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【発明の名称】 熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法
【発明者】 【氏名】上岡 悟史

【氏名】藤林 晃夫

【氏名】中田 直樹

【氏名】黒木 高志

【氏名】冨田 省吾

【要約】 【課題】熱間圧延された鋼帯を冷却水で冷却する際に、高い冷却能力と安定した冷却領域を適切に実現することにより、鋼帯の先端から尾端まで均一に冷却を施すことができる熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法を提供する。

【構成】鋼帯12の上面側に、鋼帯12の進行方向に対してそれぞれ下流側と上流側とに向けて傾斜させた棒状冷却水を噴射する円管ノズル14を対向するように配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランナウトテーブル上を搬送される仕上圧延後の熱延鋼帯を冷却する熱延鋼帯の冷却装置であって、
鋼帯の上面側に、鋼帯の進行方向に対してそれぞれ下流側と上流側とに向けて傾斜させた棒状冷却水を噴射する冷却ノズルを対向するように配置したことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
【請求項2】
前記冷却ノズルは鋼帯幅方向に複数個配置されるとともに、前記冷却ノズルにより噴射される棒状冷却水と鋼帯との成す角度が60°以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼帯の冷却装置。
【請求項3】
前記下流側に向けて傾斜させた冷却ノズルと前記上流側に向けて傾斜させた冷却ノズルは、それぞれ鋼帯の進行方向に複数列配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼帯の冷却装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却装置を1つの冷却装置ユニットとし、該冷却装置ユニットを鋼帯の進行方向に複数配置したことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却装置ユニットの下流側に、鋼帯上面の冷却水の水切りを行う水切り手段を配置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却装置。
【請求項6】
ランナウトテーブル上を搬送される仕上圧延後の熱延鋼帯の冷却方法であって、
鋼帯の上面側に、鋼帯の進行方向下流側に向けて傾斜させた棒状冷却水と鋼帯の進行方向上流側に向けて傾斜させた棒状冷却水とを対向させて噴射することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項7】
前記棒状冷却水と鋼帯との成す角度が60°以下であることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項8】
前記下流側に向けて傾斜させた棒状冷却水と前記上流側に向けて傾斜させた棒状冷却水を、それぞれ鋼帯の進行方向に複数列噴射することを特徴とする請求項6または7に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項9】
前記傾斜させた棒状冷却水の対向噴射を、鋼帯の進行方向に間隔を空けて複数箇所で行なうことにより、水冷と空冷とを繰り返す間欠的な冷却を行うことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【請求項10】
前記傾斜させた棒状冷却水を対向噴射する位置よりも下流側に設けられた水切り手段により、冷却水の水切りを行うことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延された高温鋼帯を冷却するための冷却装置および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱延鋼帯を製造するには、加熱炉においてスラブを所定温度に加熱し、加熱されたスラブを粗圧延機で所定厚みに圧延して粗バーとなし、ついでこの粗バーを複数基の圧延スタンドからなる連続熱間仕上圧延機において所定の厚みの鋼帯となす。そして、この熱延鋼帯をランナウトテーブル上の冷却装置によって冷却した後、巻き取り機で巻き取ることにより製造される。
【0003】
その際、熱間圧延された高温の鋼帯を連続的に冷却するランナウトテーブルの冷却装置では、鋼帯の上面冷却をなすため、円管状のラミナー冷却ノズルから鋼帯搬送用のテーブルローラ上に、この幅方向に亘って直線状に複数のラミナー冷却水を注水している。一方、鋼帯の下面冷却をなすため、テーブルローラ間にそれぞれスプレーノズルが設けられ、ここから冷却水を噴射する方法が一般的である。
【0004】
しかし、このような従来の冷却装置では、鋼帯の上面側に注水された冷却水は、冷却後、鋼帯の上面に滞留し、上面側の過冷却を引き起こす。過冷却状態は、鋼帯の長手方向において一様とはならず、したがってこの方向における冷却停止温度にばらつきが生じていた。さらに、鋼帯の上面冷却に使われている円管ラミナーノズルからの冷却水は自由落下流であるので、鋼帯の上面に滞留水の水膜があると鋼帯まで冷却水が到達しにくく、鋼帯の上面に滞留水がある場合とない場合で冷却能力に違いが生じるという問題や、鋼帯上に落下した冷却水が自由に前後左右に広がるので冷却領域(冷却ゾーン)が変化し、冷却能力が安定しないという問題等がある。このような冷却能力の変動の結果、鋼帯の材質が不均一になりやすくなっていた。
【0005】
そこで、鋼帯上の冷却水(滞留水)の水切りを行って、安定した冷却能力を得るために、鋼帯上面を横切るように流体を斜め方向に噴射して滞留水を排出する方法(例えば、特許文献1参照)や、鋼帯の上下動を拘束するための拘束ロールを水切りロールとして滞留水を堰き止めることで冷却領域を一定にする方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、冷却水を鋼帯上に閉じ込めることで冷却領域を一定にする冷却方式として、図7に示すような、スリット状のノズルを傾斜させて互いに向き合う方向に対向させて冷却水を噴射する方式(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平9−141322号公報
【特許文献2】特開平10−166023号公報
【特許文献3】特開昭59−144513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によると、下流に行くに従って鋼帯上に大量の冷却水が滞留していくので、下流側になるほど水切り効果がきかなくなる。
【0007】
また、特許文献2に記載の方法においては、圧延機を出てから巻き取り機に至るまでの鋼帯先端部は拘束ロールによる拘束が無い状態で搬送されるので、拘束ロール(水切りロール)による水切り効果が得られない。しかも、鋼帯先端部が上下動しながら波を打ったような状態でランナウトテーブル上を通過するので、この鋼帯先端部の上面に冷却水を供給すると、上下に波を打つ底の部分に選択的に冷却水が滞留しやすく、鋼帯先端が巻き取り機で巻き取られて張力が働き、鋼帯が張られて上下波が解消されるまでは、冷却温度のハンチング現象が生じる。この冷却温度のハンチング現象も鋼帯の機械的性質のバラツキを生じさせていた。
【0008】
一方、特許文献3に記載のスリット状のノズルを傾斜させて互いに向き合う方向に対向させて冷却水を噴射して冷却水を鋼帯上に閉じ込める冷却方式では、冷却水流が切れ目のないスリット状の冷却水でないと冷却水を堰き止めることができないが、冷却水流を切れ目がないスリット状に保つためには、ノズルと鋼帯の距離を離すことができない上に、同方法では、冷却水を充満させるためにノズル先端部近傍に仕切板を設けていることから、鋼帯とノズルおよび仕切板との距離が近づかざるを得ず、鋼帯がノズルや仕切板に衝突する危険性が高い。特に、形状が悪い波板状の鋼帯では、ノズルや仕切板との接触が避けられずに、鋼帯にキズが発生してしまう。したがって、実操業に適用することは困難である。
【0009】
このように、特許文献1〜3に記載された方法では、高い冷却能力と安定した冷却能力を適切に得ることができない。
【0010】
また、熱延鋼帯の製造においては、ランナウトテーブルの巻き取り機に近い領域では、表面の温度が例えば550℃以下となる場合があり、以下のような問題もある。
【0011】
すなわち、このような領域では、冷却が膜沸騰を主体とした鋼帯と冷却水との間に蒸気膜が存在するような伝熱状態から、鋼帯と冷却水が直接接触して沸騰するいわゆる核沸騰が主体の領域に移行する。この沸騰状態が遷移する沸騰現象は、遷移沸騰と呼ばれ、急激に冷却が促進される。そのように冷却が促進される結果として、鋼帯の表層のみが急冷されて、目標と違う組織が形成されることがある。例えば、表層極近傍が400℃以下となると組織がマルテンサイトとなり、その後、表層温度が復熱して、巻き取りが500℃で終わったとしても表層は焼き戻しマルテンサイトのような内部と異なった組織が形成されることがある。
【0012】
さらに、遷移沸騰から核沸騰領域においては、冷却水が鋼帯に付着したような状態となるので、冷却装置(ゾーン)から出た後の空冷ゾーンにおいて、冷却水が残存し、いわゆる水切りが不良の状態となりやすい。このような部分では過冷却となって鋼帯の品質にばらつきが生じる。
【0013】
また、従来、材質の観点から冷却速度を速くする場合に、単純に円管状のラミナー冷却水の水量を多くして対応しているが、鋼帯に対して垂直に大水量を噴射すると特許文献1や特許文献2に記載されている手法では水を堰き止めることができず、鋼帯上に大量の滞留水が発生した結果、極めて酷い温度ムラが発生していた。
【0014】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、熱間圧延された鋼帯を冷却水で冷却する際に、高い冷却能力と安定した冷却領域を適切に実現することにより、鋼帯の先端から尾端まで均一に冷却を施すことができる熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0016】
[1]ランナウトテーブル上を搬送される仕上圧延後の熱延鋼帯を冷却する熱延鋼帯の冷却装置であって、
鋼帯の上面側に、鋼帯の進行方向に対してそれぞれ下流側と上流側とに向けて傾斜させた棒状冷却水を噴射する冷却ノズルを対向するように配置したことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
【0017】
[2]前記冷却ノズルは鋼帯幅方向に複数個配置されるとともに、前記冷却ノズルにより噴射される棒状冷却水と鋼帯との成す角度が60°以下であることを特徴とする前記[1]に記載の熱延鋼帯の冷却装置。
【0018】
[3]前記下流側に向けて傾斜させた冷却ノズルと前記上流側に向けて傾斜させた冷却ノズルは、それぞれ鋼帯の進行方向に複数列配置されることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の熱延鋼帯の冷却装置。
【0019】
[4]前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却装置を1つの冷却装置ユニットとし、該冷却装置ユニットを鋼帯の進行方向に複数配置したことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
【0020】
[5]前記冷却装置ユニットの下流側に、鋼帯上面の冷却水の水切りを行う水切り手段を配置したことを特徴とする前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却装置。
【0021】
[6]ランナウトテーブル上を搬送される仕上圧延後の熱延鋼帯の冷却方法であって、
鋼帯の上面側に、鋼帯の進行方向下流側に向けて傾斜させた棒状冷却水と鋼帯の進行方向上流側に向けて傾斜させた棒状冷却水とを対向させて噴射することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【0022】
[7]前記棒状冷却水と鋼帯との成す角度が60°以下であることを特徴とする前記[6]に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【0023】
[8]前記下流側に向けて傾斜させた棒状冷却水と前記上流側に向けて傾斜させた棒状冷却水を、それぞれ鋼帯の進行方向に複数列噴射することを特徴とする前記[6]または[7]に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【0024】
[9]前記傾斜させた棒状冷却水の対向噴射を、鋼帯の進行方向に間隔を空けて複数箇所で行うことにより、水冷と空冷とを繰り返す間欠的な冷却を行うことを特徴とする前記[6]乃至[8]のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【0025】
[10]前記傾斜させた棒状冷却水を対向噴射する位置よりも下流側に設けられた水切り手段により、冷却水の水切りを行うことを特徴とする[6]乃至[9]のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、鋼帯の先端から尾端まで均一に冷却を施すことができ、鋼帯の品質が安定する。それにともなって鋼帯の切り捨て代が少なくなって歩留まりが高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の第一の実施形態における熱延鋼帯の製造設備を示すものである。
【0029】
粗圧延機1で圧延された粗バー2はテーブルローラ3上を搬送されて、連続的に7つの連続仕上げ圧延機群4で所定の厚みまで圧延されて鋼帯12となった後、最終仕上圧延機4Eの後方の鋼帯搬送路を構成するランナウトテーブル5に導かれる。このランナウトテーブル5は全長約100mあり、その一部またはほとんど大部分に冷却装置が設けられていて、鋼帯12がここで冷却されたあと、下流側の巻き取り機6で巻き取られて熱延コイルとなる。
【0030】
そして、この実施形態においては、一例として、ランナウトテーブル5に設けられる鋼帯上面冷却の冷却装置として、従来型の冷却装置7と本発明の冷却装置11がその順に配置されている。
【0031】
従来型の冷却装置7は、ランナウトテーブル5の上面側に所定ピッチで配置され、鋼帯に対して冷却水を自由落下流として供給する複数の円管ラミナーノズル8を備えている。
【0032】
また、鋼帯下面冷却用の冷却装置としては、鋼帯搬送用のテーブルローラ9間に複数のスプレーノズル10が幅方向に列状に配置されている。これらのスプレーノズル10は、その噴出圧力や水量密度が調整できるようになっている。
【0033】
そして、本発明の冷却装置11の一例を、図2に示す部分拡大図に基づいて述べる。ランナウトテーブル5には、例えば長手方向に約400mmピッチで、直径330mmの回転する鋼帯搬送用のテーブルローラ9が配置されており、これらテーブルローラ9上を鋼帯12が進行していく。本発明の冷却装置11においては、その鋼帯12の上面側に、鋼帯12の進行方向のそれぞれ下流側と上流側とに向けて傾斜させた棒状冷却水を対向して噴射する上面冷却ユニット17が所定の間隔をおいて複数ユニット設けられている。なお、この領域における下面側の冷却装置は特に限定するものではなく、本実施形態では前述した従来型の冷却装置7の領域と同様のスプレーノズル10を用いている。
【0034】
それぞれの上面冷却ユニット17は、鋼帯進行方向の上流側と下流側に分かれて、所定列数(ここでは各4列)の冷却ノズルヘッダ13を備えている。各冷却ノズルヘッダ13には、供給管15がつながれていて、それぞれの供給管15は弁16によって独立にオン−オフ制御が可能になっているとともに、各冷却ノズルヘッダ13には、鋼帯進行方向に対して所定の噴射角度θ(例えば、50°)を有する円管ノズル14が、幅方向に所定のピッチで1列に並んで配置されている。
【0035】
これらの円管ノズル14は、内径が3〜10mmφで内面が滑らかな直管ノズルであり、円管ノズル14から噴射される冷却水は棒状冷却水である。この棒状冷却水は、一定の方向、すなわち、鋼帯12の進行方向には、鋼帯12と所定角度θをなすようになる。また、鋼帯12の幅方向には、鋼帯12と平行にしてもよいが、噴射された冷却水を速やかに鋼帯12の両幅端部から外側に流下させるためには、鋼帯12の幅方向中心から1°〜30°、好ましくは5°〜15°程度外側へ向けて傾斜させることが望ましい。また、円管ノズル14の出口の高さ位置は、鋼帯12が上下動しても円管ノズル14に接触しないように、鋼帯12上面から所定の高さ(例えば、1000mm)離すようにしている。
【0036】
ここで、本発明における棒状冷却水とは、円形状(楕円や多角の形状も含む)のノズル噴出口からある程度加圧された状態で噴射される冷却水であって、ノズル噴出口からの冷却水の噴射速度が7m/s以上であり、ノズル噴出口から鋼帯に衝突するまでの水流の断面がほぼ円形に保たれた連続性と直進性のある水流の冷却水のことをいう。すなわち、円管ラミナーノズルからの自由落下流や、スプレーのような液滴状態で噴射されるものとは異なる。
【0037】
さらに、円管ノズル14の配置については、前の列の棒状冷却水の衝突位置のほぼ中間に次の列の棒状冷却水の衝突位置が来るように、列ごとに円管ノズル14の幅方向位置をずらして配置することが好ましい。これによって、幅方向に隣り合う棒状冷却水の間で冷却が弱くなる部分に次の列の棒状冷却水が衝突し、冷却が補完されて幅方向に均一な冷却がなされる。
【0038】
そして、各4列の円管ノズル14から、鋼帯12の略同一位置に向けて(例えば同一のテーブルローラ9に向けて)、鋼帯進行方向の上流側と下流側から対向して冷却水が噴射される。
【0039】
このように、1列に並んだ円管ノズル14から棒状冷却水を噴射すると、棒状冷却水流群は各棒状冷却水が並走して断続的ではあるが擬似平面状に流れる。その上で、各4列の円管ノズル14が鋼帯の進行方向上流側と下流側から対向して噴射しているために、鋼帯12に衝突した冷却水は互いに堰き止め合って、衝突した位置で鋼帯12の両幅端部から外側に流下するようになるので、冷却水が鋼帯上を上流側および下流側に流出することが抑止される。
【0040】
その際、噴射角度θが60°を越えると、鋼帯12の速度によっては、鋼帯上を冷却水が上流側および下流側に流出する可能性があるので、噴射角度θは60°以下とするのが好ましい。噴射角度θを60°以下にすれば、鋼帯12の速度によらず、鋼帯上を冷却水が上流側および下流側に流出することはない。より好ましくは噴射角度θは50°以下である。ただし、噴射角度θを45°より小さくすると、鋼帯12と円管ノズル14の衝突を回避するために鋼帯12からの円管ノズル14の高さを所望の値(例えば、1000mm)にしようとすると、円管ノズル14から噴射された棒状冷却水が鋼帯12に衝突するまでの距離が離れすぎてしまい、途中で棒状冷却水が分散して、冷却特性が落ちる危険性がある。したがって、噴射角度θを45°〜60°とするのが好ましく、さらには45°〜50°程度とするのが一層好ましい。
【0041】
ちなみに、本発明の冷却装置11において、鋼帯12上面の冷却水ノズルとして棒状冷却水を噴射する円管ノズル14を採用しているのは、次の理由による。
【0042】
すなわち、冷却を確実に行うには、鋼帯12まで冷却水を確実に到達させ、衝突させる必要がある。そのためには、鋼帯12上面の滞留水の水膜を破って鋼帯12まで新鮮な冷却水を到達させなければならず、スプレーノズルから噴射された液滴群のような貫通力が弱い冷却水滴流ではなく、連続性と直進性のある高い貫通力を持った水流となる棒状冷却水である必要がある。さらに、従来使われている円管ラミナーノズルによるラミナー流は、自由落下流であるので、滞留水膜があると鋼帯12まで冷却水が到達しにくい上に、滞留水がある場合とない場合で冷却能力に違いが生じることや、鋼帯12上に落下した水が前後左右に広がるので鋼帯の速度が変化した場合に冷却能力が変化する等の問題がある。したがって、本発明では、円管ノズル14(楕円や多角の形状であってもよい)を用い、ノズル噴出口からの冷却水の噴射速度が7m/s以上であり、ノズル噴出口から鋼帯に衝突するまでの水流の断面がほぼ円形に保たれる連続性と直進性のある棒状冷却水を噴射するようにしている。ノズル噴出口からの冷却水の噴射速度が7m/s以上である棒状冷却水によれば、冷却水を傾斜させて噴射した場合であっても安定的に鋼帯上面の滞留水の水膜を突き破ることができるからである。
【0043】
また、棒状冷却水群の代わりに連続的なカーテン状のラミナー流を採用することが考えられるが、ノズルが目詰まりしない程度のギャップ(現実的には3mm以上必要)を持つスリット状ノズルとした場合、円管ノズル15を幅方向に間隔を空けて設置した場合と比較してノズル断面積が極めて大きくなる。そのため、滞留水膜への貫通力を持たせるためにノズル噴出口からの噴射速度7m/s以上で冷却水を噴射しようとすると、極めて多い水量が必要となり、設備コストが甚大となって実現困難である。さらに、カーテン状のラミナー流では1列目で鋼帯12に衝突した冷却水が層状になって2列目以降の冷却水の衝突を妨げるので、2列目以降の冷却能力が落ちるあるいは幅方向に冷却能力に差が生じるなどの問題がある。これに対して、棒状冷却水であれば層状の滞留水を部分的に押しのけて棒状冷却水は鋼帯12に到達する。押しのけられた冷却水は断続的に途切れた棒状冷却水の間をかいくぐって流れるので冷却後の滞留冷却水が後の冷却の妨げとなりにくい。
【0044】
なお、本発明の冷却装置11においては、複数の冷却ユニット17を所定の間隔をおいて配置しているので、それぞれの冷却ユニット17での冷却の間に空冷ゾーンを設けるいわゆる間欠冷却となる。したがって、特に、表面が過冷却されてマルテンサイトのような硬質層が生成しやすい鋼帯の冷却の場合に、表層の温度が下がっても、その次の空冷ゾーンで内部からの熱によって復熱するので、表層の過冷却を抑制し、温度バラツキだけでなくミクロな組織の鋼帯厚み方向のバラツキを少なくする効果がある。ここで、本実施形態では、上面に設置されている本発明の冷却装置11が、下面に設置されている従来型であるスプレーノズル10よりも冷却能力が高いため、上面冷却と下面冷却とがバランスするように上面冷却の間隔を設定したり、下面側の冷却水の圧力や流量を多くすることが好ましい。
【0045】
また、本発明の冷却装置11においては、冷却ユニット17の下流側に、冷却水が流出しないように、空気噴射ノズル20が設けて水切りを行うようにしている。その際、水切り手法としては、水を噴射する水切り手法が一般的に用いられるが、鋼帯表面温度が550℃以下の場合には水による水切りは鋼板の表面に冷却水が張り付き、水切りを不完全とし、局所的な過冷却を引き起こすおそれがあるので、その場合は空気を噴射する水切りが望ましい。なお、空気噴射ノズル20は、全ての冷却ユニット17の下流側に設けることが望ましいが、少なくとも最下流側の冷却ユニット17の下流側に設ければよい。
【0046】
そして、上記のように構成された冷却装置11を用いる際には、冷却の制御は次のようにして行う。
【0047】
まず、鋼帯の速度、計測した温度、板厚目標の冷却停止温度までの冷却量から、噴射する上面の冷却ゾーンの長さを求める。そして、求めた冷却ゾーン長をカバーする冷却ユニット17の数と、その冷却ユニット17において噴射する冷却ノズルヘッダ13の列数を決定し、対応する噴射弁16を開く。それ以降は、冷却後の温度計の実績をみて、鋼板速度の変更(加速・減速)を勘案しながら、冷却ゾーン長さを変更すべく、冷却ユニット17の数と噴射する冷却ノズルヘッダ13の列数を調整する。冷却ノズルヘッダ13の列数を変更する際は、冷却水が鋼帯上の非冷却ゾーン(空冷ゾーン)に流出することを極力防止するために、上流側から下流側へ向けて噴射する列数と下流側から上流側へ向けて噴射する列数を、冷却水の流体圧力が鋼帯の上流側と下流側でバランスするように調整することが望ましい。例えば、上流側と下流側の冷却ノズルヘッダを対にしてオン−オフさせることが望ましい。
【0048】
以上のようにして、この実施形態においては、以下に述べるような効果を得ることができる。
(1)鋼帯の先端から尾端まで均一に冷却を施すことができ、鋼帯の品質が安定する。それにともなって鋼帯の切り捨て代が少なくなって歩留まりが高くなる。
(2)間欠的な冷却を行うことで、特に500℃以下の低温度域まで冷却する場合に鋼帯の表層の組織異常(例えばマルテンサイト生成)がなく、目標とする組織が鋼帯断面全面(表層から板厚中心部まで)に得られる。
【0049】
なお、上記の第一の実施形態の図2では、上面冷却の対向噴射位置(衝突位置)をテーブルローラ上としているが、これは通板安定性の点から好ましいからである。
【0050】
しかし、それに限定されるものではなく、例えば、図3のように、上面冷却の対向噴射位置(衝突位置)がテーブルローラとテーブルローラの間になるようにしてもかまわない。その際に、上面冷却装置からの棒状冷却水により鋼帯が押さえ付けられることにより、テーブルローラ間で鋼帯に撓みが発生し、通板が不安定になる可能性があることから、これを防止するために、下面冷却は上面冷却の押し付け力とほぼ同等の押し上げ力を持つように、従来型の冷却装置に比べて高圧力で大水量の冷却水を噴射することが望ましい。
【0051】
また、上面冷却ユニット17は、鋼帯進行方向の上流側と下流側に分かれて、図2では各4列、図3では各8列の冷却ノズルヘッダ13を備えているが、その列数は限定されるものではなく、適切な列数を設置するようにすればよい。ただし、列数が増えてくると、棒状冷却水の鋼帯に衝突する範囲が鋼帯進行方向に長くなってくるため、必ずしもテーブルローラ直上のみで棒状冷却水を鋼帯に衝突させることができなくなるが、その際には、テーブルローラ直上とテーブルローラ間の両者にまたがって棒状冷却水を鋼帯に衝突させればよい。すなわち、例えば、図4のように、鋼帯進行方向の上流側と下流側にノズルヘッダを16列ずつ設置した場合は、棒状冷却水の鋼帯に衝突する範囲がテーブルローラの取り付けピッチより長くなる場合もあるので、この場合は、テーブルローラ直上とテーブルローラ間の両者にまたがっていてもかまわない。
【0052】
また、上記の第一の実施形態では、ランナウトテーブル5に設けられる鋼帯上面冷却の冷却装置として、従来型の冷却装置7と本発明の冷却装置11がその順に配置されているが、これに限定されるものではなく、他の実施形態を後述するように、ランナウトテーブル5に設けられる冷却装置の一部または全部が本発明の冷却装置11により構成されていればよい。ただし、前述したように、巻き取り温度によっては巻き取り機に近い領域で冷却が遷移沸騰とよばれる不安定な状態となる場合があるが、本発明の冷却装置11によれば、全面核沸騰となり、冷却が不安定となる遷移沸騰領域を回避することができる。従って、巻き取り温度によらず、安定した冷却が可能となり、巻き取り温度を精度よく制御することができるため、少なくとも巻き取り機の直前に本発明の冷却装置11を配置することが好ましい。このような配置とすることで、低温(500℃以下)の巻き取り温度においても不安定な冷却がなく、温度ばらつきが小さい。その結果、強度や伸びといった鋼帯の品質が鋼帯全長にわたって均質となる。
【0053】
次に、図5は、本発明の第二の実施形態における熱延鋼帯の製造設備を示すものである。
【0054】
粗圧延から巻き取りまでの製造工程は第一の実施形態と同じであるが、この第二の実施形態においては、本発明の冷却装置11が従来型の冷却装置7の上流側に配置されている。ちなみに、ここでは、本発明の冷却装置11には、図4に示したような各16列の冷却ノズルヘッダを備えた上面冷却ヘッダユニットが鋼帯進行方向に3ユニット取り付けられている。そして、第一の実施形態と同じく、ランナウトテーブル5には、例えば長手方向に約400mmピッチで、直径330mmの回転する鋼帯搬送用のテーブルローラ9が配置されており、これらテーブルローラ9上を鋼帯12が進行していく。なお、この領域における下面側の冷却装置は特に限定するものではなく、ここでは、前述した従来型の冷却装置7の領域と同様のスプレーノズル10を用いている。ただし、本発明の冷却装置11がテーブルローラ間にも棒状冷却水を衝突させていることから、鋼帯通板中に鋼帯が上から押し付けられて撓みやすいので、これを矯正するために、下面側の冷却装置に採用しているスプレーノズル10からの冷却水の水量と水圧を大きくして、上下の力がバランスするようにしている。
【0055】
そして、図4に示したように、各冷却ノズルヘッダ13には、供給管15がつながれていて、それぞれの供給管15は弁16によって独立にオン−オフ制御が可能になっているとともに、各冷却ノズルヘッダ13には、鋼帯進行方向に対して所定の噴射角度θ(例えば、45°)を有する円管ノズル14が、幅方向に所定のピッチで1列に並んで配置されている。
【0056】
これらの円管ノズル14は、第一の実施形態と同じく、内径が3〜10mmφで内面が滑らかな直管ノズルであり、噴射される冷却水は棒状冷却水である。棒状冷却水は一定の方向、すなわち、鋼帯12の進行方向には、鋼帯12と所定角度θをなすようになる。また、棒状冷却水の鋼帯12の幅方向の取り付けピッチや棒状冷却水などの構造は基本的に第一の実施形態と同じようにすればよい。
【0057】
さらに、ここでも、冷却ユニット17の下流側に、冷却水が流出しないように、第一の実施形態で行った水切り方法を実施すればよい。
【0058】
そして、冷却ノズルヘッダの注水順番などは第一の実施形態で説明したようにすればよい。
【0059】
以上のようにして、本実施形態でも基本的に第一の実施形態と同じ(1)、(2)の効果を得ることができるが、加えて(3)のような効果も得ることができる。すなわち、
(1)鋼帯の先端から尾端まで均一に冷却を施すことができ、鋼帯の品質が安定する。それにともなって鋼帯の切り捨て代が少なくなって歩留まりが高くなる。
(2)間欠的な冷却を行うことで、特に低温度域まで冷却する場合に鋼帯の表層の組織異常(例えばマルテンサイト生成)がなく、目標とする組織が鋼帯断面全面(表層から板厚中心部まで)に得られる。
(3)各冷却ユニットのノズル列数を増やし、且つ冷却ユニット間の空冷帯を短めにすることにより、冷却速度を比較的速くでき、且つ板厚方向に冷却速度差があまり付かないので、鋼帯の全体にベーナイト等の硬質層を生成させることができるため、高強度な材料を製造することが可能となる。
【0060】
なお、第一の実施形態では、ランナウトテーブル5に設けられる鋼帯上面冷却の冷却装置として、従来型の冷却装置7の下流側に本発明の冷却装置11が配置され、第二の実施形態では、従来型の冷却装置7の上流側に本発明の冷却装置11が配置されているが、これに限定されるものではない。
【0061】
例えば、第三の実施形態として、図6に示すように、本発明の冷却装置11の下流側に従来型の冷却装置7を配置し、さらにその下流側に本発明の冷却装置11を配置するようにしてもよい。その際に、上流側の本発明の冷却装置11(仕上げ圧延機4に近い方の冷却装置)を図4に示した冷却ノズルヘッダとし、下流側の本発明の冷却装置11(巻き取り機6に近い方の冷却装置)を図2に示した冷却ノズルヘッダとしたり、またその逆の構成にしたりしてもかまわない。
【0062】
また、第四の実施形態として、本発明の冷却装置11のみを配置するようにしてもよい。その際に、図2〜図4に示した冷却ノズルヘッダが混在していてもかまわない。
【0063】
つまり、ランナウトテーブル5に設けられる冷却装置の一部または全部が本発明の冷却装置11により構成されていればよい。
【0064】
ちなみに、前述したように、巻き取り温度によっては巻き取り機に近い領域で冷却が遷移沸騰とよばれる不安定な状態となる場合があるが、本発明の冷却装置11によれば、全面核沸騰となり、冷却が不安定となる遷移沸騰領域を回避することができる。巻き取り温度を低く(例えば500℃以下)する必要がある場合には、巻き取り装置近傍に本発明の冷却装置11を設置すればよい。また、板厚全体にわたってベーナイトやマルテンサイトなどの硬質層を出すことにより高強度材料を製造する場合には、仕上げ圧延後速やかに急速冷却するのが好ましいため、空冷帯長さがなるべく短くなるように冷却ユニットを配置し、且つ仕上げ圧延機近くに設置することが好ましい。無論、低温巻き取りをして且つ高強度材を製造する場合には、図6に示した第三の実施形態のように、ランナウトテーブルの前段と後段の両方に本発明の冷却装置11を設置すればよい。
【実施例1】
【0065】
本発明の実施例を説明する。
【0066】
[本発明例1]
本発明例1として、上記の第一の実施形態に基づいて、図1に示す設備配置で、図2に示す冷却ノズルヘッダ装置を使って、仕上げ板厚2.8mmの鋼帯を製造した。なお、本発明の冷却装置11では、上流側及び下流側に各4列の冷却ノズルヘッダを備えた冷却ユニットを6ユニット設置した。そして、仕上げ圧延機4出側での鋼帯速度は鋼帯先端部で700mpm、鋼帯先端部が巻き取り機6に到達して以降は順次速度を上げて最高1000mpmまで増速した。鋼帯の仕上げ圧延機出側の温度は850℃で、従来の冷却装置10を使っておよそ600℃まで冷却し、以降目標の巻き取り温度である400℃までは本発明の冷却装置11を使って冷却した。なお、ここでは、冷却装置11からの冷却水の噴射角度θを50°とし、鋼帯と衝突した時点での冷却水の鋼帯長手方向の流速が鋼帯の最高速度以上となるように、冷却水の噴射速度を30m/sとした。これにより、鋼帯長手方向の流速は30m/s×cos50°≒1152mpmとなる。
【0067】
そして、冷却の制御は次のように行った。鋼帯の速度、計測した温度、板厚目標の冷却停止温度までの冷却量から冷却水を噴射する上面と下面の冷却ゾーンの長さを求める。求めた冷却ゾーン長をカバーする上面冷却条件と下面冷却条件をもとめ、下面冷却分を除いた上で、上面冷却に関して、冷却ユニット17の数と、その冷却ユニット17において噴射する冷却ノズルヘッダ13の列数を決定し、対応する噴射弁16を開く。それ以降は、冷却後の温度計の実績をみて、鋼板速度の変更(加速・減速)を勘案しながら、冷却ゾーン長さを変更すべく、冷却水ユニットの数と噴射する冷却ノズルヘッダの列数を調整した。ただし、噴射する冷却ノズルヘッダの列数を変更する際は、上流側から噴射する列数と下流側から噴射する列数を、冷却水の流体圧力が鋼帯の上流側と下流側でバランスするように、上流側と下流側の冷却ノズルヘッダを対にしてオン−オフさせた。
【0068】
さらに、各冷却ユニット17出側で鋼帯上面表面がマルテンサイトにならないように、冷却ユニット17のゾーン長さを調整し、さらに次の空冷ゾーンで内部からの熱の拡散で十分復熱が完了するように空冷ゾーン長さを決定し、以降の冷却ユニット17の使用条件を決定した。ちなみに、ここで用いた鋼は、350℃以下でマルテンサイト組織が生成するので、表面が350℃以下にならないように冷却を制御した。
【0069】
その結果、本発明例1においては、巻き取り機6における鋼帯温度が全長に渡って400℃±10℃以内となり、非常に均一な冷却が実現できた。また、鋼帯上面表層に焼き戻されたマルテンサイト組織が存在することもなかった。これによって、安定した品質の鋼帯を得ることができた。
【0070】
[本発明例2]
本発明例2として、上記の第一の実施形態に基づいて、図1に示す設備配置で、図3に示す冷却ノズルヘッダ装置を使って、仕上げ板厚2.4mmの鋼帯を製造した。なお、本発明の冷却装置11では、上流側及び下流側に各8列の冷却ノズルヘッダを備えた冷却ユニットを3ユニット設置した。そして、仕上げ圧延機4出側での鋼帯速度は鋼帯先端部で750mpm、鋼帯先端部が巻き取り機6に到達して以降は順次速度を上げて最高1000mpmまで増速した。鋼帯の仕上げ圧延機出側の温度は860℃で、従来の冷却装置10を使っておよそ650℃まで冷却し、以降目標の巻き取り温度である450℃までは本発明の冷却装置11を使って冷却した。なお、ここでは、冷却装置11からの冷却水の噴射角度θを45°とし、鋼帯と衝突した時点での冷却水の鋼帯長手方向の流速が鋼帯の最高速度以上となるように、冷却水の噴射速度を35m/sとした。これにより、鋼帯長手方向の流速は30m/s×cos45°≒1484mpmとなる。
【0071】
そして、上記の本発明例1と同様に、冷却の制御、すなわち冷却ゾーン長さを変更すべく、冷却水ユニットの数と噴射する冷却ノズルヘッダの列数を調整した。
【0072】
さらに、各冷却ユニット17出側で鋼帯上面表面がマルテンサイトにならないように、水冷と空冷を繰り返す冷却(間欠冷却)をするために、3個の冷却ユニット17において、各冷却ユニット17で噴射する冷却ノズルヘッダの列数を変化させることにより、それぞれの冷却ユニット17の冷却ゾーン長さを調整して、冷却ユニットの使用条件を決定した。ちなみに、ここで用いた鋼は、350℃以下でマルテンサイト組織が生成するので、表面が350℃以下にならないように冷却を制御した。
【0073】
その結果、本発明例2においては、巻き取り機6における鋼帯温度が全長に渡って450℃±8℃以内となり、非常に均一な冷却が実現できた。また、鋼帯上面表層に焼き戻されたマルテンサイト組織が存在することもなかった。これによって、安定した品質の鋼帯を得ることができた。
【0074】
[本発明例3]
本発明例3として、上記の第二の実施形態に基づいて、図5に示す設備配置で、図4に示す冷却ノズルヘッダ装置を使って、仕上げ板厚3.6mmの鋼帯を製造した。なお、本発明の冷却装置11では、上流側及び下流側に各16列の冷却ノズルヘッダを備えた冷却ユニットを5ユニット設置した。そして、仕上げ圧延機4出側での鋼帯速度は鋼帯先端部で600mpm、鋼帯先端部が巻き取り機6に到達して以降は順次速度を上げて最高800mpmまで増速した。鋼帯の仕上げ圧延機出側の温度は840℃で、本発明の冷却装置11を使っておよそ650℃まで冷却し、以降目標の巻き取り温度である500℃までは従来型の冷却装置7を使って冷却した。なお、ここでは、冷却装置11からの冷却水の噴射角度θを55°とし、鋼帯と衝突した時点での冷却水の鋼帯長手方向の流速が鋼帯の最高速度以上となるように、冷却水の噴射速度を30m/sとした。これにより、鋼帯長手方向の流速は30m/s×cos55°≒1032mpmとなる。
【0075】
そして、上記の本発明例1と同様に、冷却の制御、すなわち冷却ゾーン長さを変更すべく、冷却水ユニットの数と噴射する冷却ノズルヘッダの列数を調整した。
【0076】
ちなみに、ここで用いた鋼は、板厚全体をベーナイト化したいため、800℃から600℃までの冷却中に高い冷却速度が必要であるが、350℃以下になるとマルテンサイト組織が生成するので、表面が350℃以下にならないように冷却を制御した。すなわち、冷却速度を高め、且つ表面が350℃以下とならないように、空冷部分と水冷部分の距離を調整しておいた。
【0077】
その結果、本発明例3においては、巻き取り機6における鋼帯温度が全長に渡って500℃±12℃以内となり、非常に均一な冷却が実現できた。また、冷却速度が高くかつ安定していたため、鋼帯板厚方向に均一なベーナイト組織が生成でき、高強度材を製造することができた。
【0078】
[本発明例4]
本発明例4として、上記の第三の実施形態に基づいて、図6に示す設備配置で、ランナウトテーブルの前段は図4に示す冷却ノズルヘッダ装置を使い、ランナウトテーブルの後段は図2に示す冷却ノズルヘッダ装置を使って、仕上げ板厚4.0mmの鋼帯を製造した。なお、前段の本発明の冷却装置11では、上流側及び下流側に各16列の冷却ノズルヘッダを備えた冷却ユニットを5ユニット設置し、後段の本発明の冷却装置11では、上流側及び下流側に各4列の冷却ノズルヘッダを備えた冷却ユニットを3ユニット設置した。そして、仕上げ圧延機4出側での鋼帯速度は鋼帯先端部で500mpm、鋼帯先端部が巻き取り機6に到達して以降は順次速度を上げて最高550mpmまで増速した。鋼帯の仕上げ圧延機出側の温度は850℃で、前段の本発明の冷却装置11を使っておよそ650℃まで冷却し、その後、従来型の冷却装置7は使わずに、目標の巻き取り温度である400℃までは、前段の本発明の冷却装置11を使って冷却した。なお、ここでは、前段および後段の各冷却装置11からの冷却水の噴射角度θを45°とし、鋼帯と衝突した時点での冷却水の鋼帯長手方向の流速が鋼帯の最高速度以上となるように、冷却水の噴射速度を30m/sとした。これにより、鋼帯長手方向の流速は30m/s×cos45°≒1272mpmとなる。
【0079】
そして、上記の本発明例1と同様に、冷却の制御、すなわち冷却ゾーン長さを変更すべく、冷却水ユニットの数と噴射する冷却ノズルヘッダの列数を調整した。
【0080】
ちなみに、ここで用いた鋼は、板厚全体をベーナイト化したいため、800℃から600℃までの冷却中に高い冷却速度が必要であるが、350℃以下になるとマルテンサイト組織が生成するので、表面が350℃以下にならないように冷却を制御した。すなわち、冷却速度を高め、且つ表面が350℃以下とならないように、前段と後段の各冷却装置11において、空冷部分と水冷部分の距離を調整しておいた。
【0081】
その結果、本発明例4においては、巻き取り機6における鋼帯温度が全長に渡って400℃±11℃以内となり、非常に均一な冷却が実現できた。また、冷却速度が高くかつ安定していたため、鋼帯板厚方向に均一なベーナイト組織が生成でき、高強度材を製造することができた。
【0082】
[比較例1]
上記の本発明例1、2、4で示した500℃未満の低温巻き取りにおける本発明の効果と比較するために、比較例1として、本発明例1と同じ設備において、本発明の冷却装置11は使用せずに、従来の冷却装置7(上面の円管ラミナーノズル8と下面のスプレーノズル10)だけで目標の巻き取り温度である400℃まで冷却した。その他は、本発明例1と同様にした。
【0083】
その結果、比較例1においては、円管ラミナーノズル8によるラミナー流が自由落下流であるので、滞留水膜があると鋼帯12まで冷却水が到達しにくい上に、滞留水がある場合とない場合で冷却能力に違いが生じ、鋼帯長手方向に温度のハンチングが見られた。特に、巻き取り機6での巻き取りが開始して鋼帯に張力が掛かるまでの間に、鋼帯先端部で凹状になった部分に滞留水が滞留し、それによって鋼帯長手方向に温度のムラが生じた。したがって、鋼帯内の温度のばらつきが大きく、巻き取り機6での狙いの温度400℃に対して250℃〜450℃と大きくばらついた。そのために、鋼帯内の強度のばらつきが大きかった。
【0084】
[比較例2]
上記の本発明例3、4で示した本発明の冷却装置11による仕上圧延直後の急速冷却の効果と比較するために、比較例2として、本発明例1と同じ設備において、本発明の冷却装置11は使用せずに、従来の冷却装置7(上面の円管ラミナーノズル8と下面のスプレーノズル10)だけで目標の巻き取り温度である500℃まで冷却した。その他は、本発明例3と同様にした。
【0085】
その結果、比較例2においては、円管ラミナーノズル8によるラミナー流が自由落下流であるので、滞留水膜があると鋼帯12まで冷却水が到達しにくい上に、滞留水がある場合とない場合で冷却能力に違いが生じ、鋼帯長手方向に温度のハンチングが見られた。特に、巻き取り機6での巻き取りが開始して鋼帯に張力が掛かるまでの間に、鋼帯先端部で凹状になった部分に滞留水が滞留し、それによって鋼帯長手方向に温度のムラが生じた。したがって、鋼帯内の温度のばらつきが大きく、巻き取り機6での狙いの温度500℃に対して400℃〜500℃と大きくばらついた。そのために、鋼帯内の強度のばらつきが大きかった。また、本発明例3、4に比べて冷却速度が遅いため、局所的にフェライトやパーライトなどの軟質層が生成し、目的とする強度を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第一の実施形態における圧延設備の概略の構成図である。
【図2】本発明の第一の実施形態における冷却装置の説明図である。
【図3】本発明の第一の実施形態における冷却装置の説明図である。
【図4】本発明の第一の実施形態における冷却装置の説明図である。
【図5】本発明の第二の実施形態における圧延設備の概略の構成図である。
【図6】本発明の第三の実施形態における圧延設備の概略の構成図である。
【図7】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1…粗圧延機
2…粗バー
3…テーブルローラ
4…連続仕上げ圧延機群
4E…最終仕上げ圧延機
5…ランナウトテーブル
6…巻き取り機
7…従来型の冷却装置
8…円管ラミナーノズル
9…テーブルローラ
10…スプレーノズル
11…本発明の冷却装置
12…鋼帯
13…冷却ノズルヘッダ
14…円管ノズル
15…供給管
16…噴射弁
17…上面の冷却ユニット
20…空気噴射ノズル
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成19年6月8日(2007.6.8)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎

【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘


【公開番号】 特開2008−49397(P2008−49397A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−152367(P2007−152367)