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【発明の名称】 条鋼圧延材の圧延方法
【発明者】 【氏名】串田 仁

【氏名】酒井 英典

【氏名】桐原 和彦

【要約】 【課題】条鋼圧延材の多系列(多ストランド)圧延において、製品の寸法精度を高くし表面疵等の発生を防ぐ。

【構成】各系列の条鋼圧延材1の線速比Rを予め求めておき、第1系列にあっては、トップ速度の実績値V0'−1と線速比Rとから目標ミドル速度V1'−1を求め、第1系列の中途部が目標ミドル速度V1'−1となるように上流側の圧延ロール14を制御し、第2系列にあっては、トップ速度の実績値V0'−2と線速比Rとから目標ミドル速度V1'−2を求め、V1'−2>V1'−1の場合、圧延ロール14の回転数を変更し、V1'−2<V1'−1の場合、圧延ロール14の回転数を変更しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカリバーを有する圧延ロールが多数配備された圧延装置を用いて、条鋼圧延材を多系列で圧延するに際し、
(i) 前記条鋼圧延材の先端部の速度であるトップ速度V0と、前記条鋼圧延材の中途部の速度であるミドル速度V1とから、各系列の条鋼圧延材において最適な圧延が可能な線速比R=(V1−V0)/V0を予め求めておき、
(ii) 最初に圧延が開始される第1系列の条鋼圧延材にあっては、当該条鋼圧延材のトップ速度V0'−1を計測すると共に、該実績値V0'−1と前記線速比Rとから目標ミドル速度V1'−1を求め、当該条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−1となるように上流側の圧延ロールの回転数を設定し、
(iii) 前記第1系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される第2系列の条鋼圧延材にあっては、当該条鋼圧延材のトップ速度V0'−2を計測すると共に、該実績値V0'−2と前記線速比Rとから目標ミドル速度V1'−2を求め、
(iv) 前記第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−2が、第1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1より大きい場合には、全系列の条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−2となるように前記圧延ロールの回転数を変更し、
(v) 前記第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−2が、第1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1より小さい場合には、前記圧延ロールの回転数を変更せずに、
それぞれの条鋼圧延材の圧延を行うことを特徴とする条鋼圧延材の圧延方法。
【請求項2】
前記第1及び第2系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される第3系列の条鋼圧延材にあっては、
(vi) 前記第3系列の条鋼圧延材のトップ速度V0'−3を計測すると共に、該実績値V0'−3と前記線速比Rとから当該条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−3を求め、
(vii) 前記目標ミドル速度V1'−3が、第1及び第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1,V1'−2の何れよりも大きい場合には、全系列の条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−3となるように前記圧延ロールの回転数を変更し、
(viii) 前記第3系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−3が、第1及び第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1,V1'−2の何れか1つより小さい場合には、前記圧延ロールの回転数を変更せずに、
それぞれの条鋼圧延材の圧延を行うことを特徴とする請求項1に記載の条鋼圧延材の圧延方法。
【請求項3】
前記第3系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される第n系列(n>3)の条鋼圧延材にあっては、
(ix) 前記第n系列の条鋼圧延材のトップ速度V0'−nを計測すると共に、該実績値V0'−nと前記線速比Rとから当該条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−nを求め、
(x) 前記目標ミドル速度V1'−nが、第1〜第n−1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1〜V1'−(n−1)の何れよりも大きい場合には、全系列の条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−nとなるように前記圧延ロールの回転数を変更し、
(xi) 前記第n系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−nが、第1〜第n−1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1〜V1'−(n−1)の何れか1つより小さい場合には、前記圧延ロールの回転数を変更せずに、
それぞれの条鋼圧延材の圧延を行うことを特徴とする請求項2に記載の条鋼圧延材の圧延方法。
【請求項4】
前記圧延ロールの回転数の変更は、前記トップ速度を計測した位置よりも上流側に配備された圧延ロールに対して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の条鋼圧延材の圧延方法。
【請求項5】
前記条鋼圧延材の先端部を圧延するに際し、当該先端部が前記トップ速度を計測した位置に最も近い下流側に配備された圧延ロールに達する前に、前記上流側に配備された圧延ロールの回転数を制御することを特徴とする請求項4に記載の条鋼圧延材の圧延方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカリバーを有する圧延ロールが多数配備された圧延装置を用いて、条鋼圧延材を多系列で圧延するに際に好適な条鋼圧延材の圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延材を連続圧延して条鋼圧延材(条鋼線材や条鋼棒材)を製造する圧延装置は、上流側から、粗圧延機、中間圧延機、仕上げ圧延機、巻き取り装置が順番に配設されており、加熱炉で加熱された圧延材が上流側から導入され連続的に圧延を施された後、条鋼圧延材となり、巻き取り装置でリング状に巻線されるようになっている。
かかる圧延装置で製造される条鋼圧延材の寸法精度は、条鋼圧延材に作用するスタンド間張力に大きく影響を受ける。スタンド間張力が大きくなれば、条鋼圧延材の真円度が悪くなって偏径差が大きくなったり、逆に、張力が極端に小さくなるとスタンド間で圧延材が脈動してコブルが発生することが明らかになっている。
【0003】
したがって、条鋼圧延材のループ(たるみ)やコブルを発生することなく、製品の寸法精度向上と寸法変動低減を図るためには、圧延中の条鋼圧延材に作用する張力を過大なものとせず且つ一定となるように制御する必要がある。
このような考えに基づいた条鋼圧延材の圧延技術としては、特許文献1、特許文献2に開示されたものがある。
特許文献1の技術は、尻抜け時における最終圧延機の出側幅寸法変動に着目し、該寸法変動や影響係数などを用いて、最終圧延機や上流の圧延機におけるスタンド間張力を算出し、得られたスタンド間張力と目標張力との偏差を基に各圧延機のロール回転数やギャップ量を制御するものである。
【0004】
特許文献2の技術は、条鋼圧延材の先端部の移送速度(トップ速度)と中途部の移送速度(ミドル速度)から、製品の全長にわたる寸法が均一となる線速比を予め求めておき、実際の圧延時に、トップ速度の実測値と線速比から得られたミドル速度を基に、最終仕上げ圧延機の駆動モータの回転数を制御するものとなっている。
【特許文献1】特開昭61−30210号公報
【特許文献2】特開2004−66263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、条鋼圧延材に対する寸法精度、および表面疵に対する保証は非常に厳しくなっており、多系列圧延装置(多ストランド圧延装置)においても、スタンド間張力を制御すること無しにはユーザから求められる品質を満足することはできないのが現状である。
しかしながら、スタンド間張力を制御すべく特許文献1の技術を採用しようとしても、特許文献1は条鋼圧延材の「尻抜け時」における技術であって、圧延開始時や圧延中に適用することは困難である。仮に適用したとしても、影響係数を用いてスタンド間張力を推定しているため、推定された張力値は精度が高いものとは言い難い。加えて、制御量である圧延ロールの回転数やロールギャップ量は、張力値を基に幾つかの仮定をおいた計算式から推定されるため、やはり精度に問題があり確実な圧延機の制御を行うことが困難であった。
【0006】
また、特許文献1の技術を採用して、スタンド間張力を制御すると共に条鋼圧延材の中途部に対するロールギャップの調整を行った場合、実操業においては、条鋼圧延材の後端部の断面形状は噛み出し(オーバーフィル)が生じることあり、表面疵の原因となる。逆に、条鋼圧延材の後端部の形状を適正化するロールギャップ調整を行った場合には、張力が付与されている中途部のカリバー充填率が低くなり、条鋼圧延材の捻れに起因するミスロールや非対象性に起因するしわ疵の発生を引き起こす可能性大である。
さらに、特許文献1,2の両方とも、1つの圧延ロールで1つの条鋼圧延材を圧延する際の制御技術を開示したものと考えられ、1つの圧延ロールで複数の圧延材を圧延する多ストランド圧延機への適用が困難である。
【0007】
すなわち、圧延ロールで1条の条鋼圧延材を圧延した場合と、4条の条鋼圧延材を同時に圧延した場合には、圧延機の剛性の問題から圧延ロールのギャップが変動することで圧延材の移送速度が変化するため、1条用に設定した回転数ではスタンド間張力の変動が生じる。また、4条の同時圧延において、ミスロール等の理由でしばらく3条で圧延し、その後、再び4条で圧延するような場合には、圧延ロールのカリバーの摩耗量が各系列によって異なるため、そのままの回転数やロールギャップ量では、条鋼圧延材にたるみ(ループ)が発生し再度ミスロールを生じることもある。特に、条鋼圧延材の鋼種が変わる場合には、鋼種による延伸の変化により、初期の状態で設定した回転数ではスタンド張力が変動し、寸法変動、ループの発生によるミスロール、ガイドとの接触による表面疵などが発生しやすい。
【0008】
そこで、本発明は、複数のカリバーを有する圧延ロールが多数配備された圧延装置を用いて、条鋼圧延材を多系列で圧延するに際し、寸法精度が高く表面疵等の発生がない条鋼線材などを製造可能な条鋼圧延材の圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る条鋼圧延材の圧延方法は、複数のカリバーを有する圧延ロールが多数配備された圧延装置を用いて、条鋼圧延材を多系列で圧延するに際し、
(i) 前記条鋼圧延材の先端部の速度であるトップ速度V0と、前記条鋼圧延材の中途部の速度であるミドル速度V1とから、各系列の条鋼圧延材において最適な圧延が可能な線速比R=(V1−V0)/V0を予め求めておき、
(ii) 最初に圧延が開始される第1系列の条鋼圧延材にあっては、当該条鋼圧延材のトップ速度V0'−1を計測すると共に、該実績値V0'−1と前記線速比Rとから目標ミドル速度V1'−1を求め、当該条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−1となるように上流側の圧延ロールの回転数を設定し、
(iii) 前記第1系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される第2系列の条鋼圧延材にあっては、当該条鋼圧延材のトップ速度V0'−2を計測すると共に、該実績値V0'−2と前記線速比Rとから目標ミドル速度V1'−2を求め、
(iv) 前記第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−2が、第1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1より大きい場合には、全系列の条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−2となるように前記圧延ロールの回転数を変更し、
(v) 前記第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−2が、第1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1より小さい場合には、前記圧延ロールの回転数を変更せずに、
それぞれの条鋼圧延材の圧延を行うことを特徴とする。
【0010】
こうすることで、多ストランド圧延装置を用いて2系列の条鋼圧延材を圧延した場合であっても、無張力圧延となる条鋼圧延材の先端部と張力圧延となる中途部の移送速度との差を可及的に小さくすることができて、スタンド間張力を最小に抑えることができるようになる。したがって、先端部〜中途部〜後端部に亘る寸法偏差が極力小さく、且つ表面疵等の発生がない条鋼圧延材を製造することが可能となる。
好ましくは、前記第1及び第2系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される第3系列の条鋼圧延材にあっては、
(vi) 前記第3系列の条鋼圧延材のトップ速度V0'−3を計測すると共に、該実績値V0'−3と前記線速比Rとから当該条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−3を求め、
(vii) 前記目標ミドル速度V1'−3が、第1及び第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1,V1'−2の何れよりも大きい場合には、全系列の条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−3となるように前記圧延ロールの回転数を変更し、
(viii) 前記第3系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−3が、第1及び第2系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1,V1'−2の何れか1つより小さい場合には、前記圧延ロールの回転数を変更せずに、
それぞれの条鋼圧延材の圧延を行うとよい。
【0011】
こうすることで、多ストランド圧延装置を用いて3系列の条鋼圧延材を圧延した場合であっても、無張力圧延となる条鋼圧延材の先端部と張力圧延となる中途部の移送速度との差を可及的に小さくすることができて、スタンド間張力を最小に抑えることができるようになる。したがって、先端部〜中途部〜後端部に亘る寸法偏差が極力小さく、且つ表面疵等の発生がない条鋼圧延材を製造することが可能となる。
さらに好ましくは、前記第3系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される第n系列(n>3)の条鋼圧延材にあっては、
(ix) 前記第n系列の条鋼圧延材のトップ速度V0'−nを計測すると共に、該実績値V0'−nと前記線速比Rとから当該条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−nを求め、
(x) 前記目標ミドル速度V1'−nが、第1〜第n−1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1〜V1'−(n−1)の何れよりも大きい場合には、全系列の条鋼圧延材の中途部が目標ミドル速度V1'−nとなるように前記圧延ロールの回転数を変更し、
(xi) 前記第n系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−nが、第1〜第n−1系列の条鋼圧延材に対する目標ミドル速度V1'−1〜V1'−(n−1)の何れか1つより小さい場合には、前記圧延ロールの回転数を変更せずに、
それぞれの条鋼圧延材の圧延を行うとよい。
【0012】
こうすることで、多ストランド圧延装置を用いてn系列(n>3)の条鋼圧延材を圧延した場合であっても、無張力圧延となる条鋼圧延材の先端部と張力圧延となる中途部の移送速度との差を可及的に小さくすることができて、スタンド間張力を最小に抑えることができるようになる。したがって、先端部〜中途部〜後端部に亘る寸法偏差が極力小さく、且つ表面疵等の発生がない条鋼圧延材を製造することが可能となる。
なお、前記圧延ロールの回転数の変更は、前記トップ速度を計測した位置よりも上流側に配備された圧延ロールに対して行うとよい。
【0013】
このようなアップストリームを行うことで、可及的速やかに、条鋼圧延材の中途部を目標ミドル速度とすることができるようになる。
前記条鋼圧延材の先端部を圧延するに際し、当該先端部が前記トップ速度を計測した位置に最も近い下流側に配備された圧延ロールに達する前に、前記上流側に配備された圧延ロールの回転数を制御することは非常に好適である。
こうすることで、条鋼圧延材の先端部の圧延を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のカリバーを有する圧延ロールが多数配備された圧延装置を用いて、条鋼圧延材を多系列で圧延するに際し、寸法精度が高く表面疵等の発生がない条鋼線材などを製造可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
図1、図2に示すものは、条鋼線材などの条鋼圧延材1を熱間圧延する圧延装置2の概要である。
この圧延装置2は、上流側から、複数の粗圧延機3から構成される粗圧延列4、複数の中間圧延機5から構成される第1中間圧延列6、複数の圧延機から構成される第2中間圧延列7、仕上げ圧延機8、巻き取り装置9(レイングヘッド)が順番に配設されてなる。図示はしていないものの、第2中間圧延列7と仕上げ圧延機8の間には、水冷装置等が設けられている。加熱炉10で加熱されたビレットがこの圧延装置2の上流側から導入され連続的に圧延を施された後、条鋼圧延材1となり、巻き取り装置9でリング状に巻線されるようになっている。
【0016】
粗圧延列4は、7台の粗圧延機3(#1圧延機〜#7圧延機)で構成されており、第1中間圧延列6は、4台の中間圧延機5(#8圧延機〜#11圧延機)で構成されている。各圧延機3,5は圧延ロール14(水平ロール)とそれを駆動する駆動モータを有している。
第2中間圧延列7には、ブロックミルが採用され、複数列のワークロール(水平ロールと垂直ロールの組み合わせ)が直列状に配置されており、これらワークロールを回転駆動させるための単一の駆動モータが設けられている。仕上げ圧延機8には、サイジングミルが採用され、複数列のワークロール(水平ロールと垂直ロールの組み合わせ)が直列状に配置されており、これらワークロールを回転駆動する単一の駆動モータが設けられている。
【0017】
さらに、圧延装置2には、各圧延機3,5の駆動モータや巻き取り装置9の駆動モータなどを制御する制御部11が設けられている。制御部11は、圧延装置2に備えられたプロセスコンピュータなどからなる。
粗圧延列4の各圧延機間(圧延スタンド間)、第1中間圧延列6の各圧延機間(圧延スタンド間)には、条鋼圧延材1の移送速度を測定するための線速度測定手段12が設けられている。この線速度測定手段12は、レーザドップラ線速計から構成されている。
レーザドップラ線速計12が設けられた場所には、条鋼圧延材1の先端部が到達したことを検出する先端検出手段13が設けられている。この先端検出手段13は、例えば、高温の条鋼圧延材1を検知することができる赤外線検出センサにより構成されている。
【0018】
本実施形態の圧延装置2は、多ストランド圧延装置であって、1つの圧延ロール14で複数の条鋼圧延材1を圧延可能なものとなっている。具体的には、1つの圧延ロール14に4つのカリバー(孔型)を備えており、一度に4系列の条鋼圧延材1を圧延可能である。
このように多系列の条鋼圧延材1を圧延する際には、最終製品形状を所定品質のものにし且つ表面疵を発生させないために、圧延ロール14の回転数を制御し圧延時における条鋼圧延材1のスタンド間張力を的確にコントロールする必要がある。制御部11にはかかる制御機能が備えられている。
【0019】
図3,図4には、制御部11で行われる条鋼圧延材の圧延方法すなわち圧延ロール14の回転数の制御方法が示されている。
以下、説明を簡略化するために、#6圧延機と#7圧延機間に設けられたレーザドップラ線速計12に着目し、制御部11は、その計測値を基に圧延ロール14の回転数を制御するものとする。当然、同じ考え方を全てのレーザドップラ線速計12に適用できる。
まず、条鋼圧延材1を圧延するにあたり、前もって、条鋼圧延材1の圧延条件(圧延速度、温度、圧下率、鋼種など)を基に、最終製品の寸法形状・寸法偏差が所定値内であって表面疵の発生が少なくなる「線速比R」を算出する。かかる線速比Rの算出においては、過去の圧延実績を纏めたデータテーブルや実験結果を用いるとよい。
【0020】
線速比Rとは、条鋼圧延材1の先端部の移動速度V0(以降、トップ速度と呼ぶこともある)と、条鋼圧延材1の中途部の移動速度V1(以降、ミドル速度と呼ぶこともある)とから求められるもので、

R=(V1−V0)/V0 ・・・(1)

で算出される[S1]。本実施形態の場合、ミドル速度V1は、トップ速度V0を計測した位置(レーザドップラ線速計12の設置位置)に最も近い下流側の圧延機(#7)へ、条鋼圧延材1が噛み込んだ後の速度としている。
【0021】
式(1)で計算された値に100をかけ、百分率で表すようにしてもよい。線速比Rの絶対値が大きいということは、トップ速度とミドル速度との差が大きく、先端部と中途部との間に過度の張力が加わっていたり、ループ(たるみ)やコブルが生じている状況を示している。逆に、線速比Rの絶対値が小さいということは、トップ速度をミドル速度との差が小さく、先端部と中途部との間に働いている張力が最小限のものとなっていることを示している。したがって、線速比Rを適切に制御すれば、条鋼圧延材1に加わっているスタンド間張力をコントロールでき、ひいては、製品の寸法形状の制御が可能である。
【0022】
その後、最初に第1系列の条鋼圧延材1(単に、第1系列と呼ぶこともある)を圧延する。その際、図3(a)に示すように、粗圧延列4の#6〜#7スタンド間に設けられたの先端検出手段13により第1系列の先端部を検出して、レーザドップラ線速計12でトップ速度の実績値V0'−1を計測する。そして、実績値V0'−1と第1系列の線速比R1とから、式(2)を用いて、目標ミドル速度V1'−1を求めるようにする。

V1'−1=V0'−1+V0'−1×R1 ・・・(2)

続いて、条鋼圧延材1の先端部がレーザドップラ線速計12に最も近い下流の圧延機(#7圧延機)に達するまでに、第1系列の中途部の移送速度をレーザドップラ線速計12により計測し、その速度が先ほど算出した目標ミドル速度V1'−1と異なっている場合には、レーザドップラ線速計12に最も近い上流の圧延機(#6圧延機)及びそれより上流側の圧延機(#1〜#5圧延機)の各駆動モータを制御し圧延ロール14の周速を変化させて、各位置における第1系列の移送速度が目標ミドル速度V1'−1となるようにする(アップストリーム)。[S2〜S4]
次に、第2系列の条鋼圧延材1(単に、第2系列と呼ぶこともある)を圧延する。第2系列は、第1系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される。その際、図3(b)に示す如く、先端検出手段13により第2系列の先端部を検出して、レーザドップラ線速計12でトップ速度の実績値V0'−2を計測する。そして、実績値V0'−2と第2系列の線速比R2とから、式(3)用いて目標ミドル速度V1'−2を求めるようにする。[S5,S6]

V1'−2=V0'−2+V0'−2×R2 ・・・(3)

続いて、第2系列の先端部がレーザドップラ線速計12に最も近い下流の圧延機(#7圧延機)に達するまでに、中途部の移送速度をレーザドップラ線速計12により計測し、その速度が先ほど算出した目標ミドル速度V1'−2と異なっている場合には、目標ミドル速度V1'−2と第1系列の目標ミドル速度V1'−1とを比較する。[S7]
S7の結果、第2系列の目標ミドル速度V1'−2が第1系列の目標ミドル速度V1'−1より大きい場合には、前記第1及び第2系列の中途部の移送速度が目標ミドル速度V1'−2となるように、#6圧延機の圧延ロール14の回転数を増加させるようにする。[S8]
S7の結果、第2系列の目標ミドル速度V1'−2が第1系列の目標ミドル速度V1'−1より小さい場合には、#6圧延機の圧延ロール14の回転数はそのままとし、第1及び第2系列の中途部の移送速度を目標ミドル速度V1'−1とする。[S9]
以下、同様に第3系列の条鋼圧延材1、第4系列の条鋼圧延材1を圧延する(以降、単に第3系列、第4系列と呼ぶこともある)。第3系列は、第2系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始され、第4系列は、第3系列の条鋼圧延材の圧延開始後に圧延が開始される。
【0023】
すなわち、図3(c)に示すように、レーザドップラ線速計12により、トップ速度の実績値V0'−3を計測する。そして、実績値V0'−3と第3系列の線速比R3とから、式(4)を用いて目標ミドル速度V1'−3を求めるようにする。[S10,S11]

V1'−3=V0'−3+V0'−3×R3 ・・・(4)

その後、目標ミドル速度V1'−3が、第1,第2系列の目標ミドル速度V1'−1,V1'−2の何れよりも大きい場合には、全系列の中途部の移送速度が目標ミドル速度V1'−3となるように、第3系列の先端部が#7圧延機に達しない間に#6圧延機の圧延ロール14の回転数を増加させるようにする。[S12,S13]
第3系列の目標ミドル速度V1'−3が、他系列の目標ミドル速度V1'−1,V1'−2のいずれか一方より小さい場合には、#6圧延機の圧延ロール14の回転数はそのままとする。[S12,S14]
第4系列を圧延する場合は、図3(d)のように、レーザドップラ線速計12により、トップ速度の実績値V0'−4を計測する。そして、実績値V0'−4と第4系列の線速比R4とから、式(5)を用いて目標ミドル速度V1'−4を求めるようにする。[S15,S16]

V1'−4=V0'−4+V0'−4×R4 ・・・(5)

その後、目標ミドル速度V1'−3が、第1〜第3系列の目標ミドル速度V1'−1〜V1'−3のどれよりも大きい場合には、前記第1〜第3系列が目標ミドル速度V1'−4となるように、第4系列の先端部が#7圧延機に達するまでに、#6圧延機の圧延ロール14の回転数を増加させるようにする。[S17,S18]
第4系列に対する目標ミドル速度V1'−3が、第1〜第3系列の目標ミドル速度V1'−1,V1'−2,V1'−3のいずれか1つよりも小さい場合には、#6圧延機の圧延ロール14の回転数はそのままとしておく。[S17,S19]
このように圧延ロール14の回転数を制御することで、線速度を計測しているスタンド間に対して、その上流の圧延ロール14については、4系列の線速比R1〜R4から算出されるロール速度の内、最も早いロール速度となり、下流については最も遅いロール速度となる。
【0024】
かかる条鋼圧延材の圧延方法、言い換えるならば圧延ロール14の回転数制御方法は、無張力圧延となる条鋼圧延材1の先端部と、張力圧延となる中途部との線速度を計測・制御することによって、先端部〜中途部の圧延時における「スタンド間張力」を最小に抑える技術となっている。この圧延方法は、条鋼圧延材1の先端部の圧延時のみに適用されるものではなく、引き続き、条鋼圧延材1の中途部に対しても適用可能である。こうすることで、条鋼圧延材1の全長に亘って線速比Rすなわちスタンド間張力を最小に抑えることができ、条鋼圧延材1の先端部〜中途部〜後端部に至る寸法偏差は所定値内に収まるようになる。
【0025】
別の観点から考えるならば、本発明に係る条鋼圧延材の圧延方法は、4系列の線速比(スタンド間張力)のバラツキを抑えるべく、4系列の内、最も小さい線速比を予め設定し、所定の圧延ロール14をかかる線速比に基づいた回転数とすることで、全ての系列でループを出すことなく、最も小さい張力で圧延することが可能とするものである。そうすることで、鋼種変わりや圧延チャンス毎のバラツキに対応した張力制御が行われ、常に安定した条鋼圧延材1の断面形状を得ることが可能となる。
なお、条鋼圧延材1の中途部の移送速度を目標ミドル速度とするに際し、予め求めておいた「ロール周速度と条鋼圧延材の移送速度との関係」からロール周速Vrを求め、さらに、圧延機の増速比G、ロール径Dから式(6)を用いて駆動モータの回転数Mを算出するとよい。

M=Vr/(G×π×D) ・・・(6)

以上述べた条鋼圧延材の圧延方法は、条鋼圧延材1が5,6・・・n系列と増えた場合であっても同様に適用可能である。
【実施例】
【0026】
図5には、本発明に係る条鋼圧延材1の圧延方法を用いて、4系列の条鋼圧延材1を圧延した場合の実施例が示してある。実験条件は以下の通りである。

・鋼種:JIS SCM435
・製品線径:φ5.5
・圧延速度:80m/s
・ビレット径:□155
・圧延装置入側の温度:1000℃

具体的には、図1,図2に示す圧延装置2の如く、1系列あたり、#1〜#11スタンド間に10台のレーザドップラ線速計12を設置して、前述した条鋼圧延材1の圧延方法を行った結果である。
【0027】
条件Aは、線速比Rに基づく制御を全く行わない従来法による結果であり、条件Bは、本発明の圧延方法を#1〜#8圧延スタンド間(粗圧延列4)に適用した場合であり、条件Cは、本発明の圧延方法を#7〜#11圧延スタンド間(第1中間圧延列6)に適用した場合である。条件Dは、#1〜#11圧延スタンド間の全てに適用した場合である。
条件Aの従来法では、張力制御装置の存在する#12以降の圧延機があるにも関わらず、上流側でのスタンド間張力の影響により、4系列の中3系列の寸法公差が「±0.1mm以下」を満たすことができないばかりか、0.02mm〜0.03mmの表面疵が存在したり(図中△)、0.03mm以上の表面疵が発生した(図中×)。
【0028】
一方、条件B,Cの場合、条鋼圧延材1全長に亘る寸法公差は±0.1mm以下であって、全ての場合で0.02mm以上の表面疵は発生せず、従来法と比較して寸法精度、表面品質は大きく向上する。
条件Dの場合、条鋼圧延材1全長に亘る寸法公差は±0.1mm以下であって、全てにおいて0.01mm以上の表面疵は発生せず、従来法と比較して寸法精度、表面品質が著しく向上する結果となった。すなわち、本発明の条鋼圧延材の圧延方法を、全てのスタンド間に適用することで、寸法偏差もなく表面疵もほとんど発生しない条鋼圧延材を製造することが可能となる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
本発明に係る条鋼圧延材の圧延方法は、条鋼圧延材1の先端部の圧延に限定されるものではなく、条鋼圧延材1の後端部(尻抜け)にも適用可能である。後端部の線速度(ボトム速度)を計測して線速比Rを求めた場合、制御は次材のプリセットに適用するようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】条鋼圧延材の圧延装置の正面図である。
【図2】条鋼圧延材の圧延装置の平面図である。
【図3】条鋼圧延材の先端部の圧延状況を示した図である。
【図4】本発明に係る条鋼圧延材の圧延方法を示したフローチャートである。
【図5】実施例の結果を示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 条鋼圧延材
2 圧延装置
4 粗圧延列
6 第1中間圧延列
7 第2中間圧延列
8 仕上げ圧延機
9 巻き取り装置(レイングヘッド)
11 制御部
12 線速度測定手段(レーザドップラ線速計)
13 先端検出手段
14 圧延ロール
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年8月8日(2006.8.8)
【代理人】 【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄

【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄


【公開番号】 特開2008−36686(P2008−36686A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−215842(P2006−215842)