トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 スケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【発明者】 【氏名】武田 実佳子

【氏名】▲高▼知 琢哉

【氏名】大西 隆

【氏名】酒井 英典

【氏名】黒田 武司

【氏名】丸尾 知忠

【要約】 【課題】熱間圧延後の鋼材の冷却中や保管・搬送時のスケールの確実な密着性と、2次加工前のメカニカルデスケーリングや酸洗時におけるスケールの剥離性の両面にすぐれた鋼材の製造方法を提供すること。

【構成】鋼片を加熱して熱間圧延し、熱間圧延を終了した鋼材を、水蒸気および/または粒径100μm以下のミスト水の存在する湿潤雰囲気中に導入して鋼材の表面を酸化処理することを特徴とするデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼片を加熱して熱間圧延し、熱間圧延を終了した鋼材を、水蒸気および/または粒径100μm以下のミスト水の存在する湿潤雰囲気中に導入して鋼材の表面を酸化処理することを特徴とするデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項2】
前記酸化処理を、露点30〜80℃の湿潤雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項3】
前記湿潤雰囲気中に鋼材を0.1秒以上60秒以下通過させることを特徴とする請請求項1または2に記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項4】
鋼片を加熱して熱間圧延し、熱間圧延を終了した鋼材を、露点30〜80℃の湿潤雰囲気中を0.1秒以上60秒以下通過させて鋼材の表面を酸化処理することを特徴とするデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項5】
前記鋼材の酸化処理時の開始温度が750〜1015℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項6】
前記鋼片を加熱して熱間圧延するにあたり、1200℃以下の温度で加熱炉より抽出して圧延することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項7】
前記鋼材の酸化処理時の終了温度が600℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延により製造される鋼材、たとえば鋼線材の表面に形成された酸化物のスケール(以下、単にスケールということがある)が冷却中や保管搬送時には密着性良く付着して錆発生を抑えるとともに、鋼線材の2次加工である伸線・引き抜き加工等に先行するメカニカルデスケーリングや酸洗処理時には容易に除去されるスケールを備えた鋼材、特に鋼線材の有効な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延により製造された鋼材は、その素材となる鋼片の加熱時ないし圧延時に形成された表面上の酸化物のスケールを、伸線・引き抜き加工等の2次加工前に除去する(デスケーリング)する必要がある。このデスケーリング法として、物理的(機械的)に除去するメカニカルデスケーリング法や化学的に除去する酸洗法が採用されている。
【0003】
このデスケーリング処理時にスケールが十分に除去できずに鋼材の表面に残留した場合、スケールが硬質なために引き抜き加工時に製品疵が発生したり、加工ダイス寿命の低下がおこるばかりか、ダイスの破壊の原因ともなり、生産性の低下を招く。
【0004】
従って、鋼材の製造にあたっては、2次加工に先立つデスケーリング工程におけるメカニカルデスケーリング(以下、MDと略称することがある)もしくは酸洗によるスケールの剥離性が良好な鋼材が得られるよう留意しなければならない。近年環境問題やコスト低減の観点から、デスケーリング法としてメカニカルデスケーリング法が多く採用されるようになっているため、特にメカニカルデスケーリングの際におけるスケールの剥離性の良否が鋼材の製造に当たって重要な決め手となる。
【0005】
メカニカルデスケーリング法は、伸線・引き抜き加工のインラインでローラなどによる曲げ歪やショットブラストで物理的に鋼材のデスケーリングを行う。ところが、伸線工程までにスケールが剥離してしまっていると、剥離部分に錆びや薄い3次スケールが発生する。3次スケールは非常に薄く硬質なマグネタイトスケールであるために、曲げ歪では容易に除去できず、ダイスの破壊の問題が発生する。そのため、伸線工程の前まではスケールが剥離せずに、曲げ歪等の負荷を付与した時や酸洗時に剥離するスケール性状の確保が求められている。
【0006】
MDや酸洗によるスケール剥離性を改善するためには、スケール組成をFeO(ウスタイト)の比率の高い組成とする必要があり、メカニカルデスケーリング性や酸洗性の改善技術については、従来よりいくつかの提案がなされている。
【0007】
線材圧延後の巻取りを870-930℃の高温で行い、剥離性の良いFeOを生成させたあと、冷却速度を上げて剥離性の悪いFe3O4の生成を抑える方法(特許文献1参照)が提案されている。しかし、この方法では、FeOの生成を抑制しやすいSiやCを多く含有する硬鋼線材においては高温巻取りのみでは十分なFeO量を確保できない。また、軟鋼線材においても、高温で保持される時間が極短時間であることからFeOの生成は必ずしも十分ではなくMD性の改善効果は小さい。
【0008】
また、巻取り温度を800℃以下で巻き取って、600〜400℃の範囲を0.5℃/sec以上で冷却して、剥離しにくいFe3O4(マグネタイト)の生成を抑える方法(特許文献2参照)も提案されている。しかし、この方法においても前記の方法と同様、FeOの生成は不十分であり、スケール剥離性は十分ではない。
【0009】
さらに、巻き取られた線材コイルの中空領域に衝風を吹き込んで均一に冷却し、線材コイル全長にわたってスケール組成・厚みを所定範囲内に制御する方法(特許文献3参照)も提案されているが、本方法によっても特にC、Siを多く含有してスケールが成長しにくい硬鋼線では十分ではない。
【0010】
これら従来の方法はすべて、地鉄に接したスケール層は脆いFeOであり、熱間上がりのスケールの密着性は不十分である。スケールの密着性を高めるためには、ファイアライト(Fe2SiO4)を形成させることが有効であるが、密着性の観点からは検討がなされておらず、鋼材の耐錆性も問題がある。
【0011】
なお、上記以外の方法として鋼材の冷却による機械的特性改善を主目的としたもの(特許文献4、5参照)があるが、いずれも剥離性の良いスケール性状の確保の観点からは不十分である。
【特許文献1】特開平4−293721号公報
【特許文献2】特開平2000−246322号公報
【特許文献3】特開平2005−118806号公報
【特許文献4】特公平5−87566号公報
【特許文献5】特開平2004−10960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来技術におけるデスケーリングを対象とする鋼材のスケール特性の欠点を克服し、熱間圧延後の鋼材の冷却中や保管・搬送時のスケールの確実な密着性と、2次加工前のメカニカルデスケーリングや酸洗時におけるスケールの剥離性の両面にすぐれた鋼材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために完成された本発明の鋼材の製造方法は以下の通りである。
【0014】
すなわち、請求項1に係る本発明は、鋼片を加熱して熱間圧延し、熱間圧延を終了した鋼材を、水蒸気および/または粒径100μm以下のミスト水の存在する湿潤雰囲気中に導入して鋼材の表面を酸化処理することを特徴とするデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法である。
【0015】
また、請求項2に係る本発明は、前記酸化処理を、露点30〜80℃の湿潤雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法である。
【0016】
また、請求項3に係る本発明は、前記湿潤雰囲気中に鋼材を0.1秒以上60秒以下通過させることを特徴とする請請求項1または2に記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法である。
【0017】
また、請求項4に係る本発明は、鋼片を加熱して熱間圧延し、熱間圧延を終了した鋼材を、露点30〜80℃の湿潤雰囲気中を0.1秒以上60秒以下通過させて鋼材の表面を酸化処理することを特徴とするデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法である。
【0018】
また、請求項5係る本発明は、前記鋼材の酸化処理時の開始温度が750〜1015℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法である。
【0019】
また、請求項6係る本発明は、前記鋼片を加熱して熱間圧延するにあたり、1200℃以下の温度で加熱炉より抽出して圧延することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法である。
【0020】
さらに、請求項6係る本発明は、前記鋼材の酸化処理時の終了温度が600℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のデスケーリング時のスケール剥離性に優れた鋼材の製造方法
【発明の効果】
【0021】
本発明の鋼材の製造方法によれば、スケールの生成が適度に促進されて、かつ適正なスケール組成となるため、熱間圧延後の鋼材の冷却中や保管・搬送時には鋼材表面に密着して剥離せず、従ってスケールの脱落防止による耐錆性を維持し、しかも2次加工前のメカニカルデスケーリング時や酸洗時においては鋼材表面から容易に剥離して、2次加工時の製品の品質や生産性を阻害することのない優れたスケール特性を有する鋼材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明者らは、メカニカルデスケーリング性や酸洗性の確保に必要なFeO(ウスタイト)を十分に生成させてスケールの生成量を増やし、且つ熱間圧延後の鋼材の冷却中や保管・搬送時のスケールの確実な密着性の確保に必要なFe2SiO4(ファイアライト)を生成させることを両立させるべく鋭意検討した。この結果、熱間圧延を終了して巻き取った後の鋼材を、巻取り温度近傍での湿潤雰囲気中で酸化処理することが有効であることを知見した。
【0023】
そして、この課題を解決するための手段として、本発明では鋼片を加熱した後熱間圧延を行い、巻取り後の鋼材を水蒸気および/または粒径100μm以下のミスト水の存在する湿潤雰囲気中に導入して鋼材の表面を酸化処理を方法を採用する。そして、より具体的には、露点30℃〜80℃の湿潤雰囲気中で、また、この湿潤雰囲気中への鋼材の導入時間(酸化処理時間)を0.1〜60secとし、さらには前記鋼材の酸化処理時の開始温度は750〜1015℃とし、また前記鋼材の酸化処理時の終了温度は600℃以上として鋼材の表面を酸化処理することを特徴とする。
【0024】
この発明の方法を適用することによって、水蒸気がスケール内方へ拡散して地鉄内を酸化するため、FeOに富むスケールが形成されて、スケールの付着量が増し、MD性が改善される。
【0025】
また、この方法を適用することによって、熱間圧延後の鋼材の冷却中や保管・搬送時のスケールの密着性の確保に必要なFe2SiO4(ファイアライト)を、スケールと鋼の界面に形成させることができる。このFe2SiO4は地鉄内に形成されたFeOと鋼材中のSiに由来するSiO2の反応により上記界面に均一に生成し、地鉄との密着性が高く、またスケール成長に伴う応力緩和効果もあり、スケールを安定的に鋼材表面に付着させることができる。従って、このスケールは鋼材の冷却中や保管搬送時に剥がれることがなく、耐錆性が改善される。しかも、このFe2SiO4はこれ自体が低温では脆く、曲げ歪等の負荷を付与したときには、Fe2SiO4と地鉄の界面部から綺麗に剥離するため、MD性に悪影響を与えることもない。
【0026】
本発明法により得られた鋼材は、酸洗法によるデスケーリング時においても、脆く割れが発生しやすいFeOが十分に形成されているため、酸がFeO内の割れや欠陥を介して地鉄との界面まで到達してFe2SiO4を効率的に溶解し、スケール剥離性は全く問題がない。なお、通常の大気酸化においては鋼中のSiがSiO2となって地鉄表面に分散し、Fe拡散を阻害することからFeOが十分に生成されず、本発明の課題を達成することはできない。
【0027】
本発明法における前記湿潤雰囲気は、水蒸気または粒径100μm以下のミスト水を鋼材表面に噴霧することによって容易に作ることができる。このようにすると、鋼材表面の周囲を包囲した水蒸気がスケール内方へ拡散して地鉄を迅速に酸化する結果、前記のようにFeOに富んだ多量のスケールを鋼材表面に生成させることができ、且つ地鉄とFeOの界面にFe2SiO4(ファイアライト)を形成させることができるのである。
【0028】
本発明法により製造された鋼材の好ましいスケール付着量は0.1〜0.7wt%である。スケール付着量が0.1wt%未満の場合は、スケール組成が剥離性の悪いFe3O4(マグネタイト)となりやすいため、メカニカルデスケーリングや酸洗によって剥離しにくく、好ましくない。一方、スケール付着量が0.7wt%を超えるとスケールロスが増えることから好ましくない。
【0029】
本発明法で採用される湿潤雰囲気の露点は30〜80℃とすべきである。この露点が30℃未満では水蒸気酸化の効果が少なく、上記のスケール生成、FeOおよびFe2SiO4の生成効果が不十分である。また、この露点が80℃を超えるとスケール生成が過剰となってスケールロスが多くなるほか、途中でスケールが剥離してしまう問題が生じる。さらには、冷却過程で剥離しにくいFeO4(マグネタイト)が発生し、MD性を悪化させる要因となる。
【0030】
そして、この露点は、鋼材表面近傍の雰囲気中の水分量を測定することによって確認する。具体的には、鋼材表面より50cm以内の高さ内の雰囲気ガスを採取して、これを露点計で測定することによって決定する。
【0031】
本発明法においては、湿潤雰囲気を作製するために、水蒸気またはミスト水を噴霧して高温の鋼材表面で蒸発させる。ミスト水によって本発明に必要な露点を確保するためには、ミストの粒径がポイントとなる。粒径が100μm以下の微細なミストを吹き付けることにより、ミストが鋼材の熱で蒸発し、本発明で必要な露点30℃(水分量で約30g/m3)以上が得られる。ミスト粒径が100μmより大きい場合は、ミストの蒸発が十分でなく、水滴状態で鋼材表面に付着するために鋼材表面温度が急激に低下し、スケールの生成が不十分となる。このミスト粒径は微細なほど水蒸気化が促進されやすいが、微細なミストを得るには、多量かつ高圧の空気を使用するか、または異物通過径の小さいノズルを用いることが必要であり、コスト面や安定生産の面では10〜50μm程度が望ましい。なお、ミスト粒径の測定方法については通常、液浸法やレーザー回折法などが使用されるが、本発明ではレーザ回折法によりミスト径を測定した値を採用する。
【0032】
本発明法における湿潤雰囲気中での鋼材の酸化処理時間(水蒸気酸化の時間)は0.1秒以上60秒以下とすることが必要である。この時間が0.1s未満ではスケールの生成量が不十分で、デスケーリング時のスケール剥離性の改善が見込めない。またこの時間が60sを超えるとスケールの生成量は飽和し、意味がなくなる。鋼種によってはあまり水蒸気酸化時間が長くなると表面酸化が進んでスケール剥離性の悪いFe3O4(マグネタイト)が増えて好ましくない。従って、好ましくは50s以下、より好ましくは30s以下である。
【0033】
また、鋼材の酸化処理時の開始温度(水蒸気酸化処理時の開始温度)は750〜1015℃とすることが好ましい。この開始温度が750℃を下回ると、酸化処理時の終了温度が低くなり、水蒸気効果が不十分となる可能性がある。また逆に1015℃を超える高温の開始温度では、スケール生成が過剰となって、スケールロスが増えて歩留まりが悪化するため1015℃以下に保持することが実用的である。
【0034】
さらに、本発明法における鋼材の酸化処理時の終了温度(水蒸気酸化処理時の終了温度)は、少なくとも600℃以上の高温に保持することが好ましい。この終了温度が600℃未満では水蒸気の効果が不十分となり、スケール剥離性の悪いFe3O4(マグネタイト)が生成しやすく、デスケーリング時のスケール剥離性を損ないやすい。より好ましくはこの酸化終了温度を650℃以上に保持して実施することが良い。
【0035】
鋼片の熱間圧延後に本発明法によって鋼材表面に付着、生成されるスケール、所謂2次スケールの性状とその剥離性は、熱間圧延前の加熱炉で発生する1次スケールのデスケーリング性にも大きく左右される。デスケーリングでスケールが取れ残ると圧延中に鋼材に押し込まれて、鋼材表面が凹凸化し、その後に発生する2次スケールが楔状に鋼材に食い込むため、2次スケールの剥離性劣化の原因となる。そのため、加熱炉で発生する1次スケールは極力除去して圧延する。この1次スケールを完全に除去するためにデスケーリングは3MPa以上の圧力で仕上げ圧延までに1回以上行う。デスケーリングは加熱炉出側から粗圧延に至る間に行ってもよいし、粗圧延である程度スケールを破壊してから、デスケーリングを行うとさらに効率的に除去できる。高圧水の圧力は3MPa未満ではデスケーリングが不十分となり、2次スケールの剥離性を悪化させる。またデスケーリング圧力は100MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。このデスケーリング圧力が100MPaを超えると鋼材の表面温度の低下が著しく、圧延が困難となる。
【0036】
加熱温度は1200℃以下とする。加熱温度が1200℃を超えると、1次スケールの発生が過剰となり、デスケーリング性が悪化して、2次スケールの剥離性劣化の原因となる。またスケールロスにより歩留まり悪化も問題となる。加熱温度の下限は特に限定されないが、圧延負荷低減の観点から適宜選定される。なお、この加熱温度は、加熱炉より抽出直後の鋼片表面温度を放射温度計により測定した値とする。
【0037】
本発明が対象とする鋼材の成分は主成分としてC量:0.05〜1.2 質量 %、Si量:0.01〜0.5 質量 %含有するものであれば良く、その他の成分については特にこれを限定するものではない。その他の成分としてはMn(0.1〜1.5 質量%)、Al(0.1 質量 %以下)、P(0.02 質量 %以下)、S(0.02 質量 %以下)、N(0.005 質量 %以下)、Cu、Ni、Cr、B、Ni、Mo、Zr、V、Ti、及びHfなどが挙げられる。なお、( )内の数値は好ましい含有量を示す。
【0038】
主成分のうち、Cは鋼の機械的性質を決定する主要元素であって、鋼材としての必要強度を確保するために0.05質量%以上とし、また熱間圧延時における加工性の低下を避けるために1.2%以下とすることが好ましい。
【0039】
もうひとつの主成分であるSiは、鋼の脱酸材として必要であるが、さらには本発明によって得られるスケールの必須成分であるFe2SiO4の生成を左右するので、この理由からもその量が規定される。すなわち、スケールと地鉄との密着性を適度に保ち、スケールを安定的に付着させるためには、鋼中のSiを0.01〜0.5質量%とすることが望ましい。
【0040】
実施例
表1に示す成分の150mm角の鋼片を、加熱炉内で加熱し、加熱炉内で生成した1次スケールをデスケーリング除去した後に圧延を行った。圧延を終了した鋼材を巻取り後に湿潤雰囲気処理で酸化処理した後、冷却して鋼材を得た。表2に鋼片の熱間圧延条件ならびに鋼材巻取り後の湿潤雰囲気による酸化処理条件を示す。また、表3に得られた鋼材の表面に付着したスケールの特性を示す。
【0041】
【表1】


【0042】
【表2】


【0043】
【表3】


【0044】
ここで、熱間圧延上がりの鋼材のスケールの剥離状態(スケールの密着性)は、鋼材コイルの先端、中央部、後端より各々500mm長さの鋼材を各3本採取して、鋼材の外周面、内周面の表面外観をデジタルカメラで撮影し、スケールが剥離した部分の面積率(%)を画像解析処理ソフトにより算出して平均値を求めた。スケールの剥離率は3%以下であれば合格とした。
【0045】
また、スケールの組成は、コイルの前端、中央部、後端より10mm長さのサンプルを採取し、各々のサンプルより任意の3箇所をX線回折測定し、各鋼材のスケール付着量、およびスケールの剥離性(メカニカルデスケーリング後のスケール残留量)を評価した。上記の各鋼材を長さ250mmに切断・採取し、この重量測定をして重量(後述のチャック間距離200mm相当部の重量:W3)を求めた。次に、このサンプルをチャック間距離200mmとしてクロスヘッドの変位が12mmまで(4%)引張荷重を与え、チャックから取り外した後にサンプルに風を吹きかけて鋼材表面のスケールを吹き飛ばして、200mm長さに切断して重量測定した(W1)。次に、このサンプルを塩酸中に浸漬して鋼材表面に付着しているスケールを完全に剥離させ、再度重量を測定した(W2)。この重量測定の値から以下の(1)式により残留スケールを求め、スケール残留量が0.05wt%以下であるものを合格とした。また、(2)式より、鋼材のスケール付着量を求めた。
【0046】
残留スケール(重量%)=(W1−W2)/W1 ×100 ・・・(1)
スケール付着量(重量%)=(W3−W2)/W3 ×100 ・・・(2)
【0047】
(実施例No.1-16)
加熱炉で発生した1次スケールはデスケーリング処理によって完全に除去され、かつ適正条件のミスト、もしくは水蒸気の噴霧により水蒸気酸化が生じて、Fe2SiO4を含有する好ましい状態のスケール組成が得られるとともにスケール付着量もいずれも0.1wt%以上0.7wt%以下の好ましい範囲にあることがわかる。このため、MD後のスケール残留量は極めて少なく、MD性が非常に良好な結果が得られている。しかも、圧延上がりのスケール剥離率も少なく、耐錆性が良好であり、防錆剤の塗布を必要としないことが判明する。
(比較例No.17)
水蒸気酸化開始温度が低く、水蒸気酸化終了温度も低いために水蒸気が十分に作用せず、スケールの組成(Fe2SiO4生成なし)、付着量ともに不良の状態となり、この結果、MD性が悪くなった例である。
(比較例No.18)
水蒸気酸化開始温度が高すぎるために、水蒸気による加速酸化が激しく起こり、スケールが厚くつき過ぎてその付着量が0.7wt%を超えてしまい、冷却プロセス中にスケールが剥離してしまった例である。この場合、冷却中に剥離しにくい薄い3次スケール(マグネタイト:Fe3O4)が発生し、このためMD性が劣化している。
(比較例No.19)
ミストの粒径が大きすぎる(露点:低い)ために、水蒸気が十分に作用せず、スケールの組成(Fe2SiO4生成なし)、付着量ともに不良の状態となり、この結果、MD性が悪くなった例である。
(比較例No.20)
露点が高すぎるために、水蒸気による加速酸化が激しく起こり、スケールが厚く付き過ぎて冷却中にスケールが剥離してしまった例である。この場合、冷却中に剥離しにくい薄い3次スケール(マグネタイト:Fe3O4)が発生し、このためMD性が劣化した例である。
(比較例No.21、22)
水蒸気酸化時間が短すぎるために、スケールの組成(Fe2SiO4なし)、付着量ともに不十分な状態となり、この結果、MD性が劣化した例である。
(比較例No.23、24)
水蒸気噴霧による水蒸気酸化時間が長すぎるために、表面酸化が進んで剥離しにくいマグネタイト(Fe3O4)が生成したため、MD性が劣化した例である。
【0048】
なお、本実施例においては本発明法に係る水蒸気酸化処理を、鋼片の熱間圧延を終了して鋼材を巻き取った後に行ったが、本発明はこれに限らず、例えば鋼材の巻き取り時に行っても良く、要は熱間圧延を終了した後であれば何時の時期でもかまわないものである。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年8月28日(2006.8.28)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠

【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通


【公開番号】 特開2008−49391(P2008−49391A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−231036(P2006−231036)