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【発明の名称】 熱間圧延における反り制御方法
【発明者】 【氏名】前田 恭志

【要約】 【課題】熱間圧延における板材の反りを十分に抑制できる制御方法を提供する。

【構成】上下のワークロールで挟み込んで板材を圧延する熱間圧延において、ワークロールを通過した板材の反りを計測し、計測した反りに応じて、上下のワークロールの回転速度を異ならせることで、板材の反りを低減する異周速制御と、上下のワークロールの表面のコーティングをそれぞれ除去する上下のブラシロールの押し付け圧力、回転数および作動時間の少なくともいずれかを上下で異ならせることで、上下のワークロールの摩擦係数に差を設けて板材の反りを低減するブラシ制御とを行い、ブラシ制御は、異周速制御における上下のワークロールの回転速度を基にして、ワークロールの回転速度の差が小さくなるようにブラシロールを制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下のワークロールで挟み込んで板材を圧延する熱間圧延において、
前記ワークロールを通過した前記板材の反りを計測し、
前記計測した反りに応じて、前記上下のワークロールの回転速度を異ならせることで、前記板材の反りを低減する異周速制御と、
前記上下のワークロールの表面のコーティングをそれぞれ除去する上下のブラシロールの押し付け圧力、回転数および作動時間の少なくともいずれかを上下で異ならせることで、前記上下のワークロールの摩擦係数に差を設けて前記板材の反りを低減するブラシ制御とを行い、
前記ブラシ制御は、前記異周速制御における前記上下のワークロールの回転速度を基にして、前記ワークロールの回転速度の差が小さくなるように前記ブラシロールを制御すること特徴とする反り制御方法。
【請求項2】
前記ブラシ制御は、パス毎に実施され、直前のパスにおける前記上下のワークロールの異速率に基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の反り制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延における反り制御に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる板材を、再結晶温度以上の高温で、上下のワークロールで挟み込んで圧延する熱間圧延では、上下のワークロールの温度差や、ワークロール表面への酸化物等の付着(ピックアップ)によってコーティング層が形成されるために、ワークロールを通過した板材に反りが発生しやすい。特に、アルミクラッド材の圧延では、大きな反りが発生しやすく、板材がロールテーブルなどに擦れて擦り疵がついたり、次パスの圧延に噛み込まず、圧延不能に陥る場合があった。
【0003】
特許文献1には、ワークロールのコーティング層を除去するためのブラシロールの回転数を制御することで、ワークロール表面の摩擦係数を制御して、板材の反りを抑制できることが記載されている。
【0004】
図4に、上下のワークロールの摩擦係数を変更したとき、板材の反りがどのように変化するかを示す。図示するように、上側のワークロールの摩擦係数を高くすることで、板材の上側への反り量が減少することが分かる。
【0005】
また、特許文献2および3には、上下のワークロールの速度差によって板材の反りを制御(異周速制御)することが記載されている。異周速制御は主に鉄鋼材料に対して用いられており、非常に広範囲な制御が可能であると考えられていた。しかしながら、アルミニウムの圧延では、ワークロールの摩擦力が小さいために、異周速制御での制御範囲は十分に広くないことが明らかになった。
【0006】
図5に、アルミニウムの圧延において、上下のワークロール周速の比(異速率)を変更したときに、板材の反りがどのように変化するかを示す。図示するように、下側のワークロールの回転速度を高くすることで、板材の上側への反りを低減できるが、下側のワークロールを上側のワークロールより約10%以上速くすると、却って反りを低減する効果が失われてゆくことが分かる。
【0007】
特に、アルミクラッド材の圧延においては、大きな反りが発生しやすいので、ブラシロールによる摩擦係数の変更、または、ワークロールの異周速制御だけでは、反りを十分に抑制することができない場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−106418号公報
【特許文献2】特開平11−5111号公報
【特許文献3】特開平11−5112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記問題点に鑑みて、本発明は、熱間圧延における板材の反りを十分に抑制できる制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明による反り制御方法は、上下のワークロールで挟み込んで板材を圧延する熱間圧延において、前記ワークロールを通過した前記板材の反りを計測し、前記計測した反りに応じて、前記上下のワークロールの回転速度を異ならせることで、前記板材の反りを低減する異周速制御と、前記上下のワークロールの表面のコーティングをそれぞれ除去する上下のブラシロールの押し付け圧力、回転数および作動時間の少なくともいずれかを上下で異ならせることで、前記上下のワークロールの摩擦係数に差を設けて前記板材の反りを低減するブラシ制御とを行い、前記ブラシ制御は、前記異周速制御における前記上下のワークロールの回転速度を基にして、前記ワークロールの回転速度の差が小さくなるように前記ブラシロールを制御する方法とする。
【0011】
この方法によれば、ブラシ制御によって長期的な反りの傾向を抑制して異周速制御の制御量を軽減することができるので、大きな反りが発生し、異周速制御だけでは適正範囲から外れてしまうような条件でも、板材の反りを適切に制御できる。また、ワークロールの駆動装置の負荷が軽減されるので、装置を長寿命化できる。
【0012】
また、本発明の反り制御方法において、前記ブラシ制御は、パス毎に実施され、直前のパスにおける前記上下のワークロールの異速率に基づいて行ってもよい。
【0013】
この方法によれば、パス毎にブラシロールの条件を変更するので、異周速制御とブラシ制御とが競合せず、制御が容易であり、安定して反りを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブラシ制御によって長期的な反りの傾向を低減し、異周速制御によって短期的に変動する反りを抑制するので、制御範囲が広く、アルミニウムの熱間圧延等においても大きな反りを発生させない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
これより、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の1つの実施形態の圧延装置1を示す。圧延装置1は、上ワークロール2および下ワークロール3によって高温の板材4を挟み込んで熱間圧延する装置である。
【0016】
圧延装置1は、さらに、上ワークロール3および下ワークロール4の撓みを防止するバックアップロール5および6と、上ワークロール3および下ワークロール4の表面に酸化物等が付着して形成されるコーティングを除去するためのブラシロール7および8とを有しており、圧延下流側に板材4の反りh(mm)を測定するセンサ9が設けられている。
【0017】
続いて、図2に、圧延装置1による板材の圧延手順を示す。圧延装置1では、板材4が上ワークロール2と下ワークロール3との間を通過するパスの間、センサ9によって板材4の反りを検出し、反りを低減するように上ワークロール3と下ワークロール4との周速に差を設ける異周速制御を行う。
【0018】
異周速制御において、上ワークロール3の周速をVu、下ワークロール4の周速をVdとし、異速率r=(Vu−Vd)/Vdとすると、異周速制御が有効である範囲において、異周速制御に起因する反りΔhは、影響係数aを用いて、Δh=a・rで表される。
【0019】
よって、反りhを0にするために比例制御を行うと、r(h)=−h/aとなる。通常は、さらに、微分要素や積分要素を加えたPID制御が行われる。
【0020】
また、圧延装置1では、ブラシロール5,6による、ワークロール2,3のコーティングの除去を加減して、ワークロール2,3の摩擦係数に差を付けることで、反りを制御するブラシ制御を行うようになっている。
【0021】
ブラシ制御において、上ワークロール2と下ワークロールル3との摩擦係数差をμdとすると、ブラシ制御による板材4の反りΔhは、影響係数bを用いて、Δh=b・μdで表される。
【0022】
異周速制御による異速率rがrに安定しているとき、ブラシ制御によって、異速率rを0にするには、異周速制御による反り(または反りの低減分)をブラシ制御に置き換えればよい。よって、摩擦係数差をΔμd=a/b・rだけ増加させればよいことになる。
【0023】
圧延装置1では、パス毎に異周速制御による異速率を0にできる摩擦係数差μdを計算し、計算した摩擦係数差μdを実現できるブラシロール5,6の条件を算出する。
【0024】
ブラシロール5,6がワークロール2,3から時間当たりに除去するコーティング量δは、ブラシロール5,6の回転数Vと、ブラシロール5,6のワークロール2,3に対する面圧Pと、圧延した板材の材料や圧延油およびブラシの材質や形状によって定まる係数αを用いて、δ=α・V・Pで表される。
【0025】
圧延装置1では、1つのパスが終了すると、次パスを開始するまでのパス間において、前のパスで算出したブラシロール5,6の条件を適用して摩擦係数差μdを変更して次のパスに備える。また、パス間において、条件変更に伴う影響係数a,bの修正も行う。
【0026】
ワークロール2,3のコーティングの厚さは、コーティング厚さの初期値δ、ブラシロール5,6の運転時間tbを用いて、δ−δ・tbで表される。
【0027】
また、摩擦係数μは、摩擦係数の初期値μおよび係数βにより、μ=μ−(α・V・P)tbで表すことができる。
【0028】
つまり、摩擦係数差μdは、ブラシロール5,6の回転数V、押し付け圧力Pおよび作動時間tbの少なくともいずれかを上下で異ならせることで実現できる。
【0029】
圧延中のワークロール2,3には、成長率γで新たなコーティングが生成されるが、圧延中にコーティングの厚さが変わると制御が難しくなる。よって、圧延中は常時ブラシロール5,6を作動させてコーティングの厚さを一定に保つことができるように、つまり、γ=Δδとなるように回転数Vおよび押し付け圧力Pを定め、摩擦係数差μdの調整は、パス間におけるブラシロール5,6の運転時間tbのみを変化させるのが実際的である。
【0030】
ただし、コーティングの厚みは0以下にはならず、上限も存在するため、摩擦係数差μdにも上限および下限を設定し、計算値と実際の条件とが乖離することを防止する必要がある。
【0031】
次のパスが開始されると、圧延装置1は、再び、センサ9で反りを検出しながら異周速制御によって反りを抑制する。
【0032】
このようにして、圧延装置1では、圧延時に異周速制御により板材4の反りを抑制するが、パス終了毎に、圧延条件が同じであれば異速率が0になるように、ブラシ制御により摩擦係数差μdを設定して、次パスにおける異周速制御の負荷を低減する。
【0033】
図3に、板材4の例としてアルミクラッド材の熱間圧延による反り量と板厚との関係を示す。圧延装置1において、異周速制御もブラシ制御も行わない無制御の場合、中央に示すように、板材4は上方に反り上がる傾向が強いことが分かる。さらに、板厚が薄くなると反り量が大きくなる。つまり、板材4は、圧延を重ねて薄くなるほど、大きく反り上がる傾向にある。
【0034】
また、圧延装置1において、異周速制御によって、板材4の反りを調整できる範囲を破線で示す。図示するように。板材4の反りが大きくなる板厚では、異周速制御だけでは反りを完全に抑えることはできない。
【0035】
しかし、本実施形態のように、異周速制御にブラシ制御を加えた複合制御を行うことで、前のパスの異速率に応じて摩擦係数差μdを生じさせて、予め反りの発生を低減することができるので、異周速制御の能力を超えるような反りが発生せず、板材4の反りを完全に抑制することができる。
【0036】
係数a,b,α,βは、経験的に求められるので、予めデータテーブルに記憶しておき、板材4の材質や、パススケジュールなどに応じて最適な値を選択する。
【0037】
圧延において、反り量は、上下の温度差による変形抵抗分布、クーラント温度、コイルの個体差、その他、圧延状況により変化する圧下率などにより微妙に変化する。しかしながら、異周速制御は、応答性に優れており、コイル毎・チャンス毎に変化する反りに即応して抑制することができる。
【0038】
一方、ブラシ制御は、応答性が低く、制御に遅れが生じやすいが、前のパスの異周速制御の結果を基にして、パス間に、ワークロール2,3の摩擦係数を調整することで、長期的な反りを低減しながら、異周速制御に悪影響を与えないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の1つの実施形態の圧延装置の概略構成図。
【図2】図1の圧延装置の制御を示す流れ図。
【図3】図1の圧延装置における反りを例示するグラフ。
【図4】異周速制御による反り量を示すグラフ。
【図5】摩擦係数差による反り量を示すグラフ。
【符号の説明】
【0040】
1 圧延装置
2 上ワークロール
3 下ワークロール
4 板材
7 ブラシロール
8 ブラシロール
9 センサ
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年8月17日(2006.8.17)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆

【識別番号】100073575
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 泰通

【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司


【公開番号】 特開2008−43982(P2008−43982A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−222577(P2006−222577)