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【発明の名称】 圧延機及びロール冷却時間の設定方法
【発明者】 【氏名】浅田勝義

【氏名】藤村英徳

【氏名】山岸伊佐武

【氏名】前田英樹

【要約】 【課題】ワークを冷間圧延する圧延機においてロット間のロール冷却を行う場合に、高価な設備投資を必要とせずに、板形状不具合の発生及び生産性の低下を防止する適切なロール冷却時間を設定することができる圧延機を提供することを目的とする。

【構成】圧延材の尾端の通過後から次の圧延までの間に圧延ロールの冷却工程を行う圧延機100におけるロール冷却時間の設定方法において、圧延材Wの尾端の通過後における圧延ロールの熱膨張量を求め、前記求めた圧延ロールの熱膨張量と前記圧延ロールの冷却工程に係る過去の実績情報とに基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延材の尾端の通過後から次の圧延までの間に圧延ロールの冷却工程を行う圧延機におけるロール冷却時間の設定方法において、
圧延材の尾端の通過後における前記圧延ロールの熱膨張量を求める第一工程と、
前記求めた圧延ロールの熱膨張量と前記圧延ロールの冷却工程に係る過去の実績情報とに基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定する第二工程と、
を有することを特徴とするロール冷却時間の設定方法。
【請求項2】
前記第一工程は、圧延材の尾端の出側板厚を測定し、測定した出側板厚に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める工程であることを特徴とする請求項1に記載のロール冷却時間の設定方法。
【請求項3】
前記第一工程は、圧延材の尾端の通過後に前記圧延ロールのキスロールを行い、当該キスロール開始時における前記圧延ロールの接触圧を測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める工程であることを特徴とする請求項1に記載のロール冷却時間の設定方法。
【請求項4】
前記第一工程は、圧延材の尾端の出側板厚を測定し、測定した出側板厚に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める第一A工程と、圧延材の尾端の通過後に前記圧延ロールのキスロールを行い、当該キスロール開始時における前記圧延ロールの接触圧を測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める第一B工程とを含み、
前記第二工程は、前記第一A工程で求めた圧延ロールの熱膨張量及び前記第一B工程で求めた圧延ロールの熱膨張量と、前記過去の実績情報とに基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定することを特徴とする請求項1に記載のロール冷却時間の設定方法。
【請求項5】
前記過去の実績情報は、過去に実施された前記圧延ロールの冷却工程において記録された実績情報であって、圧延材の尾端の出側板厚に基づいて求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、圧延材の尾端の通過後に行った前記圧延ロールのキスロール開始時における前記圧延ロールの接触圧に基づいて求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、圧延ロールの冷却時間と、トラブル・不具合の有無とを含む実績情報であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のロール冷却時間の設定方法。
【請求項6】
前記過去の実績情報は、過去に実施された前記圧延ロールの冷却工程において記録された実績情報であって、圧延材の尾端の通過後に行った前記圧延ロールのキスロール時における前記圧延ロールの接触圧に基づいて一定間隔で求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、圧延ロールの冷却時間と、トラブル・不具合の有無とを含む実績情報であり、
前記第一工程は、圧延材の尾端の通過後に行う前記圧延ロールのキスロールの状態において、当該キスロール時における前記圧延ロールの接触圧を一定間隔で順次測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を順次演算して求める工程であり、
前記第二工程は、前記第一工程で求めた圧延ロールの熱膨張量と、前記過去の実績情報に一定間隔で記録された圧延ロールの熱膨張量とを順次比較し、比較結果に基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定する工程であることを特徴とする請求項1に記載のロール冷却時間の設定方法。
【請求項7】
前記過去の実績情報は、過去に実施された前記圧延ロールの冷却工程において記録された実績情報であって、圧延ロールの冷却時間と、当該圧延ロールの冷却時間終了時における前記圧延ロールのキスロール時における前記圧延ロールの接触圧に基づいて求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、トラブル・不具合の有無とを含む実績情報であり、
前記第一工程は、圧延材の尾端の通過後に行う前記圧延ロールのキスロールの状態において、当該キスロール時における前記圧延ロールの接触圧を一定間隔で順次測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を順次演算して求める工程であり、
前記第二工程は、前記第一工程で求めた圧延ロールの熱膨張量と、前記過去の実績情報に含まれる前記圧延ロールの冷却時間終了時における圧延ロールの熱膨張量とを順次比較し、比較結果に基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定する工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のロール冷却時間の設定方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のロール冷却時間の設定方法を実行することを特徴とする圧延機。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のロール冷却時間の設定方法を圧延機のコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム等のワーク(圧延材)を冷間圧延する場合におけるロット間のロール冷却時間を最適化する圧延機及びロール冷却時間の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延機の圧延ラインにおいて、アルミニウム等のワーク(圧延材)の冷間圧延を続けていると、圧延ロールの熱膨張量によって、中伸び、耳伸び等の板形状不具合がワークに発生する。そこで、板形状不具合の発生を防止するために、圧延機の圧延ラインにおいては、ワークの尾端の通過後から次のワークの圧延までの間(ロット間)にロール冷却が行われる。
【0003】
従来、ロット間のロール冷却を行う場合には、冷却時間、スプレー流量、スプレーパターン等のロール冷却条件を作業者の経験に基づいて設定する場合が多かった。このように、作業者の経験に基づいてロール冷却条件を設定する場合には、各作業者によって条件設定にバラツキがある。このため、ロール冷却が不十分の場合には、圧延機のアクチュエーター(ワークロールベンダー)設定不適切による板形状不具合が発生し、一方、ロール冷却時間を長くした場合には、長時間冷却による生産性の低下を引き起こすことが考えられる。
【0004】
作業者の経験に基づくロール冷却条件による板形状不具合の発生や生産性の低下を防止するためには、高性能の計算機及び設備を用いて、オンライン計算機によるモデル計算やオンラインでの実際の測定に基づいてロール冷却時間を設定し、ロール冷却時間を最適化することが考えられる。なお、本発明に関連する先行技術文献を発見することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で示したように、ロール冷却時間の最適化のために、高性能の計算機や設備を用いる場合には、これらの計算機や設備が高額であるので、高価な設備投資を必要とし、これによって、生産コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、これらの事情を考慮してなされたものであり、ワークを冷間圧延する圧延機においてロット間のロール冷却を行う場合に、高価な設備投資を必要とせずに、板形状不具合の発生及び生産性の低下を防止する適切なロール冷却時間を設定することができる圧延機及びロール冷却時間の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するべく本発明は、圧延材の尾端の通過後から次の圧延までの間に圧延ロールの冷却工程を行う圧延機におけるロール冷却時間の設定方法において、圧延材の尾端の通過後における前記圧延ロールの熱膨張量を求める第一工程と、前記求めた圧延ロールの熱膨張量と前記圧延ロールの冷却工程に係る過去の実績情報とに基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定する第二工程とを有することを特徴とするロール冷却時間の設定方法である。
【0008】
なお、前記第一工程は、圧延材の尾端の出側板厚を測定し、測定した出側板厚に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める工程、または、圧延材の尾端の通過後に前記圧延ロールのキスロールを行い、当該キスロール開始時における前記圧延ロールの接触圧を測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める工程であることを特徴とする。
【0009】
また、前記第一工程は、圧延材の尾端の出側板厚を測定し、測定した出側板厚に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める第一A工程と、圧延材の尾端の通過後に前記圧延ロールのキスロールを行い、当該キスロール開始時における前記圧延ロールの接触圧を測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を演算して求める第一B工程とを含み、前記第二工程は、前記第一A工程で求めた圧延ロールの熱膨張量及び前記第一B工程で求めた圧延ロールの熱膨張量と、前記過去の実績情報とに基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定することを特徴とする。
【0010】
なお、前記過去の実績情報は、過去に実施された前記圧延ロールの冷却工程において記録された実績情報であって、圧延材の尾端の出側板厚に基づいて求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、圧延材の尾端の通過後に行った前記圧延ロールのキスロール開始時における前記圧延ロールの接触圧に基づいて求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、圧延ロールの冷却時間と、トラブル・不具合の有無とを含む実績情報であり、前記第二工程は、前記第一工程で求めた圧延ロールの熱膨張量と、前記過去の実績情報に記録された圧延ロールの熱膨張量とを比較し、比較結果に基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定する工程であることを特徴とする。
【0011】
また、前記過去の実績情報は、過去に実施された前記圧延ロールの冷却工程において記録された実績情報であって、圧延材の尾端の通過後に行った前記圧延ロールのキスロール時における前記圧延ロールの接触圧に基づいて一定間隔で求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、圧延ロールの冷却時間と、トラブル・不具合の有無とを含む実績情報であり、前記第一工程は、圧延材の尾端の通過後に行う前記圧延ロールのキスロールの状態において、当該キスロール時における前記圧延ロールの接触圧を一定間隔で順次測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を順次演算して求める工程であり、前記第二工程は、前記第一工程で求めた圧延ロールの熱膨張量と、前記過去の実績情報に一定間隔で記録された圧延ロールの熱膨張量とを順次比較し、比較結果に基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定する工程であることを特徴とする。
さらに、前記過去の実績情報は、過去に実施された前記圧延ロールの冷却工程において記録された実績情報であって、圧延ロールの冷却時間と、当該圧延ロールの冷却時間終了時における前記圧延ロールのキスロール時における前記圧延ロールの接触圧に基づいて求めた前記圧延ロールの熱膨張量と、トラブル・不具合の有無とを含む実績情報であり、前記第一工程は、圧延材の尾端の通過後に行う前記圧延ロールのキスロールの状態において、当該キスロール時における前記圧延ロールの接触圧を一定間隔で順次測定し、測定した当該接触圧に基づいて前記圧延ロールの熱膨張量を順次演算して求める工程であり、前記第二工程は、前記第一工程で求めた圧延ロールの熱膨張量と、前記過去の実績情報に含まれる前記圧延ロールの冷却時間終了時における圧延ロールの熱膨張量とを順次比較し、比較結果に基づいて、前記圧延ロールの冷却時間を設定する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワークを冷間圧延する圧延機においてロット間のロール冷却を行う場合に、高価な設備投資を必要とせずに、板形状不具合の発生及び生産性の低下を防止する適切なロール冷却時間を設定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態である圧延機及びロール冷却時間の設定方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態である圧延機100の概略構成を示す図である。
【0015】
圧延機100は、アルミニウム等のワーク(圧延材)Wを冷間圧延する6段式(多段式)圧延機であり、コントローラ(図示せず)と、操作部(図示せず)と、出側X線厚み計11と、PLC12と、油圧圧下制御盤13と、油圧圧下装置14と、ロードセル15と、上下各一対のワークロール21、22と、上下各一対の中間ロール23、24と、上下各一対のバックアップロール25、26と、巻取機30とを有する。
【0016】
図2は、コントローラに内蔵されたROMに記憶されている制御プログラムの構成を示す図である。
図3は、コントローラに内蔵された記憶部に格納されている過去の実績データベースDBを示す図である。
【0017】
コントローラは、操作部からの操作情報に基づいて、内蔵されたROMに記憶されている制御プログラムに従って、圧延機100全体を制御する制御装置である。操作部は、オペレータからの各種操作情報を入力し、圧延ロール冷却の設定時間等の各種情報を表示する。記憶部は、過去の実績データベースDBを格納すると共に、設定された圧延ロールの冷却時間を格納する。
【0018】
過去の実績データベースDBには、過去に実施されたロット間の圧延ロール冷却工程において、ワークの材質及びワークのサイズ毎に記録された実績情報が格納されている。過去の実績情報として、圧延ロールの冷却中における推定熱膨張量及びその変化量、冷却後の推定熱膨張量、ロール冷却時間、圧延トラブル・不具合の有無等を、ワークの圧延の開始から終了までの一定期間収集したものを格納する。図3には、「ワークの材質」が「アルミニウム」、「ワークのサイズ」が「1.1mm厚×1560mm幅」の場合における過去の実績データベースDBを一例として示し、過去の実績については冷却時間が短いものから順番に並べる。
【0019】
出側X線厚み計11は、圧延機100の出側に設けられたX線板厚測定装置であり、圧延後のワークWの出側板厚hを測定し、測定した出側板厚hの情報をPLC12に出力する。
【0020】
PLC12は、予め記憶されたプログラムに基づいてシーケンス制御を実行する自動板厚制御装置(AGC)であり、出側X線厚み計11が出力した出側板厚hの情報に応じた制御信号を油圧圧下装置14に出力する。なお、モニタAGCは、出側X線厚み計11が出力した出側板厚hを、ギャップにフィードバックすることで板厚の絶対値を安定させる制御である。
【0021】
油圧圧下制御盤13は、油圧圧下装置14に接続され、PLC12から出力された制御信号に基づいて油圧圧下装置14に供給する作動油圧を制御する。
【0022】
油圧圧下装置14は、バックアップロール26のロール軸の下方に配置され、油圧圧下制御盤13の制御により供給される作動油圧によって、バックアップロール26に圧延荷重を加える油圧圧下装置である。
【0023】
ロードセル15は、バックアップロール26の圧延荷重を受けるバックアップロール25に取付けられ、圧延荷重を測定する荷重計である。また、キスロールの状態においては、キスロール時におけるワークロール21、22の接触圧を測定する。なお、キスロールとは、ワークのない状態でワークロール21、22同士を接触させてロールを回転させることである。また、ロードセル15は、測定した圧延荷重(接触圧)の情報をコントローラに出力する。
【0024】
ワークロール21、22は、ワークWを挟み込んで圧延し、圧延機100の出側においてワークWを所望とする製品仕様の板厚とするワークロールである。
【0025】
バックアップロール25、26は、中間ロール23、24を介してワークロール21、22に圧延荷重を加えるバックアップロールである。
【0026】
ワークロール21、22及び中間ロール23、24の軸の各両端部には、それぞれ上下一対のロールベンダ(図示せず)が配設され、各ロールベンダによってワークロール21、22又は中間ロール23、24の軸をワークWに対して凸状又は凹状にベンディングする。
【0027】
巻取機30は、ワークロール21、22によって圧延されたワークWを巻き取る巻取機である。
【0028】
圧延機100の入側には、流量制御が可能な電磁ソレノイド弁等の流量制御手段を備えた潤滑・冷却用クーラントノズル(図示せず)が複数設けられている。潤滑・冷却用クーラントノズルは、ワークロール21、22、中間ロール23、24に向かって所定量のクーラントを噴射する。
【0029】
次に、圧延機100の動作について説明をする。
図4は、圧延機100における制御動作を示す制御フローである。
図5は、圧延機100における制御動作を示すフローチャートである。
【0030】
記憶部には、下記のステップS11で圧延ロールの冷却時間が設定されるまでの間、予め設定された圧延ロールの冷却時間を格納しておく(例えば、10分)。
【0031】
ワークWの圧延が終了し、ワークWの尾端がワークロール21、22を通過した後に(S1)、以下に示す運転条件、起動条件の状態になるように、オペレータが操作部から圧延機100を操作する。
【0032】
運転条件は、ミル空転中(圧延中でないこと)とする。また、起動条件は、(1)ミル速ゼロとし、(2)圧延荷重オフとする。
【0033】
ワークWの圧延が終了した後に(S1)、下記の式1を用いて、ワークWの尾端について出側X線厚み計11が測定した出側板厚hに基づいて、ワークロール21、22のGMC(熱膨張量)を演算し(S2)、演算して求めたGMC(熱膨張量)を過去の実績データベースDBの「現在の実績」に格納する。なお、各実施の形態では、ワークWにおける幅方向の真中部分の出側板厚hに基づいて圧延ロールの冷却時間を設定する動作について説明する。ただし、ワークWにおける幅方向の真中部分以外の部分の出側板厚hに基づいて圧延ロールの冷却時間を設定するようにしてもよい。
【0034】
GMC=S0+P/K―h……(式1)
h:出側板厚(mm)、S0:ロールギャップ(mm)、P:圧延荷重(ton)、GMC:熱膨張量(mm)、K:ミル定数(ton/mm)
【0035】
圧延終了後において、運転条件、起動条件の状態になっていることを確認後、オペレータが操作部において起動PBを押下する(S3)。起動PBが押下されると(S3)、起動ランプを点灯させると共に、各ロールベンダはバランスの状態とし、ワークロール21、22、中間ロール23、24に対して潤滑・冷却用クーラントノズルから所定量のクーラントを噴射させ(S4)、120mpmでミルを空転させる(S5)。なお、冷却条件は基本的に一定とする。
【0036】
続いて、WS(ワークサイド)及びDS(ドライブサイド)の各々について圧下零調時の圧下位置となるまでワークロール21、22間のギャップを閉め(S6)、キスロールを開始し、設定された圧延ロールの冷却時間、キスロールの状態を続ける(S7)。
【0037】
なお、キスロールの状態においては、キスロール時におけるワークロール21、22の圧延荷重(接触圧)を測定し(S8)、測定した圧延荷重に基づいて下記の式2を用いて、GMC(熱膨張量)を演算する(S9)。演算して求めたGMC(圧延荷重に基づくGMC)を過去の実績データベースDBの「現在の実績」に格納する(S10)。
【0038】
GMC=ΔPs/K……(式2)
ΔPs:零調荷重と、圧下零調時の圧下位置としたときの圧延荷重との差(ton)、GMC:熱膨張量(mm)、K:ミル定数(ton/mm)
【0039】
例えば、ギャップ0調(300ton)としたときの油柱位置までギャップを締めた場合において、測定した圧延荷重が500tonであった場合には、500−300=200tonが熱膨張量によるものと推定されるので、現在の熱膨張量を200/K(ton/mm)と推定することができる。
【0040】
続いて、キスロールの状態において、過去の実績データベースDBに格納されている過去の実績情報の「尾端に基づくGMC」の値の中から、「現在の実績」の「尾端に基づくGMC」の値以上の値となっている実績情報を選択する。続いて、選択した実績情報の中で、圧延トラブル・不具合が「無」であり、かつ「冷却時間」が最短である実績情報に係る「冷却時間」を選択する。続いて、記憶部に予め設定されている圧延ロールの冷却時間「10分」の代わりに、選択した「冷却時間」を設定する(S11)。
【0041】
例えば、演算したGMCが「100(μm)」だった場合、図3に示す実績情報1〜4の中から、GMCの値が「100」以上である実績情報1、2、4を選択する。続いて、選択した実績情報1、2、4の中で、圧延トラブル・不具合が「無」であり、かつ「冷却時間」が最短である実績情報4に係る冷却時間「8:00」を選択し、選択した冷却時間「8:00(8分)」を圧延ロールの冷却時間として設定する(S11)。
【0042】
なお、キスロールの状態においては、キスロール時におけるワークロール21、22の圧延荷重(接触圧)を順次測定し(S8)、測定した圧延荷重に基づいて(式2)を用いて、GMCを演算する(S9)(nは3以上の自然数)。続いて、演算して求めたGMCを過去の実績データベースDBに現在の実績として順次格納する(S10)。このように、ステップS8〜S10をループする場合には、ステップS11の動作を省略することができる。
【0043】
設定した圧延ロールの冷却時間(8分)が経過すると(S12)、WS及びDSの各々についてギャップを開け(S13)、ミルを停止させ(S14)、潤滑・冷却用クーラントノズルからのクーラントの噴射を停止させ(S15)、起動ランプを消灯させる。なお、圧延ロール冷却の動作中において、操作部には、圧延ロール冷却の設定時間及び残り時間を表示させる。また、設定した圧延ロールの冷却時間の終了前の20秒になったらブザー音を発生させ、ミルの停止までブザー音を継続して発生させる。
【0044】
設定した圧延ロールの冷却時間が経過した後に(S12)、圧延ロールの冷却時間の経過直前に演算して求めたGMCを過去の実績データベースDBの「現在の実績」の「冷却後GMC」に格納する。また、「現在の実績」の「圧延荷重に基づくGMC」に格納した値と、「現在の実績」の「冷却後GMC」に格納した値との差を演算し、演算して求めた値を「現在の実績」の「変化量ΔGMC」に格納する。
【0045】
なお、圧延終了後からオペレータが起動PBを押下するまでの間は、ワークロール21、22、中間ロール23、24に対するクーラントの噴射を停止させているので、熱膨張量の計算に与える影響は少ない。
【0046】
図6は中間ロール位置とミル定数との関係を示す図であり、図6(1)は中間ロール位置を示す概略構成図であり、図6(2)は中間ロール位置とミル定数との関係を示すグラフである。
【0047】
6HIミルの場合は、図6(1)に示すように、中間ロールシフト量によってミルの縦剛性係数が変化する。このため、図6(2)に示すグラフに基づく関数に従ってミル定数の補正を行う。
【0048】
第1の実施の形態によれば、過去の実績DBに格納されている客観的な実績情報に基づいて、既存の設備を使用して適切なロール冷却時間を設定することができる。このため、ワークを冷間圧延する圧延機においてロット間のロール冷却を行う場合に、高価な設備投資を必要とせずに、板形状不具合の発生及び生産性の低下を防止する適切なロール冷却時間を設定することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、第1の実施の形態において、ステップS2で求めたGMCの代わりに、キスロールの開始直後にステップS9で求めたGMCを使用して、圧延ロールの冷却時間を設定する実施の形態である。
【0050】
具体的には、第1の実施の形態で示したキスロールの状態において、過去の実績データベースDBに格納されている過去の実績情報の「GMC」の値の中から、「現在の実績」の「GMC」の値以上の値となっている実績情報を選択する。続いて、選択した実績情報の中で、圧延トラブル・不具合が「無」であり、かつ「冷却時間」が最短である実績情報に係る「冷却時間」を選択する。続いて、記憶部に予め設定されている圧延ロールの冷却時間の代わりに、選択した「冷却時間」を設定する(S11)。
【0051】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、過去の実績DBに格納されている客観的な実績情報に基づいて、既存の設備を使用して適切なロール冷却時間を設定することができる。このため、ワークを冷間圧延する圧延機においてロット間のロール冷却を行う場合に、高価な設備投資を必要とせずに、板形状不具合の発生及び生産性の低下を防止する適切なロール冷却時間を設定することができる。
【0052】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、第1の実施の形態において、ステップS2で求めたGMC(熱膨張量)と、キスロールの開始直後にステップS9で求めたGMC(圧延荷重に基づくGMC)とを使用して、圧延ロールの冷却時間を設定する実施の形態である。
【0053】
具体的には、第1の実施の形態で示したキスロールの状態において、過去の実績データベースDBに格納されている過去の実績情報の「尾端に基づくGMC」の値の中から、「現在の実績」の「尾端に基づくGMC」の値以上の値となっている実績情報を選択する。さらに、選択した過去の実績情報の「GMC」の値の中から、「現在の実績」の「GMC」の値以上の値となっている実績情報を選択する。
【0054】
続いて、選択した実績情報の中で、圧延トラブル・不具合が「無」であり、かつ「冷却時間」が最短である実績情報に係る「冷却時間」を選択する。続いて、記憶部に予め設定されている圧延ロールの冷却時間の代わりに、選択した「冷却時間」を設定する(S11)。
【0055】
第3の実施の形態によれば、ステップS2で求めた「尾端に基づくGMC」と、キスロールの開始直後にステップS9で求めた「GMC」とを使用して、圧延ロールの冷却時間を設定するので、さらに適切なロール冷却時間を設定することができる。
【0056】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態は、第1の実施の形態において、キスロールの開始直後から、一定間隔で圧延荷重に基づくGMCを演算して求め、求めたGMCを過去の実績データベースDBに現在の実績として順次記録し、求めたGMCに基づいて、圧延ロールの冷却時間を設定する実施の形態である。
【0057】
具体的には、第1の実施の形態で示したキスロールの状態において、演算したGMCの値と、過去の実績データベースDBに格納されているGMCの値とを順次比較し、演算したGMCの値が過去の実績情報のGMCの値よりも小さいか否かを実績情報毎に判定する。判定した結果、演算したGMCの値よりも小さいGMCの値が2回以上続く実績情報を選択する。続いて、選択した実績情報の中で、圧延トラブル・不具合が「無」であり、かつ「冷却時間」が最短である実績情報に係る「冷却時間」を選択する。続いて、記憶部に予め設定されている圧延ロールの冷却時間の代わりに、選択した「冷却時間」を設定する(S11)。
【0058】
第4の実施の形態によれば、キスロールの開始直後から一定間隔で求めた複数の「GMC」を使用して、圧延ロールの冷却時間を設定するので、さらに適切なロール冷却時間を設定することができる。
【0059】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態は、第1の実施の形態において、キスロールの開始直後から、一定間隔で圧延荷重に基づくGMCを演算して求め、求めたGMCを過去の実績データベースDBに現在の実績として順次記録し、求めたGMCと過去の実績データベースDBに格納されている「冷却後GMC」とに基づいて、圧延ロールの冷却時間を設定する実施の形態である。
【0060】
具体的には、過去の実績データベースDBに格納されている実績情報の中で、圧延トラブル・不具合が「無」であり、かつ値が最も大きい「冷却後GMC」に係る実績情報の「冷却後GMC」を選択する。続いて、第1の実施の形態で示したキスロールの状態において、演算したGMCの値と、選択した「冷却後GMC」の値とを順次比較し、演算したGMCの値が当該「冷却後GMC」の値よりも小さいか否かを判定する。判定した結果、演算したGMCの値が当該「冷却後GMC」の値よりも小さくなった場合には、圧延ロールの冷却時間を終了と設定する。この設定後に圧延ロール冷却の動作の停止処理を実行する(S13〜S15)。
【0061】
第5の実施の形態によれば、キスロールの開始直後から一定間隔で求めた複数の「GMC」を使用して、圧延ロールの冷却時間を設定するので、さらに適切なロール冷却時間を設定することができる。
【0062】
なお、第1の実施の形態乃至第5の実施の形態では、測定した圧延荷重から熱膨張量及び熱膨張量の変化量を求め、熱膨張量又はこれの変化量に基づいて、圧延ロールの冷却時間を設定したが、測定した圧延荷重又はこれの変化量から直接圧延ロールの冷却時間を設定するようにしてもよい。
【0063】
また、第4の実施の形態で示すような、連続する2以上の値に基づいて圧延ロールの冷却時間を設定する場合において、冷却時間を一旦設定した後についても、設定時間に達するまでは順次比較を実施し、演算した値が過去の実績データベースDBの値よりも大きくなった場合には、圧延ロールの冷却時間を再設定するようにしてもよい。
【0064】
さらに、第1の実施の形態乃至第4の実施の形態で圧延ロールの冷却時間を設定した場合において、設定時間に達するまでは第5の実施の形態で示す比較を順次実施し、演算した値が「冷却後GMC」の値よりも小さくなった場合には、設定された圧延ロールの冷却時間にかかわらず、圧延ロールの冷却時間を終了と再設定し、圧延ロール冷却の動作の停止処理を実行する(S13〜S15)ようにしてもよい。
【0065】
なお、上記各実施の形態をプログラムの発明として把握することができる。
つまり、上記各実施の形態で示した制御動作に係るプログラムを記憶媒体に記憶させ、この記憶媒体から当該プログラムを読み出し、読み出したプログラムを圧延機のコンピュータに実行させることで、本発明を実現することができる。
【0066】
また、上記各実施の形態では、「ワークの材質」が「アルミニウム」の場合について説明したが、「ワークの材質」として「アルミニウム」以外の「鉄鋼」、「銅」等を圧延する場合に上記各実施の形態を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
アルミニウム等のワーク(圧延材)Wを冷間圧延する多段式の圧延機及びこれを制御するための制御プログラムに本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】圧延機100の概略構成を示す図。
【図2】コントローラに内蔵されたROMに記憶されている制御プログラムの構成を示す図。
【図3】コントローラに内蔵された記憶部に格納されている過去の実績データベースDBを示す図。
【図4】圧延機100における制御動作を示す制御フロー。
【図5】圧延機100における制御動作を示すフローチャート。
【図6】中間ロール位置とミル定数との関係を示す図。
【符号の説明】
【0069】
100……圧延機、
11……出側X線厚み計、
12……PLC、
13……油圧圧下制御盤、
14……油圧圧下装置、
15……ロードセル、
21、22……ワークロール、
23、24……中間ロール、
25、26……バックアップロール、
30……巻取機。
【出願人】 【識別番号】000107538
【氏名又は名称】古河スカイ株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭


【公開番号】 特開2008−30095(P2008−30095A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206520(P2006−206520)