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【発明の名称】 超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法及び連続熱間圧延方法
【発明者】 【氏名】蛭田 敏樹

【氏名】渡辺 裕一郎

【氏名】松原 行宏

【要約】 【課題】被圧延材の穴あきによる品質不良と、被圧延材の穴あきに起因した破断に伴う熱間圧延ラインの操業の停止と、を抑制、防止、撲滅する。

【構成】超硬合金製スリーブ外層191を有する超硬合金ロールをワークロール19に用い、且つ、該ワークロール19と被圧延材8の間に潤滑剤を供給する。仕上圧延機18中、被圧延材8の出側板厚が10mm以下になる圧延機以降に、超硬合金製スリーブ外層191を有する超硬合金ロールをワークロール19に用い、且つ、該ワークロール19と被圧延材8の間に潤滑剤を供給することができる。更に、合成エステルを10体積%以上含有する潤滑剤を、25〜300cc/分/mの割合で超硬合金ロールの表層に向け供給することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロールをワークロールに用い、且つ、該ワークロールと被圧延材の間に潤滑剤を供給することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法。
【請求項2】
仕上圧延機中、被圧延材の出側板厚が10mm以下になる圧延機以降に、超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロールをワークロールに用い、且つ、該ワークロールと被圧延材の間に潤滑剤を供給することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法。
【請求項3】
請求項2において、合成エステルを10体積%以上含有する潤滑剤を、25〜300cc/分/mの割合で超硬合金ロールの表層に向け供給することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法を、被圧延材同士を接合する連続熱間圧延に適用することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた連続熱間圧延方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱された鋼スラブを熱間圧延し、帯鋼を製造する技術、即ち、熱間圧延方法に関する。
【0002】
因みに帯鋼とは、JIS G 3193等に規定されるとおり、厚さ1.2mm以上で幅が600mm以上の帯状に長い薄板状の鋼材のことを指し、平鋼よりも幅広(具体的には幅500mm超)の鋼材を意味する。但し、板厚については、本発明では上記範囲よりも更に薄い物まで含める。又、帯鋼は、厚鋼板と一部製品厚、製品幅とも重複する領域があるが、帯鋼と厚鋼板とは、前者が圧延後に巻き取られるのに対し、後者は巻き取られないという違いがある。
【背景技術】
【0003】
鋼の熱間圧延は、スラブ状の鋼材(鋼スラブ)を、その融点の1/2以上の温度から千数百℃に加熱した後、図6に一例を示すような熱間圧延ライン上に抽出し、圧延機に組み込んだ一対又は複数対のワークロールで狭圧しつつ、そのワークロールを回転させることで、薄く圧延し、巻き取って、帯鋼製品に仕上げることで行なう。
【0004】
図6に一例を示すような、従来の鋼の熱間圧延ライン100では、加熱炉10で加熱されたスラブ状の鋼材(以下、帯鋼製品にされるまでの全過程で、被圧延材と称す)8に、まず、例えば3基R1〜R3の粗圧延機(列)12にて圧延を施してシートバー状とし、しかる後、例えば7基F1〜F7の仕上圧延機(列)18に1本ずつシートバー状の被圧延材を供給して圧延することで、帯鋼製品の板厚にまで仕上げるようにしていた。図において、9は、必要に応じて粗圧延機(列)12の入側で幅を調整するための幅プレス、14はクロップシャー、15は仕上入側温度計、16は、被圧延材8表面のスケールを除去するためのデスケーリング装置、19はワークロール、21は仕上出側温度計、22は仕上出側板厚計、23はランアウトテーブル、24は、ランアウトテーブル23の出側で圧延後の製品を巻き取るためのコイラー、25はコイラー入側温度計、135は、粗圧延機(列)12のエッジャーロール、F1Eは、仕上圧延機(列)18の入側のエッジャーロール、50は制御装置、70はプロセスコンピュータ、90はビジネスコンピュータである。
【0005】
このような、1本ずつ供給されるシートバー状の被圧延材に順次仕上圧延を施す従来のバッチ圧延と呼ばれる熱間圧延方法では、噛み込みや尻抜け時の通板トラブルと、それによる熱間圧延ラインの操業の一時的な停止が、不定期に、しかも断続的に発生する事態が避けられない他、仕上圧延後の帯鋼製品の先端、尾端部分の形状不良に伴い、同部の切捨てによる歩留りの低下が著しい、等の問題があった。
【0006】
このため、粗圧延機と仕上圧延機との間で先行被圧延材の尾端と後行圧延材の先端を接合し、連続して仕上圧延を行なう連続熱間圧延方法が開発された。例えば、特許文献1に記載されているように、図7が、その連続熱間圧延ライン200の代表的な一例について、その粗圧延機以降を抜き出して示したものである。図において、11は、粗圧延機12の出側で被圧延材8を一旦巻き取るためのコイルボックス、141は、接合用のクロップシャー、151は接合装置、161は、接合部にできるバリを切削除去する後処理装置、17はシートバーヒータ、171はエッジヒータ、101はメジャリングロール、102、103、104は温度計、27は切断装置、26は高速通板装置である。
【0007】
なお、連続熱間圧延ラインでは、従来のバッチ圧延と呼ばれる1本ずつの熱間圧延も行なうことができる。その際は、シートバー状の被圧延材同士を接合せずに通過させるようにしている。
【0008】
ところで、現在、ワークロールとしては、例えば特許文献2等に記載されているハイスロールが主として用いられているが、ワークロールは高温の被圧延材と直接接触するため、その摩耗や表面の荒れを抑制することを目的として、仕上圧延機中の少なくとも1つの圧延機のワークロールに、その表層が超硬合金からなるロール(超硬合金ロール又は単に超硬ロールと呼ぶ)を用いることが、特許文献3にて提案されている。
【0009】
連続熱間圧延においても、仕上圧延機の少なくとも1つの圧延機のワークロールに、その表層が超硬合金からなるロールを用いることが、特許文献4にて提案されている。
【0010】
又、特許文献5には、連続熱間圧延において、仕上圧延機に用いている耐磨耗性鋳鉄ワークロールの全てに、高温塑性加工用潤滑剤を5cc/m以上供給することが、そして、特許文献6には、連続熱間圧延において、仕上圧延機のワークロールの全てに耐磨耗性ロール(ハイスロール)を用い、アルカリ土類金属の炭酸塩20〜70質量%と調度0(グリースの粘度を示す指標)のグリース30〜80質量%を含む潤滑剤を2g/m以上供給することが、それぞれ記載されている。
【0011】
【特許文献1】特許第3103260号公報
【特許文献2】特開平09−041090号公報
【特許文献3】特開2002−224717号公報
【特許文献4】特開2004−195518号公報
【特許文献5】特開2000−312903号公報
【特許文献6】特開2001−288491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
熱間圧延では、上記のように高温の被圧延材を圧延するため、ワークロールにサーマルクラウンが発生する。サーマルクラウンとは、熱間圧延において、ワークロールが高温の被圧延材と接触することによって加熱される結果、熱膨張する部分のことを指し、該ワークロールが、最初のシートバー1本の被圧延材を圧延する前のワークロールの初期プロフィール(胴長方向の輪郭)に比べ、熱膨張によってどれだけ出っ張ったか、その大きさのことを指して、サーマルクラウンと称することも多い。
【0013】
このようなサーマルクラウンが大きくなるのを防止するため、図8に示すように、ワークロール19は、当然、冷却水により、冷却している。図8中の6が、ワークロール19を冷却するための冷却水w(ロールクーラント等とも称される)を供給するためのヘッダである。6aはワイパ、6bはフレーム、6cはストリッパと呼ばれ、6a、6cは、各フレーム6bの先端に取り付けられると共に、これら各機器6a〜6cは、冷却水wが、被圧延材8に直接かかるのを防ぐようにしている。
【0014】
しかしながら、例えば、図9(A)に示すような、4Hi圧延機の場合や、図9(B)に示すような、4Hiワークロールシフト圧延機の場合、あるいは図示しない6Hi圧延機の場合であると、熱間圧延操業に供する前、即ち、研磨したての状態にて、ワークロール19の胴長方向中央部が、ワークロール19の胴長方向両端部よりも数百μm直径の大きいロールを用いるのであるが、図10に示すように、サーマルプロフィールが被圧延材幅方向中央部に転写して、同部が局部的に長手方向によく伸びる結果、被圧延材8の搬送方向Aにみて下流側に次の圧延機があった場合、次の圧延機では、被圧延材幅方向中央部の伸びがある程度以上になると、図11(A)に示すように、3枚重ねの状態で圧延され、図11(B)に示すように穴あきが発生し、ひどい場合になると、穴あきが発生した部位を起点に被圧延材が張力で破断し、熱間圧延ラインの操業が停止してしまう場合があった。図において、20はバックアップロールである。
【0015】
又、図12(A)に示すような、上下ワークロール19がクロスする(バックアップロール20も共にであるが)タイプの圧延機の場合、ワークロール19の胴長方向のプロフィールは、図12(B)に模式的に示すような、ワークロール19の胴長方向(被圧延材幅方向)中央部が、ワークロール19の胴長方向両端部よりも直径が数百μm小さい、いわゆるインカーブであるため、例えば幅差が0〜50mmしかない被圧延材8を何本か、バッチ圧延すると、サーマルプロフィールの肩部が被圧延材8のクォータ部に転写して、図13に示すように、クォータ部が局部的に長手方向によく伸びる結果、被圧延材8の搬送方向Aにみて下流側に次の圧延機があった場合、次の圧延機では、クォータ伸びがある程度以上になると、図11(B)に示したように穴あきが発生し、同様に穴あきが発生した部位を起点に被圧延材が張力で破断し、熱間圧延ラインの操業が停止してしまう場合があった。
【0016】
従来のバッチ圧延と呼ばれる熱間圧延方法では、ある被圧延材の尾端が仕上圧延機18の第1圧延機であるF1を抜けてから、次の被圧延材の先端が同圧延機に噛み込むまでの時間的な間隔が15秒とかそれ以下の状態で、何本もの被圧延材を圧延し続けると、次第にサーマルクラウンが大きくなり、多くの場合、F3とかF4のような、仕上圧延機18中の中間の圧延機で、被圧延材幅方向中央部が局部的に長手方向によく伸びて、次の圧延機であるF4とかF5で3枚噛みして圧延される結果、穴あきが発生していた。
【0017】
穴あきが発生すると、もはや帯鋼製品として品質不良になり、出荷できないばかりか、ひどい場合になると、穴あきが発生した部位を起点に被圧延材が張力で破断し、熱間圧延ラインの操業が停止してしまう事態に陥っていた。
【0018】
連続熱間圧延になると、従来のバッチ圧延のような1本ずつの圧延の場合と異なり、連続して圧延する。よって、圧延外時間(インターバル)はゼロになる。すると、圧延外時間におけるワークロールの冷却の分が無いため、サーマルクラウンの成長は、いよいよ顕著になり、連続して圧延する被圧延材の本数が6本とかそれ以上になると、図11や図13に示したような局部的な形状不良に起因した穴あきが発生する問題があった。
【0019】
上記のような問題の解決には、熱伝導性に優れた、外層が超硬合金からなるロールを用いるのが有効であることが、先述の特許文献4では提案されている。
【0020】
しかしながら、特許文献4のように、連続熱間圧延において仕上圧延機の少なくとも1つ以上の圧延機のワークロールに、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いると、以下に述べるような問題が発生する場合があることがわかり、この点、若干の改善の余地があったのである。
【0021】
即ち、少なくとも表層(外層)が超硬合金からなるロールを仕上圧延機に適用して熱間圧延ラインの操業に供するのみでは、超硬合金製の外層の表面において、基地のコバルトCo又はニッケルNiが優先的に摩耗し、超硬合金の主成分であるタングステンカーバイドWCがロール表面に突出するため、圧延本数が、例えば、連続熱間圧延の例の場合で言えば、6本以上というように多くなると、ワークロールと被圧延材の間の摩擦が大きくなって摩擦発熱が増し、一般的なハイスロールのような鋼ロールを用いるよりも、却って熱膨張が大きくなり、サーマルクラウンの成長に起因した穴あきや、形状不良が発生する場合があることが、新たにわかったのである。
【0022】
本発明は、上述のような従来技術の問題を解決し、被圧延材の穴あきによる品質不良と、被圧延材の穴あきに起因した破断に伴う熱間圧延ラインの操業の停止と、を抑制、防止、撲滅することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
即ち、本発明は、以下の方法を提案するものである。
【0024】
(1)超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロールをワークロールに用い、且つ、該ワークロールと被圧延材の間に潤滑剤を供給することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法。
【0025】
(2)仕上圧延機中、被圧延材の出側板厚が10mm以下になる圧延機以降に、超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロールをワークロールに用い、且つ、該ワークロールと被圧延材の間に潤滑剤を供給することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法。
【0026】
(3)(2)において、合成エステルを10体積%以上含有する潤滑剤を、50〜600cc/分/2000mm(即ち、25〜300cc/分/m)の割合で超硬合金ロールの表層に向け供給することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法。
【0027】
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の超硬合金ワークロールを用いた熱間圧延方法を、被圧延材同士を接合する連続熱間圧延に適用することを特徴とする超硬合金ワークロールを用いた連続熱間圧延方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、被圧延材の穴あきによる品質不良と、被圧延材の穴あきに起因した破断に伴う熱間圧延ラインの操業の停止と、を抑制、防止、撲滅することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
3次元FEM(有限要素法)熱弾性モデルを用い、熱間圧延における仕上圧延機を想定して、超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロール及びハイスロールを使用した際の、サーマルクラウンの計算結果を図4に示す。
【0030】
このときの超硬合金ロール及びハイスロールは、ともに直径800mm、胴長2200mm、周速は240mpm、そして、被圧延材の温度は900℃とした。超硬合金ロールの超硬合金製スリーブ外層の肉厚は50mmとした。超硬合金製スリーブ外層を除いた部分はハイスロールと同じ材質とした。
【0031】
超硬合金ロールは熱伝導率が大きいため、入熱量は多く、ロール内部の温度は、ハイスロールよりも却って高くなるが、線膨張係数が小さいため、ロールの胴長方向中央のサーマルクラウンは、ハイスロールとほぼ同等になっている。又、ロールの胴長方向への熱伝導が大きいため、被圧延材の幅端部周辺でのサーマルクラウンの勾配は、超硬合金ロールの方が、ハイスロールに比べてなだらかになっている。このため、例えば、先述の図12に示した、上下ワークロール19がクロスするタイプの圧延機の場合で、サーマルプロフィールの肩部が被圧延材8のクォータ部に転写しても、クォータ部の伸びを低減できる。
【0032】
あるいは、その他の圧延機の形式の場合でも、超硬合金製スリーブ外層の肉厚を適宜に調整することにより、ハイスロールに比べ、サーマルクラウンを小さくすることができ、被圧延材幅方向中央部の伸びを低減できる。
【0033】
特に、WC−Co系、又は、Ti−Cr−Mo系等の超硬合金は、鉄系材料に比べて熱膨張係数が小さいだけでなく、熱伝導率が高いという点に着目し、外部にこのような熱的特性に優れた超硬材質の層を形成したロールを作成してみたが、上述のように、基地のCo又はNiが優先的に摩耗し、超硬合金の主成分であるWCがロール表面に突出するため、圧延本数が、例えば、連続熱間圧延の例の場合で言えば、6本以上というように多くなると、ワークロールと被圧延材の間の摩擦が大きくなって摩擦発熱がその分大きくなり、一般的なハイスロールのような鋼ロールを用いるよりも、却って熱膨張が大きくなり、サーマルクラウンの成長に起因した穴あきや、形状不良が発生する場合があったのである。
【0034】
そこで、発明者らは、超硬合金の基地中のCo又はNiの優先的な摩耗を抑制するために、種々潤滑剤の検討を行なった。その結果、超硬合金ロールと被圧延材の間に潤滑剤を供給することにより、超硬合金の基地中のCoまたはNiの優先的な摩耗を抑制できることがわかった。
【0035】
これは、圧延中において、ロールバイト内に封入された潤滑剤は、超硬合金ロールと被圧延材の直接的な接触を防止でき、その結果、WCがロール表面へ突出する作用が抑制され、摩擦を低減できたことによるものと推定される。更に、潤滑により、超硬合金ロールの表層に黒皮が生成し、超硬合金ロールの表面がより平滑化されたことにもよるものと推定される。
【0036】
本発明の熱間圧延方法について、図1を用いて説明する。超硬合金ロールでなるワークロール19の表層に向け潤滑用の油と水が混合された潤滑剤がスプレーノズル5からスプレーされ、ワークロール19と被圧延材8の間に供給される。
【0037】
図1の例では、ワークロール19の胴長Lが2200mmであり、スプレーノズル5から噴射され、供給される潤滑剤が実際にワークロール19に当たる有効供給ゾーン長dが2000mmであるが、本発明は、これら寸法の装置に限って適用されるものではない。又、図1(B)の如く、ワークロール19と被圧延材8の接触する領域を拡大して示した図を見てもわかるとおり、スプレーノズル5は、ワイパ6aと被圧延材8の間の狭い空間に設置される。
【0038】
潤滑剤のタンク1から潤滑用油の精密ギアポンプ2を介して潤滑用油が必要流量だけ混合器3(オリフィスノズル等)に供給され、ポンプ4を介して水が必要流量だけ同じ混合器3に供給され、混合器3内で両者は混合される。
【0039】
ここで、潤滑用の油としては、合成エステルもしくは鉱物油をベースとした成分が用いられる。合成エステルとは、脂肪酸等とアルコールを人工的に合成した油脂であり、種々の組合せがあるが、合成した後に50〜200mm/Sの粘度(40℃)のものを使用するのが好ましい。
【0040】
更に、潤滑用の油中の合成エステルは、10体積%以上含有するようにするのが好ましい。10体積%以上含有する理由は、10体積%未満では、十分な摩擦低減効果が期待できないためである。潤滑用の油中の合成エステルは、50体積%以下含有するようにするのが好ましい。50体積%を超えると、水との混合後において乳化が不安定になり、ロール面のバレル方向への付着量が変動し、蛇行等の通板間題が発生するからである。
【0041】
そして、その供給流量は、50cc/分/2000mm(25cc/分/m)以上600cc/分/2000mm(300cc/分/m)以下とするのが好ましい。50cc/分/2000mm未満では、十分な潤滑効果が期待できない。又、600cc/分/2000mmを超えると、潤滑過多になり、被圧延材の先端がワークロールに噛み込む際にスリップが発生するからである。
【0042】
ここで、合成エステルは、上記のように、通常、脂肪酸とアルコールから合成され、脂肪酸としては、C12〜C36の一塩基酸又は二塩基酸、アルコールとしては、C〜C18の一価又は多価アルコールが用いて好ましい例として挙げられる。具体例としては、パルチミン酸エチルヘキシルエステル、オレイン酸ブチルエステル、イソステアリン酸ブチルカルビトールエステル、ペンタエリストールオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
又、潤滑用油としては、パラフィン系鉱物油やナフテン系鉱物油が好ましい例として挙げられるが、潤滑性に優れるパラフィン系の鉱物油を用いるのが好ましい。例えば、スピンドル油、マシン油、モータ油、シリンダー油などの10〜900mm/Sの粘度(40℃)のものを用いるのが中でも好ましい。ナフテン系鉱物油は、潤滑性にやや劣るので、用いるのであれば、比較的少量に抑えた方が好ましい。
【0044】
潤滑剤は、上記のように、合成エステルを10体積%以上含有し、ワークロールと被圧延材の間の焼付きを防止するために、鉱物油もしくは、硫化エステル、リン酸エステルを微量添加したものが、特に用いて好ましい。
【0045】
超硬合金ロールの製造方法について、以下に説明する。超硬合金製スリーブ外層を形成する、円筒状のスリーブ部材は、WCにCoを20質量%添加した粉末を素材としてラバー成形してCIP(冷間等方加圧)により成形した、図2(A)に示すような外形の、個々の、厚さ150mmt×幅400mmLのWC−Co合金のスリーブ部材を、図2(B)に示す要領で、ロールの胴長方向に6個重ね、1260℃、10気圧の条件でHIP(熱間等方加圧)して接合し、超硬合金製スリーブ外層191となし、機械加工して所望の寸法に仕上げる。更にそれを、図2(C)に示す要領で、5質量%Cr鍛鋼の軸部材192に、焼嵌め、冷やし嵌め、等の方法で一体化させた後、加工を経て直径650mm、胴長2200mmに加工して、本発明に用いる超硬合金ロールとなる。なお、Coを20質量%添加したが、最大で5質量%のNiを添加することにより、耐磨耗性が向上するので、5質量%以下のNiを更に添加するのも好ましい。
【0046】
以上説明した製造方法を基本的に踏襲し、超硬合金製スリーブ外層191と5質量%Cr鍛鋼等の軸部材192の間に、ヤング率が両者の中間にあたる緩衝リング状の間挿材を入れるようにして、焼嵌め、冷やし嵌め後に内部応力が発生した場合でも、ロールが割損し難くなるようにする等してもよい。
【0047】
図3に、超硬合金ロール(ワークロール)を用いるのに、仕上圧延機中のどの圧延機に用いるのかについて説明する。図3(A)は、仕上圧延機の第3圧延機であるF3以降、最終圧延機であるF7(図の例の場合)までの圧延機のワークロール19として、上下とも、超硬合金ロールを用いた例である。超硬合金ロールは、仕上圧延機中、被圧延材の出側板厚が10mm以下になる圧延機以降に用いるようにするのが好ましい。これは10mm以上では、被圧延材に局部的な形状不良が発生し難く、3枚噛みによる穴あきが発生しないためであり、出側板厚が10mm以上では、形状変化係数(圧下量の幅方向偏差が形状不良として顕在化する程度を示す指数)が比較的小さいので、顕著な形状不良が発生し難いため、と考えられる。
【0048】
しかし、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、例えば、図3(B)に示すように、仕上圧延機の第1圧延機F1から最終圧延機(図の例ではF7)まで全圧延機のワークロール19として、上下とも、超硬合金ロールを用いるようにする等しても、あるいは、その他の実施の形態をとる等しても勿論よい。
【実施例】
【0049】
本発明及び従来例に用いた超硬合金ロールは、上述の間挿材無しの方法で製造されたワークロールであり、所定の仕上圧延機中の圧延機に用いた。潤滑は、図1に示した装置を用い、所定の潤滑剤を水と混合してワークロール19の表層に向けスプレーすることで、ワークロール19と被圧延材8の間に潤滑剤を供給するようにした。スプレー開始のタイミングは、どの圧延機も被圧延材8の先端が仕上圧延機18中の各圧延機のワークロール19に噛み込んだ直後とした。
【0050】
(本発明)
本発明例1、2、3では、超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロールを熱間圧延ライン100の仕上圧延機18のうちの第3圧延機F3から最終圧延機F7のワークロール19に用い、第1圧延機F1と第2圧延機F2のワークロール19には、ハイスロールを用いた。又、用いた潤滑剤は、合成エステル(オレイン酸ブチルエステル)を、15、30、50体積%、極圧剤としてターシャリーブチルポリサルファイドを5体積%含有する組成とし、残部をパラフィン系鉱物油スピンドル油とした。精密ギアポンプ2から所定の割合になるような流量の潤滑剤を混合器3に供給し、所定の割合になるような流量の水と混合し、図1に示したように、ワークロール19の胴長方向何点かから、ワークロール19の表層に向けスプレーした。
【0051】
(比較例)
比較例1として、超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロールを熱間圧延ライン100の仕上圧延機18のうちの第3圧延機F3から最終圧延機F7のワークロールに用い、第1圧延機F1と第2圧延機F2のワークロールには、ハイスロールを用いた場合で、且つ、潤滑剤として合成エステル(オレイン酸ブチルエステル)を5体積%、パラフィン系鉱物油スピンドル油を90体積%、極圧剤としてターシャリーブチルポリサルファイドを5体積%含有する組成としたものを用いた場合を例に取り上げた。精密ギアポンプ2から所定の割合になるような流量の潤滑剤を混合器3に供給し、所定の割合になるような流量の水と混合し、図1に示したように、ワークロール19の胴長方向何点かから、ワークロール19の表層に向けスプレーした。
【0052】
又、比較例2として、合成エステル(オレイン酸ブチルエステル)を30体積%、極圧剤としてターシャリーブチルポリサルファイドを5体積%含有する組成とし、残部をパラフィン系鉱物油スピンドル油とした場合を例に取り上げた。仕上圧延機中の各圧延機に供給される潤滑剤の流量を、40cc/分/2000mmとした。
【0053】
(従来例)
従来例としては、超硬合金製スリーブ外層を有する超硬合金ロールを熱間圧延ライン100の仕上圧延機18のうちの第3圧延機F3から最終圧延機F7のワークロールに用い、第1圧延機F1と第2圧延機F2のワークロールには、ハイスロールを用いた場合で、且つ、潤滑剤は用いず、超硬合金ロールを仕上圧延機中の全圧延機に用いて圧延を行なった場合(従来例1)と、仕上圧延機中の全圧延機のワークロールにハイスロールを用いて、潤滑剤は、合成エステル(オレイン酸ブチルエステル)を30体積%、極圧剤としてターシャリーブチルポリサルファイドを5体積%含有する組成とし、残部をパラフィン系鉱物油とした場合(従来例2)を例として取り上げた。従来例1、従来例2は、いずれの例の場合も、精密ギアポンプ2から所定の割合になるような流量の潤滑剤を混合器3に供給し、所定の割合になるような流量の水を混合し、図1に示したように、ワークロール19の胴長方向何点かから、ワークロール19の表層に向けスプレーした例を取り上げた。
【0054】
その他の条件:
仕上圧延機中の各圧延機の出側板厚の予定値(板厚スケジュール)を表1に示す。
【0055】
【表1】


【0056】
仕上圧延機中の各圧延機の出側板厚は、表1に例えば、F3以降の圧延機で、板厚が10mm以下となるので、本発明例では、図3(A)に示すように、F3以降の圧延機のワークロールに超硬合金ロールを用いた。比較例でも同様に、図3(A)に示すようにF3以降の圧延機のワークロールに超硬合金ロールを用いた。又、従来例では、図3(B)に示すように、全てのワークロールに超硬合金ロールを用いた。なお、本発明例及び比較例で、超硬合金ロール以外のワークロールとして、ハイスロールを用いているのは、ハイスロールが鋼系ロールの代表例だからである。
【0057】
それぞれの条件において、低炭素鋼(SPHC)のシートバーを10本連続して圧延し、圧延性を比較した。被圧延材は全てSPHCで、帯鋼製品の板厚は1.2mm、同板幅は1600mmである。
【0058】
なお、いずれのケースでも、粗圧延機のワークロールとしてはハイスロールを用い、外径1300mmφ×胴長2200mmWとし、仕上圧延機入側でのシートバー状の被圧延材の板厚を35mmとした。更に、仕上圧延機のバックアップロールは、1600mmφ、ワークロールは、直径650mmφ×胴長2200mmWである。連続熱間圧延を、被圧延材10本を1セットとして、120〜140秒のセット間のインターバルを設け、10セットの圧延を、本発明例、比較例及び従来例の条件で行なった。
【0059】
表2に結果を示す。
【0060】
【表2】


【0061】
本発明例1〜3では、仕上圧延機中、出側板厚が10mm以下になる圧延機に超硬合金ロールを用い、潤滑剤の合成エステル含有量を10体積%以上とし、且つ適切な流量の潤滑剤を供給したので、局部的な形状不良を防止でき、穴あきによる問題も無く、10セット、連続熱間圧延を完了することができた。
【0062】
一方、比較例では、10セットの連続熱間圧延を完了することができず、5セット以下で穴あきが発生する結果になった。
【0063】
また、従来例では、1セット目の3本目の被圧延材で、穴あきが発生する結果になり(従来例1)、潤滑剤を供給し、超硬合金ロールを用いない場合(従来例2)も、2セット目の途中の5本目の被圧延材で、穴あきが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のとおりであるが、本願発明は、図6に示した熱間圧延ライン100のような形式の熱間圧延ラインや、図7に示した連続熱間圧延ライン200のような形式の熱間圧延ラインだけでなく、その他の形式の熱間圧延ラインにも適用できるものである。その他の形式の熱間圧延ラインには、図5(A)に示した、連続鋳造ライン28と直結した熱間圧延ライン300や、同(B)に示した、ステッケルミル400と呼ばれる形式の熱間圧延ライン等がある。図5(B)において、40はファーネスコイラーである。
【0065】
各圧延機(列)のスタンド数も、図示の例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一つの実施の形態を説明するための(A)正面図及び(B)側面図
【図2】本発明に用いる超硬合金ロールの製造方法を説明するための図
【図3】本発明の実施の形態を説明するための側面図
【図4】サーマルクラウンの計算結果を示す図
【図5】本発明を適用できる他の熱間圧延ラインを示す工程図
【図6】従来の鋼の熱間圧延ラインの一例を示す工程図
【図7】連続熱間圧延ラインを示す工程図
【図8】圧延機の要部を示す側面図
【図9】圧延機の形式について説明するための斜視図
【図10】サーマルクラウンについて説明するための正面図
【図11】被圧延材の穴あきについて説明するための(A)側面図及び(B)斜視図
【図12】圧延機の形式について説明するための(A)斜視図及び(B)正面図
【図13】被圧延材の穴あきの原因について説明するための斜視図
【符号の説明】
【0067】
1…潤滑用油のタンク
2…潤滑用油の精密ギアポンプ
3…混合器
4…ポンプ
5…スプレーノズル
6a…ワイパ
6b…フレーム
6c…ストリッパ
8…被圧延材
12、R1〜R3…粗圧延機
14…クロップシャー
141…クロップシャー(接合用)
151…接合装置
18、F1〜F7…仕上圧延機
19…ワークロール
191…超硬合金製スリーブ外層
192…軸部材
27…切断装置
28…連続鋳造ライン
50…制御装置
70…プロセスコンピュータ
90…ビジネスコンピュータ
100、200、300、400…熱間圧延ライン
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年8月22日(2006.8.22)
【代理人】 【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭

【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑

【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博


【公開番号】 特開2008−49347(P2008−49347A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−225120(P2006−225120)