】
[冷却設備例]
本発明では、概念的には、例えば、図1の鋼板製造設備配置例に示すように、熱間圧延機4の後段に配置した上下ロール2a、2bからなる複数の拘束ロール対2−2間、2−2間・・2n−1−2間・・に、噴射冷媒量を制御可能な複数のノズル3を有する上・下面ノズル群6a、6bからなる複数の上下面ノズル群6、6・・6・・を備えた冷却設備を用いる。
この冷却設備には、各拘束ロール対間の上下面ノズル群6、6・・6・・の上・下面ノズル群6a、6bによる鋼板冷却領域(拘束ロール対2と2間距離L×鋼板1の幅領域)の鋼板搬送方向で、熱伝達率の明らかに異なる領域、例えば上面側には、冷媒の噴流衝突部領域Aと噴流非衝突部領域BとC、があり、下面側には冷媒の噴流衝突部領域Dと噴流非衝突部領域E、Fがある。
【0019】
この冷却設備を用いて本発明を実施する場合、予め、熱間圧延機4からの鋼板1のサイズ、温度、所望の特性を得るための冷却速度、冷却目標温度、通板速度などに応じて、冷却を分担させる各拘束ロール対間上下ノズル群を選択し、各拘束ロール対間で拘束搬送中の温度が700〜950℃の鋼板1を両面冷却し、室温〜700℃の範囲の冷却目標温度まで冷却する。
この冷却設備には、通板速度計8、温度計9を備えており、通板速度情報および温度情報を得ることができる。
本発明では、鋼板冷却領域の各分割領域ごとの熱伝達率を予測し、冷却目標温度までの鋼板の予測温度履歴を演算予測して冷媒噴射量を設定制御する。このために、各種の演算を行うための演算器10と、演算に必要な上記各種演算条件(設定値、演算式など)を設定する設定器11、噴流衝突部領域の冷媒噴射量を制御する冷媒制御器12からなる冷却制御装置を接続したものである。
【0020】
この冷却設備において、上・下面ノズル群6a、6bを形成するノズル3としては、例えば図4に示すような一般に使用されている、フルコーン型スプレーノズル、楕円型あるいは長円型スプレーノズル、フラット型スプレーノズルなどで、冷媒噴流が末広がり状で鋼板1表面にノズル口径より大きい衝突面積を形成できるものが主体になるが、スリットノズル、柱状ノズル、ラミナーノズルなどのノズルを含むものである。なお、図1中、5はデスケーリング装置、7は矯正機である。
【0021】
[領域分割例1]
図1の冷却設備例による本発明では、冷却制御精度を改善するために、各拘束ロール対間の上下面ノズル群による鋼板冷却領域を、鋼板搬送方向の上面側では、少なくとも冷媒の噴流衝突部領域A並びに噴流非衝突部領域B及びCとに複数分割する。また、下面側では、少なくとも冷媒の噴流衝突部領域Dと、噴流非衝突部領域E、Fとに複数分割する。
実験や熱計算などにより予め各分割領域での熱伝達率を予測して、この予測値に基づいて鋼板1上下面の温度履歴を演算し、冷却開始から冷却終了までの鋼板上下面に対する温度履歴を近似させる噴射冷媒量を設定制御する。
また、各拘束ロール対間の上下面ノズル群による鋼板冷却領域の鋼板幅方向では、図示をしてないが、熱伝達率の異なる領域、例えば噴流衝突部領域(幅中央部領域)と、その両側部の噴流非衝突部領域(マスク部がある場合)または噴流衝突部領域(マスク部がない場合)があることから、これらの領域を分割し、更に冷媒の流れ方の差異に基づいて領域分割を考慮する。
そして、予め各分割領域での熱伝達率を予測して、この予測値に基づいて鋼板上下面の温度履歴を演算するものである。この演算結果を上記の鋼板搬送方向の各分割領域の熱伝達率と温度履歴に組み合わせて、鋼板搬送方向と鋼板幅方向を考慮した冷却開始から冷却終了までの鋼板上下面に対する温度履歴を近似させる噴射冷媒量を設定制御することもできる。
【0022】
なお、上記の冷却設備で、本発明による冷却制御精度を高めるために、各拘束ロール対間の上下面ノズル群6、6・・6・・として、上・下面ノズル群6a、6bによる鋼板冷却領域の鋼板搬送方向で例えば噴流衝突部領域A、Dを2分割以上に分割することを考慮することができる。この場合、この各分割領域単位で噴射冷媒量を制御することを考慮できる。
【0023】
[領域分割例2]
本発明の鋼板冷却方法によって、鋼板1を水を冷媒(以下「水」または「冷却水」ともいう。)とする冷媒噴流3aによって冷却する場合で、図1に示した拘束ロール対2−2間に配置している拘束ロール対間の上下面ノズル群6の例を拡大して示した、要部概念図である図2、図3に基づいて更に具体的に説明する。
ここでは、鋼板搬送方向では、上・下面ノズル群による噴流衝突部領域AとDをそれぞれ2分割して、他の分割領域を含めた分割領域ごとに熱伝達率を予測し、この各分割領域で別々に噴射冷媒量を設定制御する構造で図示する。
【0024】
図2(a)は、複数のノズル3を備えた上・下面ノズル群6a、6bでの鋼板搬送方向のノズル3の配置例での拘束ロール対2−2間の鋼板冷却領域Lの分割例を示したものである。ここでは、ノズル3は図4(c)に示すような楕円型スプレーノズルで、噴流衝突面は楕円型であり、長軸側を搬送方向と交叉するように配置し、鋼板1表面にほぼ直角方向から冷媒噴流3aを衝突させるように、搬送方向に一定の間隔で複数列配置したものである。
【0025】
図2(b)は、上・下面ノズル群6a、6bでの鋼板幅方向のノズル3の配置と、拘束ロール対2−2間の鋼板冷却領域Lの分割例を示したものである。
鋼板上面側に噴射された冷媒噴流3aは、鋼板1の上面を冷却して板上冷媒流3bとして鋼板1の側端から排出される。また、鋼板下面側に噴射された冷媒噴流3aは、鋼板1の下面に衝突して鋼板1の下面を冷却して落下排出される。
図2(b)中、13は、鋼板1の両側部に冷媒噴流3aが衝突しないように遮蔽するマスク部を形成するエッジマスクである。
【0026】
図3(a)は、図2(a)の拘束ロール対2−2間の拘束ロール対間の上下面ノズル群6の上面ノズル群6aの鋼板幅方向と鋼板搬送方向での鋼板冷却領域のノズル3配置と分割領域例を示した平面概念図である。
図3(b)は、図2(a)の拘束ロール対2−2間の拘束ロール対間の上下面ノズル群6の下面ノズル群6bの鋼板幅方向と鋼板搬送方向での鋼板冷却領域のノズル3配置と分割領域例を示した、鋼板1の下面側から見た平面概念図である。
【0027】
領域分割例2において、図2(a)に示すように、拘束ロール対、例えば2−2間に配置した上下面ノズル群6による鋼板冷却領域を、上面側の鋼板搬送方向では、
(1)噴流衝突部領域A
(2)噴流衝突部領域A
(3)拘束ロール2の近傍領域の非噴流衝突部領域B
(4)拘束ロール2の近傍領域の非噴流衝突部領域C
に分割する。
上面側の搬送方向分割では、予め各分割領域の熱伝達率を予測し、この予測値に基づいて、この拘束ロール対間における鋼板1上面側の冷却開始から冷却終了までの予測温度履歴を演算して、各噴流衝突部領域A、Aで上・下面ノズル群6a、6bの冷却開始から冷却終了までの鋼板上面の噴射冷媒量を設定制御する。
ここでは、鋼板冷却領域を4分割したが、搬送方向での温度降下や、冷媒の流れ方の差異に基づいて更に細分した領域分割を考慮することができる。また、鋼板冷却領域を噴流衝突部領域Aと非噴流衝突部領域(B、C)の2分割のみとすることもできる。
【0028】
また、下面側では鋼板搬送方向で、
(1)上面側の噴流衝突部領域Aにほぼ相対する噴流衝突部領域D
(2)上面側の噴流衝突部領域Aにほぼ相対する噴流衝突部領域D
(3)上面側の噴流非衝突部領域Bにほぼ相対する非噴流衝突部領域E
(4)上面側の噴流非衝突部領域Cにほぼ相対する非噴流衝突部領域F
に分割する。
この下面側の搬送方向分割でも、この各分割領域単位で、鋼板1のサイズ、温度、温度と熱伝達率の関係、冷却目標温度、通板速度、冷却速度、噴流衝突面積率などに基づいて熱伝達率を予測し、この予測値に基づいてこの拘束ロール対間における鋼板下面側の冷却開始から冷却終了までの予測温度履歴を演算し、この鋼板下面側の温度履歴が、相対する鋼板上面側の温度履歴に近づくように各分割領域の噴射冷媒量を設定制御する。ここでは、鋼板冷却領域を4分割したが、冷媒の流れ方の差異に基づいて更に領域分割を考慮することができる。
なお、下面ノズル群による冷媒噴流は、上面ノズル群の場合のような鋼板面上の冷媒流が殆ど生じないため、上面ノズル群の分割領域の熱伝達率に対応させ、例えば噴流衝突部領域を広く形成することにより、上面ノズル群の場合より、通板速度変化の影響を小さくできる。(請求項1の形態例に相当)。
【0029】
一方、この拘束ロール対間の上下面ノズル群6の上面側の鋼板幅方向では、図2(b)に示すように、鋼板冷却領域(鋼板1の幅w領域)を、
(1)中央部領域である噴流衝突部領域A(上流側ではA、下流側ではA
(2)一方の側端部の噴流非衝突部領域(マスク部領域)Ea(上流側Ea、下流側Ea
(3)他方の側端部の噴流非衝突部領域(マスク部領域)Eb(上流側Eb、下流側Eb
とに分割する。
上面側の鋼板幅方向分割では、鋼板幅方向の分割領域A(A)、Ea、Ebの各列に区分して鋼板搬送方向のA、A、B、C領域での熱伝達率を予測して、この予測値に基づいて鋼板温度履歴を演算し、噴流衝突部領域A、A、Ea、Ebでの噴射冷媒量を設定制御する。(Ea、Eb領域がマスク部領域でない場合には噴流衝突部領域として噴射冷媒量を設定制御することがある。)
【0030】
また、拘束ロール対間の上下面ノズル群6の下面側の鋼板幅方向では、上面側と同様、鋼板冷却領域を、
(1)中央部領域である噴流衝突部領域(上流側ではD、下流側ではD
(2)一方の側端部の噴流非衝突部領域(マスク部領域)Ec
(3)他方の側端部の噴流非衝突部領域(マスク部領域)Ed
に分割する。
下面側の鋼板幅方向分割では、鋼板幅方向の分割領域D(D)、Ec、Edの各列に区分して、鋼板搬送方向のD、D、E、F領域での熱伝達率を予測して、この予測値に基づいて、この拘束ロール対間での冷却開始から冷却終了までの鋼板の予測温度履歴を演算し、上面ノズル群6aの相対する各区分列の各分割領域の鋼板の予測温度履歴に近付けるように、噴流衝突部領域D、またはD、Ec、及びEdの噴射冷媒量を設定制御する。(Ec、Ed領域がマスク部領域でない場合には噴流衝突部領域として噴射冷媒量を設定制御することがある。)
このように鋼板搬送方向と鋼板幅方向の各分割領域の熱伝達率を考慮した場合には、鋼板搬送方向の熱伝達率のみを考慮した場合より、更に冷却制御精度を安定的に高めることが可能である。(請求項3の形態例に相当)
【0031】
上記の冷却制御精度をより安定的に確保するためには、例えば各拘束ロール対2−2間、各拘束ロール対2−2間の上下面ノズル群6、6の上・下面ノズル群6a、6bでの噴流衝突部領域を、鋼板搬送方向、鋼板幅方向で複数分割し、各分割領域単位で、熱伝達率を予測し鋼板の予測温度履歴を演算して噴射冷媒量を設定制御することも考慮することが有効である。(請求項2、請求項4の形態例に相当。)
【0032】
一般に、冷却設備での実操業では、鋼板のサイズ、通板速度、温度などの変動により、上記各分割領域の鋼板の予測温度履歴が予測通りにならず、冷却制御精度が低下し、鋼板1の上下面を目標温度まで精度よく均一に冷却できず、鋼板品質を安定確保できなくなる場合がある。
この対策として、通板速度、各拘束ロール対2−2間、2−2間・・2n−1−2間・・の各拘束ロール対間の上下面ノズル群6、6・・6・・の入側と出側の温度を実測して、当該および後続の拘束ロール対間の上下面ノズル群での実際の熱伝達率を演算し、この演算値に基づいて当該および後続の拘束ロール対間の上下面ノズル群による鋼板の予測温度履歴を補正し、実操業に対応した設定制御に変更できることがより好ましい。(請求項5の形態例に相当)
【0033】
本発明では、鋼板搬送方向で、鋼板冷却領域を、少なくとも噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域を分割して、各分割領域ごとの熱伝達率を予測することが要件である。鋼板幅方向では、中央部領域と両側部領域では冷媒の流れ方、特に冷媒深さが異なることから熱伝達率が異なるため、鋼板幅方向の冷却領域の分割を考慮する。
鋼板搬送方向、鋼板幅方向ともに鋼板冷却領域を分割することは必須ではないが、鋼板幅方向の両側部領域では、ノズル3からの冷媒噴流3aを遮蔽して鋼板に当たらないようにエッジマスク13を配置する場合があり、その際の幅方向での冷却制御精度を安定確保するためにも、このエッジマスク13によるマスク部での熱伝達率予測を分割して行うことによって、冷却制御精度を相応に向上させることが可能である。したがって、鋼板搬送方向、鋼板幅方向ともに鋼板冷却領域を分割して分割領域ごとの熱伝達率を予測することが好ましい。
なお、上記のように、上・下面ノズル群6a、6bで鋼板冷却領域を分割する場合に、鋼板上面側と鋼板下面側で分割領域が全く同じであることは必須ではない。
【0034】
[領域分割例3]
この領域分割例3では、図5(a)、(b)に示すように、鋼板1に対するノズル3(群)と3(群)が、上面ノズル群6aの鋼板搬送方向で明らかに離れて配置される点で、領域分割例1、2と異なる。
本発明を適用するときは、ノズル3領域と3領域が噴流衝突部領域A、Aとし、ノズル3領域と3領域間は、噴流非衝突部領域BCとして扱う。したがって、この場合では、鋼板冷却領域は、例えば、
(1)噴流衝突部領域A
(2)噴流衝突部領域A
(3)噴流非衝突部領域B
(4)噴流非衝突部領域C
(5)噴流非衝突部領域BC
に分割する。
また、上面ノズル群6aの鋼板幅方向では、基本的には、図2(b)、図3(b)に示す領域分割例2の場合と同様、鋼板冷却領域は、Ea、A(またはA)、Ebに分割することを考慮する。
なお、ここでは下面ノズル群6bの領域分割については説明を省略する。
【0035】
本発明における各拘束ロール対間の上・下面ノズル群6a、6bのノズルからの噴射冷媒量については、例えば実験値や熱計算に基づく例えば図7、図8などによる噴流衝突部領域と噴流非衝突部領域での鋼板表面温度と熱伝達率、水量密度、MHF点の上昇の有無などの関係に基づく冷却特性を考慮して、鋼板上下、鋼板幅方向で均一冷却を効率的に実現できる条件を演算し設定制御することができる。
例えば、上面ノズル群では、各分割領域の熱伝達率を予測設定し、この予測値に基づいて、鋼板の温度履歴を演算して、冷却開始から冷却終了までの鋼板搬送方向および幅方向の各分割領域(噴流衝突部領域)の噴射冷媒量、通板速度を設定制御するものであり、鋼板条件(板厚、板幅、冷却停止温度)、冷却開始温度変化、通板速度変化に対応して冷却制御精度を安定確保するものである。
また、下面ノズル群では、基本的には、上面ノズル群の各分割領域での熱伝達率に対応して、鋼板冷却領域を複数分割し、鋼板上下面の温度履歴差を小さくするように、各分割領域での噴射冷媒量を設定制御するものである。
【0036】
本発明では、上記のようにして、各拘束ロール対間の上下面ノズル群による鋼板冷却領域を、複数分割し、各分割領域での熱伝達率を精度よく予測し、鋼板の予測温度履歴を演算して、鋼板上下面の温度履歴差を小さくして、各拘束ロール対間の上下面ノズル群で鋼板を冷却目標温度にするように、噴射冷媒量、通板速度を設定制御するものである。
【0037】
上記は、拘束ロール対2−2間に配置の拘束ロール対間の上下面ノズル群6に基づいて説明したが、この拘束ロール対間の上下面ノズル群6に後続させて、上下面ノズル群6と同様の拘束ロール対2−2間・・2n−1−2・・の上下面ノズル群6・・6・・(ただし、後段側の各拘束ロール対間の上下面ノズル群になる程、鋼板温度レベルは低くなるため、これらの上下面ノズル群は必ずしも同じものにはならない。)を、搬送方向にそれぞれ冷却を分担するように配置するものである。
これらの後続する拘束ロール対2−2・・2n−1−2間・・の上下面ノズル群6・・6・・などでも、基本的には、拘束ロール対間の上下面ノズル群6と同様に、鋼板冷却領域を分割して、各分割領域の熱伝達率を予測し、鋼板の予測温度履歴を演算して、最終の拘束ロール対間の上下面ノズル群で冷却を終了したとき、鋼板の上下方向、幅方向で鋼板の温度履歴差を小さくして冷却目標温度にするように、各拘束ロール対間の上・下面ノズル群の噴射冷媒量を設定制御するものである。
【実施例】
【0038】
この実施例は、図1〜図3に示したような鋼板の冷却設備例で、熱間仕上圧延後の板厚25mm、板幅4000mmで温度が850℃の鋼板(鋼帯)1を、デスケーリング後、矯正して通板速度60m/分で拘束ロール対2−2間を拘束搬送中に、拘束ロール対2−2間に配置した上下面ノズル群6の上・下面ノズル群6a、6bの各ノズル3から冷却水を噴射して鋼板1を400℃まで冷却速度30℃/秒で冷却する場合のものである。
実際の冷却設備では、拘束ロール対間の上下面ノズル群6に後続して、複数対の拘束ロール対間にそれぞれ配置された上下面ノズル群とで冷却を分担するが、ここでは、拘束ロール対間の上下面ノズル群6単位での冷却についての実施例とする。
【0039】
この実施例では、拘束ロール対間の上下面ノズル群6の上面ノズル群6aでの鋼板冷却領域を、鋼板搬送方向では噴流衝突部領域AとA、入側の噴流非衝突部領域Bと、出側の噴流非衝突部領域Cの4分割にして各分割領域ごとに熱伝達率を予測し、噴射冷却水量は、噴流衝突部領域A、Aで別々に設定制御できるようにした。したがって、冷却領域の分割は、前述した領域分割例2に準拠した。
また、鋼板幅方向の鋼板冷却領域を、搬送方向の噴流衝突部領域A(またはA)の両側部(マスク部領域)の噴流非衝突部領域Ea、Ebの3分割にし、それぞれの分割領域ごとに熱伝達率を予測し、噴射冷却水量は、噴流衝突部領域A(またはA)、A領域の側部:Ea、Eb、A領域の側部:Ea、Eb(Ea、Eb、Ea、Ebは、マスク部領域にしない場合には噴流衝突部領域とすることも考慮する)で別々に設定制御できるようにした。
【0040】
一方、下面ノズル群6bでは鋼板冷却領域を、鋼板搬送方向では噴流衝突部領域DとDと、入側の噴流非衝突部領域Eと、出側の噴流非衝突部領域Fに4分割して各分割領域ごとにあらかじめ実験で求めた熱伝達率の特性に基づき当該条件の熱伝達率を予測し、噴射冷却水量は、噴流衝突部領域D、Dで別々に設定制御できるようにした。
また、鋼板幅方向では搬送方向の噴流衝突部領域D(またはD)と、その両側部の噴流衝突部領域Ec、Edの3分割にし、それぞれの分割領域ごとに熱伝達率を予測し、噴射冷却水量は、噴流衝突部領域D(またはD)、Ec、Edで別々に設定制御できるようにした。
実施条件と実施結果を、従来例による場合(比較例)と共に下記に説明する。ここでいう従来例とは、拘束ロール対間の上下面ノズル群の上・下面ノズル群の鋼板冷却領域を分割しないで、一括して熱伝達率を予測して、拘束ロール対間の上下面ノズル群の上・下面ノズル群からの冷却水量を設定制御した場合の例である。
【0041】
[実施条件]
拘束ロール径:400mm
拘束ロール対間(鋼板冷却領域)距離L:1000mm
鋼板冷却領域の面積:4m(鋼板1の幅×拘束ロール間距離)
上面ノズル群6a
(搬送方向)
入側の噴流非衝突部領域Bの面積:1m
(Bの長さ:250mm)
噴流衝突部領域A、Aの面積:計2m
(A、Aの長さ:各250mm)
噴流衝突部領域A、Aの噴流衝突面積率:各70%
出側の噴流非衝突部領域Cの面積:1m
(Cの長さ:250mm)
(幅方向)
側部(マスク部)の噴流非衝突部領域Ea、Eb、Ea、Ebの面積:各0.125m
(Ea、Eb、Ea、Ebの幅:各250mm)
【0042】
下面ノズル群6b
(搬送方向)
入側の噴流非衝突部領域Eの面積:0.8m
(Eの長さ:200mm)
噴流衝突部領域D、Dの面積:計2.4m
(D、Dの長さ:各300mm)
噴流衝突部領域D、Dの噴流衝突面積率:各90%
出側の噴流非衝突部領域Fの面積:0.8m
(Fの長さ:200mm)
(幅方向)
側部の噴流衝突部領域Ec、Edの面積:各0.22m
(Ec、Edの幅:各220mm)
【0043】
この実施例では、上面ノズル群6aにおいて、鋼板幅方向の分割領域A、A、Ea、Eb、Ea、Eb(Ea、Eb、Ea、Ebは、ここではマスク部になるため、冷却水は噴射しない噴流非衝突部領域にした。)と、鋼板搬送方向の分割領域B、A(またはA)、Cを加味した、上記冷却速度を確保するために必要な上面側の熱伝達率を予測し、この拘束ロール対間の上下面ノズル群6の出側での鋼板温度を目標温度400℃にするために冷却開始から冷却終了までの噴流衝突部領域A、A、Ea、Eb、Ea、Ebからの噴射冷却水量密度(ただし、Ea、Eb、Ea、Eb領域では噴射水量は0)、
A領域 :1.3m/m/分
領域:1.0m/m/分
にし、通板速度:60m/分に設定制御した。ここでの各分割領域の熱伝達率については、
A領域 :図7の1.3の線
領域:図7の1.0の線
B領域 :図8の1.3の線
C領域 :図8の1.0の線
Ea、Eb領域:図8の1.3の線
Ea、Eb領域:図8の1.0の線
に、それぞれ基づいて予測設定した。
【0044】
一方、下面ノズル群6bにおいては、鋼板幅方向の分割領域Ec、D、D、Ed(ここでは、Ec、Edはマスク部とし、噴流非衝突部領域とした。)と、鋼板搬送方向の分割領域E、D、D、Fと鋼板幅方向の双方を加味した、上記冷却速度を確保するために必要な下面側の熱伝達率を予測し、この拘束ロール対間の上下面ノズル群6の出側での鋼板温度を目標温度400℃にするために冷却開始から冷却終了までの噴流衝突部領域D、D、Ec、Edからの噴射冷却水量密度を、
D領域 :1.7m/m/分
領域:1.3m/m/分
に設定制御した。ここでの各分割領域の熱伝達率については、
D領域 :図7の1.7の線
領域:図7の1.3の線
Ec、Ed領域:別途測定の空冷の値
E領域、F領域:別途測定の空冷の値
に、それぞれ基づいて予測設定した。
【0045】
この拘束ロール対間の上下面ノズル群6の上・下面ノズル群6a、6bにより上下から冷却され下流側の拘束ロール対2を通過5秒後の鋼板の上面側の温度と下面側の温度を測定したところ、上面側と下面側の温度差は目標の温度400℃に対して±10℃と均一性が高く、反りや残留応力の極めて小さい、形状、材質ともに均一性に優れた十分に満足できる鋼板1を得ることができた。
この結果は、鋼板搬送方向、鋼板幅方向の鋼板冷却領域を、熱伝達率が明らかに異なる領域を複数分割して熱伝達率の予測精度を高め、冷却開始から冷却終了までの鋼板温度履歴を、幅方向部位、上下面での差を小さくできたことによるものである。
なお、ここでの鋼板温度の測定は、鋼板の端部から板厚の2倍相当の縁部領域(幅100mm)を除いた中央部位で行なったものである。
また、この鋼板と同じ板幅で厚みが15−40mmの鋼板について、通板速度を変化範囲40−90m/分で変化させて、1200枚製造したところ、冷却開始温度850℃に±20℃の変動が生じていたが、実績の冷却停止温度の標準偏差は10℃と良好であった。
【比較例】
【0046】
この比較例では、上下面ノズル群6a、6bの鋼板冷却領域を分割しないで一括して熱伝達率を予測し、噴流衝突部領域一括で噴射冷媒量を設定制御する点で実施例1と実施条件が異なるものである。この上面側で噴射冷媒量は総量としては実施例と同じである。
上面ノズル群6aでは、上記冷却速度を確保するために必要な鋼板上面側の熱伝達率を予測(ここでは図6で0.65m/m/分(平均値)を想定して上面側の熱伝達率を予測)し、噴流衝突部領域A+Aからの噴射冷却水量を設定し、この拘束ロール対間の上下面ノズル群6の出側での鋼板温度が目標温度400℃にするために冷却開始から冷却終了まで噴射冷却水量を設定し制御した。
一方、下面ノズル群6bにおいては、相対する鋼板上面側の熱伝達率を予測し、この予測値に基づく冷却開始から冷却終了までの鋼板温度履歴を、相対する鋼板の上面側の温度履歴に近付けるように噴流衝突部領域D+D、Ec、Edからの噴射冷却水量を設定し制御した。
【0047】
この拘束ロール対間の上下面ノズル群6の上・下面ノズル群によって冷却され下流側の拘束ロール2を通過5秒後の鋼板の上面側の温度と下面側の温度を測定したところ、上面側と下面側の温度差は目標の温度400℃に対して±20℃と変動幅が大きく、反りや残留応力が大きく、形状、材質ともに均一性に優れた鋼板を安定して得ることができなかった。
また、この鋼板と同じ板幅で厚みが15−40mmの鋼板を目標冷却停止温度400℃で1200枚製造したところ、冷却開始温度850℃に±18℃の変動がある中、実績の冷却停止温度の標準偏差は25℃と、本発明の実施例に比較し大きくなった。
なお、この比較例での冷却開始から冷却終了までの鋼板温度履歴は、幅方向部位で明らかな差があり、また上下面でも同様の差があった。
これらの主原因は、鋼板搬送方向の鋼板冷却領域で熱伝達率が明らかに異なる部位があるにも拘らず、一括(平均)して熱伝達率を設定して噴射冷却水量を設定し制御したことにあると予想される。
【0048】
本発明は、上記の各実施例の内容に限定されるものではない。例えば分割する部位領域、上下面ノズル群を構成する各ノズルの種類(構造)や配置(数、配列)条件、各ノズル列からの冷媒噴射条件、拘束ロールの径、配置条件、エッジマスクの有無などについては、対象鋼板のサイズ(特に厚み)温度、通板速度、目標冷却温度、冷却時間(冷却速度)などに応じて、上記請求項の範囲内で変更のあるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を実施する鋼板冷却設備を備えた熱間圧延設備配置例を示す側面概念説明図。
【図2】(a)図は、図1の冷却設備での拘束ロール対間の上下面ノズル群の搬送方向ノズル配置例と鋼板冷却領域の分割例を示す幅方向中央部での側面概念説明図。(b)図は、(a)図のAa−Ab矢視概念説明図。
【図3】(a)図は、図2(a)での上面ノズル群のノズル配置例と鋼板冷却領域の分割例を示す平面概念説明図。(b)図は、図2(a)図での下面ノズル群のノズル配置例と鋼板冷却領域の分割例を示す鋼板下面側の平面概念説明図。
【図4】本発明で用いるノズル例を示す立体説明図。
【図5】(a)図は、拘束ロール対間の上下面ノズル群の他の実施例であり、上面ノズル群の搬送方向ノズル配置例と鋼板冷却領域の搬送方向の分割例を示す幅方向中央部での側面概念説明図。(b)図は、(a)図での上面ノズル群の幅方向ノズル配置例と鋼板冷却領域の幅方向分割例を示す(a)図のBa−Bb矢視概念説明図。
【図6】各拘束ロール対間の鋼板冷却領域の鋼板表面温度と熱伝達率の関係で示す噴流衝突部(領域)と噴流非衝突部(領域)と平均値(従来)の3区分での熱伝達率説明図。
【図7】各拘束ロール対間の鋼板冷却領域の鋼板表面温度と熱伝達率の関係、水量密度増加とMHF点増加の関係で示す噴流衝突部の冷却特性説明図。
【図8】各拘束ロール対間の鋼板表面温度と熱伝達率、水量密度増加とMHF点増加の関係で示す噴流非衝突部の冷却特性説明図。
【図9】図6で、鋼板の通板速度が変化した場合の平均値(従来)の変化を示す説明図。
【図10】従来の鋼板の拘束ロール対間の上下面ノズル群での上下面ノズル群におけるノズル配置例を示す幅方向中央部での側面概念説明図。
【符号の説明】
【0050】
1 鋼板 2、2 拘束ロール対
2a 上ロール 2b 下ロール
3、3、3 ノズル 3a 冷媒噴流
3b 板上冷媒流 3s 噴流衝突面
4 熱間仕上圧延機 5 デスケーリング装置
、6 拘束ロール対間の上下面ノズル群
6a 上面ノズル群
6b 下面ノズル群 7 矯正機
8 通板速度計 9 温度計
10 演算装置 11 設定器
12 冷媒制御器 13 エッジマスク
L 拘束ロール対間距離(鋼板冷却領域長さ)
W 鋼板幅
[上面側]
A 噴流衝突部領域(上流側)
噴流衝突部領域(下流側)
B 噴流非衝突部領域(上流側)
C 噴流非衝突部領域(下流側)
BC 噴流非衝突部領域(AとA間)
Ea、Eb 幅方向側部領域(噴流衝突部領域の側部)
Ea、Eb:上流側 Ea、Eb:下流側
[下面側]
D 噴流衝突部領域(上流側)
噴流衝突部領域(下流側)
E 噴流非衝突部領域(上流側)
F 噴流非衝突部領域(下流側)
Ec、Ed 幅方向側部領域(噴流衝突部領域の側部)
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年9月19日(2006.9.19)
【代理人】 【識別番号】100062421
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弘明

【識別番号】100080171
【弁理士】
【氏名又は名称】津波古 繁夫

【識別番号】100139701
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 良幸


【公開番号】 特開2008−73695(P2008−73695A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−252336(P2006−252336)