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【発明の名称】 冷間鍛造用太径線材の製造方法
【発明者】 【氏名】森 茂広

【氏名】萩原 尚

【要約】 【課題】角鋼片を熱間圧延して直径20mm以上の太径線材を製造するに際し、太径線材にヘゲ疵が発生するのを効果的に抑止することにより、高歩留にて冷間鍛造性に優れた太径線材の製造方法を提供する。

【構成】角鋼片から、磁粉探傷で検出される疵だけでなく、磁粉探傷では検出されない打ち疵および擦り疵(「打ち疵等」と総称)をも除去した後に熱間圧延する。前記打ち疵等の除去に際し、当該打ち傷等が特に発生しやすい、角鋼片の角部をその長手方向に沿って全部面取りすることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角鋼片を熱間圧延して直径20mm以上の太径線材を製造するに際し、前記角鋼片から、磁粉探傷で検出される疵、ならびに磁粉探傷では検出されない、打ち疵および擦り疵を除去した後、熱間圧延することを特徴とするヘゲ疵発生の抑止効果の高い冷間鍛造用太径線材の製造方法。
【請求項2】
角鋼片を熱間圧延して直径20mm以上の太径線材を製造するに際し、前記角鋼片から磁粉探傷で検出される疵を除去するとともに、前記角鋼片の角部をその長手方向に沿って全部面取りした後、熱間圧延することを特徴とするヘゲ疵発生の抑止効果の高い冷間鍛造用太径線材の製造方法。
【請求項3】
前記角鋼片の疵を除去した後のバリ高さを1mm以下にする請求項1または2に記載の冷間鍛造用太径線材の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、角鋼片を熱間圧延して直径20mm以上の太径線材を製造する方法に関し、詳しくは、このような太径線材におけるヘゲ疵の発生を抑止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、角鋼片は、磁粉探傷にて検出された疵をグラインダ等で研削除去した後、熱間圧延にて線材に加工され、さらに冷間鍛造にて、例えば弁ばね、懸架ばね等の最終製品に加工されていた。
【0003】
そして、近年の冷間鍛造技術の進歩に伴い、線材の製造段階における製造コストの低減や最終製品の高強度化を目的として、線材を太径化するニーズ(すなわち、直径20mm以上の太径線材に対する需要)が高まってきている。
【0004】
しかしながら、このような線材の太径化に伴って、線材におけるヘゲ疵の出現率が高くなってきており、線材の歩留および品質(特に、冷間鍛造性)が低下する問題が生じている。
【0005】
この理由は、以下のように想定される。すなわち、角鋼片の磁粉探傷は、磁化した角鋼片に蛍光磁粉を振り掛け、暗室で磁粉模様を目視観察することにより行うが、疵口が狭く、疵深さの深い疵は、磁粉模様がはっきり出て検出しやすいが、打ち疵および擦り疵といった比較的なだらかで浅い疵は、磁粉模様がはっきりせず検出が困難である。しかしながら、従来の細径線材では、角鋼片からの減面率(圧下率)が大きいため、磁粉探傷で検出されないような比較的なだらかで浅い疵は除去しなくても熱間圧延過程で治癒され問題とならなかったと考えられる。これに対し、直径20mm以上の太径線材では、角鋼片からの減面率が従来の細径線材よりも低下したことにより、上記従来の細径線材では問題とならなかったような比較的なだらかで浅い疵であっても熱間圧延過程を経ても完全に治癒せずにヘゲ疵として残存してしまうためと考えられる。
【0006】
しかしながら、角鋼片に存在する疵のうちどの程度の疵が太径線材においてヘゲ疵となるかについては、いまだ明確ではなく、その対処方法は確立されていないのが現状である。
【0007】
ここで、鋼片の手入れ方法については、例えば特許文献1に、砥粒入りウォータジェットの噴射による鋼片疵の除去痕と圧延後のヘゲ疵との関係を開示したものが存在するが、除去すべき鋼片疵の種類や形態、発生箇所等については何ら記載されていない。
【特許文献1】特許第2825769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、角鋼片を熱間圧延して直径20mm以上の太径線材を製造するに際し、太径線材にヘゲ疵が発生するのを効果的に抑止することにより、高歩留にて冷間鍛造性に優れた太径線材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記線材の太径化に伴うヘゲ疵増加の想定メカニズムを検証するために、角鋼片において磁粉探傷にて検出されない疵と、熱間圧延後の太径線材に発生するヘゲ疵との関係を調査した。
【0010】
すなわち、まず、195mm角×1000mm長さの角鋼片(ビレット)について、磁粉探傷にて発見(検出)した疵の除去作業の際に、目視にて新たに発見した打ち疵および擦り疵(以下、「打ち疵等」と総称する。)にマーキングを施し、これら新たに発見した打ち疵等は除去しないままで熱間圧延して直径46mmの太径線材に加工した。そして、この熱間圧延後の太径線材の表面のうち前記マーキングの箇所に相当する部位を目視観察するとともに顕微鏡にて断面観察することにより、前記新たに発見した打ち疵等が熱間圧延後にも残存するか否かを調査した。その結果、角鋼片の段階で6箇所に打ち傷等が発見され、そのうちの3箇所について、図3に示すように、熱間圧延後にも0.03〜0.4mm程度の深さのヘゲ疵が残存するのがわかった。
【0011】
ついで、多数本の角鋼片について上記と同様の方法により、目視にて新たに発見した打ち疵等の発生箇所を調査したところ、打ち傷等は、角鋼片の平面部には少なく、角部に集中して存在しており、角部での発生割合が全体の80〜90%程度に達することがわかった。
【0012】
そして、本発明者らは上記知見に基づきさらに検討を行い、以下の発明を完成させるに至った。
【0013】
請求項1に記載の発明は、角鋼片を熱間圧延して直径20mm以上の太径線材を製造するに際し、前記角鋼片から、磁粉探傷で検出される疵、ならびに磁粉探傷では検出されない、打ち疵および擦り疵を除去した後、熱間圧延することを特徴とするヘゲ疵発生の抑止効果の高い冷間鍛造用太径線材の製造方法である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、角鋼片を熱間圧延して直径20mm以上の太径線材を製造するに際し、前記角鋼片から磁粉探傷で検出される疵を除去するとともに、前記角鋼片の角部をその長手方向に沿って全部面取りした後、熱間圧延することを特徴とするヘゲ疵発生の抑止効果の高い冷間鍛造用太径線材の製造方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記角鋼片の疵を除去した後のバリ高さを1mm以下にする請求項1または2に記載の冷間鍛造用太径線材の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、角鋼片から、磁粉探傷で検出される疵だけでなく、磁粉探傷では検出されない打ち疵等をも除去した後に熱間圧延することにより、直径20mm以上の太径線材を製造しても、線材にヘゲ疵が発生することを効果的に抑止できるようになり、冷間鍛造性に優れた太径線材を高歩留で製造できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の一実施形態に係る、角鋼片から太径線材を製造する工程を示すフロー図である。以下、各工程をそのフローに沿って詳細に説明する。
【0018】
(1)磁粉探傷
まず、角鋼片を磁化した後、その表面に蛍光磁粉を振り掛け、暗室内で磁粉模様を目視観察し、検出された疵にマーキングを施しておく。
【0019】
(2)目視による打ち疵等の検出
ついで、疵取り作業場において、目視にて、上記磁粉探傷で検出されなかった打ち疵等を検出し、これら新たに検出された打ち疵等にもマーキングを施しておく。
【0020】
(3)疵取り
そして、上記(1)および(2)の工程で検出された疵の除去作業を行う。疵の除去は、例えば、従来と同様、グラインダにて研削除去することより行えばよいが、ホットスカーフィングにて溶削することもできる。
【0021】
ここで、上述したように、工程(2)で検出される打ち疵等の大部分は角鋼片の角部に集中して存在する。角部に存在する打ち疵等は、その角部を例えばグラインダで長手方向に沿って面取りすることにより除去することができる。ただし、角部をグラインダで面取りする際においては、後記実施例で示すように、グラインダにて1回の研削で一気に面取りを行うと、面取りの結果生じるバリの高さが1mmを超え、そのバリ自体がヘゲ疵の原因となることから、バリの高さが1mm以下となるように、複数回の研削にて少しずつ面取りの角度を変えて行うのが推奨される。
【0022】
(4)熱間圧延
疵取り作業終了後の角鋼片は、加熱炉で所定温度に加熱した後、複数段の圧延機列にて順次圧下して減面することにより、所定径の太径線材に加工する。
【0023】
このようにして製造された太径線材は、熱間圧延前に角鋼片からヘゲ疵の原因となりうる打ち疵等があらかじめ除去されているので、ヘゲ疵の発生が効果的に抑止でき、高歩留にて冷間鍛造性に優れた太径線材を製造できることとなる。
【0024】
〔実施形態2〕
上記実施形態1では、(2)の工程において、目視にて打ち疵等を検出する例を示したが、打ち疵等の大部分が角鋼片の角部に集中して存在することから、上記(2)の工程、すなわち、目視による打ち疵等の検出作業を省略し、一律に、角部をその長手方向に沿って全部面取りするようにしてもよい。上記実施形態1に比べれば、角鋼片の平面部に存在する打ち疵等によるヘゲ疵発生の可能性は残るものの、その発生確率は低いため、従来に比べれば大幅にヘゲ疵発生を低減できることとなる。また、上記実施形態1に比べれば、打ち疵等のない角部までも面取りしてしまうことによる歩留低下の問題は生じるものの、その代わりに目視による打ち疵等の検出作業を省略できることにより、作業負担を大幅に軽減できる効果が得られる。
【0025】
〔実施形態3〕
さらに、上記実施形態2において、上記(2)の工程、すなわち、目視による打ち疵等の検出作業を実施したうえ、一律に、角部をその長手方向に沿って全部面取りするようにしてもよい。この場合、上記実施形態2に比べて、作業負担の軽減効果は得られないものの、角鋼片の平面部に存在する打ち疵等をも除去できるので、さらにヘゲ疵発生を低減できることとなる。
【実施例1】
【0026】
角鋼片の角部をグラインダにて長手方向に沿って面取りする際における研削方法と太径線材におけるヘゲ疵発生の関係について、以下のようにして調査を行った。
【0027】
195mm角×1000mm長さの角鋼片の角部をグラインダにて、図2に示す(a)〜(c)の3種類の研削方法でそれぞれ長手方向に沿って全部面取りを行った後、熱間圧延を行い、直径46mmの太径線材に加工する試験を実施した。ここで、同図において、(a)は面取りの角度を固定して1回で一気に面取りを行った例、(b)は面取りの角度を少しずつ変えて3回で面取りを行った例、(c)は面取りの角度をさらに少しずつ変えて5回で面取りを行った例をそれぞれ示す。
【0028】
上記試験の結果、下記表1に示すように、(a)の場合では、面取り後に1mmを超え、最大2mm程度の高さの比較的大きなバリが存在し、熱間圧延後の太径線材にはこのバリに起因するヘゲ疵の発生が観察された。これに対し、(b)の場合では、面取り後には1mm以下の高さの小さなバリが存在するものの、熱間圧延後の太径線材にはヘゲ疵の発生は観察されなかった。また、(c)の場合では、面取り後には目立ったバリの存在は認められず、熱間圧延後の太径線材にはヘゲ疵の発生は観察されなかった。
【表1】


【実施例2】
【0029】
本発明の効果を確証するため、本発明の適用前後における太径線材でのヘゲ疵発生割合の変化状況を観察する試験操業を実施した。
【0030】
(比較例[従来法])
195mm角×1000mm長さの角鋼片について、従来どおり、磁粉探傷にて検出した疵のみをグラインダで除去した後、熱間加工して直径46mmの太径線材に加工した。そして、加工後の太径線材について渦流探傷にてヘゲ疵の発生の有無を調査した。
【0031】
(発明例)
上記比較例と同じ角鋼片について、磁粉探傷にて検出した疵を除去するとともに、目視による打ち疵等の検出作業を省略し、一律に、角部をその長手方向に沿って全部面取りする方法を採用した(上記実施形態2参照)。なお、角部の研削方法は、上記実施例1(図2)の(b)の3回で研削する方法を用いた。
【0032】
〔試験結果〕
加工後の太径線材について渦流探傷にてヘゲ疵の発生の有無を調査し、1コイルに1個でもヘゲ疵が発見された場合を「ヘゲ疵発生あり」とし、ヘゲ疵が全く発見されなかった場合を「ヘゲ疵発生なし」とし、調査した全コイル数に対する「ヘゲ疵発生あり」のコイル数の割合をヘゲ疵発生割合と定義した。
【0033】
調査の結果、1ヶ月ごとのヘゲ疵発生割合は、比較例の期間では24〜37%であったのに対し、発明例の期間では0〜16%へと大幅に低減できた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る、角鋼片から太径線材を製造する工程を示すフロー図である。
【図2】角鋼片の角部の研削方法を説明する径方向断面図である。
【図3】角鋼片表面の打ち疵等の外観、ならびに熱間圧延後の太径線材表面のヘゲ疵の外観および断面を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年9月15日(2006.9.15)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠

【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通


【公開番号】 特開2008−68297(P2008−68297A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−250467(P2006−250467)