トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 鋼板の製造方法
【発明者】 【氏名】川下 浩一

【氏名】大橋 秀巳

【要約】 【課題】エネルギーコストを上昇させることなく、圧延された鋼板に対する洗浄液の洗浄効率を向上させて、鋼板を製造する方法を提供すること。

【構成】鋼板を圧延油の存在下で圧延する工程と、圧延鋼板に付着する圧延油を、洗浄浴中においてアルカリ性洗浄液に接触させることにより洗浄する工程を含む、鋼板の製造方法であって、前記洗浄工程は、洗浄浴中において、アルカリ剤を含有する第1液に、当該アルカリ剤の一部を中和する量の酸を添加することによって、pH10以上のアルカリ性洗浄液を調製するとともに、前記中和により生じる熱により、調製されたアルカリ性洗浄液の温度を、第1液の温度よりも高くした状態にして、圧延鋼板に付着する圧延油を洗浄することを特徴とする鋼板の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を圧延油の存在下で圧延する工程と、圧延鋼板に付着する圧延油を、洗浄浴中においてアルカリ性洗浄液に接触させることにより洗浄する工程を含む、鋼板の製造方法であって、
前記洗浄工程は、
洗浄浴中において、アルカリ剤を含有する第1液に、当該アルカリ剤の一部を中和する量の酸を添加することによって、pH10以上のアルカリ性洗浄液を調製するとともに、
前記中和により生じる熱により、調製されたアルカリ性洗浄液の温度を、第1液の温度よりも高くした状態にして、圧延鋼板に付着する圧延油を洗浄する鋼板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の鋼板の製造方法における洗浄工程において、洗浄浴中のアルカリ性洗浄液が使用されて少なくなった場合には、
洗浄浴に、アルカリ剤を含有する第1液を加えた後に、当該アルカリ剤の一部を中和する量の酸を添加することによって、再度、pH10以上のアルカリ性洗浄液を調製するとともに、
前記中和により生じる熱により、再調製されたアルカリ性洗浄液の温度を、再調製前のアルカリ性洗浄液よりも高くした状態にして、圧延鋼板に付着する圧延油を洗浄する鋼板の製造方法。
【請求項3】
第1液中のアルカリ剤と酸とが、温度25℃の第1液(前記アルカリ剤の濃度3重量%の水溶液)100重量部に対して、前記酸1重量部を加えて、1分間攪拌した後の混合液の温度が、第1液の温度よりも1℃以上高い請求項1または2記載の鋼板の製造方法。
【請求項4】
酸を含有する第2液として、酸を第1液に添加する請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板の製造方法であって、酸の濃度が10〜40重量%の第2液を、アルカリ剤の濃度が0.5〜10重量%である第1液100重量部に対して、酸0.01〜2重量部になるように添加する鋼板の製造方法。
【請求項5】
酸が、オキシカルボン酸、アミノカルボン酸およびリン酸から選ばれるいずれか少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延された鋼板の製造方法に関する。本発明の製造方法は、製鉄所等において圧延された鋼板(鋼帯)を連続洗浄する工程、特に電解洗浄する工程を有する鋼板の製造方法において好適に適用される。
【背景技術】
【0002】
鋼板表面の脱脂洗浄は、酸洗と共にメッキ、塗装等の表面処理を行う前処理として必要であり、製品の良否を決定づける非常に大きな因子である。例えば、冷間圧延が施された圧延鋼板では、牛脂等のエステル、脂肪酸や鉱物油等の圧延油、防錆油などの油汚れや、鉄粉等の固体汚れ等が鋼板表面に付着している。これらの中でも、特に油汚れが残っていると、焼鈍する場合に炉内でガス化して揮散はせず、鋼板表面上に炭化物として残存し、メッキ、塗装むら等の原因となる。
【0003】
鋼板の洗浄には洗浄液が用いられる(特許文献1)。鋼板の洗浄設備は通常、コイル状に巻き取られた鋼板(鋼帯)を連続して、洗浄浴中で洗浄する構造になっており、30〜1100m/分程度の速度で操業される。従って、鋼板の洗浄時間は最大でも数秒という極めて短い時間に、良好な洗浄効率が求められる。
【特許文献1】特開平10−280179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記鋼板の洗浄では、洗浄液を高温で用いることが洗浄効率の点では好ましい。一方で、洗浄液を高温に保つためには、洗浄液を蒸気により加熱する必要があり、エネルギーコストの上昇を伴う。
【0005】
本発明は、エネルギーコストを上昇させることなく、圧延された鋼板に対する洗浄液の洗浄効率を向上させて、鋼板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、鋼板を圧延油の存在下で圧延する工程と、圧延鋼板に付着する圧延油を、洗浄浴中においてアルカリ性洗浄液に接触させることにより洗浄する工程を含む、鋼板の製造方法であって、
前記洗浄工程は、
洗浄浴中において、アルカリ剤を含有する第1液に、当該アルカリ剤の一部を中和する量の酸を添加することによって、pH10以上のアルカリ性洗浄液を調製するとともに、
前記中和により生じる熱により、調製されたアルカリ性洗浄液の温度を、第1液の温度よりも高くした状態にして、圧延鋼板に付着する圧延油を洗浄する鋼板の製造方法、に関する。
【0007】
また本発明は、前記鋼板の製造方法における洗浄工程において、洗浄浴中のアルカリ性洗浄液が使用されて少なくなった場合には、
洗浄浴に、アルカリ剤を含有する第1液を加えた後に、当該アルカリ剤の一部を中和する量の酸を添加することによって、再度、pH10以上のアルカリ性洗浄液を調製するとともに、
前記中和により生じる熱により、再調製されたアルカリ性洗浄液の温度を、再調製前のアルカリ性洗浄液よりも高くした状態にして、圧延鋼板に付着する圧延油を洗浄する鋼板の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鋼板の製造方法では、鋼板に圧延工程を施した後、圧延鋼板に付着する圧延油を洗浄する工程において、当該洗浄工程に用いるアルカリ性洗浄液を、アルカリ剤を含有する第1液に、酸を添加することによって調製している。このようにして調製されたアルカリ性洗浄液は、アルカリ剤と酸との中和によって中和熱が生じており、調製されたアルカリ性洗浄液の温度は、アルカリ剤を含有する第1液の温度よりも高くなる。かかるアルカリ性洗浄液の温度上昇により、洗浄効率を高くすることができる。一方、アルカリ性洗浄液の温度上昇は、中和熱により生じており、蒸気等による外部加熱を省略またはその負担を軽減することができエネルギーコストを削減または低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の鋼板の製造方法は、鋼板を圧延油の存在下で圧延する工程と、圧延鋼板に付着する圧延油を、洗浄浴中においてアルカリ性洗浄液に接触させることにより洗浄する工程を含む。
【0010】
鋼板を圧延油の存在下で圧延する工程は、冷間圧延、熱間圧延のいずれの圧延工程であってもよいが、より清浄度が要求される冷間圧延への適用が好ましい。圧延工程は、従来より行われている方法を採用できる。例えば、冷間圧延では、冷間圧延機により鋼板を圧延する。
【0011】
なお、鋼板の圧延工程における圧延油供給システムとしては、大量の圧延油エマルションを鋼板とロールへ供給し、使用後の圧延油エマルションを循環使用し鉄摩耗粉を除去しながら長期間使用する循環式圧延油供給システムと少量の圧延油エマルションを圧延鋼板に供給するとともに大量の水をロールに供給し、使用後の圧延油エマルションを循環使用せず排水として処理する直接式圧延油供給システムの2方式がある。本発明の鋼板の製造方法における圧延工程は、いずれの方式も採用できるが、より清浄度が要求される循環式圧延油供給システムを採用する場合に好適である。特に循環使用方式のタンデム冷間圧延機を用いる場合に好適である。
【0012】
圧延油としては、パーム油系圧延油、牛脂系圧延油、合成エステル系圧延油、鉱物油系圧延油等の鋼板の圧延工程に適用される各種のものが用いられる。
【0013】
次いで、圧延鋼板には、それに付着する圧延油をアルカリ性洗浄液により洗浄する工程を施す。前記アルカリ性洗浄液は、洗浄浴中において、アルカリ剤を含有する第1液に、酸を添加することによって調製する。
【0014】
アルカリ剤を含有する第1液における、アルカリ剤の濃度は、洗浄性と効率良い中和熱発生の点から、通常、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0015】
一方、第1液に添加する酸は、その添加態様は特に制限されない。例えば、酸は、液状または固形(例えば、粉末)の状態のままで、第1液に添加してもよく、酸を含有する第2液として第1液に添加してもよい。添加時の操作性の点から、酸は、酸を含有する第2液として第1液に添加することが好ましい。第2液中の酸の濃度は、液の均一性、安定性の点から、10〜40重量%であるのが好ましい。さらには、20〜30重量%であるのが好ましい。この場合、アルカリ剤の濃度が0.5〜10重量%である第1液100重量部に対して、酸を含有する第2液を、前記酸0.01〜2重量部になるように添加することが好ましい。
【0016】
第1液、第2液としては、通常、水溶液が用いられる。溶媒に用いる水としては、通常、ろ過淡水、工業用水が使用される。
【0017】
酸は、調整されるアルカリ性洗浄液がpH10以上になるように、第一液中のアルカリ剤の一部を中和する量が添加される。調整されるアルカリ性洗浄液は、pH12以上であるのがより好ましい。アルカリ性洗浄液のpH10以上に制御することで、洗浄性を確保できる。
【0018】
また、調製されたアルカリ性洗浄剤中のアルカリ剤の濃度は、洗浄性を確保する見地から、0.5〜10重量%に制御することが好ましい。アルカリ剤の濃度は、1〜5重量%であるのがより好ましく、さらには2〜4重量%であるのが好ましい。
【0019】
また、第1液中のアルカリ剤と、これを中和する酸は、この中和により生じる熱により、調製されたアルカリ性洗浄液の温度を、第1液の温度よりも高くできるように、アルカリ剤と酸とを組み合わせて用いる。このように、中和熱を生じるアルカリ剤と酸との組み合わせにより、調製されたアルカリ性洗浄液の温度を上昇させて、圧延鋼板に付着する圧延油を効率よく洗浄することができる。
【0020】
前記第1液中のアルカリ剤と酸の組み合わせは、例えば、温度25℃の第1液(前記アルカリ剤の濃度3重量%)100重量部に対して、前記酸1重量部を加えて、1分間攪拌した後の混合液の温度が、第1液の温度よりも1℃以上高くなるような、組み合わせのものが好適に用いられる。なお、前記酸を、第2液として添加する場合には、第2液として酸の濃度が30〜40重量%の水溶液(25℃)を調製して、当該第2液の酸固形分が1重量部になる量を換算して、第1液に加えて、混合液の温度が、第1液の温度よりも1℃以上高くなるような、組み合わせを確認する。
【0021】
前記のようにして、洗浄工程では、洗浄浴中において、アルカリ剤を含有する第1液に、酸を添加することによって調製したアルカリ性洗浄液を用いて、圧延鋼板を洗浄するが、洗浄浴中のアルカリ性洗浄液が使用されて少なくなった場合には、洗浄浴に、再度、アルカリ剤を含有する第1液を加えた後に、同様の操作により、当該アルカリ剤の一部を中和する量の酸を添加することによって、pH10以上のアルカリ性洗浄液を調製する。こうして再調製されたアルカリ性洗浄液の温度は、前記同様に中和により生じる熱により、再調製前のアルカリ性洗浄液よりも高くした状態にすることができ、連続して、効率よく、圧延鋼板に付着する圧延油を洗浄することができる。かかるアルカリ性洗浄液の再調製は、洗浄浴中のアルカリ性洗浄液が使用されて少なくなった場合に繰り返し行うことができ、洗浄工程の連続性を確保できる。
【0022】
洗浄工程において、アルカリ性洗浄液は、第1液の温度よりも上昇させるが、第1液の温度は特に制限されない。第1液の温度は、通常、10〜80℃程度であるのが好ましく、より好ましくは10〜50℃である。酸の添加によって第1液の温度は、1〜4℃程度、上昇させるのが好ましい。なお、アルカリ性洗浄液は、第1液より温度が上昇する分、そのエネルギーコストを低減することができるが、第1液を予め加温しておくことや、調製されたアルカリ性洗浄液を加温することも当然行うことができる。
【0023】
第1液に用いられるアルカリ剤は、水溶性のアルカリ剤であればいずれのものも使用できる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸塩、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。また、モノエタノールアミン等の有機アミンがあげられる。水溶性アルカリ剤は二種以上を組み合わせてもよい。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび有機アミンから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いるのが好ましい。さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムであり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0024】
酸は、アルカリ剤との反応により塩を生じる官能基を少なくとも1つ有しているものであり、アルカリ剤との反応により、前記中和熱を生じるものを適宜に選択して用いる。酸としては、オキシカルボン酸、アミノカルボン酸およびリン酸が好適である。オキシカルボン酸としては、例えば、アルドン酸類があげられる。アルドン酸類は、カルボキシル基を有する単糖類であり、具体例としては、グリセリン酸、テトロン酸、ペントン酸、ヘキソン酸、ヘプトン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸等があげられる。また、オキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等があげられる。オキシカルボン酸の塩、特にアルドン酸類の塩(中和により生じる塩)は、鉄石けん由来の汚れに作用して鉄イオンをキレートし、脂肪酸石けんにして汚れを溶解し易くすると考えられている。アミノカルボン酸としては、例えばニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、テトラエチレンテトラミン六酢酸等があげられる。アミノカルボン酸の塩(中和により生じる塩)は、洗浄性を向上させる有機ビルダーとして機能する。リン酸としては、リン酸の他に、第1リン酸塩、第2リン酸塩等があげられる。なお、酸は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、昇温効果と洗浄性の点から、2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。特に、昇温効果の好適なリン酸と洗浄効果の好適なグルコン酸を組み合わせるのが好ましい。
【0025】
調製されたアルカリ性洗浄液には、前記アルカリ剤および酸(これはアルカリ性洗浄液中では塩となっている)の他に、添加剤を加えることができる。他の添加剤は、第1液、第2液に含ませることができ、また、別途、添加することもできる。
【0026】
添加剤としては、界面活性剤があげられる。界面活性剤は、鋼板に付着した圧延油を乳化、除去して洗浄性の向上に寄与する。界面活性剤は、洗浄性向上の点から、酸を添加する際に、第2液中に含有させて用いるのが好ましい。界面活性剤の配合量は、調製されたアルカリ性洗浄液において、アルカリ剤1重量部に対して、好ましくは0.005〜5重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.05〜0.1重量部である。0.005重量部以上であると、界面活性剤が鋼板洗浄性の向上に有効である。また、5重量部以下であると、アルカリ性洗浄液の安定性がよい。その他の添加剤としては、消泡剤、酸以外のキレート剤等を加えることができる。
【0027】
界面活性剤としては、通常、非イオン界面活性剤が用いられる。非イオン界面活性剤としては、炭素数4〜24のアルコール、特に炭素数4〜24の直鎖又は分岐鎖アルコールのアルキレンオキサイド付加物、アルキル(アルキル基の炭素数5〜12、アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい)フェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、炭素数4〜24の直鎖又は分岐鎖アルコールのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、一般式(I)〜(V)で表される化合物が更に好ましい。
【0028】
1O-<EOn/POm>-H (I)
2O-(EO)x1-(PO)y1-(EO)x2-H (II)
3O-[EOx3/POy2]-(EO)x4-H (III)
4O-(EO)x5-[EOx6/POy3]-(PO)y4-[EOx7/POy5]-(EO)x8-H (IV)
5O-(EO)z-H (V)
【0029】
〔式中、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。R1は炭素数4〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、nはオキシエチレン基の平均付加モル数、mはオキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、nは0〜20、mは0超20以下の数であり、式α=0.33×n−0.15×m−0.475×(R1の炭素数)+2.6によって計算されるαが−2.0<α<1.9を満たすことが好ましい。R2、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、x1, x2, x3, x4, x5, x6, x7及びx8はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、好ましくはx1, x2, x3, x4, x5及びx8はそれぞれ1以上の数、より好ましくはx1+x2≧4、x3+x4≧4、x5+x6+x7+x8≧4、x6+x7≧1である。y1, y2, y3, y4及びy5はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、好ましくは0<y1<x1+x2、0<y2<x3+x4、y3+y5≧0.1、y3≧0、y4≧0、y5≧0、y3+y4+y5<x5+x6+x7+x8である。また、< >で囲まれた部分はランダム付加でもブロック付加でもよいことを、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。R5は炭素数5〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、zはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す数で、R5が炭素数5〜10である場合にはzは1〜20、R5が炭素数11〜12の場合にはzは6〜20である。〕
【0030】
浸透性と乳化性のバランスがよく、良好な洗浄性が得られる観点から、αが前記範囲にあることが好ましい。αは一般式(I)において極めて優れた洗浄効果に寄与する化合物をR1、n及びmで規定した指標である。かかる一般式(I)の化合物〔以下、化合物(I)成分という〕は、オキシエチレン基の平均付加モル数n及びオキシプロピレン基の平均付加モル数mと、脱脂効果とに相関があることが見出され、種々のR1の化合物について、nを横軸(X軸)とmを縦軸(Y軸)とするグラフに洗浄効果をプロットして、より優れた効果が得られる範囲を検討した結果、一定の傾きを持つ2つの直線の範囲内に収まることがわかった。その2つ直線の傾きを算出し、nとmを変数とする1次方程式におきかえ、一方の直線を範囲の上限とし、他方の直線を範囲の下限とすることを表現するために不等式を採用して上記αの算出式に到達したものである。すなわち、化合物(I)についてのαの算出式は、より脱脂性に優れた効果が得られる化合物(I)の構造について行った種々の実験に基づいて導出されたものである。
【0031】
泡を抑制する観点から、一般式(I)〜(V)のR1〜R5は2級アルキル基であることが更に好ましい。
【0032】
これらの非イオン界面活性剤の中では、一般式(II)〜(IV)で表される化合物が好ましく、下記一般式(II−1)、(III−1)又は(IV−1)で表される化合物が更に好ましい。
【0033】
Ra−O−(EO)x1−(PO)y1−(EO)x2−H (II−1)
Rb−O−[EOx3/POy2]−(EO)x4−H (III−1)
Rc−O−(EO)x5−[EOx6/POy3]−(PO)y4−[EOx7/POy5]−(EO)x8−H (IV−1)
【0034】
〔式中、Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立に炭素数6〜24の2級アルキル基を示し、EO,PO,x1, x2, x3, x4,x5, x6, x7,x8,y1, y2, y3, y4及びy5は前記の意味を示す。また、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕
【0035】
一般式(II−1)及び(IV−1)で表される化合物を得る際に用いられるエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加する前の原料の具体例として、日本触媒化学工業(株)製、商品名ソフタノール30、ソフタノール50、ソフタノール70、ソフタノール90、ソフタノールEP5035、ソフタノールEP7025、ソフタノールEP7045、ソフタノールEP9050等が挙げられる。また、一般式(III−1)で表される化合物は、2級アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加して得ることができる。
【0036】
一般の鋼板洗浄ラインは、浸漬洗浄→ブラシ洗浄→電解洗浄→ブラシ洗浄→リンス→乾燥という構成を取るが、前記洗浄工程は、浸漬洗浄、電解洗浄のいずれにも適用でき、これら洗浄工程が施された後には、常法に従って、ブラシ洗浄工程や、その後のリンス工程、乾燥工程等を施すことができる。なお浸漬洗浄から乾燥まではおよそ20mであり、ライン速度500m/分の場合には全工程で2〜3秒という極めて短い時間の中で洗浄が行われる。
【実施例】
【0037】
実施例1
(アルカリ剤を含有する第1液の調製)
温度25℃の濃度3重量%の水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
【0038】
(酸を含有する第2液の調製)
酸として、リン酸20重量部およびグルコン酸15重量部、ならびに界面活性剤として第2級ドデカノール‐EO5PO5EO5のブロック付加物15重量部を、水50重量部に溶解した、温度25℃の水溶液を調製した。
【0039】
(アルカリ性洗浄液の調製)
第1液100重量部に対し、第2液2.86重量部(第2液中の酸が1重量部に相当)を加えて、1分間攪拌した後の混合液の温度を測定した。混合液のpHは14であった。混合液中の、アルカリ剤(水酸化ナトリウム)の濃度は、3重量%に調整された。温度測定は標準温度計(二重管)NO.1(0〜50℃,アズワン販売品)により行った。温度上昇は、2℃であった。
【0040】
実施例2〜5、比較例1〜3
実施例1において、酸の調製を、表1に示すような配合で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、アルカリ性洗浄液を調製した。得られたアルカリ性洗浄液のpH、アルカリ剤の濃度、温度上昇を表1に示す。なお、実施例4、5、比較例1、3では、第2液は調製せずに、表1に記載の酸または酸と界面活性剤の混合物を、第1液100重量部に対して酸1重量部の割合になるように配合した。
【0041】
【表1】


【0042】
表1中、界面活性剤:第2級ドデカノール‐EO5PO5EO5のブロック付加物、EDTA:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、EDTA‐4Na:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、である。
【0043】
<鋼板の洗浄試験および残存付着油分量の測定>
(1)被洗浄鋼板
被洗浄鋼板は全て以下の手順で調製した。即ち、精製パーム油で冷間圧延した鋼板を、25mm×50mmの大きさに切断し、n‐ヘキサンで表面に付着している油分を除去した。そして、予めISOT試験機で熱劣化させた精製パーム油を付着量200mg/m2になるように付着させて用いた。
【0044】
(2)洗浄試験
アルカリ性洗浄液中に、被洗浄鋼板を1秒間浸漬し、その後続けて電流密度10A/dm2で鋼板極性を負から正に、それぞれ0.5秒間ずつ一度切り換えて電解洗浄し、水でリンスした後、乾燥した。評価に用いたアルカリ性洗浄液は下記の通りである。
評価1:実施例3のアルカリ性洗浄液を、予め調製しておき、温度を37℃にしたもの。
評価2:洗浄試験に際して、実施例3のアルカリ性洗浄液を調製して用いたもの。アルカリ性洗浄液の調製にあたり、第1液および第2液は、温度を37℃に調製したものを用いた。調製した直後のアルカリ性洗浄液は温度40℃であった。
評価3:評価1のアルカリ性洗浄液を、さらにヒーターで加温して、温度を40℃にしたもの。
【0045】
(3)残存付着油分量測定方法
洗浄試験後の鋼板表面の付着油分量(mg/m3)は、全て鋼板付着油量測定装置EMIA−111(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定値は5回測定の平均値である。結果を表2に示す。付着油分量は10以下であるのが好ましい。
【0046】
【表2】


【0047】
表2に示すように、評価2(本発明)の洗浄試験によれば、エネルギーコストが、同レベルの評価1の洗浄試験よりも付着油分量を低減でき、一方、評価2よりも、高エネルギーコストの評価3の洗浄試験と同様の付着油分量を実現できる。
【0048】
このように本発明によれば、エネルギーコストを抑えて、圧延された鋼板に対する洗浄液の洗浄効率を向上させることができる。例えば、アルカリ性洗浄液が適用される洗浄浴の容量は、一般的に数10m3であり、例えば、20m3の洗浄浴の場合において、アルカリ性洗浄液(液の比熱は約4.2J/g・Kとして)が、第1液よりも3℃上昇するとすれば、エネルギー量(Q)は、
C(J/K)=m・c=20000000(g)×4.2(J/g・K)=84000000、
Q(J)=C・ΔT=84000000(J/K)×3(K)=252000000(J)=252000(kJ)、になる。
即ち、初期の洗浄工程(液立て時)において、252000(kJ)のエネルギーが節約できる。また、実際の洗浄ラインでは、液立て後には、洗浄とともにアルカリ性洗浄液が洗浄浴から持ち出されるが、アルカリ性洗浄液は、同洗浄浴で定期的に再調製することができ、エネルギーのさらなる節約ができる。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100104422
【弁理士】
【氏名又は名称】梶崎 弘一

【識別番号】100105717
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 雄三

【識別番号】100104101
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 俊彦


【公開番号】 特開2008−62281(P2008−62281A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−244428(P2006−244428)