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【発明の名称】 熱間圧延による波型形鋼
【発明者】 【氏名】三浦 啓徳

【要約】 【課題】従来の波形鋼板と同じ用途に供しうるものであって波形鋼板よりも有利に製造できる、熱間圧延による波型形鋼を提供する。

【構成】波型形鋼1は、フランジ4を上辺、ウエブ5を左右両斜辺とする3以上の奇数個の台形部3が交互に上下反転して左右対称に連なった波形の断面を有し、ウエブ厚twがフランジ厚tf以下とされてなる。幅両端部を接続用異形部分6としたものが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジを上辺もしくは下辺、ウエブを左右両斜辺とする3以上の奇数個の台形部が交互に上下反転して左右対称に連なった波形の断面を有し、ウエブの厚みがフランジの厚み以下とされた、熱間圧延による波型形鋼。
【請求項2】
幅両端部が接続用異形部分とされた請求項1に記載の熱間圧延による波型形鋼。
【請求項3】
前記接続用異形部分を、幅両端部のウエブの自由端部にウエブの厚みの1/2の段差を設けて形成した請求項2に記載の熱間圧延による波型形鋼。
【請求項4】
ウエブの厚みが6mm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱間圧延による波型形鋼。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延による波型形鋼に関し、詳しくは、鋼片を熱間圧延して最終製品の断面形状が波形の多角形状(=底辺のない台形が交互に上下反転して左右方向に連なる形状)となるように造形してなる、熱間圧延による波型形鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
橋桁、耐震壁、船の隔壁などの部材や、プレストレスコンクリート構造の箱桁のウエブとして、大形の波形鋼板が使用されている。かかる波形鋼板は、従来、厚板(厚さが6mm以上の鋼板)をプレスなどで冷間曲げ加工して、波形の多角形状断面(波形の断面)となるように成形することにより、製造されている(例えば特許文献1,2など)。
【特許文献1】特開2005−342736
【特許文献2】特開平11−28524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の波形鋼板は、厚板の冷間プレス成形品であるため、次のような問題点がある。
・断面各部の板厚は一定で、重量あたりの断面効率が小さい。なお、断面効率=断面2次モーメント/鋼重量である。
・冷間成形のため、コーナ部で加工量が大きいと加工硬化など材質変化が生じやすい。
・厚板を製造し、さらにプレス成形工程を要するため、製造に要する時間とコストが大である。
・プレス機械や厚板の寸法から波形鋼板の長さが制約される。
・プレスによる曲げ加工では生産性が低い。
【0004】
これに対して、熱間圧延によって波形の断面を直接造形することができれば、成形ロール孔型の設計において断面形状を効率の良いものにでき、上記のような問題点なく製造できるはずである。しかるに、波形の断面は、板厚に比較して全体の幅と高さが大きいため、圧延負荷が大きい、圧延時の姿勢安定と圧延機への誘導が難しい、などの難点があることから、これまで熱間圧延で造形された例は見当たらない。
【0005】
本発明はこれらの難点を克服し、従来の波形鋼板と同じ用途に供しうるものであって波形鋼板よりも有利に製造できる、熱間圧延による波型形鋼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成した本発明は以下のとおりである。
1.フランジを上辺もしくは下辺、ウエブを左右両斜辺とする3以上の奇数個の台形部が交互に上下反転して左右対称に連なった波形の断面を有し、ウエブの厚みがフランジの厚み以下とされた、熱間圧延による波型形鋼。
2.幅両端部が接続用異形部分とされた前項1に記載の熱間圧延による波型形鋼。
【0007】
3.前記接続用異形部分を、幅両端部のウエブの自由端部にウエブの厚みの1/2の段差を設けて形成した前項2に記載の熱間圧延による波型形鋼。
4.ウエブの厚みが6mm以上である、前項1〜3のいずれかに記載の熱間圧延による波型形鋼。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、波形鋼板と同じ用途に供しうる、熱間圧延による波型形鋼が実現する。熱間圧延成形によるから、フランジとウエブとで厚みに差を設けて断面効率を高くするのが容易であり、また、加工硬化による部分的な材質劣化は生じない。また、熱間圧延で製造した厚板をさらにプレス成形して製造される従来の波形鋼板に比べ、時間とコストが削減できる。また、圧延により断面成形するから、長さの長い製品を効率的に製造でき、生産性が高く、製品化歩留りが良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の波型形鋼は、フランジを上辺もしくは下辺、ウエブを左右両斜辺とする3以上の奇数個の台形部が交互に上下反転して左右対称に連なった波形の断面を有するものである。波形をなす台形部の個数を[2n+1]個(nは1以上の整数)として、波型形鋼の有効幅を波のピッチ単位で表すと、[n+0.5]ピッチになる。また、波型形鋼の高さは台形高さの2倍になる。
【0010】
左右対称形としたので、幅中央部の台形部を正立姿勢(その両側の台形部は倒立姿勢)として圧延することで、圧延中の姿勢が安定し、圧延機への材料誘導が容易である。また、圧延ロールの開度を変更することで、厚みの異なる製品を製造できる。また、熱間圧延後、冷却したのち、必要に応じて冷間でローラ矯正する場合も、左右対称形であるから容易にローラ矯正を行うことができる。
【0011】
従来使用されている波形鋼板における波形のピッチP=300〜600mmを、既存の形鋼圧延設備を用いた熱間圧延で得ることを考慮すると、本発明では、連ねて波形をなす台形部の個数を、3個または5個とするのが好ましい。なお、波型形鋼の有効幅は上述のように[n+0.5]ピッチになるが、全幅としては、この有効幅に接続用余幅を加えたものとするのが好ましい。
【0012】
また、ウエブの厚み(ウエブ厚ともいう)をフランジの厚み(フランジ厚ともいう)以下としたから、断面効率を大きくすることができる。ウエブの厚みがフランジの厚みに等しい場合は、従来の冷間プレス加工による波形鋼板と同じ断面効率が確保される。断面効率を従来よりも大きくするためには、ウエブの厚みをフランジの厚み未満とすることが好ましい。
【0013】
本発明の波型形鋼は、熱間圧延製品を所望の長さに切断し、その幅端部を、上下反転した接続相手の幅端部と接続することにより、[n+0.5]ピッチの波形が繰り返す形の断面を有する長い連続壁を得ることができる。接続方法は特に限定されず、ボルトで固定する方法や溶接で接合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。
この接続を有利に行うために、幅両端部を接続用異形部分とするのが好ましい。これにより、接続用の部材(当て金など)を一部省略することができる。
【0014】
前記接続用異形部分は、幅両端部のウエブの自由端部にウエブの厚みの1/2の段差を設けて形成するのが好ましい。これにより、接続用異形部分を重ね合わせて接続した接続部の厚み中心線がウエブの厚み中心線と一致し、接続部に、余肉以外は余計な段差や折れ曲がり等が存在しない、連続した波形の断面が得られる。
また、波形鋼板の代替品としての用途を考慮すると、波型形鋼のウエブの厚みは6mm以上とすることが好ましい。より好ましくは9〜22mmである。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の波型形鋼の1例を示す断面図である。これは、フランジ4を上辺、ウエブ5を左右両斜辺(本例では斜辺の上辺からの傾斜角度≒45°とした)とする3個の台形部3が交互に上下反転して左右対称に連なった波形の断面を有する、波のピッチP=600mm、高さH=120mmの波型形鋼であり、有効幅=1.5ピッチ、全幅=1.5ピッチ+接続用余幅ΔB×2≒920mm、フランジ部幅Fw=120mm、フランジ厚tf=10mm、ウエブ厚tw=8mmとした。
【0016】
幅両端部の接続用余幅ΔB分は、高さHの半分中央より少し超えた高さ範囲を占める。また、幅両端部のウエブ5は、その自由端部が接続用異形部分6とされている。この接続用異形部分6は、前記自由端部にtw/2=4mmの段差を設けて形成した。接続用異形部分6の斜辺方向幅は、有効幅内の幅分η1+接続用余幅内の幅分η2であり、ここではη1=20mm、η2=14mmとした。
【0017】
熱間圧延ロールの孔型で決定されるフィレット部(台形部3のフランジ4とウエブ5の境界部)のアールは自由に設定できるが、バランスを考慮し、内曲がり側をR40(mm)、外曲がり側をR30(mm)のアールとした。
図2は、図1の波型形鋼を2枚接続して3ピッチの連続波形の断面にしたものである。接続するにあたり、W姿勢の波形形鋼1に対し上下反転した波型形鋼1’を、これらが同一高さとなるように一方と他方の接続用異形部6を重ね合わせ、この重ね合わせ部の適当な位置(この例では接続用異形部6の斜辺方向幅をη1:η2に按分した位置)に通し孔を空けてボルト7で固定するようにした。なお、通し孔を空けてボルトで固定する代りに、あるいはこれと併せて、溶接を行ってもよい。
【0018】
図3は、波型形鋼を製造する熱間圧延工程の1例を示す説明図である。この例は、鋼矢板等を熱間圧延により製造する形鋼工場の圧延機配列を用いて、図1に例示した波型形鋼を製造する場合の例であり、工程は以下のように進められる。
加熱炉12で約1300℃に加熱した連続鋳造製スラブを素材として、まずブレークダウン圧延機BDMのBOX孔型で幅方向の圧下(スラブの幅を立てて上下から圧下)を施し、端部を整形する(この整形後は圧延材の幅を寝かせる)。次いでK8孔型で4〜6パスの圧延を順次上下ロール隙を狭めて施し、圧延材の断面を減面する。
【0019】
同様にK7孔型で3〜5パスの圧延を施した後、圧延材は中間圧延機S1,S2に送られる。中間圧延機S1,S2は近接配置とし、K6〜K3孔型で連続圧延する操業を行って、圧延材の温度低下を小さくするのが、広幅で厚みの薄い断面の形鋼を圧延するのに効果的である。
中間圧延後、仕上圧延機SFで、K2孔型のみで1パスの、あるいはさらにその後K1孔型で2パス追加の、整形圧延を行う。
【0020】
図3に示されるように、圧延材は左右対称形で、安定して搬送できるW姿勢としているので、既存の形鋼製造設備を使用した圧延製造が可能である。
図4は、図3の工程において、同じ孔型ロールを用いて厚みの異なる製品を得る方法を示すものである。フランジ厚tf=10mm、ウエブ厚tw=8mmである標準の波型形鋼1を得る場合を基準として、上,下ロール10,11のロール隙を5mm開くことにより、フランジ厚tf2=15mm、ウエブ厚tw2≒11.5mmになって、標準よりも厚みが厚めの波型形鋼2とすることができる。このように必要な断面性能に対応して寸法変更することが可能である。ただし、波型形鋼の高さHはフランジ厚tfの変化分だけ変化する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の波型形鋼の1例を示す断面図である。
【図2】波型形鋼を2枚接続した状態を示す断面図である。
【図3】波型形鋼を製造する熱間圧延工程の1例を示す説明図である。
【図4】同一ロール孔型で厚みが異なる波型形鋼を製造する方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 標準の波型形鋼
2 厚みが厚めの波型形鋼
3 台形部
4 フランジ
5 ウエブ
6 接続用異形部分
7 ボルト
10 上ロール
11 下ロール
12 加熱炉
P 波のピッチ
H 波型形鋼の高さ
ΔB 接続用余幅
tf,tf2 フランジ厚
tw,tw2 ウエブ厚
Fw フランジ部幅
BDM ブレークダウン圧延機
S1,S2 中間圧延機
SF 仕上圧延機
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年8月17日(2006.8.17)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一


【公開番号】 特開2008−43976(P2008−43976A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−222322(P2006−222322)