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【発明の名称】 分塊圧延における疵防止方法
【発明者】 【氏名】柿本 英樹

【氏名】串田 仁

【氏名】川端 恒徳

【要約】 【課題】分塊圧延工程で、安定した圧延材形状を造りこむことにより、不十分な溶削やその後の圧延により発生する表面欠陥を低減するための疵防止方法を提供することである。

【構成】ホットスカーフィング工程を備えた鋼塊または連続鋳造された鋼素材の分塊圧延で、前記ホットスカーフィング工程前の圧延最終パス入側の圧延材3の両側面にそれぞれ形成されるバルジ部Bの曲率半径Rと前記最終パス入側の圧延材の側面3sからバルジ部の最大突出位置Bmaxまでの幅方向の距離Wとの比R/Wが0.5以上になるようにした。このように圧延材3の側面を形成すれば、最終パスで、噛み込みに伴う圧延材3の倒れが発生せず、最終パス出側での圧延材3の安定した断面形状でホットスカーフィングを行えるため、表面疵の発生防止に有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットスカーフィング工程を備えた鋼塊または連続鋳造された鋼素材の分塊圧延における疵防止方法であって、前記ホットスカーフィング工程前の圧延最終パス入側の圧延材の両側面にそれぞれバルジ部が形成され、このバルジ部の曲率半径Rと前記最終パス入側の圧延材の側面からバルジ部の最大突出位置までの幅方向の距離Wとの比R/Wが0.5以上であることを特徴とする分塊圧延における疵防止方法。
【請求項2】
前記バルジ形状がシングルバルジまたはダブルバルジである請求項1に記載の分塊圧延における疵防止方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、分塊圧延工程で、鋼塊または連続鋳造された鋼鋳片のリバース分塊圧延や、それに引き続くホットスカーフィングによる溶削および高圧水によるノロ(溶削カス)が安定して行なわれないために発生する表面疵を低減する疵防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分塊圧延における疵防止方法としては、例えば、特許文献1では、大圧下によりドッグボーン形状の凹部が形成された素材側方部を、中央部に凸状部を形成した孔型を用いて圧延することで前記凹部を両側に向けて延伸させ、ドッグボーン形状を解消させてしわ疵の発生を防止する疵防止方法が開示されている。また、特許文献2では、鋳型縦横比および分塊圧下比をパラメータとする数式で規定した長辺くぼみ比を有する鋳片を用いて、鋳片の短辺圧下を、長辺くぼみ比および圧延幾何学的形状比をパラメータとする短辺圧下比に基づいて圧延を行なう分塊圧延疵が少なくなる分塊方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−176501号公報
【特許文献2】特開2002−263797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、本発明者が独自に調査したところによれば、分塊圧延鋼片に発生する表面疵の最も大きな原因は、分塊圧延の中間工程で、圧延材表面の脱炭層や酸化スケールを除去するためにガスによる溶削(ホットスカーフィング)を行なう際に、圧延材形状が不安定であると圧延材表面が一様に溶削されずに、ホットスカーフィング後の圧延で表面疵が発生したり、ホットスカーフィングのノロ(溶削カス)が圧延材表面に残存し、このノロが圧延により押さえ込まれて表面疵が発生することがわかった。
【0004】
このような不十分な溶削により発生する疵やノロの押さえ込みによる表面疵は、前記特許文献1および特許文献2に開示された分塊圧延方法では解消することはできない。前記疵欠陥を低減するためには、分塊圧延工程で、安定した圧延材形状を造りこむ必要がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、分塊圧延工程で、安定した圧延材形状を造りこむことにより、不十分な溶削やその後の圧延により発生する表面欠陥を低減するための疵防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
【0007】
請求項1に係る分塊圧延における疵防止方法は、ホットスカーフィング工程を備えた鋼塊または連続鋳造された鋼素材の分塊圧延における疵防止方法であって、前記ホットスカーフィング工程前の圧延最終パス入側の圧延材の両側面にそれぞれバルジ部が形成され、このバルジ部の曲率半径Rと前記最終パス入側の圧延材の側面からバルジ部の最大突出位置までの幅方向の距離Wとの比R/Wが0.5以上であることを特徴とする。
【0008】
一般に、分塊圧延のパススケジュールは、10数パス程度のパス数からなり、上下一対のロールにそれぞれ複数形成された孔型で、2パスまたは4パス毎に圧延材を90度回転させて順次リバース圧延され、所定の寸法に仕上げられる。とくに仕上げパス(最終パス)では、図1(a)および(b)に模式的に示すように、最終1パス前の上下のロール1、2で、バルジ部Bが形成された圧延材3の両側面(自由表面)3a、3bが、最終パスでは、上下のロール1、2に接触する圧下面となる。上記のように、R/W≧0.5となるように最終1パス前のパスで圧延材3の両側面(自由表面)3a、3bの形状を形成することにより、最終パスのロールへの噛み込み時に圧延材3の倒れが発生せず、最終パスで安定した形状の圧延材を造り込むことができる。それによって、ホットスカーフィング前の圧延材形状を安定させることが可能となる。
【0009】
なお、ここで、バルジBの曲率半径Rは、このバルジ部Bを、図2(a)に模式的に示すように、バルジ部Bの最も突出している位置Bmaxを通る円弧で近似したときの、この近似円C(近似円弧)の半径である。
【0010】
請求項2に係る分塊圧延における疵防止方法は、前記バルジ形状がシングルバルジまたはダブルバルジである分塊圧延工程における疵防止方法である。
【0011】
前述のように、バルジ形状をR/W≧0.5となるように圧延材の両側面を形成しておくと、バルジ形状がシングバルジのみならず、ダブルバルジであっても、仕上げ(最終)パスのロール孔型への噛み込み時に圧延材の倒れが発生せず、最終パスで安定した形状の圧延材を造り込むことができる。
【0012】
なお、バルジ部がシングルバルジの場合、前記幅方向の距離Wは、前記最終パス入側の圧延材3の両側面3s(最終1パス前のロールとの接触面F)からバルジ部Bの最大突出位置Bmaxまでの幅方向の距離W1、W2の平均値を用いることが望ましい。また、バルジ部Bがダブルバルジの場合、前記幅方向の距離Wは、図2(b)に示すように、バルジ部の最大突出位置Bmaxに近い方の、前記最終パス入側の圧延材3の側面3s(最終1パス前のロールとの接触面F)から最大突出位置Bmaxまでの幅方向の距離である。
【発明の効果】
【0013】
この発明では、分塊圧延工程でのホットスカーフィング前の最終パスで圧下を受ける、最終1パス前のパス(ロール孔型)で圧延された圧延材の側面のバルジ部の形状を上述のように、バルジ部の曲率半径Rと最終パス入側の圧延材の側面からバルジ部の最大突出位置Bmaxまでの幅方向の距離Wとの比R/Wが0.5以上となるようにしたので、最終パスのロール孔型への噛み込み時に圧延材の倒れが発生せず、最終パスで安定した形状の圧延材を造り込むことができる。それによって、ホットスカーフィング前の圧延材形状を安定させることができ、分塊圧延における不十分な溶削や溶削後の後段側の圧延で発生する表面欠陥を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の実施形態を添付の図3から図6に基づいて説明する。
【0015】
分塊圧延工程では、均熱炉で加熱・均熱された連続鋳造鋼鋳片などの素材は、通常、一例を図3に示す、2重可逆式分塊圧延機のロールの複数のボックス孔型1a〜1d、2a〜2dと平ロール部1e、2eを備えた上下ロール1、2で、リフト量(ロール隙)を変化させ、2パスまたは4パス毎に90度転回されて圧下方向を変えて繰り返し圧下を受けながら、順次断面積が減少して縦寸法と横寸法が作られ、最終(仕上げ)パスで、ホットスカーフィング前の所要の寸法に圧延される。図4(a)は、最終1パス前のボックス孔型1a、2aでの圧延後の圧延材3の断面形状を示すもので、図4(b)は、上ロール1のリフト量(ロール隙m)を、最終1パス前のパスから大きくした、最終パスの平ロール部1e、2eでの圧延前(噛み込み時)、および圧延後の圧延材3の断面形状をそれぞれ示すものである。図4(a)で、圧延材3のバルジ部Bはシングルバルジであり、分塊圧延の各パスのロール隙、とくに仕上げパスに近い後段側のパスのロール隙を調整することにより、バルジ部Bの曲率半径Rと前記幅方向の距離Wの比R/Wが0.5以上に形成される。ここで、バルジBの曲率半径Rは、このバルジ部Bを、図2(a)で説明したように、バルジ部Bの最も突出している位置Bmaxを通る円弧で近似したときの、この近似円(近似円弧)の半径であり、この近似円は、図4(a)に示したように、近似可能な最大(最小曲率)の円(円弧)の半径である。また、幅方向の距離Wは、最終1パス前の孔型溝底部G1、G2との接触面F(最終パス入側の圧延材3の側面3s(図4(b)参照))から前記最大突出位置Bmaxまでの距離であり、前述のように、両距離W1、W2の平均値を用いることが望ましい。
【0016】
このように、図4(a)に示した、最終1パス前のパスで圧延された圧延材3の側面のバルジ部Bの形状に関連した比R/Wを0.5以上に形成することによって、図4(b)に示したように、最終パスの平ロール部1e、2eへの噛み込み後、速やかに圧延材3と平ロール部1e、2eとの接触面積が大きくなるため、噛み込みに伴って圧延材3の倒れが発生せず、最終パスで安定した形状の圧延材3を造りこむことが可能となり、ホットスカーフィング前の圧延材3の形状を安定させることができる。
【実施例】
【0017】
連続鋳造されたS45Cの5本の610mm角の鋼鋳片を対象として、有限要素法汎用プログラムを用いて、一例を図3に示した、2重可逆式分塊圧延機の前記上下ロール1、2の各孔型で、第1パス入側温度を900〜1200℃、仕上げ鋼片寸法を300mm×400mmとして、図5に示す基本パススケジュールで、合計13パスの分塊圧延の変形シミュレーションを実施した。その際に、No.1〜No.11パスまでの各パス孔型での圧下量配分を調節することにより、最終1パス前(No.12パス)の孔型出側(最終パス(No.13パス)入側)の前記バルジ部Bに関連した比R/Wを広範囲に変化させた。この変形シミュレーション結果を用いて分塊圧延条件を決定し、実機実験を実施した。実機実験の結果、最終1パス前(No.12パス)の孔型出側(最終パス(No.13パス)入側)での圧延材の形状(R/W)と同じ分塊圧延条件の変形シミュレーション形状とは、ほぼ一致し、表1に示す結果が得られた。表1の上段のR/Wは、前記最終1パス前の孔型出側の実機圧延材についての測定値であり、この測定値は、実機圧延材の端面の断面写真を画像解析して得たものである。表1から、R/Wが0.5以上では、最終パス(No.13パス)への噛み込みに伴う圧延材の倒れが発生せず、同パス(No.13パス)出側の圧延材の断面形状も安定して良好であった。一方、R/Wが0.1、0.3の場合には、最終パス(No.13パス)への噛み込みに伴う圧延材の倒れが発生し、同パス(No.13パス)出側の圧延材の断面形状も不安定で、不良であった。
【0018】
【表1】


【0019】
次に、変形シミュレーションで用いた610mm角のS45Cの鋼鋳片を、前段側の実機2重可逆式分塊圧延機の上下ロール1、2の各孔型で、図5に示した、前記変形シミュレーションの場合と同様の基本パススケジュールで、まず、変形シミュレーションにより、最終1パス前(No.12パス)の孔型出側および最終パス(No.13パス)出側の圧延材の形状を把握し、とくに、No.8〜No.11パスのロール隙を、No.12パス出側の圧延材側面のバルジ部の突出量が小さくなるように調整、設定した後に、合計13パスの分塊圧延を実施し、300mm×400mm角の鋼片に仕上げた。そして、最終パス後の圧延材に、2%程度のホットスカーフィングを実施した。前記分塊圧延で、最終1パス前(No.12パス)の孔型出側(最終パス(No.13パス)入側)のバルジ部Bの形状比比R/W(図4(a)参照)は、4.1で、形状比R/W≧0.5以上の要件を満たし、最終パス(No.13パス)への噛み込みに伴う圧延材の倒れが発生せず、同パス(No.13パス)出側の圧延材の断面形状も安定して良好であった。また、ホットスカーフィングを実施後に、引き続いて、ホットスカーフィング機の下流側に設置した後段側の実機2重可逆圧延機で、いずれのパス孔型でも、噛み込みに伴う倒れを発生させず、250mm角ブルームまでの圧延を実施した。ホットスカーフィング前の最終パス(No.13パス)出側の圧延材形状が安定しているため、圧延材表面(表層部)が一様に溶削され、ホットスカーフィングのノロ(溶削かす)の残存による押さえ込み疵は認められなかった。また、明瞭に脱炭層や酸化スケールを伴う溶削不足と見なされる表面疵も認められず、安定した形状で溶削を行なうことによる表面疵防止方法の効果が確認された。
【0020】
図6(a)は、前記のホットスカーフィング前の最終1パス前のパス出側での圧延材3の側面3a、3bに形成されたバルジ部Bがダブルバルジの場合を示したもので、図6(b)は、この圧延材3が、上ロール1のリフト量(ロール隙m)を最終1パス前のパスから大きくした、最終パスの平ロール部1e、2eでの圧延前(噛み込み時)、および圧延延後の断面形状をそれぞれ示すものである。ダブルバルジの場合、バルジ部B1、B2の曲率半径Rの定義はシングルバルジの場合と同様であるが、前記幅方向の距離Wは、バルジ部B1、B2の最大突出位置B1max、B2maxと、この最大突出位置B1max、B2maxにそれぞれ近い方の、最終1パス前の孔型溝底部G1、G2との接触面F(最終パス入側の圧延材3の側面3s(図2(b)参照))から前記最大突出位置B1max、B2maxまでの距離である。なお、ダブルバルジの最大突出位置B1max、B2max間の距離Kは、本発明ではとくに規定する必要はなく、前記の比R/Wを0.5以上に形成することによって、図6(b)に示したように、最終パスの平ロール部1e、2eへの噛み込み後、速やかに圧延材3と平ロール部1e、2eとの接触面積が大きくなるため、噛み込みに伴って圧延材3の倒れが発生せず、最終パスで安定した形状の圧延材3を造りこむことができ、また、バルジ部B1、B2間で折れ込み疵等の表面欠陥の発生も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)分塊圧延の最終1パス前のパスでの圧延材断面形状を模式的に示す説明図である。(b)分塊圧延の最終パスでの圧延前後の圧延材の断面形状を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)図1(a)の圧延材のバルジ部の形状比R/Wの定義を模式的に示す説明図である(シングルバルジの場合)。(b)同上(ダブルバルジの場合)。
【図3】分塊圧延機のロールの一例を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)分塊圧延の最終1パス前のパスでの圧延材断面形状の説明図である(シングルバルジの場合)。(b)分塊圧延の最終パスでの圧延前後の圧延材の断面形状の説明図である(シングルバルジの場合)。
【図5】分塊圧延でのパススケジュールの一例を示す説明図である。
【図6】(a)分塊圧延の最終1パス前のパスでの圧延材断面形状の説明図である(ダブルバルジの場合)。(b)分塊圧延の最終パスでの圧延前後の圧延材の断面形状の説明図である(ダブルバルジの場合)。
【符号の説明】
【0022】
1:上ロール 1a〜1c:ロール孔型 2:下ロール
2a〜2c:ロール孔型 3:圧延材 3a、3b、3s:圧延材側面
B、B1、B2:バルジ部 Bmax、B1max、B2max:バルジ部最大突出位置C、C1、C2:近似円 F:接触面 G1、G2:孔型溝底部 P:圧下方向
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠

【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通


【公開番号】 特開2008−43966(P2008−43966A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−220386(P2006−220386)