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【発明の名称】 熱間圧延における板形状の制御方法
【発明者】 【氏名】柳 修介

【氏名】小林 正宜

【要約】 【課題】計測手段の少ないタンデム式の熱間圧延設備において、通常実測されるデータから板クラウン及び平坦度の予測モデルの形状変化係数を適切に決定し、精度の高い平坦度の予測を実現して、熱間圧延における精度の高い板形状の制御方法を提供する。

【構成】板クラウン予測モデルにより圧延材の板クラウン予測値を算出する板クラウン予測値算出工程と、タンデム式圧延機を操作するオペレータが手動により調整した際のオペレータ調整量と、平坦度予測モデルにより算出される平坦度予測値との相関係数の絶対値が大きくなるように決定された形状変化係数を用いて、平坦度予測値の決定値を算出する平坦度予測値算出工程とを備えていることを特徴とする熱間圧延における板形状の制御方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に配置された複数の圧延スタンドを有するタンデム式圧延機により熱間圧延される圧延材の板形状の制御方法であって、
Cr=α×CrMi+(1−r)×β×Cri−1(Cr,Cri−1:i,i−1スタンド出側の板クラウン、α:転写率、CrMi:iスタンドのメカニカルクラウン、r:iスタンドの圧下率、β:遺伝係数)で表される板クラウン予測モデルにより前記圧延材の板クラウン予測値を算出する板クラウン予測値算出工程と、
前記板形状を制御するための板形状制御装置の設定値を、前記タンデム式圧延機を操作するオペレータが手動により調整した際のオペレータ調整量と、平坦度予測モデルにより算出される平坦度予測値との相関係数の絶対値が大きくなるように決定された形状変化係数を用いて、前記平坦度予測モデルにより前記平坦度予測値の決定値を算出する平坦度予測値算出工程と、
前記板クラウン予測値と、前記決定値とを用いて、前記板形状制御装置の設定値を算出する制御装置設定値算出工程とを備えていることを特徴とする、熱間圧延における板形状の制御方法。
【請求項2】
前記平坦度予測モデルは、Δε=ξ×(Cr/H−Cri−1/Hi−1)(Δε:iスタンド出側の平坦度、Cr,Cri−1:i,i−1スタンド出側の板クラウン、H,Hi−1:i,i−1スタンド出側の板厚、ξ:形状変化係数)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の熱間圧延における板形状の制御方法。
【請求項3】
前記平坦度予測モデルは、Δε=ξ×(Cr/H−Crn−1/Hn−1)(Δε:スタンド出側の平坦度、Cr,Crn−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるスタンド出側の板クラウン、H,Hn−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるスタンド出側の板厚、ξ:形状変化係数)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の熱間圧延における板形状の制御方法。
【請求項4】
前記平坦度予測モデルは、Δε=ξ×{(Cr/H−Crn−1/H−1)−(Cri−1/Hi−1−Cri−1n−1/Hi−1n−1)}(Δε:iスタンド出側の平坦度、Cr,Crn−1,Cri−1,Cri−1n−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるi,i−1スタンド出側の板クラウン、H,Hn−1,Hi−1,Hi−1n−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるi,i−1スタンド出側の板厚、ξ:形状変化係数)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の熱間圧延における板形状の制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に配置された複数の圧延スタンドを有するタンデム式圧延機により熱間圧延される圧延材の板形状の制御方法に係り、より詳しくは、板の先端をタンデム式圧延機に通板する際に、板クラウン(板幅方向の板厚差)及び板の平坦度を目標値に制御するためのロールベンディング装置、ロールシフト装置、及びペアクロスミルのクロス角度設定装置等の設定計算に用いられ、板形状を予測してその予測値をもとに当該板形状を制御する板形状の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延で使用されるタンデム式圧延機では、板クラウンを製品規格内に収めることはもとより、鋼をタンデム式圧延機に通して圧延する通板作業中に板の平坦度が乱れることによる通板トラブルを回避し、また、圧延後の冷却帯で均一な冷却を実現するために、板の平坦度を適切に制御する必要がある。このため、圧延材を圧延する前に、素材の寸法、各スタンド出側での目標板厚(パススケジュール)、板クラウンの目標値、及び平坦度の許容範囲等から、各スタンドでの圧延材の温度、及び圧延荷重の計算を行った後、各スタンドでの板クラウン及び平坦度で表される板形状の予測計算を行い、熱間圧延後の板クラウンが目標範囲内の値となり、かつ平坦度が許容範囲内の値となるように、ロールベンディング装置、ロールシフト装置、及びペアクロスミルのクロス角度設定装置等の形状制御装置の設定値を決定する。このようなタンデム式圧延機の設定値計算においては、各スタンドにおける板クラウン及び平坦度の予測精度が極めて重要である。すなわち、板形状の予測を誤ると、通板中に平坦度が乱れ、これによりワークロール間への材料の進入がスムーズに行われず、場合によっては進入不良や絞りなどの通板トラブルを起こすことになる。
【0003】
従来、タンデム式圧延機の設定値計算に使用する板クラウン及び平坦度の予測精度を向上する方法としては、最終スタンド出側において板クラウンと平坦度を実測し、板クラウン及び平坦度の予測計算値との差異をロールプロフィールの推定誤差に起因するものとして、各スタンドのロールプロフィールの予測誤差を推定し、次設定時の板クラウン及び平坦度を目標値に修正する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この特許文献1や特許文献2に記載の最終スタンド出側で測定される板クラウン及び平坦度からロールプロフィールの予測誤差を推定する方法では、各スタンドに計測装置が設けられていない場合は、各スタンドの予測誤差に何らかの仮定を設けて各スタンドの予測誤差を推定する必要があり、特許文献1や特許文献2に記載の板クラウン・形状制御方法では、各スタンドでのロールプロフィール予測誤差を全てのスタンドで同一としたり、各スタンド出側の板厚に比例するように決定したりする方法が開示されている。
【0004】
また、圧延条件に応じて平坦度評価点を変更することにより、板形状の制御を行う方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に記載の圧延条件に応じて平坦度評価点を変更する方法は、板幅方向の板端より距離xである平坦度の評価点xの位置を板厚に応じて変化させて、板端部(評価点x)のメカニカルクラウン(均一荷重クラウン)を求め、この板端部のメカニカルクラウン等から算出される板クラウン及び平坦度に基づき板の形状制御を行うものである。
【0005】
【特許文献1】特許第3253013号公報
【特許文献2】特開平7−303911号公報
【特許文献3】特開平7−227610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された最終スタンド出側で測定される板クラウン及び平坦度からロールプロフィールの予測誤差を推定する方法においては、ロールプロフィールは、ロールの熱膨張やロールの磨耗等によって決定され、ロールの熱膨張や磨耗は圧延条件や使用しているロールの種類に依存するため、熱膨張が大きく磨耗の小さいロールもあれば、逆に熱膨張は小さく磨耗の大きいロールもある。また、熱膨張の予測精度は良いが磨耗の予測精度が悪い場合、或いはその逆の場合、若しくは、熱膨張の予測精度も磨耗の予測精度も両方悪い場合等があり得る。このため、個々のロールのプロフィール予測誤差は本来独立なものであり、各スタンドでのロールプロフィール予測誤差が全てのスタンドで同一であったり、各スタンド出側の板厚に比例したりするというように、プロフィール予測誤差は、個々のロール間において相関関係を持つとは限らない。よって、最終スタンドの板クラウン及び平坦度の実測値だけから各スタンドのロールプロフィール予測誤差を正しく推定できるとは限らない。
【0007】
一方、特許文献3に記載された板厚毎に平坦度評価点を設定する方法においては、各スタンド出側の板クラウンが正しく計算されることが前提であるが、各スタンド間に板クラウンの測定手段が無い場合には、適切な板クラウンを容易に求めることができない。
【0008】
以上より、例えば、上記に記載したような従来の方法では、各スタンドでのロールプロフィールの予測誤差が熱膨張の予測誤差に起因するか或いはロール磨耗の予測誤差に起因するかによって、ロールプロフィールの予測誤差を過大に或いは過小に評価するため、多様な圧延条件や磨耗の小さいハイス製ロールと通常ロールとを兼用している圧延機の場合等については、平坦度の計算精度の向上には限界がある。また、通常の圧延機では、各スタンドの圧延荷重や制御用アクチュエータの設定実績は容易に採取できるが、各スタンド間の板クラウンや平坦度については測定手段を持たない場合がほとんどであり、各スタンド間の板クラウンや平坦度の測定実績を前提とする方法を適用できる圧延機は極めて限定される。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、計測手段の少ないタンデム式の熱間圧延設備において、通常実測されるデータから板クラウン及び平坦度の予測モデルの形状変化係数を適切に決定し、精度の高い平坦度の予測を実現して、熱間圧延における精度の高い板形状の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法は、直列に配置された複数の圧延スタンドを有するタンデム式圧延機により熱間圧延される圧延材の板形状の制御方法に関する。そして、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の熱間圧延における板形状の制御方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法における第1の特徴は、Cr=α×CrMi+(1−r)×β×Cri−1(Cr,Cri−:i,i−1スタンド出側の板クラウン、α:転写率、CrMi:iスタンドのメカニカルクラウン、r:iスタンドの圧下率、β:遺伝係数)で表される板クラウン予測モデルにより前記圧延材の板クラウン予測値を算出する板クラウン予測値算出工程と、前記板形状を制御するための板形状制御装置の設定値を、前記タンデム式圧延機を操作するオペレータが手動により調整した際のオペレータ調整量と、平坦度予測モデルにより算出される平坦度予測値との相関係数の絶対値が大きくなるように決定された形状変化係数を用いて、前記平坦度予測モデルにより前記平坦度予測値の決定値を算出する平坦度予測値算出工程と、前記板クラウン予測値と、前記決定値とを用いて、前記板形状制御装置の設定値を算出する制御装置設定値算出工程とを備えていることである。
【0012】
この構成によると、圧延材の平坦度を向上させるためにタンデム式圧延機を操作するオペレータが介入したオペレータ調整量に基づいて平坦度予測モデルの形状変化係数を修正でき、実際の経験に基づく調整結果を板の平坦度予測計算に反映することができる。ここで、上記オペレータ調整量は、実際に操作するオペレータの判断に委ねられるため、オペレータによる目視判定の確からしさが問題となるが、経験を積んだ熟練のオペレータの場合、目視によって的確に板形状を判定して調整し、通板トラブルを回避して平坦度の良い板に修正することが可能である。また、圧延を繰り返すたびに、オペレータ調整量のデータは蓄積されていくため、上記形状変化係数は、圧延を多く繰り返すほどにその精度は高まっていく。
【0013】
また、本発明では、板クラウンや平坦度についての測定結果を用いず、採取しやすいスタンド間のオペレータ調整量を用いて平坦度を予測計算するものであるため、スタンド間に板クラウンや平坦度についての測定手段を持たない場合であっても、ロールプロフィール予測誤差の仮定等を行うことなくスタンド間の平坦度を予測することができる。よって、計測手段の少ないタンデム式の熱間圧延設備において、通常実測されるデータから板クラウン及び平坦度の予測モデルの形状変化係数を適切に決定してスタンド出口毎に精度の高い平坦度の予測を実現でき、各スタンド毎に熱間圧延における精度の高い板形状の制御が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法における第2の特徴は、前記平坦度予測モデルは、Δε=ξ×(Cr/H−Cri−1/Hi−1)(Δε:iスタンド出側の平坦度、Cr,Cri−1:i,i−1スタンド出側の板クラウン、H,Hi−1:i,i−1スタンド出側の板厚、ξ:形状変化係数)で表されることである。
【0015】
ここで、Cr/Hは、iスタンド出側の板クラウンとiスタンド出側の板厚との比であり、一般に、iスタンド出側の板クラウン比率と呼ばれるものである。この構成によると、iスタンド前後の板クラウン比率の変化量に形状変化係数を乗じて定義される上記従来の平坦度予測モデルから算出される平坦度予測値と、タンデム式圧延機を操作するオペレータが介入したオペレータ調整量との間の相関関係から形状変化係数を決定し、この形状変化係数を用いて平坦度予測値の決定値を算出することで、オペレータ調整量を平坦度予測値に反映させることができ、単に、上記従来の平坦度予測モデルから算出される平坦度予測値よりも精度の高い平坦度予測値を得ることができる。
【0016】
また、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法における第3の特徴は、前記平坦度予測モデルは、Δε=ξ×(Cr/H−Crn−1/Hn−1)(Δε:スタンド出側の平坦度、Cr,Crn−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるスタンド出側の板クラウン、H,Hn−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるスタンド出側の板厚、ξ:形状変化係数)で表されることである。
【0017】
ここで、板クラウンは、上記のように、Cr=α×CrMi+(1−r)×β×Cri−1(Cr,Cri−1:i,i−1スタンド出側の板クラウン、α:転写率、CrMi:iスタンドのメカニカルクラウン、r:iスタンドの圧下率、β:遺伝係数)で表される板クラウン予測モデルにより算出されるが、例えば、スタンド毎にメカニカルクラウンCrの予測精度に差があると、この板クラウンの予測値は、iスタンド、i+1スタンドの順に、徐々に誤差が蓄積されていく。また、スタンド毎にロールプロフィールの予測精度に大きな差がある場合もある。よって、この構成によると、同じスタンドのn−1本目に圧延された圧延材の板クラウン比率と、n本目に圧延された圧延材の板クラウン比率との差によって平坦度を予測する平坦度予測モデルを定義することにより、メカニカルクラウンやロールプロフィールの予測誤差を打ち消すことができる。よって、より精度の高い平坦度の予測を実現することができる。
【0018】
また、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法における第4の特徴は、前記平坦度予測モデルは、Δε=ξ×{(Cr/H−Crn−1/Hn−1)−(Cri−1/Hi−1−Cri−1n−1/Hi−1n−1)}(Δε:iスタンド出側の平坦度、Cr,Crn−1,Cri−1,Cri−1n−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるi,i−1スタンド出側の板クラウン、H,H−1,Hi−1,Hi−1n−1:n,n−1本目の板の圧延時におけるi,i−1スタンド出側の板厚、ξ:形状変化係数)で表されることである。
【0019】
ここで、この平坦度予測モデルは、n−1本目に圧延された圧延材の板クラウン比率と、n本目に圧延された圧延材の板クラウン比率との差の、iスタンド前後の変化量によって、平坦度を予測する平坦度予測モデルを定義するものである。この構成によると、従来のiスタンド前後の板クラウン比率の変化量からの定義と、n−1本目に圧延された圧延材の板クラウン比率と、n本目に圧延された圧延材の板クラウン比率との差からの定義とを合わせることにより、より精度の高い平坦度の予測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法が使用されるタンデム式圧延機が設けられた熱間圧延設備を示す模式図である。
【0021】
図1に示すように、加熱炉11で1000℃以上に加熱されたスラブと呼ばれる鋼片5は、まず粗圧延機12に供給され粗圧延される。その後、仕上げの圧延機であるタンデム式圧延機13に供給され、最終的には厚さ1.2mm〜19mm程度まで薄くして冷却設備14にて冷却されたあと巻取機15でコイル状に巻き取られる。
【0022】
図2は、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法が使用されるタンデム式圧延機の各種設定値を計算する手順を示すフローチャート図である。本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法では、図2に示したフローチャート図の手順に従って各スタンドの形状制御装置等の設定値計算を行い、タンデム式圧延機13のセットアップを行う。
【0023】
まず、圧延材である板の素材寸法、タンデム式圧延機13の入側での板の温度、最終スタンド出口での板の目標温度、及び各スタンド出口での板の目標板厚(パススケジュール)を入力するステップ1(以下S1と記載する、他のステップも同様)と、タンデム式圧延機13の入側での板クラウン、圧延後の板の目標板クラウン、及び板の平坦度の許容範囲を入力するステップ2が行われる。次にS1に基づき、各スタンドでの圧延材の温度計算を行うステップ3ならびに各スタンドでの圧延荷重を計算するステップ4が行われる。その後、ステップ6では、各スタンドのロールギャップ及び圧延速度の設定値が計算される。一方、S1に基づくS3、S4による計算結果とS2とに基づいて板クラウン予測値算出工程と平坦度予測値算出工程とを含むステップ5により各スタンド出側のクラウン及び板の平坦度の予測値が求められる。その後、制御装置設定値算出工程であるステップ7では、S5の結果に基づき、ロールベンディング装置、ロールシフト装置、及びペアクロスミルのクロス角度設定装置等の各スタンドの板形状制御装置の設定値計算が行われる。
【0024】
このようなタンデム式圧延機13の設定値計算においては、各スタンドにおける板クラウン及び平坦度の予測精度が極めて重要である。すなわち、板形状の予測を誤ると、通板中に平坦度が乱れ、これによりワークロール間への材料の進入がスムーズに行われず、場合によっては進入不良や絞りなどの通板トラブルを起こすことになる。
【0025】
ここで、S5に示す各スタンド出側の板クラウン及び平坦度の計算は、通常、次式に示す板クラウン予測モデル(式(数1))と、平坦度予測モデル(式(数2))とを用いて一般に分割モデルと呼ばれる理論解析手法により、ロールの変形と圧延材の変形を連立させて行われる。
(数1) Cr=α×CrMi+(1−r)×β×Cri−1
(数2) Δε=ξ×(Cr/H−Cri−1/Hi−1
ここで、Cr,Cri−1は、i,i−1スタンド出側の板クラウンを示し、αは、転写率を示し、CrMiは、iスタンドのメカニカルクラウンを示し、rは、iスタンドの圧下率を示し、βは、遺伝係数を示す。また、Δεは、iスタンド出側の平坦度を示し、H,Hi−1は、i,i−1スタンド出側の板厚を示し、ξは、形状変化係数を示す。
【0026】
上記のメカニカルクラウンCrは、圧延荷重によるワークロールの撓みと、偏平等を要素とする圧延機の変形モデルと、ワークロールのイニシャルプロフィール・熱膨張・磨耗等を要素とするロールプロフィールモデルとによって算出される。また、転写率αは、メカニカルクラウンの出側板クラウンに対する影響係数であり、遺伝係数βは、入側板クラウンの出側板クラウンに対する影響係数である。また、平坦度Δεを算出する際に用いられる形状変化係数ξは、本発明の一実施形態として、圧延材の板厚、板幅、及びスタンドのロール径によって定義される幾何学的パラメータを用いて関数表現したものを用いた。
【0027】
一方、熱間圧延設備における板の平坦度計測方法については、レーザー及びモニターを用い光学的な方法で測定する技術が知られているが、光学方式による平坦度の測定は、タンデム式圧延機13の最終スタンドに限られ、途中スタンドの平坦度を計測することは極めて困難である。ところで、タンデム式圧延機13を操作するオペレータは、圧延材を圧延機に通していく通板中の板の目視形状により平坦度を判定し、形状が乱れている場合にはそれを修正するために形状制御装置の設定値に対して介入を行っている。この介入による調整は、通常、応答性の良いロールベンディング装置に対して行われ、例えば、板形状が耳波の場合、板がほぼ平坦になるまでロールベンディング装置による圧力を上昇させていく。逆に、板形状が中伸びであれば、平坦になるまでロールベンディング装置による圧力を減少させていく。
【0028】
ここで、オペレータによる調整は、オペレータの目視判定の確からしさが問題となるが、経験を積んだオペレータの場合、目視によって的確に板形状を判定してロールベンディング装置の圧力を調整し、通板トラブルを回避して平坦度の良い板に修正することが可能である。そこで、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法の一実施形態では、板形状を見てオペレータが行うロールベンディング装置の初期設定値への介入量(調整量)によって、上記耳波、中伸び等の板の平坦度を評価している。このオペレータによる介入量(調整量)を以下、オペレータ調整量ΔJと記載する。尚、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法の一実施形態では、オペレータ調整量ΔJとして、ロールベンディング装置の初期設定値への介入量(調整量)を用いているが、ロールベンディング装置の初期設定値への介入量(調整量)の代わりに、ロールシフト装置やペアクロスミルのクロス角度設定装置等の板形状制御装置の初期設定値への介入量(調整量)を用いることも当然可能である。つまり、オペレータが手動により調整した際のオペレータ調整量として、ロールベンディング装置、ロールシフト装置、及びペアクロスミルのクロス角度設定装置等の板形状を制御するための板形状制御装置の設定値を手動により調整した際のオペレータ調整量を用いることが可能である。
【0029】
図4は、オペレータ調整量ΔJで補正せず式(数1)、式(数2)に示す従来の式から求めた平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。図4に示すように、式(数1)、式(数2)に示す従来の式から求めた平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの間には正の相関関係が認められる。一般に、板の予測形状が耳波の場合、オペレータはロールベンディング装置による圧力設定値を上昇側に、板の予測形状が中伸びの場合、圧力設定値を減少側に調整する傾向があり、オペレータは、目視により定性的には板の形状を正しく予測していることがわかる。しかしながら、この平坦度の予測値Δεとオペレータ調整量ΔJとの相関関係は良くない。これに対し、以下に、本発明に係る3つの平坦度予測モデルを用いた第1乃至第3実施形態についてそれぞれ説明する。尚、平坦度予測モデルは、これら3つのモデルに限られるものではなく、他の平坦度予測モデルと、オペレータ調整量ΔJとを用いて平坦度の予測を行うこともできる。
【0030】
(第1実施形態)
本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法の第1実施形態は、式(数1)に示す板クラウン予測モデル及び式(数2)に示す平坦度予測モデルを用いて、オペレータによるロールベンディング装置の初期設定値への介入量(調整量)がある場合の圧延実績をもとに、オペレータ調整量ΔJと平坦度の予測値Δεとの相関係数の絶対値が大きくなるように形状変化係数ξを決定し、このξを用いて平坦度予測値の決定値を算出する平坦度予測値算出工程を行うものである。ここで、図3は、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法の板クラウン及び平坦度の予測値算出手順を示すフローチャート図である。また、図5は、本発明の第1実施形態に係る方法で算出した平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。
【0031】
図3に示すように、まず、オペレータ調整量ΔJを入力するステップ11を行う。そして、形状変化係数ξの仮決めをステップ12で行う。次に板クラウン予測モデル及び平坦度予測モデルにより、板クラウン予測値の算出(板クラウン予測値算出工程)及び平坦度の予測値を算出するステップ13を行う。ここで、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法の第1実施形態では、式(数1)に示す板クラウン予測モデル及び式(数2)に示す平坦度予測モデルを用いた。S12においては、例えば、形状変化係数に、ξ=ξ{1+f(H、W、・・・)}(ξ:補正後の形状変化係数、H:板厚、W:板幅)のように補正項f(H、W、・・・)を導入し、ステップ14によりオペレータ調整量ΔJと平坦度の予測値Δεとの相関係数の絶対値が大きくなるよう補正後の形状変化係数ξを決定する。一例として、補正項f(H、W、・・・)を、f(H、W、・・・)=a+a×H+a×W+・・・のように板厚Hや板幅W等の一次式で表現すれば、各係数a、a、a、・・・は最小二乗法によって容易に決定できる。その後、ステップ15により、決定した補正後の形状変化係数ξを用いて平坦度予測値の決定値を算出する(平坦度予測値算出工程)。尚、補正後の形状変化係数ξは、上記のように補正項項f(H、W、・・・)を導入して求めても良いし、圧延材の板厚、板幅、及びスタンドのロール径等により、全く新たに定義しても構わない。その後、図2に示すS7により、ロールベンディング装置、ロールシフト装置、及びペアクロスミルのクロス角度設定装置等の各スタンドの板形状制御装置の設定値計算が行われる。
【0032】
図5に示すように、式(数1)に示す板クラウン予測モデル及び式(数2)に示す平坦度予測モデルを用いて、オペレータ調整量ΔJによって補正した平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの間の相関関係は、図4に示す従来の式から求めた平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの相関関係よりも高い。
【0033】
(第2実施形態)
式(数1)に示されるように、この板クラウン予測モデルから算出される板クラウン予測値の誤差は、スタンド毎にメカニカルクラウンの予測精度に誤差があると、iスタンド、i+1スタンドの順に、徐々に誤差が蓄積されていく。また、スタンド毎にロールプロフィールの予測精度に大きな差がある場合もある。この場合、従来のように、式(数2)で表される各スタンド間の板クラウン比率の変化量によって板の平坦度を求めた場合、平坦度の予測精度が悪くなる場合がある。従って、本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法の第2実施形態では、式(数2)の代わりに、次式に示すように、n−1本目に圧延された圧延材の板クラウン比率と、n本目に圧延された圧延材の板クラウン比率との差によって平坦度を予測する平坦度予測モデルを用いた。これにより、メカニカルクラウンの予測誤差を打ち消すことができる。
(数3) Δε=ξ×(Cr/H−Crn−1/Hn−1
ここで、Δεは、スタンド出側の平坦度を示し、Cr,Crn−1は、n,n−1本目の板の圧延時におけるスタンド出側の板クラウンを示し、H,Hn−1は、n,n−1本目の板の圧延時におけるスタンド出側の板厚を示し、ξは、形状変化係数を示す。その他の本第2実施形態における板クラウン予測値算出工程、平坦度予測値算出工程、及び制御装置設定値算出工程等は、上記第1実施形態と同様であり、タンデム式圧延機13を操作するオペレータが手動により調整した際のオペレータ調整量により、板の平坦度を評価している。但し、n−1本目に圧延された圧延材と、n本目に圧延する圧延材との板幅が異なる場合には、n本目に圧延する圧延材の平坦度評価点において、n−1本目に圧延された圧延材の板クラウン比率を求める。
【0034】
次に、図6は、本発明の第2実施形態に係る平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。図6に示すように、式(数1)に示す板クラウン予測モデル及び式(数3)に示す平坦度予測モデルを用いて、オペレータ調整量ΔJによって補正した平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの間の相関関係は、図4に示す従来の式から求めた平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの相関関係、ならびに図5に示す式(数1)の板クラウン予測モデル及び式(数2)の平坦度予測モデルを用いて、オペレータ調整量ΔJによって補正した平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの間の相関関係よりも高い。
【0035】
(第3実施形態)
本発明に係る熱間圧延における板形状の制御方法の第3実施形態は、式(数2)に示した従来のiスタンド前後の板クラウン比率の変化量からの定義と、式(数3)に示したn−1本目に圧延された圧延材の板クラウン比率とn本目に圧延された圧延材の板クラウン比率との差からの定義とを合わせた次式に示す平坦度予測モデルを用いるものである。
(数4) Δε=ξ×{(Cr/H−Crn−1/Hn−1)−(Cri−1/Hi−1−Cri−1n−1/Hi−1n−1)}
ここで、Δεは、iスタンド出側の平坦度を示し、Cr,Crn−1,Cr−1,Cri−1n−1は、n,n−1本目の板の圧延時におけるi,i−1スタンド出側の板クラウンを示し、H,Hn−1,Hi−1,Hi−1n−1は、n,n−1本目の板の圧延時におけるi,i−1スタンド出側の板厚を示し、ξは、形状変化係数を示す。
【0036】
ここで、本第3実施形態においても上記の第2実施形態と同様、板クラウン予測値算出工程、平坦度予測値算出工程、及び制御装置設定値算出工程等は、上記第1実施形態と同様であり、タンデム式圧延機13を操作するオペレータが手動により調整した際のオペレータ調整量により、板の平坦度を評価している。また、上記第2実施形態と同様に、n−1本目に圧延された圧延材と、n本目に圧延する圧延材との板幅が異なる場合には、n本目に圧延する圧延材の平坦度評価点において、n−1本目に圧延された圧延材の板クラウン比率を求める。
【0037】
図7は、本発明の第3実施形態に係る平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。また下記の表1は、従来法、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態における平坦度の予測値Δεとオペレータ調整量ΔJとのそれぞれの相関係数R値の比較を示すものである。図7及び表1に示すように、式(数4)に示す平坦度予測モデルを用いてオペレータ調整量ΔJによって補正した平坦度の予測値Δεとオペレータ調整量ΔJとの間の相関関係は、図4に示す従来法から求めた平坦度の予測値Δεとオペレータ調整量ΔJとの相関関係、及び図5に示す式(数2)の平坦度予測モデルを用いてオペレータ調整量ΔJによって補正した平坦度の予測値Δεとオペレータ調整量ΔJとの間の相関関係よりも高い。また、僅かではあるが図6に示す式(数3)の平坦度予測モデルを用いてオペレータ調整量ΔJによって補正した平坦度の予測値Δεとオペレータ調整量ΔJとの間の相関関係よりも高い。
【0038】
【表1】


【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】熱間圧延設備を示す模式図である。
【図2】タンデム式圧延機の各種設定値を計算する手順を示すフローチャート図である。
【図3】板クラウン及び平坦度の予測値算出手順を示すフローチャート図である。
【図4】式(数1)、式(数2)に示す従来の式から求めた平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る平坦度の予測値Δεと、オペレータ調整量ΔJとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 熱間圧延設備
6 鋼板
11 加熱炉
12 粗圧延機
13 タンデム式圧延機
14 冷却設備
15 巻取機
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠


【公開番号】 特開2008−43967(P2008−43967A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−220539(P2006−220539)